ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの...

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ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの 流通の現状と課題 誌名 誌名 開発学研究 ISSN ISSN 09189432 著者 著者 羽佐田, 勝美 小林, 慎太郎 丸井, 淳一朗 巻/号 巻/号 30巻1号 掲載ページ 掲載ページ p. 65-74 発行年月 発行年月 2019年7月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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Page 1: ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの …内ではパデークがODOP(One District One Product .一郡一品)運動2)の製品にも認定され,地域資源を

ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの流通の現状と課題

誌名誌名 開発学研究

ISSNISSN 09189432

著者著者羽佐田, 勝美小林, 慎太郎丸井, 淳一朗

巻/号巻/号 30巻1号

掲載ページ掲載ページ p. 65-74

発行年月発行年月 2019年7月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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【調査・資料】

ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの流通の現状と課題

羽佐田勝美*1.小林慎太郎*1・丸井淳一朗*1

要 旨

本稿では,魚発酵食品パデークの需要が増加しているラオス国ビエンチャン特別市を対象に,パデークの流通の

現状と課題を検討した。ビエンチャン特別市で最も多く販売されるパデークは伝統的パデークであった。パデーク

の流通においては,農家がパデークの原料採集,生産,発酵までを,仲買業者がパデークの集荷と出荷(流通)

を,小売業者が最終的な調味(加工調製)と消費者への販売(小売)を主に行っていることがわかった。また,パ

デークの流通形態は仲買業者介在型,仲買業者不在型,農家直売型の 3つに分類できることがわかった。各ステー

クホルダーの粗マージンについては,仲買業者と比べ,農家と小売業者がより高い粗マージンを得ていることが示

唆された。さらに,パデーク経営において,農家はパデークの原料である魚の不足(資源の問題)が,仲買業者は

パデークの不足(資源の問題),顧客が少ないことや同業者による競争(市場競争の問題)とパデーク仕入れ資金

の不足(資金・経費の問題)が,小売業者は投資資金の不足や販売経費の負担が大きいこと(資金・経費の問題)

と競争相手が多いこと(市場競争の問題)が,問題であることがわかった。

【キーワード】パデーク,ラオス,流通形態,資源不足,資金不足

Current situation and issues of fermented freshwater fish paste

product "Padaek" distribution in Vientiane, Lao PDR

Katsumi HASADA*1, Shintaro KOBAYASHI*1 and Junichiro MARUI*1

Abstract

This paper presents an assessment of the current circumstances and issues related to the distribution of

fermented freshwater fish paste product, "padaek," in Vientiane, Lao PDR. We interviewed padaek distribution

stakeholders such as farmers, middlemen, and retailers using a semi-structured questionnaire. Results from

interviews demonstrate that traditional padaek, which is processed using only salt and rice bran, is most popular

in Vientiane markets. In padaek distribution, farmers process and ferment padaek after collecting fish. Then

retailers add seasonings to the original padaek to arrange the taste, whereas middlemen collect padaek from

farmers and distribute it to retailers. Padaek distribution takes place with three patterns : middleman

intervention, no middleman intervention, and farmer direct sales. Regarding the gross margin of each

stakeholder, farmers and retailers take a higher gross margin than middlemen. Furthermore, farmers and

middlemen face difficulties in obtaining fish and padaek, whereas middlemen and retailers must confront

difficulties of insufficient funds and market competition in padaek businesses.

【Keywords】Padaek,Laos, Distribution pattern, Resource shortage, Insufficient funds

*l 国際農林水産業研究センター, JapanInternational Research Center for Agricultural Sciences

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66 開発学研究 (Journalof Agricultural Development Studies) Vol.30 Noふ2019

