190514 食道内圧によるpeepの調整・換気量は6ml/pbw kgに設定 ・peepは呼気終末p...

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ICU勉強会 レジデント3年⽬ ⼟井 万由⼦ 2019;321(9):846-857

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Page 1: 190514 食道内圧によるPEEPの調整・換気量は6ml/PBW kgに設定 ・PEEPは呼気終末P Lが0-10cmH2Oになる ように設定 ・P Lに応じてFiO2を設定 ・換気量の上限は吸気終末PL

ICU勉強会レジデント3年⽬ ⼟井万由⼦

2019;321(9):846-857

Page 2: 190514 食道内圧によるPEEPの調整・換気量は6ml/PBW kgに設定 ・PEEPは呼気終末P Lが0-10cmH2Oになる ように設定 ・P Lに応じてFiO2を設定 ・換気量の上限は吸気終末PL

Introduc)on• ARDSの治療において⼈⼯呼吸管理中の機械的肺損傷を制限する事が最も病態の改善に効果的であると知られている

• 肺障害の発⽣機序:

過膨張の防⽌→1回換気量と最⾼気道内圧の制限、換気量を低く保つことは有効である

虚脱・再開放の繰り返しの防⽌→適切なPEEPの使⽤が有⽤と考えられるが、未だ明らかでない

The ARDS Network. N Engl J Med 2000;342;1301-1308

肺胞の過膨張+虚脱・再開放の繰り返し

⼀⽅で

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Introduc)on・⼈⼯呼吸器の条件設定には主に気道内圧が指標として⽤いられる。・しかし気道内圧だけでは、胸腔内圧や腹腔内圧によって患者毎にかかる圧は異なる。

経肺圧(PL)=気道内圧ー胸腔内圧胸腔内圧は⾷道内にバルーンカテーテル挿⼊により測定する⾷道内圧(PES)で推定可能である。

実際に肺にかかる圧=経肺圧

経肺圧(PL)=気道内圧(PAW)-⾷道内圧(PES)

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⾷道内圧測定の意義①胸郭コンプライアンス上昇の評価

②⼈⼯呼吸器との不同調と呼吸仕事量の評価

INTENSIVIST VOL.7 NO.1 2015-1より

③PEEPの設定

④経肺圧の測定による肺障害の軽減

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⾷道内圧測定の意義③PEEPの設定

④経肺圧の測定による肺障害の軽減

INTENSIVIST VOL.7 NO.1 2015-1より

・腹部膨満や胸郭の浮腫など胸郭コンプライアンスが低下した状態では呼気終末の胸腔内圧が陽圧である事も多く、経肺圧を参考にPEEPを設定する事によって肺コンプライアンスの改善且つ過膨張も避けられる可能性がある。

・⼈⼯呼吸器設定や深鎮静によっても経肺圧が制限出来ない場合には筋弛緩薬の投与を考慮すべきである。

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経肺圧を考えるー例ー症例)・50歳男性。重症急性膵炎の診断にて⼊院。尿量保てず輸液負荷を続けていた所、腹部膨満が進⾏し腹腔内圧20mmHgとなり腹部コンパートメント症候群となった。

・頻呼吸、酸素化不良にて挿管、⼈⼯呼吸器管理開始。⾃発呼吸なし、AC/PC FiO2 100%,Pi 22mmHg,PEEP 8mmH2O,f 23/minの設定で開始したがSpO2 90%,1回換気量200mlしか⼊らない。

⼤量輸液や腹⽔による腹腔内圧の上昇により胸郭コンプライアンスが低下する。⾷道内圧(=胸腔内圧)を測定する事により肺コンプライアンスと胸郭コンプライアンスを分けて評価できる

⼈⼯呼吸器レジデントマニュアルより引⽤

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経肺圧を考えるー例ー

・⾷道内圧 吸気時20mmHg,呼気時13mmH2OΔ⾷道内圧7mmHg

・経肺圧 吸気時10(30-20)mmHg,呼気時-5(8-13)mmHg

Δ経肺圧15mmHg

*呼気終末経肺圧がマイナス:胸腔内圧>気道内圧で肺胞が虚脱している可能性⾼い*①肺を広げるために必要な圧は15cmH2O❷胸郭を広げるために必要な圧は7cmH2O胸郭のコンプライアンスも低下しており1回換気量を増加させるためにさらに気道内圧を上げても安全かもしれない

