消費者調査手法の新展開 -...

177
株式会社インサイト・ファクトリー 消費者調査手法の新展開 ~リサーチという経験のデザイン~ 日本行動計量学会第17回春の合宿セミナー(2015/03/07-08) [Web公開バージョン] 小野滋 [email protected]

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株式会社インサイト・ファクトリー

消費者調査手法の新展開

~リサーチという経験のデザイン~

日本行動計量学会第17回春の合宿セミナー(2015/03/07-08)

[Web公開バージョン]

小野滋

[email protected]

自己紹介

2

認知心理学を学び、大学講師、教育サービス企業、外資系リサーチ会社を経て現職

エビデンスに基づき、マーケティング意思決定を支援します

ただいまスタッフ9名

マーケティング・リサーチ業界

弊社の所在地

このへん

本日の内容

3

消費者調査の手法に関して、近年のいくつかの視点を紹介します

あわせて、私たちの取り組みをご紹介します

CAVEAT & お詫び

4

マーケティング・リサーチの文脈における、消費者調査に焦点を当てます

私たちの取り組みが、社会調査全般、あるいは行動の計量全般に関して、

どのような示唆を持っている(いない)のか、私たち自身はよくわからずにおります。

ご教示をいただければ幸いです

大変不十分な内容です

私たちの取り組みは、基礎研究としては全く未熟な内容だと思います。

なにとぞご寛恕のうえ、暖かく&前向きに捉えて頂きたくお願いする次第です

レクチャーというより、ご報告です

コメント・ご教示を賜れれば幸いです

目次

5

I. 背景と課題

II. 相互作用をデザインする

III. 情報集約をデザインする

IV. 回答状況をデザインする

V. リサーチという経験のデザイン

6

I. 背景と課題

7

消費者

マーケティング意思決定

購買データ ソーシャル リスニング

消費者調査 データ

integration 私たちの 専門領域

消費者調査手法の開発

8

消費者

マーケティング意思決定

購買データ ソーシャル リスニング

消費者調査 データ

integration

消費者調査手法の開発

消費者調査手法の開発に 取り組んでいます

なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか?

9

… なぜ、いまさら?

なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか?

10

消費者調査の価値は低下している

マーケティング・リサーチ

ビッグ・データ ソーシャル・メディア

Google Trendでみた検索量

なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか?

11

消費者調査の価値は低下している

あらゆる問題を解決する方法があると信じるのをやめないといけない。特にサーヴェイ・リサーチがそれだと信じるのを。私達は方法に対して懐疑的でなければならない。 [ソーシャルメディアなどの]双方向的エンゲージメントによって、世界中の人と相互作用できるようになったと感じる人がますます増えている。構造化されたリサーチに関わりたいと思う人はますます減っている。[...]企業になにか伝えたいことがあるとき、その方法はいまやたくさんある。 リサーチャーは、[リサーチの]プロセスや妥当化の細かい点に焦点を置きすぎている。まるで方法をイデオロギーのように扱っている。

Joan Lewis

(global consumer and market knowledge officer, Procter & Gamble)

http://adage.com/article/news/p-g-surveys-fade-consumers-reach-

brands-social-media/149509/

なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか?

12

消費者調査の価値はなぜ低下したのか?

マーケティング意思決定

消費者理解の方法が多様化している

消費者調査は 差別化された価値を

提供していない

消費者 消費者

消費者調査 消費者調査

マーケティング意思決定

消費者調査だけが提供できる インプリケーションは?

調査手法の新開発 消費者

消費者調査

マーケティング意思決定

13

なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか?

消費者調査の伝統的発想

14

不偏性 独立性

正確・高精度な測定

消費者理解

15

消費者理解

相互作用をデザインする

情報集約をデザインする

回答状況をデザインする

手法開発への3つの視点

手法開発への3つの視点

16

消費者理解

相互作用

相互作用をデザインする

手法開発への3つの視点

17

消費者理解

情報集約をデザインする

手法開発への3つの視点

18

消費者理解

回答状況をデザインする

本日ご紹介する内容

19

即時的フィードバック 会話的インタビュー

相互作用的サーヴェイ

BDMメカニズム

プロパー・スコアリング・ルール

アイデア・バルーン *

ベイジアン自白剤

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

相互作用を デザインする

他者についての推測 シチズン・フォーキャスティング

ベイジアン自白剤

デルファイ法

アイデア・エボリューション *

選好市場

予測市場

多様な意見の集約

市場メカニズムの導入

情報集約を デザインする

アイデア市場

身体に訊くブランド選好 *

リサーチ・イン・アクション * 消費の現場に埋め込む

回答を身体化する

心的処理を方向づける

解釈レベルの操作

メンタル・シミュレーション

Auditorスコア * 回答状況を

デザインする

* 弊社開発事例

視 点 アプローチ 手 法

20

II. 相互作用をデザインする

II. 相互作用をデザインする

21

調査を{対象者 & 調査主体}間の社会的相互作用として捉えよう

消費者理解

相互作用

II. 相互作用をデザインする

22

調査は対人的行為である

調査という行為において、回答者が目指している対人的目標とは?

(Kuncel, Borneman & Kiger, 2012)

Credible

True to the Self

Impressive

相互作用のデザインによって、回答者の目標追求を促進する

II. 相互作用をデザインする

23

即時的フィードバック

会話的インタビュー

相互作用的サーヴェイ

BDMメカニズム

プロパー・スコアリング・ルール

アイデア・バルーン

ベイジアン自白剤

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

相互作用を デザインする

視 点 アプローチ 手 法

24

即時的フィードバック

会話的インタビュー

相互作用的サーヴェイ

BDMメカニズム

プロパー・スコアリング・ルール

アイデア・バルーン

ベイジアン自白剤

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

相互作用を デザインする

II-1. 即時的フィードバック

II-1. 即時的フィードバック

25

インタビュアー – 対象者間の会話的相互作用を促進・活用する

サーヴェイ・インタビューとは本質的に相互作用的な出来事なのだということをリサー

チャーは認識すべきだ。

現在、標準化されたインタビュー設問はあまりに脆いテクニカルなものになってしまって

おり、もはや現実の世界の相互作用の中では実行不可能になっている。

[会話を通じて質問の意味を]明確にするということとバイアスとをもっと細かく区別するこ

とで、質問をより頑健なものにすることができるはずだ。

[…] 調査対象者が持っている相互作用のための熟達した能力は、サーヴェイ調査における問

題ではなく、むしろ資源として捉え直されることになる。

会話的インタビュー

(Suchman & Jordan, 1990)

II-1. 即時的フィードバック

26

対象者に架空のシナリオを与え、その登場人物について電話調査

(インタビュアーは「正解」を知らないが、実験者からみて「正解」は既知)

次の要因を操作:

インタビュー方式

標準 … 質問文を繰り返したり、非指示的なプローブを出したりするだけ

柔軟 … 積極的に会話し、設問を言い換えたり、言葉の定義を教えたり、質問に答えたりする

「正解」のタイプ (質問例: 「ケリーは自宅の家具を買っていますか?」)

単純 … テーブルを買っている

複雑 … フロアランプを買っている (※「家具」に当てはまるかどうか対象者には判然としない)

Schrober & Conrad (1997)

II-1. 即時的フィードバック

27

結果:

複雑な「正解」に対しては、柔軟なインタビューがより正確

ただし、所要時間は長くなる

0%

20%

40%

60%

80%

100%

単純 複雑

標準

柔軟

調査による 「正解」復元率

II-1. 即時的フィードバック

28

(Piazza, Sniderman & Tetlcok, 1989)

例: 反論テクニック

政策・価値観に対する支持/不支持を聴取。回答に対して反論を提示し再聴取

人種間平等に対する態度の研究に活用

相互作用的サーヴェイ

合衆国政府は黒人を助けるプログラムへの支出を増やすべきだ、と考える人がいます。また、黒人は自分たちだけでどうにかすべきだと考える人もいます。あなたはどちらが正しいと思いますか?

政府が黒人を助けるということが、黒人がただ黒人だというだけの理由で特別な扱いを受けるということを意味するとしても、やはりあなたはそう思いますか? それとも意見を変えますか?

その結果、黒人は引き続き貧しいままであり、白人よりも職を失いやすいままであるとしても、やはりあなたはそう思いますか?それとも意見を変えますか?

支出を増やすべきだ

支出を増やすべきでない

白人の対象者に対して、

II-1. 即時的フィードバック

29

「黒人を助けるプログラムへの支出」 「大学入試でのアファーマティブ・アクション」

最初に 賛成 57%

最初に 賛成 27%

反対に変化 52%

賛成に変化 40%

最初に 反対 43%

最初に 反対 73%

17%

23%

現実の政治行動の基盤となるのは、

むしろ圧力下(反論後)の態度では?