I.はじめに

比較的湿澗な気候で水田稲作が発達したアジアモン

スーン地域では,農産物や水産物を用いた多彩な発酵

食品が存在し,東南アジアのラオス国(以下,「ラオ

ス」と言 う)でも 保存性の高い魚発酵食品が加工さ

れ,食べられている。淡水魚に塩と米ぬかを混ぜて発

酵させたラオスのパデークもそのひとつであり, 日常

的な調味料としてタケノコスー プ,肉や魚を使ったサ

ラダ(ラ ープ),パパイヤサラダなど多くの料理に利

用されている 心 パデーク は,ペース ト状に解れた部

分を調味料として利用するだけでなく,溶け残った魚

肉も食することで動物性タンパク質を摂取すること

ができる。また,パデークには米を主食とするラオス

で不足しがちな必須アミノ酸の リジンが含まれてお

り,毎日の食事で使われることでラオスの人々の栄養

供給にも役立っている (丸井,羽佐田,ブロム 2018)。

このようにラオスの食生活において,パデークは必要

不可欠な食品である。

パデークは,元来,各家庭で自家生産 ・消費される

発酵食品であるが,国内生産量は 2005~2014年の 10

年間で約 2倍に増加してお り (LaoStatistics Bureau

2015),市場における需要が増加している。ラオス国

内ではパデークが ODOP(One District One Product

.一郡一品)運動 2)の製品にも認定され,地域資源を

利用した加工食品としての期待が高い [I][2]。また,

隣国のタイ ベ トナム カンボジア, ミャンマーでも

同様の発酵食品が食べられている (Adams, Cooke

and Pongpen 1991 ;石毛 ・ラドル 1990)ことから,

将来的にラオスの輸出加工食品としても期待される。

このように近年,市場におけるパデークの需要は増

加傾向にあり ,ラオスを代表する重要な加工食品とし

ても注目されているが.ラオスではパデークの流通や

経営に関する調査は行われておらず,情報も蓄積され

ていない。流通や経営の実態を把握することは,パ

デークのサプライチェーンを構築 ・強化するために必

要不可欠な基礎情報であ り,今後のラ オスのパデーク

産業の振興を考えるう えでも重要である。

そこで,本稿ではラオス国ビエンチャン特別市で販

売されるパデークの流通の現状と課題を明らかにす

る。具体的には,市場で販売されるパデークの種類,

各ステークホルダーの活動,流通形態と流通経路の現

状,ステークホルダー間の取引価格と粗マージンを整

理した上で,各ステークホルダーのパデーク経営にお

ける問題を明らかにする。

II. 調査方法

調査対象地は, ビエンチ ャン特別市お よびビエン

チャン特別市に隣接したビエンチャン県の 2郡とした

(図 l)。調査方法について,2016年 6月~2017年 2

月にかけ,パデーク流通のステークホルダーである,

農家 49戸, 仲買業者 12業者,小売業者 46業者に対

し (表 l),取引するパデークの種類,パデークの仕

入元 (生産者である農家は除く )と販売先,各ステー

クホルダーの活動,ステークホルダー間の取引価格と

粗マージンおよびパデーク経営における 問題につい

て,半構造化インタビューにより聞き取り調査を実施

した。ステークホルダーの選定にあたっては,まず,

ビエンチャン特別市中心の市場で小売業者から仲買業

者の情報を収集し,次に仲買業者から農家の情報を収

集する,雪だる ま式標本法によ り選定した。また,農

家については,パデークの製造•発酵状況 3) を仲

買業者と小売業者については,市場でのパデークの取

引状況や消費者への販売状況を観察した。

ラオス国

NR Pakngum郡

Sikhottabong郡ビエンチャン特別市

図 1 調査地

資料 :WikimediaCommons [3]の地図を基に,著者作成。

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(羽佐田 勝美 ・小林 慎太郎 ・丸井 淳一朗)ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの流通の現状と課題 67

皿バデーク流通の特徴

1 バデークの種類

パデークといっても一種類に限定されるわけでな

く,多種多様なパデークが存在する 。そこで, まず,

ビエンチャン特別市内の市場で販売される主なパデー

クについて整理する。調査結果から, ビエンチャン特

別市内で販売されるパデークは,一種類の魚 (主に,

コイ科の魚かティラピア)で製造されるパデーク(単

魚種パデーク)と複数種類の魚で製造されるパデーク

(混合魚種パデーク)に分けることができる。 これら

のパ デー クはさらに 4つの種類に大別することがで

きる(図 2)。1つめは,塩と米ぬかのみで発酵させた

ものである。一般家庭で自給用によく製造される伝統

的なパデークであらゆる料理に利用される(写真

A:伝統的パデーク) 。2つめは,伝統的パデークを,

砂糖, うまみ調味料,エビ ・ペーストなどで調味した

ものである(写真 B:調味パデーク)。3つめは,伝

統的パデークあるいは調味パデークを煮込んで熱処理

し,液体状にしたもので,主に,サラダの調味に使用

される (写真 c:液体パデーク) 。最後に,液体パ

デークをボ トル詰めしたもので(写真 D:ボ トル入り

パデーク),隣国のタイやベ トナムからの輸入品のほ

か,最近では, ODOP運動で認定された国産のもの

も市場で流通している 。

表 1 調査対象者

対象者 対象者数 対象地

農家 49戸ビエンチャン特別市の 2郡(Naxaithong郡 Pakngum郡)

ビエンチャン特別市の 3郡(Naxa1thong郡, Pakngum郡,

仲買業者 12業者 Sikhottabong郡)ピエンチャン県の 2郡(Phonhong淵I. Thoulakhom君I;)

