海外調査報告...

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海外調査報告 (イタリア) 資料1-2 平成28年4月15日

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Page 1: 海外調査報告 (イタリア)...2012年以降、10%を超える失業率が継続している ほか、ユニットレイバーコストが高止まりしている。 130

海外調査報告 (イタリア)

資料1-2

平成28年4月15日

Page 2: 海外調査報告 (イタリア)...2012年以降、10%を超える失業率が継続している ほか、ユニットレイバーコストが高止まりしている。 130

(出典)IMF「World Economic Outlook」。但し、10年物国債金利についてOECD「Economic Outlook 98」。

▲ 6.0

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2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

ソクラテス政権() 社会党

経済状況

(%)

実質GDP成長率:0.8%

(2015年)

社会党

(暦年)

失業率:12.2% (2015年)

コエーリョ政権(-2015.11) 社会民主党・民衆党

1998.10~

2000.4

2000.4~

2001.6 2001.6 ~ 2006.5 2006.5 ~2008.5 2008.5~2011.11

2011.11~2013.4

2013.4~ 2014.2

2014.2~

ダレマ アマート ベルルスコーニ プロディ ベルルスコーニ モンティ レッタ レンツィ

オリーブの木 オリーブの木

フォルツァ・イタリア ル二オーネ 自由の人民、 北部同盟

実務家 内閣

民主党、

新中道右派、無所属 等

民主党、 新中道右派、 無所属 等

10年物国債金利:1.7% (2015年)

リーマン・ショック (2008年9月)

ギリシャ危機(2009年10月)

【注意】 金利はOECDのデータを使って下さい ※フォルダにいれてあります W:¥調査課¥【パスワード設置済み】¥調査第2係¥海外関係¥01.海外調査総括¥01. 財審海外調査¥☆平成27年度海外調査☆¥☆出張後財審報告

1

2011年に3度にわたる大規模な財政健全化法を策定し、EU・IMF等からの金融支援を受けることなく危機を乗り切った。

一応政権は最後に要確認

○ リーマン・ショックを機に、2009年には経済が大幅に悪化。また、欧州債務危機の影響により、2012年から2014年まで再びマイナス成長となった。足元の2015年にようやくプラス成長に回復。

○ 失業率は2014年まで一貫して上昇を続け、足元でも12%と高水準となっている。

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(出典)IMF「World Economic Outlook」

財政状況

104.7 101.9 100.4 100.0 101.9 102.5 99.7 102.3 112.5

115.3 116.4 123.1

128.5 132.1 133.1

0

30

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▲ 6.0

▲ 4.0

▲ 2.0

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2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

PB対GDP比は

黒字化

実質GDP成長率 (左軸)

財政収支対GDP比 (左軸)

債務残高 対GDP比 (右軸)

PB対GDP比 (左軸)

(%) リーマン・ショック (2008年9月)

ギリシャ危機(2009年10月)

一般政府ベースで

財政収支対GDP比

▲3%以内まで改善

(%)

(暦年)

2

1998.10~

2000.4

2000.4~

2001.6 2001.6 ~ 2006.5 2006.5 ~2008.5 2008.5~2011.11

2011.11~2013.4

2013.4~ 2014.2

2014.2~

ダレマ アマート ベルルスコーニ プロディ ベルルスコーニ モンティ レッタ レンツィ

オリーブの木 オリーブの木

フォルツァ・イタリア ル二オーネ 自由の人民、 北部同盟

実務家 内閣

民主党、

新中道右派、無所属 等

民主党、 新中道右派、 無所属 等

2011年に3度にわたる大規模な財政健全化法を策定し、EU・IMF等からの金融支援を受けることなく危機を乗り切った。

現在のレンツィ政権では、低成長を克服するため各種の減税措置を表明しつつもEUの財政規律を守るとしており、歳出改革の強化に取り組むほか、労働市場改革・地方分権改革・政治改革などの構造改革に取り組んでいる。

構造的財政収支を均衡化するとの高い目標は後ろ倒しされているものの、すでにPBは黒字化しており、EUの基準である財政収支赤字▲3%以内を維持している。

○ リーマン・ショック後に財政収支は大幅に悪化したが、財政健全化に取り組み、EU・IMF等からの支援を受けることなく危機を乗り切った。マイナス成長等の影響により2012年以降の収支改善のペースは緩やか。