⼈⼯呼吸器レジデントマニュアルより引⽤

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このように経肺圧を考えることで・・・

肺胞の過膨張+虚脱・再開放の繰り返し

を防ぐための適切なPEEP設定が⾒つけられるかもしれない。

肺障害の発⽣機序:

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先⾏研究ーEP Vent Trial

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Methods

【試験】・単施設、⾮盲検化,ランダム化⽐較試験(Beth Israel Deaconess Medical Center in Boston)【対象】・American-European Consensus Conference definitionでALIまたはARDSと診断された患者・PES -guide PEEP群とARDS Network standard-of-care群(=low PEEP-FiO2 table群)にランダム化割付【除外基準】・最近の外傷、⼤きな気管⽀肺瘻、臓器移植後

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Methods-呼吸器設定-・最初に40cm H2O,30秒間のリクルートメントを⾏う

【PES-guide PEEP群】・換気量は6ml/PBW kgに設定・PEEPは呼気終末PLが0-10cmH2Oになるように設定

・PLに応じてFiO2を設定・換気量の上限は吸気終末PL<25cmH2O

【Control群】・ARDSNet studyで報告されたLow-tidal-

Volume strategyに準じる・換気量は6ml/PBW kgに設定・PEEPは呼気終末気道内圧<30cmH2Oの範囲内で設定

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Methods・PaO2:55-120mmHg,SpO2:88-98%,pH:7.30-7.45を⽬標とする・24,48,72時間後に評価【Primary End Point】・酸素化の改善:72時間後のP/F⽐

【Secondary End Point】・呼吸器のコンプライアンス、患者outcome:28⽇間の呼吸器離脱期間、ICU滞在期間、28⽇/180⽇後の死亡

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Results

・中間解析で中⽌基準に達したため、患者61名の時点で終了となった

・72時間後のP/F ratioがPES guide PEEP群で88 mmHg⾼かった(95%CI 78.1-98.3,P=0.002)・24,48,72時間いずれの時点でも同様の結果が認められた(P=0.001)

・呼吸器のコンプライアンスについても24,48,72時間いずれの時点でも有意に良かった(P=0.01)

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Results

・PES-guidePEEP群で72時間後のPEEP,吸気最⾼圧,平均気道内圧、吸気終末PESが有意差を持って⾼い

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Results

P/F⽐ コンプライアンス

最初72時間での換気量に対するDeadSpaceの割合は有意差なし

24時間時点でも有意差あり

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Results

PES-guide群は最初の設定からのPEEPの増加が多い

呼気終末PL Plateau圧

吸気終末PL

・有意差なし

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Results

28,180⽇死亡率、ICU滞在期間、28⽇までのICU離脱期間、呼吸器離脱期間には有意差を認めない

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先⾏研究ーEPVent

•しかし• EPVentは1施設で⾏われた研究•あらゆる重症度のARDS患者が含まれている•最近の複数の研究で使われている/後の重症

ARDSに関するメタ解析で⽰されたよりも低いPEEPの設定(=low PEEP-FiO2 table)となっている

【結論】今までのstandard-of-careと⽐較してPESguide PEEP調整は有意に酸素化とコンプライアンスを改善した。

Ferguson ND et al;N Engl J Med.2013;368(9):795-805Mercat A et al;JAMA.2008;299(6):646-655Meade MO et al;JAMA.2008;299(6):637-645Brower RG et al;N Engl J Med.2004;351(4):327-336

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先⾏研究ーEPVent

-Editorialより-・EndPointをP/F⽐としている・ARDSnetの推奨よりもPaO2設定が⾼い→PES-guidePEEP群で経肺圧に基づいたPEEP設定でコントロール群より⾼い値となった事でPaO2が更に⾼くなり、結果としてP/F⽐に⼤きな差が出てしまい研究が途中で中⽌になった。

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EP-Vent2TrialARDSの管理において⾷道内圧測定によってPLがマイナスにならないようなPEEP調整を⾏うことはEmpirical High PEEP-FiO2法に⽐べてより効果的である。

仮説

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Methods

【試験】・多施設、⾮盲検化、無作為化⽐較試験【期間】・2012年10⽉31⽇〜2017年9⽉14⽇【施設】・アメリカ・カナダの14施設【プロトコール】・2014年に発表されたEPVent2Protocolに基づいて⾏われた