小売業者 46業者 ピエンチャン特別市中心の 16市場

淡料・現地調査 (2016,2017)に基づき,著者作成。

写真 A 写真 B:

伝統的パデーク 調味パデーク

今回調査した 46の小売業者が扱っていた全パデー

ク217(ボトル入りパデークを除く)のうち, 96が単

魚種パデーク, 121が混合魚種パデークであった。 ま

た,単魚種パデークのうち,伝統的パデー クが 65,

調味パデークが 17, 液体パデーク 13, 混合魚種パ

デークのうち,伝統的パデークが 67,調味パデーク

が 27, 液体パデークが 24であった(表 2)。ボトル入

りパデークについては, ラオス産, タイ産,ベトナム

産の 3種類が確認され, 15の小売業者が販売してい

た。 これらの ことから, ビエンチャン特別市内で最も

多く販売されるパデークは伝統的パデークであると考

えられる 。

2. ステークホルダーの活動

ビエンチャン特別市におけるパデーク流通には,主

に農家,仲買業者,小売業者,消費者の 4つのステー

クホルダーが存在する 。 ここでは,消費者を除く,各

ステークホルダーの主な活動を整理する 。

農家は,水田,水路小川やため池で刺し網,四手

網投網笙(うけ)といった漁具を使って,ラ イ

ギョ,ナマズ,パー ・カオ(コイ科の魚)などの淡水

魚を採集する。採集した魚のうち,サイズの大きいも

のや形のよいものを販売,または自家消費し,商品価

表 2 小売業者が販売するパデーク

魚種 タイプ 出現数

伝統 埜

調味 17

単魚種 液体 13

不明 1

計 96

伝統 翌

調味 27

混合魚種 液体 24

不明 3

計 121

府料現地調査 (2016,2017)に基づき,著者作成。

写真c 写真 D液体パデーク ボルト入りパデーク

塩と米ぬかのみで発酵させた 伝統的パデークに調味料で味 伝統的パデークあるいは調味 液体パデークをポトル詰めし

もの 付けしたもの パデークを熱処理したもの たもの

図2 市場で販売される主なバデークの種類

資科:現地調査 (2016,2017)にて著者撮影。

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68 開発学研究 (Journalof Agricultural Development Studies) Vol.30 No.1, 2019