○ 債務残高は高水準ながらもPBは黒字化しており、財政収支もEUの基準である▲3%以内を維持。

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○ 2012年以降、10%を超える失業率が継続している ほか、ユニットレイバーコストが高止まりしている。

○ 債務残高対GDP比は高水準かつ増加しており、 利払費が歳出の圧迫要因となっている(2016年 では利払費は対GDP比4%程度)。

金融危機後の経済・財政面における対応

○ リーマン・ショックを契機とした経済金融危機に対応する中で、財政状況は大きく悪化。加えて、欧州債務危

機の影響により国債金利が上昇し、2011年11月には7%を超える水準となった。

○ このような状況の中、ベルルスコーニ政権では、2011年の7月及び9月に財政健全化策を策定したが、混乱は収束せず辞任に追い込まれた。

○ その後のモンティ政権も2011年12月に追加の財政健全化策を策定したほか、翌年4月には憲法改正を実

施。2012年には財政収支赤字対GDP比▲3%以内を達成したが、緊縮財政や構造改革への批判も大きく、

2012年末に辞任を表明。

○ 2014年に発足したレンツィ政権では、低成長を克服するため各種の減税策を含む成長戦略を掲げつつも、EUの財政規律は守るとしており、経済成長と財政健全化の両立に取り組んでいる。

金融危機後の対応

イタリアが抱える課題

政治、財政健全化、成長戦略の動きを時系列で紹介

【注意】 13スライド目にも課題を記載する欄があることに留意。

いったんの整理としては、このスライドでは現在抱えている課題を、13ページは将来の課題を記載してはどうか。

ユニットレイバーコストのBDを持っておく

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イタリア フランス

ドイツ ユーロ圏

ギリシャ スペイン

(見通し) (2000年=100)

イタリア

(出所) 欧州委員会「Annual Macro-Economic Databases」をもとに作成。名目の値。

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財政運営を規律するルール

○ 憲法(2012年4月改正、2014年より適用) 「行政は、欧州連合の法規と一致するよう、予算の均衡及び公的債務の持続可能性を保障する」と規定。

※ EUの財政協定の策定(2012年3月)を踏まえ、同協定の発効前に憲法を改正。

○ 均衡予算原則の適用に関する法律(2012年12月) 憲法を受けて、均衡予算の判定には構造的財政収支を用いる旨を規定。

※ 具体的な目標年次は安定化プログラムにて規定。「改訂版安定化プログラム2015」では2018年が目標年次。 ※ 構造的財政収支とは、財政赤字から景気循環要因、一時的要因を取り除いたもの。

○ 財源確保義務制度(オブリコ・コペルツーラの原則) 1948年の憲法制定時から導入されている原則。下記のとおり、累次の厳格化が図られてきた。

○ 2012年に憲法改正を行い、原則として財政収支均衡を義務づけたほか、財源確保義務制度の厳格化を図り、財政規律の強化を行った。

○ 財政健全化目標としては、景気循環の影響を考慮した構造的財政収支の均衡を目標と定めている。

4

1948年(憲法制定時) 「新たな支出又は支出の増加を伴う予算以外のすべての法律は、そのための財源が示されなければならない」との財源確保義務制度を規定。

1993年(国会細則で強化) 国会細則の中で、「財源増の無い議員の歳出増要求は認められない」旨を規定。

2012年(憲法改正で強化) [2014年から適用]

「新たな負担又は負担の増加を伴うすべての法律は、その財源について措置する」と改正され、本原則の予算への適用、文言の厳格化が図られた。

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○ 発足後すぐの2011年12月に、歳出改革・歳入改革・成長促進の3つの柱からなる 緊急政令(2014年までの3年間)を策定。3年間で1,035億ユーロ規模の健全化を行い、 うち405億ユーロ分を経済成長策に充てる(健全化寄与分は630億ユーロ)とされた。 <歳出面> ・ 大規模な年金改革 【後掲】 ・ 地方自治体への交付金削減