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Methods【対象】✓16歳以上の36時間以内に診断された中等度〜重度ARDS患者(P/F⽐200mmHg以下)✓ARDSの診断:Berlin定義4つを全てみたす発症 何らかの侵襲または新しい呼吸器症

状から1週間以内酸素化 PEEP≧5cmH2Oで

軽症:P/F⽐201~300中等症:P/F⽐101~200重症:P/F⽐≦100

胸部画像 胸⽔、無気肺または⼩結節影のみでは説明のつかない両側浸潤影肺⽔腫の原因:⼼不全や輸液過剰のみでは説明のつかない肺⽔腫

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Methods

【除外基準】✓⾷道内留置や⾼いPEEPに禁忌がある✓治療制限の意思がある✓96時間以上⼈⼯呼吸器管理下にある✓Child-Pugh12点以上の肝不全✓頭蓋内圧亢進✓活動性の気胸✓重篤な凝固障害✓神経筋疾患

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Methods

✔PESguide-PEEP群とempirical HighPEEP-FiO2に基づいたPEEP調整群に1:1でランダム化して割り付け。ランダム化は各施設で層別化。✔全ての患者は36時間以内にどちらかの群に割り付けられ、呼吸器の設定が⾏われた。✔調査者は研究終了まで結果は知らされない

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Methods–両群での共通事項

✓両群で30秒間、35cmH2Oの圧をかけてリクルートメント⼿技を⾏った✓PLは期間中少なくとも1⽇1回、呼気終末・吸気終末圧の測定を⾏った。✓鎮静・筋弛緩・レスキューの内容は治療している医師の裁量に任された✓患者は28⽇間経過または以下に当てはまる場合以外は継続①呼吸器離脱②プロトコール失敗(重篤な低酸素⾎症、アシデミア)③安全性の理由による離脱④同意の撤回⑤死亡

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Methods-rescue therapy-✔FiO2=1.0でもPaO2≦55mmHgまたはSpO2≦88mmHgの場合✔Acidemiaが重度でコントロール不能の場合

Rescue Therapyを施⾏

✔⽅法は各施設、医師の判断による✔内容)リクルートメント、伏臥位療法、NO、エポプロステノール、⾼頻度換気、ECMO

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Methods-PES-Guided PEEP Group✔PEEPを少なくとも1⽇1回調整し呼気終末PLを0-6cmH2Oの間とする

✔⽬標とする酸素化を達成できる最も低いPL-FiO2の組み合わせとする

酸素化

PL-FiO2組み合わせ

✔呼気終末PL≧20cmH2Oの場合は4ml/kgPBWまでTVを減らす

✔重篤な呼吸不全やアシデミア→呼気終末PL≦20cmH2Oの範囲内で8ml/kgPBWまでTV増やす

換気

✔24時間FiO2 0.5以下で呼気終末圧0cmH2Oが達成できたら、呼吸器ウィーニングしPLによらずPEEP,FiO2を減らす

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Methods-Empirical PEEP-FiO2 Group✔途中でPES群への転向は禁⽌✔計測したPLの値は治療チームには隠された

✔⽬標とする酸素化を達成できる最も低いPEEP-FiO2の組み合わせとする

酸素化

PL-FiO2組み合わせ

✔呼気終末PPLAT≧35cmH2Oの場合は4ml/kgPBWまでTVを減らす

✔重篤な呼吸不全やアシデミア→呼気終末PPLAT≦35cmH2Oの範囲内で8ml/kgPBWまでTV増やす

換気

OSCILLATE trial

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Primary End Point28⽇間の『死亡』と『⼈⼯呼吸器からの離脱期間』をスコア化したもの

