規格検査や規制のための分析と データの質に関する用語 ·...

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規格検査や規制のための分析と データの質に関する用語 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 食品分析研究領域長 安井明美 (2007.6.1)

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規格検査や規制のための分析とデータの質に関する用語

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構

食品総合研究所 食品分析研究領域長

安井明美

(2007.6.1)

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食品分析値の信頼性確保を取り巻く状況

コーデックス委員会の勧告CAC/GL27-1997:食品の輸出入の規制に係わる試験室の条件CAC/GL28-1995, Rev.1-1997: 食品規制に係わる試験室の管理、推奨事項

CIPM、CCQM(国際度量衡委員会、物質量諮問委員会):食品分析における同等性とトレーサビリティに関するワークショップ(2003.11)、食品分析の参照分析システムに関するフォーカスグループ会議(2004.9)厚生労働省の「食品衛生検査施設等における検査等の業務の管理に実施について」(H 9.4.1,衛食117号)日本分析化学会による食品の技能試験の実施試験所認定:食品成分分析関係で、約20カ所

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食品の輸出入の規制に係わる試験室の条件

ISO/IEC17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)に適合していること

適切な Proficiency testing に参加していること

妥当性が確認された方法を用いていること

内部(品)質管理を行っていること

(CAC/GL27-1997)

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規格検査・規制分析において、分析値が用いられる目的は?

Survey:問題の程度を確定するために、市場を調査

Monitor:なんらかの矯正的措置をとるべきかを決めるために、傾向を監視

経済上あるいは法律上の命令遵守( Compliance)を決めるため

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目的による分析性能特性の優先度(実際上からは)

Survey:多くの試料を分析するため、迅速な方法を必要とする。

Monitor:同じ母集団からの繰返しのサンプリングが重要である。

Compliance:実用性は重要であるが、信頼性が優先される。

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試験室間再現性が最重要

規制の分野では、試験室間の再現性が最も重要である。かたよりは許容される。かたよりが一定であれば、補正係数が用いられるが、変動する場合は、室間再現性の要因となる。

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分析法の特性

信頼性(reliability)

適用性(applicability)

実用性(practicability)

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適用性と実用性

適用性

広範囲な種類の試料に適用できる

実用性

経費効率、迅速性、訓練に要する時間、分析者の安全性/快適性

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信頼性を構成する性能特性

選択性

検量線と直線性

真度

回収率

精度

適用範囲

検出限界

定量限界

感度

頑健性(堅牢性)

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分析特性の相互関係信頼性それとも実用性

信頼性と実用性は、一般に逆の関係があり、信頼性を優先させると実用性は落ちてくるし、実用性を優先させると信頼性が落ちてくる。分析する目的に応じて、どちらを優先させて方法を選択するかを決定する。Complianceであれば、信頼性が重要であり、Monitor等であれば、実用性が必要である。

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精確さ (accuracy)

個々の測定結果と採択された参照値との一致の程度。

(JIS Z 8402-1:1999, ISO 5725-1:1994)

一連の測定結果では、真度と精度を総合的に表したもの。

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採択された参照値(accepted reference value)

次のようにして得られた、比較のために容認された標準として役立つ値

1. 科学的原理に基づく理論値又は確定値

2. ある国家、又は国際機関の実験研究に基づく合意値、又は認証値

3. 科学又は技術集団の主催する共同実験研究に基づく合意値、又は認証値

4. 上記のいずれにも拠ることができないときは、その測定値の母集団の平均値

(JIS Z 8402-1:1999)

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真度 (trueness)

十分多数の測定結果から得られた平均値(測定結果の期待値)と、採択された参照値との一致の程度。

(JIS Z 8402-1:1999)

ふつう真度は、かたより(bias)によって表される。

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精度 (precision)定められた条件の下で繰り返された独立な測定結果の間の一致の程度。(JIS Z 8402-1:1999)

