慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法...

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班 長 横 山 光 宏 神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学 班 員 岸 田   浩 日本医科大学第一内科 久保田   功 山形大学循環・呼吸・腎臓内科学 桑 原 洋 一 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学 児 玉 和 久 大阪警察病院 玉 木 長 良 北海道大学大学院医学研究科核医学 中 嶋 憲 一 金沢大学医学部付属病院核医学診療科 中 野   赳 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 似 鳥 俊 明 杏林大学放射線医学 野 原 隆 司 田附興風会医学研究所北野病院循環器内科 延 吉 正 清 小倉記念病院 山 口   巖 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科 吉 川 純 一 大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学 協力員 井 阪 直 樹 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 石 光 敏 行 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科 稲 田 秀 郎 国立病院機構京都医療センター循環器科 協力員 岡 本 隆 二 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 川 合 宏 哉 神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学 木 村   剛 京都大学大学院医学研究科循環器内科学 草 間 芳 樹 日本医科大学付属多摩永山病院内科・循環器内科 滝   淳 一 金沢大学大学院医学系研究科バイオトレーサ診療学 竹 石 恭 知 山形大学循環・呼吸・腎臓内科学 平 山 篤 志 大阪警察病院循環器科 船 橋 伸 禎 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学 古 川   裕 京都大学大学院医学研究科循環器内科学 穂 積 健 之 大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学 森 田 浩 一 北海道大学大学院医学研究科核医学 山 辺   裕 市立加西病院 横 山 健 一 杏林大学放射線医学 渡 辺 重 行 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科 1 合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本冠疾患学会,日本心血管インターベン ション学会,日本医学放射線学会 改訂にあたって 「慢性虚血性心疾患の診断における各種検査法の意義」 I 運動負荷心電図 II ホルター心電図 III 体表面電位図・心磁図 IV 心筋血流イメージング V RI アンジオグラフィ VI 心筋交感神経イメージング VII 心筋脂肪酸イメージング VIII PET IX 安静心エコー図法 X 負荷心エコー図法 XI 心筋コントラストエコー法 XII X CT XIII MRI XIV MRA 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告) 外部評価委員 神 原 啓 文 静岡県立総合病院 土 居 義 典 高知大学老年病科・循環器科 野 々 木 宏 国立循環器病センター内科心臓血管 吉 田   清 川崎医科大学循環器内科 慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の 選択基準に関するガイドライン(2005年改訂版) 慢性虚血性心疾患の診断における各種検査法の意義 慢性虚血性心疾患の病態と診断目的に基づいた検査計画法 Guidelines for Diagnostic Evaluation of Patients with Chronic Ischemic Heart Disease (JCS 2005)

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班 長 横 山 光 宏 神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学

班 員 岸 田   浩 日本医科大学第一内科

久保田   功 山形大学循環・呼吸・腎臓内科学

桑 原 洋 一 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学

児 玉 和 久 大阪警察病院

玉 木 長 良 北海道大学大学院医学研究科核医学

中 嶋 憲 一 金沢大学医学部付属病院核医学診療科

中 野   赳 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学

似 鳥 俊 明 杏林大学放射線医学

野 原 隆 司 田附興風会医学研究所北野病院循環器内科

延 吉 正 清 小倉記念病院

山 口   巖 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科

吉 川 純 一 大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学

協力員 井 阪 直 樹 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学

石 光 敏 行 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科

稲 田 秀 郎 国立病院機構京都医療センター循環器科

協力員 岡 本 隆 二 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学

川 合 宏 哉 神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学

木 村   剛 京都大学大学院医学研究科循環器内科学

草 間 芳 樹 日本医科大学付属多摩永山病院内科・循環器内科

滝   淳 一 金沢大学大学院医学系研究科バイオトレーサ診療学

竹 石 恭 知 山形大学循環・呼吸・腎臓内科学

平 山 篤 志 大阪警察病院循環器科

船 橋 伸 禎 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学

古 川   裕 京都大学大学院医学研究科循環器内科学

穂 積 健 之 大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学

森 田 浩 一 北海道大学大学院医学研究科核医学

山 辺   裕 市立加西病院

横 山 健 一 杏林大学放射線医学

渡 辺 重 行 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科

1

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本冠疾患学会,日本心血管インターベン

ション学会,日本医学放射線学会

改訂にあたって「慢性虚血性心疾患の診断における各種検査法の意義」I 運動負荷心電図II ホルター心電図III 体表面電位図・心磁図IV 心筋血流イメージングV RI アンジオグラフィVI 心筋交感神経イメージング

VII 心筋脂肪酸イメージングVIII PET

IX 安静心エコー図法X 負荷心エコー図法XI 心筋コントラストエコー法XII X 線 CT

XIII MRI

XIV MRA

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

目 次

外部評価委員

神 原 啓 文 静岡県立総合病院

土 居 義 典 高知大学老年病科・循環器科

野 々 木 宏 国立循環器病センター内科心臓血管

吉 田   清 川崎医科大学循環器内科

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン(2005年改訂版)慢性虚血性心疾患の診断における各種検査法の意義慢性虚血性心疾患の病態と診断目的に基づいた検査計画法

Guidelines for Diagnostic Evaluation of Patients with Chronic Ischemic Heart Disease(JCS 2005)

2

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

XV 冠動脈造影XVI 冠動脈攣縮誘発試験XVII 血管内超音波法(IVUS)XVIII 血管内視鏡検査XIX 冠動脈内圧測定と FFR

XX 冠動脈血流速計測

「慢性虚血性心疾患の病態と診断目的に基づいた検査計画法」I 心筋虚血の診断II 冠動脈病変の評価III 心筋バイアビリティの診断IV 心機能の評価V 予後の予測VI 治療指針の決定VII 治療効果の評価

(無断転載を禁ずる)

循環器疾患の診断と病態評価のための検査法の進歩は

めざましく,目を見張らせるものがある.本ガイドライ

ンは 1998年から 1999年にかけて虚血性心疾患の多種多

様な検査法を概括し,その時点での各検査法の位置付け

を行う目的で作成されたものであるが,2004 年度にそ

の後の新たな検査法の進歩を取り入れて部分改訂するこ

とにした.

改訂版の構成は初版と同様に 2つに分けて,第一部を

「慢性虚血性心疾患の診断における各種検査法の意義」

とし,各々の検査法についてその特質と技術的側面およ

び有用性を活かせる各種病態を解説した.次に第二部を

「虚血性心疾患の病態と診断目的に基づいた検査計画法」

として,各種病態や予後,治療の評価を行う上で各種検

査法をどのように選択し利用するかを解説した.新たに

項目の追加がなされたり,大幅に書き改められた箇所は

第一部の心磁図,冠動脈血流計測,X 線 CT,MRI,

MRA 等であり,第二部の内容も新しい知見に基づいて

修正加筆が行われた.ガイドライン作成の基礎となる発

改訂にあたって表論文は 1999 年以降のものが追加されたが,代表的な

外国文献とともにできるだけ本邦で検討されたデータを

使用し,本ガイドラインの対象疾患は慢性の虚血性心疾

患に限定し,急性心筋梗塞と不安定狭心症については別

個にガイドラインが作成されているので今回のガイドラ

インからは一部を除いて除外した.

本ガイドラインは循環器医を中心とする臨床医が慢性

虚血性心疾患の存在を診断し,その病態評価を行い,治

療方針を立て,治療効果を判定し,患者を管理していく

上で役に立つように作成した.とくに多種多様な検査法

の中からどのように必要な検査を選択するかについて

は,各論の中で,各検査法の特質,診断性能,どのよう

な診断目的や病態解析に有効か,どのようなピットホー

ルがあるか,を解説した.個々の患者についていくつか

の検査法を組み合わせて必要な情報を得るためにどのよ

うに検査法を選択すればよいかをサポートするものとな

っている.しかし,画像の実際の表示やその所見の解説

までは踏み込んでいない.この点,実例が豊富に示され

た専門の解説書を参考にして頂ければ幸いである.

このガイドラインが病棟,外来,検査室での備え付け

の小冊子として活用いただければ幸いである.

3

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

運動負荷心電図は慢性虚血性心疾患において,狭心症

の診断,冠攣縮の誘発,心筋梗塞後の心筋虚血の診断,

重症度の評価・予後の予測,治療効果の判定などに広く

利用される.本法の問題は,診断感度(68 %)と特異

度(77 %)が特に高いとはいえない点にある.診断基

準として,狭心症では 0.1 mV 以上の水平型ないし下降

傾斜型の ST 下降(安静時 ST 下降のある場合,附加的

な 0.2 mV 以上の下降),冠攣縮の誘発では 0.1 mV 以上

の ST 上昇,梗塞後心筋虚血では異常 Q 波誘導の ST 上

昇を伴わない 0.1 mV 以上の ST 下降が妥当である.陰

性 U 波,R 波の増高,脚ブロックや高度の不整脈の発

生は心電図診断の感度を高めて,次の検査に進むための

意義はあるが特異的ではない.ST/HR スロープや ST・

T 波の時間経過は偽陽性を判別するのに役立つ.自覚症

状,運動耐容能,血圧反応も予後の予測に価値をもつ.

運動負荷心電図は,狭心症の診断のみならず,梗塞後

虚血の診断,重症度の評価や予後の予測,経皮的冠動脈

インターベンションの適応決定,治療効果の判定などに

広く利用される.ST 偏位が虚血診断に利用されるが,

ST 以外の指標や,自覚症状,運動耐容能,血圧反応も

価値をもつ.

運動負荷心電図の問題点は,診断感度(冠動脈病変を

もつ患者のうち何 % が負荷心電図陽性となるか)と診

断特異度(冠動脈病変をもたない者のうち何 % が負荷

心電図陰性となるか)が十分高くないことである.

ACC/AHA Task Force のガイドライン1-4)は運動負荷心

電図の意義を疾患別にまとめており参考となる.我が国

の心電学会の委員会報告5-9)は,診断基準ではないが運

動負荷にかかわる問題を扱っている.本報告ではこれら

を踏まえて,慢性虚血性心疾患に限定し,できる限り我

が国の研究に基礎をおいたガイドラインの作成を行った.

運動負荷心電図による虚血性心疾患の診断原理は,心

筋酸素消費量を増加させ,狭窄病変下の心筋に虚血を誘

発し,惹き起こされる膜電位の変化を ST 変化として捉

えることにある.したがって運動負荷心電図の解釈には

負荷量が心筋虚血の誘発に十分だったか(狭心症症状が

出たか,心拍数が十分増加したか),心電図変化に影響

する因子(性別,血清電解質,安静時心電図異常,服用

薬物,左室肥大,他疾患の合併など)が無いか,を確認

する.表 1に偽陽性と偽陰性の要因をまとめた1,10).

偽陽性,偽陰性の出現に関して検査前確率(pretest

probability)が重要である.検査前確率とは,検査対象

中の有病者の頻度である.虚血性心疾患の頻度が高い集

慢性虚血性心疾患の診断における各種検査法の意義

運動負荷心電図I

要 旨

はじめに11

運動負荷心電図の特質と技術的側面22

原理と偽陽性,偽陰性(表 1)A

表 1 負荷心電図の偽陽性,偽陰性の要因

偽陽性の要因

心電図基線の動揺

薬物の服用(ジギタリス,キニジン,抗うつ剤)

電解質異常(低カリウム)

安静時心電図 ST 異常

動揺性の非特異的 ST・T 変化

運動中の心房性 T 波の増大

女性

神経循環無力症

左室肥大

僧帽弁逸脱症

完全左脚ブロック

WPW 症候群

偽陰性の要因

運動負荷量の不足

抗狭心症薬の服用

1 枝冠動脈疾患

冠攣縮狭心症

R 波の低電位

検査前確率(pretest probability)B

4

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

団,例えば冠危険因子が複数あり典型的な狭心痛を有す

る高齢男性では,負荷心電図が陽性なら虚血性心疾患

(真陽性 true positive)である確率は極めて高く,たとえ

陰性であっても偽陰性(false negative)の可能性が残る.

逆に,一般の若・中年を対象としたスクリーニングテス

トでは,負荷心電図が陽性であっても正常冠動脈例(偽

陽性 false positive)が多く含まれる11).被検者の集団の

特性が変ると検査結果の意義が異なる,前述のような現

象を Bayes の定理という12).臨床医は,負荷心電図の陽

性か陰性の判定とともに,総合的な判断で次の診断ステ

ップを決定しなくてはならない.

運動負荷心電図では,心電図解析装置,負荷装置,負

荷プロトコール,負荷終点の決定,診断指標が診断能に

関係する.トレッドミル法ではフィルタや平均化により

波形を再構成する自動解析装置が用いられるので,オリ

ジナル波形も記録し,参考にする1,13).

運動負荷試験を行うには,第一にリスクの高い禁忌例

を除外する.表 2 に運動負荷心電図の絶対禁忌と相対

禁忌をまとめた.WPW 症候群,左脚ブロックのように

安静時心電図が異常であるために,負荷心電図が虚血性

心疾患の診断に無意味な場合がある.その際には運動負

荷に心エコー図や核医学などのイメージング検査を併用

する.

負荷量は,マスター法では通常ダブルが用いられる.

約 6 METs(21 ml/min/kg 相当,1 MET = 3.5 ml/min/kg

として計算)の亜最大運動量だが,疾患例では過負荷と

なる場合もある.トレッドミル法ではブルース法,エル

ゴメータ法では 25 ワット毎増量法が用いられる.運動

能の高い例では,初期のステージを短縮・省略して運動

時間が長くなり過ぎることを避ける.十分な負荷と,過

負荷の回避を計るよう負荷終点は症候限界性とする.表

3に運動中止徴候を挙げる13,14).

技術的側面と負荷のかけ方(表 2,表 3)C

表 2 運動負荷の禁忌

絶対禁忌

1) 急性心筋梗塞発症早期,不安定狭心症

2) コントロ-ル不良の不整脈

3) 症候性高度大動脈弁狭窄

4) 急性あるいは重症心不全

5) 急性肺塞栓または肺梗塞

6) 急性心筋炎または心膜炎

7) 解離性大動脈瘤などの重篤な血管病変

相対禁忌

1) 左冠動脈主幹部の狭窄

2) 中等度の狭窄性弁膜症

3) 高度の電解質異常

4) 重症高血圧

5) 頻脈性不整脈または徐脈性不整脈症例

6) 閉塞性肥大型心筋症などの流出路狭窄

7) 運動負荷が十分行えない精神的,身体的障害例

8) 高度房室ブロック

表 3 運動中止徴候(アメリカスポーツ協会ガイドブックを斎藤の注釈[13]により改変)

自覚症状

患者の中止要請

ST 下降を伴う軽度の胸痛

ST 下降を伴わない中等度の胸痛

強い呼吸困難・疲労(ボルグ指数 17 相当)

他覚症状

ふらつき

ろうばい

運動失調

蒼白

チアノーゼ

嘔気

欠伸その他の末梢循環不全症状

ST 変化

診断可能な ST 下降(水平型・下降傾斜型で 0.2 mV以上)

ST 上昇(0.1 mV 以上)

不整脈

心室頻拍

R on T 現象

連続する心室性二段脈,三段脈

30 % 以上の心室性期外収縮

持続する上室性頻拍や心房細動の出現

2 度,3 度の房室ブロック

脚ブロックの出現

血圧反応

血圧の過度の上昇(収縮期 250 mmHg 以上・拡張期120 mmHg 以上)

血圧の低下(運動中 10 mmHg 以上の低下・運動を続けても血圧が上昇しない)

心拍反応

予測最大心拍数の 90 %

異常な徐脈

その他

心電図モニターや血圧モニターが正常に作動しない時

5

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

虚血性心疾患の診断における運動負荷心電図指標とし

て,ST 下降が最もよく用いられる1).我が国では ST 指

標以外に幾つかの指標が利用されている.また,心電図

以外の指標も診断,病態の評価,予後の予測,治療効果

の判定などの目的で用いられる.表 4 に虚血性心疾患

の診断において参考となる指標をまとめた.

運動負荷心電図は労作狭心症,冠攣縮狭心症,無症候

性心筋虚血,陳旧性心筋梗塞などを対象として,冠動脈

病変の有無の診断,冠攣縮の診断,心筋梗塞後の心筋虚

血の診断,重症度の評価,予後の予測,治療効果の判定

を目的として行う.

運動負荷試験の安全性は,我が国では 264,000 検査に

1 回の死亡,43,000 検査に 1 回の緊急入院,とおおむね

安全に行われている5).一方,米国では 2500検査に 1回

の心筋梗塞ないし死亡という高頻度の報告がある15).患

者への説明と同意書をとることが望ましい.

運動負荷心電図は胸痛患者の最も一般的な検査法だ

が,最大の問題は診断の感度と特異度が必ずしも高くな

いことである.0.1 mV の ST 下降を指標とした冠動脈疾

患の診断能はメタアナリシスで,感度 68 %,特異度 77

%(24,074 例)である1).我が国の報告16-19)でも感度 73

%,特異度 74 %(1,055 例)と同等であった.負荷心電

図が陰性の高危険因子例や,陽性の低危険因子例では,

その他の情報を加味した判断が必要である.

