理論から新しい物質や性質を予言し発見する ·...

4
現代の化学の研究は、大きく分類すると実験化学、理論化学、 計算化学の3つに分けることができます。実験化学は、新たな物 質を合成したり、物性を測定したりして研究を進めるもので、化学 の研究というとほとんどの人はこのようなものを想像するでしょ う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ ルや新しい概念を含む化学原理の探求と創出を行う学問です。 また計算化学は、理論化学によって明らかになった原理をもと に、実際に分子や分子集団の構造、性質、反応に関わる振る舞い を数値計算により求めることで様々な物質や化学現象の機構の 解明、さらにその予測と発見を行うもので、従来の化学における 装置を使った実験に対応するものと言えます。 私たちの研究室は、理論化学と計算化学を専門としています。 中でも、「非線形光学材料」と呼ばれる物質の性質を説明できる 理論をつくり、より優れた性質を持つ物質を設計するというの が、主な研究テーマのひとつです。 非線形光学効果は、レーザー等の強い光が物質に入射したと きに生じる入射光強度に比例しない非線形な光学現象で、入射 光の波長変換や、物質の屈折率変化による入射光の振幅や位相 変化などを引き起こします。 この物質の重要な応用の1つとして、超高速光スイッチという ものが注目されています。現在、インターネット等では光通信が 主に使われていますが、途中で光の信号を電子の信号に変換し て処理しているため、速度が遅くなり、そこがボトルネックとな り、全体の通信速度が落ちてしまっているのです。電子の信号に 変換せずに光のままON/OFFを切り替えられるスイッチング素 子をつくることができれば、通信の大容量化、超高速化や将来の 光コンピュータの実現にもつながるはずです。 様々な応用が期待される非線形光学材料の原理の提案や物質 の探索は、昔から考えられてきました。しかし、実用に耐える理想 的な材料が見つかっていないのが現状です。例えば光スイッチの 場合、光に対する応答性が大きい無機材料では、応答速度が遅い ために結局は速度向上につながりません。一方、有機材料では応 答は速いけれどその大きさが十分でない、という状況が続いてい ました。そこで私たちは、光に対する分子材料の応答をその分子 の結合の性質に基づいて説明できる理論を組み立て、応答速度 が速く、より応答性の高い分子材料を設計しようとしています。 大阪大学大学院 グローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」 2011年6月30日発行 News Letter vol.15 by Global Conservation 従来の実験をしない化学研究もある 実験不可能なモデルで理論を生み出す 理論から新しい物質や性質を予言し発見する 理論から新しい物質や性質を予言し発見する 基礎工学研究科物質創成専攻・教授 中野 雅由 NAKANO MASAYOSHI 非線形光学物質の理論設計と量子ダイナミクス 分子情報化学グループ

Upload: others

Post on 08-Feb-2020

10 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 理論から新しい物質や性質を予言し発見する · う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ

 現代の化学の研究は、大きく分類すると実験化学、理論化学、

計算化学の3つに分けることができます。実験化学は、新たな物

質を合成したり、物性を測定したりして研究を進めるもので、化学

の研究というとほとんどの人はこのようなものを想像するでしょ

う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か

らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ

ルや新しい概念を含む化学原理の探求と創出を行う学問です。

また計算化学は、理論化学によって明らかになった原理をもと

に、実際に分子や分子集団の構造、性質、反応に関わる振る舞い

を数値計算により求めることで様々な物質や化学現象の機構の

解明、さらにその予測と発見を行うもので、従来の化学における

装置を使った実験に対応するものと言えます。

 私たちの研究室は、理論化学と計算化学を専門としています。

中でも、「非線形光学材料」と呼ばれる物質の性質を説明できる

理論をつくり、より優れた性質を持つ物質を設計するというの

が、主な研究テーマのひとつです。

 非線形光学効果は、レーザー等の強い光が物質に入射したと

きに生じる入射光強度に比例しない非線形な光学現象で、入射

光の波長変換や、物質の屈折率変化による入射光の振幅や位相

変化などを引き起こします。

 この物質の重要な応用の1つとして、超高速光スイッチという

ものが注目されています。現在、インターネット等では光通信が

主に使われていますが、途中で光の信号を電子の信号に変換し

て処理しているため、速度が遅くなり、そこがボトルネックとな

り、全体の通信速度が落ちてしまっているのです。電子の信号に

変換せずに光のままON/OFFを切り替えられるスイッチング素

子をつくることができれば、通信の大容量化、超高速化や将来の

光コンピュータの実現にもつながるはずです。

 様々な応用が期待される非線形光学材料の原理の提案や物質

の探索は、昔から考えられてきました。しかし、実用に耐える理想

的な材料が見つかっていないのが現状です。例えば光スイッチの

場合、光に対する応答性が大きい無機材料では、応答速度が遅い

ために結局は速度向上につながりません。一方、有機材料では応

答は速いけれどその大きさが十分でない、という状況が続いてい

ました。そこで私たちは、光に対する分子材料の応答をその分子

の結合の性質に基づいて説明できる理論を組み立て、応答速度

が速く、より応答性の高い分子材料を設計しようとしています。

大阪大学大学院 グローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」

2011年6月30日発行News Letter vol.15by Global Conservation

従来の実験をしない化学研究もある

実験不可能なモデルで理論を生み出す

理論から新しい物質や性質を予言し発見する理論から新しい物質や性質を予言し発見する

大阪大学大学院グローバルCOEプログラム 「生命環境化学グローバル教育研究拠点」広報委員会TEL&FAX 06-6879-7805 ホームページhttp://www.gcoebec-osaka-u.jp/index_j.php有限会社ヴィスプロ株式会社リバネス2011年6月30日

発行・企画編集

デザイン・編 集取材(研究紹介)発 行 日

●この印刷物は環境に配慮した 植物性大豆油インキを使用しています。

基礎工学研究科物質創成専攻・教授中野 雅由 NAKANO MASAYOSHI

非線形光学物質の理論設計と量子ダイナミクス

分子情報化学グループ

研究支援者の紹介

お知らせ

第11回グローバルCOE生命環境化学国際会議(GCOEBEC-11)

■ 平成23年度グローバルCOEフェロー (RA) 採択者

清川 謙 介、吉村 彰 真、吉井 一 記、上原 了、福本 和 貴、大村 聡、中島 秀 人、小林 志 寿、重光 孟、松下 尚嗣、本多 立彦、森本 祐麻、大洞 光司、樋上 友亮、岡田 智、佐野 洋平、尾上 晶洋、二科 昌文、山本 淳志、兵頭 功、阿野 勇介、Liu, Went-Tzu、杉野 光彩、稲本 佳寛、園井 理恵、長町 俊希、佐々木 俊之、村上 雄太、西村 章、Park, Sung-Bin、太農 哲朗、 本 総一郎、Chen, Chien-Chih、采女 泰久、松本 匡広、沼本 穂、浅田 実希、Lee, Jae-Won、宮坂 彰浩、津川 裕司、山本 慎也、Alipour, Atefeh、Zhu, Ye、岡本 泰典、柿倉 泰明、門脇 功治、松原 惇起、早川 純平、大西 祥晴、玉置 喬士、星本 陽一(以上51名)

【工学研究科】

橋本 悠治、足立 和彦、角永 悠一郎、小森 有希子、厚見 宙志、新家 雄、柴田 一、藤木 勝将、Lee, Pei-Shan、和佐 英樹、吉満 隼人、吉村 優一、Mazumder, Kishor、Lee, Rae-Eun、瀧野 裕輔、石堂 泰志、柴田 知範、福岡 脩平、Wang, Ning、岡田 悠悟(以上20名)

【理学研究科】

南 拓也、菅 恵嗣、山本 浩二、能島 明史、林 結希子、津田 崇暁、福井 仁之、角谷 繁宏、米田 京平、菅野 義経、田中 真司、前野 禅、上野 直遵、長野 卓人、川端 崇仁、金子 裕、日比 大 治 郎、松本 裕 樹、末岡 祥 一 郎、Choi, Gyeong-Shin、宇都宮 徹、木畑 貴行、高橋 佑輔、中原 靖人、杉田 智彦、Lee, Sun-Min、齊藤 輝彦、塚本 大治郎(以上28名)

【基礎工学研究科】

※今年度、グローバルCOEフェロー秋募集は予定致しておりませんのでご了承ください。

<採択者オリエンテーション実施風景>2011年4月13日、コンベンションセンターにて拠点リーダー/福住教授からの説明

● 日時 : 2011年12月19日(月)~21日(水)  ● 場所 : 大阪大学 銀杏会館

Prof. T. Don TILLEY (UC バークレー)

Prof. Chris CHANG (UC バークレー)

Prof. Jay R. WINKLER (Caltech)

Prof. Kenneth KARLIN (Johns Hopkins)

Prof. David GOLDBERG (Johns Hopkins)

Prof. Jonathan SESSLER (Univ. of Texas, Austin)

Dr. Pierre BRAUNSTEIN (ストラスブルグ大)

Prof. Sylvie BEGIN-COLIN (ストラスブルグ大)

Dr. Chantal DANIEL (ストラスブルグ大)

Dr. Luc LEBEAU (ストラスブルグ大)

Dr. Michel MIESCH (ストラスブルグ大)

Prof. John ARNOLD (UC バークレー) 

Prof. Dean TOSTE (UC バークレー)

key speaker

key speaker

おもな招聘予定者

8.

