航空分野のco2 削減について...2010/06/08 · づき、5機のb767型機がcda...
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Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
航空分野のCO2
削減について
国土交通省
航空局監理部
総務課
企画室
平成22年3月18日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
第34回
航空科学技術委員会
資料1-1
CO2
排出削減の枠組み
国内航空のCO2は各国の排出量に計上各国の責任において削減を追求
国際航空のCO2はセクターの特殊性か
ら排出の国別割当が困難ICAOを通じて削減を追求
<国際航空セクターの特殊性>国境を越え、又は公海上で排出行為実施コードシェアの実施 等
気候変動に関する国際連合枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change, UNFCCC)
気候システムに対して危険な人為的干渉を及ぼさない水準でGHG濃度を安定化させるため、附属
書Ⅰ国(先進国)が率先して対策を講じること等を規定
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change, KP)
UNFCCC附属書Ⅰ国に対し、2008年~2012年のGHG排出量を1990年比少なくとも-5%となる
よう、各国の削減義務を数値化
日:-6%、米:-7%、EU:-8%、加:-6%、豪:+8% 等
附属書Ⅰ国
49.2%
非附属書Ⅰ国
47.3%
ICAO・IMO を通じて削減
CO2 Emissions from Fuel Combustion 2009 Edition(IEA)のデータをもとに作成
参考:京都議定書第2条2. 附属書Ⅰに掲げる締約国は、国際民間航空
機関…を通じて活動することにより、航空機用
…の燃料からの温室効果ガス…の排出の抑制
又は削減を追求する。
1
国内航空セクターにおける対応
我が国のCO2排出量内訳(2007年) 「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」のデータをもとに作成
京都議定書目標達成計画に基づき、「2010年度のエネルギー消費原単位(人キロ輸送当たりの燃料消費量)を1995年度比で15%改善すること」を目指して取組み
2008年度までに約16%のエネルギー消費効率の改善を達成
CO2排出量
輸送量
2
航空セクターの温暖化対策の例(国の取組み)
<我が国における導入支援措置>○ 法人税
航空機に係る特別償却制度を適用。(交通バリアフリー設備を整備した60席以上の航
空機に対し、特別償却(基準取得価格(取得価格の20%相当額)の20%))
○ 固定資産税
国内線就航機について、課税標準を軽減。( 大離陸重量に応じて3年間1/2~2/3)
環境適応型航空機の導入支援
非食料系植物からジェット燃料を精製する技術開発
実用化に向けて飛行試験を含む各種試験実施中
<これまでの飛行実績>
バージンアトランティック航空(2008.2)
ニュージーランド航空(2008.12)
コンチネンタル航空(2009.1)
日本航空(2009.1)
普及に向けた施策の検討
バイオ燃料の活用
広域航法(RNAV)の導入
RNAV※の導入により飛行
時間、経路を短縮。
※RNAV(アールナブ:aRea NAVigation)
継続降下到着方式(CDA)の導入
2009年5月より関西
国際空港の深夜早朝
時間帯において試行
運用中。
年間約1,160t※のCO2 排出削減効果
※2008年3月の運航実績に基
づき、5機のB767型機がCDA 方式を実施した場合を想定
航空保安システムの高度化
地上動力装置(GPU)の利用促進
空港駐機中の航空機が必要とする動力源を、航空機自らの補助動力装置(APU)から地上動力設備(GPU)に切り替えることにより、航空機からのCO2排出を抑制。
空港施設の改善
新エネルギー
GPU(地上動力装置)の利用促進
航空機の
補助動力装置
エコカー
APU
着陸滑走路
一般的な到着方式:水平飛行時にエンジン
推力を使用
CDA方式:
エンジン推力を
下げたまま継
続的に降下
RNAV
従来
<従来>ジグザグな飛行経路
<RNAV>直線的な飛行経路
地上航法無線施設地上航法無線施設
地上航法無線施設地上航法無線施設
○ 飛行時間・経路短縮○ 就航率の向上○ 交通流の円滑化○ 複線化・複々線化による
容量拡大
3
航空セクターの温暖化対策の例(航空会社の取組(1))
定期航空協会資料より
燃費効率が高く、地球にやさしいエンジンを搭載した新型
航空機の導入を進めています。
2011年度末までに、エアライン全体で100機以上の新型
航空機の導入を目指しています。
広域航法(RNAV)という
高精度航法を導入するこ
とで、 短距離で結んだ
経路で運航することが可
能になりました。その結
果、利用者の利便性を向
