糖尿病治療 と 検査値 - urayaku/area_connection/20151027dm.pdf · dpp-4阻害薬...
TRANSCRIPT
糖尿病治療 と検査値
横浜市立大学附属市民総合医療センター
薬剤部
佐々木 琢也
検査値 HbA1c: hemoglobin A1c
HbA1c ( hemoglobin A1c, グリコヘモグロビン)
• 血糖値が高いと、血液中のブドウ糖がヘモグロビンに結合しグリコヘモグロビンに変化
• ヘモグロビンに対するグリコヘモグロビン割合(%)が血糖コントロールの指標となる
• 過去1~2か月間の血糖コントロール状態を反映
ヘモグロビン
A0
A1
a b c d e
A2
HbA1c値への影響
• 耐糖能正常者の基準値 4.6~6.2%
• 赤血球寿命と関連があり、血液の特にヘモグロビンが関連する疾患や病態により変動する可能性
HbA1c値が高め HbA1c値が低めどちらにもなり得るもの
• 急速に改善した糖尿病• 鉄欠乏状態
• 急激に発症・増悪した糖尿病• 鉄欠乏性貧血の回復期• 溶血(赤血球寿命↓)• 失血後(赤血球生成↑)• 輸血後
• エリスロポエチンで治療中の腎性貧血
• 肝硬変
• 異常ヘモグロビン症
HbA1cの目標値
当院で掲載する予定の検査値
• WBC[白血球数]
• Neu[好中球]
• Hb[ヘモグロビン]
• Plt[血小板数]
• CK[クレアチンキナーゼ]
• AST[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ]
• ALT[アラニンアミノトランスフェラーゼ]
• T-Bil[総ビリルビン]
• Cr[クレアチニン]
• K[カリウム]
• CRP[C反応性蛋白]
• PT-INR[プロトロンビン時間-国際標準化]
• Hb-A1c
• Alb[アルブミン]
検査値 GA: glycoalbumin
GA ( グリコアルブミン )
• 血液中のアルブミンがどの程度ブドウ糖と結合しているかを調べる検査(%)
• HbA1cで把握しづらい比較的短期間の血糖変化をとらえることができるため、短期間での薬物療法の効果判定などに有用
• 過去約2~3週間の血糖コントロール状態を反映
GA ( グリコアルブミン ) の目標値
約3倍
当院で掲載する予定の検査値
• WBC[白血球数]
• Neu[好中球]
• Hb[ヘモグロビン]
• Plt[血小板数]
• CK[クレアチンキナーゼ]
• AST[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ]
• ALT[アラニンアミノトランスフェラーゼ]
• T-Bil[総ビリルビン]
• Cr[クレアチニン]
• K[カリウム]
• CRP[C反応性蛋白]
• PT-INR[プロトロンビン時間-国際標準化]
• Hb-A1c
• Alb[アルブミン]
検査値 1,5-AG: 1,5-anhydroglucitol
1,5-AG ( 1,5-アンヒドログルシトール )
• 体内の1,5-AG濃度は通常一定(排泄・再吸収)
• 尿中にグルコースが存在すると尿細管での再吸収が競合阻害され尿中に排泄
⇒ 糖代謝状態が悪化すると低下
• アカルボースやSGLT2阻害薬を使用していると低値を示す
• 直近数日間の血糖コントロール状態を反映
検査値まとめ
HbA1c GA 1,5-AG
目標値 6.0%未満 16.0%未満 14ug/mL以上
血糖control
1~2ヶ月を反映 2~3週間を反映 直近数日間を反映
評価適性
適
• 血糖が長期安定している状態
• 初診時の現状までの評価
• 妊娠中や透析患者
• 血糖降下薬等の短期間的な効果判定
• 食後高血糖の判定
• 軽度な高血糖にも敏感に反応
評価適性
不適
• 血糖変動が大きい• 妊婦
• 赤血球に影響を及ぼす場合(出血、腎不全等)
• ステロイド内服
• アルブミンに影響を与える場合(ネフローゼ、肝硬変等)
• 妊娠、腎不全等で変動しやすい
• アカルボース、SGLT2阻害薬等、一部の薬剤で低値
検査2週間前1ヶ月前2ヶ月前
1,5-AG
GA
HbA1c
薬物療法と検査値モニタリング
37%
2%21%
13%
10%
8%
61%
2015.07-2015.09 外来処方状況(件数)
DPP4阻害薬
ビグアナイド薬
α-GI薬
SU薬
チアゾリジン薬
グリニド系
SGLT2阻害薬
配合剤
経口血糖降下薬インスリン
GLP-1作動薬
糖尿病用薬
糖尿病用薬
72%
11%
9%
2%2% 4%
2015.07-2015.09 外来処方状況(診療科別)
内分泌・糖尿病内科
心臓血管センター
小児総合医療センター
腎臓・高血圧内科
消化器病センター
その他
内分泌・糖尿病内科
心臓血管C
小児総合医療C
各論:DPP-4阻害薬
DPP-4阻害薬
• 小腸から分泌されるインスリン分泌促進物質(インクレチン)の分解酵素[DPP-4]を阻害