9.

10.

11.

12.

13.

1.

2.

3.

4.

5.

6.

7.

Page 2: 理論から新しい物質や性質を予言し発見する · う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ

キューカービチュリル、フェロセン超分子複合体

分子情報化学グループ 中野 雅由

by Global Conservationby Global Conservation

三位一体の共同研究で新しい成果を目指す

数式が予言する新しい分子

生命環境化学グローバル教育

エネルギー環境化学

生命分子化学

物質変換環境化学

分子情報化学

環境生物化学

 光に対する電子の応答性は、分子内での電子のゆらぎやすさに

よって決まります。そこで、分子の中での原子間の結合を弱くすれ

ばいいのではないかと考え、モデルとして「水素分子の結合を

切っていく」という仮想系を使ったのです。安定な水素分子は化

学の言葉で「閉殻系」(互いに反平行なスピンを持った電子が強く

結合している系)、一方、弱い結合を持った仮想水素分子は「一重項

開殻系」と呼ばれます。結合を切っていくにつれて開殻性(理論的

に定義できます)は大きくなると言えます。

 2つの水素原子の距離を徐々に広げたとき、光に対する応答性

がどのように変化していくか。実験ではとても実現できませんが、

理論上であれば計算できます。そのモデルで原子間の距離を離

していき、高精度の計算を行うと、予想通りに結合が切れていく途

中で応答性が極大をとることを確かめることができました。

 このような開殻性をもつ分子や物質の応答の性質を予測する

ことは最先端の量子化学計算法を使っても困難でした。そこで、

これらの量を高精度に予測可能な新しい近似法や解析法を開発

しました。

 ひとつ強調しておきたいのは、新しい計算法をつくり、計算した

ら性質がわかりましたというだけでは意味がないということです。

実験でも、装置を使って測定しました、というだけでは研究にはな

りません。「なぜそうなるのか」を考えることが必須であり、原理を

明らかにし、未知の物質や現象を予測することが重要です。これに

対して強力な方法論を持つのが理論化学・計算化学の強みなので

す。非線形光学材料の応答性についても、ただ計算するだけでな

く、その性質を予言できる数理モデル(数式)をつくりました。そし

て高精度計算により、グラフェンなどの開殻性をもつ多環芳香族

分子系や金属錯体系が応答性を示すことがわかってきたのです。

 この数理モデルは、様々な分子における非線形光学効果につ

いて的確な予測を行えるという他に、もうひとつ重要な情報を与

えてくれました。これまでの分子設計では、大きな非線形光学効

果をもつ系は、閉殻系に限られていました。我々の数理モデルは、

新たに開殻性をもつ系の応答性がこれまでの閉殻系に比べて著

しく増大するという非線形光学物質系の新しいパラダイムを開き

ました(図1)。すなわち、(1)「一重項開殻系の電場に対する応答

性は開殻性によって劇的に変化し、とくに中間の開殻性をもつ場

合に応答性が極大になる」、(2)「最も高いスピン状態(例えば水素

分子では三重項状態)では劇的に応答性が小さくなる」という新た

な化学原理が「発見」されたのです。

 理論化学の重要でおもしろいところは、たとえば無関係に見

える分子の形や元素の違いが、理論モデル上は同じく扱えるこ

とがわかったり、磁気的性質と非線形光学効果というように、まっ

たく関係ないように見える現象が実はつながっているんだとい

うことを示せることです。それぞれの“もの”や“現象”にこだわっ

て実験をしていても予想できないことを、理論なら統一的に示

すことができる可能性があるのです。このようなより普遍的に適

用される統一的な数理モデルをつくり、新しい概念や化学原理

を提唱していくことが、私自身の目標にもなっています。

 私たちが、新しい性質を持った分子を予測して、合成を専門と

する研究者に伝える。そして実際に合成して、性質を測定して確

かめていく。または、新規に合成した分子を持ってきていただき、

私たちがその性質を説明する新しい理論をつくり、さらに面白

い性質を持った未知の化合物を予測していく。そういった共同

研究を進めていくことで、新しい物質設計指針を生み出していく

ことができるはずです。

 最近は合成や測定を専門とする研究室から私たちのところや

他の理論を専門とする研究室に学生を送り込み、理論化学に関

する知見を持たせて再び実験に戻るという動きが始まっている

ところもあります。私たちも実験に関する知見を得て、より交流

を深めていきたいと考えています。このGCOEは、私たちのよう

な理論を専門とする者も入っているのが特徴のひとつだと思い

ます。理論・計算、合成、測定と、それぞれ強みとする部分は違う

けれど目指す先は一緒ですから、互いを知り、三位一体の共同研

究を行うことでより多くの見方ができるはずです。ネットワーク

を組み、お互いの専門性を活かしながら、研究を進めていけるよ

うにしたいですね。       【文・西山 哲史 株式会社リバネス】

Young Researcher Support ProgramGCOE Lectureship Award Report

基礎工学研究科物質創成専攻田原 一邦 KAZUKUNI TAHARA

Name:

 GCOE Lectureship Awardに選出していただき、ヨーロッパの四つの

大学を訪問して得られた経験について紹介させて頂きます。訪欧する前月

にヨーロッパが強力な寒波に覆われ空港や交通機関が麻痺しているとの

報道がなされており、寒さだけでなく移動などにトラブルが起こらないか

と心配していましたが、滞在期間中には寒さは和らぎ心配していた問題も

なく過ごすことができました。

 初めの訪問機関はスイスで研究活動が活発なことで知られるチュー

リッヒ工科大学でした。チューリッヒの郊外に作られた広大なキャンパス

の中に、巨大な研究棟がいくつもあり(長い通路で連結されている)、その

一つに訪問した材料学科がありました。ホストであるDieter Schlüter教

授を訪問し、精密に設計された有機分子を構成成分とした固液界面におけ

る単分子膜の構築に関して講演しました。私にとって初めての海外での講

演であり、とても緊張しましたが、徐々に講演はスムーズになりました。

講演後には数多くの質問を受け、特にSchlüter教授からは鋭い指摘をし

ていただき、とても有意義な議論をすることができました。講演後は

Schlüter教授と、同グループの上級博士研究員であるSakamoto博士と

昼食をとりながら、さらに議論を深めました。昼食後は最新の成果につい

て説明していただくとともに、ラボを見学させてもらい楽しい時間を過ご

すことができました。夕方には、Schlüter教授とSakamoto博士と

Zürich市中心部に移動し、美しい旧市街を案内していただくとともに(数

多くの銀行とブランド店がありました)、スイス料理レストランで夕食を

いただきながら日本とスイスの大学のシステム、特に研究や教育環境の違

いについて話し交流を深めました。

 翌朝はベルギー、ルーバンに航空機で移動し、ルーバンカトリック大学

化学科のSteven De Feyter教授を訪問しました。De Feyter教授とは共

同して有機分子を構成成分とした固液界面における自己集合単分子膜の

形成と走査型トンネル顕微鏡観察に関する研究を五年以上行っています。

到着してすぐに、進行中の多くのプロジェクトについて打ち合わせを行い

ました。翌日は、De Feyter教授のグループのセミナーに参加し、両グルー

プの進展状況に着いて発表、議論を深めて、今後の進め方について確認し

ました。共同研究関係者5名(ベルギー、日本、中国、英国籍)で夕食を共に

し、研究内容の他にも政治情勢や科学技術政策、文化の違いについて話し

ながら楽しく過ごしました。

 次の訪問地はドイツ、アーヘン工科大学でした。ルーバンから鉄道で移

動し、アーヘン工科大学に到着してすぐに、ホストである

Albrecht教授と、現在共同して進めている四面体カゴ型錯体の合成と構

造決定に関する情報の交換と今後の進め方について議論しました。その

後、Albrecht教授やOppel教授らの多くの聴衆の前で講演させていただ

きました。昼食の後には、Oppel教授とカゴ型錯体の多孔性二次元分子

ネットワークの空孔への吸着に関する共同研究の可能性に関して意見を

交換しました。また、Albrecht教授の研究室を見学させて頂き、学生さん

とも議論させていただきました。Albrecht教授と夕飯をともにして、日本

とドイツの研究環境や大学のシステムに関して話し交流を深めました。

 最後にドイツ、ボン大学Kekulé Insituteを訪問しました。アーヘンか

らボンへは鉄道で一時間程度でした。到着してホストであるSigurd

Höger教授と議論し、続いて講演を行いました。講演は、三度目で余裕も

あり、スムーズに分かりやすく話すことができました。午後からは、

Lützen教授とポリフェニレンナノワイヤの合成とその集合体の構造決定

と物性の調査に関する興味深い研究について議論しました。続いて、

Höger教授の研究室を見学させていただきました。数多くある測定装置の

中で、走査型トンネル顕微鏡の設備と環境を見学できたことは大きな収穫

でした。最後に、Höger教授がベートーヴェンハウスに案内してくださり、

音楽の歴史と触れられることができました。

 今回の渡航を通じて、数多くの講演を経験することで、英語での長時間

の講演と議論に自信が持てるようになりました。また、多くの異なる分野

の研究者と交流することができました。交流の中で、材料化学に基づくグ

リーンケミストリー分野におけるイノベーションへの挑戦が話題となる

ことが多く、その重要性を再認識するとともに、自らの研究に活かしたい

新しいアイデアが湧いてきました。また、数多くの議論を通じて進行中の

共同研究の打ち合わせができ、新しい共同研究の可能性も生まれました。

このような有意義な講演旅行の機会をいただいたGCOEプログラムに心

より感謝いたします。

 余談ですが、スイスからベルギーの移動においてロストバゲッジするハ

プニングがありました。当日の夜に荷物は配達され、結果的には問題とな

りませんでしたが、タイトなスケジュールの中でどの都市で荷物が受け取

れるか不安になりました。また、アーヘン滞在後に食あたりを起こし、ボ

ン滞在中は体調がすぐれない中スケジュールをこなしました。これらトラ

ブルへの対応も貴重な経験となりました。

JapanEuropeETH ZürichK.U. Leuven RWTH AachenUniversität Bonn

2010 Lectureship Award

GCOE

ETH Zürichでの講演風景Schlüter教授と坂本博士と共に

Zürich市中心部

ベートーヴェンハウス(ボン)

図1 分子レベルの非線形性を表す第二超分極率 γ (黒等高線)のジラジカル因子依存性。   Aが従来系、B-Dが理論から予測された系。

Page 3: 理論から新しい物質や性質を予言し発見する · う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ

キューカービチュリル、フェロセン超分子複合体

分子情報化学グループ 中野 雅由

by Global Conservationby Global Conservation

三位一体の共同研究で新しい成果を目指す

数式が予言する新しい分子

生命環境化学グローバル教育

エネルギー環境化学

生命分子化学

物質変換環境化学

分子情報化学

環境生物化学

 光に対する電子の応答性は、分子内での電子のゆらぎやすさに

よって決まります。そこで、分子の中での原子間の結合を弱くすれ

ばいいのではないかと考え、モデルとして「水素分子の結合を

切っていく」という仮想系を使ったのです。安定な水素分子は化

学の言葉で「閉殻系」(互いに反平行なスピンを持った電子が強く

結合している系)、一方、弱い結合を持った仮想水素分子は「一重項

開殻系」と呼ばれます。結合を切っていくにつれて開殻性(理論的

に定義できます)は大きくなると言えます。

 2つの水素原子の距離を徐々に広げたとき、光に対する応答性

がどのように変化していくか。実験ではとても実現できませんが、

理論上であれば計算できます。そのモデルで原子間の距離を離

していき、高精度の計算を行うと、予想通りに結合が切れていく途

中で応答性が極大をとることを確かめることができました。

 このような開殻性をもつ分子や物質の応答の性質を予測する

ことは最先端の量子化学計算法を使っても困難でした。そこで、

これらの量を高精度に予測可能な新しい近似法や解析法を開発

しました。

 ひとつ強調しておきたいのは、新しい計算法をつくり、計算した

ら性質がわかりましたというだけでは意味がないということです。

実験でも、装置を使って測定しました、というだけでは研究にはな

りません。「なぜそうなるのか」を考えることが必須であり、原理を

明らかにし、未知の物質や現象を予測することが重要です。これに

対して強力な方法論を持つのが理論化学・計算化学の強みなので

す。非線形光学材料の応答性についても、ただ計算するだけでな

く、その性質を予言できる数理モデル(数式)をつくりました。そし

て高精度計算により、グラフェンなどの開殻性をもつ多環芳香族

分子系や金属錯体系が応答性を示すことがわかってきたのです。

 この数理モデルは、様々な分子における非線形光学効果につ

いて的確な予測を行えるという他に、もうひとつ重要な情報を与

えてくれました。これまでの分子設計では、大きな非線形光学効

果をもつ系は、閉殻系に限られていました。我々の数理モデルは、

新たに開殻性をもつ系の応答性がこれまでの閉殻系に比べて著

しく増大するという非線形光学物質系の新しいパラダイムを開き

ました(図1)。すなわち、(1)「一重項開殻系の電場に対する応答

性は開殻性によって劇的に変化し、とくに中間の開殻性をもつ場

合に応答性が極大になる」、(2)「最も高いスピン状態(例えば水素

分子では三重項状態)では劇的に応答性が小さくなる」という新た

な化学原理が「発見」されたのです。

 理論化学の重要でおもしろいところは、たとえば無関係に見

える分子の形や元素の違いが、理論モデル上は同じく扱えるこ

とがわかったり、磁気的性質と非線形光学効果というように、まっ

たく関係ないように見える現象が実はつながっているんだとい

うことを示せることです。それぞれの“もの”や“現象”にこだわっ

て実験をしていても予想できないことを、理論なら統一的に示

すことができる可能性があるのです。このようなより普遍的に適

用される統一的な数理モデルをつくり、新しい概念や化学原理

を提唱していくことが、私自身の目標にもなっています。

 私たちが、新しい性質を持った分子を予測して、合成を専門と

する研究者に伝える。そして実際に合成して、性質を測定して確

かめていく。または、新規に合成した分子を持ってきていただき、

私たちがその性質を説明する新しい理論をつくり、さらに面白

い性質を持った未知の化合物を予測していく。そういった共同

研究を進めていくことで、新しい物質設計指針を生み出していく

ことができるはずです。

 最近は合成や測定を専門とする研究室から私たちのところや

他の理論を専門とする研究室に学生を送り込み、理論化学に関

する知見を持たせて再び実験に戻るという動きが始まっている

ところもあります。私たちも実験に関する知見を得て、より交流

を深めていきたいと考えています。このGCOEは、私たちのよう

な理論を専門とする者も入っているのが特徴のひとつだと思い

ます。理論・計算、合成、測定と、それぞれ強みとする部分は違う

けれど目指す先は一緒ですから、互いを知り、三位一体の共同研

究を行うことでより多くの見方ができるはずです。ネットワーク

を組み、お互いの専門性を活かしながら、研究を進めていけるよ

うにしたいですね。       【文・西山 哲史 株式会社リバネス】

Young Researcher Support ProgramGCOE Lectureship Award Report

基礎工学研究科物質創成専攻田原 一邦 KAZUKUNI TAHARA

Name:

 GCOE Lectureship Awardに選出していただき、ヨーロッパの四つの

大学を訪問して得られた経験について紹介させて頂きます。訪欧する前月

にヨーロッパが強力な寒波に覆われ空港や交通機関が麻痺しているとの

報道がなされており、寒さだけでなく移動などにトラブルが起こらないか

と心配していましたが、滞在期間中には寒さは和らぎ心配していた問題も

なく過ごすことができました。

 初めの訪問機関はスイスで研究活動が活発なことで知られるチュー

リッヒ工科大学でした。チューリッヒの郊外に作られた広大なキャンパス

の中に、巨大な研究棟がいくつもあり(長い通路で連結されている)、その

一つに訪問した材料学科がありました。ホストであるDieter Schlüter教

授を訪問し、精密に設計された有機分子を構成成分とした固液界面におけ

る単分子膜の構築に関して講演しました。私にとって初めての海外での講

演であり、とても緊張しましたが、徐々に講演はスムーズになりました。

講演後には数多くの質問を受け、特にSchlüter教授からは鋭い指摘をし

ていただき、とても有意義な議論をすることができました。講演後は

Schlüter教授と、同グループの上級博士研究員であるSakamoto博士と

昼食をとりながら、さらに議論を深めました。昼食後は最新の成果につい

て説明していただくとともに、ラボを見学させてもらい楽しい時間を過ご

すことができました。夕方には、Schlüter教授とSakamoto博士と

Zürich市中心部に移動し、美しい旧市街を案内していただくとともに(数

多くの銀行とブランド店がありました)、スイス料理レストランで夕食を

いただきながら日本とスイスの大学のシステム、特に研究や教育環境の違

いについて話し交流を深めました。

 翌朝はベルギー、ルーバンに航空機で移動し、ルーバンカトリック大学

化学科のSteven De Feyter教授を訪問しました。De Feyter教授とは共

同して有機分子を構成成分とした固液界面における自己集合単分子膜の

形成と走査型トンネル顕微鏡観察に関する研究を五年以上行っています。

到着してすぐに、進行中の多くのプロジェクトについて打ち合わせを行い

ました。翌日は、De Feyter教授のグループのセミナーに参加し、両グルー

プの進展状況に着いて発表、議論を深めて、今後の進め方について確認し

ました。共同研究関係者5名(ベルギー、日本、中国、英国籍)で夕食を共に

し、研究内容の他にも政治情勢や科学技術政策、文化の違いについて話し

ながら楽しく過ごしました。

 次の訪問地はドイツ、アーヘン工科大学でした。ルーバンから鉄道で移

動し、アーヘン工科大学に到着してすぐに、ホストである

Albrecht教授と、現在共同して進めている四面体カゴ型錯体の合成と構

造決定に関する情報の交換と今後の進め方について議論しました。その

後、Albrecht教授やOppel教授らの多くの聴衆の前で講演させていただ

きました。昼食の後には、Oppel教授とカゴ型錯体の多孔性二次元分子

ネットワークの空孔への吸着に関する共同研究の可能性に関して意見を

交換しました。また、Albrecht教授の研究室を見学させて頂き、学生さん

とも議論させていただきました。Albrecht教授と夕飯をともにして、日本

とドイツの研究環境や大学のシステムに関して話し交流を深めました。

 最後にドイツ、ボン大学Kekulé Insituteを訪問しました。アーヘンか

らボンへは鉄道で一時間程度でした。到着してホストであるSigurd

Höger教授と議論し、続いて講演を行いました。講演は、三度目で余裕も

あり、スムーズに分かりやすく話すことができました。午後からは、

Lützen教授とポリフェニレンナノワイヤの合成とその集合体の構造決定

と物性の調査に関する興味深い研究について議論しました。続いて、

Höger教授の研究室を見学させていただきました。数多くある測定装置の

中で、走査型トンネル顕微鏡の設備と環境を見学できたことは大きな収穫

でした。最後に、Höger教授がベートーヴェンハウスに案内してくださり、

音楽の歴史と触れられることができました。

 今回の渡航を通じて、数多くの講演を経験することで、英語での長時間

の講演と議論に自信が持てるようになりました。また、多くの異なる分野

の研究者と交流することができました。交流の中で、材料化学に基づくグ

リーンケミストリー分野におけるイノベーションへの挑戦が話題となる

ことが多く、その重要性を再認識するとともに、自らの研究に活かしたい

新しいアイデアが湧いてきました。また、数多くの議論を通じて進行中の

共同研究の打ち合わせができ、新しい共同研究の可能性も生まれました。

このような有意義な講演旅行の機会をいただいたGCOEプログラムに心

より感謝いたします。

 余談ですが、スイスからベルギーの移動においてロストバゲッジするハ

プニングがありました。当日の夜に荷物は配達され、結果的には問題とな

りませんでしたが、タイトなスケジュールの中でどの都市で荷物が受け取

れるか不安になりました。また、アーヘン滞在後に食あたりを起こし、ボ

ン滞在中は体調がすぐれない中スケジュールをこなしました。これらトラ

ブルへの対応も貴重な経験となりました。

JapanEuropeETH ZürichK.U. Leuven RWTH AachenUniversität Bonn

2010 Lectureship Award

GCOE

ETH Zürichでの講演風景Schlüter教授と坂本博士と共に

Zürich市中心部

ベートーヴェンハウス(ボン)

図1 分子レベルの非線形性を表す第二超分極率 γ (黒等高線)のジラジカル因子依存性。   Aが従来系、B-Dが理論から予測された系。

Page 4: 理論から新しい物質や性質を予言し発見する · う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ

 現代の化学の研究は、大きく分類すると実験化学、理論化学、

計算化学の3つに分けることができます。実験化学は、新たな物

質を合成したり、物性を測定したりして研究を進めるもので、化学

の研究というとほとんどの人はこのようなものを想像するでしょ

う。そして、理論化学は物理学の基礎理論をもとに、原子・分子か

らなる物質の構造、性質、反応について理解するための数理モデ

ルや新しい概念を含む化学原理の探求と創出を行う学問です。

また計算化学は、理論化学によって明らかになった原理をもと

に、実際に分子や分子集団の構造、性質、反応に関わる振る舞い

を数値計算により求めることで様々な物質や化学現象の機構の

解明、さらにその予測と発見を行うもので、従来の化学における

装置を使った実験に対応するものと言えます。

 私たちの研究室は、理論化学と計算化学を専門としています。

中でも、「非線形光学材料」と呼ばれる物質の性質を説明できる

理論をつくり、より優れた性質を持つ物質を設計するというの

が、主な研究テーマのひとつです。

 非線形光学効果は、レーザー等の強い光が物質に入射したと

きに生じる入射光強度に比例しない非線形な光学現象で、入射

光の波長変換や、物質の屈折率変化による入射光の振幅や位相

変化などを引き起こします。

 この物質の重要な応用の1つとして、超高速光スイッチという

ものが注目されています。現在、インターネット等では光通信が

主に使われていますが、途中で光の信号を電子の信号に変換し

て処理しているため、速度が遅くなり、そこがボトルネックとな

り、全体の通信速度が落ちてしまっているのです。電子の信号に

変換せずに光のままON/OFFを切り替えられるスイッチング素

子をつくることができれば、通信の大容量化、超高速化や将来の

光コンピュータの実現にもつながるはずです。

 様々な応用が期待される非線形光学材料の原理の提案や物質

の探索は、昔から考えられてきました。しかし、実用に耐える理想

的な材料が見つかっていないのが現状です。例えば光スイッチの

場合、光に対する応答性が大きい無機材料では、応答速度が遅い

ために結局は速度向上につながりません。一方、有機材料では応

答は速いけれどその大きさが十分でない、という状況が続いてい

ました。そこで私たちは、光に対する分子材料の応答をその分子

の結合の性質に基づいて説明できる理論を組み立て、応答速度

が速く、より応答性の高い分子材料を設計しようとしています。

大阪大学大学院 グローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」

2011年6月30日発行News Letter vol.15by Global Conservation

従来の実験をしない化学研究もある

実験不可能なモデルで理論を生み出す

理論から新しい物質や性質を予言し発見する理論から新しい物質や性質を予言し発見する

大阪大学大学院グローバルCOEプログラム 「生命環境化学グローバル教育研究拠点」広報委員会TEL&FAX 06-6879-7805 ホームページhttp://www.gcoebec-osaka-u.jp/index_j.php有限会社ヴィスプロ株式会社リバネス2011年6月30日

発行・企画編集

デザイン・編 集取材(研究紹介)発 行 日

●この印刷物は環境に配慮した 植物性大豆油インキを使用しています。

基礎工学研究科物質創成専攻・教授中野 雅由 NAKANO MASAYOSHI

