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リットは大きく、同院の診療体制にマッチしたシステムが運用されることになった(図1)。 INFINITT PACS導入前はフィルム撮影の検査も多く、PACSは放射線科内だけでの運用にとどまっていた。しかし現在は、フィルムは整形外科の手術時などの特別な用途で使用するのみだという。フィルムレス化のメリットとして、米澤氏は「以前は各診療科でフィルムを保管していたため、それぞれに保管スペースがあったが、現在ではサーバ上に保存されるため、院内のスペースの有効利用という点でも恩恵が大きい」と話す。また、フィルムの出し入れや整理などスタッフの手間が軽減し、診療時間の短縮化や効率化につながった。「フィルム時代には、検査によっては撮影後、現像のために15分ほど患者を待たせてしまったこともあったが、フィルムレス化により現在では患者の待ち時間がほとんどなくなり、患者への負担が軽減されたことも大きい」という。 地域連携に力を入れる市立池田病院では、紹介患者が外部で撮影した様々なフォーマットの持ち込み画像データもできる限りPACSに取り込んで診療をスムーズに行えるように努めている。以前までは印刷された検査結果、フィルム、デジタルデータなど情報整理が大変であったが、データの一元管理を行うことにより業務の効率化やミスの予防にもつながっている。

オールインワンシステム導入によるデータ連携

 同院のすべての電子カルテ端末は、PACS・RISと連携されており、どの端末からでもログインでき、検査情報にアクセスすることができる。Reportシステムについては同院の場合、使用の可否をユーザ権限により分けてあるが、基本的にPACSビューワが開ける端末であればどこでもレポートを書けるようになってい

フィルムレス化によるベネフィット

 市立池田病院では、一般撮影・歯科撮影のほか、MRI、マルチスライスCT、腹部血管造影、心血管カテーテル、X線TV、マンモグラフィ、超音波、胃内視鏡に加え、核医学検査や放射線治療も行っている。2011年2月の電子カルテ導入に合わせてINFINITT PACSお よ びRIS、Report、Mammo、検像システムに加え、循環器および整形外科向けソリューションなど、

業務改善と患者サービス向上をもたらすINFINITTのオールインワンシステムの可能性

市立池田病院は、公立病院として地域の中核病院としての役割を果たしながら、特に消化器疾患の診断・治療に力を入れた高度な急性期医療を提供するとともに、大阪府がん診療拠点病院としてがん医療にも積極的に取り組んでいる。2011年から電子カルテ・オーダリングシステムなどHISの新規導入に合わせてINFINITT PACS、RIS、Reportをはじめとするオールインワンシステムを導入したベネフィットと今後のさらなる展望について、藤田典彦氏(放射線科主任部長)と、米澤 稔氏(医療技術部放射線科 診療放射線技師長)、一樋政宏氏(同 診療放射線技師)にお話を伺った。

市立池田病院

当時のINFINITTの全ソリューションを導入し、現在ではほぼすべての画像情報をPACS上で確認できるようになっている。 INFINITTのオールインワンシステム導入のそもそものきっかけとなったのは、米澤氏が参加した勉強会でのインフィニットテクノロジー社の担当者との出会いだったという。導入の決め手となったのは「細部にわたり融通の利くシステム」である点で、市立池田病院にとって、CT、MR、内視鏡、エコーなどの静止画・動画を含めた画像情報が一度に参照できるメ

市立池田病院は1951年に開設された公立病院。長年にわたり地域の中核病院として機能している。2009年に地域医療支援病院として承認され、地域の病院・診療所と連携した医療サービスを提供している。2011年には医療情報システム安全管理評価制度PREMISsの認定を受けている(全国第4号)。積極的に地域医療に取り組んでいる同院放射線科では、ホームページ上で各種画像検査の月別実施件数を公表するなど、情報開示と専門性への取り組みをアピールしている。所在地: 大阪府池田市城南3丁目1番18号 TEL: 072-751-2881病床数: 本館:5病棟264床、東館:2病棟100床