値が低くそのままでは食用には向かない小型の魚(い

わゆる雑魚)をパデークの原料とする。内臓を取り除

き,塩と米ぬかで仕込んだ後,陶器製の甕かプラス

ティック製の容器に入れ発酵させる。農家は魚を採集

するたびにこの工程を繰り返し,甕か容器にパデーク

を継ぎ足し保管する。製造したパデークのうち, 自家

消費分を除いた余剰を仲買業者に販売する。調査した

農家のうち,塩と米ぬか以外の添加物を入れる農家は

いなかった。

仲買業者は,一般的に,定期的にビエンチャン特別

市内の村や市と隣接する県の村を巡回し,不特定多数

の農家からパデークを仕入れる。巡回する村は毎回同

じ村とは限らず,農家との契約による取引もない。熟

成したパデークだけでは十分な仕入量を確保できない

ため,農家から 6ヵ月未満の未熟成のパデークも仕入

れる。仲買業者は熟成していないパデークに塩と米ぬ

かを追加し,発酵期間が6ヵ月になるまで熟成させた

後ビエンチャン特別市内の大規模市場をトラックで

巡回し,購入を希望する小売業者にその場で販売す

る。小売業者の要望に応じ,農家から仕入れたパデー

クに砂糖やうま味調味料を添加したパデークを販売す

ることもあるが,稀である。農家と同様,小売業者と

の契約による取引は見られなかった。最近では,農家

(漁家)と契約し塩と米ぬかで仕込まれたパデークを

一度に大量に仕入れ,貯蔵施設で半年以上パデークを

熟成させた後小売業者や他の仲買業者に販売する先

進的な仲買業者も出現しているが,少数の業者に限定

されている。

最後に,小売業者は農家や仲買業者から仕入れた伝

統的パデークをそのまま販売するだけでなく,消費者

の嗜好に応じて,パデークにうま味調味料,砂糖,エ

ビ・ペーストを加えることで,また, これらの添加物

の入ったパデークを煮込んで液体状にすることで,付

加価値をつけて消費者に販売する。また,最近では,

この液体パデークにティラピアなどの大型淡水魚の切

り身のパデークを混ぜ,付加価値をつけて販売してい

聾 活動 酋 活動

る小売業者も見受けられる。

これらのことから, ビエンチャン特別市内で流通す

るパデークは,原料採集,生産,発酵までを主に農家

が,集荷と出荷(流通)を主に仲買業者が,消費者の

嗜好に合わせた最終的な調味(加工調製)と消費者へ

の販売(小売)を主に小売業者が行っていると考えら

れる(図 3)。

3. ピエンチャン特別市のバデーク流通経路

調査結果より,表 3に示すとおり各ステークホル

ダーのパデークの流通過程を類型化した。各ステーク

ホルダーによるパデークの流通過程は多様であるが,

農家においては F1 (39件)と F3 (13件)が,仲買

業者においては M2(9件),小売業者においては R4

(11件), R10 (14件), R12 (18件)の流通過程が

多かった。このことから, ビエンチャン特別市内に

は, F1. M 2, R 10およびR12から想定される農家

一仲買業者一小売業者一(小売業者)一消費者(仲買

業者介在型), R4とR10から想定される農家ー小売

業者一(小売業者)ー消費者(仲買業者不在型), F3

から想定される農家一消費者(農家直売型)という 3

つの主要な流通形態が存在すると考えられる。この形

態を基に,仲買業者介在型の仲買業者,仲買業者不在

型の小売業者農家直売型の農家の視点から, 3つの

流通経路 A, B, Cを整理した(図 4~図 7)。

流通経路 Aは,仲買業者を通じた流通経路である。

流通経路 Aは仲買業者のパデークの仕入元によって,

さらに流通経路A-1とA-2に分類することができる。

流通経路 A-1(図 4) では,仲買業者は主にビエン

チャン特別市郊外の農家からパデークを仕入れ,大規

模市場小売業者にパデークを販売する。仕入れ状況に

よりビエンチャン特別市の隣接県(市外地域)の農家

や仲買業者から仕入れることもある。大規模市場小売

業者はさらに小規模市場小売業者に販売するか,直

接消費者に販売する。また,仲買業者は需要に応じ

て, ビエンチャン特別市郊外や市外地域(ラオス国北

活動 活動 活動

パデークの原 塩と米ぬかに パデーク製造 パデークの集 パデークの味 市場における パデークの消

費料となる魚の よるパデーク 後のパデーク 荷と市場への 調整

採集 の製造 の熟成 出荷

主なステーク 主なステーク 主なステーク 主なステーク 主なステーク

ホルダー ホルダー ホルダー ホルダー ホルダー

農家 農家 農家,仲買業 仲買業者 小売業者

図3 流通過程におけるステークホルダーの活動

資料:現地調査 (2016, 2017) に基づき,著者作成。

パデークの販

J志L』

主なステーク

ホルダー

小売業者

主なステーク

ホルダー

一般消費者,

飲食露店

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(羽佐田 勝美・小林慎太郎 ・丸井 淳一朗)ラオス国ピエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの流通の現状と課題 69

表 3 ビエンチ ャン特別市で取引される パデークの流通過程の類型

ステーク 悶 パデーク流通過程 件数ホルダー

Fl 魚採集 → パデーク製造 → 仲買業者に販売 39

F2 魚採集 → パデーク製造 → 小売業者に販売 3 農家

F3 魚採集 → パデーク製造 → 消牧者に販売 13 11=49

F4 魚購入 → パデーク製造 → 小売業者に販売 1

F5 魚購入 → パデーク製造 → 消費者に販売 1

Ml 農家から魚購入 → パデーク製造 → 小売業者に販売 2

M2 農家からバデーク購入 → 小売業者に販売 , 仲買業者

M3 農家からパデーク購入 ' 消我者に販売 1 n= 13

M4 仲買業者からパデーク購入 → 仲買業者に販売 1

M5 仲買業者からパデーク購入 → 小売業者に販売 2

Rl 農家,魚仲買業者から魚購入 → パデーク製造 → 消毀者に販売 7

R2 農家,魚仲買業者から魚購入 → パデーク製造 → 飲食露店に販売 2

R3 農家魚仲買業者から魚購入 → パデーク製造 → 小売業者に販売 1

R4 股家からバデーク購入 → 消牧者に販売 11

R5 農家からバデーク購入 ' 仲買業者に販売 1

R6 農家からパデーク購入 → 小売業者に販売 2 小売業者

R7 農家からパデーク購入 → 飲食露店に販売 1 n=46

R8 工場からパデーク購入 → 消骰者に販売 5

R9 工場からパデーク購入 → 小売業者に販売 2

RIO 小売業者からパデーク購入 → 消1し者に販売 14

Rll 小売業者からパデーク購入 → 飲食露店に販売 1

R 12 仲買業者からバデーク購入 → 消ft者に販売 18

R 13 仲買業者からパデーク購入 → 小売業者に販売 5

究科:現地調査 (2016,2017)結果に基づき.著者作成。

注:ステークホルダーは複数の流通過程を持っていることもあるため.流通過程の件数の合計はステーク

ホルダーのサン プル数と異なる。

ビエンチャン特別市

I

.................................................................... .