上させるとともに、CO2
削
減効果を高めています。
国土交通省と連携し、
2011年度末までに主要路
線に順次導入していきます。
気象条件や航空管制を勘案した上で、
消費燃料の少ない高度・速度を選択し
た飛行計画を立てています。
燃料を効率的に使用できる空港ごとの
降下・進入ポイントを運航乗務員に周
知するなど、運航方法の工夫による
CO2
削減にも努めています。
4
航空セクターの温暖化対策の例(航空会社の取組(2))
定期航空協会資料より
2006年度より、アルミ合金製から新素
材を用いた新型コンテナを導入。
ある大型旅客機の場合、貨物用コンテ
ナを1台当たり約28kg軽量化することで、
東京-サンフランシスコ間の片道で約1.2
トンのCO2
削減効果があります。
搭載燃料をきめ細かに計算し、安全性を十分に確保した上で、
1便当たり 大400kgもの搭載燃料を軽減しています。
従来、満タンで運航していましたが、路線ごとに適正量を給水
する方法に改善しました。ある大型旅客機では、 大300kgの
軽量化を行うことができました。
従来より20%軽量化された磁器食器
や、1本当たり2g軽いスプーンを採用
するなど、軽量化に徹底的に取り組
んでいます。
エンジンは使用するにつれて、コンプレッ
サーにほこりが付着し、燃焼効率が悪く
なります。コンプレッサー部分のほこりを
定期的に水洗除去し、エンジン性能を回
復、燃費を向上させています。
あるエアラインでは、2006年度に2004年度の4.5倍の頻度で水洗
除去を行ったところ、東京-大阪間で1070往復分に相当する年間
約4万トンのCO2
を削減しました。
エアライン各社では水洗除去設備を拡大していく予定です。
1990年頃よりジェット燃料を用いるAPUより
もCO2
排出量の少ない、地上電源装置
(GPU)を優先的に利用しています。
パイロットの訓練のほとんどをシミュレー
ターで実施しています。
安全性を維持しながらエネルギー消費の
少ない訓練が可能になっています。
5
航空セクターの温暖化対策の例(究極のエコフライト)
アジア太平洋地域における、管制機関と航空会社の連携により効率的な運航を実現し、消費燃料及び排出ガスの削減を図ろうとする取組(ASPIRE: ASia and Pacific Initiative to Reduce Emissions)への航空局の参画にあわせて、『究極のエコフライ
ト』を実施。
2008年2月にアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3国で開始。日本は、アジア地域で 初のパートナーとして2009年10月に参画。2010年2月にシンガポールが参画。
『究極のエコフライト』便名:JALウェイズ77便使用機材:ボーイング747-400 出発:ホノルル(2009年10月10日13:45(現地時間))到着:関西国際空港(同11日17:50(現地時間))
実施した主なCO2 削減対策と削減量
離陸後 短の上昇経路選択 1,653kg
User Preferred Route注1 572kg
Dynamic Airborne Re-route Procedures注2 3,718kg
CDA方式による着陸 1,323kg
貨物、機内搭載品の軽量化 429kg
エンジン内部の水洗い 1,321kg
地上動力装置(GPU)の使用 2,943kg
その他 3,288kg
計 15,247kg注3
注1 太平洋の洋上空域において運航者が運航機材、運航時刻、気象予報
等を考慮し任意に作成する経路を飛行する方式
注2 巡航中、 新の予測風を元に 適な航路を再計算し、効率の良い経路
を飛行する運航方式
注3 燃料消費量6,069リットルに相当日本航空インターナショナル資料より 6
国際航空セクターの気候変動対策において考慮すべき原則
UNFCCCにおいては、附属書Ⅰ国が率
先して気候変動問題に対処すべきとなっ
ており、KPにおいては、附属書Ⅰ国のみ
に数値目標が課されている。
参考:気候変動枠組条約
第3条1.締約国は、この条約の目的を達成し及び
この条約を実施するための措置をとるに当
たり、特に、次に掲げるところを指針とする。
1.締約国は、衡平の原則に基づき、かつ、
それぞれ共通に有しているが差異のある責
任及び各国の能力に従い、・・・気候系を保
護すべきである。したがって、先進締約国は、
率先して気候変動及びその悪影響に対処す
べきである。
国際民間航空条約(シカゴ条約)におい
ては、締約国間の差別的待遇を避けるこ
とが原則となっている。
参考:国際民間航空条約
第44条この機関の目的は、次のことのため、国際
航空の原則及び技術を発展させ、並びに国
際航空運送の計画及び発達を助長すること
である。
(g) 締約国間の差別待遇を避けること。
ICAOにおける検討では、両方の原則への配慮が必要
気候変動枠組条約・京都議定書
(CBDR※の原則)国際民間航空条約
(非差別的取扱いの原則)
※CBDR: Common but Differentiated Responsibility