非線形光学物質の理論設計と量子ダイナミクス

分子情報化学グループ

研究支援者の紹介

お知らせ

第11回グローバルCOE生命環境化学国際会議(GCOEBEC-11)

■ 平成23年度グローバルCOEフェロー (RA) 採択者

清川 謙 介、吉村 彰 真、吉井 一 記、上原 了、福本 和 貴、大村 聡、中島 秀 人、小林 志 寿、重光 孟、松下 尚嗣、本多 立彦、森本 祐麻、大洞 光司、樋上 友亮、岡田 智、佐野 洋平、尾上 晶洋、二科 昌文、山本 淳志、兵頭 功、阿野 勇介、Liu, Went-Tzu、杉野 光彩、稲本 佳寛、園井 理恵、長町 俊希、佐々木 俊之、村上 雄太、西村 章、Park, Sung-Bin、太農 哲朗、 本 総一郎、Chen, Chien-Chih、采女 泰久、松本 匡広、沼本 穂、浅田 実希、Lee, Jae-Won、宮坂 彰浩、津川 裕司、山本 慎也、Alipour, Atefeh、Zhu, Ye、岡本 泰典、柿倉 泰明、門脇 功治、松原 惇起、早川 純平、大西 祥晴、玉置 喬士、星本 陽一(以上51名)

【工学研究科】

橋本 悠治、足立 和彦、角永 悠一郎、小森 有希子、厚見 宙志、新家 雄、柴田 一、藤木 勝将、Lee, Pei-Shan、和佐 英樹、吉満 隼人、吉村 優一、Mazumder, Kishor、Lee, Rae-Eun、瀧野 裕輔、石堂 泰志、柴田 知範、福岡 脩平、Wang, Ning、岡田 悠悟(以上20名)

【理学研究科】

南 拓也、菅 恵嗣、山本 浩二、能島 明史、林 結希子、津田 崇暁、福井 仁之、角谷 繁宏、米田 京平、菅野 義経、田中 真司、前野 禅、上野 直遵、長野 卓人、川端 崇仁、金子 裕、日比 大 治 郎、松本 裕 樹、末岡 祥 一 郎、Choi, Gyeong-Shin、宇都宮 徹、木畑 貴行、高橋 佑輔、中原 靖人、杉田 智彦、Lee, Sun-Min、齊藤 輝彦、塚本 大治郎(以上28名)

【基礎工学研究科】

※今年度、グローバルCOEフェロー秋募集は予定致しておりませんのでご了承ください。

<採択者オリエンテーション実施風景>2011年4月13日、コンベンションセンターにて拠点リーダー/福住教授からの説明

● 日時 : 2011年12月19日(月)~21日(水)  ● 場所 : 大阪大学 銀杏会館

Prof. T. Don TILLEY (UC バークレー)

Prof. Chris CHANG (UC バークレー)

Prof. Jay R. WINKLER (Caltech)

Prof. Kenneth KARLIN (Johns Hopkins)

Prof. David GOLDBERG (Johns Hopkins)

Prof. Jonathan SESSLER (Univ. of Texas, Austin)

Dr. Pierre BRAUNSTEIN (ストラスブルグ大)

Prof. Sylvie BEGIN-COLIN (ストラスブルグ大)

Dr. Chantal DANIEL (ストラスブルグ大)

Dr. Luc LEBEAU (ストラスブルグ大)

Dr. Michel MIESCH (ストラスブルグ大)

Prof. John ARNOLD (UC バークレー) 

Prof. Dean TOSTE (UC バークレー)

key speaker

key speaker

おもな招聘予定者

8.

9.

10.

11.

12.

13.

1.

2.

3.

4.

5.

6.

7.