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る。INFINITT PACS導入前に使用していたPACSはネットワーク型ではなくクライアント型で、その端末がトラブルで使用できなくなるとPACS自体が使用できなくなってしまうという課題を抱えていたため、新規PACS導入にあたっての大きな こ だ わ り の 一 つ は、Webベ ー ス のPACSシステムだった。 そしてPACSシステムの構築にあたっては、様々なモダリティの静止画、動画を1つのサーバで一元管理する「1データベース/1サーバ」にこだわった。以前は、たとえば内視鏡画像であれば内視鏡用のサーバ、放射線科で管理する画像は放射線科のサーバというように部門ごとに管理されており、カンファレンスや外科での術式決定などの際に不便さを感じるとい

う声も院内にあった。「内視鏡検査の動画をPACSサーバに入れるにあたっては、表示の問題などもありベンダー側ではおそらく苦労された点もあると思うが、一元管理ができるようになったことで現場は非常に助かっている」と一樋氏は話す。

サーバの安定稼働に向けて

 現在、同院で使用しているINFINITT PACSのサーバ容量は20TBだが、運用開始から3年たった今、差し迫った課題として容量増設を検討している。というのも、サーバで管理する画像データが当初の予想をはるかに上回っているのだという。院内での運用にあたっては、PACSサーバには各科が共有して使用する画像

を入れて、その他の診療科単独で使用するような画像は入れないようにするというルールづくりをした。しかし、当初想定していなかった事態がいくつか生じた。その一つは、地域連携で紹介されてきた患者の過去画像をPACSサーバに取り込む機会が思いのほか多かったことだ。紹介元は様々であるため、持ち込み画像のフォーマットも多種多様だ。放射線科のスタッフが地域連携室を通じて持ち込み画像を必要に応じて最適なフォーマットに変換しながらPACSサーバに保存して患者IDとのひも付けを行っているが、フォーマットの統一性がないため作業に思わぬ時間をとられることもあるのだという。「同じ画像を複数の医療機関で重複して保存する問題もあり、将来的にはマイナンバー制のようなかたちで患者にひも付けられ、クラウドに保存された画像データを各医療機関が利用するというような方向が望ましいのかもしれない」と藤田氏と米澤氏は鋭い問題意識を見せる。

図1 システム構成図一樋政宏氏同 医療技術部放射線科診療放射線技師

米澤 稔氏同 医療技術部放射線科診療放射線技師長

藤田典彦氏市立池田病院放射線科主任部長

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もう一つ想定外だったのは、PET検査が当初の予想以上に増加しており、サーバにも負担がかかってきていることだ。 データの一元管理をするうえでは、サーバの堅牢性、安定稼働がキーになる。INFINITT PACSでは、サーバ構成は、病院側の意向により柔軟に対応できるようになっており、同院では、更にクラスタリングによりサーバの安定性を確保している。そのお蔭もあり、停電事故の際に、院内他システムの復旧にはだいぶ時間がかかった一方で、PACSシステムではデータのロスもなく、復旧も迅速だったそうだ。

動画も参照可能なPACSビューワ

 INFINITT PACSビューワは、静止画像だけでなく内視鏡やシネ画像などの動画も同時に参照できることが最大の特長だろう。また、DICOMデータだけでなく、紙にプリントされた情報を取り込んだ汎用のJPEG画像も同時に参照可能である。米澤氏によれば「旧PACSビューワからの移行はスムーズで特に現場での混乱もなく、他のPACSビューワにはない動画参照機能など、非常に使い勝手は良い」という。 INFINITT PACSの有用な機能として、ユーザごとにハンギングプロトコルを設定して初期画面に表示される画像の種類や作業ウインドウのレイアウトを決めることができる。ユーザごとに複数設定可能なため、たとえば脊椎の画像を見る場合にはあらかじめハンギングプロトコル

で設定した脊椎画像が見やすい表示に1クリックで切り替えることができる(図2)。藤田氏は今のところデフォルトの設定で読影をしているそうだが、それでも必要な機能は十分に使用できているという。「ビューワには3Dワークステーション並みの高度な機能が多数搭載されているが、なかでも腹部領域の画像診断で、CT、内視鏡、エコーなど静止画と動画の両方を簡単に参照して診断することができる点は、消化器領域の診療には大いに役立っている」と藤田氏は語る。 また、院内アクセス無制限のライセンスの導入により、アクセス制限の問題も解決できた。リプレイス前の3Dワークステーションは同時アクセス数に上限があったが、臨床医がアクセスするのは意外と同じ時間帯が多く、外来診療が終了

