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IPCC AR5 Synthesis Report IPCC 第5次評価報告書(AR5統合報告書 ラモン・ピチス-マドルーガ (IPCC 第3作業部会副議長) IPCC 公開シンポジウム (神戸) 2016年1月28日 本和訳は、2014年度に開催された環境省主催のシンポジウムで用いられた暫定和訳を もとに作成されたものである。原文(英文)との差異がある場合には、常に原文が優先する。

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IPCC AR5 Synthesis Report

IPCC 第5次評価報告書(AR5)統合報告書

ラモン・ピチス-マドルーガ (IPCC 第3作業部会副議長)IPCC 公開シンポジウム (神戸)2016年1月28日

※本和訳は、2014年度に開催された環境省主催のシンポジウムで用いられた暫定和訳をもとに作成されたものである。原文(英文)との差異がある場合には、常に原文が優先する。

IPCC AR5 Synthesis Report

気候変動に関する政府間パネル(IPCC):組織構造Inter-governmental Panel on Climate Change (IPCC): Organization Structure

• IPCC総会は195の加盟国によって構成される。

• IPCCビューローは34名で構成される。議長団メンバーは5-7年毎に選挙で選ばれる。

• 3つの作業部会とインベントリータスクフォース

• 執筆者、執筆協力者、査読者、査読編集者

IPCC総会IPCCビューロー

IPCC事務局

第1作業部会(WGI)

自然科学的根拠

第2作業部会(WGII)

影響・適応・脆弱性

第3作業部会(WGIII)

気候変動の緩和

インベントリータスクフォース(TFI)

執筆者、執筆協力者、査読者

IPCC AR5 Synthesis Report

IPCC 統合報告書

➜ 2013~2014年に出版された第5次評価報告書(AR5)の3つの作業部会報告書を統合したもの

• 第1作業部会 : 自然科学的根拠

• 第2作業部会: 影響・適応・脆弱性

• 第3作業部会: 気候変動の緩和

IPCC AR5 Synthesis Report

IPCC 統合報告書

➜ 各作業部会の報告書の執筆者から60名が選ばれ、この統合報告書を執筆。

➜ R.K. パチャウリ IPCC議長(当時)による指揮。

➜ 加盟国政府(195カ国)は2014年11月1日にこの報告書を承認。

IPCC AR5 Synthesis Report

主要なメッセージ

➜ 気候システムに対する人間の影響は明瞭である。

➜ 我々が気候を崩壊させるほど、我々は深刻で広範囲にわたる不可逆的な影響を受けるリスクにさらされる。

➜ 我々は、気候変動を抑制し、より豊かで、持続可能な将来を構築する手段を有している。

AR5 WGI報告書 SPM, AR5 WGII 報告書SPM, AR5 WGIII 報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

人類は気候に変化をもたらしている

YearGlobally averaged combined land and ocean surface temperatures

人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い。

世界平均地上気温(陸域+海上)の偏差AR5 WGI報告書 SPMより

年平均

IPCC AR5 Synthesis Report

気温は上昇を続けている

Year

地球の表面では、最近30 年の各10 年間はいずれも、1850 年以降の各々に先立つどの10 年間よりも高温でありつづけた。

AR5 WGI報告書 SPMより

10年平均

観測された世界平均地上気温(陸域+海上)の偏差(1850-60年から 2000-2010年)

IPCC AR5 Synthesis Report

海洋がほとんどの熱を吸収

➜ 気候システムにおいて1971 年から2010 年の間に蓄積されたエネルギーの90%以上は海洋に蓄積されている。

➜ 陸域での気温は歴史的に高い水準を維持し、海洋の温度も上昇傾向にある。

AR5 統合報告書より

地球の気候システムにおけるエネルギーの貯蓄

海洋表層海洋水深氷床地上大気不確実性

1021ジュール

IPCC AR5 Synthesis Report

AR5 SYR SPMAR5 統合報告書より

世界平均海面水位の変化

IPCC AR5 Synthesis Report

AR5 SYR SPMAR5 統合報告書より

世界平均温室効果ガス濃度

IPCC AR5 Synthesis Report

AR5 SYR SPM

世界の人為起源二酸化炭素排出量

化石燃料の燃焼、セメント生産、フレア燃焼林業及び他の土地利用

1850~1970年におけるメタン及び一酸化二窒素排出量の経年変化の定量的情報は限られている

AR5 統合報告書より

(GtC

O2/年

)