30

即時的フィードバック

会話的インタビュー

相互作用的サーヴェイ

BDMメカニズム

プロパー・スコアリング・ルール

アイデア・バルーン

ベイジアン自白剤

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

相互作用を デザインする

II-2. インセンティブのデザイン

II-2. インセンティブのデザイン

31

調査は、情報とインセンティブの取引である

調査対象者は調査主体が知らない情報を持っている (情報の非対称性)

調査主体は、調査対象者に有形・無形のインセンティブを提供する

インセンティブのデザインによって、真の情報を引き出そう

インセンティブ整合性 incentive compatibility

インセンティブによって引き出される行動が、システムからみて望ましい行動であること

調査においては... インセンティブによって真の情報の開示が引き起こされること

II-2. インセンティブのデザイン

32

インセンティブ整合的メカニズム

例) ゲーテの印税 (1797年)

ゲーテは叙事詩「ヘルマンとドロテア」の印税について、

出版社に次のように提案した

• ゲーテは要求額を記した書類を封印し、弁護士に渡す

• 出版社はゲーテに、いくら支払う気があるかを提案する

• もしそれが要求額より低かったら、ゲーテは書類を取戻し、

交渉を中止する

• もしそれが要求額より高かったら、(提案額ではなく)

要求額で取引する

出版社にとっては、真の評価額を表明するのが最適 (=インセンティブ整合的)

実際には、弁護士が出版社に要求額を漏らしてしまい、出版社は要求額を提案した

(川越,2010)

II-2. インセンティブのデザイン

33

対象者

ドイツ・キールのビーチにいた人

対象者の課題

コーラ缶に対する「提案価格」を決める

「買値」をくじ引きでランダムに決める

もし買値が提案価格を上回ったら実験は終了

もし買値が提案価格を下回ったら、参加者は自分の財布からお金を払い、コーラ缶をその買値で購入しなければならない

(Becker, DeGroot, & Marshak, 1966)

Wertenbroch & Skiera (2002)

BDMメカニズム

http://www.travel1000places.com/visit/germany/Kiel/10,012,beaches-near-kiel

II-2. インセンティブのデザイン

34

対象者の立場から見ると

買値がこの範囲に落ちたら、安く買う機会を失う

提案価格 真の支払意思額

買値がこの範囲に落ちたら、高値で買う羽目になる

提案価格 真の支払意思額

安めに提案すると ...

高めに提案すると ...

自分の真の支払意志額を提案するのが最適

II-2. インセンティブのデザイン

35

結果:

BDM法の結果と、支払意思額を直接に聴取した場合の結果を比較

• 結果は異なる

• BDM法のほうが妥当性も信頼性も高い

0.0

0.5

1.0

1.5

BDM 直接聴取

0.0

0.1

0.2

0.3

BDM 直接聴取

「いま喉が渇いていますか?」(5件法)への回答と支払

意思額の相関

支払意思額平均(マルク)

II-2. インセンティブのデザイン

36

コンジョイント課題

XXX XXX XXX

XXX XXX XXX

XXX XXX XXX

Choice!

謝礼 (低額)

くじ引き

当選 落選

謝礼 (高額)

XXX XXX XXX

実際の製品を プレゼント用に用意

ルーレット

ルーレットで出た値段が 支払意思額よりも上

終了

ルーレットで出た値段が 支払意思額よりも下

ルーレットで出た値段で、プレゼント製品を強制的に

購入させられる

プレゼント製品に対する当選者の支払意思額を、コンジョイント分析で得た個人効用によって推定

インセンティブ整合的コンジョイント分析

Ding (2007)

II-2. インセンティブのデザイン

37

コンジョイント課題

XXX XXX XXX

XXX XXX XXX

XXX XXX XXX

仮にくじ引きで当選したとして…

ルーレットでハズレになりやすい →せっかく安く買える機会を失う!

買いたくもないものを高値で買わされる羽目になる!

高く評価されたら?

プレゼント製品に対する自分の支払意思額が、本当の支払意思額よりも

低く評価されたら?

いいかげんに答えると、損をする!

もしいいかげんに答えたら、なにが起きるんだろう?

通常のコンジョイント分析より、予測的妥当性が高い

0%

20%

40%

60%

80%

通常の

コンジョイント分析

インセンティブ整合的

コンジョイント分析

異なる選択課題に対する予測成績 (Ding, 2007; Table 2)

正予

測率

II-2. インセンティブのデザイン

38

II-2. インセンティブのデザイン

39

スコアリング・ルールとは

いずれかひとつだけが実現する事象集合{1,2,...,n}について、それぞれが実現する確率を回答させ、その回答に応じてスコアを与えるルール

プロパー・スコアリング・ルールとは

真の主観確率を回答したときにスコアが最大化されるスコアリング・ルール

スコアとインセンティブを連動させることで、正直かつ真剣な回答を引き出せるはず

代表例: 対数スコアリング・ルール

主観確率の回答 {𝑟1, 𝑟2, … , 𝑟𝑛}と実現した事象 𝑖 を照らし合わせ、スコア 𝑠を与える

𝑠 = 𝑎 + 𝑏 log 𝑟𝑖

スコア決定のためには、なんらかの外的な「正解」が必要

プロパー・スコアリング・ルール

-2

-1.8

-1.6

-1.4

-1.2

-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

申告する降水確率 r1

p1=0.1

p1=0.3

p1=0.6

II-2. インセンティブのデザイン

40

例) 内心で「明日の降水確率は 𝑝1 」と考えている天気予報官に、

明日の降水確率を予測させ(𝑟1)、対数スコアリング・ルールで報酬を与えると?

スコアの期待値

𝐸[𝑠] = 𝑝1 log 𝑟1 +𝑝2 log 𝑟2

※可能な事象を {1:雨が降る, 2:雨が降らない} とする (𝑝2 = 1 − 𝑝1, 𝑟2 = 1 − 𝑟1)

𝑟1 = 𝑝1のときに報酬の期待値が最大となる

II-2. インセンティブのデザイン

41

カテゴリカル質問への回答に対する、一種のスコアリング・ルール

BTSスコアは回答の真実性 (truthfulness) を表す

スコアをインセンティブに連動させることで、真実性のある回答を引き出せる

必要な設問

Q1: 任意のカテゴリ質問 (K択質問)

Q2: 「Q1に他の人がどう答えるか」を予測させる質問

Q1. これまでに万引きをしたことはありますか? Yes No Q2. Q1にYesと答える人は、どのくらいいると思いますか? ____ %

2択質問の例:

Bayesian Truth Serum (Prelec, 2004) ベイジアン自白剤

BTSスコアの例

※上の例のQ1は2択設問だが、任意のカテゴリ数のSA設問について同じ方法でBTSスコアを算出できる

Q1. 万引きしたことはありますか?

Q2. Q1にYesと答える人は どのくらいいると思います

か?

BTSスコア

はい 20% ⇒ +0.31

いいえ 10% ⇒ -0.18

はい 5% ⇒ +0.09

いいえ 30% ⇒ -0.09

… … …

はい 25% ⇒ +0.32

「はい」回答率 25%

「はい」率予測の平均 18%

真実性が高い

真実性が低い

II-2. インセンティブのデザイン

42

II-2. インセンティブのデザイン

43

ベイジアン自白剤の特徴

外的な「正解」が不要

「正解」が存在しない質問についてもスコアリングできる

回答の分布に依存しない

少数意見であっても高いスコアを得る可能性がある

インセンティブ整合性

スコアをインセンティブに連動させることで、望ましい行動 (真実申告) を引き出せる

II-2. インセンティブのデザイン

44

対象者 i (=1,...,n)のカテゴリ k(=1,...,K) に対する

Q1での選択有無を 𝑥𝑖𝑘 , Q2での回答を 𝑦𝑖𝑘 とする。

𝑥 𝑘 =1

𝑛 𝑥𝑖𝑘

𝑛

𝑖

log 𝑦 𝑘 =1

𝑛 log𝑦𝑖𝑘

𝑛

𝑖

𝐵𝑇𝑆 𝑆𝑐𝑜𝑟𝑒𝑖 = 𝑥𝑖𝑘 log𝑥 𝑘𝑦 𝑘+

𝐾

𝑘

𝛼 𝑥 𝑘 log𝑦𝑖𝑘𝑥 𝑘

𝐾

𝑘

0 < 𝛼 < 1

情報スコア 予測スコア

BTSスコアの定義

データ (架空例)

対象者A 対象者B …

実際の

「はい」回答率

実際の

「いいえ」回答率

25% 75%

「はい」回答率

予測の幾何平均

「いいえ」回答率

予測の幾何平均

31% 65%

「はい」回答者に与

える情報スコア

「いいえ」回答者に

与える情報スコア

log(0.25/0.31) log(0.75/0.65)

=-0.22 =+0.08

log(0.25/0.25) log(0.30/0.25)

=0.00 =+0.18

log(0.75/0.75) log(0.7/0.75)

=0.00 =-0.07

0.25x(0.00)

+0.75x(0.00)

0.25x(+0.18)

+0.75x(-0.07)

=0.00 =-0.01

0.00 -0.01 …

-0.22+0.00 -0.08+(-0.01)

=-0.22 =+0.07

-0.22 +0.07

「いいえ」についての対象者の回答率予測

と、実際の回答率との比の対数…

上記の2つの値を実際の回答率で重みづけた

和…

予測スコア

(情報スコア) + α (予測スコア)

(ここではα=1の場合を示す)…

BTSスコア

「はい」についての対象者の回答率予測

と、実際の回答率との比の対数…

回答率

予測

Q2. Q1に「はい」と答える人は何

パーセントいると思いますか?25% 30% …

情報スコア -0.22 +0.08 …

集計結果

回答Q1. この製品を買ってみたいです

か?はい いいえ …

情報スコアは、Q1において その回答カテゴリが

“surprisingly common”である程度を表す

予測スコアは、その対象者のQ2への回答の正確さを表す

II-2. インセンティブのデザイン

45

BTSスコアの計算例

II-2. インセンティブのデザイン

46

Prelec (2004) が示したのは、正確に言えばどんなことか?

