参考資料1-13「社会的な導入効果に係る文献調査結果」 ·...
Post on 27-Nov-2019
6 Views
Preview:
TRANSCRIPT
125
参考資料1-13「社会的な導入効果に係る文献調査結果」
歩行者分布に関する文献調査結果について、文献一覧および各文献の知見を以下に示す。
表1 文献一覧
NO 論文名 執筆者 書誌 発行年 ①歩行者が相対的に多い場所(効果を享受する人が多い)の抽出手法の整理
1-1 都市空間における歩行者の経路選択傾
向に関する研究 : 歩きたくなる街路の
物理的環境とその空間イメージ
斎藤寛彰 , 田中貴
宏 , 西名大作 , 永田斎記 , 稲地秀介
日本建築学会学術講
演梗概集, 547-548 2010
1-2 福岡市の都心商業地天神における歩行
者行動に関する研究 : その 3 歩行者行
動経路と歩行者行動モデル 伊藤和陽 , 黒瀬重幸
日本建築学会研究報
告. 九州支部 , (46), 317-320
2007
1-3 歩行者経路選択行動モデルを用いた経
路案内の有効性の検証 吉田育央 , 竹上直
也 , 塚口博司
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 31 , 118
2005
1-4 都心部における休日の歩行周遊経路選
択の分析
ZHANG Junyi , 藤原章正 , 杉浦祐二 . 日下部達夫
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 31 , 117
2005
1-5 目的地指向性および方向保持性による
歩行者の経路選択行動のモデル化 竹上直也 , 塚口博
司 , 阿部了
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 29 , IX(23)
2004
1-6 ラフ集合理論を用いた歩行空間の評価 下原祥平 , 島崎敏一 土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 30 , I(64)
2004
1-7 歩行環境の満足度における影響要因分
析 中島知彦 , 島崎敏
一 , 下原祥平
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 28 , IX(289)
2003
1-8 中心市街地における歩行者行動モデル
開発のための経路選択行動分析 (その 1) 北野雅士 , 大貝彰 , 菊地晃生
日本建築学会学術講
演梗概集, 625-626 2002
1-9 中心市街地における歩行者行動モデル
開発のための経路選択行動分析 (その 2) 菊地晃生 , 大貝彰 , 北野雅士
日本建築学会学術講
演梗概集, 627-628 2002
1-10 歩行者系道路の施設整備と交通手段・経
路選択行動に関する分析 仲村彩 , 内田敬 ,日野泰雄
土木計画学研究・講演
集 , 26(CD−ROM) , KOEMBANGO58
2002
1-11 歩行者の経路選択行動分析 塚口博司 , 松田浩一
郎 土木学会論文集 , 709 , 117-126, 2002
1-12 駅周辺の歩行者の回遊行動特性に関す
る研究
加納征子 , 長澤夏
子 , 山口有次 , 渡仁史
日本建築学会学術講
演梗概集(関東) , 777-778
2001
1-13 歩行経路の選択 紙野桂人 , 舟橋國男 空間移動の心理学(福
村出版) , 60-82 1992
②歩行者が滞留する場所(効果を享受する時間が長い)の抽出手法の整理
信号待ち
2-1 信号交差点における歩行者信号切り替
わり時と歩行者横断挙動に関する解析 伊藤恵美子 , 大口
敬 , 鹿田成則
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 29 , IX(47)
2004
バス停
2-2 中心市街地を走行するコミュニティバ
スの利用特性に関する研究 金井絵理 , 中村文
彦 , 矢部努
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 30 , I(1)
2004
126
NO 論文名 執筆者 書誌 発行年
待ち合わせ
2-3 休憩および待ち合わせ行為に関する嗜
好空間の分析 : 都市のパブリックスペ
ースの研究(その 2) 土田寛 , 積田洋 日本建築学会計画系