✔『死亡』は『少ない⼈⼯呼吸器離脱期間』よりも悪い結果と定義する

✔⼈⼯呼吸器からの離脱期間は⼈⼯呼吸器が外れてから28⽇⽬までの⽇数各群1⼈ずつをペアとして・・・

Tie:0点Win:+1点Loss:-1点

で点数付け、両群それぞれ合計値をMann-Whitney法を⽤いて⽐較

⽣き延びた:1点VS

亡くなった:-1点

例)両者⽣き延びた場合・・・呼吸器離脱期間が⻑い:1点

VS呼吸器離脱期間が短い:-1点

両者離脱期間が同じ場合もしくは

両者亡くなった場合:0点

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・・・・・・

・・・・・・

患者1

患者2

患者102

患者A

患者B

患者ZZ

PES-guide PEEP群 Empirical PEEP-FiO2群

・⽣存・15⽇間呼吸器離脱

・死亡

・⽣存・18⽇間呼吸器離脱

・⽣存・15⽇間呼吸器離脱

+1点

ー1点

0点

0点

各患者の合計の点数を算出

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Secondary End Points

✔28⽇,60⽇,1年での死亡率✔28⽇間の⼈⼯呼吸器離脱⽇数✔28⽇,60⽇のICU/病院滞在期間✔レスキュー治療を必要としたプロトコール失敗

✔1年後の機能的予後

・最⼤のPEEP/FiO2にも関わらず治療抵抗性の低酸素⾎症(PaO2<55mmHg or SpO2<88%)・最⼤のVT/RRにも関わらず治療抵抗性のAcidemia(pH<7.15)

⽇常⽣活・⾝体的活動性/メンタルヘルス/虚弱性

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Safety End Points

✔28⽇までのショック離脱⽇数✔28⽇までの気胸、気管⽀瘻、barotrauma、透析を必要としたAKIの発⽣、その他重篤なイベント

・barotrauma=気胸、縦隔気腫、⽪下気腫、気管⽀瘻の存在・⻑期間透析を受けている⼈は除外

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Sta)s)cal Analyses-sample size-

✔EPVent trialに基づいて患者数200⼈に設定→両側α=0.05,検出⼒85%✔28⽇死亡率はPES-PEEP群で30%,empirical PEEP-FiO2群で20%と算出✔28⽇までの呼吸器離脱①呼吸器離脱できない割合:PES-PEEP群15%vs empiricalPEEP-FiO2群10 %②呼吸器離脱⽇数:PES-PEEP群15⽇(SD6.5)vs empiricalPEEP-FiO2群13⽇(SD6.5)

PES-PEEP群は死亡率は下がるがその分呼吸器離脱できない割合は増えると算出

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Sta)s)cal Analyses

✔Primary analysisはintenjon-to-treatで⾏われた✔⾷道内にバルーン留置困難な場合や、24時間以内に死亡する患者はEpventに基づいた呼吸器設定に伴う恩恵を受けられていない可能性を考慮→Second analysisは①24時間⽣存②介⼊可能であった③28⽇まで評価可能なデータがある場合にper-protocolで⾏われた

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Sta)s)cal Analysis

✔Primary End PointはMann-Whitney U testで解析✔⽣存曲線はKaplan-Meier法で描きログランク検定で⽐較✔28⽇,60⽇,1年死亡率、AKI、気胸、Barotrauma、レスキュー治療の使⽤に関してはフィッシャーの正確確率検定を⽤いた✔呼吸器離脱⽇数、ショック離脱⽇数、ICU/病院滞在⽇数はMann-Whitney U testで解析✔SAS version 9.3を使⽤

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Result-study popula)on-

・14施設、1施設あたり平均9⼈

・2⼈が同意を撤回

244⼈:治療制限の意思がある177⼈:rescue therapyの使⽤169⼈:96時間以上⼈⼯呼吸器管理下にある158⼈:⾷道内留置に禁忌がある134⼈:Child-Pugh12点以上の肝不全129⼈:肺・肝移植97⼈:頭蓋内圧亢進63⼈:活動性の気胸36⼈:重篤な凝固障害26⼈:神経筋疾患150⼈:医療者側の拒否

130⼈:代理での同意が得られない69⼈:研究チームが不可能であった7⼈:⾔語による障壁5⼈:その他

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Result-study popula)on-

患者背景

APACHE-Ⅱ、SOFA

ARDS risk factor敗⾎症肺炎誤嚥

持続するショック複数回輸⾎急性膵炎外傷

・平均年齢58歳・男⼥⽐はPES-guidePEEP群で男性が多い

・APACHE-Ⅱは27-28・SOFAは11と相違なし

・敗⾎症8割以上・肺炎7割程度・誤嚥2割・ショックは1割ー2割・複数回の輸⾎1割・急性膵炎や外傷は少数

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Result-study popula)on-pHPaCO2PaO2P/F⽐