併行精度、繰返し精度(repeatability)中間精度(intermediate precision)

室間再現精度(reproducibility)

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分析値の分布と真度、精度

真度 良 良 不良 不良精度 良 不良 良 不良

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相対標準偏差(Relative Standard Deviation: RSD)とは

(標準偏差/平均値)×100

標準偏差=)1n(

2)x2x(2)x1x(

−++− K n・・・・

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併行精度、繰返し精度(repeatability)

併行条件による測定結果の精度。

併行条件:同一と見なせるような測定試料について、同じ方法を用い、同じ試験室で、同じオペレーターが、同じ装置を用いて、短時間のうちに独立な測定結果を得る測定の条件。

(JIS Z 8402-1:1999)

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室間再現精度(reproducibility)

再現条件による測定結果の精度。

室間再現条件:同一と見なせるような測定試料について、同じ方法を用い、異なる試験室で、異なるオペレーターが、異なる装置を用いて、独立な測定結果を得る測定の条件。

(JIS Z 8402-1:1999)

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Horwitz のトランペット

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

50

1 10^-1 10^-3 10^-6 10^-9

濃度(質量分率)

相対

標準

偏差

(室間

)%

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Horwitz の式

RSDR(%) =

RSDR(%)は、室間の相対標準偏差を表し、C は質量分率を表す。質量分率 1 は普通用いている単位で100%、0.01ならば1%である。濃度が1/100になると、RSDR(%)が2倍になる。

1505.0c2 −

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RSDR(%)は室間の相対標準偏差、c は質量分率で表した濃度を示す。濃度が120 ppb 未満では、室間の相対標準偏差は22%の一定となり、120 ppb 以上、13.8%以下では、Horwitz の式と同じで、13.8%を超える濃度

では質量分率の平方根の逆数となる。

Horwitz 式の修正式(Thompson 式)

=(%)RSDR

22 C < 1.2x10-7

1505.0c2 − 1.2x10-7≤c≤0.1385.0c− c > 0.138

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各濃度レベルにおける室間の相対標準偏差(%)

223210ppb0.00000001 16161ppm0.000001880.01%0.0001441%0.0112100%1

修正式による

Horwitz式による

一般的な単位

質量分率

相対標準偏差(室間)%濃度

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HorRat による評価HorRat =

RSDR(observed)/RSDR(predicted)

化学分析法の試験室間共同試験の評価に用いられる。Horwitzの式による相対標準偏差との比率が、2以内ならば、良好と判断される。

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選択性 (selectivity)

分析対象試料に含まれる不純物、分解物、マトリックスなどの共存下で、測定対象成分を精確に測定できる能力

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感度(sensitivity)

ある量を測定するとき、検出定量できる測定量の変化の最小量。検量線の傾きで表す。

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定量限界(quantitation limit又はLOQ: limit of quantitation)

適切な精確さをもって定量できる測定対象成分の最低量又は最小濃度

ブランク測定量にブランク測定量の標準偏差の10倍量を加えたもの、あるいはノイズに対するシグナルの値であるSN比10

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検出限界(detection limit 又は LOD: limit of detection)

試料に含まれる測定対象成分の検出可能な最低量又は最低濃度

ブランク測定量にブランク測定量の標準偏差の3倍量を加えたもの、あるいはSN比3

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規制値と定量限界・検出限界

例えば、EUのCd, Pb測定法では、

検出限界は、規制値の1/10以下

定量限界は、規制値の1/5以下

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直線性(linearity)

検量線において、測定対象成分の量又は濃度に対して測定値が直線を与える分析法の能力

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適用範囲(range)

適切な精確さで測定できる測定対象成分の濃度範囲

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頑健性(ロバストネス robustness,あるいは堅牢性 ruggedness)

分析条件が変化したときに、測定結果が影響されない性能

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添加回収率(spike/recovery)