論文集 , (596), 59-66 2005
2-4 携帯電話が待ち合わせ行動に与える影
響 平野孝之 , 大森宣
暁 , 原田昇
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 29 , II(194)
2004
2-5 駅構内と駅周辺施設における待ち合わ
せ場所の選択行動に関する研究 平野孝之 , 大森宣
暁 , 原田昇
土木計画学研究・講演
集(CD−ROM) , 28 , I(64)
2003
2-6 携帯電話が変化させる空間に関する研
究 : 待ち合わせについての研究
葛島知佳 , 高柳英
明 , 木村謙 , 山口
有次 , 渡辺仁史
日本建築学会学術講
演 梗 概 集 , 1049-1050
2000
歩行速度
2-7 街路空間特性と歩行速度の関係 松本直司 , 清田真
也 , 伊藤美穂
日本建築学会計画系
論 文 集 , 74(640), 1371-1377
2009
③熱的弱者が利用する施設などの整理
高齢者
3-1 東広島市における高齢者の外出行動特
性に関する研究 角谷弘喜 近畿大学工学部研究
報告 (44), 67-71 2010
3-2 歩行補助車を使用している高齢者の外
出状況と交通上の課題 安心院朗子 , 徳田克
己 , 水野智美 IATSS review 35(2), 131-138 2010
3-3 郊外住宅団地に居住する高齢者の外出
行動 : 年齢・健康状態・交通手段の有
無・団地特性との関係 吉村東 , 志田正男
日本建築学会東北支
部研究報告集 . 計画
系 (72), 169-172 2009
3-4 高齢者の街歩きの実態からみた福祉の
まちづくりの整備課題 三宮基裕 , 片岡正喜 九州保健福祉大学研
究紀要 9, 1-8 2008
3-5
「松戸市高齢者保健福祉計画及び介護保
険事業計画(いきいき安心プランⅡ)」
見直しのための市民アンケート調査報
告書
松戸市 - 2008
3-6
東京都心下町地域における在宅高齢者
の地域生活様態と外出行動に関する調
査 -千代田区神田地域のケーススタ
ディー-
篠田紀行 , 松本真
澄 , 谷口僚一 , 上野淳
日本建築学会技術報
告 集 13(26), 673-678
2007
3-7
老人福祉センターの利用に伴う外出行
動特性 : 都市居住高齢者のための地域
施設計画に関する研究・その 3(江東区の
場合)
川口駒貴 , 谷口汎
邦 , 天野克也 , 浅沼由紀 , 江川洋 , 鈴木航
日本建築学会学術講
演梗概集(関東) , 11-12
1997
3-8 中高齢者の外出行動特性について : 高層・超高層住宅における高齢者のための
生活空間計画に関する研究 その 2 浅沼由紀 , 谷口汎邦
日本建築学会学術講
演梗概集(東北) , 323-324
1991
幼児
3-9 安心して子育てができる環境整備のあ
り方に関する調査 鈴木圭一 , 沼尻恵子 JICE report (18),
32-38 2010
3-10 乳幼児同行者による駅利用に関する研
究 その 1 -外出行動の特性からみた
駅のあり方について-
松橋圭子 , 出井真
純 , 大原一興 , 藤岡泰宏
日本建築学会学術講
演梗概集(北陸) , 389-390
2010
3-11 妊婦と乳幼児帯同者の行動制限とその
要因
北川啓介 , 長坂真理
子 , 呉明宣 , 井上
暁代
日本建築学会計画系
論 文 集 73(628), 1243-1250
2008
127
1-1 斎藤 寛彰 , 田中 貴宏 , 西名 大作 , 永田 斎記 , 稲地 秀介(2010)「都市空間における
歩行者の経路選択傾向に関する研究 : 歩きたくなる街路の物理的環境とその空間イメージ」
神戸市長田区真陽地区周辺において、歩行者及び自転車利用者と対象に行ったアンケート調査
によると(有効回答数:314)、経路選択行動に関して下記の事項が分かった。 ・経路選択行動は道路幅員との関係が大きく、幅員の広い街路が選択されやすいと言える。特
に幅員4mを境に選択頻度に大きな差が生じており、幅員4m未満の路地は選択されにくい。 ・路地を除く街路では、空地や駐車場などの多い場所付近で選択頻度が低いという傾向が見ら
れる。これは、空地・駐車場が移動における目的地になりえないことや、視覚的な楽しみが
少ないことによるものと考えられる。
図1 空き地駐車場率と経路選択頻度との関連