<歳入面> ・ (必要に応じ)付加価値税率の2%増税(21%→22%→23%) ・ 主たる持ち家に対する不動産税の復活 ・ 物品税(燃料税)の改定

※ ただし、22%から23%の増税は現在まで実施されていない

<成長促進> ・ ビジネス環境の改善(法人所得税に関する控除、州事業税改正による負担軽減) ・ インフラ投資の強化(地域公共交通機関整備)

http://www.bk.mufg.jp/report/aseantopics/PM1203.pdf モンティ首相の迅速且つ誠実な行動に、EU・ユーロ圏諸国のイタリアを見る目が徐々に変わっていった。メルケル独首相が1月11日の独伊首脳会談後の会見で、「緊縮財政措置が早急に

実行されるのを敬意を持って見守ってきた」、「そのスピードと内容はイタリアを強化し、且つイタリアの経済情勢を改善する」と、モンティ首相の就任後の取り組みに対して最大の賛辞を述べた。すると翌日には、新内閣発足以来ずっと7%前後の水準に張り付いていたイタリア10年国債利回りは大幅に低下し、イ

タリア国債は危険水域からの脱出に成功、財政破綻の悪夢は一先ずイタリアから去った。

財政健全化に向けた取組

○ 2011年7月と9月に、2014年までの4年間で総額 1,452億ユーロの健全化策を策定。

<歳出面> ・ 年金費用抑制(退職後年金を受け取るまでの期間に待機期間を設定等) (▲79億ユーロ) ・ 医療費抑制(医療サービス、薬剤、処方箋料等について削減目標を設定) (▲75億ユーロ) ・ 公務員人件費削減(国家公務員の新規採用停止等) (▲12億ユーロ) ・ 各省庁予算の抑制 (▲180億ユーロ)

<歳入面> ・ 付加価値税率の引上げ(20→21%) (+134億ユーロ) ・ 印紙税率の引上げ (+84億ユーロ) ・ 電力・ガス会社等への法人所得税付加税の賦課 (+36億ユーロ)

○ 危機に陥ったイタリアでは、2011年後半に、計3回にわたる大規模な財政健全化策を策定した。この結果、市場の信認が維持され、GIIPS諸国で唯一、公的支援を受けずに危機を乗り切ることができた。

財政健全化策(ベルルスコーニ政権)

イタリア救国の緊急政令(モンティ政権)

5

※ なお、その後のレッタ政権、レンツィ政権では特段の財政健全化計画は策定されていないと思われる。 2

76 189 210

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2011 2012 2013 2014

<各年の財政健全化の見込額> (億ユーロ)

歳入増加策

歳出抑制策

<各年の財政健全化の見込額> (億ユーロ)

54 80 102

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歳入増加策

歳出抑制策

(歳出増・歳入減)

経済成長策

財政健全化寄与分

2012 2013 2014

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フォルネーロ改革 ⇒イタリア大使館からの公電

「・年功年金(一定の保険料納付期間と労働からの引退を要件に支給)の廃止」は載せるか要検討 ⇒「繰上げ給付年金」として早期受給の道は存続

社会保障改革の取組(年金)

① 支給開始年齢を2018年までに66歳、2021年までに67歳以上に引上げ。 ② 2013年以降、過去3年間の平均寿命(65歳時平均余命)の伸びを勘案し、支給開始年齢を自動的に引き

上げる制度を導入。 ③ 2012年以降の保険料納付分について、すべて拠出方式(納付した保険料額を受給額の算定基礎とする方式)に

統一。これにより、長期間就労するインセンティブを付与。 ④ 2012年及び2013年において、一定額を超える年金受給者に対して、年金受給額の増額を凍結。

○ 特にモンティ政権における年金改革は年金制度の長期的な持続可能性を高めたと評価されている。

○ 公的年金支出対GDP比は約16%(2015年)から13.7% (2060年)に減少すると推計されている(右図参照)。

○ 他方で、年金保険料率は33%と非常に高いと 認識されているが、財政健全化の必要性から、現状 ではこれを下げることはできないと考えられている。

2011年の年金改革(フォルネーロ改革)