筋弛緩の使⽤循環作動薬、ステロイド使⽤

2群ともに患者背景に⼤きな相違なし

1回換気量気道内圧PEEPFiO2呼吸回数分時換気量⾷道内圧/経肺圧Driving Pressureコンプライアンス

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Results

✔プロトコールのアドヒアランスは⾼かった指定されたPEEPから2cmH2O以内:PES-guidePEEP調整群93.3%,

empiricalPEEP-FiO2 調整群94.6%

✔最初の⼈⼯呼吸器設定 PEEPの調整:PES-guidePEEP調整群+3cmH2O(SD 6),

empiricalPEEP-FiO2 調整群+3cmH2O(SD 4) p=0.89

✔⼈⼯呼吸器設定 PEEPを少なくとも5cmH2O変更した割合:PES-guidePEEP調整群37.6%,

empiricalPEEP-FiO2 調整群35.7% p=0.88

有意差なし

有意差なし

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Results

✔ベースラインからのPEEPの調整量:PES-guidePEEP調整群 最⼤20cmH2O増加,12cmH2O低下

empiricalPEEP-FiO2 調整群 最⼤13cmH2O増加、5cmH2O低下

✔ベースラインからのPEEPの調整割合:PES-guidePEEP調整群 増加 64.3%,低下 16.8%,変更なし 18.8%

empiricalPEEP-FiO2 調整群 増加 57.1%,低下 15.3%,変更なし 27.6%

✔初⽇のPEEPとFiO2設定:PES-guidePEEP調整群 PEEP:17(SD 6)cmH2O, FiO2:0.56(SD 0.15)

empiricalPEEP-FiO2 調整群 PEEP:16(SD 4)cmH2O, FiO2:0.51(SD 0.17)

(PEEP p=0.28, FiO2 p=0.048)

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Results呼気終末経肺圧 吸気終末経肺圧

PES-guidePEEP群の⽅が1週間のPLの下がり⽅は緩徐

両群で有意差はなかった

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Results

PEEP設定

両群で有意差はなかった

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Results

両群で有意差はなかった

呼気終末⾷道内圧 PaO2-FiO2

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Results

両群で有意差はなかった

気道内Driving pressure

経肺Driving pressurePlateau圧−PEEP 吸気終末PL−呼気終末PL

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Results-Primary End Points-

28⽇以内の死亡+呼吸器離脱⽇数のスコアリングでは有意差なし

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Results-Secondary End Points-

Rescue therapy を受けた数は有意差を持ってPES-guide群で少ない

16⼈がrescue therapyを受けた:低酸素⾎症10⼈Acidemia 2⼈理由不明4⼈

肺⾎管拡張薬

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Results-Secondary End Points-

60⽇までの死亡率

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Results-safety End Points-

いずれも有意差は認めない

28⽇以内のAKIからの透析導⼊は有意差はないがPes-guidePEEP群で少ない

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Results-Post Hoc Analysis-✔もし患者がもう⼀⽅の群に割り当てられた場合、最初のPEEP設定がどのくらいの頻度で異なるか

192例のデータを使⽤もう⼀⽅の群では実際の設定と2cmH2O以上異なる設定となるのは103例(53.6%)

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Discussion

✔Atelectrauma(無気肺と再膨張の繰り返しから肺胞に対してせん断⼒がかかり肺胞が障害される事)を防ぐ・不均⼀をなくすためには⼤半の肺胞を開存出来るだけ⼗分なPEEPが必要✔⼀⽅、肺胞に圧がかかりすぎるのを最⼩限にするために低いPEEPである必要もある

→今回のTrialではPES-guide群ではPEEPは呼気終末でPL≒0となるように調整したしかし期せずしてempirical PEEP-FiO2群でも呼気終末のPEEPに有意差が⽣まれなかった。

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Discussion-先⾏研究(EP Vent)と本研究(EP-Vent2)の相違点

①先⾏研究では⽐較群でのempiricalPEEP-FiO2がLowPEEP群であったため両群間の呼気終末PLに⼤きな差が⽣まれたが、本研究では相違がなかった。

②先⾏研究ではempirical PEEP-FiO2群の平均呼気終末PLが常に0cmH2O以下であった(=atelectraumaが起こりやすい)のに対し、本研究では3⽇⽬まで0cmH2O以上であった。

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Discussion-先⾏研究(EP Vent)と本研究(EP-Vent2)の相違点