・経路選択頻度と安全性、利便性、落ち着きといった肯定的な空間イメージとの間には正の相
関がみられた。 ・物理的環境要素として、店舗数密度と空き店舗数密度について、経路選択頻度とやや正の相
関がみられ、商業関連の物理的特徴を有する経路は経路選択頻度が高いと言える。 1-2 伊藤 和陽 , 黒瀬 重幸(2007)「福岡市の都心商業地天神における歩行者行動に関する研
究 : その 3 歩行者行動経路と歩行者行動モデル」
商業施設が立ち並ぶ地上、地下鉄の開設に伴い十分に整備された天神地下街を中心とした地下
がある、福岡市の天神一帯において行われた歩行者行動アンケート調査によると(有効回答数:
310 部)、行動経路に性別・年齢の違いが見られることが分かった。 男性は地上レベルのみの回遊が多いが地下レベルのみの回遊は少ないが、女性は、上下の移動
を行う地上+地下レベルの回遊が も多かった。 また、年齢では、10~30 代の比較的若い人は地上レベルのみの回遊が も多いが、40 代では
地下レベルのみ、50 代、70 代では地上+地下レベルの回遊が も多かった。
図2 歩行者行動経路と性別及び年齢
128
1-3 吉田育央 , 竹上直也 , 塚口博司(2005)「歩行者経路選択行動モデルを用いた経路案内の
有効性の検証」
空間的定位(※)に着目して構築された、歩行者経路選択行動モデルを用いて作成された経路にお
ける被験者による歩行実験結果によると、モデルによる経路選択確率が大きい方向へ案内した箇
所(図中の黄色棒グラフ)では、「違和感なし」と評価された比率がすべて 0.5 を上回っていた。
一方、モデルに反する方向の経路を案内した場合(図中の白色棒グラフ)、歩行者に違和感を持た
れやすい場合が多かった。
※空間的定位:目的地指向性(目的地の方向に進もうとする特性)と方向保持性(進行している
方向を維持しようとする特性)により表される指標。
図3 歩行実験における各分岐点の違和感の有無(大阪府淀川区市街地)
1-4 ZHANG Junyi , 藤原章正 , 杉浦祐二 . 日下部達夫(2005)「都心部における休日の歩行周
遊経路選択の分析」
広島市都心部において、休日における来訪者の都心での周遊行動の実態を把握するために行っ
たアンケート調査によると(回収数:562)、経路における店舗数と歩きやすさが経路選択におい
て重要視されていることが分かった。
図4 経路選択の際に考慮すること
129
1-5 竹上直也 , 塚口博司 , 阿部了(2004)「目的地指向性および方向保持性による歩行者の経
路選択行動のモデル化」
京阪神都市圏の 20 地区において、歩行者の空間的定位に着目して行われた、歩行者の経路選択
行動の調査(調査員による追跡調査もしくはヒアリング調査)から、以下のことが明らかとなっ
た。 ・目的地指向性は歩行者の経路選択に影響する。 ・方向保持性は歩行者の経路選択に影響する。 ・ 短経路方向であるか否かは歩行者の経路選択に影響する。 ・目的地指向性と方向保持性が経路選択に及ぼす影響は地区によって若干異なる。 ・十三、千林地区と、相対的に格子状の特性を有する苦楽園口地区を比較すると、前者の方が
短経路方向であるか否かが経路選択に大きく影響する。そのため 短経路は、街路網形態
が不整形であるほど経路選択行動特性に強く影響するのではないかと思われる。
図5 十三、千林、苦楽園口地区の街路網形態
1-6 下原祥平 , 島崎敏一(2004)「ラフ集合理論を用いた歩行空間の評価」
人の歩行空間への選好を調べるために行ったアンケート調査(対象者:19~30 歳の男女 20 名)
によると、ある対象を特定する際に特徴をラフに設定することで対象の集合の程よい記述を求め
るラフ集合理論を用いた結果、被験者全体における歩行空間の選好要因は下表のようになること
が明らかとなった。 表2 被験者全体の併合選好ルール
130
1-7 中島知彦 , 島崎敏一 , 下原祥平(2003)「歩行環境の満足度における影響要因分析」
茨城県取手市のJR常磐線藤代駅を中心とした半径1kmの調査地域において行ったアンケート
調査(回答数:148 名)を基に、歩行環境の満足度に関連する説明変数を数量化理論Ⅱ類により
分析したところ、歩行に対する満足度の も大きな影響を与える要因は安全面で、その次が歩道
幅であった。支合木や横断歩道の設置数に関しては、歩行環境にはあまり影響していないことが