セッティング

対象者 r のQ1への真の答えを二値ベクトル 𝑡𝑟 で表す。

選択肢が(イイエ, ハイ)の2つで、もし本当の答えがハイなら、 𝑡𝑟 = (0,1)

選択肢 k の選択率についての対象者 𝑟 の真の推測を 𝑝(𝑡𝑘|𝑡𝑟) と表す。

母集団における 𝑡 の分布をベクトル Ω で表す。

本当の答えがハイの人が全体の2割なら、 Ω = (0.8, 0.2)

II-2. インセンティブのデザイン

47

前提

A) 𝒕𝟏, 𝒕𝟐, … , 𝒕𝒏 は 𝛀 の下で互いに独立

B) 𝒕𝒓 ≠ 𝒕𝒔 のとき、そのときに限り 𝒑(𝒕𝒌|𝒕𝒓) ≠ 𝒑(𝒕𝒌|𝒕

𝒔)

前提B)が破られる例:

• 𝑡𝑟 ≠ 𝑡𝑠 なのに 𝑝(𝑡𝑘|𝑡𝑟) ≒ 𝑝(𝑡𝑘|𝑡

𝑠)

公的情報が利用可能で、個人的意見が情報的でない場合。

たとえば、母集団における女性の割合についての推測。本人の性別は効かない。

• 𝑡𝑟 = 𝑡𝑠 なのに 𝑝(𝑡𝑘|𝑡𝑟) ≠ 𝑝(𝑡𝑘|𝑡

𝑠)

好みや性質のちがう人が混じっていて、Q1に対して違う理由で同じ答えを持ち、しかし母集団についての推測は異なる場合。

II-2. インセンティブのデザイン

48

Prelec (2004) が示したこと:

BTSスコアの最大化を目指すとき、真実申告がベイジアン・ナッシュ均衡解となる。

他の対象者が真実を申告しているという仮定の下で、最適方略(BTSスコアの期待値を最大化する方略)は真実の申告である。

ほかの均衡解もありうるが、情報スコアの期待値は正直に答えた時が最大となる。

ゲーム理論的分析における均衡が、現実の行動と一致するかどうかは別の問題

→ 実証研究が必要

II-2. インセンティブのデザイン

49

ベイジアン自白剤の実証研究 (小野, 2014b)

B. 調査結果の精度向上

C. 優れた回答者の特定

A. 回答行動の変容 BTSスコアを報酬と連動させる

後述

II-2. インセンティブのデザイン

50

BTSスコアに応じて報酬を渡すと、回答者は正直になる

• ブランド名の再認課題

• ブランド名を示し、知っているかどうかを訊ねる

• 正直でない回答を促進する実験手続き

• 「知っている」と答えたら10セント渡す

• 調査参加者は実在しないブランド名に対してさえ「知っている」と答えやすくなる

• さらに、BTSスコアを報酬と連動

• 「知っているブランドは?」「他の人はなんと答えると思いますか?」と尋ね、答えるたびにBTSスコアをフィードバック。

• 「知っている」に対する10セントに加え、さらにBTSスコアに応じた少額のコインを渡す

Weaver & Prelec (2013)

A. 回答行動の変容

II-2. インセンティブのデザイン

51

実在しないブランドに対する「知っている」反応

BTSスコアと連動した報酬付与の繰り返し

• これを繰り返すと...

参加者は次第に実在しないブランド名を「知らない」と答えるようになる

III-1. 他者についての推測

52

課題:ベイジアン自白剤の心理的機序

正直に答えることが最適方略(ベイジアン・ナッシュ均衡)であるということを、実際の回答者が理解・意識しているわけではないだろう

教示の効果?

• Weaver & Prelec の実験では、調査参加者に「MITの教授が開発した新手法であなたの回答の真実性をスコア化します」と教示している

• こうした教示が調査参加者の態度を変え、正直で真剣な回答をもたらしたのかも165 しれない(Kuncel, Borneman, & Kiger, 2012)

被験者に「この装置で内心が読まれてしまうのだ」と信じさせることができれば、被験者は正直になる。装置はなんでもよい (bogus pipeline 効果)

写真: http://www.scienceofrelationships.com/home/2013/6/21/sex-lies-andbogus-pipelines.html

53

即時的フィードバック

会話的インタビュー

相互作用的サーヴェイ

BDMメカニズム

プロパー・スコアリング・ルール

アイデア・バルーン

ベイジアン自白剤

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

相互作用を デザインする

II-3. 回答という行為の社会化

II-3. 回答という行為の社会化

54

オンライン調査のための自由回答聴取手法

多様な意見・視点を収集

製品開発初期のアイデア開発、製品・サービスのユーザ経験収集などの場面での利用を想定

共同開発:株式会社マーシュ

弊社開発事例 (小野, 2014a)

青空をふわふわと流れていくバルーンを、マウスで捕まえてカゴにいれる

アイデア・バルーン

MOVIE

通常の自由回答聴取 アイデア・バルーン

自由回答画面

Answer

Question:

自由回答画面

Answer

Question:

アイデア・バルーン画面

ゲーム的な画面で、 他の人の回答を分類

II-3. 回答という行為の社会化

55

円は個々の参加者の自由回答。 数字と色は、自由回答の内容に基づいて行った分類を示す。 アイデア・バルーンによってアフターコーディングを再現できることがわかる。

II-3. 回答という行為の社会化

56

実査終了の時点で、回答の分類と、関係性の分析が可能

回答はより豊かになる

0

5

10

15

20

25

30

35

通常の自由回答 アイデア・バルーン

質問1

質問2

回答の文字数平均

文字

数平

II-3. 回答という行為の社会化

57

Question: Question:

誰が読むの?

さあ?

誰が読むの?

私とおなじような他の人が 私の回答を読む!

II-3. 回答という行為の社会化

58

自由回答画面 自由回答画面

Answer Answer

アイデア・バルーン画面

通常の自由回答聴取 アイデア・バルーン

II. まとめ

59

Impressive Credible True to the

Self

相互作用のデザインは、なにを促進しているのだろうか?

調査回答者が目指している対人的目標

促進

想定される効果

促進

促進

即時的フィードバック

会話的インタビュー

相互作用的サーヴェイ

BDMメカニズム

プロパー・スコアリング・ルール

アイデア・バルーン

ベイジアン自白剤

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

促進

II. まとめ

60

相互作用のデザインによって、社会的行為としての調査を最適化する試み

即時的フィードバック

インセンティブのデザイン

回答という行為の社会化

消費者理解

相互作用

引用文献 (II章)

61

Becker, G.M., DeGroot, M.H., Marschak, J. (1964) Measuring utility by a single-response sequential method.

Behavioral Science. 9(3), 226–232.

Kuncel, N.R., Borneman, M., & Kiger, T. (2012) Innovative item response process and Bayesian faking detection

methods: More questions than answers. in Ziegler, M., Maccann, C., & Roberts, R.D. (eds.) "New prospectives

on faking in personality assessment", Oxford University Press.

Piazza, T., Sniderman, P.M., & Tetlcok, P. (1989) Analysis of the dynamics of political reasoning: A general-

purpose computer-assisted methodology. Political Analysis, 1(1), 99-119.

Prelec, D. (2004) A bayesian truth serum for subjective data. Science, 306(15).

Schober, M.F. & Conrad, F.G. (1997) Does Conversational Interviewing Reduce Survey Measurement Error? The

Public Opinion Quarterly, 61(4), 576-602.

Suchman, L. & Jordan, B. (1990) Interactional troubles in face-to-face survey interviews. Journal of the

American Statistical Association, 85(409), 232-241.

Weaver, R. & Prelec, D. (2013) Creating truth-telling incentives with the bayesian truth serum. Journal of

Marketing Research, 50(3), 289-302.

Wertenbrock, K. & Skiera, B. (2002) Measuring consumers' willingness to pay at the point of purchase. Journal

of Marketing Research, 39 (2), 228-241.

川越敏司 (2010) 「行動ゲーム理論入門」. NTT出版.

小野滋(2014a) リサーチという経験のデザイン. 朝野煕彦(編)「ビッグデータの使い方・活かし方―マーケティングにおける活用事例」, 東京図書.

小野滋(2014b) 正直で真剣な回答を引き出す仕組み, マーケティング・リサーチャー, 124.

62

3. 情報集約をデザインする

III. 情報集約をデザインする

63

{対象者 & 調査主体}間の多くの相互作用から、情報を抽出・集約しよう

消費者理解

III. 情報集約をデザインする

64

なんのための情報集約?