年金分野での将来の見通し及び対策

Update of the Economic and Financial Document 2015 p.50-51 医療はヒアリングでの聞き取りベース ⇒医療費の伸びの予測があれば追記

6

<年金分野> ・2011年の年金改革(フォルネーロ改革) ①全ての年金加入者について、支給開始年齢を2018年までに66歳に引き上げ。2021年の時点で67歳を下回らない。 ②これに加え、2013年以降は国立統計局が発表する過去3年間の平均寿命(65歳時平均余命)の増減に基づいて年齢要件を調整する制度を導入(調整は3年ごと、2019年以降は2年ごとに行うと規定)。

③2012年以降の保険料納付分について、すべて拠出方式に統一(1995年以降、段階的に報酬方式から拠出方式に移行)。 ④2012年及び2013年において、一定額を超える年金受給者に対しては、物価スライド式による年金受給額の増額を行わない。

<医療分野> ・1978年に、イギリスの医療制度を参考として、税方式の国民保健サービス制度を導入。 ・州政府が設置する地域保険公社(ASL)がサービスを提供。国は国民保健計画、州は地域保健計画を策定。 ・地域間格差を調整するため中央政府が付加価値税を配分。州の税収が不足する場合は、中央政府から補助もなされる。 ・1997年から2000年に行われた財政連邦制度への移行により、各州の権限・責任を強化。 ・医療費抑制のため、各州の効率化の取組を促進しており、また、金融危機後は自己負担の引上げを行っている(P)。

支給開始年齢の自動的な引上げ(3年ごとに見直し。2019年以降は2年ごと。)には、国会の議決や大臣の署名は不要とされている。これは、1995年の改革で年金支給額を10年毎に見直すとしていたが、見直しには関係省庁・関係団体と協議の上、大臣の署名が必要とされていたことから、政治的な折り合いがつかず2005年に引上げができなかったという反省を踏まえたもの。支給開始年齢を粛々と引き上げることができるとの仕組みは、EUからも高く評価されている。

(経済財政省ヒアリング)

(出典)イタリア経済財政省「改訂版安定化プログラム2015(2015年9月)」

<公的年金支出対GDP比の推移> (%) 17.0

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13.7%

15.0%

15.5%

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財政健全化に向けた取組の評価

○ 一連の改革努力により、2012年には、財政収支対GDP比▲3%を達成したほか、PB対GDP比は2%程度の黒字に改善、国債金利も4%半ばまで低下。一方で経済はマイナス成長に陥った。

○ 緊縮財政への国民の批判は強かったが、その当時としてはやらざるを得なかった改革を行ったと評価。

7

<イタリア中銀年次報告書における評価> ○ 危機前はPB対象経費は、平均して名目で年率4%、実質で年率

2%ずつ増加。 ○ 危機後の5年間は、PB対象経費は平均して名目で0.4%、実質で▲0.5%の伸びに抑制、危機前と比較してかなりの歳出抑制。

(出典)イタリア中銀年次報告書2014 (2015年5月)

<PB対象経費の推移>

PB対象経費の伸び率(名目)

PB対象経費の伸び率(実質)

○ モンティ首相は、外国報道機関との会見で、「この緊縮財政策がなければ、ギリシャと同様の事態に突入し破綻していたかもしれない」とし、緊縮措置を打ち出さなければ破滅的な状況に陥っていた可能性があるとの考えを示した。

緊縮財政策の実施により経済成長が圧迫されるかもしれないが、市場の信頼が回復することで、成長下押しの影響は相殺されるとの見方を示した。 (ロイター紙(2011年12月5日))

○ ソブリン債の危機の状態では、緊縮的な政策は必要不可欠であり、やらざるを得なかった。市場の信用回復のためには仕方がないことと思う。その後、世界的な状況は変わってきており、経済の好循環が必要となっているため、ガチガチの緊縮策を採るべきではない。

(イタリア中銀ヒアリング)

(%) (%)

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経済成長に向けた取組(レンツィ政権)

○ 2012年以降マイナス成長が続き、経済成長と財政健全化の両立の必要性が再認識されるようになった。 ○ 現レンツィ政権では、減税等による経済成長を重視する方針が採られており、財政健全化の目標期限を後ろ倒ししている一方で、EUの財政規律を守るとしており、財政健全化や構造改革にも取り組んでいる。