分かった。 表3 数量化理論Ⅱ類による歩道の満足度に係るカテゴリースコア表
1-8 北野 雅士 , 大貝 彰 , 菊地 晃生(2002)「中心市街地における歩行者行動モデル開発のた
めの経路選択行動分析 (その 1)」
愛知県豊橋市における新豊橋駅前市街地において行った、歩行者の経路選択行動実験(サンプ
ル数 67 人(学生 32 人、社会人 35 人))から、出発地から目的地までの単純往復行動における経
路選択に関して、乖離度(物理的 短距離と実際の行動距離の比)の分析を行ったところ、様々
な属性等の違いが見られたものの、数量化Ⅰ類分析では説明変数相互でそれほど大きな違いが見
られず、どれも決定的に乖離度を説明できるものではなかったことから、様々な要因が説明変数
として複雑に絡み合っていることが考えられた。
図6 短距離に対する乖離度の特性
131
1-9 菊地 晃生 , 大貝 彰 , 北野 雅士(2002)「中心市街地における歩行者行動モデル開発のた
めの経路選択行動分析 (その 2)」
愛知県豊橋市における新豊橋駅前市街地において行った、歩行者の経路選択行動実験(サンプ
ル数 67 人(学生 32 人、社会人 35 人))から、出発地から目的地までの単純往復行動における経
路選択に関して、下記のことが明らかとなった。 ・ 短経路とそれほど距離が変わらないのであれば、 短経路ではなくても、魅力ある(人通
りが多い、道幅が広い、店舗が多い)通りを選ぶ傾向が強い。 ・信号や車によって進行を妨げられたとき、 短経路ではない方の道を選ぶことがある。 ・複雑な 短経路が行動経路として選ばれることは少なく、より直線に近いルートを選ぶ(直
線的に歩く)人が多い。 ・復路は、往路と異なる経路を選ぶ人が多い。 ・わずかではあるが、思わぬ理由により予測不可能な行動をする人がいる(理由は明らかでは
ない)。 また、制限時間を設定した(1時間)回遊行動実験では、回遊型の行動は単純経路選択行動と
は異なるように見えるが、回遊中に設定される個人的目的地までの経路選択行動の連続と捉える
ことができることが分かった。 1-10 仲村 彩 , 内田 敬 , 日野 泰雄(2002)「歩行者系道路の施設整備と交通手段・経路選択
行動に関する分析」
大阪府堺市の堺東駅および泉ヶ丘駅前の歩行者を対象に行ったアンケート調査(歩行者の回収
数:堺東 215 人、泉ヶ丘 306 人)によると、歩行者の主経路の選択理由は 短経路であることが
約半数であった。代替経路については、歩道の整備状況が理由として挙げられた。
図7 代替経路における経路選択理由
1-11 塚口 博司 , 松田 浩一郎(2002)「歩行者の経路選択行動分析」
関西圏の都市部(大阪市、京都市、神戸市、高槻市、和泉市)において行われた追跡調査(追
跡人数:584 人)によると、目的地までの距離、各街路間の歩行環境及び沿道利用状況に差がな
い場合、直進方向と目的地までの挟角が、男性では 56°、女性では 48°までは、歩行者は経路
選択を行う際、現在の状態を持続し、直線を優先することが分かった。
132
1-12 加納 征子 , 長澤 夏子 , 山口 有次 , 渡辺 仁史(2001)「駅周辺の歩行者の回遊行動特
性に関する研究」
渋谷及び池袋を対象に、駅周辺の歩行者数について、3つの説明変数「集客施設の影響」「駅か
らの距離の影響」「道路幅」による重回帰分析を行ったところ、「集客施設の影響」及び「道路幅」
は断面交通量の説明変数として妥当なことが明らかとなった(「駅からの距離の影響」の影響は少
なかった)。影響の重みは渋谷と池袋で異なったが、これには集客施設の数の違いが影響している
と考えられる。
図8 重回帰分析結果(渋谷及び池袋)と通過人数との対応(渋谷)
1-13 紙野 桂人 , 舟橋 國男(1992)「歩行経路の選択」
紙野・舟橋は、歩行経路選択に係る既往研究の整理を行っており、経路選択には 短距離指向
が一般的に認められているが、迂回行動が認められる場合、 短距離以上に歩行者を引きつけ、
導かれた選択としての迂回を誘発する条件として「歩道が整備され幅員の広い商店がある通り」
とまとめている。 そのほか、経路選択に係る知見には以下が挙げられている。
<等距離複数経路における経路選択について> ・ランダムな経路選択が行われるわけではなく、出発地を通る境界線上で分帰路に出会っても
その境界線上を進む確率が高い傾向、また出発地と目的地をつなぐ対角線上またはその近く
