調査研究等の最新エビデンス -...
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調査研究等の最新エビデンス
第24回⽇本緩和医療学会学術⼤会 シンポジウム20
看護ケアの最新エビデンス up to date
東北⼤学⼤学院 医学研究科 保健学専攻緩和ケア看護学分野
宮下 光令
第24回⽇本緩和医療学会教育セミナーCOI 開⽰
演題名︓調査研究等の最新エビデンス発表者名︓宮下光令
発表内容に関連し、主発表者及び発表責任者には、
開⽰すべきCOI 関係にある企業等はありません。
本⽇の内容
診断時に標準治療でなく代替療法を選択した場合の⽣存期間 病院の看護師の労働環境と終末期ケアの質 ⽇本発のコミュニケーション研究
– 予後の伝え⽅は「最善を望み、最悪に備える」がベスト– 予後告知など患者との会話で添えるべき⼀⾔– 鎮静の同意をどう取るか︖
IPOS⽇本語版のValidation ⼈⼯知能(AI)、ビッグデータ、IoT
講演は早いですが、適宜まとめを⼊れ、スライドは私のWebサイトにアップしてあります。
がん患者が診断時に標準治療でなく代替療法を選択した場合の⽣存期間⽶国2004〜2013年に診断転移がない乳がん、肺がん、前⽴腺がん、⼤腸が
ん患者190万⼈代替療法の定義︓標準治療(⼿術,放射線治療,
化学療法,ホルモン療法)以外の治療を最初に受けた⼈
代替療法後に標準治療を受けた⼈も含む最初に代替療法を受けた⼈は280⼈
Jonson SB et al, 2018, J Natl Caner Inst.
がん患者が診断時に標準治療でなく代替療法を選択した場合の⽣存期間
Jonson SB et al, 2018, J Natl Caner Inst.
がん患者が診断時に標準治療でなく代替療法を選択した場合の⽣存期間
標準治療を受けつつ代替治療も受けた⼈
258⼈ 5年⽣存率87%vs82%、P<0.001
■診断時に代替治療を受けると⽣存率が下がる。標準治療と併⽤しても下がる。
■「標準治療」という⾔葉の問題もあるかもしれない。
Jonson SB et al, 2018, JAMA Oncology.
病院の看護師の労働環境と終末期ケアの質
ペンシルバニア⼤のLinda Aikenらのグループ看護師対象の⼤規模アンケートと全⽶病院調査のデー
タを結合 491病院12,870⼈終末期ケアの質
– 全般的な終末期ケアの質– ⼀番最近看取った患者に対するケアの質
看護師の労働環境– 病院運営に対する看護師の参加程度– 質を⾼めるための看護部の基盤– 看護管理者の能⼒・リーダーシップ・サポート– スタッフ数などの⼗分さ– 医師看護師関係 Lasater KB, 2019, JAGS
病院の看護師の労働環境と終末期ケアの質
Lasater KB, 2019, JAGS
病院の看護師の労働環境と終末期ケアの質
■看護師が⾃律性を持って病院組織や患者ケアに参加できているような病院では、質が⾼い終末期ケアが提供されている。
病院の規模、教育病院、ハイテク機器が多いかなどでは差がなかった。
看護師の経験や学歴を調整しても変わらなかった。
Lasater KB, 2019, JAGS
看護師の職場環境と看護の質や患者アウトカムの関連
16年間22カ国、40研究、看護師6.5万⼈、患者137万⼈
職場環境は全てのアウトカムに関連– バーンアウト OR=0.74– 30⽇⼊院死亡率 OR=0.92– 患者満⾜度 OR=1.16– 看護師が評価した看護の質
(悪い) OR=0.67
看護師の職場環境に関する16年間の研究のメタアナリシス
Lake EL, 2019, Med Care
⽇本⼈の予後の伝え⽅は「最善を望み、最悪に備える」がベスト
予後の伝え⽅⽇本⼈412⼈の外来
がん患者予後の伝え⽅13フ
レーズを1~6点で評価
1 2 3 4
⽣存期間中央値と範囲最善と最悪のケース
⽣存期間中央値と範囲
⽣存期間中央値のみ
1 2 3 4
1
2
⽣存期間中央値と範囲不確かさ、「最善を望み、最悪に備える」
上記の要素を1つでも除いたものMori M, 2019, Oncologist
⽇本⼈の予後告知など患者との会話で添えるべき⼀⾔
1 2 3 4
1
2「最善を望み、最悪に備える」を追加
⽣存期間中央値のみ
1 2 3 4
1
2
DNRのみ
症状緩和を保証Mori M, 2019, Oncologist
1 2 3 4
ホスピス紹介
治療⽬標を追加
ケアの継続性も追加
⾒捨てないことも追加
鎮静の同意をどう取るか︖
1.⽣命予後を短くするかも2.鎮静するか決めてください
1.⽣命予後を短くするかも、しかしその可能性は⼩さいと思います2.鎮静するか決めてください
1.⽣命予後を短くするかも2.私は鎮静をすすめます
1.⽣命予後を短くするかも、しかしその可能性は⼩さいと思います2.私は鎮静をすすめます
Hamano J, 2018, JPSM