③先⾏研究ではPES-guidePEEP群だけDriving pressureが1度下がってコンプライアンスの改善が得られた

④先⾏研究では多くの患者が肺以外のARDSの risk factorを有していた。40%が腹部疾患(膵炎、胆管炎、腸閉塞、消化管穿孔)あり←腹腔内疾患に伴うARDSの場合、腹腔内圧の上昇に伴って肺を広げる⼒がより⼤きくかかりうる。

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Limita)ons

①臨床的に意義のある有意な差を得るには数が少なすぎた可能性がある②PES,PLの測定法がPES-guidePEEP群の治療実施を妨げた可能性がある(正確性)③⾷道中部に留置したバルーンで経肺圧は適切に測定できるが、肺の含気や無気肺の程度は肺の部位によって異なる④本研究でもARDSに対してどちらのPEEP調整がより良いかは不確かなままである

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Limita)ons

⑤本研究ではrescue therapyを除いて伏臥位療法を禁⽌している。←現在進⾏中の研究にてmodest empirical FiO2-PEEP調整法で伏臥位の⽅が⽣存率を改善するとの結果あり。

⑥各患者の⽣物学的多様性が異なった治療への反応性を⽰す可能性がある

Guerin et al;PROSEVA Study Group.Prone posijoningIn severe acute respiratory distress syndrome.N Engl J Med.2013;368(23)2159-2168

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Conclusions

✔中等度〜重度のARDS患者において、PES-guidePEEP調整群はempirical high PEEP-FiO2 群と⽐較しても死亡と呼吸器離脱⽇数に有意差は認めない。

✔ARDS患者においてPES-guidePEEP調整を⽀持する項⽬は指摘できなかった

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・ARDSの概念は50年以上前に提唱された。ARDSが単独で起こる事は滅多になく、病態としては呼吸不全だけでなく多臓器不全をきたす。⼈⼯呼吸器の上⼿な使⽤により呼吸不全はARDS患者の死亡原因には滅多にならないと⾔われてきた。

・ここ数⼗年で⼈⼯呼吸器⾃⾝による肺障害=VILIの概念が提唱された。圧や容量負荷に伴う障害により多臓器に影響を及ぼす可能性があり、呼吸器の設定は酸素化改善よりもVILIを防ぐ事を⽬標として設定されるようになった。

・PEEPの最適化は簡単な事ではない。Atelectraumaを防ぐ⇆肺の過膨張を引き起こす更に ⾼すぎるPEEPは静脈還流を妨げ⾎⾏動態の破綻をきたす可能性もある

最適なPEEPとは⼀体何か、⾒つける最善の⽅法とは何か?

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・過去にはhigh-PEEP vs low-PEEPで⽐較された研究が複数存在する。個々のTrialではHigh-PEEPの効果や死亡率への影響は⽰されなかった。

Meade MO et al,JAMA 2009;299(6):637-645Brower RG et al,N Engl J Med 2004;351(4):327-336Cavalcanj AB et al,JAMA 2017;318(14):1335-1345Talmor D et al,N Engl J Med 2008;359(20):2095-2104

PEEPの⾼い/低いの設定だけでは簡略化しすぎており、⼗分に個別化されていない。同じPEEPであっても が異なればVILIのリスクも異なる

EP-Vent trial EP-Vent-2

・単施設・対象患者61名・vs low-PEEP-FiO2 table・最初3⽇間P-ES guide PEEP群で6cmH2O⾼い・酸素化と肺コンプライアンスの改善あり・死亡率の低下に有意差は認めない

・多施設ランダム化・対象患者200名(102名vs 98名)・vs high PEEP-FiO2 table・28⽇間死亡+呼吸器離脱⽇数のスコアリングで有意差なし・有意差を認めたのはrescue therapyを受けた頻度のみ

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・primary outcomeとして採⽤されたスコアリングは斬新であり、より少ないサンプル数で違いを証明する可能性を増やすかもしれない。しかしながらEP-Vent trialで⽰唆されたPES-guidePEEP調整の有⽤性を証明出来なかった

①先⾏研究は単施設、⾮盲検化試験であった②先⾏研究はbenefitのため研究が早期に終了となった

→過⼤評価されやすい③先⾏研究ではvs low PEEP-FiO2 tableのためPEEPに差があったが本研究ではHigh PEEP-FiO2 tableであったためPEEPに差がなかった④PES-guide PEEP群の測定に関する技術的問題