の分岐路では 初に歩き始めた時の側にとどまる傾向が指摘されている1。 ・方向保持性および目的地指向性の両方あるいは一方が満足されている場合と、両方の条件が
満足されていない場合とでは、約 80%が前者の方向へ進んでいる。また、方向保持性と目的
地指向性の優劣は明確でなく、一方が満足され他方が満たされないような場合には、経路が
選ばれる確率はほぼ等しい2。
<迂回行動について> ・ 短経路距離と実歩行経路との距離差に対する度数分布から累積 90%のサンプルが含まれる
点を迂回の限界として、経路長差で 50m、経路長差の比では 10%程度である(越・今西, 1975)3。また、山中・天野(1985)4によると、 短距離からの迂回率 10%以下のものが全体の9割
1 Garbrecht, D.:Pedestrian paths through a uniform environment.,Town Planning Review,42(1),71-84, 1971 2 毛利正光,塚口博司:歩行者の経路選択特性について,土木学会関西支部年次学術講演会講演梗概集,Ⅳ-28-1、
Ⅳ-28-2,1979 3 越正毅、今西芳一:歩行者の経路選択特性に関する研究,土木学会年次学術講演会講演梗概集,190-191,1975
133
を占め、迂回率0%のサンプルは 50%以下である。 ・複数の研究によると、短距離トリップでは 短距離選択が多く、トリップ長が長くなると迂
回するものが多くなる(もしくは迂回長が長くなる)傾向がある。 ・ 短距離経路から外れて歩行経路を選択する場合、国道・県道といった広い道路、歩道がは
っきり整備されている道路、商店街のある道路といった、繁華な経路を多く選択する(竹内, 1977)5。
・既往研究も含めて整理された経路選択に係る要因には、以下の項目が挙げられる(毛利・塚
口, 1979)6。 (1) 幅員が広い (2) 自動車交通量が多い (3) 舗装されている (4) 商店がある (5) 歩道が整備されている (6) 自動車に対する不安感がない
<移動の時間帯・目的の影響について> ・ラッシュアワーと昼間時とで経路選択の傾向(どの経路に集中するか)は変わらないが、昼
間時の方が集中率は約 10%程度高い(紙野・舟橋, 1974)7。 ・自宅→ 寄り駅とその逆方向とで、経路が異なる場合は、帰宅時の方がより単純な経路とな
る傾向がある(舟橋, 1991)8。 ・歩行目的によって迂回行動の程度が異なる(高辻・深海, 1983)9。
<歩行者属性の影響について> ・歩行不自由な老人や目の不自由な歩行者は、混雑する経路を避けて、物理的に不利だが閑散
な経路を選ぶ傾向がある(紙野・加納, 1977)10。 ・個人属性の影響はあまり大きくないが、男性・高齢者が 短距離経路をより選択する傾向に
ある(毛利・塚口, 1979)6。
4 山中英生,天野光三:多経路確率配分モデルを用いた住区内歩行者・自転車交通の経路配分方法,第 20 回日本
都市計画学会学術研究論文集,247-252,1985 5 竹内伝史:歩行者の経路選択特性に関する研究,土木学会論文報告集,259,91-101,1977 6 毛利正光,塚口博司:歩行者の経路選択特性について,土木学会関西支部年次学術講演会講演梗概集,Ⅳ-28-1、
Ⅳ-28-2,1979 7 紙野桂人,舟橋國男:群集行動に見られる空間的定位の傾向について,日本建築学会論文報告集,217,45-51,
1974 8 舟橋國男:格子状街路網地区における経路の選択ならびに探索に関する調査実験,日本建築学会計画系論文報
告集,428,85-92,1991 9 高辻秀興、深海隆恒:住宅地における歩行者の経路選択行動についての分析,昭和 58 年第 18 回日本都市計画
学会学術研究発表会論文集,199-204,1983 10 紙野桂人,加納誠恵:ターミナルエリアにおける老人及び身体障害者のための歩行施設計画条件に関する研究,
大阪大学大学院建築工学専攻修士論文
134
2-1 伊藤恵美子 ,大口敬 , 鹿田成則(2004)「信号交差点における歩行者信号切り替わり時と歩
行者横断挙動に関する解析」
横断歩道(幅員 7.5m、横断距離約 20m、中央分離帯が隣接)において、ビデオ撮影により歩
行者の横断挙動を解析した調査によると、待ち時間は 0 秒から約 60 秒までほぼ一様に分布してお