森先⽣から追加 あくまでも「余命を聞かれた場合で、それについて話し合うのが適切な
場合で」というセッティングでの台詞*余命を聞きたい患者さんには、余命は伝えない場合より(どんなに伝えない理由を⾔ったとしても)、伝える⽅が好まれる(適切な範囲でならどんな伝え⽅であっても)。
伝える際は、広い幅を持たせたり、Hope for the best, prepare for the worstというニュアンスを添えることが好まれる。
それでも全体としてはPreference点数の平均が低く、⼾惑っている患者さんもおられそう、コーピングスタイルによって何を好むかが結構変わった。課題解決型の⼈は⾔ってほしい、回避型の⼈は⾔ってほしくない、など。やはり実臨床では個々の患者さんの⼈となりやニーズを把握したtailored approachが必要そう。
余命以外のEOLdでも、共感的な⽂⾔を加えることが好まれた。特にホスピス紹介の⾔葉は共感的な⽂⾔を加えれば加えるほど如実に好まれる傾向があった。単にいう・⾔わないより、どれだけ患者さんのことを思っているかということが伝わることが⼤事かも。
でもやっぱり、ネット調査でPreferenceを⾒たにすぎないし、今回は群間の⽐較もできないデザインなので、臨床の参考にはなるけど直接応⽤は難しそう。好ましさだけでなくて、よりTrue outcomeを変えうるかについて、今後実験⼼理学的研究や介⼊研究が必要と思われる。
IPOS⽇本語版のValidation
STAS-Jの進化版、患者版とスタッフ版⽇本語版のWebサイト http://plaza.umin.ac.jp/pos/普及活動を開始
Sakurai H, 2018, JJCO
7/14の⽇本ホスピス緩和ケア協会年次⼤会でワークショップ
IPOSの項目 IPOSの特徴
IPOSの項目とその特徴
●身体症状(10項目)
痛み、息切れ、倦怠感、悪
心、嘔吐、食欲不振、便秘、
口渇、眠気、移動
●精神症状(2項目)
不安、抑うつ
●スピリチュアリティ(1項目)
●家族関係(2項目)
家族の不安、気持ちの共有
●病状説明(1項目)
●経済的問題(1項目)
●現時点での気がかり(自由回
答)
●0‐4の5段階で評価する
●各段階に細かな説明がある
ため、NRSなどに比べて評価
しやすい
⬤生活への支障に焦点を当て
評価する
●症状だけでなく全人的に患
者を捉える
●スタッフ版も用意されている
●日本ではIPOSの前バージョ
ンであるSTAS‐Jが広く用いら
れてきた歴史がある
●国際的に広く用いられている
Web端末による症状モニタリングとQOL(⽶国)ランダム化⽐較試験外来化学療法中の患者766⼈介⼊はコンピューターに慣れている⼈はタブレットで12の症状を送信、慣れていない⼈は受診時に医師・看護師にレポートを渡す症状が強いときは、⾃動アラートや電話で看護師が適宜対応QOLは向上、1年⽣存率は75% vs
69%(P=0.05)救急受診、⼊院の回数が少なく、化学療法は⻑く受けられたコンピューターに慣れていない⼈のほうが効果があった
何らかの変化 P<0.001 6点以上の変化 P=0.006
6か⽉後のQOL
看護への⽰唆■スクリーニングなどの症状モニタリングは有効かもしれない■医療者へのコミュニケーションが苦⼿な⼈では特に有効かも
Basch E, et al. JCO 2016. 34(6): 557-67.
昨年
対照群
介⼊群
介⼊群
対照群
悪化
不変
改善
Web端末による症状モニタリングと⽣存期間ランダム化⽐較試験︓7年間のフォローアップ
Web端末症状モニタリング群
⽣存期間中央値31.2カ⽉vs26.0カ⽉(P<0.03)
標準ケア群
Bash E, et al. JAMA.2017;318(2):197-8.
リクルート期間2007-2011
昨年
⼈⼯知能(AI)、ビッグデータ、IoT
患者の予後予測、緩和ケアチームは主治医の紹介やカルテレビューすることなく緩和ケアを必要とする患者を同定可能(Aviti, 2018, BMC Med Inform DecisMake)
がん患者の治療過程に⾒られる症状の発症時期と重要度を予測(Papachristou, 2018, PloS One)
新規⼊院患者のせん妄発症リスクを予測(Wong, 2019, JAMA Netw Open)
■本⽇10︓15~ 第7会場「教育講演」緩和ケアにおけるAI,ビッグデータの可能性(佐藤⼀樹先⽣)■ポスター P35-14緩和ケアにおけるAI(⼈⼯知能)の活⽤~いかに臨床で⽣かしていくか︓⽂献レビュー (⼤⾕弘⾏先⽣)
このスライドは私のWEBページに掲載してあります。 また、他の演者を含めて⼀部の論⽂は以下の連載記事で紹介し
ています。これは掲載後半年経ったら、私のホームページに掲載します。– 宮下光令. 注⽬︕がん看護における最新エビデンス. エンド・オブ・ライ
フ・ケア(隔⽉刊︓⽇総研)看護研究、お互いにがんばりましょう︕
http://plaza.umin.ac.jp/~miya/
宮下光令