1)虚血性心疾患の診断(表 5)

運動負荷心電図による虚血性心疾患の診断について,

表 5 に指標をまとめた.以下,マスター二階段法とトレ

ッドミル法による虚血性心疾患の診断法について述べる.

a)マスター二階段法

マスター二階段法の施行には,まず負荷禁忌例を除外

する.標準 12 誘導の心電図を負荷前,直後,3 分後,5

分後,7 分後に記録し,もし異常が生じれば回復まで記

録する.血圧測定は,少なくとも負荷前に行い,管理さ

れていない高血圧の有無をチェックする.

マスター二階段法の Master 自身による判定基準20)を

そのまま用いている施設は我が国では少ない5).診断精

度は,ダブル負荷で 75 % 以上の冠動脈狭窄に対し,

0.05 mV の下降が感度 86 %・特異度 73 %,0.1 mV の下

降が感度 77 %・特異度 83 % と報告される21).我が国5)

虚血性心疾患の診断における運動負荷心電図指標(表4)D

表 4 運動負荷試験における虚血性心疾患評価のための指標

狭心症症状の出現

低運動耐容能

虚血徴候出現の閾値が低い

血圧増加反応の不良

心拍数上昇不良

心電図

ST 下降

ST 上昇

ST 変化の誘導数

U 波の陰転

V5 誘導の Q 波の減高ないし不変

V5 誘導の R 波の増大ないし不変

反時計回りの HR-ST ループ

ST/HR スロープの傾き増大

ST 下降の時間経過

慢性虚血性心疾患の診断における運動負荷心電図の意義

33

診断目的と安全性A

診断目的に対する運動負荷心電図の問題点B

検査により得られる結果とその診断的意義C

表 5 運動負荷心電図の虚血判定基準

確定基準

ST 下降

水平型ないし下降傾斜型で 0.1 mV 以上

J 点から 0.06 秒後ないし 0.08 秒後で測定

ST 上昇

0.1 mV 以上

安静時 ST 下降がある場合

水平型ないし下降傾斜型で附加的な 0.2 mV 以上のST 下降

参考所見

上行傾斜型 ST 下降

ST 部の傾きが小さく(1 mV/秒以下)0.1 mV 以上

陽性 U 波の陰転化

偽陽性を示唆する所見

HR-ST ループが反時計方向回転

運動中の上行傾斜型 ST 下降が運動後徐々に水平型・下降傾斜型に変り,長く続く場合

6

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

では,陽性基準として 0.1 mV 以上の水平型ないし下降

傾斜型の ST 下降をとることが最も多く,ST 上昇,陽

性 U 波の陰転化,脚ブロックや高度の不整脈の発生も

基準として用いられる.しかし,脚ブロックの出現や高

度の不整脈は各種の疾患でみられ,特異的ではない.U

波の陰転化は,左前下行枝攣縮を除くと,労作狭心症で

は頻度が低い22),とされている.

マスター二階段法の判定基準として 0.1 mV 以上の水

平型ないし下降傾斜型の ST 下降と 0.1 mV 以上の ST 上

昇を陽性とするのが妥当と考えられる(表 5).

b)トレッドミル負荷試験

トレッドミル負荷試験の施行においては,まず負荷禁

忌例を除外する.負荷プロトコールはブルース法が標準

である.試験前の問診で,日常中の運動能が高い被験者

は第 1ないし第 1・2ステージの時間を短縮してもよい.

逆に,運動能の低い被験者,狭心痛閾値の低い患者,高

齢者は初段階負荷量の小さい修正ブルース法を用いる.

運動中止基準(表 3)を設けた症候限界性負荷で行なう.

心電図は標準 12 誘導を装着し,検査中は自動解析装置

のモニターと患者の状態を監視する.試験中は血圧を 1

分毎に測定する.

トレッドミル負荷心電図の心筋虚血の判定基準とし

て,最も一般的に用いられる心筋虚血の判定基準は ST

下降である.J 点から 0.06秒ないし 0.08秒後の ST 部分

を基線(PQ 接合部)からの下降度で測定する.0.1 mV

以上かつ ST 部分の傾きが水平型ないし下降型を陽性と

する1).

上行傾斜型の ST 下降については,傾きが大きい場合

は深さに関係なく陰性とするが,水平型に近い上行傾斜

型の ST 下降(傾きが 1 mV/秒以下)は陽性に含める方

が感度が高くなる23).一方,特異度は低下する.ACC/

AHA のガイドライン1)では上行傾斜型の ST 下降は全て

陰性としている.運動中に上行傾斜型の ST 下降があり

運動終了後徐々に水平型ないし下降傾斜型に変わり T

波逆転を伴って長く持続するものは偽陽性を示唆すると

される24).

運動中の心拍数の変化と ST 下降の関係から HR-ST

ループ25)や ST/HR スロープ26)が解析される.ST/HR ス

ロープは,運動中の心拍数(横軸)と ST 下降(縦軸)

をプロットして直線回帰した傾きである.ST 下降が有

意でもこの傾きが小さいと偽陽性の確率が高い27).HR-

ST ループは,心拍数を横軸に ST 下降を縦軸下向きに

プロットして運動中から回復期にかけて描かれるループ

の回転方向である.ST 下降が有意であっても,ループ

の回転が反時計方向なら偽陽性の確率が高い26).

脚ブロックの出現と高度不整脈5)については虚血性心

疾患に特異的といえない.U 波陰転化は労作狭心症では

出現頻度が 20-63 % と低く22,28,29),特異度も必ずしも

高くない22).

R 波指標30)(表 4)は,運動中の R 波高の増減が負荷

量に依存する31)ので,適切な基準とはいえない32).Q 波

指標33)(表 4)は,左前下行枝病変の場合に意味を持つ

とされるが,診断特異度は低い32).

安静時心電図に ST 下降が存在する場合,安静時の

ST レベルから附加的な 0.2 mV 以上の下降が用いられ

る34).非特異的 ST 下降や左室肥大に ST 下降を伴う場

合,特異度が下るが感度は変わらない.

左脚ブロック,WPW 症候群,ジギタリス服用例にお

ける ST 下降は虚血性心疾患の判定基準とはなりえな

い1).右脚ブロックでは V5・V6 の左胸部誘導と II・

aVF の下壁誘導の ST 下降は基準となりうる35).右脚ブ

ロックの場合,ST 測定を右脚ブロック波形の J 点から

0.08 秒後の部分とすると T 波部分に位置するので 0.04

秒ないし 0.06秒後の部分とする.

以上より,トレッドミル負荷心電図による心筋虚血の

判定基準として,0.1 mV 以上の水平型ないし下降傾斜

型の ST 下降と,0.1 mV 以上の ST 上昇(非 Q 波誘導)

が妥当である.安静時に ST 下降がある場合,附加的な

0.2 mV 以上の下降である.ST 偏位以外の指標は診断感

度を高めて次の検査に進むための,また HR-ST ループ

や ST・T の時間経過は偽陽性を判別するための付加的

な意義がある(表 5).

2)冠攣縮狭心症(表 6)

運動負荷心電図で Q 波の無い誘導に ST 上昇が出現す

る場合,冠攣縮狭心症と診断する.ST 上昇の基準とし

て J 点で 0.1 mV 以上の上昇が多く用いられる28,36).運

動負荷での ST 上昇の頻度は 29 % と必ずしも高くな

い37).運動負荷誘発の ST 上昇は,発作頻度が高い時期,

また午前中の検査で生じ易い38).また,カルシウム拮抗

薬中止の日数も誘発率に影響する.ST 下降と ST 上昇

表 6 冠攣縮狭心症の負荷心電図の判定基準

確定基準

0.1 mV 以上の ST 上昇

参考所見

U 波の陰転化

心拍数の増加不十分

繰り返す検査で虚血が出現したりしなかったりする

7

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

が交代する現象も冠攣縮狭心症を示す.

陰性 U 波の出現28,36),心拍数の増加不十分39),虚血閾

値の変動や虚血再現性の無さ,なども冠攣縮を診断する

参考となる.陰性 U 波は左前下行枝の攣縮に多い.表

6に冠攣縮狭心症診断の基準を示す.

冠攣縮の誘発試験には,運動負荷以外に,過換気負荷,

寒冷負荷,ハンドグリップ負荷がある.過換気負荷がも

っとも陽性率が高く,誘発率は 43-69 % と報告され

る38).寒冷負荷による ST 上昇は 9 % と低率である37).

3)心筋梗塞後心筋虚血(表 7)

心筋梗塞後の心筋虚血は梗塞部位と非梗塞部位のいず

れにも生じうる.いずれの場合も非 Q 波誘導における

ST 下降が判定の基準となる.ST 下降基準は狭心症の場合

と同じく水平型および下降傾斜型 0.1 mV の下降である.

陳旧性心筋梗塞では異常 Q 波誘導に ST 上昇が生じ

る.Q 波誘導の ST 上昇は梗塞部心筋の虚血,対側の心

筋虚血のレシプロカル変化,高度な左室壁運動異常が機

序となる.虚血と壁運動異常を鑑別することは難しく,

Q 波誘導の ST 上昇を虚血とするのは適切でない.Q 波

誘導に ST 上昇があり対側誘導に ST 下降が生じた場合,

ST 下降が虚血を表すかレシプロカル変化かの鑑別も困

難である.負荷心筋血流イメージングや負荷心エコー図

法が鑑別に有用である.

陰性 U 波は前壁心筋梗塞後の虚血でみられるが,高

度の壁運動異常とも関連しており29),陽性率も 20 % と

低く,基準として十分でない.冠性 T 波の運動時の陽

転化は,心筋梗塞後はむしろ一般的にみられるので虚血

の診断には有用でない.

表 7に心筋梗塞後の運動負荷心電図の陽性基準を示す.

4)特殊な集団に対する虚血性心疾患の診断

a)女 性

女性を対象とした運動負荷試験の解釈は容易ではな

い.閉経前女性における冠動脈疾患の有病率が低く,女

性全体における運動負荷心電図の診断感度と特異度が低

いことによる.一般に,無症状の女性のトレッドミル運

動負荷試験における ST 下降の診断特異度は高くない.

女性には非虚血性 ST 下降が多く,下壁誘導部位で最大

ST 下降が出現する場合は偽陰性の徴候である40).

b)高齢者

高齢者では筋力低下・筋萎縮により運動負荷試験の実

施が難しく,代替として薬物負荷試験を選択することが

多い.運動負荷試験の解釈では,冠動脈疾患の有病率・

重症度が高いため診断感度は高いが特異度は低くなり,

偽陰性が多い41).このように高齢者における運動負荷試

験は実施と解釈のどちらも難しいが,虚血性心疾患の診

断と予後における重要性は若年者の場合と変わらない42).

5)虚血重症度の判定および予後の予測(表 8)

運動負荷試験は重症度の診断に役立ち,ひいては予後

の推定に役立つ.冠動脈狭窄枝が多いほど ST 下降は高

率で,1 枝 63 %,2 枝 75 %,3 枝 88 % である19).予後

不良の指標として,胸痛の有無にかかわらず ST 下降43),

2.0 mV 以上の ST 下降44),低運動量での ST 下降45,46),

血圧の上昇不良47,48),低運動能46,47,49)がある.Duke 大

学方式の予後指標として,トレッドミルスコア=(運動

時間)- 5×(最大 ST 下降 mm)- 4×(胸痛指標:胸痛な

ければ 0点,胸痛あれば 1点,胸痛が運動中止理由なら

2 点)があり,予後の推定に有用である50).この値が -

11 以下なら高リスク,+5 以上なら低リスクである8).

表 8に重症例と予後不良の指標をあげる.

6)治療効果の判定(表 9)

日本心電学会から狭心症の薬物治療における運動負荷

心電図の効果判定の基準9)が出され,次いで「トレッドミ

ル負荷試験による抗狭心症薬薬効判定に関する研究」1)

表 7 心筋梗塞後の運動負荷心電図の心筋虚血の判定基準

確定基準

ST 下降

水平型ないし下降傾斜型で 0.1 mV 以上

参考所見

異常 Q 波誘導の ST 上昇は虚血と断定できない

異常 Q 波誘導の ST 上昇を伴って対側誘導に出現する

ST 下降は虚血と断定できない

陰性 T 波の陽転は虚血と関係なくほとんどの症例でおこる

表 8 運動負荷試験結果の重症例,予後不良の徴候

運動能が低い

血圧上昇の異常(運動中 10 mmHg 以上の低下,運動を続けても血圧が上昇しない)

狭心痛や ST 下降の始まる負荷量が小さい

最大 ST 下降が深く下降傾斜型 ST 下降を示す

ST 下降の誘導数が多い

ST 下降度が深い(≧0.2 mV)

運動終了後虚血性 ST 下降が長く続く

8

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

で幾つかの修正点が出された.これらをまとめるとトレ

ッドミル運動負荷心電図による治療効果の判定として,

表 9が挙げられる.

運動負荷心電図は極めて広範に臨床応用されている検

査手段であるが,我が国においては予後予測の指標とし

ての評価や経皮的冠動脈インターベンションなど治療適

応への位置付けなどの研究成果が乏しい.慢性虚血性心

疾患の治療法の発展と相まって,上記の大規模研究が行

われることが今後の重要な課題である.

ホルター心電図法は患者への負担が少なく日常生活中

の心筋虚血の診断ができる.慢性虚血性心疾患において,

本法が役立つ疾患や病態には,異型狭心症,労作狭心症,

陳旧性心筋梗塞ならびに無症候性心筋虚血がある.ホル

ター心電図による心筋虚血の診断基準,適応や性能の信

頼性に関しての基準は未だ統一されていないが,ST 下

降の陽性基準としてコントロール時の基線に比し,0.1

mV 以上の水平または下降傾斜型の ST 下降を示し,最

大 ST 下降に到達するまで 1 分を要し,0.1 mV 以上の

ST 下降が 1 分以上持続する場合が推奨される.虚血回

数の計測には,虚血エピソードの間隔が 1分以上あいて

いるものを数える.ST 上昇の陽性基準は Q 波の無い誘

導で 0.1 mV 以上の ST 上昇が 30-60秒以上持続する場

合である.いずれの ST 変化においても体位変換に伴う

非虚血性 ST 変化との鑑別のため,あらかじめ仰臥位,

側臥位,立位,あるいは過換気時の心電図を記録し判読

の参考にする.

ホルター心電図法とは携帯型心電計を用いて日常生活

時の行動中に長時間連続記録ができ,アナライザにて高

速解析する検査法である.ホルター心電図は心筋虚血の

診断方法として冠動脈造影,核医学検査,運動負荷心電

図などとともに使用されるが,他の諸検査法に比し患者

に負担を与えることなく日常生活中の心筋虚血の診断や

病態生理の解明に有用である.しかし,ホルター心電図

装置の精度における信頼性や,ホルター心電図による心

筋虚血の診断基準,あるいはその適応について推奨でき

る基準が極めて少なく,多くの混乱がある.本指針は,

ホルター心電図の使用対象症例が多い慢性虚血性心疾患

において,日常診療上,ホルター心電図が役立つと考え

られる疾患,病態,適応範囲,ならびにホルター心電図の

有用性と問題点に関する本邦の現状からみた基準である.

ホルター心電図の特徴として,心電図を長時間記録で

きる(24-48 時間),被検者の自由度が大きく日常生活

中に記録できる一方で,記録終了後に解析するため危険

な心電図変化が出現していても緊急対応性はない,通常

誘導数が 2 ないし 3 チャネルのため情報量に限界があ

る,などがあげられる.

電極は電気的,機械的に長時間安定させる必要があり,

現在,ディスポーザブル電極が使用され,ほぼ技術的に

は満足できる.記録器は携帯に適した小型軽量化し,か

つ堅牢で電気的,機械的に長時間安定化が計られている.

その記録媒体として主流であった磁気テープは,振幅特

性,位相特性に問題があり,最近はそれを解決すべくデ

表 9 トレッドミル負荷試験による抗狭心症薬治療効果の判定(日本心電学会「抗狭心症薬判定小委員会報告」[9]を同「トレッドミル負荷試験による抗狭心症薬薬効判定に関する研究」[8]により改変)

評価の対象はトレッドミル負荷試験(ブルース法)で運動誘発胸痛,0.2 mV 以上の ST 下降,運動耐容時間 6 分前後の条件をそろえた患者であること

著明改善

0.2 mV 以上・3 分以上の改善

治療期に ST 下降が消失する

改善

0.1 mV 以上・1.5 分以上の改善

やや改善

0.05 mV 以上・0.5 分以上の改善

不変

0.05 mV 未満・0.5 分未満の改善ないし悪化

悪化

0.05 mV 以上・0.5 分以上の悪化

今後の課題34

ホルター心電図II

要 旨

はじめに11

ホルター心電図の特質と技術的側面22

特 質A

技術的側面B

9

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

化の頻度,その出現時間帯,ST 下降度,心拍数との関

連,あるいは,いかなる状況において出現したか,など

を知ることが可能である63).しかし,ホルター心電図の

制約上,虚血部位や虚血の重症度判定について評価する

ことは困難である.一方,冠動脈造影などで狭窄の程度

が明らかな症例においては日常生活中の行動と一過性心

筋虚血との関連性,あるいは抗狭心症薬の薬効評価を検

討する場合には有用であろう64).