して落ち着いた頃に集中するため、アクセス制限で画像が見られないこともあったのだという。INFINITT PACSビューワの使い方や機能については、新任スタッフにはベンダー担当者から基本的な説明をしてもらい、その後は放射線科のスタッフがその都度フォローをするようなかたちで、現場からは特に大きなトラブル等の報告はないそうだ。

広がるPACS活用の場

 放射線科以外でも、カンファレンスや症例検討会においてINFINITT PACSは活躍している。フィルム時代はカンファレンス会場はシャウカステンがある場所に限られていたが、INFINITTのシステムが導入された今なら、モニタあるいはプ

図2 INFINITTPACSの多機能なビューワ 過去画像との比較など一般的な機能だけでなく、MIPやMPRなど3Dワークステーション並みの高度な機能も活用できる多機能なビューワ。「別途ワークステーションを導

入するコストを抑えられた」と米澤氏。

図3 造影検査の安全管理に配慮したINFINITTRIS 感染症ありの患者情報は赤文字で強調表示され、リスト上でも大きく表示されて

いる。これは同院の看護師からの要望によって実装された機能。

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ロジェクターとPCがあってネットワークに接続されていればどこでも実施可能になっている。そのため、シャウカステンを覗き込む必要がなくなったので一度に参加できる人数を気にせず実施することができるようになり、院内での評判も上々だ。研修医や若手読影医の勉強用の症例リスト(ティーチングファイル)の作成が簡便になることもPACSの大きな強みだ。藤田氏によれば、「データの一元管理により、典型例や正常例などのリスト作成も簡便になるだけでなく、それを見る学習者にとっても現場で用いるソリューションを使用して実務に直結したトレーニングをすることができるメリットがある」という。

メーカと共同開発したRIS/Report

 INFINITT RIS、Reportは同院が国内での導入第一号で、病院内の様々なスタッフの要望を吸い上げながらメーカと共同でシステムを構築していったという。INFINITT PACSは韓国やヨーロッパの医療環境に合わせて開発されたシステムであったため、日本独自のRISという概念がもともと存在していなかった。そのため、インフィニットテクノロジー社としても

極力レポート作成者の手間を軽減する仕様になっている(図4)。同院では、近々、新しいReportシステムへのバージョンアップを控えており、さらなる使いやすさの向上が見込まれる。

システムの有効活用により診療の幅を広げ、質の向上へ

 INFINITTのシステムを導入して約3年。今後もシステムのポテンシャルを最大限に活用するために同院では、PC端末のグレードアップやサーバ容量増設などハード面の充実を直近の課題と考えているが、将来の展望としては、平成26年度の診療報酬改定で画像等手術支援加算の定義が明確化され、3Dナビゲーションを用いた手術支援の技術への評価が適正化されたこともあり、一元管理された画像データをうまく活用して取り組んでいく予定だ。地域医療においては、専門の診療放射線技師の能力を活かして、緊急の腹部エコー検査を増やしていきたいという展望もある。患者サービスの面では、PACSシステムと連携したタブレット端末による患者説明の導入を検討するなど、INFINITTのオールインワンシステムの活用の幅はまだまだ広がりそうだ。

図4 INFINITTReport

ノウハウを生かした日本向けの新しいソリューションの開発に意欲が高く、使い勝手の良いシステムの開発において両者の思惑が合致したのかもしれない。 RISの開発にあたって、造影CT、造影MRI(EOB)検査が多い院内事情に合わせて作り込みを行い、造影検査の安全管理に十分配慮したシステムが完成した。また、RISは放射線科スタッフや臨床医だけでなく、看護師も有効活用している。現場の声を聞き取りながら、必要な情報はほとんど網羅できるようなシステムになっている。たとえば感染症がある患者はRIS画面上ですぐに把握できるようにしてあり、適切な感染症対策をしたうえで検査を実施することができる。また造影剤アレルギーについても同様で、電子カルテの情報と連携して過去のアレルギーの状況やコメントが表示されるようになっており、看護師が事前にチェックをして間違いのない対応がとれるようになっている(図3)。 Reportシステムについては、PACSシステム移行時のトラブルもなく、運用開始後も順調に運用されている。PACSおよびRISと情報が共有されているため、レポート作成時に過去画像や過去レポートを容易に参照することができる。様々なレポート作成支援ツールも備わっており、

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株式会社インフィニットテクノロジー

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