IPCC AR5 Synthesis Report

2000~2010年のGHG排出量の増加率は過去30年の増加率より大きい

AR5統合報告書SPM.2; AR5 WGIII報告書SPMより

フッ素化ガス一酸化二窒素

メタン

土地利用からの二酸化炭素

化石燃料及び工業プロセスからの二酸化炭素

温室効果ガス排出量

(GtC

O2換算

/年)

IPCC AR5 Synthesis Report

排出源エネルギー生産はGHG排出の第1位の駆動要因となっている。

6.4%

35%24% 21% 14% 6.4%

2010年 GHG排出

エネルギー部門

農業・林業・その他の土地利用

工業 交通建築部門

AR5 WGIII報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

人間による影響が温暖化の原因であった可能性が極めて高い

1951~2010年にわたって観測された地上気温変化への寄与

観測された気温上昇

温室効果ガス

他の人為起源強制力

_人為起源強制力の合計

自然起源の強制力

自然起源の内部変動性

IPCC AR5 Synthesis Report

1950年頃以降、多くの極端な気象及び気候現象の変化が観測されてきた。これらの変化の中には人為的影響と関連づけられるものもある。

AR5 WGI報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

影響は既に進行している

• 熱帯から極域まで• 全ての大陸の海洋において• 裕福な国と貧しい国に影響を与えている

AR5 WGII報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

気候変動の予測温室効果ガスの継続的な排出は、更なる温暖化と気候システムの変化をもたらす。

世界規模で氷河の体積は更に減少するだろう。

21 世紀の間、世界平均海面水位は上昇を続けるだろう。

21 世紀の間、世界平均地上気温の上昇とともに、北極域の海氷面積が縮小し厚さが薄くなり続ける可能性は非常に高い。

21 世紀の間、世界全体で海洋は昇温し続けるであろう。

AR5 WGI報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

気候変動による潜在的な影響

Coastal flooding

食料と水不足

貧困の増加

人々の移住の増加

沿岸域での氾濫

AR5 WGII報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

気候変動は食料生産にリスクをもたらす収量予測研究数の割合(%)

色の凡例収量変化の範囲

収量の増加

収量の減少

AR5 統合報告書 SPM.9より

IPCC AR5 Synthesis Report

大気濃度の安定化には、緩和目標にかかわらずベースラインからの離脱が必要

Based on Figure 6.7

ベースラインの幅

年間排出量

(GtC

O2換算

/年) 90%パーセンタイル

中央値10%パーセンタイル

AR5のデータベースの幅

AR5のデータベースの幅

AR5 WGIII報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

~3°C

Based on Figure 6.7

AR5のデータベースの幅

AR5のデータベースの幅

年間排出量

(GtC

O2換算

/年) 90%パーセンタイル

中央値10%パーセンタイル

ベースラインの幅

大気濃度の安定化には、緩和目標にかかわらずベースラインからの離脱が必要

AR5 WGIII報告書SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

480-530430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)1870年からの累積人為起源CO2排出量

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

(C)…今後数十年の年間のGHG排出量によって決まる

(B)二酸化炭素の累積排出量次第であり…

(A)気候変動によるリスクは…

図 SPM.10, 読者へのガイド気候変動リスクとGHG排出量の関係

IPCC第5次評価報告書の第2作業部会で評価され、5つの「懸念の理由」に集約された

気候変動のリスク

「懸念の理由」のリスク水準は地球気温変動のレベルと関連しうる

左の図は2oC の気温上昇があった場合のリスク

工業化以前からの世界平均気温変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)1870年からの累積人為起源CO2排出量