り、赤表示時間は 91~101 秒であるにもかかわらず 70 秒以上待つ歩行者は少ないことが分かっ
た。これは、隣接する横断歩道を渡って対象横断歩道を利用する歩行者が多いためだと思われる。
図9 対象横断歩道と待ち時間度数分布
2-2 金井絵理 , 中村文彦 , 矢部努(2004)「中心市街地を走行するコミュニティバスの利用特
性に関する研究」
中心市街地活性化の対策として導入されているコミュニティバスについて、各自治体に対して
サービス内容についてのヒアリング調査を行った結果、運行間隔等は下表のとおりであった。 このことから、コミュニティバス利用者について、ある程度待ち時間を想定することができる。
表4 コミュニティバスの提供するサービス
135
2-3 土田 寛 , 積田 洋(2005)「構内と駅周辺施設における待ち合わせ場所の選択行動に関する
研究」
6つの地区(国連大学、いすず、都庁、聖路加、日産、オペラシティ)において行った、待ち
合わせ行為についての PM 法(place - marking 法:行為をしたいと思う場所を図面上にマークさ
せる調査、被験者学生 12 名)の調査結果について、待ち合わせ行為に対する空間構成要素の寄与
度を数量化理論Ⅰ類分析したところ、以下のことが分かった。 ・要因レンジウェイトは、平面形状(18.5%)、敷地内の植栽の状況(18.1%)、サインの有無
(14.0%)の順で、全体の約5割を占めていた。 ・広幅員道路との接続の有無は、影響が小さかった。 ・基準化カテゴリーウェイトでは、平面及び上方の囲まれ方は、両行為とも3~4方向が壁で
情報が閉鎖されて囲われ感が強いほど嗜好ポイントが増加した。 ・駅出入り口がある場合に嗜好ポイントが増加した。 ・単木・列樹がある場合、植え込みの場合は嗜好ポイントが増加したが、植え込み+単木の場
合は減少した。これは待ち合わせ行為においては、見通しのきく単木や植え込みのみの空間
を嗜好させていると考えられる。
表5 待ち合わせ行為に対する空間構成要素の数量化理論Ⅰ類分析結果
136
2-4 平野孝之 , 大森宣暁 , 原田昇(2004)「携帯電話が待ち合わせ行動に与える影響」
新宿駅及び新宿駅周辺において行われたインタビュー調査によると(対象:2人組 87 組、うち
83 組が 10~20 代)、携帯電話による遅れ連絡により増加している待ち時間は、10~20 分のケー
スが多いことが分かった。また、先に到着した人で、到着後に遅れ連絡を受けた人では約半数が、
移動中に連絡を受けた人では約3割が、待ち合わせ場所に待機していることが分かった。
図 10 遅れ連絡による増加時間の分布(左)と先に到着した人の行動(右)
2-5 平野孝之 , 大森宣暁 , 原田昇(2003)「駅構内と駅周辺施設における待ち合わせ場所の選
択行動に関する研究」
新宿駅前において行われた選好意識調査によると(被験者:20 代男女合計 30 人)、日曜日の
13 時に歌舞伎町を目的地とした場合の待ち合わせでは、4か所の待ち合わせ候補のうちではアル
タ前が も割合が高く、その理由はアクセス利便性の高さと場所の名声度が重視されたためであ
った。アクセス利便性を重要視する者は JR 新宿駅東口改札口を、アクセス利便性よりも場所の
快適性を重要視する者は紀伊國屋書店内を選択していることが明らかになった。
図 11 待ち合わせ場所選択結果と各場所における評価要因の重要度
137
また、待ち合わせ場所の決定要因としては、「待ち合わせ場所まで迷わない」や「駅から近い」
など、場所の明確性やアクセス利便性に関する要因が重要であると評価した人が多かった。
図 12 待ち合わせ場所の決定要因
2-6 葛島 知佳 , 高柳 英明 , 木村 謙 , 山口 有次 , 渡辺 仁史(2000)「携帯電話が変化させ
る空間に関する研究 : 待ち合わせについての研究」
新宿駅及び五反田駅において行われたアンケート調査によると(調査人数 119 人:男性 95 名、
女性 23 名)、携帯電話の普及した 99 年では、以下の空間構成要素で 2.5 点以上であった。 ・携帯電話・PHS が通じる ・特定の名前がある ・屋根がある ・電灯がある ・像、モニュメントがある ・トイレがある ・ベンチがある ・電話がある ・時計装置がある ・伝言板がある
図 13 待ち合わせ場所構成要素の重要度
138
また、改札口から待ち合わせ場所までの平均距離は、携帯電話不所持者が一番近くに滞留し、