予測 → 販売予測

評価 → コンセプト評価、パッケージ評価

多様な経験・意見・態度の収集 → アイデア開発、製品・サービス改善

情報集約のデザインによって期待されること

効率の向上

正確性・精度の向上

集合知の創出

※ 集合知(collective intelligence): ここでは、人々の知識・認知能力の統合から得られる価値ある情報・知識のことを広義に指している

III. 情報集約をデザインする

65

他者についての推測

シチズン・フォーキャスティング

ベイジアン自白剤

デルファイ法

アイデア・エボリューション

選好市場

予測市場

多様な意見の集約

市場メカニズムの導入

情報集約を デザインする

アイデア市場

視 点 アプローチ 手 法

66

他者についての推測

シチズン・フォーキャスティング

ベイジアン自白剤

デルファイ法

アイデア・エボリューション

選好市場

予測市場

異なる回答の集約

市場メカニズムの導入

情報集約を デザインする

アイデア市場

III-1. 他者についての推測

III-1. 他者についての推測

67

日常は他者との相互作用にあふれている

人々は他者の態度・選好について推測できる

「わたしは好きじゃないけど、うちのおばあちゃんは好きかも…」

III-1. 他者についての推測

68

選挙予測調査で、「誰に投票するか」(=自分の意向)を聴取するのではなく、

「誰が当選するか」(=他者の行動) を推測させる

米大統領選の予測では、通常の選挙予測調査や予測市場よりも正確

シチズン・フォーキャスティング (Lewis-Beck & Skalaban, 1989)

誰に投票するか 誰が当選するか

Graefe (2014)

III-1. 他者についての推測

69

「他者の態度についての推測」を基準にしたスコアリング・ルールであるといえる

インセンティブ整合的メカニズムをつくる手段としてではなく、単なるスコアリング手法として用いた事例が報告されている

ベイジアン自白剤 の実証研究

B. 調査結果の精度向上

C. 優れた回答者の特定

A. 回答行動の変容

BTSスコアでウェイティングして集計・分析

BTSスコアが高い回答者をピックアップ

cf. II章

ベイジアン自白剤

医師の処方意向は、BTSスコアが高いときにあてになる

上市前の処方薬について医師に処方意向(「処方したいですか?」)を聴取しても、その回答は上市後の実際の処方とあまり関係しないことがわかっている

処方意向とともに「他の医師が処方する割合は?」と尋ね、BTSスコアを算出

BTSスコアでウェイティングして分析すると、上市後の実際の処方を上市前処方意向で予測するモデルの説明率がわずかに向上した

70

III-1. 他者についての推測

Howie, Wang, & Tsai (2011)

B. 調査結果の精度向上

BTSスコアが高い人は、質問をほんとうに理解している

デザイン教育では、デザインが守るべき「デザイン原理」を教える。

しかし、受講者がそれを真に理解したかどうかを採点するのは困難。

原理を正しく理解していても、それを現実のデザインに当てはめると、簡単な正解は存在しないから

71

III-1. 他者についての推測

Miller, Bailer, & Kirlik (2014)

C. 優れた回答者の特定

デザイン例を示し、「デザイン原理を守っているか」「他の人はどう答えると思うか」を聴取。

回答を教師が採点するかわりに、BTSスコアを算出

教師の採点よりもBTSスコアのほうが、その後のデザイン制作実習における学生のパフォーマンスと相関が高かった

72

III-1. 他者についての推測

73

III-1. 他者についての推測

ベイジアン自白剤を用いた販促効果予測 弊社開発事例

会場で紹介

74

他者についての推測

シチズン・フォーキャスティング

ベイジアン自白剤

デルファイ法

アイデア・エボリューション

選好市場

予測市場

多様な意見の集約

市場メカニズムの導入

情報集約を デザインする

アイデア市場

III-2. 多様な意見の集約

III-2. 多様な意見の集約

75

専門家の知識集約の手法として広く用いられている

日本では、科学技術政策研究所の科学技術予測が有名

(科学技術動向研究センター,2010)

デルファイ法

III-2. 多様な意見の集約

76

デルファイ法の特徴 (Rowe & Wright, 2001)

匿名性

質問紙ないしコンピュータによって回答させる。匿名性を守り、社会的圧力を最小限にする

反復

同じ質問を繰り返し聴取する

コントロールされたフィードバック

聴取と聴取のあいだに、全員の回答をフィードバック

メンバーの反応の統計的な集約

統計的な情報をフィードバックする(平均、中央値、etc.)

上記の4つの特徴以外の点では、やりかたはさまざま

参考: 古典的な方法

ラウンド1では、質問を与えず、目的を説明し「どんな質問について調べるべきか」を自由に答えさせる

これをまとめて、ラウンド2の質問紙とする。(質問例: 「技術Xが実用化される時期は?」)

ラウンド3では、ラウンド2の回答を修正させる。それが他の人の回答から外れているときは、なぜそう思うのかを尋ねる

III-2. 多様な意見の集約

77

デルファイ法が適している場面 (Rowe & Wright, 2001)

統計的な予測が不適切なため、専門家の判断が必要な場合

もしなんらかのデータに基づき統計的に予測できる問題なら、そうしたほうがよい

専門家がたくさん使えるとき

専門家がたくさんいるのなら、単に集約するよりデルファイ法のほうが良い

「専門家の合議による予測」よりはまし

実証研究がたくさんある

他の意見集約技法 (討論法、独裁者選出法、etc.) との優劣については議論がある

「たくさんの専門家の予測を単に集約する」よりはまし

反論もある

III-2. 多様な意見の集約

78

デルファイ法の展開

リアルタイム・デルファイ法

Gnatzy, Warth, von der Gracht, & Darkow (2011)

III-2. 多様な意見の集約

79

繰り返し投票 (報酬つきデルファイ法) による予測

{確率分布の推測→推測値の平均のフィードバック}を5ラウンド繰り返す

最後のラウンドの推測値平均を現実の結果と照らし合わせる

対数スコアリングルールで報酬を決定。全員に同じ報酬を渡す

参加者数が少なく現象が複雑な場面で、他の予測市場メカニズム (後述) よりも優れている

Healy, Linardi, Lowery, & Ledyard (2010)

予測成績 (低いほうが良)

III-2. 多様な意見の集約

80

弊社開発事例 (小野, 2014)

共同開発:株式会社マーシュ

アイデア・エボリューション

III-2. 多様な意見の集約

81

背景

新製品開発の初期段階 (fuzzy front end)

→ 新製品開発における、もっとも曖昧で困難な部分 (杉田, 2003)

市場機会の発見

新製品アイデアの開発

アイデアの評価

成功する新製品アイデアとは?

消費者を起点にして開発されたアイデア (Goldenberg, Lehmann, & Mazursky, 2001)

練り上げられたアイデアではなく、最初から優れたアイデア (Kornish & Ulrich, 2014)

III-2. 多様な意見の集約

82

従来の手法

行動観察・エスノグラフィ

デプス・インタビュー

共創コミュニティ

消費者定量調査によるアイデア収集

自由回答設問

Answer

Question:

有益だが…

• 高コスト

• 対象者選定が困難

• 低関与財において困難

• 多様な消費者からのアイデア収集が困難

聴取それ自体は簡単だが…

質の高いアイデアはなかなか収集できない

III-2. 多様な意見の集約

83

目的:消費者を起点にしたアイデア開発支援手法の開発

多様な消費者を対象に

低コスト、スピーディーに

アプローチ:

Web調査における集合知の創出

個人からのアイデア収集では得られない

創造的アイデアの生成を目指す

通常の自由回答聴取 アイデア・エボリューション

自由回答画面

Answer

Question:

自由回答画面1

Answer

Question:

アイデア・エボリューション画面

他の人の回答を評価

III-2. 多様な意見の集約

84

自由回答画面2

Answer

全く同じ質問に再度回答 「最初に書いてくださったアイデアのままでも、全く新しいアイデアにしていただいても結構です。」

ある参加者の聴取フロー

自由回答画面1

アイデア1

Question:

アイデア・エボリューション画面

他の人の回答を評価

III-2. 多様な意見の集約

85

自由回答画面2

アイデア2

全く同じ質問に再度回答

以降の参加者の聴取フロー

自由回答画面1

アイデア1

Question:

アイデア・エボリューション画面

他の人の回答を評価

自由回答画面2

アイデア2

全く同じ質問に再度回答

最適化アルゴリズム

一定以上の語数を持つ回答のみを提示する(無意味な回答は提示しない)

評価が高い回答(有望回答)は、提示回数を多めにする

同一の参加者に、複数の類似した回答は提示しない (入力直後に形態素解析を行い、過去回答との類似性を測定)

III-2. 多様な意見の集約

86

課題: 「こんな自販機があったらいいな」

ソフトクリームの自販機。 いろいろなテイストがあり、自分の好みの味をチョイスできる。ミックスでも良いし、いろいろな味を混ぜ込んでも良い。 最後に自販機から、自動で自分のチョイスしたフレーバーのソフトクリームが出てくる。