3)冠攣縮狭心症

本疾患は基本的には不安定狭心症であり,その評価は

速やかに行われなければならない.多くはその発作出現

状況の詳細な病歴聴取により診断は可能であるが,発作

時心電図による確定診断にはホルター心電図が有用であ

る.さらに,診断後の治療評価にも用いられる.本疾患

における一過性心筋虚血のほとんどは深夜から早朝にか

けて発現し,その心電図変化を捉えるにはホルター心電

図がもっとも有力な方法であり,ホルター心電図適応の

最たる疾患と考えられる.また,発作出現の活動期にお

いては,入院後,抗狭心症薬の治療効果判定のために月

2 回以上ホルター心電図を記録しなければならないこと

もしばしばあるが,現在の保険診療上のホルター心電図

記録が月 1回しか認められていないという制約があるこ

とを考慮する.

4)陳旧性心筋梗塞

急性心筋梗塞後の回復期の経過観察,あるいは外来通

院時期の日常生活における一過性心筋虚血出現の有無を

判定するためにホルター心電図が使用される65-67).ホル

ター心電図により日常労作における心拍数と ST 変化の

関係が捉えられ,それにより症例毎に日常労作の許容範

囲を決定することが可能である.さらに,定期的なホル

ター心電図記録により冠動脈血行再建術を施行した症例

における再狭窄出現を検出することも可能である68).し

かし,ホルター心電図においては,2 ないし 3 誘導の記

録であるため ST 変化を捉えることが出来ないこともあ

る.さらには,心筋梗塞症例においては梗塞誘導部位に

一致して ST 上昇が出現することが多く,虚血性変化と

の判別困難な事が多い.そのために他の画像診断などを

併用することが必要である.

5)虚血性心筋症

本疾患は冠動脈の狭窄あるいは完全閉塞に基づく重症

な虚血状態の持続の結果,冬眠心筋(ハイバネーション)

や心筋の瘢痕化によって生じる広範な心筋の線維化に起

ジタルカード式や IC メモリタイプの記録器へ移行しつ

つある.このうち IC メモリタイプがもっとも小型軽量

である.アナライザも最近の目覚ましいコンピュータの

発達によりその解析速度,解析精度が改善されているが,

各メーカーによりその時間軸の精度,解析された波形の

偽陽性率,偽陰性率,あるいはその再現性にバラツキが

ある.

本指針で取り扱う対象疾患は以下の慢性虚血性心疾患

であるが,ホルター心電図により得られた ST 変化の意

義は,それぞれの疾患により異なり,さらに ST 偏位判読

に支障をきたす脚ブロック,WPW 症候群,心肥大やジ

ギタリス服用を伴う症例などではその意義は低い51-54).

1)無症候性冠動脈疾患

健常成人を対象とした一過性無症候性 ST 変化のスク

リーニングとしてホルター心電図法を用いる場合,その

ST 偏位検出能の精度や信頼性はきわめて低いと考えら

れる.すなわち,Cohn55)の無症候性心筋虚血分類Ⅰ型

に相当する,見かけ上の健常成人における一過性心筋虚

血出現頻度は運動負荷試験では欧米で 1.2-6 % である

のに対し56,57),健常人を対象としたホルター心電図記録

による虚血性 ST 下降を示す偽陽性の頻度は 2-30 %,

平均 10.3 % である58,59).したがって,見かけ上の健常

人のホルター心電図法による一過性無症候性虚血性 ST

変化を鑑別することは極めて困難である.

一方,Cohn 分類Ⅱ,Ⅲ型におけるホルター心電図で

の無症候性虚血出現頻度は欧米で22-59 %,平均 35 %

である60).本邦においてもほぼ同頻度であり61,62),これ

らの群に対するホルター心電図の有用性は CohnⅠ型に

比し高い.さらに,狭心症の発作様式別では,冠トーヌ

スが関連する狭心症ほどその頻度は増加する.しかし,

これらの所見が真の一過性心筋虚血であるか否か慎重に

評価しなくてはならない.すなわち陳旧性心筋梗塞症例

においては冠性 T 波の存在によりその鑑別は複雑であ

り,一過性心筋虚血とするには他の画像診断にて確認す

る必要があろう.

2)労作狭心症

本疾患が既知の場合,日常生活における一過性 ST 変

慢性虚血性心疾患の診断におけるホルター心電図の意義

33

ホルター心電図の対象疾患A

10

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

虚血が生じていることが予想される場合にはホルター心

電図の適応はあろう.本疾患例の標準 12 誘導心電図に

おいて ST-T 変化を認めることが多く,たとえ ST 変化

因する病態をいう.本疾患はうっ血性心不全の症状が多

いが,その原因検索や病態生理の評価のためにホルター

心電図を記録することは少ない.ただし,一過性に心筋

表 10 アメリカ心臓病学会ガイドラインによるホルター心電図検査の適応(虚血関連のみ抜粋)

リズム不整に関する自覚症状クラスⅠ

1.原因不明の失神・前失神状態,発作性めまいのある患者2.原因不明で再発性の動悸がある患者

クラスⅡb1.発作的息切れ,胸痛,疲労(不整脈由来の)のある患者2.発作性心房粗・細動が疑われる神経学的症状のある患者3.失神,発作性めまい,動悸などがあり,不整脈以外の原因が特定されたが,この原因の治療にもかかわらず,症状が持続する患者

クラスⅢ1.失神,発作性めまい,動悸などの症状があり,検査によって不整脈以外の原因が特定された患者2.脳血管発作がみられ,不整脈の証拠のない患者

不整脈による症状がない患者における,将来の心イベントのリスク評価を目的とした不整脈検出の適応クラスⅠ  なしクラスⅡb

1.左室機能低下がみられる(駆出率 40 % 以下)心筋梗塞患者2.うっ血性心不全患者3.特発性肥大型心筋症患者

クラスⅢ1.心筋挫傷患者2.左室肥大を伴う高血圧患者3.左室機能の正常な心筋梗塞患者4.非心臓手術における術前不整脈評価5.睡眠時無呼吸患者6.弁膜症患者

不整脈による症状がない患者における将来の心イベントのリスク評価を目的とした心拍変動解析の適応クラスⅠ  なしクラスⅡb

1.左室機能低下がみられる心筋梗塞患者2.うっ血性心不全患者3.特発性肥大型心筋症患者

クラスⅢ1.左室機能低下がみられる心筋梗塞患者2.糖尿病患者における糖尿病性神経障害の評価3.心拍変動解析が不可能となる不整脈を有する患者

心筋虚血に対する適応クラスⅠ  なしクラスⅡa

1.異型狭心症の疑いのある患者クラスⅡb

1.運動ができない胸痛患者の評価2.運動ができない血管手術患者の術前評価3.冠動脈疾患を有するが非典型的胸痛症候群の患者

クラスⅢ1.運動ができる胸痛患者の初期評価2.無症状患者におけるルーチン検査

classⅠ ホルター心電図の有用性が確立され,一般的な合意を得ているものclassⅡa 意見の一致を見ていないが,ホルター心電図が有用と考えられるものⅡb 意見の一致を見ていないが,ホルター心電図の有用性がクラスⅡa ほど確立されていないもの

classⅢ ホルター心電図の有用性がみられないもの

11

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

の検出やその増強が捉えられても,その解釈にはしばし

ば困難が伴う.それ故,本疾患における心筋虚血の検出

においては,ホルター心電図の有用性は低いと考えられ,

他の画像診断による心筋虚血の検出法が望ましい.

以上の慢性虚血性心疾患におけるホルター心電図検査

の目的に適した疾患ならびに病態は,異型狭心症,冠動

脈有意狭窄の判明している労作狭心症や無症候性心筋虚

血例である.本邦においては虚血性心疾患に対するホル

ター心電図検査の適応を示した指針は示されていない

が,American Heart Association による提言(表 10)を

参照するとよい69).

虚血性心疾患の診断のためには適切な心電図記録が必

要である.日常活動中の安定した心電図記録を得るため

に,電極,誘導コード,ペースト,誘導法に注意を要す

る.誘導法は多誘導が望ましいが,通常,2 誘導法が使

用される.American Heart Association による指針70)では,

2 誘導を用いる場合は V1 と V5 誘導近似の誘導法が推

奨されている.とくに,V5 誘導近似の誘導法の有用性

は高い71,72).また,異型狭心症における ST 上昇を捉え

るためには,上下方向の誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)と V2 あ

るいは V3誘導近似の誘導法が高い診断率を示す.

ST 下降の陽性基準はコントロール時の基線に比し,1)

0.1 mV 以上の水平または下降傾斜型の ST 下降を示し,

2)最大 ST 下降に到達するまで 1 分を要する,3)0.1

mV 以上の ST 下降が 1 分以上持続する,場合であるが72-74),持続時間を 30 秒とすることもできる.虚血回数

を数える場合には,各虚血間隔が少なくとも 1分以上と

する定義が使われる(1×1×1ルール)75).

一方,ST 上昇の陽性基準は Q 波の無い誘導で 0.1 mV

以上の ST 上昇が 30-60 秒以上持続する場合である.

しかし,いずれの ST 変化においても体位変換に伴う非

虚血性 ST 変化との鑑別が重要であるため73,74),あらか

じめ仰臥位,側臥位,立位,あるいは過換気時の心電図

を記録し判読の参考にするとよい.ホルター心電図にて

心筋虚血を診断する際の偽陽性および偽陰性に関する原

因を列記する76)(表 11).

ホルター心電図法は日常生活中における虚血性心疾患

の診断,および治療には欠かせない検査法であるが,前

述のように心電図を日常生活中に長時間記録できるとい

う大きな利点がある反面,記録終了後に解析するために,

危険な心電図変化が出現していても緊急対応性はないと

いう欠点がある.このような問題を解決するために,患

者携帯心電図にて記録された発作時の心電図を電話伝送

する方式がある.電話で患者が心電図を送信した直後に,

結果を直接患者に知らせることができ,緊急の対応に適

した方法であり,この検査法は保険診療で認められてい

る.一方患者の発作頻度が少ない場合,その診断のため

に数日間心電計を携行させる必要性がある.この記録方

式はイベント・スイッチ式で,発作時に患者がスイッチ

を押すことによって記録でき,数日から最大数か月間の

携行が可能である77,78).また海外では植え込み式ループ

心電計が市販されており,生命を脅かすような失神発作

の診断の有用性が報告されている79).さらに虚血性 ST

偏位の診断においては以下の問題点がある.

1)記録誘導数の制約による有意 ST 偏位の見落とし

a)誘導数と誘導部位による ST 偏位検出の限界

ホルター心電図における記録誘導数の制約は冠動脈疾

患の ST 偏位診断の際に問題となる.一過性虚血性変化

をできる限り見落とさないように多誘導を用いたホルタ

ー心電図記録法の有用性が報告されているが71,80),技術

的,あるいはそのコストの面から普及していないのが現

状である.通常は V5 誘導近似の誘導法,V1 誘導近似

の誘導法を組み合わせて記録されることが多いが,一過

性 ST 偏位の診断率向上のためには上下方向の誘導を用

いた 3誘導法が望ましい.

b)双極誘導法による ST,T の変形,偏位度の増減

双極誘導によって生じる ST 偏位の歪み,すなわち,

不関電極の位置による関電極の電位への影響に対して単

判定基準B

表 11 ホルター心電図による心筋虚血の偽陽性・偽陰性の原因

1.ST 偏位におよぼす体位変化

2.過換気

3.突然過度の運動誘発 ST 偏位

4.バルサルバ誘発 ST 偏位

5.心室内伝導障害

6.診断されていない左室肥大

7.頻脈性不整脈による二次的な ST 変化

8.心房細動,粗動による偽陽性変化

9.電解質異常や薬剤による二次性 ST 変化

10.誘導部位の不適正

11.不正確な較正

12.記録の精密性の欠如

13.記録された信号処理過程での ST 特性への影響

ホルター心電図の診断目的による利点と欠点C

12

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

極誘導等価双極誘導法などもあるが81),普及していない

のが実状である.

2)工学的原因に基づく ST 間部の歪み

ホルター心電図による虚血性 ST 偏位を評価するに

は,その偏位は標準 12 誘導心電図と同様に変化するこ

とが望ましいが72,80),磁気テープを用いたホルター心電

計では,振幅,位相特性による ST,T 波の歪みは避け

がたく,さらには,誘導によりその程度も異なる74,82,83).

この歪みに対し,工学の立場から改良が行われている.

現在,上市されているホルター記録器は JIS 規格を満た

し,日常臨床における使用には耐えられるようになって

いる.しかし,各メーカーの記録器を他社のアナライザ

にて解析すると,その波形の歪みにより,ST-T 変化の

読みとりに支障をきたすことがある.今後,振幅,位相

特性のさらなる向上と,他社製の記録器,あるいはアナ

ライザを使用しても,その波形の歪みの程度に関する許

容範囲を規格として検討する必要があろう.一方,最近

のフラッシュメモリなどの記憶素子の小型化,大容量化

に伴い 24 時間の全波形を記録できるソリッドタイプの

記録器の改良,発達,低価格化が進み,今後はソリッド

タイプの記録器が主流になりつつある.それに伴い,位

相,周波数特性の改善が計られ,今後はソリッドタイプ

記録器における基準が必要であろう.特に低周波数領域

のカットオフレンジのメーカー互換性が必要であり,今

後の検討課題であろう.

3)自動診断

アナライザによる自動診断においてはデータレコーダ

ーによる記録,A/D 変換,区分認識,基線補正,パタ

ーン認識など様々な要素が混在し,さらに 24 時間とい

う記録には,データとしての波形数が膨大であり,かつ

ノイズが多く ST 部分の正確な認識は容易でない.その

対策も研究されているが,未だ十分な方法は確立されて

いない84).

現在使用されている患者携帯用心電計には長時間連続

記録のホルター心電計がもっとも使用されているが,記

録方法として磁気記録式に代わってデジタルカード式や

メモリ内臓式へ移行しつつある.磁気テープによる回転

むらなどのノイズがなく小型軽量化が実現した.これら

の装置は自動的に長時間連続記録する方式であり,虚血

性心疾患におけるホルター心電図の役割として一過性

ST 偏位の評価のほかに,時間生物学的見地による急性

心筋梗塞,狭心症,心臓死の好発時間帯の検討85),また,

心拍変動解析による自律神経活動の評価と予後推定など

有用性が明らかにされた86-88).

一方,頻度の少ない発作を捉えるため数日間携帯する

ことを考慮したイベント・スイッチ方式の装置や緊急対

応型として心電図の電送方式による装置も使用されてい

る.今後,それぞれの心臓発作の状況や目的に応じた携

帯型心電計の使い分けが必要であり,医療効率の面から

の検討も重要である.

体表面電位図は胸壁周囲から多数の単極誘導心電図を

記録し,体表面上の電位分布の心周期に伴う変化を詳細

に解析する方法である.心筋起電力の空間分解能に優れ,

生理的あるいは病的な起電力変化に関してその部位や程

度を詳しく特定できるという利点を有する.虚血性心疾

患の診断においては心筋虚血や梗塞の部位や程度の診

断,重症心室性不整脈の発生し易さの診断に有用である.

一方,心磁図は心臓が発している磁場を無侵襲に計測す

る体表面マッピングである.心臓の発する磁場は地磁気

の 100 万分の 1 という微弱なものでありその計測は困

難であったが,高感度のセンサが開発され研究が一気に

進展,2003 年,本邦製の心磁計測システムが世界に先

がけて薬事承認を得た.これを契機に,心磁図による心

疾患診断が一気に加速するものと思われる.

体表面電位図とは胸壁上で心臓を囲むようにして多数

(数十~数百)の誘導点を設け,心臓の電気的興奮に伴

って胸壁上に発生した電位を瞬時毎に等電位線を用いて

地図状に表現したものである.体表面電位図の最初の報

告は 1882 年に Waller89)によりなされた.その後,1963

年に Taccardi90)が本法の有用性を詳細に報告してから臨

床応用が進んだ.わが国では春見らの 128誘導点法91)と

今後の課題44

体表面電位図・心磁図III

要 旨

はじめに11

III-1 体表面電位図

13

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

山田らの 87 誘導点法92)が開発されたが,現在では山田

法による体表面電位図作成装置が市販され基準的なシス

テムとなっている.さらに等電位図表示のみでなく,

様々のデータ表示法が考案され目的に応じて使用されて

いる.わが国における体表面電位図の臨床研究は日本循

環器学会において過去に行われた 3つの小委員会,すな

わち学術研究委員会「体表面電位図の診断基準作成」

(1988.4~1991.3,班長安井昭二),診療基準委員会「体

表面心電情報による心疾患診断に関する研究」(1991.4

~1994.3,班長安井昭二)ならびに診療基準委員会「時

空間心電情報の定量化とその診断応用」(1994.4~1998.3,

班長外山淳治)の活動により発展してきた.その研究成

果はそれぞれ単行本として出版されているので参照され

たい93-95).

体表面電位図法は体表面上で得られるすべての心電情

報を収集する手法であり,心臓の電気現象から心臓病を

診断する非侵襲的検査法として優れた診断能を有する方

法である.右前胸部や背部を含めた胸壁上に多数の誘導

点を有することに加え,誘導部位直下の心起電力を強く

反映する単極誘導心電図から構成されるため,心臓のそ

れぞれの部位における心起電力の評価に威力を発揮す

る.これが,心起電力を固定した単一の双極子と仮定す

るベクトル心電図や誘導部位が少なく双極誘導も混在す

る標準 12 誘導心電図との本質的な違いである.そのた

め体表面電位図は心筋梗塞や心筋虚血の部位および大き

さに関するより詳細な電気的診断が可能である.