→経肺圧が2cmH2Oの時が肺の特性上最も妥協できる圧に近いと⾔われているが、、、⾷道内圧の測定の際バルーンの内容量の影響を受ける=1ml多く⼊ると⾷道内圧は1.5cmH2O増加してしまう

必要なPEEPを多く⾒積もることになる

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⾷道内圧測定の問題点

⾷道バルーンの位置や空気の量の影響で連続的な測定では位置のズレや空気漏れの問題がある

・胸腔内圧は⼀定ではなく胸腔内の測定部位によって異なる(重⼒の影響で上部ほど低い)=⾷道内圧は胸腔内の⼀部の胸腔内圧を反映している

・体位、腹部膨満、⼼臓・縦隔の重み等も⾷道内圧に影響する→影響因⼦を差し引いた呼気終末の⾷道内圧の基準点はいくつであるのか?

本来は仰臥位、健常肺の状態で肺気量が機能的残気量、呼吸努⼒のない時の呼気終末時の⾷道内圧を基準とするべきであるがその内圧を決める⼿⽴ては未だない。

⾷道内圧測定による経肺圧のモニタリングの限界も⽰唆している

技術的な問題点

理論的な問題点

INTENSIVIST VOL.7 NO.1 2015-1より

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⑤ARDS患者において肺の⼒学的性質と⾎液ガス分析結果の乖離が⾒られる。局所的/不均⼀にconsolidajonを有するARDS患者の場合、シャント量が⼗分に推定されず、PEEP-FiO2 tableの使⽤で過度のPEEPにミスリードする可能性がある(⾼いFiO2必要とする患者に過⼤なPEEPをかけるかもしれない)

⑥サンプルサイズの計算では2群間で10%の死亡率の差が出ると算出していた。PES-guidePEEPの使⽤で⼤きな差が出ると予想していたが、実際にはPL,PEEP,Driving pressure,P/F⽐いずれも差が⽣まれなかった。死亡率差10%と仮定しているが実際には全て呼吸器合併症で死亡するという根拠にもかけていた微⼩な差の検出に対しては総数が少なかった可能性がある。

EP-Vent-2で⾔えることは、中等症〜重度ARDS患者の⼤半の患者において、簡単に広く使⽤可能なPEEP調整でより侵襲的で費⽤のかかる⾮効率的なPEEP調整と同様の臨床的outcomeを得られるということ

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批判的吟味・設定された課題への研究⽅法→PES-guide群とempirical high PEEP-FiO2群の両群に分けてランダム化⽐較試験を施⾏。empirical PEEP-FiO2群に関しては過去のsystemajc reviewとも合わせてLowよりもHighの⽅が妥当性があると考えられたためにHigh PEEPの設定となった。

・盲検化されていたか→⾮盲検化。調査者は研究終了まで盲検化。

・対象患者数→sample size計算がされているが臨床的意義のある結果を検出するには数が少なすぎた可能性がある。

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私⾒・本研究ではPES-guide PEEP群の有⽤性を⽰す事は出来なかった・EP-Ventでは⼤きな差が出たが本研究では出なかった・以前の研究でlow-PEEP vs High-PEEPでも結果に有意差は認めなかった

・⾷道内圧を測定しなくともhigh PEEP-FiO2 tableを使⽤する事で呼気終末PL=0に近付ける事が出来たという結果は現在の当院におけるICUでの実臨床に活かしやすいという意味では有⽤であると考える。

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私⾒

・今回の研究ではrescue therapyの頻度だけに有意差を認めたが、プロトコールでRescueの内容は医療者の判断に任せられていた

・伏臥位療法の有⽤性は今後認められる可能性もあり、伏臥位療法で筋弛緩が効いている状態でのP-ES guide PEEP調整はもしかした有⽤性があるかもしれない?

・⾷道内圧がどこまで正確に測定できているか、正確であったとしてもどこまで胸腔内圧を反映できているのか

前述の通り、⾷道内圧の測定には技術的にも理論的にも現時点では限界がある。⾷道内圧がもっと簡便に/正確に/費⽤をかけずに測定可能になれば有⽤性はあるかもしれない。(が、そんな夢のような⽅法はなさそう・・・)