次に所持者、使用者の順に多く滞留していた。また、携帯電話所持者の方が所持していない人よ
りも分散して滞留していた。これらを踏まえると、携帯電話が普及した今、待ち合わせ場所は街
中へ分散し、「携帯電話が通じ、特定の名前や簡易なモニュメントがあり、快適に待ち時間を過ご
せる場所」で行われていくと考えられる。 2-7 松本 直司 , 清田 真也 , 伊藤 美穂(2009)「街路空間特性と歩行速度の関係」
名古屋市の伏見・栄・大須地区の 20 地点において行われた歩行速度の計測調査によると(調査
対象:2984 人)、全体の平均歩行速度は 1.32m/s、属性別では、男性 1.36m/s、女性 1.27m/s で
男性が速く、若年 1.35m/s、中年 1.34m/s、壮年 1.15m/s で若年・中年が壮年よりも速かった。
図 14 歩行速度分布
また、街路空間特性と歩行速度の関係性の分析結果からは、歩行者が魅力を感じると考えられ
る、開放的な空間や看板、商品など多様な情報の存在する空間では歩行速度が遅くなることが分
かった。
図 15 街路空間特性と歩行速度の関係
139
3-1 角谷 弘喜(2010)「東広島市における高齢者の外出行動特性に関する研究」
東広島市内の高齢者を対象に行ったアンケート調査では、主な外出場所としては病院や田畑、
商店がほとんどである。なお、外出時には車に頼るケースが多くなっていた。
図 16 年齢別介助用具 図 17 年齢別外出場所
3-2 安心院 朗子 , 徳田 克己 , 水野 智美(2010)「歩行補助車を使用している高齢者の外出状
況と交通上の課題」
歩行補助車使用者を対象としたヒアリング調査では、使用目的は買い物(71%)、通院(44%)、散
歩(25%)、家の周辺の移動(25%)の順で高かった。また、雨天時の外出方法では傘を使用する者が
多くいることが分かり、なかには自転車用の傘スタンドを利用している者(12%)がいた。
表6 歩行補助車の使用目的 表7 使用者の雨天時の外出方法(複数回答可)
140
3-3 吉村 東 , 志田 正男(2009)「郊外住宅団地に居住する高齢者の外出行動 : 年齢・健康状
態・交通手段の有無・団地特性との関係」
仙台市の郊外団地居住の高齢者を対象に行ったアンケート調査では、買い物が出かける頻度と
して高かった。また、月に2~3回以上の頻度では、病院よりも銀行等の割合の方が高かった。
図 18 高齢者の外出頻度
3-4 三宮 基裕 , 片岡 正喜(2008)「高齢者の街歩きの実態からみた福祉のまちづくりの整備課
題」
宮崎県延岡市のある地区に居住する高齢者を対象に行ったアンケート調査によると、ほぼ毎日
する行動は、二次活動では「買い物」が も多く、三次活動では「散歩」「会話」が多くなってい
る。週に1、2度の行動は三次行動に多く見られ、「散歩」「会話」に加えて、稽古事などの「文
化活動」やグランドゴルフのような「余暇活動」が挙げられている。月に1、2度の行動には、
月単位で定期的な手続きが必要な行動が多く含まれ、一次活動の「通院」や二次活動の「銀行等」
「役場」などであった。 健康状態との関係性からは、健康状態が「不良」であっても、「買い物」の頻度は高く、「通院」
は「不良」が も高かった。
図 19 外出の目的と頻度 図 20 外出目的と性別、健康状態
注)行動について、一次活動(生命維持に必要な活動)、二次活動(生活上の義務的生活の強い活動)、
三次活動(自由時間における活動)に分類している。
141
また、高齢者は一定の頻度で『街歩き』(街に出かけて好きな場所に立ち寄ったり用事したりし
ながら散策し、まとまった時間を過ごす行為)をしており、「ほぼ毎日」と「週に1、2度」を合
わせると習慣的に街歩きをしている高齢者は約4割に及んでいた。さらに街歩きの頻度と行動の
頻度の統計解析により、街歩きに関係する外出行動は「日常的な買い物」と「散歩」であった。
このことは、街歩きの拠点が商店街や大型スーパーであったこと、街歩きの主な理由が用事を兼
ねてと健康のためであったことからも裏付けられた。
図 21 街歩きの頻度
3-5 松戸市(2008)「「松戸市高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画(いきいき安心プランⅡ)」
見直しのための市民アンケート調査報告書」
千葉県松戸市において要介護認定を受けていない高齢者を対象に行ったアンケート調査による