本邦の基準システムともなっているフクダ電子社製の

体表面電位図作成装置では前胸部で密,背部で粗に 87

誘導を配置し,Wilson の中心電極を不関電極とした電

位を記録する.誘導点の位置は胸壁を一周する A~M

の 13列とそれぞれ同じ高さにある 1~7の 7行により決

定される.A,E,I 列を,それぞれ右腋窩中線,胸骨正

中線,左腋窩中線上に配置し,A 列と E 列を 4 等分す

るように B,C,D 列を置く.同様に,E 列と I 列を 4

等分するように F,G,H 列を置く.J 列は,I 列と J 列

の間隔が H 列と I 列の間隔と等しくなるように配置す

る.同様に M 列は,M 列と A 列の間隔が A 列と B 列

の間隔と等しくなるように配置する.行に関しては,6

行と 4行が胸骨正中線上で,それぞれ第 2肋間と第 5肋

間の高さとなるように決定し,5行を 6行と 4行の中間

の高さに置く.各行間の間隔が等しくなるように 7,3,

2,1 行を決定する.両腋窩部の A,I 列には,6,7 行

はない.

体表面電位図はその診断用途に応じて種々のデータ表

示法が使用されている.それぞれのデータ表示法を紹介

するとともにそれらを用いた虚血性心疾患診断の実際に

ついて概説する.

すべての誘導の心電図波形を描かせる方法で,標準

12 誘導心電図の V1~V6 に相当する単極誘導心電図が

胸壁全体から記録されたものと考えてよく,直感的に理

解しやすい表示法である.ST 下降の広がりと下降の最

大電位は虚血の重症度を反映し,標準 12 誘導心電図の

同様な指標と比べて診断精度が格段に向上する96,97).

等電位図(isopotential map)は,従来からもっとも頻

繁に用いられてきた表示法である.各誘導点の同時刻に

おける電位を基にして,等しい電位の点を結び,等電位

線を引き,電位分布を表現する.QRS 群と ST-T 部の等

電位図においては,正電位領域は脱分極波が進んでくる

部位か再分極波を見送っている部位であり,負電位領域

は脱分極波を見送っているか再分極波が進んでいく部位

である.

心筋梗塞では,心筋壊死に伴う起電力の低下や消失を

反映し梗塞領域に興奮波が到達する時期に一致して,梗

塞領域に対応する胸壁上の領域に陽性電位の減弱や消失

が認められる98).標準 12 誘導心電図では診断が不可能な

心筋梗塞も,本法により診断が可能である99).左室壁運

動異常部位の詳細な同定や下壁梗塞に合併する右室梗塞

の診断も可能である100-102).運動負荷後の ST 下降領域か

ら虚血部を診断することは困難であるが,ST-T 部103,104)

や U 波105)の電位図を用いれば虚血部診断精度を高める

ことができる.

等積分値図(isointegral map)とは,ある一定区間内

における電位の時間積分値の体表面分布を等積分値線に

体表面電位図の特質と技術的側面22

特 質A

技術的側面(誘導法)B

慢性虚血性心疾患の診断における体表面電位図の意義

33

全波形表示A

等電位図B

等積分値図C

14

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

より表現したものであり,電位の増高や減少の総合的評

価が可能である.

QRS 等積分値図の depature map は心筋梗塞に起因す

る心起電力の低下を異常 Q 波と R 波の減高の双方から

総合的に捉える事ができるため梗塞巣の定量診断に役立

つ106,107).ST-T 等積分値図により心筋虚血部位の推定が

可能である108).QRST 等積分値図は ventricular gradient

を表現するものであり,興奮伝播過程が変化しても

QRST 積分値は大きな影響を受けない.そのため,脚ブ

ロック109)や WPW 症候群110)に合併した心筋梗塞の診断

に有用である.またリエントリーによる不整脈の基質と

なる活動電位持続時間の不均一性を反映するため重症心

室性不整脈の発生し易さの評価に用いることができ

る111-113).

等時線図(isochrone map)は,activation time(QRS

群の dV/dt が最小となる時刻)や recovery time(T 波の

dV/dt が最大となる時刻)の体表面分布を表現したもの

である.運動負荷後に虚血領域に対応する体表面上で

activation time が延長することが報告されている114).

体表面電位図は保険適応(1,500点)が認められてい

るものの,現在のところ主に研究目的に一部の循環器専

門施設で施行されているに過ぎない.これは標準 12 誘

導に比較して記録や解析が煩雑なことも挙げられるが,

心エコー図法や心臓核医学などの心臓の形態と機能を直

接的に評価し得る検査法が発達したことが大きい.心筋

梗塞の部位や大きさや虚血の定量評価を心臓電気現象か

ら評価しようとする試みの意義は従来に比べ少なくなっ

たといえよう.しかしながら,虚血性心疾患の死因とし

て重要な位置を占める重症心室性不整脈の診断に関して

は心電現象を用いる方法がより直接的である.その中で

も体表面電位図法は非侵襲的な方法ながら極めて多くの

心電情報を有している.今後は致死性心室性不整脈の診

断法(発生機序,発生源あるいは発生し易さなど)に体

表面電位図の寄与が期待される.

物質に電流が流れると右ねじの法則にしたがってその

周りに磁場が発生する.同様の現象が心臓にも生じ,心

筋興奮による活動電流に伴い磁場が発生する.心磁図

(magnetocardiogram,MCG)は心筋活動電位に起因する

磁場,すなわち心磁場を計測・解析することにより心臓

の電気生理学的現象を診断する体表面マッピングであ

る.心臓磁場を体の外部から計測する装置を心磁計と呼

び,得られた心磁情報を心磁図と言う.

心臓磁場の計測は 1963 年に米国の Baule と McFee115)

によって数百万回も巻いた誘導コイルを用いて計測され

たのがはじまりであるが,心臓磁場は地磁気の約 100万

分の 1(約 10-10 T[テスラ])以下という極めて微弱な

信号であるため,彼らの計測は心臓から磁場が発生して

いることを確認する程度のものであった.その後の

1970年に精度の高い心臓磁場計測が Cohen や Zimmerman

ら116)によって報告された.彼らが用いた磁気センサは

超伝導量子干渉素子( superconducting quantum

interference device,SQUID)と呼ばれる超電導デバイス

を用いた高感度な磁気センサであり,このセンサの出現

によって本格的な生体磁場計測が行われるようになっ

た.日本では 1980 年代から心磁計測が始められ117),そ

の後も研究報告がなされている118,119).1990 年半ばから

日立製作所が開発した 64チャンネル装置の MC-6400型

心臓磁気計測システムが医療機器として世界に先駆け薬

事承認を取得し,2003年 3月より発売が開始された.

磁場計測と電位計測は,その測定対象が心臓の電気生

理学的活動であるという点で共通であり,心磁計で検出

される心磁波形も心電波形と同様に,P,QRS,ST-T な

どをみることができる.しかし,心電図は心臓から生じ

た電流(primary current)が生体内を流れて(volume

current)体表面の 2 点間に生じさせた電位差を測定して

いるため,伝導率が異なる各組織により心臓電位が大き

く歪んで記録され,位置分解能が低く電流源の推定は困

難であるのに対し,心磁図は volume current による影響

等時線図D

今後の課題44

はじめに11

III-2 心 磁 図

心磁図の特質と技術的側面22

特 質A

15

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

が少なく,主に primary current に起因する磁場を測定,

かつ磁場の組織透磁率がほぼ一定であるため心磁情報に

ゆがみがほとんど発生しないという利点を有する.すな

わち心磁図は心臓の電流が作る磁場を直接計測するもの

であり,センサ直下の心筋電流を反映する情報を取り出

すことができ,電流源の推定が容易である.さらに心磁

図は体表面電極を必要としないため信号の直流成分のフ

ィルタ除去が不要で,ST 部分の絶対値としての偏位評

価が可能である.体表面電極が不要であることは検査の

簡便性を向上させるとともに雑音混入の機会を減少さ

せ,この点においても微小電位由来の心磁情報の計測を

可能としている.以上のごとく,心磁図は心電図に比し

理論的に ST-T 部分をはじめとする微小な電位変化に感

度が高い.

SQUID は極低温(液体ヘリウム温度)で生ずる超伝

導現象を利用し微弱な磁場を計測するもので,システム

として冷却システムと外部磁気除去技術が重要である.

SQUID の磁場感度は現在 10-14T 付近にあり,地磁気

(10-5T),心磁(10-11T),胎児心磁(10-12T),脳磁

(10-13T)に比し十分低値である.SQUID チャンネル数

も従来少数チャンネルで計測面をずらしながら分割計測

していたが,心臓全体を一度に計測できるマルチチャン

ネル化が急速に進んでいる.マルチチャンネル化により

センサ間の空間的位置精度や再現性の問題が解決され,

心磁図は完全に無侵襲な上に着衣のまま非接触計測可能

な検査となった.磁気雑音除去も磁気シールドの簡易化

や微分型の磁気検出コイルによる外部磁場除去等により

装置の小型化が進んでいる.1 回の計測は着衣のまま数

10 秒から 10 分以内で終了するので,マススクリーニン

グおよび臨床経過追跡にも適している.

日立ハイテクノロジーズ製 MC-6400 において SQUID

磁気センサは,デュワーと呼ばれる断熱低温容器のなか

に液体ヘリウムとともに格納されている.SQUID は

175 mm×175 mm の正方形の範囲に 8行 8列の等間隔で

64 本配列されており,一度の計測で心臓全体の磁場計

測を可能にしている.デュワーは真空層構造をもった高

断熱容器で,内層は液体ヘリウムにより約 4K(-269℃)

以下に冷却されているが,外層および装置表面は室温で

ある.デュワーは支柱(ガントリー)に支えられており,

デュワー,ガントリー,ベッドなどは非磁性材で作られ

ている.被験者はベッドに横たわり,デュワー底面を胸

部に近づけて計測をうける.測定装置は外部環境ノイズ

の影響を除くため磁気シールドルームのなかに設置され

る.SQUID によって検出された心臓磁場信号は,計測

制御回路部に伝えられる.計測制御回路部は,信号を増

幅するアンプ回路や電源ノイズ,電磁ノイズを除去する

フィルタ回路などを有し,心磁データは PC(データ処

理部)によりさまざまな解析が行われる.

心磁図の解析法と虚血性心疾患の診断について概説す

る.

磁界強度を心電図と同様に波形として表示するもので

ある.心電図は皮膚と電極との接触抵抗の影響を防ぐた

め,2 秒程度の時定数をもつ増幅器を用いて直流成分を

除き記録の安定化を図っており,ST 部分などの偏位が

真の偏位かあるいは基線の偏位による相対的な変化かの

鑑別が不能であるが,心磁図は直流成分の評価が可能で

ある.Cohen ら120)は犬の冠動脈を結紮した際の ST 偏位

が,基線の偏位によりもたらされることを心磁図により

示した.また運動負荷時の ST 下降は基線の上昇(約 70

%)と真の ST 下降(約 30 %)の両者からなることが示

された121).また,早期再分極症候群および脚ブロック例

の ST 偏位は真の ST 偏位のみによることが示されてい

る122).また,64 チャンネルの時間波形を表示したもの

(グリッドマップ表示)および複数チャンネルの時間波

形を同一時間軸に重ね合わせて表示するものなどの解析

法がある.

心磁図を加算平均し late ventricular field など微弱な信

号を検出する.Weismuller123)は,心室頻拍症例の late

ventricular field を検出し心筋内の緩徐伝導の部位を推

定,それが梗塞巣と正常心筋との境界部位にあることを

示した.

各時相の等磁界を結んだもので,右ねじの法則を用い

れば起電力の推定が容易である.心磁図では複数の起電

力を推定しやすく,心電図では診断困難な梗塞ベクトル,

心筋虚血に起因する再分極異常を検出可能と考えられ

る124,125).

SQUIDB

MC-6400C

慢性虚血性心疾患の診断における心磁図の意義

33

時間波形図A

心磁図の加算平均B

磁界(分布)図(isomagnetic map)C

16

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

隣接する 2点間の磁界勾配(空間差分)より各点の電

流を vector arrow として表示する.心起電力分布を直読

できる.また,アロー図中の矢印の大きさと方向から,

心筋のどの部位でどの方向に,どのくらいの大きさ(相

対値)の電流が流れているかを推定することができる.

電流アロー図から,上室性あるいは心室性期外収縮の起

源を明らかにし,あるいは早期興奮症候群の副伝導路の

部位を推定し,磁気共鳴画像と重ねることによりそれら

の部位を精度良く診断することも可能である126).さらに

心房細動,心房頻拍,心房粗動などの興奮旋回を画像化

することも出来る.これらを可能としているのは,MC-

6400 の時間分解能が 0.5 msec 以下であり,心臓の電気

生理学的現象を,1/1,000 秒の単位で捉え,マッピング

することが可能なことによる.

安静時心磁図において,脱分極過程(QRS)と再分極

過程(JT 部分)のそれぞれの電流量総和(それぞれ

QRSi,JTi という)を求める127-129)と,虚血性心疾患例

は正常例に対し,安静時心電図の ST 偏位,QT 間隔,

心磁図の QRSi には差を認めない.しかし,Jti は低値で,

したがって JTi/QRSi が低値を示し,血行再建後に正常

値にまで回復する.すなわち心磁図によって,心電図で

は解析できない虚血性心疾患例の安静時心室再分極異常

をとらえることが可能である.心室再分極相の積分値は,

重症心不全を伴う拡張型心筋症,持続性心室頻拍症例に

おいても低値を示すことより,心筋虚血のほかに心室再

分極相の不均一性を反映すると推定される.

軽度の運動負荷(マスター二階段法)を用い負荷前後

の心磁図 QRS 波での電流量変化をマッピングする試

み130,131)もある.本法によると健常者では運動負荷によ

る変化がほとんどみられないのに対し,虚血性心疾患例

では軽度の負荷後においても安静時に対する変化をとら

えることができる.

心磁計の特長は,心臓が自然に発している磁場を数心

拍の短時間に着衣のまま計測し,位置分解能の高い体表

面マッピングデータを無侵襲に提供する点にある.また,

心磁計は時間分解能にも優れ,精度の高い検査が行える

という特長から,心疾患の早期診断に役立つ検査として,

広い普及が期待される.しかし現在までのところ,共通

の測定法,解析法が定められておらず,各施設が独自の

測定法,解析法を試みている段階である.施設間のデー

タの比較検討とデータの蓄積に基づく診断精度の検定が

心磁図の発展に最も重要と考えられる.

心筋血流イメージングは,心臓核医学検査の基本とな

る検査である.現在本邦では,Tl-201 および Tc-99m 標

識の methoxy-isobutyl isonitrile(MIBI)と tetrofosmin が

利用できる.運動負荷や薬剤負荷による心筋血流イメー

ジングが一般的となり,最近は Tc-99m 標識製剤の利用

に伴い心電図同期 single photon emission computed

tomography(SPECT)も普及してきた.本法の意義とし

て心筋虚血の診断,虚血性心疾患の重症度評価,治療方

針決定での有用性がある.心筋機能の可逆的収縮不全す

なわち気絶心筋や冬眠心筋の評価の意義も大きい.さら

に,経皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス

術などの血行再建術が一般化する中で,これらの効果判

定にも重要な役割を果たしている.冠動脈疾患の予後推

定においては,心筋灌流異常のみられる患者で心事故発

生率が高く,逆に正常であれば心事故は少ないことが確

認されている.今後 Tc-99m 製剤の普及,心電図同期

SPECT の利用,多核種の利用が進む中で,虚血性心疾

患の診断治療において他のモダリティと併せて本法の占

める位置の評価と,医療全体の中での効率的利用が課題

となる.

心筋血流依存性に心筋に摂取される放射性医薬品を静

脈注射し,心筋集積の分布をガンマカメラあるいは

SPECT により画像化する.この方法を心筋血流イメー

ジングとよぶ.現在本邦で利用できる放射性医薬品は

Tl-201および Tc-99m 標識血流製剤の Tc-99m MIBI,Tc-

99m tetrofosmin である.

電流アロー図(current arrow map)D

電流積分図法E

カレントレシオ法F

今後の課題44

心筋血流イメージングIV

要 旨

はじめに11

17

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

Tl-201:Tl-201 は 1 価の陽イオンであり,カリウムイ

オンと同様の動態で静注後心筋に摂取される.心筋細胞

への取り込みは Na-K ポンプによる能動輸送による.心

筋へは静注後速やかに集積しその摂取率は 88 % であ

る132).Tl-201 は物理的半減期 73 時間で減衰し,主に

69-83 keV の Hg-X 線が撮像に利用される.

Tc-99m 標識製剤:Tc-99m MIBI 133, 134),Tc-99m

tetrofosmin135,136)は,ともに受動拡散により心筋に取り

込まれ,ミトコンドリア内に留まると考えられている.

心筋の摂取率は 60-70 %で,冠血流と比例するが,高

血流では取り込みは相対的に低下する.Tc-99m は物理

的半減期6時間で減衰するので Tl-201 より大量投与が可

能で,140 keV のエネルギーを撮像に利用するため,物

理的特性は Tl-201より優れる.