フルーツジュースの自販機。 色々な果物の中から自分の好きな果物を選び、自分の食べたいミックスのフルーツジュースができる。

「いいね」 18.2%

野菜サラダとかカットフルーツなど手をくわえないですぐにたべられるものがあったらいいなと思います。都会にはもうあるのかもしれませんが・・・

この人の評価 評価者数 いいね%

5 11 .18

5

11

.27

5 11 .18

アイデア1 アイデア2

「いいね」 33.3%

食中毒などの心配もあるのでカットフルーツまたは、個包装のフルーツなどならあってもいいと思います。

フルーツセットの自動販売機。それぞれに切り、皮をむいた物のセット(開ければすぐ食べれる) 最近は若者の間でフルーツ離れをしていると聞きます。 学校の帰り、通勤の帰り道などにあると買ってすぐに食べれるので便利だと思います。 食べごろのフルーツで自動販売機なので適度に冷えていていいと思うのですが。

他の人の回答

III-2. 多様な意見の集約

87

25個提示群において、有望回答の割合はアイデア1よりアイデア2 で若干高い

p<.10

III-2. 多様な意見の集約

88

25個提示群においては、有望回答が得た評価も、アイデア1よりアイデア2 で高くなる

p<.10

III-2. 多様な意見の集約

89

調査の進行に伴い、アイデア2の評価が高くなる

III-2. 多様な意見の集約

90

アイデア・エボリューションを通じて、

通常の自由記述聴取に比べ、評価の高い、優れたアイデアが生成される

参加者間相互作用に伴い、より優れたアイデアが生成される (集合知の創出)

アイデア1

アイデア2

アイデア1

アイデア2

アイデア1

アイデア2

アイデア1

アイデア2

集合知

III-2. 多様な意見の集約

91

課題: アイデア・エボリューションの心理的メカニズム

なぜアイデア2は質が高くなるのか? その心理的機序は?

仮説1. 他の参加者の、質の高いアイデアを提示されるから

仮説2. 自分の回答と異なるアイデアを提示されるから

「他の人の評価」以外の指標による検討

検証中

92

他者についての推測

シチズン・フォーキャスティング

ベイジアン自白剤

デルファイ法

アイデア・エボリューション

選好市場

予測市場

多様な意見の集約

市場メカニズムの導入

情報集約を デザインする

アイデア市場

III-3. 市場メカニズムの導入

未来の出来事によって価値が決まる仮想的な証券を取引する市場

参加者の知識を反映した動的な予測を可能にする

1998年頃から研究が急増 (Tziralis & Tatsiopoulos, 2007)

代表的な事例

選挙予測 … Iowa Electronic Market (IEM); Shuugi.in (現存しない。佐藤, 2010)

市場予測 … Hollywood Stock Exchange (HSX)

III-3. 市場メカニズムの導入

93

予測市場

94

ありし日のShuugi.in

III-3. 市場メカニズムの導入

95

Hollywood Stock Exchange

III-3. 市場メカニズムの導入

96

さまざまな予測課題で成功をおさめている

III-3. 市場メカニズムの導入

Hollywood Stock Exchangeによる映画の興収予測 (Wolfers & Zitzewitz, 2004)

97

各参加者の知識を反映した動的な予測が可能

III-3. 市場メカニズムの導入

Tradesports.comによるサダム・フセイン失脚予測 (Wolfers & Zitzewitz, 2004)

98

予測に用いる入力情報を事前に指定する必要がない

情報を収集し取引に生かそうとするモチベーションも生じる

III-3. 市場メカニズムの導入

「カーネギーメロン大学のコンピュータ・センターが新しいビルへの移転を許可されるのはいつ」 証券市場 (Othman&Sandholm,2013)

Elieさん(仮名、コンピュータサイエンス学部博士課程在籍) 工事現場に通いつめて情報収集 建築監理者の携帯の番号まで入手 移転許可が公式発表される当日朝にいち早く情報を掴み 「今日移転が許可される」株を買いまくった → 取引成績は100位付近から15位に急上昇

III-3. 市場メカニズムの導入

99

証券の種類 (Luckner, et al., 2012)

例 ペイオフ 予測対象

勝者総取り証券 「製品Xの来期の売上はYの売上を上回る」

Xの売上がYの売上を上回ったら1000円を配当。でなければ0円

出来事が生じる確率

線形証券 「製品Xの来期の売上シェア」

シェア1ポイントごとに100円を配当

結果の平均

スプレッド証券 「製品Xの来期の売上は今季をy%以上上回る」

証券価格は1000円に固定。yの値が変動する。来期の売上が今季をy%以上回っていたら2000円を配当、そうでなかったら0円

結果の中央値

III-3. 市場メカニズムの導入

100

取引メカニズム (Luckner, et al., 2012; 水山, 2014)

ダブル・オークション

売り手・買い手の双方が注文を入札。東京証券取引所に近い方式

代表例:連続ダブル・オークション

提示価格が合致したら直ちに取引が成立する(東証でいうザラバ)

大規模な予測市場において、有用性が繰り返し確認されている (例, IEM)

参加者が少ないとき、流動性が不足し、個々の注文の影響力が大きくなってしまう

証券

金銭

マッチングソフト

III-3. 市場メカニズムの導入

101

マーケット・メーカ

参加者に対してマーケット・メーカが価格を提示。取引の相手となる

NASDAQに近い方式

マーケット・メーカ

証券

金銭

証券

金銭

III-3. 市場メカニズムの導入

102

自動マーケット・メーカの代表的アルゴリズム (水山,2014)

対数マーケット・スコアリング・ルール (LMSR; Hanson,2007)

• ペイオフ(配当)は固定。証券価格は発行枚数により決定される(多いと高くなる)

• 証券{1, … , 𝑛} の発行枚数を𝑞 = {𝑞1, … , 𝑞𝑛}として、マーケット・メーカからみたコスト関数を 下式で定義する

𝐶 𝑞 = 𝑏 log exp𝑞𝑖𝑏

𝑛

𝑖

• 参加者の注文Δ𝑞 = {Δ𝑞1, … , Δ𝑞𝑛}に対し、価格𝐶 𝑞 + Δ𝑞 − 𝐶(𝑞)を設定

• 参加者から見ると、取引を通じた主観確率の表明が、対数スコアリング・ルールによって評価されていることに相当する

• パリ・ミュチュエル方式

• 競馬に近い。証券価格は定数、ペイオフは販売枚数の逆数に比例 (多いと低くなる)

• 予測市場向けの改定手法が提案されている

III-3. 市場メカニズムの導入

103

取引に使用する通貨

多くの場合は架空通貨を使用。現実の金銭を用いた例もある(例, IEM)

どちらでもたいして変わらないという意見が多い (Wolfers & Zitzewitz, 2004)

インセンティブ

主な決定方式 (Luckner, et al., 2012)

• 固定インセンティブ

• 取引成績の順位に応じたインセンティブ

• 取引成績に線形に関連したインセンティブ

III-3. 市場メカニズムの導入

104

初期の予測市場の特徴 (Spann & Skiera, 2003)

長期的

市場終了後、ペイオフが現実の出来事 (例、選挙結果、映画の興収成績)に照らして決まる

(→ 消費者調査のための方法としては、適さないことが多い)

予測市場の「第二世代」 (Slamka, Jank, & Skiera, 2012)

ペイオフを現実の出来事で決めるのではない市場

コンセプトを評価する市場

アイデアを生成・評価する市場

選好市場

アイデア市場

III-3. 市場メカニズムの導入

105

STOC : Securities Trading of Concepts

1. 株とお金のポートフォリオを受け取る

株は仮想的なもの、製品コンセプトに対応している

2. 製品コンセプトを提示される

3. 株の取引市場に参加する

非常に短期間 (1時間程度)

4. インセンティブを受け取る

取引の成績に応じたインセンティブ

現実の出来事とは無関係

選好市場

Dahan, Kim, Poggio, & Chan(2011)

III-3. 市場メカニズムの導入

106

株価は何を表すか?

当該コンセプトに対する対象者自身の評価 & ほかの人の選好についての評価

株の均衡価格はすべての対象者の選好を反映する

架空店舗における売上を正確に予測

III-3. 市場メカニズムの導入

107

STOCの衝撃

予測市場という観点から見て...

予測対象である「現実の出来事」が存在しない

たった一日で終了する

小人数なのにダブル・オークション

消費者調査手法という観点からみて...

自分の利益につながる行動を求めている

「自然な設問が一番だ」というドグマから脱している

コミュニティ・リサーチにぴったり

III-3. 市場メカニズムの導入

108

「自然な設問が一番だ」ドグマ

回答時に期待される認知プロセス

消費者調査の関心の対象

低次プロセス (自動的、無意識的、認知資源を消費しない)

高次プロセス (制御的、意識的、認知

資源を消費する)

消費者の長期記憶 (知識・態度)

消費者の行動 (購買)

STOC

ブランド名再認

選択型

コンジョイント

ブランド

イメージ評価

購入時重視点評価

III-3. 市場メカニズムの導入

109

... というわけで、試してみました

コンセプト・マーケット 弊社開発事例

会場で紹介

III-3. 市場メカニズムの導入

110

大失敗

状況がとても理解しにくい

「この商品の株券?? どういうこと?」

課題がとても難しい

「指値? 成行? なにそれ?」

「株価が選好を反映している」ことを確かめる方法に乏しい

既存の調査手法と相関が高いことが証拠であるならば、最初から既存の手法を使えばよい

III-3. 市場メカニズムの導入

111

しかし…

参加者は他人の選好について真剣に考えてくれる

「わたしは好きじゃないけど、友達にこういうの好きそうな人が何人かいる」

参加者はコンセプトについて豊かな意見を語ることができる

正確にいえば、参加者はコンセプトの売買に際して、語るに足る意見を用意するのでは?

cf. 意思決定の「理由にもとづく選択」説 (Shafir, Simonson & Tversky, 1993)

製品開発の初期段階を、消費者の豊かな定量・定性情報で支援できるのでは?