大規模市場仲買業者

............,....................................................... . ; ・ ••

: • • 三□ ; '・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・:..............:

ピエンチャン特別市郊外,市外地域

図4 流通経路 A-1

府料:現地調査 (2016.2017)に基づき著者作成。

部地域,南部地域,中部地域)の仲買業者や小売業者

にパデークを販売することもある。

一方流通経路 A-2(図 5)の仲買業者は,ビエン

チャン特別市から約 140km離れたナムグム湖周辺の

漁村の農家(漁家)と契約し,塩と米ぬかで仕込まれ

たパデークを仕入れ,主に市内の小売業者や,市郊外

または市外地域の仲買業者や小売業者にパデークを販

売する。今回の調査では,このタイプの仲買業者は 2

業者しか確認できなかったため, この流通経路は限定

的であると考えられる。

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70 開発学研究 (Journalof Agricultural Development Studies) Vol.30 Noふ2019

ビエンチャン特別市

.................................................................. . . . . ・ ; I I I 大規模市場

仲買業者 小売業者

小規模市場

小売業者

.........I...........................................................

図 5 流通経路 A-2

査料 ・現地調査 (2016,2017)に基づき,著者作成。

三 口ビエンチャン特別市郊外.市外地域

ビエンチャン特別市

. ................................................ . . . . • 1 大規模市場

小売業者

図 6 流通経路 B

資料:現地調査 (2016,2017)に基づき,著者作成。

小規模市場

小売業者

; ` :

i 仲買業者 小売業者 ; : □口............................................................:

Iビエンチャン特別市郊外市外地域 I

流通経路 B (図 6)は,仲買業者を通さず,大規模

市場小売業者が農家からパデークを直接仕入れ,販売

する経路である。市郊外の農家からパデークを仕入

れ,市内の小規模市場小売業者や消贄者を中心にパ

デークを販売する。

4.バデークの取引価格と粗マージン

本節では,各ステークホルダーの取引価格と,流通

における付加価値の流れを評価する粗マージンを明ら

かにする。 ここでは,仲買業者介在型の流通経路

A-1を例として,取引価格と粗マージンを明らかに

する。具体的には,F1, M 2, R 12のステークホル

ダーのうち,伝統的パデーク,調味パデーク ,液体パ

デーク (図2)を取引したステークホルダーのデータ

を基に,算出した。

最後に,流通経路 C (固 7) は, 仲買業者や小売業

者を通さず,農家が自家生産したパデークを居住する

村や最寄りの市場で消費者に直接販売する経路であ

る。

表4に各ステークホルダーのパデークの平均仕入価

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(羽佐田 勝美・小林 慎太郎 ・丸井 淳一朗)ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの流通の現状と課題 71

ビエンチャン特別市郊外

ビエンチャン特別市

村内および村近郊の市場

消費者

図 7 流通経路 c

資料現地調査 (2016,2017)に基づき, 著者作成。

表4 バデークの取引価格と粗マージン

農家 (n=28) 仲買業者 (n=7) 小売業者 (n= 17,8,4)

パデーク 粗マージ 粗マージ 粗マージの種類 販売価格 粗マージン ン/消費 仕入価格 販売価格 粗マージン ン/消費 仕入価格 販売価格 粗マージン ン/消費

(KIP/kg) (KIP/kg) 者価格 (!<IP/kg) (KIP/kg) (KIP/kg) 者価格 (KIP/kg) (KIP/kg) (KIP/kg) 者価格(%) (%) (%)

伝統的5,657 芦 坐 4,887 5,595 匹 § 7,000 12,315 旱 位パデーク

調味6,166 13,200 乙 翌パデーク

液体6,854 17,500 10,646 釘パデーク

査科 現地調査 (2016, 2017)結果に基づき,著者作成。調査時で, 1US$ "'8.200 KIP。注: 1)仕入価格,販売価格は,各ステークホルダーの平均価格を表す。

2)調査対象の各ステークホルダーが完全に一致する取引相手ではないため,ステークホルダー間の販売価格と仕入価格は一致していない。3) 1lは,各パデークを扱うステークホルダー数を表す。小売業者については,左から順に,伝統的バデーク,調味パデーク,液体パデー