実際の分析試料で添加回収試験を行い、十分な回収率が得られることを確かめる。ただし、添加は分析操作の初期の段階で行うことが重要である。回収率は、常に分析法の妥当性確認において確定されるべきである。一定の回収率が得られていれば、測定値を補正して値を報告する。測定値そのものでは、規制値内であっても、補正することで、規制値を超える場合がでてくる。

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添加回収率の求め方

試料中の濃度(測定値) Cu添加濃度 Ca

添加後の試料中の濃度(測定値) Cf添加回収率= 100(Cf – Cu) / Ca

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(測定の)不確かさ(Uncertainty of measurement)

測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメーター(VIM 3.09)

不確かさは幅で示されるが、サンプリング、分析方法などに含まれる多くの要因からなっている。それぞれの要因の不確かさを見積もって、総合的な不確かさを求めることが行われるが、共同試験の室間再現精度を用いる方法なども提案されている。

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不確かさ評価の概念

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有効数字はどうするか?

計算機で計算すれば、いくらでも数字が並ぶが、そのまま採用するのは意味がない。

IUPAC等の共同試験の のプロトコール(Pure & Appl.Chem., 67(2), 331-343(1995))では、標準偏差の有効数字を2桁にして、平均値と不確かさ、並びに相対標準偏差をこれに合わせている。例えば、SR=0.012 ならば、平均濃度は位をあわせて0.147, RSDR=0.012/0.147×100=8.2(%) と報告する。平均濃度を 0.1473 あるいは0.15 としてはならない。

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トレーサビリティ(traceability)

トレーサビリティとは、「もとをたどることができる」という意味であるが、化学分析における測定値も、SI単位(物質量:モル)にトレーサビリティがあることを要求されている。「測定結果または標準値が不確かさを付けて、切れ目のない比較の連鎖を通じて国家標準または国際標準に関連づけられ得ること」と定義される。

化学分析においては、認証標準物質の測定を通して、トレーサビリティを確保する必要がある。

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分析試験室における(品)質保証

質の高い分析データを提供するには、目的にあった信頼性のある分析法(妥当性が確認された方法、公定法など)を使用することが必要である。また、新規に開発した方法は、ルーチン法とする前に妥当性の確認が必要である。

妥当性が確認されている方法でも、信頼性のある分析値が得られるかの試験(検証)が必要である。

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分析法の妥当性確認

分析法の妥当性確認(Method Validation)とは、試験に用いる分析法が意図する特定の用途に対して個々の要求事項が満たされていることを調査によって確認し、客観的な証拠を用意することである。

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分析法の妥当性確認の方法

試験室間共同試験の実施

標準物質の利用

添加回収試験の実施

公定法あるいは標準的方法を用いて得られた結果との比較

組立試料の利用

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試験室間共同試験( collaborative study)の実施

新規の分析法を提案するにあたっては、室内再現性だけではなくて、室間再現性を明らかにしておくことが重要である。均質性が担保された試験試料群が複数の分析試験所に配付され、各分析試験所は決められた分析手順書に従って分析し、報告する。解析に有効な試験所数は、定量分析では、8カ所以上となっている。また、試料数は最低5種類となっている。

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繰返し精度は、・・・

試験室間再現精度の1/2~2/3を示す。

この比率が、1/2よりもかなり小さいと、非常に個人に依存した方法であることを示し、高い比率は個々の分析者の繰返し精度が悪いことを示している。

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内部(品)質管理の実施

標準物質の利用

添加回収試験の実施

繰返し測定の実施

一定分析回数(期間)毎の上記によった測定結果による真度と精度の管理

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標準物質の利用分析試料と似た主要成分組成(マトリックス)を持ち、測定対象成分の認証値が決められている認証標準物質(certified reference material;CRM)がある場合には、これを利用する。

認証値は、基準法、原理の異なる複数の信頼できる方法などで決められている。

ex.NIES/NIRS Typical Japanese DietCd mg/kg 0.069±0.009

AAS, ICPMS, IDICPMS, INAAUncertainty is represented by the 95% confidence interval of the mean.