コンセプト・マーケットII (開発中)

III-3. 市場メカニズムの導入

112

「他の人々の評価」を取引する市場

他人の選好について考える

豊かな意見を語る

「消費者」 コンセプトを正直かつ真剣に評価する、多様で多数の人々 (架空の存在でもよい)

「評価者」 「消費者」の集団評価の先物証券を取引する。 「消費者」から得られる“正解”によってペイオフが決まる

「説得者」 「評価者」を特定の評価に導くべく説得する。 「評価者」の態度変容に応じてインセンティブを与える

コンセプト・マーケットII

III-3. 市場メカニズムの導入

113

アイデア評価だけでなく、アイデア生成を目的に含めた市場

参加者は証券を取引するだけでなく、証券を市場に追加できる

ペイオフは終値、VWAP(出来高加重平均価格)、外的評価などで決定

Buckley & McDonagh (2014)

アイデア市場の研究20本を収集しレビュー

事例報告は、ビジネス事例 9 本、学術研究 1本 (製品開発)

LaComb, Barnett, Pan (2007)

GE社内で開催されたアイデア市場

技術開発のアイデアを募集し、証券として取引

良好な評価を得た証券(アイデア)は、提案者がリーダーとなって実際に開発へと進んだ

アイデア市場

III-3. 市場メカニズムの導入

114

Lacomb, Barnett, Pan (2007) Soukhoroukova,Spann,&Skiera(2011)

対象者 GEのある部門のメンバー あるハイテクB2B企業の全従業員

アイデア GEの技術を生かした新製品アイデア 会社の新技術が将来の収入に占める割合 ある製品カテゴリにおける新製品アイデア 創造的なビジネスアイデア

収集 期間 市場開設期間 市場開設から23日間

作成者 個人、匿名 個人

インセンティブ

株の配当額が一位になったら開発資金5万ドル

賞品;初期資金の割増

フィルタリング・改善

フィルタリング手続き

なし。上場前にIPO株を100株、50ドルで発売

投稿から7日間、IPO株を5ポンドで発売。売上が閾値を下回ったら廃止。IPO株は無価値になる

改善手続き

市場開設期間中、ブログとランチパーティで市場参加者と開発者がディスカッション

(なし)

銘柄数 結果として68個 結果として100個

評価 取引メカニズム

ダブルオークション。空売り可 ダブルオークション。空売り不可

期間 23日間、予告せず突然終了 36日間

株価上限 99ドル なし

初期資金 10000ドル、参加期間中毎週1000ドル 10000ポンド

ペイオフ 最終5日間の売買高加重平均株価 専門家委員会の評価により決定

報酬 ポートフォリオ上位2名にiPod、など ポートフォリオ上位10名に実際の賞金

アイデア市場の代表的事例

115

集合知による意思決定支援:4象限モデル (水山, 2010)

知識の集約 思考の集約

評価モデルの充実

解空間の拡張

狭義の予測市場

私たちが 目指す方向

III. まとめ

III. まとめ

116

情報集約のデザインによって、調査の質を向上させ、集合知を創出する試み

他者についての推測

多様な意見の集約

市場メカニズムの導入

消費者理解

引用文献 (III章)

117

Chen, Y. & Pennock, D.M. (2010) Designing Markets for Prediction. AI Magazine, 31(4).

Dahan, E., Kim, A.J., Lo, A.W., Poggio, T., & Chan, N. (2011) Securities Trading of Concepts (STOC). Journal of

Marketing Research, 48(3), 497-517.

Goldenberg, J., Lehmann, D.R., & Mazursky, D. (2001) The idea itself and the curcumstances of its emergence

as predictors of new product success. Management Science, 47(1), 69-84.

Graefe, A. (2014) Accuracy of vote expectation surveys in forecasting elections. Public Opinion Quarterly, 78,

204-232.

Hanson, R. (2007) Logarithmic Market Scoring Rules for Modular Combinatorial Information Aggregation.

Journal of Prediction Markets. 1, 3-15.

Healy, P. J., Linardi, S., Lowery, J. R. & Ledyard, J. (2010) Prediction markets: Alternative mechanisms for

complex environments with few traders, Management Science, 56, 1977-1996.

Howie, P.J., Wang, Y., & Tsai, J. (2011) Predicting new product adoption using Bayesian truth serum. Journal of

Medical Marketing, 11, 6-16.

Kornish, L.J. & Ulrich, K.T. (2014) The importance of the raw idea in innovation: Testing the Sow's Ear

hypothesis. Journal of Marketing Research, 51(1), 14-26.

LaComb, C.A., Barnett, J.A., & Pan, Q. (2007) The Imagination market., Information System Frontier, 9, 245-256.

Lewis-Beck, M.S. & Skalaban, A. (1989) Citizen Forecasting: Can Voters See into the Future? British Journal of

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Luckner, S., et al. (2012) “Prediction Markets: Fundamentals, Designs, and Applictions.” Gabler.

Miller, S.R., Brailey, B.P., & Kirlik, A. (2014) Exploring the utility of Bayesian truth serum for assessing design

knowledge. Human–Computer Interaction. 29(5-6), 487-515.

引用文献 (III章)

118

Othman, A. & Sandholm, T. (2013) The Gates Hillman Prediction Market. Review of Economic Design, 17, 95-

128.

Rowe, G., & Wright, G. (2001) Expert opinions in forecasting: The role of the Delphi technique. In Armstrong,

J.S. (ed.) “Principles of Forecasting; A Handbook for Researcher and Practitioners.” Kluwer.

Spann, M. & Skiera, B. (2003) Internet-based virtural stock markets for business forecasting. Management

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Shafir, E., Simonson, I., & Tversky, A. (1993) Reason-based choice. Cognition, 49, 11-36.

Slamka, C., Jank, W., Skiera, B. (2012) Second-generation Prediction Markets for Information Aggregation: A

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Soukhoroukova, A., Spann, M., & Skiera, B. (2011) Sourcing, Filtering, and Evaluating New Product Ideas: An

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Tziralis, G., & Tatsiopoulos, I. (2007) Prediction markets: An extended literature review. Journal of Prediction

Markets, 1, 75-91.

Wolfers, J., & Zitzewitz, E. (2004) Prediction Markets. Journal of Economic Perspectives. 18(2), 107-126.

科学技術動向センター(2010) 将来社会を支える科学技術の予測調査 第9回デルファイ調査. NISTEP REPORT

140. 文部科学省科学技術政策研究所.

水山元 (2010) 予測市場による経営の意思決定支援に向けて. 経営システム, 20(5), 243-248.

水山元 (2014) 予測市場とその周辺. 人工知能, 29(1), 34-40.

小野滋 (2014) Web調査による集合知創出とアイデア開発支援. 日本行動計量学会第42回大会, 2014.09.

佐藤哲也 (2010) 選挙と対象とした予測市場. 経営システム, 20(5), 239-242.

杉田善弘 (2003) 新製品開発のマーケティング. 学習院大学経済論集, 40(3), 212-224.

119

IV. 回答状況をデザインする

IV. 回答状況をデザインする

120

私たちは認知課題の解決のために状況と相互作用する

例) “epistemic action”

目標に到達するための直接的行為ではなく、状況を操作して認識を助ける行為

テトリスのプレイヤーは、ブロックを心的に回転・移動する代わりに、実際にブロックを移動・回転し、課題解決を助ける (Kirsh & Maglio, 1994)

IV. 回答状況をデザインする

121

調査においても、対象者は回答に際して状況と相互作用している。

状況との相互作用をデザインしよう

消費者理解

122

身体に訊くブランド選好

リサーチ・イン・アクション 消費の現場に埋め込む

回答を身体化する

IV. 回答状況をデザインする

心的処理を方向づける

解釈レベルの操作

メンタル・シミュレーション

Auditorスコア 回答状況を

デザインする

視 点 アプローチ 手 法

123

IV-1. 心的処理を方向付ける

身体に訊くブランド選好

リサーチ・イン・アクション 消費の現場に埋め込む

回答を身体化する

心的処理を方向づける

解釈レベルの操作

メンタル・シミュレーション

Auditorスコア 回答状況を

デザインする

124

解釈レベルとは

対象との心理的距離によって生じる心的表象・処理の性質

心理的距離が(遠い/近い) → 解釈レベルが(高次/低次)

消費者行動研究においてさかんに用いられている概念

調査が対象としている消費者行動(例, 購買)と、調査回答における対象者の解釈レベルとのズレが、調査結果を不適切なものにしている可能性がある (竹内・星野,

2014)

IV-1. 心的処理を方向付ける

解釈レベルの操作

高次の解釈レベル 低次の解釈レベル

抽象的 具体的

単純 複雑

構造的、一貫的 非構造的、非一貫的

脱文脈的 文脈依存的

本質的 副次的

上位的 下位的

目標関連的 目標非関連的

Whyの視点 Howの視点

望ましさ 実現可能性

解釈レベルによる対象の捉え方の違い(外川・八島, 2014)