• 重篤な副作用、低血糖等のリスクが比較的低い
• SU薬にかわり処方頻度が高くなってきている
(低血糖リスクや副作用面)
→ SU薬は低用量傾向
ポイント 用法 用量調節 代謝・排泄経路
DPP-4阻害薬 ジャヌビア® グラクティブ®
• 50mg/回 1日1回
(効果不十分な場合は 100mg 1日1回)
• 主に腎臓で排泄されるため中等度以上の腎機能障害がある患者では用量調節必要
DPP-4阻害薬 ネシーナ®
• 25mg/回 1日1回
(効果不十分な場合の増量記載なし)
• 中等度以上の腎機能障害がある患者では排泄遅延が起こるため用量調節必要
末期腎不全患者については、血液透析との時間関係は問わない。
※ : Ccrに相当する換算値(年齢60歳、体重65kg)
DPP-4阻害薬 スイニー®
• 100mg/回 1日2回
(効果不十分な場合の200mg/回 1日2回)
• 重度以上の腎機能障害がある患者では用量調節必要
DPP-4阻害薬 トラゼンタ®
• 5mg/回 1日1回
(効果不十分な場合の増量記載なし)
• 糞中に未変化体のまま排泄される胆汁排泄型であるため、腎機能状態による用量調節不要
DPP-4阻害薬 まとめ① 用法・用量
医薬品名 用法・用量 最大投与 腎機能障害時 その他(排泄等)
ジャヌビア®グラクティブ®
50mg/回
1日1回100mg/日(増量可能)
中等度
25mg 1日1回重度/末期(透析含む)
12.5mg 1日1回
腎臓(未変化体)
ネシーナ®25mg/回
1日1回25mg/日
中等度
12.5mg 1日1回高度/末期(透析)
6.25mg 1日1回
腎臓(未変化体)
エクア®50mg/回
1日2回100mg/日
末期/透析中
50mg 1日1回代謝は主に肝臓尿中排泄(73.2%)
オングリザ®5mg/回
1日1回5mg/日
中等度以上(透析含む)
2.5mgに減量 肝代謝・腎排泄
スイニー®100mg/回
1日2回400mg/日(増量可能)
重度/末期(透析)
100mg 1日1回 腎臓(未変化体)
テネリア®20mg/回
1日1回40mg/日(増量可能)
- 肝代謝・腎排泄
トラゼンタ®5mg/回
1日1回5mg/日 - 胆汁排泄型
DPP-4阻害薬 まとめ② 適応
医薬品名 効能・効果
ジャヌビア®グラクティブ®
2型糖尿病ネシーナ®
エクア®
オングリザ®
スイニー®
2型糖尿病
ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る
(1)食事療法、運動療法のみ(2)食事療法、運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用(3)食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用(4)食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用(5)食事療法、運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用
テネリア®2型糖尿病
トラゼンタ®
グリニド薬やインスリン製剤との併用は・・・
DPP-4阻害薬 まとめ③ 定期的な検査
医薬品名 血糖 腎機能 肝機能
ジャヌビア®グラクティブ® ●
●定期的に検査を
することが望ましい
ネシーナ® ● (減量基準あり)
エクア® ● (減量基準あり)●
投与開始後1年間は3ヶ月毎その後も定期的
オングリザ® ● (減量基準あり)
スイニー® ● (減量基準あり)
テネリア® ●
トラゼンタ® ●
■参考■ CCr:creatinine clearance
Cockcroft-Gault式
男性 CCr=((140-年齢)×体重kg)÷(72×SCr)
女性 CCr=0.85×((140-年齢kg)×体重÷(72×SCr)
CCr : mL/minSCr : mg/dL体重の単位: kg
( 140 - age.37 ) × 58kg
72 × 0.90= 92.2mL/min
例えば、私の場合・・・
各論:ビグアナイド薬
ビグアナイド薬
• 肝臓に作用し、糖新生を抑制
• 筋肉での糖の取り込みを促進
→ 抵抗性の改善
• 腸管での糖吸収を抑制
乳酸 →→→→→→ ブドウ糖
ポイント 消化器症状 乳酸アシドーシス ヨード造影剤
安い、体重増少ない、単独での低血糖少ない
腎臓・肝臓に問題なければ使い易い→海外でも推奨
ビグアナイド薬 メトグルコ®
服用初期に嘔気・下痢等の出現するが、継続服用にて症状軽減
消化器症状
糖新生の抑制により、乳酸が蓄積しごくまれに発症
主な副作用:嘔吐、腹痛、呼吸困難 等
乳酸アシドーシス
併用により乳酸アシドーシスを起こすリスク
検査前は投与を一時中止(当院では2日前)
造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しない