クを扱う小売業者数を表す。

格平均販売価格,粗マージン 4)および消費者価格

(=小売業者販売価格)に占める粗マージンの割合を

示す。農家の仲買業者へのパデーク平掏販売価格 (=

粗マ ージン)は5,657KIP /kgであった。一方 仲買

業者の粗マ ージンは,708KIP/kgと小さかった。仲

買業者は, トラ ックで農村を巡回しパデークを仕入

れ,市場を巡同して小売業者に販売している ことか

ら,粗マージンの大部分は流通経費であると考えられ

る。また,仲買業者は,基本的 に調味などによりパ

デークに付加価値を付けず小売業者に販売するため,

粗マージンも低いと考えられる。一方, 小売業者は,

仲買業者から仕入れた伝統的パデークをそのまま販売

する場合と,伝統的パデークを調味パデークや液休パ

デークに加工して販売する場合がある。伝統的パデー

クをそのまま販売する場合でも,粗マージンは

5,316 KIP /kgと仲買業者の粗マージンの 7.5倍であ っ

た。付加価値の付いた調味パデーク や液体パデークに

ついては,粗マージンはさらに高く,それぞれ,

7,034 KIP /kgと10,646KIP /kgであった。付加価値の

高い調味パデークや液体パデークは加工調製費がかか

るので伝統的パデークより高値で販売されており ,そ

のため粗マージンも高いと考えられる。また,各ス

テークホルダーの消費者価格に占める粗マージンの割

合を比較してみて も,農家と小売業者の割合は 43~

61%であるのに対し,仲買業者の割合は 6%と相対的

にかなり低かった。

これらのことから,パデーク流通のステ ークホル

ダーのうち,農家と小売業者は相対的に高い粗マージ

ンを得る一方仲買業者は相対的に低い粗マージンし

か得ていないこと が示唆された。

V. バデーク経営における各ステークホル

ダーの問題

本章では前章の結果を踏まえながら,各ステーク

ホルダーがパデーク経営において抱える問題を明らか

にする。

調査対象の 49農家のうち 39戸が, 12仲買業者の

うち 9業者が, 46小売業者のうち 24業者が,パデー

ク経営において何らかの問題を抱えていると回答し

た。表 5はこれらのステークホルダーが,パデーク経

営において抱える問題を表す。32戸の農家が,パデー

クの原料である魚の不足 (資源の問題)が経営におけ

る問題であると回答した。農家 49戸のうち,水田や

それに付随する水路・ため池で魚を採集していた農家

は32戸であったことから, これ らの水辺の存在が農

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72 開発学研究 (Journalof Agricultural Development Studies) Vol.30 No.l, 2019

表 5 パデーク経営における各ステークホルダーの問題

農家 (n=39) 仲買業者 (n=9) 小売業者 (n=24)

t 問題 > 問題 [ 問題

原料(魚)が不足 (27)資源 淫 多くの農家が魚を採集 4 パデークが不足 (4) 4 パデークが不足 (4)

するため魚が少ない (5)

1 材料(塩,米ぬか)費 パデーク仕入れの資金事業拡大のための資金

資金・経費 3 旦 が不足 (7)がかかる (1) が不足 (3)

市場の場所代が高い (7)

パデークの仕入価格は

パデークの価格が安いパデークの仕入価格は 上がるが販売価格はあ

利益 6 (6)

1 上がるが販売価格は上 4 げられない (2)げられない (1) 収益の季節変動がある

(2)

顧客(小売業者)が少 競争相手が多いため顧

市場競争

゜3

ない (2)且

客が少ない (6)販売の競争相手がいる 販売の競争相手が多い(1) (5)

内臓の除去が大変 (1)魚を採集する労働力が

労働 3 ない (1)

゜ ゜年齢・体力的に魚の採集が大変 (1)

情報 3 仲買業者が少ない (3) l 小売業者を知らない (1)

゜パデークの品質が顧客仕入れるパデークの品

品質

゜l (小売業者)の要望に合 3

質がよくない (2)売れ残るとパデークが

わない (1)腐敗し損失が生じる (1)

技術ヨウ素入りの塩を使う

1 と製造に失敗する (1) ゜ ゜資料:現地調査 (2016,2017)結果に基づき,著者作成。

注:複数回答を可とした。

家の魚の採集量に及ぼす影響は大きいと考えられる。

2005年から 2014年の間に, ビエンチャン特別市の人

Dは増加しているが,水稲作付面積はほぼ変わってい

ない(表 6) ことから,人口の増加が一人あたり採集

量の減少の一因となっていると推測される。農家は製

造したパデークから自家消費分を除いた余剰を販売す

るが,魚の採集量が減少してもパデークの自家消費量

は変わらないため,魚の採集量が減少すれば,パデー

表 6 ビエンチャン特別市の人口と水稲作付面積の推移

人口 (1,000人)

水稲作付面積 (ha)

2005年 I2010年 I2014;丁面面玉(%)(2005-2014)