125

心理的距離が遠い=解釈レベルが高次だと、対象を自分にとって望ましい自己概念との関連で捉えるようになる

IV-1. 心的処理を方向付ける

ヒラリー・クリントンが、自分がそうでありたい特徴を持っていると思う程度

2年後の大統領選を想定 →解釈レベルが高次

大統領選が いま行われると想定 →解釈レベルが低次

ヒラリー・クリントンはよい大統領になると思うか

Freitas, Langsam, Clark, & Moeller (2008)

低 高

IV-1. 心的処理を方向付ける

126

新製品評価・広告評価における方向づけ手続きとして広く用いられている

心理的距離・解釈レベルの操作として捉えられることも多い

革新的新製品に対して、消費者の評価は不確実性が高い

メンタル・シミュレーション → 製品評価 → 実際に家庭で使用 → 再評価

メンタル・シミュレーション: 「現使用製品からのスイッチのコスト」

「それを使うことでしなくてよくなることはあるか」

「製品のパフォーマンス」など9項目。それぞれ1分づつ

シミュレーションを行うと、試用前評価と使用後評価との

相関が向上する

シミュレーション群 +0.72, 統制群 +0.61

メンタル・シミュレーション

Hoeffler (2003)

実験で用いられた革新的新製品(P&Gの”dryel”) ご家庭でドライクリーニングができるキットだそうです

IV-1. 心的処理を方向付ける

127

「製品使用場面がイメージしにくい」という知覚が評価を下げる

新製品について、使用場面を{1個, 8個}想像させたのち、製品評価

革新的新製品の場合には、8個想像させたほうが評価が下がる

Zhao, Hoeffler, & Dahl (2012)

漸進的新製品 (Thinkbad)

革新的新製品 (Sony AudioPC)

IV-1. 心的処理を方向付ける

128

調査参加者の心的処理を方向付け、さらにスコアリングを行う

想定される用途:製品・コンセプトのアセスメント;ニーズ調査

発想

消費者調査における質問の多くは、なんらかの仮想状況を想像することを要求している

購入意向 = もしそれが売っていたら、自分はそれを買いたいと思うか

製品評価 = もしそれを使用したら、どのような経験が得られるか

従って、質問に適切に回答するためには次の2つが必要である:

“回答力” 回答において求められる知識と推論能力

“自分ゴト化” 仮想状況について適切なレベルの心的処理を行うこと

自分ゴト化を、事前課題で促進

回答力を、事前課題でスコアリング

Auditorスコア (開発中)

妥当性の向上

会場で紹介

IV-1. 心的処理を方向付ける

129

弊社資料より

IV-1. 心的処理を方向付ける

130

弊社資料より

会場で紹介

会場で紹介

IV-1. 心的処理を方向付ける

131

弊社資料より

この課題の設計が鍵 ... ただいま試行錯誤中

132

回答方略を方向付ける メンタル・シミュレーション

解釈レベルの操作

Auditorスコア

身体に訊くブランド選好

リサーチ・イン・アクション 消費の現場に埋め込む

回答を身体化する

回答状況を デザインする

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

133

弊社開発事例 リサーチ・イン・アクション

MOVIE

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

134

3次元センサーとジェスチャー認識技術を組み合わせた、

ポータブルな調査デバイスを開発

任意の空間 をタッチパネルに変えることができる

消費の現場に深く埋め込まれたリサーチを実現

回答者にとっては、必ずしもリサーチではない

(例, ビールのお勧め銘柄を教えてくれるエンターテインメント)

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

135

通常の定量調査 リサーチ・イン・アクション

「調査」という状況

どちらのビールが好きですか?

「パブ」という状況

どっちが好き?

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

136

眼鏡店を想定した開発事例

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

137

赤外線センサーによる骨格追跡

IV-2. 回答を消費の現場に埋め込む

138

観察を通じた、消費者の行動スキーマの抽出が鍵となる

例) 眼鏡店における、眼鏡の試着の際の定型的動作とは?

人々を眺める弊社メンバー

139

回答方略を方向付ける

メンタル・シミュレーション

解釈レベルの操作

Auditorスコア

身体に訊くブランド選好

リサーチ・イン・アクション 消費の現場に埋め込む

回答を身体化する

回答状況を デザインする

IV-3. 回答を身体化する

IV-3. 回答を身体化する

140

身体化された認知 embodied cognition

人間の認識は「頭のなか」においてではなく、むしろ身体に埋め込まれた(embodied)かたちで働いている

90年代の認知科学において注目を集めた概念

近年では消費者行動研究に大きな影響を与えている

「身体化された認知」アプローチの 主要な主張 (Shapiro, 2011)

消費者行動における「身体化された認知」研究のタイプ(小野, 印刷中)

概念-運動の連合

知覚運動シミュレーション

身体基盤メタファ

概念化仮説

人間の概念は身体経験に制約されている

置換仮説

知覚運動システムに基づき、心的表象なしで認識が成立している

構成仮説

認識は身体と外界からなる統合的システムの働きである

IV-3. 回答を身体化する

141

利き腕の上腕筋の屈伸は、発達の過程を通じて、獲得-回避と連合している

腕を曲げていると、現時点での獲得に偏った近視眼的選択を行ってしまう

概念-運動の連合

Van den Bergh, Schmitt, & Warlop (2011)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

映画のチケット vs. 書店のクーポン

あとで高額を支払う vs いま低額を支払う

魅力的な社員候補 vs 有能な社員候補

眺望のよいアパート vs 職場に近いアパート

週末にキャンプ vs 週末に勉強

腕を曲げ続ける

腕を伸ばし続ける

前者の選択肢の選択率

回答と並行して与えられた課題

IV-3. 回答を身体化する

142

• ペンを見ながら首を縦に振ると、そのペンがほしくなる (Tom, et al., 1991)

• 日用品を高いところから撮った写真をみると、知覚的解釈が大局的になり、「組み立て不要ですぐに使える普通の机」より「組み立て作業は必要だが高機能な机」を選びやすくなる (Aggarwal & Zhao, forthcoming)

• 上の棚から選ぶよりも下の棚から選ぶ方が、もっとも好きな商品を選びやすい。見下ろす動作は近くを見ることと結びついており、距離の近さは具体的な解釈と結びついているためである (van Kerckhove, Geuens, & Vermeir, in press)

概念-運動の連合

IV-3. 回答を身体化する

143

人はすぐに使えるように見えるものを好む (運動流暢性効果)

IV-3. 回答を身体化する

144

• 人は製品をみるたび、その製品を使用する場面を心的にシミュレーションする

すなわち、運動流暢性効果はオンライン的に生じている

• このシミュレーションには、実際の製品使用の場合と同じく、腕の運動を支配する知覚運動システムが関与している

Ealen, Dewitte, & Warlop (2013)

知覚運動シミュレーション

実験刺激

柄が右側の商品が選ばれた割合

左手も使う右利き 極端な右利き

選択回答のボタンを 右手で押した場合

左手で押した場合

IV-3. 回答を身体化する

145

• 重いクリップボードを持っていると、与えられた課題が重要なものに感じられ、思考が精緻化される (Jostmann, Lakens, & Schubert, 2009)

• 固い椅子に座っていると、対人交渉においてかたくなになる(Ackerman, Nocera,

& Bargh, 2010)

• 拳を握りしめていると、意思が固くなり食品の誘惑に打ち勝ちやすくなる (Hung

& Labroo, 2011)

• 椅子を後ろに倒し身体のバランスを保ちながら商品を選択させると、バランスのとれた商品を選びやすくなる(Larson & Billeter, 2013)

身体基盤メタファ

IV-3. 回答を身体化する

146

弊社開発事例 身体に訊くブランド選好

MOVIE

IV-3. 回答を身体化する

147

接近 – 回避課題 (Approach-Avoidance Task; Chen & Bargh, 1999) に基づく

IAT (潜在連合テスト)などと並び、潜在的認知指標のひとつとして知られている

(Gawronski & De Houwer, 2014)

課題

ブランドロゴを提示し、知っているかどうかをなるべく速く判断させる

反応は腕の動作 (伸ばす、曲げる)でおこなう。3次元センサーで測定

特徴

既知のブランドに対する潜在的態度が、動作の方向と干渉し、動作開始までの

反応時間に反映される (はず)

対象者にとっては、調査というよりもゲーム

腕を伸ばす動作 腕を曲げる動作

ポジティブな態度 干渉 → 反応時間長 反応時間短

ネガティブな態度 反応時間短 干渉 → 反応時間長

148

回答状況のデザインは、なにを引き起こしているのか?

回答方略を方向付ける

消費の現場に埋め込む

回答を身体化する 身体との相互作用を

デザイン

環境全体を デザイン

回答方略・認知資源を デザイン

望ましい性質を持った回答 (例, 熟慮的回答)

ecological validity

潜在的態度・認知を あきらかに

IV. まとめ

IV. まとめ

149

回答状況のデザインを通じて、消費者の未知の姿を探る試み

回答方略を方向づける

調査を消費の現場に埋め込む

回答を身体化する

消費者理解

引用文献 (IV章)

150

Ackerman, J.M., Nocera, C.C., & Bargh, J.A. (2010) Incidental Haptic Sensations Influence Social Judgments and

Decisions. Science, 328, 1712-1715.