本邦では,ほぼ全施設で SPECT が可能であり集中治

療室内などやむを得ない場合以外は SPECT を施行す

る.低エネルギー高分解能コリメータ(または汎用コリ

メータ)を装着し,単検出器 SPECT 装置では右前斜位

から左後斜位の 180 度にわたって,5-6 度毎に 1 方向

約 20-30 秒のデータ収集を行なう.多検出器装置では

360 度からのデータ収集も行われる.撮影には,胸郭全

体が視野に入るような設定で収集し,トランケンション

アーチファクトを避ける.64×64 マトリクスで収集す

るが,多検出器装置では 128×128マトリクスでもよい.

画像処理は,まず投影像に対して前処理として

Butterworth フィルタで平滑化し,ramp フィルタなどを

用いて再構成することが多い.

安静時に心筋血流製剤を投与する(図 1).Tl-201 は,

74-111 MBq を静注,5-10 分後より撮像し,バイアビ

リティ評価など必要に応じて 3-4 時間後に後期像を撮

像する137).Tc-99m MIBI または tetrofosmin は,600-740

MBq を投与し MIBI では 30 分から 1 時間以降,

tetrofosmin では 15-30 分以降に撮像開始する.胆嚢や

消化器系の集積が高いときは時間をおくか食事をとらせ

てから再度撮像する.

自転車エルゴメータまたはトレッドミルにて運動負荷

を施行し,最大負荷時に心筋血流製剤を投与し 60-90

秒後に負荷を停止する(図 1).

Tl-201 を用いる場合には,負荷時 74-111 MBq を静

注,5-10分後より負荷時像を撮像し,3-4時間後に遅

延像(再分布像)を撮像する.バイアビリティ評価には

24 時間後の撮像を追加するか138,139),遅延像撮像後に 37

MBq の再静注を行ない撮像する140,141).負荷像撮像後直

ちに再静注し,3時間後に撮像する方法もある142).

Tc-99m MIBI,Tc-99m tetrofosmin では,負荷-安静,

安静-負荷を一日で行う方法と,それぞれを別の日に行

う方法がある.一日法では一回目は 300-370 MBq 投与

し,2 回目は倍量以上投与する.別の日に行う場合は,

それぞれ 600-740 MBq 投与する.変則的方法として安

静時 Tl-201と負荷時 Tc-99m 製剤を組み合わせ二核種同

時収集にて安静,負荷時血流を同時撮像する方法もあ

心筋血流イメージングの特質と技術的側面22

放射性医薬品の特徴(表 12)A

表 12 心臓核医学に使用する心筋血流製剤の比較

標 識 法 サイクロトロン製剤 100 ℃,15 分加熱 室温 15 分

性   状 水溶性 1 価陽イオン 脂溶性 脂溶性

投 与 量 74-111 MBq 600-1110 MBq 600-1110 MBq

集 積 機 序 能動輸送 拡散+膜電位 拡散+膜電位

洗 い 出 し あり わずかにあり わずかにあり

負 荷 法 運動または薬剤 運動または薬剤 運動または薬剤

撮 像 時 間 5 分,再分布 3-5 時間 30 分以降 15 分以降

心電図同期 可能 適する 適する

食 事 制 限 直前,終了まで 不要 不要

肝胆道集積 なし あり あり

Tl-201 Tc-99m MIBI Tc-99m tetrofosmin

撮像方法B

安静時心筋血流イメージングC

運動負荷心筋イメージングD

18

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

TI-201 安静心筋血流イメージング

TI-201 負荷心筋血流イメージング

Tc-99m 標準製剤(MIBI, Tetrofosmin)による負荷心筋血流イメージング

TI-20174-111MBq

TI-20174-111MBq

TI-20174-111MBq

TI-20174-111MBq

( 1 )

( 2 )

( 3 )

( 4 )

( 5 )

( 6 )

Rest SPECT

5-10 分

RedistributionSPECT; optional

3-4 時間後

Exercise

Exercise

Exercise

Exercise

Exercise

StressSPECT

5-10 分

StressSPECT

5-10 分

StressSPECT

5-10 分

RedistributionSPECT

3-4 時間後

RedistributionSPECT

3-4 時間後

RedistributionSPECT

3-4 時間後

24 hr-SPECT

24 時間

ReinjectionSPECT

10-30 分後 TI-20137MBq

TI-20137MBq

Tc-99m-MIBI/TF300-370MBq

Tc-99m-MIBI/TF300-370MBq

Tc-99m-MIBI/TF600-740MBq

Tc-99m-MIBI/TF600-740MBq

StressSPECT

15-60 分後

RestSPECT

15-60 分後

RestSPECT

30-60 分後

StressSPECT

15-60 分後

図 1 心筋血流イメージングのプロトコール

心筋血流イメージングのプロトコールは Tl-201と Tc-99m 血流製剤(MIBI,Tetrofosmin)で異なる.Tl-201は投与 5-10分後に撮像するのに対し,Tc-99m 血流製剤は投与 15-60 分後に撮像する.虚血の診断において,Tl-201 は投与後 3-4 時間の安静で再分布するので 1 回の投与で負荷像と遅延像を比較し虚血を診断できる.再分布がはっきりしない場合,Tl-201 を追加投与して撮像したり,24 時間後に撮像する方法がある.Tc-99m 血流製剤は再分布しないので,負荷時と安静時にそれぞれトレーサを投与して撮像する.Tc-99m 血流製剤では,Tl-201 と異なり負荷像を先にするか,安静像を先にするかが選択可能である.1 安静Tl-201 心筋血流イメージング,2 負荷 Tl-201 心筋血流イメージング+24 時間後イメージング,3 負荷 Tl-201 心筋血流イメージング+少量 Tl-201 追加イメージング,4 負荷 Tl-201 心筋血流イメージング+遅延像を省略した少量 Tl-201 追加イメージング,5 安静-負荷 Tc-99m 心筋血流イメージング,6負荷-安静 Tc-99m 心筋血流イメージング

19

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

る143,144).

ジピリダモール負荷ではジピリダモールを 0.14 mg/

kg/分で 4 分間投与し,さらに 4 分後に心筋血流製剤を

投与する145).ATP 負荷では ATP を 0.16 mg/kg/分で 5

分間投与し,投与開始 3 分後に心筋血流製剤を投与す

る146).他は運動負荷に準じて検査を行う.Tc-99m 製剤

では肝臓からの排泄が遅れることを考慮し,撮像開始時

間をやや遅めにする.カフェインはこれらの血管拡張薬

と拮抗するので負荷12時間前から摂取を禁止する147).ド

ブタミン負荷では 5μg/kg/分から始め,3 分毎に 10,

20,30,40μg/kg/分と増加させ,負荷終了 1 分前に血

流製剤を静注する.心拍数の増加が不十分な場合は最大

1 mg のアトロピンを投与する148).他は運動負荷に準じ

て検査を進める.実験的にはドブタミンにより MIBI の

集積が若干抑制されるとされているが,臨床的にはあま

り問題はないようである.

これらの負荷心筋イメージングにおいて使用される薬

剤は本来治療薬剤であったが,2005 年 6 月に日本初の

心筋血流シンチグラフィ負荷誘導剤としてアデノシンが

臨床的に使用可能となった.アデノシン負荷ではアデノ

シンを120μg/kg/分で 6分間持続静脈内投与する.アデ

ノシンは冠動脈に直接作用することにより,投与直後か

ら最大冠血流速度増加作用が得られ,また半減期は極め

て短く,投与終了後速やかに体内から消失する.今後,

本薬の使用経験を重ねていく必要性がある.

Tc-99m 標識心筋血流製剤 600-1100 MBq を投与す

る.データ収集は R-R 間隔を 8-16 分割し,180 度ま

たは 360度より 5-6度毎に 64×64マトリックスで心電

図同期しながら収集する.コリメータは低エネルギー汎

用コリメータを用い1方向当たりの収集時間は 1 分程度

とし,再構成時のフィルタは非ゲート法よりもやや低周

波寄りとする.多検出器装置では低エネルギー高分解能

コリメータを用いてもよい.磁気共鳴イメージング

(magnetic resonance imaging,MRI),左室造影,心プー

ルシンチから得られる心機能指標との相関も良好で信頼

性は高く,ルーチン検査としての施行が望まれる149-152).

心筋虚血は心筋酸素の消費と供給のバランスが崩れ供

給が相対的に不足することにより起こってくる.正常の

冠動脈は安静時血流に対して約 4-5 倍の血流増加を許

容できる予備能がある.この冠血流予備能は冠動脈の

50 % 以上の狭窄により徐々に低下し,予備能以上の労

作になると血流供給が不足し虚血を起こす.なお,アデ

ノシン,ATP やジピリダモール負荷では,相対的な冠

血流予備能の差を評価することになる.冠動脈疾患にお

いては冠動脈造影による所見がゴールドスタンダードと

して診断,治療方針決定に用いられる.しかし生理的現

象である虚血の診断に関しては冠動脈造影の解剖学的評

価は必ずしも万能ではない153).血流トレーサは血流に依

存して心筋細胞へ分布するもので,血流の多寡を反映し

た集積を示す.ドプラワイヤによる冠動脈血流予備能と

の比較では,冠動脈造影上の中等度の狭窄とは相関に乏

しいが,負荷心筋イメージングの所見とはよく一致す

る154).負荷心筋イメージングは虚血の有無のみならずそ

の程度の評価に不可欠な検査で,狭窄血管に対する血行

再建の適応決定に重要である.冠動脈病変の検出能とし

ては冠動脈造影をリファレンススタンダードとすると

Tl-201,Tc-99m MIBI,Tc-99m tetrofosmin ともに良好な

値を示している155-157).

負荷心筋イメージングによる可逆性灌流低下の部位,

大きさ,分布の異常は冠動脈血流予備能低下を反映して

おり,心筋虚血の重症度を示す指標である.また冠動脈

多枝病変や主幹部・左前下行枝近位部などの広範に虚血

を起こす病変の指標として肺の Tl-201 集積増加や一過

性の心拡大が利用できる158,159).また負荷再分布像での

Tl-201のび慢性の洗い出し低下も広範な虚血の指標とし

て有用である160).逆に冠動脈疾患で負荷心筋イメージン

グが正常所見であれば,冠狭窄は機能的に有意ではなく,

良好な予後指標と考えることができる161-163).虚血の程

度を把握することは治療方針決定に重要であり,血行再

建の適応決定に不可欠な情報をもたらす164).また心電図

同期 SPECT による左室機能評価を追加することによ

り,重症度に関する層別化がさらに可能となる165,166).

薬剤負荷心筋イメージングE

心電図同期心筋イメージングF

慢性虚血性心疾患の診断における心筋血流イメージングの意義

33

心筋虚血の診断A

重症度評価B

20

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

生存している心筋とは,再灌流療法による血流の改善

で可逆的に機能回復が期待される心筋である.虚血性心

疾患において再灌流療法は虚血の改善と機能低下した心

筋の機能回復に効果がある.本治療法においては機能低

下部における心筋のバイアビリティが問題となる.病態

生理としては虚血後の機能不全である気絶心筋(スタニ

ング)と慢性虚血による機能不全である冬眠心筋(ハイ

バネーション)として広く理解されている.Tl-201は血

流に比例して分布し,細胞膜の Na/K ATPase に依存し

て細胞内に摂取される.しかも低酸素状態,気絶心筋,

冬眠心筋でも摂取はあまり影響を受けない.特に安静投

与後の遅延像の診断能が最も優れている167,168).一方,

負荷時の一過性血流低下の程度が大きいほど機能回復の

可能性が大きい169).虚血所見とバイアビリティの両方の

情報を得ることのできる運動負荷-再静注または 24 時

間心筋イメージングは日常臨床においては最も有用性が

高い.これらの方法により遅延像で固定性欠損とみなさ

れた症例のうちの約 20-40 % に fill-in の所見を認め,

バイアビリティの診断能を改善できる.Tc-99m MIBI や

Tc-99m tetrofosmin も集積機序は Tl-201 と異なるものの

バイアビリティのある心筋にのみ集積し Tl-201 に匹敵

する診断能を有する170,171).近年,機能回復が得られな

くても再灌流療法により負荷に対する予備能の改善や予

後の改善が得られるとのデータがある172).また一方で,

バイアビリティのない領域に対して再灌流療法を施行し

ても予後が改善されないことが報告されている173).バイ

アビリティの診断基準に関してはさらなる検討が必要で

ある.心電図同期 SPECT を追加することによりバイア

ビリティ診断能がより向上し,再灌流療法後の機能予測

にも有用性が示されており応用が期待される174,175).さ

らにドブタミン負荷心電図同期心筋 SPECT にて機能予

備能の面からのバイアビリティ診断の有用性も示されて

いる176-178).

経皮的冠動脈血栓溶解療法(PTCR),経皮的冠動脈

形成術(PTCA)179),冠動脈ステント留置術180),冠動脈

バイパス術181,182)などによる再疎通あるいは血行再建術

後に,Tl-201,Tc-99m 製剤を用いて負荷あるいは安静

心筋血流イメージングを行なうことにより治療効果の判

定が可能である.また,薬剤治療による心筋血流の改善

も判定でき,利用価値の高い方法である.治療術後には,

どの程度の改善が得られたか,あるいは再狭窄がないか

を,安静時および負荷心筋血流イメージングにより評価

できる.このためには,スコア化や血流マップなどによ

る定量化法も有用である.一般に,治療前に負荷血流イ

メージング上虚血を認める症例は治療効果があがり,固

定性欠損の症例に比べ改善率が高い.血行再建後の負荷

心筋血流イメージングで再分布を認めれば,再狭窄を疑

う.しかしながら,血行再建後の早期 1-2 週以内に施

行された運動負荷 Tl-201 SPECT では再分布すなわち虚

血があっても数カ月後に改善する症例があることや,冠

動脈バイパス術では静脈グラフトに比して動脈グラフト

で再分布所見が出現しやすいことも指摘されており183),

再狭窄の判定には注意が必要である.一般的には,少な

くとも 4-6 週後に施行した方が,再狭窄の感度,特異

度ともに向上する.心筋血流,虚血評価に加え,心電図

同期心筋 SPECT による機能評価も有用である184,185).

冠動脈疾患の予後推定においては,心機能低下の程度

(駆出分画低下や壁運動異常,心不全),危機に曝されて

いる心筋の状態(多枝病変,虚血の誘発の有無),不整

脈の発生などが重要な推定因子となる.患者のリスクが

推定できれば,有効性の期待できる治療を選定すること

ができる.Tl-201により冠動脈疾患のリスクが高いとみ

なされる所見の第 1は,負荷時の血流欠損と再分布(あ

るいは fill-in),血流低下の範囲と程度に関連するもの

である.第 2に付帯的な情報として,Tl-201の肺の取り

込み増加で左心機能の低下に関連する指標をあげること

ができる186,187).心事故発生率を検討した報告で肺の取

り込み増加が,カテーテル所見,心電図変化,負荷達成

量,性別などから独立したかつ高い予測因子となること

が示されてきた.さらに,負荷時の心腔の一過性拡大も,

広範な心内膜側の血流低下を反映するものと考えられ,

予後予測因子となる.長期予後においても,これらの

Tl-201所見が陽性であれば,心事故発生率が高い188).逆

に Tl-201 が正常であれば心事故は 0.5 %/年程度と極め

て低く,経過観察中の予後良好のサインとなる161-163).

Tc-99m 放射性医薬品でも,同様に負荷時の欠損の大き

さと安静時 fill-in が予後規定因子となるが,Tl-201 のよ

うな肺の取り込み増加は十分検討されていない.心電図

同期心筋 SPECT による機能評価も予後の層別化に有用

である189).

Tl-201心筋血流イメージングの予後予測能は確立され

バイアビリティ(生存性)評価C

治療効果の判定D

予後予測E

今後の課題44

21

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

ている.Tc-99m 標識製剤は虚血の検出に関しては Tl-

201 と同程度とされているが,虚血範囲やバイアビリテ

ィ評価については Tl-201 との差異も指摘されている.

しかし Tc-99m 製剤には物理的特性,投与量,プロトコ

ールの自由度などの利点も多い.Tc-99m 製剤注射時の

第 1 回循環時法や心電図同期 SPECT 検査による血流と

壁運動の同時評価は,冠動脈疾患の検出率の改善や,気

絶心筋,冬眠心筋の評価で有用とされるが,従来のパラ

メータに対してどの程度の付加価値を有するか今後のさ

らなる検討が必要である.心臓核医学検査の中で基本と

なるのは血流評価であり,他のモダリティと併せて,診

断,治療の中に本法の占める位置の正当な評価と,医療

全体の中でのコストの軽減にどのように寄与できるか課

題となる.

Radioactive isotope(RI)アンジオグラフィは,心室の

全体的または局所的な機能の評価のための様々なパラメ

ータを簡便に得ることが可能で,一般にファーストパス

法と平衡時マルチゲート法が行われている.放射性医薬

品は主に Tc-99m ヒト血清アルブミンや Tc-99m 標識赤

血球が使用されているが,ファーストパス法では Tc-

99m 心筋血流製剤を用いることも可能である.ファー

ストパス法は 5-6 心拍前後での評価であるが,バック

グラウンドが極めて少ないため,特に右室機能の評価に

優れている.また,多結晶型ガンマカメラを用いると座

位や立位での運動時の検査も可能である.一方,平衡時

マルチゲート法は 300-600 心拍での評価で,左室機能

の評価の精度が高く,特に拡張機能の評価に優れている.