三75,3151 76,984

828

73,491

18.6

-2.4

資料: LaoStatistics Bureau (2015)に基づき,著者作成。

クの自家生産量自体が減少するだけでなく,仲買業者

ヘ販売可能なパデークの余剰量も減少することにな

る。また,パデークの原料となる天然淡水魚の一人あ

たりの生産量の増加や価格の上昇は,農家がパデーク

を製造するよりも天然淡水魚を直接販売する意欲を高

揚させるため,パデークの供給が抑制されているとも

推測される(表7)。

一方,仲買業者のうち, 4業者がパデークの不足

(資源の問題), 3業者が顧客(小売業者)が少ないこ

と,あるいは同業者による競争(市場競争の問題)

が,また, 3業者がパデーク仕入れ資金の不足(資

金・経費の問題)が,経営における問題であると回答

した。資源の問題について,前述したように農家のパ

デーク製造量が減少すれば,仲買業者のパデーク仕入

量も減少する。調査した仲買業者 9業者のうち最も仕

表 7 ビエンチャン特別市の天然淡水魚生産量と価格およびパデーク価格の推移

2010年 2011年 2012年 2013年増加率(%)

2014年 (2010-2014)

一人あたり天然淡水魚生産醤 (kg) 3.1 3.1 15.2 14.9 152 386

天然淡水魚価格 (KIP/kg) 29,593 31,346 31,930 32,909 35,012 18

パデーク価格 (KIP/kg) 9,722 9,786 9,789 9,948 9,931 2

資料: LaoStatistics Bureau (2015)に基づき,著者作成。

注:天然淡水魚価格およびパデーク価格は, 2010年の価格を 100として,消費者物価指数で除した実質価格。

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(羽佐田 勝美・小林 慎太郎・丸井 淳一朗)ラオス国ビエンチャン特別市における魚発酵食品パデークの流通の現状と課題 73

入量の多かった仲買業者は,年間 96,000kgのパデー

クを 80戸の農家から仕入れていたが,村一巡回で可

能な仕入醤は 1,500-2,000kgであり,年間販売量を

確保するためには,年間 48~64回も村を巡回する必

要がある。パデークの不足は,仲買業者にとって時間

的コストの増大の原因にもなっている。市場競争の問

題について,パデークの販売先である小売業者を十分

確保できないのは,仲買業者は小売業者に契約販売し

ていないことや,小売業者がその時々の品質の状態を

見ながらパデークを購入するからである。小売業者の

買い手市場となっているため,他の仲買業者との競争

が存在する場合,仲買業者は安定的な販売ができな

い。資金・経費の問題については,表4からも明らか

なように,仲買業者の粗マージンは小売業者の粗マー

ジンと比較し相当低く,粗マージンから流通経費(運

搬費)を差し引くと利益はさらに低くなると推測され

るため,経費の支払いやパデーク仕入れのための資金

が不足する。薄利多売の経営状況下で,一度に多くの

パデークを仕入れることが難しく, また,多くの顧客

(小売業者)を確保することが困難なことは,経営を

継続していく上で大きな問題である。また,調査対象

の12仲買業者のうち金融機関から借入をしていたの

は1業者のみであり,資金借入も困難な状況にあると

言えよう。

最後に, 14の小売業者が投資資金の不足や販売経

費の負担が大きいこと(資金・経費の問題)が, 11

の小売業者が競争相手が多いこと(市場競争の問題)