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

累積CO2排出量と地球平均気温の関連性

ピンクのプルームは第1作業部会の複合モデルによる。可能性が高い変動幅を使用し、CO2以外のガスの不確

実性、気候及び炭素循環の不確実性を含む

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

累積CO2排出量と地球平均気温の関連性

楕円は簡易的な気候モデルを用いた第3作業部会モデルの結果を示す。気候及び炭素循環の不確実性は含まないが、CO2とCO2以外のガス経路の変動幅によるシナリオの不確実性がより包括的に検討されている。

1870年からの累積人為起源CO2排出量

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

リスクの水準は、気候応答の感度に応じて、累積CO2排出レベルに関連づけられる。

1870年からの累積人為起源CO2排出量

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

2050年までの年間GHG排出量の変化と第3作業部会のシナリオカテゴリの累積

CO2排出量との関連性

1870年からの累積人為起源CO2排出量

2050年の年間

GH

G排出量の

2010年比変化

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

2050年の年間

GH

G排出量の

2010年比変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

リスクの水準は2050年までのGHG排出量の変化に関連しうる。CO2以外のガスの対策、2050年以前の対策のタイミング、2050年以降の対策の野心の度合いにより、追加的

な不確実性が生じる

1870年からの累積人為起源CO2排出量

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

2050年までのGHG排出量変化の制約は、気候応答の感度に依存する。

ここでは気候感度が大きい場合

1870年からの累積人為起源CO2排出量

480-530

430-480

530-580

580-720

ベースライン

720-1000

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

(℃)

(GtCO2)

2000年代の観測値

(A)

480-530

430-480

530-580580-720

ベースライン720-1000排出量増加

排出量減少

2010年の排出量と同じ

(C)(%)

(B)

工業化以前からの世界平均気温変化

気候変動による追加的なリスク水準

非常に高い

高い

中程度

検出できない

2050年までのGHG排出量変化の制約は、気候応答の感度に依存する。

ここでは気候感度が小さい場合

1870年からの累積人為起源CO2排出量

IPCC AR5 Synthesis Report

気温上昇を2℃までに抑えるには

2度未満の気温上昇に抑えるために排出量を大幅に削減する施策は存在する。

適応と大幅かつ長期的なGHG排出削減の組み合わせは気候変動のリスクを抑制する。

GHG排出の削減実施は、かなりの技術的、経済的、社会的、制度的課題を提起する。

しかし、緩和策の遅れは気温上昇を2℃未満に抑える際の課題を大きく増加させる。

AR5 WGI報告書 SPM 、 AR5 WGII報告書 SPM 、AR5 WGIII報告書 SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

緩和策

より効率的なエネルギー活用

低炭素・脱炭素エネルギーのより多くの活用・今日、これらの技術の多くは存在する

炭素の吸収源の改善・森林劣化の減少、森林管理の改善、新規植林・二酸化炭素回収・貯留付バイオエネルギー

生活様式や行動の変化

AR5 WGIII報告書 SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

野心的な緩和策には対応し得る(Affordable)

➜ 年間の経済成長率は~0.06%減少する。(ベースラインの成長率1.6~3%)

➜ これは、成長が遅延し、既定通りではなくなることを意味する。

➜ 推定されるコストには、気候変動が低減した際の便益は含まれていない。

➜ 追加的緩和策の遅れは、中長期的な緩和コストを増加させる。

AR5 WGI報告書 SPM 、 AR5 WGII報告書 SPM より

IPCC AR5 Synthesis Report

我々の選択が異なった結果を導く

大規模な緩和を伴った場合

追加的な緩和を伴わない場合

地上平均気温の変化(1986-2005年と2081-2100年の平均)

AR5 WGI報告書 SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

行動に適した時期は急速に終わりつつある

2℃目標に対応する炭素バジェットの65%は既に使用されている。

1870-2011年に使用された量

1900GtCO2

残余分:

1000GtCO2全炭素バジェット:

2900GtCO2

AR5 WGI報告書 SPMより

IPCC AR5 Synthesis Report

IPCC 第5次評価報告書(AR5)

統合報告書