しかし,心房細動などの不整脈の出現時には,その精度

は低下し,評価が困難となる.他に,様々な活動状況で

の経時的に心機能を評価することを可能にした携帯型持

続的心室機能モニタリング装置(ventricular scintigraphic

monitoring,VEST)も利用されている.

RI アンジオグラフィは,血液成分(赤血球,アルブ

ミンなど)を Tc-99m で標識し,心腔内をイメージング

することにより,非侵襲的に左右心室の全体的または局

所的な収縮機能および拡張機能を評価する方法である.

主にファーストパス法と平衡時マルチゲート法に分けら

れ,それぞれに利点と欠点が存在する.

画像装置は高感度あるいは汎用型コリメータを装着し

たガンマカメラ,またはファーストパス専用の多結晶型

ガンマカメラを用いる.放射性医薬品は主として Tc-

99m 標識赤血球や Tc-99m ヒト血清アルブミンが使用さ

れる.上腕皮静脈より放射性医薬品を 740-1110 MBq

(20-30 mCi)ボーラス投与し,その直後より約 30秒間,

右前斜位方向からダイナミックデータを収集する.デー

タ処理は右心や左心に関心領域(region of interest,ROI)

を設定し,右室では 2-3心拍,左室では 5-6心拍のデ

ータを加算して心室容量曲線を算出して,左右心室それ

ぞれの心機能を評価する.

画像装置としては,高分解能型あるいは汎用型コリメ

ータを装着したアンガー型ガンマカメラを用いる.放射

性医薬品はファーストパス法とほぼ同様である.放射性

医薬品を静注して約 10 分後(または,ファーストパス

法を施行後)に撮像を開始する.撮像方向は左前斜位

30-45 度で,左右心室が分離できるベストポジション

を選択する.また左室と左房の分離をよくするため,カ

メラを 10度頭位に傾ける方法も利用される場合がある.

さらに,壁運動の解析のために正面,右前斜位,左側面

での撮像を追加する.通常,データは心電図の R 波を

トリガーとして,300-600 心拍を加算して収集する

(収集時間 5-10分).収集モードは簡便なフレームモー

ド収集が一般的である.データ処理においては,右室や

左室に ROI を設定し,左右心室それぞれの心機能を評

価する.特に左室の機能評価のために,左室の後側壁外

側に設定したバックグラウンドの ROI により補正を行

い,得られた左室内放射能のカウントの変化より左室容

量曲線を算出する.

RI アンジオグラフィは非侵襲的に左右心室の機能を

RI アンジオグラフィV

要 旨

はじめに11

RI アンジオグラフィの特質と技術的側面22

ファーストパス法A

平衡時マルチゲート法B

慢性虚血性心疾患の診断におけるRI アンジオグラフィの意義

33

22

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

評価することができ,個々のデータは再現性と客観性に

優れている190-193).そして,これらのデータをもとに心

機能障害の重症度や治療効果の判定,さらに種々の負荷

の際の心機能の変化の程度も定量的に評価できる.特に

運動負荷時の心機能の評価から心筋虚血の有無やその重

症度の評価ができる194-197).

左室の全体的な機能の評価においては,左室容量曲線

より,収縮期指標として左室駆出率(left ventricular

ejection fraction,LVEF),1 回心拍出量,駆出早期 1/3

の平均駆出速度(1/3 mean ejection rate,MER),最大駆

出速度(peak ejection rate,PER)などの,拡張期指標と

して最大充満速度(peak filling rate,PFR),拡張早期 1/

3 の平均充満速度(1/3 peak filling rate,PFR)などのデ

ータが得られる198-200).主として LVEF が収縮不全の指

標として,PFR が拡張不全の指標として用いられ,虚

血性心疾患患者の左室機能のフォローアップ(薬物治療

や侵襲的治療の効果判定,病態の変化)に使用される.

特に平衡時マルチゲート法では,放射性医薬品の1回の

投与で様々な負荷での心機能の評価が可能である.この

ような測定法により,冠動脈病変の重症度と運動負荷時

の LVEF の低下度に関連性があることや201),また運動時

の左室機能が生命予後の規定因子になること202)が報告

されている.一方,左室の局所的な機能の評価法として

は,拡張末期のフレームにおいて左室の ROI を分割し,

それぞれの LVEF を算出する方法や,各フレームをシネ

モードで連続表示することにより,左室壁運動を視覚的

に観察する方法がある.この方法により心室瘤の判定も

可能である.RI アンジオグラフィは左室の壁運動の評

価において心室造影とよく相関し,虚血性心疾患の病態

の把握に有用である.しかし,心室性期外収縮を有する

患者ではその精度は低い.また,一般にファーストパス

法の方が平衡時マルチゲート法に比べて LVEF は低値を

示す傾向にある.

ファーストパス法ではバックグラウンドが極めて少な

く,また右房や肺動脈の分離が容易な点で,平衡時マル

チゲート法(左前斜位)より正確に評価できる.左室と

同様に右室容量曲線により,様々なデータが得られ,主

に右室駆出率が使用される.ただし,右室機能は後負荷

の影響を受けやすいため,施設間でデータにばらつきが

生じやすいことに留意する必要がある.

心電図同期 SPECT が普及しているが,広範囲心筋梗

塞での評価が困難な面もあり,RI アンジオグラフィも

有用な検査である.ただし,大きなガンマカメラを使用

する検査であるため,日常生活の動作や心理学的変化に

よる心機能の評価は困難である.その欠点を解決するに,

核聴診器を小型化した携帯型持続的心室機能モニタリン

グ装置(VEST)が有用であるが203-205),装置が高価でほ

とんど普及していないのが現状である.

I-123 Metaiodobenzylguanidine(MIBG)は心筋交感神

経機能を画像化するために開発された放射性医薬品であ

る.I-123 MIBG は交感神経末端の神経伝達物質である

ノルエピネフリンと類似した構造を持つ.I-123 MIBG

心筋イメージングはトレーサの安静時投与にもかかわら

ず,冠動脈疾患検出の感度が高い特徴があり,心筋虚血

の検索に有用と考えられる.また心筋の交感神経機能を

評価できるので,心筋梗塞症例では心室性不整脈の焦点

の検索や冠攣縮狭心症での冠攣縮部位の検索など負荷心

筋血流イメージングでは評価困難な冠動脈疾患例への応

用が期待されている.また,心筋交感神経イメージング

は,慢性虚血性心疾患における予後規定因子としての重

要性についての知見が蓄積され,重症度や予後評価にお

ける有用性も確立されてきている.

心臓における交感神経支配は両側の星状神経節から由

来し,心臓周囲の神経巣を形成し,血管走行とともに心

外膜側から心筋に分布する.交感神経末端は神経伝達物

質の産生,放出,摂取が行われており,ノルエピネフリ

ンは心基部から心尖部にかけて分布している206).半減期

13時間,159 keV のエネルギーのガンマ線を放出する I-

123 で標識した I-123 MIBG は心筋交感神経の画像化の

ために開発された心筋製剤であり,交感神経末端の神経

伝達物質であるノルエピネフリンと類似した構造を持

左室機能A

右室機能B

今後の課題44

心筋交感神経イメージングVI

要 旨

はじめに11

23

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

つ.虚血性心疾患では心筋虚血や心筋梗塞において心筋

交感神経が除神経されるため,I-123 MIBG を用いて除

神経領域の評価が可能である207,208).

前処置では甲状腺への I-123 による被曝を抑制するた

めにルゴールを飲用する.また I-123 MIBG の集積に影

響を及ぼす可能性のある三環系抗うつ剤,交感神経刺激

剤の投与は検査前日から休薬することが望ましい.投与

方法は安静時に 111 MBq(3mCi)の I-123 MIBG を静注

する.撮像は洗い出し率算出のために,静注後 15 分の

早期像と 4 時間の遅延像の 2 回撮像されることが多い.

撮像方法は心筋・縦隔比(Heart/Mediastinum 比,H/M

比)と洗い出し率算出のための planar 像と心筋局所交感

神経機能の評価のために SPECT 像が収集される.

Planar 像は正面像を 3-5 分間で撮像し,SPECT 像は機

器,収集方法よって異なるが,180°収集ないし 360°

収集で 30から 60方向,1方向 30秒ないし 60秒で収集

する.Planar 像では定量的評価のために早期像と遅延像

の関心領域(ROI)を心筋全体と縦隔に設定し,H/M

比や洗い出し率を算出する.SPECT 像では短軸,垂直

長軸,水平長軸断層像を早期像と遅延像の各々再構成し

視覚的に判定するのみならず,極座標表示を作成し判定

する.

Planar 像では視覚的に心筋の集積と肺野集積の評価が

重要であり,planar 像から算出された定量的指標である

H/M 比を検討する.H/M 比の正常値は早期像で 2.0 か

ら 2.7,遅延像で 2.1 ないし 2.9 であり,洗い出し率は

21-30 % とされる.局所心筋における交感神経末端の

分布は均一ではなく,下壁は正常例でも分布が少なく,

高齢者では顕著に低下することが知られている.したが

って I-123 MIBG 心筋 SPECT の読影においては区域に

よる分布の違いを考慮する必要がある209,210).

心筋の交感神経機能が評価できる I-123 MIBG 心筋イ

メージングは心筋梗塞を主体とした冠動脈疾患,拡張型

心筋症をはじめとする各種心筋症,心室性不整脈を来す

疾患,および不全心などに臨床応用される.以下に虚血

性心疾患について述べる.

心筋梗塞についての基礎的検討では,動物心筋梗塞モ

デルで貫壁性の梗塞部位において Tl-201 と I-123 MIBG

の集積低下が一致したと報告されている.梗塞周囲部で

は Tl-201 は正常集積だが I-123 MIBG の集積低下がみら

れ,心筋血流が保たれていても除神経された領域

(viable but denervated area)があることが注目されるよ

うになった211,212).また心筋梗塞後,除神経された領域

は心室性不整脈の焦点となっていることが報告され重要

性を増している213,214).臨床的には急性心筋梗塞で Tl-

201 欠損がみられる梗塞領域のみならず,Tl-201 の集積

が保たれた部位でも I-123 MIBG の集積低下がみられ

る.経過観察で急性期に除神経された領域が回復する過

程も画像化できる215).心内膜下には交感神経分布が多い

ので,心内膜下梗塞のような非貫壁性心筋梗塞において

も Tl-201 に比較し I-123 MIBG の集積低下が顕著にみら

れる210,212).

基礎的検討で冠動脈反復阻血・再開通心筋虚血モデル

で作成した気絶心筋において I-123 MIBG の集積低下は

壁運動異常部位と一致した216).臨床例においても気絶心

筋では狭心症の心筋虚血部位よりも I-123 MIBG 集積に高

度の低下がみられる217).また心筋虚血の検出にも応用さ

れ,心筋梗塞を伴わない重症心筋虚血症例において I-123

MIBG の集積低下がみられたと報告されている218,219).

冠攣縮狭心症では Tl-201 の集積欠損がみられない非発

作時に I-123 MIBG の集積低下がみられ,交感神経機能

の異常が検出できる.このような現象から I-123 MIBG

の集積低下は強い心筋虚血発作が最近起こったことを示

唆する所見であり,治療方針の決定に役立つ220,221).不

安定狭心症症例においても Tl-201 の集積欠損がみられ

ない部位に I-123 MIBG の集積低下がみられる.このこ

とから虚血発作を頻回に繰り返す心筋虚血領域では交感

神経機能異常が生じ,I-123 MIBG の集積低下として検

出できる222,223).また,冬眠心筋における I-123 MIBG の

分布異常が慢性虚血実験モデルにおいて示されており,

冬眠心筋を有する症例における致死性不整脈や突然死な

どの高危険症例の検出における有用性が示唆されてい

る224).さらに,慢性虚血性心疾患における心不全症例に

おける I-123 MIBG を用いた心筋交感神経イメージング

は,予後評価指標としての重要性が注目されてい

心筋交感神経イメージングの特質と技術的側面22

撮像方法A

判定基準B

慢性虚血性心疾患の診断における心筋交感神経イメージングの意義

33

心筋梗塞A

心筋梗塞以外の虚血性心疾患B

24

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

る225-227).

心筋交感神経イメージングは冠動脈疾患の治療効果の

評価にも使用される.I-123 MIBG 集積低下がみられた

冠動脈疾患症例において再灌流療法後,I-123 MIBG の

集積が改善する症例は 40 % 程度である.その回復には

数ヶ月を要するとされている 228,229).以上から I-123

MIBG 心筋イメージングでの冠動脈疾患の検出能は運動

負荷 Tl-201 心筋血流イメージングと同等の感度と特異

度を有しており,心筋梗塞症で感度 90 % 前後および特

異度 75 % 前後,狭心症で感度 80 % 前後および特異度

75 % 前後とされている.しかし 冠動脈病変枝別では右

冠動脈領域が感度 100 % であるが特異度が 40 % と著し

く低く,下壁領域での過大評価が起こることが多い230).

この理由は,心筋における交感神経分布が不均一なため

であり,下壁の診断には注意を要する.

I-123 MIBG 心筋イメージングは安静時に投与するに

もかかわらず,冠動脈疾患検出の感度が高い特徴がある

ので心筋虚血の検索に有用と考えられる.また心筋の交

感神経機能が評価できるので,心筋梗塞症例では心室性

不整脈の焦点の検索や冠攣縮狭心症での病変部位の検索

など,負荷心筋血流イメージングでは評価できない冠動

脈疾患例への応用が望ましい.

心筋交感神経機能画像である I-123 MIBG 心筋イメー

ジングは正常例であっても,年齢とともに下壁の集積が

乏しくなるので,下壁に偽陽性を呈する症例が多くなる.

しかしながら,その機序については明らかにされていな

い.また心機能の低下に伴って肺野集積が高くなり,心

筋集積は低下し,SPECT 画質の低い画像が多く見られ

る.これらの理由から I-123 MIBG 心筋イメージングの

虚血性心疾患への応用は限定され,むしろ不全心などへ

の臨床応用が好まれる傾向にある.虚血性心疾患におけ

る I-123 MIBG 心筋イメージングの有用性の一つとして

安静時投与で虚血病変の検索ができることがある.した

がって負荷を行うことができない不安定狭心症などの症

例や,心筋虚血誘発の難しい冠攣縮狭心症などで,心筋

虚血を検索できる利点を生かして本法の有用性を高めて

いくことが期待される.今後,I-123 MIBG 心筋イメー

ジングの虚血性心疾患における予後評価における有用性

についての多数例における検討が必要と考えられる.さ

らに,虚血性心疾患による心不全症例における交感神経

β受容体遮断剤による治療効果の予測や治療効果評価に

おける有用性に関する多数例での検討が期待される.

長鎖脂肪酸は,正常心筋の主たるエネルギー源であり,

心筋の脂肪酸代謝を評価することで心筋虚血の病態にお

ける有用な情報が提供される.SPECT 製剤として開発

された I-123標識側鎖型脂肪酸 15-(p-iodophenyl)-3-(R,S)-

methyl pentadecanoic acid(beta-methyl-p-iodophenyl-

pentadecanoic acid,BMIPP)は代謝捕捉(metabolic trapping)

によって心筋に保持され,心筋の脂肪酸利用状態および

心筋中性脂肪プールの大きさを反映する.I-123 BMIPP

は安静時投与により心筋虚血を鋭敏に検出し,心筋虚血

の重症度やバイアビリティの評価に有用である.また,

I-123 BMIPP は重症心筋虚血における脂肪酸代謝障害の記

憶を長時間描出することから,心筋虚血の責任病巣の検

出や冠攣縮狭心症の診断における有用性が期待される.

長鎖脂肪酸は,正常心筋の主たるエネルギー源である.

脂肪酸はβ酸化により代謝され,心筋 adenosine

triphosphate(ATP)の 60-80 % を供給する.残りの

ATP はブドウ糖および乳酸の代謝によって産出される.

また,虚血心筋においてはブドウ糖利用が亢進し,脂肪

酸利用は抑制される231,232).したがって,心筋の脂肪酸

代謝を評価することで心筋虚血の病態評価に関する重要

な情報を提供する.

心筋脂肪酸代謝の評価には,従来 C-11 パルミチン酸

が用いられてきた233-235).しかし C-11 パルミチン酸はポ

ジトロン製剤であり,使用可能な施設は限られていた.

I-123 標識脂肪酸代謝イメージング製剤の導入によっ

て236-238),多数の施設において容易に心筋脂肪酸代謝イ

メージングが可能となってきた.I-123 標識脂肪酸代謝

治療評価C

今後の課題44

心筋脂肪酸イメージングVII

要 旨

はじめに11

心筋脂肪酸イメージングの特質と技術的側面22

放射性医薬品の開発A

25

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

イメージング製剤は,大きく分けて直鎖型と側鎖型に分

類することができる.直鎖型は C-11 パルミチン酸と同

様にβ酸化を受けることからその洗い出しを解析するこ

とで,直接的にβ酸化を評価することが可能である.一

方,側鎖型は代謝捕捉(metabolic trapping)によって心

筋に保持されることを期待し開発がなされた.したがっ

て,側鎖脂肪酸の心筋集積状態は直接的にβ酸化を示さ

ないが,心筋の脂肪酸利用状態および心筋中性脂肪プー

ルの大きさを反映する.I-123 標識脂肪酸製剤として側

鎖型の 15-(p-iodophenyl)-3R,S-methyl pentadecanoic acid

(I-123 BMIPP)と I-123-iodophenyl-9-methyl-pentadecanoic

acid(I-123 9-MPA)が開発されたが,この報告では,

現在臨床使用が可能で,多くの基礎的・臨床的知見の蓄

積のある I-123 BMIPP について述べる.