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添加回収試験の実施

実際の分析試料で添加回収試験を行い、十分な回収率が得られることを確かめる。ただし、添加は分析操作の初期の段階で行うことが重要である。

添加する標準物質の化学形が試料に存在するものと必ずしも一致しないこと、内在するものと添加した場合の存在場所が異なることが欠点にあげられる。

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食品衛生検査施設等における検査等の業務の管理の実施について

(平成9年4月1日衛食第117号)

食品衛生法施行規則に規定する精度管理および外部精度管理調査

内部精度管理

「精度管理の一般ガイドライン」による

外部精度管理

細菌、食品添加物、残留農薬、重金属、残留動物用医薬品等の検査項目群ごとに年1回以上受けること。

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Proficiency Testingへの参加

第三者機関によるproficiency testingに参加することで、試験所の出す分析値の信頼性を保証することができる。ISO/IECガイド43-1(試験所間比較による技能試験、第1部:技能試験スキームの開発及び運営)には、技能試験のプロバイダーについての規格の詳細が示され、技能試験スキームの種類、実施方法、評価方法などが記述されている。技能試験の多くは、試験所(分析所)間比較として行なわれる。

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CSLのProficiency Testing年度毎に、新しいプログラムが示され、FAPAS用プログラムでは、一般成分、動物用残留抗菌剤、マイコトキシン類、汚染金属類、栄養素、硝酸塩、アクリルアミド等の試験項目が各種のマトリックスについて用意されている。参加者には、均質性が担保された試料が配付され、参加者は任意の分析法で測定し、分析値を期限内に事務局へ送付する。分析値は統計的に処理されて、参加機関による結果の一覧、図を示した報告書が送付される。参加機関は番号で識別される。付与された値(assigned value)からの偏りを表すzスコアの絶対値が、2以内であればその分析結果は「満足」、2より大きく3未満であれば「疑わしい」、3以上であれば「不満足」と判断される。

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Zスコア

z = (x - X) / s

ここで、x は参加者の結果、X は付与された値で、通常、頑健な平均値が用いられる。s はスキームの要求事項を満たすように選ばれた適切なばらつきの推定値または規準の一つで、CSLでは参加者の測定値に基づいたものではなく、先のHorwitzの修正式またはこれまでの共同試験の結果から、sを求めている。

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試験所認定制度試験所において測定・試験されたデータの信

頼性を確保するために、権威ある認定機関が、その試験所について一定基準を満たし特定の分野の試験を行う能力のあることを認定する制度である。

欧米等においては、購入者(ユーザー)が供給者(メーカー)に対して製品に関する試験データを添付することを要求することが多く、その際に供給者は、当事者とは無関係な第三者である試験所で得られた試験データを活用している。

この場合、購入者にとっても、供給者にとっても、取引の合理化・効率化のためには、試験所から出される試験報告書がより信頼できるものであることが重要となる。

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ISO/IEC17025:2005 とは?試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項管理上の要求事項(15項目)

組織/マネジメントシステム/文書管理/依頼、見積仕様書及び契約の内容の確認/試験・校正の下請負契約/サービス及び供給品の購買/顧客へのサービス/苦情/不適合の試験・校正業務の管理/改善/是正処置/予防処置/記録の管理/内部監査/マネジメントレビュー技術的要求事項(10項目)

一般/要員/施設及び環境条件/試験・校正の方法及び方法の妥当性確認/設備/測定のトレーサビリティ/サンプリング/試験・校正品目の取り扱い/試験・校正結果の品質の保証/結果の報告

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国際的に通用する分析のための基盤整備

SI(国際単位)へのトレーサビリティ、内部(品)質管理のために、

認証標準物質の作製・供給

外部(品)質査定のために、

proficiency testing の供給