○ 正規雇用した企業に対する社会保険料の免除 (2015年中の採用の場合:36ヶ月間免除、2016年中の採用の場合:24ヶ月間40%を免除)

○ 個人所得税の減税(2015年)、一軒目の持ち家に対する不動産税の廃止(2016年)、法人所得税率を27.5%から24%に引き下げ(2017年予定)

○ 学校・教育改革に必要な財源措置(特例的に教職員を増加、教職員のスキル向上及び実力による評価 等)

○ 戦略的インフラ投資の促進(公共事業の着工促進、高エネルギー効率建築への建替促進 等)

モンティ政権における経済成長策

8

Update of the Economic and Financial Document 2014 p.70 2014年9月「1,000 days」というreform strategyがあるらしい (当時の報道)Renzi said that Italy must become more competitive and to do that it needs to innovate, show the importance of the rule of law, and attract new investment. That’s where the 1,000-day plan fits in, Renzi said. “At the end of the 1,000 days the … Italy will be completely transformed into a simple country for investors,” the prime minister said. Renzi also scoffed at critics who accuse him of being overly optimistic about his reform program. “Maybe they will say we are too ambitious or even too arrogant,” Renzi said. “But we have the correct attitude for a government that really wants to change the country.” 労働市場改革法(Jobs ACT) 内閣府 世界経済の潮流

イタリアでは、14年12月に雇用・解雇の容易化を目的とした労働市場改革法(Jobs act)が成立し、15年2月に同法の実施に係る二つの政令(経済的理由による解雇に対する補償を金銭的補償のみとする新雇用契約及び新しい失業給付スキーム)が閣議決定された。今後6か月間で同法に係る全ての政令が閣議決定される予定となっている。 この他、イタリア経済財政省http://www.mef.gov.it/inevidenza/documenti/riforme_strutturali.pdf に各施策が具体的に掲載されている!

○ レンツィ政権における取組を紹介 ・ 労働市場改革(解雇規制の緩和) ・ 不動産税の廃止、法人税、所得税、年金課税の減税等の方針を示している。 ※EUの財政規律の枠組みは維持するとしている。 (以上、報道ベース)

各種アタッシェ情報及び労働政策研究・研修機構(資料シリーズno. 142)の第3章イタリアを参照

○ モンティ政権においては、財政健全化と経済成長をパッケージとして推進したほか、成長戦略として規制改革・構造改革を重視していた。

・ 労働市場改革(解雇規制の緩和)※労働組合の反対で原案より大きく後退したとされている。

・ 薬局の出店規制やタクシー台数制限の廃止、弁護士、公証人を書くようする際の最低料金の廃止

・ 法人所得税に関する控除、若者(35歳以下)及び女性の雇用促進のための事業者の州事業税(IRAP)負担軽減

・ 空港・地下鉄・港湾を含む公共工事において、資金を確保しやすくするため、インセンティブを含めて民間資本参加を奨励。

・ 地域公共交通機関整備財源の確保(ローカル線、2015年ミラノ万博用鉄道整備のための補助金)

○ 労働市場改革法(Jobs Act)が成立し(2014年12月)、解雇規制を緩和。これにより、OECDによれば、今後5年

以内で成長率が0.7%上昇する見込み。

○ 構造改革に不可欠な立法措置の迅速化にも取り組んでいる。憲法改正により、完全に対等な上院・下院の

権限を見直す(2016年10月に国民投票を実施)ほか、選挙法改正により、安定政権を樹立できる環境を整備。

○ 司法制度改革により、民事裁判の長期化に伴う企業への悪影響を排除。

3カ年計画の減税、2016年

は固定資産税の減税としていたはず。要確認。

※ レンツィ政権発足以降、財政健全化の目標達成期限は2015年から2018年まで後ろ倒し。

経済成長策

構造改革

学校改革は文科係の方針に反しないか要検討

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財政健全化に向けた取組(レンツィ政権)