長鎖脂肪酸の輸送蛋白の阻害薬 etomoxir で前処置す

ることで投与早期の I-123 BMIPP の洗い出しが増大す

る239).Tetradecylglycidic acid(TDGA)を用いてミトコ

ンドリアの carnitine acyltransferase I を阻害し心筋 ATP

濃度を変化させると,ATP 含量と I-123 BMIPP 集積が

よく相関する240).イヌの心筋虚血モデルにおいて I-123

BMIPP 集積は心筋 ATP 含量と相関し,虚血心筋と梗塞

心筋が鑑別される241).また,ラットの心筋虚血モデルで,

I-123 BMIPP 集積が,脂肪酸代謝やミトコンドリア内の

TCA 回路の活動を反映している.このような様々な角

度から,I-123 BMIPP の心筋集積には,心筋のエネルギ

ー状態を推察することができることが明らかとなってき

ている.I-123 BMIPP の心筋からの洗い出しも心疾患の

病態解明に有用な情報を提供し得る.急性冠動脈結紮モ

デルにおいて心筋血流と I-123 BMIPP 集積は一致する242).

他方,冠動脈結紮後再灌流モデルでは,心筋血流と I-

123 BMIPP 集積の乖離を示す243).以上より,心筋血流

と I-123 BMIPP 集積の乖離が障害された心筋の病態を評

価する上で重要な情報となる.

1)データ収集方法

空腹状態で I-123 BMIPP 111-148 MBq(3-4 mCi)

を静注し,20-30 分後に早期像を撮像する.また,2-

3 時間後の遅延像を追加撮像することで,心筋からの洗

い出しの定量評価や心筋局所の洗い出しの亢進や fill-in

を検出することが可能である.I-123 BMIPP の投与は,

脂肪酸利用が高い空腹状態でなされることが多い.糖負

荷状態で I-123 BMIPP を投与すると心筋虚血の検出能が

向上するという報告もある244).撮像は主として SPECT

が施行される.I-123 BMIPP 投与直後からのダイナミッ

ク SPECT 撮像により,I-123 BMIPP の心筋集積動態か

ら心筋性状に関する情報が得られる 245).また,I-123

BMIPP は I-123 標識製剤であるので,心筋血流製剤 Tl-

201 との 2 核種同時収集が可能で,同一断層像にて心筋

血流と脂肪酸代謝を正確に比較することが可能である.

2 核種同時収集には,クロストークの補正の問題がある

が,心筋虚血の評価において重要な I-123 BMIPP と心筋

血流の乖離所見を評価しやすい.

2)解析方法

SPECT 像により判定するのが一般的である.必要に

応じて Bull’s eye 画像を作成する.これにより血流分布

像との対比が客観的かつ定量的にできる.心筋洗い出し

の解析には,洗い出しマップを用いる.正常例では,心

筋 I-123 BMIPP 集積はほぼ均一である.心筋洗い出しは

撮像時期により異なるため,施設の正常値を算出するこ

とが必要である.I-123 BMIPP 集積異常は,多くの場合

集積低下として認められる.また,I-123 BMIPP 集積の

詳細な評価には心筋血流と対比することが重要である.

心筋虚血状態では,心筋脂肪酸代謝が障害されやすい

ために I-123 BMIPP の集積低下が心筋血流に比して高度

となることが多い246,247).I-123 BMIPP の集積低下は,高

度な心筋虚血領域や高度冠動脈狭窄領域で高頻度に認め

られ248-255),その集積低下と左室壁運動異常には良好な

相関が認められる256).また,冠血行再建術後の I-123

BMIPP 集積の改善は,心筋局所の壁運動改善と密接に

関連していて,回復し得る虚血心筋の検出にも有用であ

る257,258).心筋血流と I-123 BMIPP 集積の乖離は再開通

を認めた心筋梗塞の急性期および亜急性期に高頻度に認

められる235).慢性期は心筋血流と I-123 BMIPP 集積が一

致してくることが多い.狭心症では,心筋血流異常を認

めないにもかかわらず,安静時の I-123 BMIPP 集積異常

が高頻度に認められることが報告されている259,260),経

皮的冠動脈形成術後の再狭窄病変の検出にも,心筋血流

イメージングに加えて,I-123 BMIPP 心筋イメージング

の情報が有用である261).

基礎的検討B

検査方法C

慢性虚血性心疾患の診断における心筋脂肪酸イメージングの意義

33

心筋虚血の診断A

26

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

狭心症の重症度評価については,安定狭心症に比して

不安定狭心症で I-123 BMIPP の集積低下が高頻度に認め

られる248,262).また高度冠動脈狭窄や側副血行路を有す

る症例に I-123 BMIPP の集積低下が認められやすく,冠

動脈血行再建術の適応となることが多い249-254).このこ

とは,I-123 BMIPP 心筋イメージングが安静状態での検

査で不安定狭心症や血行再建術を必要とする病変の評価

に有用な情報を提供し得ることを示している.I-123

BMIPP 心筋イメージングは冠攣縮狭心症の評価にも有

用である263-266).冠攣縮狭心症においては,心筋血流イ

メージングでの病巣検出率が低い(感度約 10 %)のに

対し,安静時 I-123 BMIPP の集積低下が高頻度(感度約

50 %)に認められ,冠攣縮の誘発試験を行わないで病

巣検出が行える.このことは,I-123 BMIPP 心筋イメー

ジングが心筋虚血の既往(ischemic memory)を捉え得

ることを示す.冠攣縮狭心症において治療後の経過観察

にも有用な情報を提供し得る266).

心筋虚血においては,心筋血流に比して心筋脂肪酸代

謝が障害されやすく246,247,267),このような心筋血流と脂

肪酸代謝の乖離は回復し得る虚血心筋に認めることが多

い.したがって,心筋血流と脂肪酸代謝の乖離は心筋バ

イアビリティ評価に有用である.I-123 BMIPP の集積乖

離は,Tl-201 や FDG を用いたバイアビリティ評価と一

致することが報告されている 237,247-268).また,I-123

BMIPP の集積乖離が冠動脈血行再建術後の左室壁運動

の改善の予知に有用である 267,269).さらには, I-123

BMIPP 集積乖離の程度は,急性心筋梗塞後270,271) や血

行再建術後258)の心機能回復の指標となり得る.心筋血

流と I-123 BMIPP 集積乖離は虚血心筋の検出のみでなく,

心筋バイアビリティ評価にも有用な情報を提供し得る.

心筋梗塞後の予後予測における I-123 BMIPP 心筋イメ

ージングの検討では,I-123 BMIPP 集積乖離は心事故の

予知の有用な予後因子である272,273).また,狭心症を対

象とした心事故の予後評価における検討でも,I-123

BMIPP 集積乖離は心事故の予知の有用な予後因子であ

る274,275).

心筋脂肪酸代謝イメージングとして I-123 BMIPP を用

いた検査は,心筋代謝を容易に評価できる貴重な検査法

の一つである.本邦では,I-123 BMIPP は心筋虚血の診

断,バイアビリティ評価,冠血行再建術などの治療効果

判定に多くの知見が集積され,I-123 BMIPP 心筋イメー

ジングを用いた予後予測についても,徐々に容認されつ

つある.また,I-123 BMIPP 心筋イメージングの病態評

価における有用性も認められつつある.今後,欧米でも

幅広く臨床応用されるために,わが国での臨床データを

さらに蓄積し,I-123 BMIPP 心筋イメージングの有効な

利用法を確立していく必要がある.

虚血性心疾患患者において, positron emission

tomography(PET)検査は主に虚血の存在および部位の

診断と梗塞心筋のバイアビリティの判定に優れている.

虚血性心疾患の診断では,N-13 アンモニアなどを用い

た血流 PET が有病正診率(陽性的中度),無病正診率

(陰性的中度)ともに90 %以上で非常に有用である.ま

た,PET は定量的評価および反復検査ができるため,

血流 PET により,冠血流予備能の評価が可能で,虚血

性心疾患の診断,予後判定の一助となる.一方,心筋の

バイアビリティ判定に関しては,F-18 フルオロデオキ

シグルコース(fluorodeoxyglucose,FDG)を用いた PET

による糖代謝の評価が有用であり,2002 年から保険適

応となった.最近では C-11 酢酸 PET による酸素代謝の

評価の有用性も認められている.このように,虚血性心

疾患の診断や治療方針決定において,PET 検査は有用

な情報を提供し得る.しかし,その運営には,施設内に

サイクロトロンの設置が必要であることなど,克服すべ

き問題も数多く存在する.

PET は SPECT に比べて感度と空間分解能が高く,ま

た定量性に優れている.また,ポジトロン放出核種とし

重症度評価と付加情報B

心筋バイアビリティ評価と治療効果の判定C

予後予測D

今後の課題44

PETVIII

要 旨

はじめに11

27

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

ては,C-11,N-13,O-15など,生体を構成する比較的

原子番号の低い元素の同族体が得られ,これらのポジト

ロン放出核種を使用することによって生体の生理的,生

化学的な情報を画像化することができる.さらに,これ

らのポジトロン放出核種は物理的半減期が非常に短いた

め,短時間での反複検査が可能である.しかし,医療施

設内でポジトロンを製造しなければならず,サイクロト

ロンの設置が要求される.ただし,サイクロトロンがな

い場合でも,ジェネレーターを使用して,Ga-68,Rb-82

などのポジトロン放出娘核種を産出することにより,

PET を施行することもできる.ただし F-18 は半減期が

約 2時間と長いため,放射性薬品メーカーからの供給が

可能となることが期待されている.

心筋血流の PET で用いられる主な放射性医薬品は O-

15水,N-13アンモニアで,物理的半減期は O-15水が 2

分で,N-13 アンモニアは 10 分である276-278).O-15 水は

心筋細胞内に自由拡散し,心筋内での代謝がないため定

量解析に優れている.しかし,O-15 水が細胞内でトラ

ップされる時間が非常に短く,画像化しにくい.一方,

N-13 アンモニアは心筋細胞内に拡散した後に代謝され,

グルタミンの形でトラップされる.したがって,定量解

析に多少補正が必要となるものの,優れた画質で心筋血

流像が撮像できる.その他にジェネレーターを利用して

得られた Rb-82(半減期75秒)が心筋血流の評価に使用

される279).

心筋は主として遊離脂肪酸やブドウ糖をエネルギー源

として利用している.通常,空腹時健常心筋では,その

約 60 % 以上を脂肪酸のβ酸化に依存するのに対し,虚

血心筋では嫌気性解糖系が亢進し,ブドウ糖が主に利用

される.このような心筋代謝の変化を評価するのに

PET は有用な検査法である235,280).ただし食後など血糖

値が上昇し,インスリンが高い状態では,健常心筋にお

ける脂肪酸のβ酸化が抑制され,ブドウ糖代謝が主なエ

ネルギー源となる.したがってどのような状態で検査が

行われたかを知ることが重要である.

1)心筋代謝

心筋糖代謝の PET で用いられる放射性医薬品は F-18

FDG(半減期 110 分)である.F-18 FDG はブドウ糖と

同様の代謝経路により心筋細胞内に入り,ヘキソキナー

ゼによりリン酸化されるが,その後は代謝を受けず組織

内にとどまる.したがって,心筋細胞内での糖代謝を定

量的に評価することが可能である.一方,脂肪酸代謝の

PET に用いられる放射性医薬品は,C-11 パルミチン酸

が代表的である.C-11 パルミチン酸は,血中遊離脂肪

酸と同様の挙動を示し,心筋細胞内に取り込まれ,その

大部分はβ酸化により TCA 回路で代謝され,最終的に

は C-11 CO2 となって速やかに細胞外へ洗い出される.

したがって本剤投与後の心筋からの洗い出し速度を

PET を用いて計測することで脂肪酸のβ酸化を定量解

析することができる235).

2)酸素代謝

心筋エネルギー代謝の面から重要な意義をもつ酸素代

謝の評価には,C-11 酢酸が用いられる.C-11 酢酸は心

筋細胞内に摂取され,ミトコンドリア内で TCA 回路に

入り C-11 CO2 となって細胞外に洗い出される.この洗

い出し速度をダイナミック PET を用いて測定すること

により,TCA 回路活性を反映した心筋酸素代謝の解析

が可能である281).F-18 FDGに比して,C-11 酢酸の動態

は,血液中の代謝基質やホルモン環境の影響を受けない

という利点がある.

心臓自律神経機能を評価する PET の放射性医薬品と

しては,F-18フルオロメタアミノロール282)や C-11ヒド

ロキシエフェドリン283)がある.これらは,心臓交感神

経の分布を画像化することが可能であるが,monoamine

oxidase(MAO)や catechol-O-methyltransferase(COMT)に

代謝されないため,神経機能に関する情報は乏しい.一

方,ドーパミンのアナログである F-18 フルオロドーパ

(F-18 fluorodopa,F-18 DOPA)は,交感神経内で MAO

により F-18フルオロドーパミン(F-18 fluorodopamine,F-

18 DA)となり,その大部分は貯留小胞に取り込まれる.

その後,F-18 DA は徐々に交感神経伝達物質のアナログ

である 6- 18 フルオロノルエピネフリン( F-18

fluoronorepinephrine)に変換される.これらの心筋にお

ける放射能活性の経時的変化から,心臓交感神経の分布

のみならず,その機能の解析まで可能である284,285).そ

の他,ムスカリン受容体,β受容体それぞれの PET の

放射性医薬品として,C-11 methyl quinuclidinyl benzilate

(QNB),C-11 CGP-12177などがある286,287).

PET の特質と技術的側面22

心筋血流A

心筋エネルギー代謝B

心臓自律神経機能C

N-13アンモニア PET では,400-600 MBq の N-13ア

ンモニアを静注し,3分後より 8分間撮像する.1-2時

間後に各種負荷試験(ジピリダモール負荷など)を行っ

て,再度 N-13アンモニア PET を施行することも可能で

ある.O-15水 PET は肘静脈より 400-800 MBq の O-15

水を急速静注,またはゆっくり静注する.その投与直後

より計測を開始し,数分間に 20 回前後の連続したダイ

ナミック画像を撮像する.F-18 FDG PET では F-18 FDG

を 100-370 MBq 静注し,1 時間後より約 10 分間撮像

する.ブドウ糖代謝は絶食時には虚血心筋のみに亢進す

るため,虚血性心筋の同定には空腹時に行う.逆に糖負

荷時には健常心筋と虚血心筋ともにブドウ糖代謝が営ま

れるため,心筋のバイアビリティの評価は糖負荷後に行

ったり,ブドウ糖とインスリンを点滴静注して糖代謝を

定常状態に保つインスリンクランプ下で行う288-290).F-

18 FDG PET の検査方法の詳細については,2003 年の

American Society of Nuclear Cardiology に記載されてい

る291).C-11 パルミチン酸 PET では,絶食下で,約 400

MBq の C-11 パルミチン酸を静注し,2 分毎に40分間ダ

イナミック画像を撮像する.C-11 酢酸 PET は,約 400

MBq の C-11 酢酸を静注し,1 分毎に 20 分間ダイナミ

ック画像を撮像する.C-11 パルミチン酸 PET ,C-11 酢

酸 PET においては,1-2 時間後,さらに各種負荷(ド

ブタミン負荷)を施行する場合もある.

虚血性心疾患患者の治療方針を検討するうえで,その

心筋のバイアビリティの評価と虚血の有無の判定は非常

に重要である.現在これらの決定において,PET から

得られる心筋の血流と代謝の情報の正確性と特異度が注

目されている.

梗塞領域の心筋バイアビリティの評価は,主に F-18

FDG や C-11 酢酸のエネルギー代謝で行われる.PET や

SPECT で冠血流の低下が認められても,F-18 FDG PET

上で糖代謝が正常かむしろ亢進している(mismatched

pattern)ならその心筋は生存していると考えられ292-296),

このような mismatched pattern を持つ患者は心事故を起

こし易く,血行再建の必要性がある297,298).簡便法とし

て血流検査を省略し,F-18 FDG の集積のみ(最大集積

の %uptake)で心筋バイアビリティの評価を行う場合も

ある299).また,心筋糖代謝率の定量値を用いた心筋バイ

アビリティ評価方法も提案されている300)が,定量化の

有用性については今後の検討を要する.他方 C-11 酢酸

PET では安静時の酸素代謝の低下の程度が利用されて

いる.またドブタミン負荷を用いて心筋代謝予備能の測

定も評価に用いられる301).