と、74 歳までの高齢者、75 歳以上の高齢者とも、買い物が外出目的として も高い割合を占め
た。その他、金融機関は両者とも5割を超えていた。医療機関への通院は、75 歳までの高齢者は
5割強であったが、75 歳以上では約7割であった。
表8 高齢者区分ごとの外出目的
142
3-6 篠田 紀行 , 松本 真澄 , 谷口 僚一 , 上野 淳(2007)「東京都心下町地域における在宅高
齢者の地域生活様態と外出行動に関する調査 -千代田区神田地域のケーススタディー-」
東京都千代田区の高齢者を対象に行ったアンケート調査では、日常の買い物は個人商店の割合
よりもスーパーやデパート、コンビニが高かった。また、普段よく行く場所としては、病院が
も高く、次いでレストラン等の飲食店、図書館や公民館、銭湯が高かった。外出先と諸属性の関
係からは、よく行く場所として割合の高かった図書館・公民館などは月に1~2回の頻度である
のに対して、レストラン等の飲食店は週に1~2回、病院は月1~2回の人も週1~2回の人も
多かった。年齢の違いでは、病院は前期高齢者も後期高齢者も多いが、レストラン等の飲食店は
前期高齢者に偏っていた。銭湯や図書館・公民館は後期高齢者もやや出かける傾向が見られた。
図 22 日常の買い物場所 図 23 普段よく行く場所
図 24 外出先と諸属性との関係
3-7 川口 駒貴 , 谷口 汎邦 , 天野 克也 , 浅沼 由紀 , 江川 洋 , 鈴木 航(1997)「老人福祉
センターの利用に伴う外出行動特性 : 都市居住高齢者のための地域施設計画に関する研究・その
3(江東区の場合)」
東京都江東区の高齢者を対象に行った調査によると、老人福祉センター利用前後の立ち寄りは
利用後の方が多かった。場所は、利用前は地域の違いが見られるものの、銀行・郵便局、公園・
緑道、医院・病院、商店・百貨店が多かった。利用後はいずれの地域でも商店・百貨店が多かっ
た。
143
図 25 老人福祉センターの利用前後に立ち寄る場所(左:利用前、右:利用後)
3-8 浅沼 由紀 , 谷口 汎邦(1991)「中高齢者の外出行動特性について : 高層・超高層住宅に
おける高齢者のための生活空間計画に関する研究 その 2」
超高層住宅を含む住宅団地(川崎、練馬、神戸、新宿、江戸川)在住の中高齢者を対象に行っ
たアンケート調査によると、外出割合の高い場所は、親類・知人宅、教室・会場、デパート・商
店、飲食、医療、屋外の6種類で、それらの場所は主目的となる場所(親類・知人宅、教室・会
場など)と、主目的に誘発されて立ち寄る場所(デパート・商店、飲食など)の2種類があるこ
とが明らかとなった。
表9 外出場所別の外出人数割合、平均滞在時間、行為・同伴者割合
144
3-9 鈴木 圭一 , 沼尻 恵子(2010)「安心して子育てができる環境整備のあり方に関する調査」
東京都及び大阪府における、バリアフリー新法第 14 条第3項に基づく委任条例の内容が整理さ
れており、下表に示すようにある面積以上の「特別特定建築物」に対して、授乳室の設置等が義
務付けられている。 このことから、このような設置基準が定められている施設については、乳幼児帯同者の利用を
想定する必要がある。
表 10 東京都と大阪府の授乳室等の設置基準
3-10 松橋 圭子 , 出井 真純 , 大原 一興 , 藤岡 泰宏(2010)「乳幼児同行者による駅利用に
関する研究 その 1 -外出行動の特性からみた駅のあり方について-」
横浜市において、4歳未満の子供を持つ保護者を対象に行った駅の周辺地域で行ったアンケー
ト調査(役所などでアンケート用紙を配布)によると、駅の利用については約7割が「買い物」
や「余暇」を目的としていることが分かり、駅は単なる移動手段・通過場所ではなく、外出先と
して捉えられることが分かった。
図 26 駅の利用目的(複数回答可)
145
3-11 北川 啓介 , 長坂 真理子 , 呉 明 宣 , 井上 暁代(2008)「妊婦と乳幼児帯同者の行動制
限とその要因」
乳幼児帯同者及び妊婦を対象に行ったアンケート調査によると、2005~2007 年の乳幼児帯同
者では、「公園」や「スーパー」等の商業施設や「病院」「銀行」の利用頻度が比較的高く、妊婦
では「スーパー」「コンビニエンスストア」「飲食店」「デパート」「銀行」の利用頻度が高かった。
表 11 アンケートの集計結果(回答内容の一部を抜粋)
top related