○ 2013年に首相府直属のスペンディングレビュー委員が1名常設され、その委員の下に、各省担当者や外部有識者等のメンバーによる、分野別の25のワーキンググループを設置。

<取組の例> 調達の中央化と調達部門の大幅削減(約30,000箇所を約50箇所に削減)

○ スペンディングレビューに基づく、各年の健全化の見込み額は下記のとおり。

○ 減税措置等の財源を確保する観点から、既存の歳出の効率性を評価し、評価結果を翌年度の予算編成に反映する、スペンディングレビューを活用。

○ 財政健全化が予想どおりに進まなかった場合に備えて、予算安定化法に付加価値税率引上げのセーフティー条項が設けられている。

・OECD 第36回SBO資料 イタリアの財政 7頁 ・経済財政省ヒアリング資料 Spending review and tax expenditures ・Update of economic and financial document →For this reason, the government has adopted measures aimed at making expenditures more effective and efficient (spending review and acceleration of the public investments co-financed by European funds) in combination with selective and targeted tax cuts that will stimulate private investment. →The spending review will continue in 2016 and in the years thereafter, thereby ensuring coverage of most of the tax cuts.

【スペンディングレビュー】ヒアリング結果及びヒアリング資料(11頁)

・EUの資料:Italy’s spending maze runner http://ec.europa.eu/economy_finance/publications/eedp/pdf/dp023_en.pdf 27,28頁 ・OECD対イタリア審査によれば、32,000→40程度にするとの記載あり。 【セーフティー条項(safeguard clause)】 http://www.reuters.com/article/us-italy-budget-idUSKBN0MY1V220150407 ⇒He promised that so-called budget "safeguard clauses", or automatic sales tax increases and other levies which are due to kick in if spending does not come down as planned, would not come into effect in 2016. "The safeguard clauses will be totally eliminated," he said.

○ 予算安定化法において、 構造的財政収支の均衡という目標達成に向けて、予定された財政健全化が達成できなかった場合に付加価値税率を引き上げる「セーフティー条項」が盛り込まれている。

○ これにより、2017年において予定された健全化が達成できないと見込まれる場合、2017年より付加価値税率は22%から24%(軽減税率:10%から13%)に引き上げられる。

スペンディングレビュー

セーフティー条項

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

各年の健全化の規模(合計額) 36.1 180.0 250.3 276.5 286.8

(億ユーロ)

(出典)イタリア経済財政省 (注)EUのレポートによれば、健全化規模の見込みは2015年に対GDP比0.5%程度とされている。

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2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

実績(見込み) 安定化プログラム2010 安定化プログラム2013

経済財政状況の見通しと実績

○ リーマン・ショック後から2012年にかけてと、現政権における財政運営の方針の違いが明確に現れている。 ○ 一方、成長率については、これまでのところ実績が見通しを下回り続けている。

昨事務年度の主計局長室資料も参考のこと。 W:¥調査課¥【パスワード設置済み】¥調査第2係¥海外関係¥01.海外調査総括¥05. 個別案件¥26事務年度¥150423 局長宿題(各国の財政健全化策の寄与)

Italy: 2010 Article IV Consultation—Staff Report; Public Information Notice on the Executive Board Discussion; Staff Statement; Statement by the Executive Director for Italy (2010年5月) ・The recovery is expected to be modest. ・First, under these projections, labor productivity and real GDP growth would have to be well above the growth rates evidenced in past decade. ・The fiscal consolidation envisaged in the Stability Programme Update (SP) combined with the authorities’ optimistic growth assumptions would put the debt on a declining path, and deficit would remain broadly within the 3 percent of GDP threshold. Country recommendation on Italy 2013の3頁(9) the Council is of the opinion that the macroeconomic scenario underpinning the budgetary projections in the programme is optimistic for 2014, when compared with the Commission 2013 spring forecast. It is plausible as from 2015, but this is under the assumption of the full implementation of the adopted structural reforms, which remains challenging.