が,経営における問題であると回答した。表8に示す

ように多くの小売業者が扱い,消費者に最も売れ行

きのよい伝統的パデークは,単価が安く粗マージンも

他の種類のパデークに比べ低いため(表4),小売業

者は経営の維持や事業拡大のための十分な利益を得ら

れていないと推測される。仲買業者が問題としてあげ

ているパデークの不足は,小売市場におけるパデーク

の価格を上昇させると考えられるが,市場競争が激し

いため小売業者は価格を上げることが困難な状況にあ

ると考えられる。また,調査対象の 46小売業者のう

ち金融機関から借入をしていた小売業者はなく,政府

の事業支援を受けていた小売業者は 1業者のみであっ

たことから,外部からの支援を受けることも難しいと

考えられる。市場競争の問題については,売れ行きが

表 8 小売業者が販売するパデークの種類と売れ行き

左の種類のパデーパデークの種類 取扱小売業者数 クが最も売れ行き

のよい小売業者数

伝統的パデーク 37 29

調味パデーク 14 8

液体パデーク 28 6

資料:現地調査 (2016, 2017)結果に甚づき,著者作成。

よい伝統的パデークを扱う小売業者が多く(表 8),

商品の差別化が難しいため,市場競争が激しいと考え

られる。

V.おわりに

本稿では, ビエンチャン特別市におけるパデーク流

通の現状と課題を明らかにするため,パデークの種

類流通形態と流通経路,各ステークホルダーの活動

の現状とステークホルダー間の取引価格および粗マー

ジンを明らかにするとともに,各ステークホルダーの

パデーク経営における問題を見てきた。その結果,次

のことが明らかになった。

まず, ビエンチャン特別市内で最も多く販売される

パデークは伝統的パデークであることが明らかになっ

た。伝統的パデークは,他のパデークと比べ安価であ

り,塩と米ぬかによるシンプルな味のため様々な料理

に使用でき,魚自体も副菜になるためであると考えら

れる。次に, ビエンチャン特別市内の市場で流通して

いる多くのパデークは,原料採集,生産,発酵までを

主に農家が,集荷と出荷(流通)を主に仲買業者が,

消費者の嗜好に合わせた最終的な調味(加工調製)と

消費者への販売(小売)を主に小売業者が行っている

ことが明らかになった。また,主な流通形態は仲買業

者介在型仲買業者不在型,農家直売型に分類され,

それらの形態から 3つの流通経路が示唆された。三番

目に,パデーク流通のステークホルダーのうち,農家

と小売業者が高い粗マージンを得る一方,仲買業者は

低い粗マージンしか得ていないことが示唆された。最

後に,パデーク経営において,農家はパデークの原料

である魚の不足(資源の問題)が,仲買業者はパデー

クの不足(資源の問題),販売先の小売業者が少ない

ことや同業者による競争(市場競争の問題),パデー

ク仕入れ資金の不足(資金・経費の問題)が,小売業

者は投資資金の不足や販売経費の負担が大きいこと

(資金・経費の問題)と競争相手が多いこと(市場競

争の問題)が問題であった。

謝辞:本研究は国際農林水産業研究センター交付金プ

ロジェクト「持続的農村開発のための食料資源の高付

加価値化を通したフードバリューチェーン形成」の一

環で実施した。本研究を遂行するにあたり,ビエン

チャン特別市とビエンチャン県の郡事務所,村事務

所市場関係者,パデーク取引関係者およびラオス国

立農林業研究所の Ms.Phonesanith Phonhnachith, Dr.

Phonevilay Sinavong, Ms. Manivanh Phimphachan-

vongsodに多大なご協力を頂いた。記して謝意を表

す。

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74 開発学研究 (Journalof Agricultural Development Studies) Vol.30 No.l, 2019

(注)

l)例えば,ラオス南部地域の低地や中部地域の低地及び丘陵地

では年間を通じほぽ毎日,中部地域の丘陵地・山間地では,

主に 12-3月の乾期にほぼ毎日消費されると報告されている

(Garaway et al. 2013)。また,ラオス国北部地域では一人あた

り年間 1.26kgのパデークを消費すると報告され (Sjorslev

2000),南部地域では一人あたり年間 6.2-9.4kgのパデークを

消費すると推定されている(岩田大西,木口 2003)。パ

デークの消費量は, 日本におけるみその一人あたり年間消費

贔 1.81kgやしょうゆの一人あたり年間消費量 2.45L[4lと比

較しても遜色なく,ラオスの食生活にとって重要である。

2)農村地域におけるコミュニティ開発の一環として, 2008年に

ラオス商工省によって始められたラオスの一村一品運動。

3) ラオスではパデークを製造する際,通常,内臓を(サイズの

大きいものは頭も)除去した魚に,魚:塩:米ぬか=3: 1 : 1

の割合で塩と米ぬかを加えた後,陶器製の甕やプラスティッ

ク製の容器に入れて 6ヵ月から 1年間,発酵させる。

4)粗マージン=販売価格一仕入価格=流通経費+利益で表され

る。

〈引用文献〉

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Garaway, C. J., Photitay, C., Roger, K.. Khamsivilay, L., Halwart,

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Lao FDR, LARReC Research Report No.l, LARReC/NAFRI

and AMFC/MRC, Vientiane, Lao FDR. 86 p.

[l] http:/ /annx.asianews.network/content/laos%E2%80%99-

famous-padaek-be-approved-under-odop-21925, Asian News

Network, 2018.8.6.

[2] http : // en.vietstock.vn/2013/06/vientiane-fish-processors

-win-one-district-one-product-certification-71-151689.htm,

Vietstock, 2018.4.27

[3] https : // commons.wikimedia.org/wiki/File : Vientiane_D1

stricts.PNG, Wikimedia Commons, 2018.8.6.

[ 4] https: //region-case.com/list-rank-consume/2/,地域の

入れ物, 2019.3.25.

(2018.11.10 受付, 2019.4.4 受理)