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国際的議論の流れ(1)
2007年の第36回ICAO総会において、2009年末の第15回UNFCCC締約国会議(COP15)に向けて今後の国際航空セクターの気候変動対策の枠組み「ICAO行動プ
ログラム」を策定することを決議
2009年10月の国際航空と気候変動に関するハイレベル会合において「ICAO行動プロ
グラム」を承認
UNFCCC
ICAO第36回
ICAO総会2007年9月
GIACC/12008年2月
GIACC/22008年7月
GIACC/32009年2月
GIACC/42009年5月
ハイレベル会合2009年10月
GIACC(Group on International Aviation and Climate Change、国際航空と気候変動に関するグループ):
「ICAO行動プログラム」(第36回ICAO総会決議)を策定するために設置。日、豪、伯、加、中、仏、独、印、墨、蘭(第4回のみ)、
ナイジェリア、露、サウジ、南ア、スイス(第1回及び第2回のみ)、英(第3回のみ)、米の15ヶ国から構成。
年以降の新たな枠組
2013COP13 2007年12月
バリ
COP14 2008年12月
ポズナン
COP15 2009年12月
コペンハーゲン
COP15に向けて特別作業部会(AWG)を設置して議論の実施
「ICAO行動プログラム」の主要構成要素
1. 国際航空セクターにおける燃料消費効率ベースのグローバル目標
2. 航空機や燃料の技術革新、航空管制の高度化等の運航の効率化、経済的手法等か
ら構成される総合的な対策の枠組み
3. 各締約国の対策による進捗状況の報告・モニタリング手法8
グローバル目標
(2%/年の改善)
対策のバスケット
航空機、エンジン等に係る
技術革新
航空管制等の高度化
(運航効率の改善)
運航上の改善その他(規制的手法、経済的手法等)
注:対策毎の改善量はイメージ
「ICAO行動プログラム」の概要
)輸送量(
燃料消費量(㍑)燃料効率※
RTK=
航空機、エンジン等に係る
技術革新
航空管制等の高度化
(運航効率の改善)運航上の改善その他(規制的手法、経済的手法等)
注:対策毎の改善量はイメージICAOによる
モニタリング
対策のバスケット
個々の国に義務を課すものではなく、セクター全体で達成を目指すものと位置付け
短期、中期、長期について燃料効率※を毎年2%改善
より野心的な目標について検討継続
グローバル目標
「ハイレベル会合」にて承認、
更なる取組みを宣言
9
国際的議論の流れ(2)
ICAOにおいては、2010年秋に予定される第37回総会に向けて、19ヶ国の航空局長又はそれに替わる政策担当者による「気候変動局長グループ(DGCIG)」を設置して、
検討を実施。
UNFCCC
ICAO DGCIG/12010年3月
DGCIG/22010年6月
DGCIG/32010年8月
第37回ICAO総会
2010年9月
年以降の新たな枠組
2013COP15 2009年12月
コペンハーゲン
COP16 2010年11月
カンクン
COP16に向けて特別作業部会(AWG)による議論の継続
HLM及びCOP15の結果等を踏まえて、第37回総会に向けて、以下の事項等につい
て検討
1.より野心的な中期及び長期の目標
2.国際航空分野における経済的手法の枠組み
3.モニタリング(各国による行動計画の策定、報告)
DGCIG(Directors General of Civil Aviation Climate Group、気候変動局長グループ):
ICAOハイレベル会合宣言に基づき、中長期に係る更なる野心的な目標、経済的手法の枠組み等
について検討するために設置。日、豪、伯、加、中、独、仏、印、韓、墨、ナイジェリア、露、サウジ、星、南ア、
西、UAE、英、米の19ヶ国から構成。(下線の国は、GIACCにも参加)
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今後検討する目標の一例(IATA等の提案に準拠)
国際航空セクター全体で右表の目標を達成
グローバル目標案の一例
対策のバスケット
航空機、エンジン等に係る
技術革新
航空管制等の高度化
(運航の効率化)
運航上の改善
その他(規制的手法、経済的手法等)
注:対策毎の改善量はイメージ
50
短期(~2012年) 燃料効率を毎年2%/年で改善
中期(~2020年) 燃料効率を毎年2%/年で改善 及び 炭素中立成長
長期(~2050年) CO2排出量を2005年比50%減
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今後必要と考えられる取組
対策のバスケットに含まれる各種対策の積極的な推進が必要
特に…
航空機・エンジン単体の更なる燃費向上、低炭素化の推進(長期的には脱炭素化も視野)
運航効率の更なる改善~ICAOグローバルATM運用概念への対応~
より野心的な目標の達成のため…
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