経済・財政の見通しと実績

【財政収支対GDP比】

(%)

(出典)安定化プログラム2010(2010年1月)、安定化プログラム2013(2013年4月)。

▲ 6.0

▲ 5.0

▲ 4.0

▲ 3.0

▲ 2.0

▲ 1.0

0.0

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

実績(見込み)

安定化プログラム2010

安定化プログラム2013

【実質GDP成長率】 (%)

▲ 6.0

▲ 4.0

▲ 2.0

0.0

2.0

4.0

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

実績(見込み) 安定化プログラム2010 安定化プログラム2013

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Page 12: 海外調査報告 (イタリア)...2012年以降、10%を超える失業率が継続している ほか、ユニットレイバーコストが高止まりしている。 130

今後の経済・財政に関する見通しと当面の財政課題

○ 経済成長と財政健全化を両立させるためには、減税等の措置とあわせて、構造改革やスペンディングレビューによる歳出削減を行い、成果を上げる必要がある。

○ 高い債務残高対GDP比を安定的に引き下げるためには、更なる財政健全化が必要。

○ 最新の改訂版安定化プログラム2015(2015年9月)によれば、 2018年には構造的財政収支均衡という現在の財政健全化目標を 達成する見通しが示されているほか、債務残高対GDP比も2015年 以降安定的に低下が始まるとされている。 この間、実質GDP成長率も1%台半ばの水準が維持される見通し。

○ EUは、2015年以降の経済予測は妥当ではあるが、全ての構造改革が完全に実施されることが前提であ

り、達成に向けては困難が伴うと指摘している。また、EUの財政規律との関係上、減税等の措置とスペンディングレビューによる歳出改革の両立も課題。

○ 債務残高が高く、毎年の利払費は対GDP比4%程度に達している。 2015年のPB対GDP比は1.3%の黒字となっているが、債務残高対GDP比を安定的に引き下げるためには、更なる財政健全化を進めることが必要。

○ レンツィ政権の支持率は低下が続いており、就任当時の70%程度から現在では30%台にまで低下している。こうした中で、経済再生と財政健全化の両立を図る必要があり、厳しい政権運営が続くと考えられる。

当面の課題

今後の経済・財政に関する見通し 【時間があれば読んでおきたいもの】 <IMF>4条協議報告書、フィスカルモニター <OECD>対日審査報告書に対応するもの(Economic Survey)、 Economic Outlook 98(各国部分) <EU> European Semester 2016におけるEUの見解を記載した文書(Country specific recommendationや安定化プログラムへのassessment)

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○ 既に国民負担率が高い水準となっている中、今後迎える更なる少子高齢化に対応していく必要があるが、国民への負担を増やすことは難しい。年金分野での改革は2011年に大きく進んでいるが、医療分野では引き続き中央政府と地方政府が協働して歳出抑制に取り組んでいく必要。

レンツィ支持率 http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-08-11/honeymoon-over-for-renzi-as-italian-reality-confounds-ambitions ⇒足元の支持率はもう少し調べる必要。

110.0

115.0

120.0

125.0

130.0

135.0

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2015 2016 2017 2018 2019

実質GDP成長率 (左軸)

構造的財政収支 対GDP比(左軸)

債務残高 対GDP比 (右軸)

(%) (%)

Page 13: 海外調査報告 (イタリア)...2012年以降、10%を超える失業率が継続している ほか、ユニットレイバーコストが高止まりしている。 130

ポイント

○ 欧州債務危機後、市場からの信認を維持するため、2011年にベルルスコーニ政権及びモンティ政権において3度の大規模な財政健全化策を策定。その結果、債務残高は高水準ながらもPBは黒字化し、財政収支もEUの基準である▲3%以内を維持している。

○ 現在のレンツィ政権では、経済成長と財政健全化の両立を目指している。低成長を克服するため各種の減税策を含む成長戦略を表明している一方で、EUの財政規律を守るとしており、財源確保のため、従来のスペンディングレビューの取組を強化するなど歳出改革にも取り組んでいる。こうした取組に加えて、労働市場改革、議会・選挙制度改革、司法制度改革などの構造改革も進めている。

○ モンティ政権における改革により、年金支給開始年齢が人口動態(平均余命)と連動する仕組みが導入され、長期的な制度の持続性の確保と財政安定化に貢献している。また、ルールに沿って3年ごとに粛々と見直しを行うとの改革内容は高く評価されている。

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