ヨード造影剤
ビグアナイド薬 メトグルコ®
メトグルコを除くビグアナイド薬は、腎機能障害患者には禁忌である。メトグルコは、中等度以上の腎機能障害患者では禁忌である。SCr 値(酵素法)が男性 1.3mg/dL、女性 1.2mg/dL 以上の患者には投与を推奨しない。高齢者では SCr 値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあるので、eGFR 等も考慮して腎機能の評価を行う。ショック、急性心筋梗
塞、脱水、重症感染症の場合やヨード造影剤の併用では急性増悪することがある。尚、SCr がこの値より低い場合でも添付文書の他の禁忌に該当する症例などで、乳酸アシドーシスが報告されている。
日本糖尿病学会ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation【抜粋】
定期的な腎機能のチェックを!(特に高齢者)
ビグアナイド薬 メトグルコ®
ビグアナイド薬は、肝臓での糖新生を抑制して血糖降下作用を示すため、乳酸が増加
■正常肝■代謝を亢進することで乳酸値を一定に保つように働く
■肝硬変・重度肝機能障害■
乳酸代謝能が十分働かず、乳酸過多となり乳酸アシドーシス
へ移行してしまう可能性あり ⇒ 禁忌
定期的な肝機能のチェックを!
各論:α-グルコシダーゼ阻害薬
α-グルコシダーゼ阻害薬
食事
小腸
多糖類(でんぷん)
二糖類(ショ糖)
単糖類(ブドウ糖)
体内へ吸収
アミラーゼ
α-グルコシダーゼ阻害薬
α-グルコシダーゼ阻害薬
• 食直前の服用が必須
• 他の血糖降下薬と併用の際は低血糖注意
• 低血糖症状の発現時はブドウ糖摂取
ポイント 食直前 ブドウ糖 腹部膨満感 肝機能
α-グルコシダーゼ阻害薬
• 劇症肝炎、AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等を伴う重篤な肝機能障害、黄疸(いずれも0.1%未満)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
• 重篤な肝硬変例に投与した場合、便秘等を契機として高アンモニア血症が増悪し、意識障害(頻度不明)を伴うことがあるので、排便状況等を十分に観察し、異常が認められた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重大な副作用欄に肝機能関連記載あり!
ベイスン®添付文書より抜粋
α-グルコシダーゼ阻害薬 まとめ 定期的な検査
医薬品名 血糖 腎機能 肝機能
アカルボース ●●
投与開始後6ヶ月までは月1回その後も定期的
ボグリボース ●
ミグリトール ●
いずれも慎重投与の項に
「重篤な肝障害のある患者」「重篤な腎障害のある患者」の記載あり
まとめ
• HbA1cは過去1~2か月間の血糖コントロール状態を反映している
• 合併症予防のためのHbA1c目標値は7.0%未満であるが、年齢や低血糖リスク、生活環境により個別に設定されている
• 経口血糖降下薬処方時の検査値モニタリングとしては・・・
腎機能・肝機能チェックがやはり重要!
• WBC[白血球数]
• Neu[好中球]
• Hb[ヘモグロビン]
• Plt[血小板数]
• CK[クレアチンキナーゼ]
• AST
• ALT
当院で掲載する予定の検査値
• T-Bil[総ビリルビン]
• Cr[クレアチニン]
• K[カリウム]
• CRP[C反応性蛋白]
• PT-INR[プロトロンビン時間-国際標準化]
• Hb-A1c
• Alb[アルブミン]
糖尿病治療ガイド2014-2015出版社:文光堂定価:700円+税
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013出版社:南江堂定価:3,800円+税
糖尿病療養指導ガイドブック2015出版社:メディカルレビュー社定価:2,800円+税
参考書籍
ご清聴ありがとうございました
薬剤部医薬品情報室直通:045-253-5340内線:2413
佐々木
琢也
27. 10. 27
付録 SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬
効能又は効果に関連する使用上の注意
• 重度腎機能障害 : 投与しないこと
• 透析中末期腎不全 (効果が期待できない)
• 中等度腎機能障害 : 必要性を慎重に判断
用法及び用量に関連する使用上の注意
• 重度肝機能障害 : 低用量から投与(慎重投与にも記載)
重要な基本的注意
• 3ヶ月投与しても効果不十分 → 他治療へ変更
• 腎機能の定期的検査(Cr上昇・eGFR低下)
腎
肝
付録 SGLT2阻害薬
地域連携への取り組みに関し、多大なご協力をいただき
本当にありがとうございます
今後ともよろしくお願い申し上げます