Aggarwal, P., & Zhao, M. (forthcoming) Seeing the Big Picture: The Effect of Height on the Level of Construal.

Journal of Marketing Research.

Chen, M. & Bargh, J. A. (1999). Nonconscious Approach and Avoidance Behavioral Consequences of the

Automatic Evaluation Effect. Personality and Social Psychology Bulletin, 25, 215-224.

Ealen, J., Dewitte, S., & Warlop, L. (2013) Situated Embodied Cognition: Monitoring Orientation Cues Affects

Product Evaluation and Choice. Journal of Consumer Psychology, 23(4), 424-433.

Freitas, A.L., Langsam, K.L., Clark, S.L. & Moeller, S.J. (2008) Seeing Oneself in One’s Choices: Construal Level

and Self-pertinence of Electoral and Consumer Decisions. Journal of Experimental Social Psychology, 44, 1174

– 1179.

Gawronski, B. & De Houwer, J. (2014) Implicit Measures in Social and Personality Psychology. In H. T. Reis, & C.

M. Judd (Eds.), “Handbook of research methods in social and personality psychology” (2nd edition). New York,

NY: Cambridge University Press.

Hoeffler, S. (2003) Measuring Preferences for Really New Products. Journal of Marketing Research, 40(4), 406-

420.

Hung, I.W. & Labroo, A. (2011) From Firm Muscles to Firm Willpower: Understanding the Role of Embodied

Cognition in Self-Regulation. Journal of Consumer Research, 37(6), 1046-1064.

Jostmann, N.B., Lakens, D., & Schubert, T.W. (2009) Weight as an Embodiment of Importance. Psychological

Science, 20(9), 1169-1174.

Kirsh, D. & Maglio, P. (1994) On Distinguishing Epistemic from Pragmatic Action. Cognitive Science, 18, 513-

549.

引用文献 (IV章)

151

Larson, J.S. & Billeter, D.M. (2013) Consumer Behavior in “Equilibrium”: How Experiencing Physical Balance

Increases Compromise Choice. Journal of Marketing Research, 50(4), 535-547.

Van den Bergh, B., Schmitt, J., & Warlop, L. (2011) Embodied Myopia. Journal of Marketing Research, 48(6),

1033-1044.

van Kerckhove, A., Geuens, M., & Vermeir, I. (in press) The Floor is Nearer than the Sky: How Looking Up or

Down Affects Construal Level. Journal of Consumer Research, 2015.

Shapiro, L. (2011) “Embodied Cognition.” NY: Routledge Press.

Tom, G., Pettersen, P., Lau, T., Burton, T., & Cook, J. (1991) The Role of Overt Head Movement in the Formation

of Affect. Basic and Applied Social Psychology, 12(3), 281-289.

Zhao, M., Hoeffler, S., & Dahl, D.W. (2012) Imagination Difficulty and New Product Evaluation. Journal of

Product Innovation Management, 29, 76-90.

小野滋 (印刷中) 身体に埋め込まれた認識: マーケティング・リサーチへのインパクト. マーケティング・リサーチャー, 126.

外川拓、八島明朗 (2014) 解釈レベル理論を用いた消費者行動研究の系譜と課題. 消費者行動研究, 20(2), 65-

92.

竹内真登、星野崇宏 (2014) マーケティングリサーチの改善に向けた解釈レベルの新操作法の検討. 第49回消費者行動研究コンファレンス報告要旨集, 66-69.

152

V.リサーチという経験のデザイン

相互作用を デザインする

情報集約を デザインする

回答状況を デザインする

rXD

V. リサーチという経験のデザイン

153

調査手法開発を通じて浮かび上がった概念

リサーチという 経験のデザイン

小野 (2014)

154

rXDとはなにか?

rXD はなにをデザインしているのか?

rXD とリサーチの科学

V. リサーチという経験のデザイン

155

rXDとはなにか?

rXD はなにをデザインしているのか?

rXD とリサーチの科学

V-1. rXDとはなにか?

156

Experience

マーケティング領域

経験, 経験価値

ユーザインタフェイス領域

への関心が高まる 90年代後半から

V-1. rXDとはなにか?

モノ ユーザ 相互作用

Experience

Aesthetics 感覚

Emotion 感情

Meaning モノへの意味の付与

157

経験の3つの側面 (Hekkert, 2006)

V-1. rXDとはなにか?

Experience

XD : eXperience Design

「経験をデザインする」という考え方

モノ ユーザ

158

V-1. rXDとはなにか?

ケリー & リットマン(2002)

159

V-1. rXDとはなにか?

http://www.thefuntheory.com

160

V-1. rXDとはなにか?

モノ ユーザ

Experience

XD 経験のデザイン

リサーチ 参加者

Experience

rXD リサーチという 経験のデザイン

161

V-1. rXDとはなにか?

162

リサーチという 経験のデザイン

リサーチの デザイン

階段のデザイン

階段という経験のデザイン

階段 階段 ユーザ

リサーチ 参加者 リサーチ

rXD

V-1. rXDとはなにか?

163

rXDとはなにか?

rXD はなにをデザインしているのか?

rXD とリサーチの科学

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

164

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

rXD ≠ 「楽しい調査」のデザイン

165

例1.

リサーチ 参加者

rXD

「いいかげんに答えると、損をする」 デザイン

マーケティング意思決定

消費者の価格知覚を正確に把握

Experience

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

インセンティブ整合的コンジョイント

166

例2.

リサーチ 参加者

rXD

「私の回答を他の人が読む」 デザイン

マーケティング意思決定

豊かな情報

Experience

アイデア・バルーン

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

167

例3.

リサーチ 参加者

rXD

「他の人の回答を読む」 デザイン

マーケティング意思決定

集合知の生成

Experience

アイデア・エボリューション

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

168

例4.

リサーチ 参加者

rXD

コンセプトの評価で利益を追求する というデザイン

マーケティング意思決定

集合知の生成

Experience

コンセプト・マーケット

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

169

例5.

リサーチ 参加者

rXD

消費の現場に埋め込まれた判断

マーケティング意思決定

真の消費行動を反映した 消費者選好

Experience

リサーチ・イン・アクション

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

170

リサーチという経験の意味のデザインが、

豊かなインプリケーションを生む

rXD

Ex

pe

rie

nce

意味

インセンティブ整合 コンジョイント

リサーチ・イン・ アクション

より豊かなインプリケーション

おいしいビールを 薦めてくれた!

感覚

感情

正確な回答が 私の利益になる

消費の現場での 自然な判断

楽しい わくわく感

コンセプト・ マーケット

損した! 得した!

回答ではない、取引だ

スリル 焦り・苦痛

アイデア・バルーン/ エボリューション

楽しい

他の人の回答を読む/読まれる

面白かった またやってみたい

V-2. rXDはなにをデザインしているのか?

171

rXDとはなにか?

rXD はなにをデザインしているのか?

rXD とリサーチの科学

V-3. rXDとリサーチの科学

172

階段のデザイン

階段という経験のデザイン

階段 階段 ユーザ

V-3. rXDとリサーチの科学

西宮市建築基準法取扱基準 http://ga.at.webry.info/201112/article_7.html

「階段の科学」は 依然として重要!

173

V-3. rXDとリサーチの科学

リサーチという 経験のデザイン

リサーチの デザイン

リサーチ 参加者 リサーチ

リサーチの科学

CASM 代表例:

174

CASMアプローチ

Cognitive Aspects of Survey Methodology

80~90年代、米の調査法研究者たちによって提唱されたアプローチ

回答行動の背後にある認知過程の分析を通じて、調査の改善を目指す

(例, Sirken, et al. 1999)

主な焦点は調査票の改善 にあった ... 「階段の科学」に相当

V-3. rXDとリサーチの科学

質問の意味の把握

関連する情報を記憶から検索

判断・評価

反応

Tourangeauの4段階モデル (Willis, 2005)

調査票の認知インタビュー

V-3. rXDとリサーチの科学

175

rXDのための方法論とは?

リサーチという 経験のデザイン

リサーチの デザイン

リサーチ 参加者 リサーチ

CASM

相互作用の デザイン 情報集約の

デザイン

回答状況の デザイン

???

今日も模索する弊社メンバー

まとめ:リサーチの未来と rXD

176

rXD

消費者調査の価値を拡張

リサーチという経験のデザイン

引用文献 (V章)

177

Hekkert, P. (2006) Design aesthetics: Principles of pleasure in design. Psychology Science, 48(2), 157-172.

Sirken, M.G., et al. (1999) “Cognition and Survey Research.” Wiley.

Willis, G. B. (2005) “Cognitive Interviewing: A tool for Improving Questionnaire Design.” Sage.

ケリー, T. & リットマン, J. (2002) 「発想する会社!」, 早川書房. (原著2001)

小野滋(2014) リサーチという経験のデザイン. 朝野煕彦(編)「ビッグデータの使い方・活かし方―マーケティングにおける活用事例」, 東京図書.

ご清聴ありがとうございました