虚血性心疾患の診断においては,N-13 アンモニアを

用いた血流 PET は有病正診率(陽性的中度),無病正診

率(陰性的中度)いずれにおいてもほぼ 90 %以上で有

用である302,303).安静時およびジピリダモールなどの負

荷状態で N-13 アンモニアおよびO-15水を用いて,心筋

血流計測をおこなうことで冠血流予備能を評価すること

ができる.冠血流予備能は冠動脈狭窄が著しいほど低下

する傾向があるが,軽度の狭窄病変でも冠血流予備能が

低下することがあり,解剖学的な異常と機能的な異常と

は必ずしも一致しない304).冠動脈狭窄を認めない心筋に

おいても冠血流予備能の低下が認められていて,これに

は糖尿病や心肥大などの冠危険因子が関与していると考

えられている.また,冬眠心筋においては,安静時心筋

血流の低下は軽度にもかかわらず,最大血管拡張時の心

筋血流の低下が著明であり,血行再建術後には,最大血

管拡張時の心筋血流および冠血流予備能の改善が認めら

れる305).さらに,寒冷昇圧負荷時の心筋血流反応性を定

量計測することで,血管内皮機能の評価も可能であり,

虚血性心疾患の病態や治療効果評価における有用性につ

いての報告もされている306).PET を用いた心筋血流の定

量評価は,虚血性心疾患の診断のみでなく,心筋虚血の

病態生理の理解に有用な情報を提供し得ると考えられる.

心筋虚血によって心臓自律神経機能が低下する.その

ことが生命予後に密接に関連している.そこで,そのメ

カニズムを解明するのに,交感神経系の PET が用いら

れる.心筋梗塞の亜急性期における C-11 CGP-12177 を

用いた交感神経β受容体密度は,慢性期左室リモデリン

グと関係していることが示されている307).しかしながら,

PET を用いた心臓自律神経機能についての検討は研究

的な応用に限られているのが現状である.

PET 検査の問題点の一つは,サイクロトロンの設置

28

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

技術的側面D

慢性虚血性心疾患の診断における PET の意義

33

心筋バイアビリティの評価A

虚血性心疾患の診断B

心臓自律神経機能C

今後の課題44

とその維持管理などに伴う経済的な負担が大きいことで

ある.このことは PET 検査の普及を妨げる大きな要素

の一つである.この点については,放射性薬品メーカー

からの F-18 FDG の供給によって解決される可能性があ

り,臨床応用の普及が期待される.さらに,F-18 FDG

PET は保険適応となり,PET 装置の普及にともない日

常臨床における慢性虚血性心疾患への応用が進むことが

期待される.また,PET を用いた心筋血流の定量計測

は慢性虚血性心疾患の病態の解明,重症度評価や治療効

果の評価,血管内皮機能異常の検出にも用い得る可能性

がある.このためには検査方法や解析ソフトウェアを含

めた解析方法の統一が必要と考えられる.

安静心エコー図法は,その非侵襲性,簡便性,迅速性,

反復施行性などの特質から,慢性虚血性心疾患の診断,

病態評価に広く用いられる.一方,その診断性能は得ら

れる画質に依存し,半定量的評価にとどまったり,術者

の熟練度・経験などの影響を受けるなどの制限がある.

また,心筋虚血や心筋バイアビリティについては,安静

心エコー図法では限界があり,負荷心エコー図法が必要

となる.技術的にはハーモニックイメージングの普及に

より画質が改善し,画質による診断性能への影響は従来

に比べて軽減されている.経胸壁からの冠血流評価は,

左冠動脈前下行枝をはじめ,他の冠動脈枝まで可能とな

りつつある308-310,311).また,コントラストイメージングの

改良や定量化法の導入により,経静脈性の心筋灌流評価

も臨床応用されつつある312,313,314).近年,組織ドプラを

応用したストレインイメージングが導入され,壁運動評

価の定量化・心室収縮の同期性評価に,あらたな展開が

期待される315,316,317).また,各種コントラスト剤の出現,

ハーモニックイメージングなど画像の改良,経胸壁から

の冠動脈血流評価,経胸壁 3次元心エコー図法の出現な

どの展開も予想されるが,本法がさらに広く用いられる

ためには,ソノグラファーの育成などが課題である.

安静心エコー図法の特質として,心エコー図法自体の

持つ非侵襲性,簡便性に加え,反復施行が可能で,重症

患者に対してもベッドサイドで施行できることが挙げら

れる.本稿においては,慢性虚血性心疾患における安静

心エコー図法の位置付けについて述べる.

心エコー図法は,大がかりな装置を必要とせず,必要

に応じて迅速かつ非侵襲的に検査ができる.また,重症

患者のベッドサイドにおいても施行可能で,さらに経過

観察のために繰り返して検査することもできる.一方,

心エコー図法での評価には,例えば左室壁運動をとって

みても主観的要素が入り込む.さらに得られる画質,術

者の経験,熟練度に診断が左右される面が大きい.これ

ら本検査法の長所と限界を十分認識した上で活用するこ

とが肝要である.

心エコー図法には,パルス反射法を用いて対象の二次

元動態変化を実時間で捉える断層法,一方向の距離変化

を時間軸で記録する M モード法とドプラ効果を用いて

血流速度および壁運動速度を得るドプラ法がある.M

モード法は高い時間分解能と距離分解能を有し,左室壁

運動のみならず左室容積変化および壁厚変化率の計測が

できる.しかしその観察方向には限界がある.断層法は

心臓を多方向より実時間で二次元的に観察可能である.

ただし時間分解能は限定されており,解像力の面でも左

室の心内膜面および心外膜面が十分に描出できないこと

がある.

慢性虚血性心疾患において,安静時経胸壁断層心エコ

ー図法は形態的・解剖学的異常の検査に用いられる.ま

ず,本法により左室壁運動の異常を観察することができ

る.壁運動異常の領域から罹患冠動脈とその部位を推定

することが可能である318).局所の壁運動低下はしばしば

左室収縮能の低下に反映される.また,陳旧性心筋梗塞

では壁の菲薄化,エコー輝度の増加,心室瘤の形成など

心筋組織性状の変化も認められる.梗塞部対側の壁運動

異常(remote asynergy)は多枝病変の存在を示唆する319).さ

らにドプラ法は機能的評価,すなわち弁逆流の評価や左

室流入血流速波形・肺静脈血流速波形・僧帽弁輪速度波

形の解析による左室拡張能障害の評価にも有用である.

29

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

安静心エコー図法IX

要 旨

はじめに11

安静心エコー図法の特質と技術的側面22

慢性虚血性心疾患における安静心エコー図法の意義

33

どの様な診断目的に用いるかA

以上のように,断層法により解剖学的な構造変化を,

ドプラ法により機能的変化を捉えることにより,安静心

エコー図法は,僧帽弁逆流,乳頭筋機能不全,乳頭筋断

裂,心室瘤,左室内血栓などの梗塞合併症を含めて,慢

性虚血性心疾患の診断に広く適応がある.

診断の技法としての本法の利点は,既述のようにその

簡便性,非侵襲性,反復施行性に尽きる.すなわち,簡

単にベッドサイドでも施行でき,病状の経過を追跡する

ために,以前の検査所見を参考にしながら,反復して評

価できるという他の検査法にはない大きな利点がある.

一方,安静心エコー図法では,心筋虚血や梗塞後の心

筋バイアビリティを判断することは困難である.心筋虚

血領域の推定や心筋バイアビリティの判定には,運動・

薬剤など各種の負荷をした上で,心エコー図法による壁

運動の変化,壁厚の増加を判定する必要がある.負荷法

としては,運動負荷,あるいはジピリダモールやドブタ

ミンによる薬剤負荷が用いられている.特に,ドブタミ

ンが繁用され,低用量で心筋バイアビリティの診断,高

用量で心筋虚血の診断が可能である.詳細については別

項の「負荷心エコー図法」に述べられる.

心エコー図法を用いた評価には,術者の主観的要素が

入り込む余地があり,熟練度・経験に依存する.それら

を克服するために,できる限り客観的・定量的な評価方

法の確立が必要である.

1)左室収縮能

安静心エコー図法により,左室容積ならびに左室駆出

率は通常左室内径の計測320-324),または断層心エコー図

法による計測325)から推定式を用いて得られる.左室内

径の計測の場合,正常の左室のサイズでは,諸家の方法

でほぼ一致するが326),これらの計測法は,左室内腔が回

転楕円体に近似でき,かつ左室局所収縮異常がないとい

う仮定の下で成り立つ.しかし,実際には,虚血性心疾

患ではしばしば左室局所壁運動の低下や局所の瘤形成な

どのため左室は回転楕円体を取らず,測定誤差は大きく

なる可能性がある.一般に左室造影法と断層心エコー図

法の容積測定には良好な相関があるが,心エコー図法で

は真の心尖部が描出できなかったり,適切な画質が得ら

れなかったり,方位分解能・時間分解能の限界のため容

積を過小評価する傾向にある327).容積計測とそこから得

られる駆出率に関しては,近似式から得られるものであ

ることを記憶に留める必要がある328).近年,3 次元心エ

コー図法が臨床応用され,左室壁運動異常に影響されな

い左室容量計測が可能である329,330).

複雑な局所壁運動をより客観的,定量的に表現するた

めに,左室をいくつかの分節に分け,それぞれの壁運動

の評価を総計して評価する方法が提唱されている.アメ

リカ心エコー図学会(ASE)では,左室を 16 分割して

壁運動を正常(normokinesis)= 1 点,低収縮(hypokinesis)

= 2点,無収縮(akinesis)= 3点,奇異収縮(dyskinesis)= 4

点,心室瘤(aneurysm)= 5 点に分類して,各領域の半定

量評価の合計値を 16 で割った値を wall motion score

index と称して,壁運動のパラメータとしている331).こ

の値が高いほど壁運動異常が高度である.

2)左室拡張能

ドプラ法により簡便に拡張能を知ることが可能であ

る.左室流入血流速波形のパラメータのうち早期流入波

(E 波),心房収縮波(A 波),E 波と A 波の比 E2A,E

波の減速時間(deceleration time,DT),等容収縮時間

(isovolumic relaxation time,IRT)などが用いられる.拡

張障害があると E 波の減高,A 波の増高,E2A の低下,

DT,IRT の延長がみられる(軽度拡張能障害).拡張能

障害がさらに高度になれば,E 波はむしろ逆に増高し A

波は減高して E2A は再び大きくなり,DT,IRT も延長

から短縮に転じて偽正常化をとる(中等度拡張能障害).

そして極型として,E 波は高く A 波は一層減高して E2A

は >2 を超え,DT,IRT は正常よりもさらに短くなり,

拘束障害パターンとなる(高度拡張能障害).

肺静脈血流速波形は,左房の弛緩・拡張により肺静脈

から左房へ流入する血流を示す収縮期波(s 波),僧帽

弁が開放し,左室流入が開始して肺静脈・左房・左室が

一つの腔を形成するときに左房への流れ込み血流を示す

拡張期波(d 波),左房収縮による肺静脈への心房収縮期

逆流波(a 波)から成る.それぞれ,左房の reservoir 機能,

conduit 機能,booster pump 機能を反映する.両者を同時

記録すれば,左室流入血流速波形の正常波形と偽正常化

を鑑別でき,左房圧の上昇を推定できる.また,A 波と

a 波の持続時間を比較し,a 波の持続時間が大きければ,

左室拡張末期圧の上昇を推定することができる332).さら

に d 波の減速時間は肺動脈楔入圧と負の相関を示し,短

縮するとき,肺動脈楔入圧の上昇を示唆する.

近年,組織ドプラ法を用いて得られる僧帽弁輪速度波

形を用いて,拡張能評価が行われる.僧帽弁輪速度波形

は,左室流入血流速波形と同様に,拡張早期波(e’)と

心房収縮期波(a’)の 2 峰からなるが,心筋そのものの

30

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

診断目的による本検査法の利点と欠点B

本検査により得られる結果とその診断的意義C

拡張能を反映するため,左室流入血流波形で E/A > 1 の

場合,正常拡張能か中等度拡張能障害(偽正常化)かの

鑑別が可能である333,334).また,E/e’> 15 の場合,肺静

脈楔入圧の上昇が推定される334).

3)病態別の診断的意義

a)心筋梗塞

梗塞局所に壁運動異常を認める.壁運動を経過観察し

ていると梗塞部が急性期よりも拡大し壁厚が菲薄化し左

室瘤を形成することがあり335-337),特に広範囲前壁梗塞

に好発する338).瘤の対側の局所壁運動が,治療選択の際

に重要である339).梗塞部は壁運動や壁厚増加率が低下し,

壁の菲薄化とエコー輝度の上昇などいわゆる左室リモデ

リングを起こす.

b)虚血性心筋症

多枝病変に合併するいわゆる虚血性心筋症は心エコー

図法のみで診断するのは困難であるが,拡張型心筋症に

類似し高度の心機能低下を示す所見が観察される.両者

の鑑別は重要で虚血性心筋症では局所壁運動異常がより

顕著にみられる場合もあるが340),鑑別には負荷心エコー

図法,核医学的検査,冠動脈造影などで行う.近年,心

不全治療法として両心室ペーシングによる心臓再同期療

法(cardiac resynchronization therapy,CRT)が導入され,

その適応・効果判定に組織ドプラ法を応用する試みも行

われている317).

c)僧帽弁逆流・乳頭筋断裂・心室中隔破裂

乳頭筋断裂は離断した乳頭筋・腱索の検出により確定

診断できる.随伴する僧帽弁逆流の検出は比較的容易で

あるが,head rupture 以外は離断した乳頭筋・腱索は経

胸壁法では検出困難なことも少なくない.詳細な観察に

は経食道心エコー図法が有用である.

僧帽弁逆流は,カラードプラ法にて検出は容易である.

ただし経胸壁法による重症度の評価は逆流の方向によっ

て難しい場合がある.僧帽弁逆流の原因として,乳頭筋

機能不全341),乳頭筋断裂342),僧帽弁に付着する腱索の瘢

痕化と短縮による tethering343),左室の収縮不全344)など

がある.

心室中隔破裂の診断(破裂孔の存在,通過血流の描出,

血流速の計測)にもドプラエコー図法は有用である.

d)左室壁在血栓

左室壁在血栓も心エコー図法により検出される.壁運

動の低下した部位に好発する.また,著明な心機能低下

を示すときに,左室や左房内にいわゆるモヤモヤエコー

(spontaneous echo contrast)をみることもある.心筋梗塞

後の左室内血栓による脳梗塞は重篤な合併症であり,血

栓やモヤモヤエコーの観察は重要である.

e)冠動脈病変

心エコー図法による冠動脈の描出は以前より報告され

ているが,近年高周波探触子の出現など心エコー図装置

の改良・進歩により,冠動脈血流,特に左前下行枝遠位

部血流速波形の記録が,経胸壁ドプラ法で可能であ

る308,309).有意な狭窄病変が存在すると同部での血流速

増加がみられる.また経皮的冠動脈インターベンション

後の再狭窄は,非狭窄部との血流速度比が 2倍以上あれ

ば診断できる345).また高度狭窄が存在すると拡張期・収

縮期血流速度比に低下がみられ,本指標も冠動脈インタ

ーベンションの評価に用いることができる346).冠動脈狭

窄病変自体を断層図で描出する試みが行われているが,

断層図からの冠動脈病変診断については現在のところま

だ確立されていない.

1)疾患診断

心筋梗塞症の診断は,断層心エコー図法により壁運動,

壁厚,エコー輝度などの組織性状から可能である.狭心

症については,気絶心筋,冬眠心筋や冠攣縮狭心症の発

作時などを除いて,安静時心エコー図法の壁運動から診

断することは困難である.むしろ,心筋虚血が他の検査

で確診された症例で壁運動異常がないか軽微の場合,貫

壁性心筋梗塞でないことを診断する意義がある.

2)重症度診断

重症度診断に関しては,心筋梗塞では左室収縮能や壁

運動スコアが有用である.広範囲前壁梗塞では急性期か

ら慢性期に至る経過中に左室のリモデリングを生じる可

能性があり336,338),多枝病変では虚血性心筋症もしばし

ばみられる.また,梗塞合併症(心室中隔破裂・乳頭筋

断裂・左室自由壁破裂,真性心室瘤・仮性心室瘤・心内

膜下心室瘤,心内血栓,心膜液貯留)の診断にも広く用

いられる.

3)予後診断

安静時の収縮能低下は長期予後に影響する347).すなわ

ち,壁運動スコアが高いほど,梗塞サイズが大きいこと

を示し,予後不良を示唆する348).梗塞後に胸痛を有する

31

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

診断能D

例も心エコー図法による経過観察により予後不良と報告

されている349).合併症の程度も予後に影響する.中等度

~高度の僧帽弁逆流の合併は 1 年後の mortality が 54 %

と高い350).逆流が高度なものは手術の適応となる351).同

程度の収縮能障害を有する場合,E 波減速時間の短縮か

ら評価される拡張能障害が予後を予測する352,353).

4)治療選択,治療評価

治療の選択には,収縮能・拡張能を含む心機能の重症

度,弁逆流,心内血栓の有無などが目安となる.治療効

果の評価は,安静心エコー図法にて非侵襲的に経時的長

期観察が可能であり,薬効評価のため大規模臨床試験の

評価にも用いられている354).

安静心エコーは日常臨床で虚血性心疾患の診断に繁用

されており,不可欠の検査法である.近年,経静脈的に

投与して心筋染影が得られるコントラスト剤の開発が行

われている.コントラスト心エコー図法によれば,閉塞

した冠動脈領域の心筋は染影されない.本剤を用いれば

冠動脈造影を行わずとも,冠動脈の閉塞枝を推測するこ

とが可能である.最近のコントラストイメージングの技

術的進歩や心筋染影の定量化法の開発により,今後心筋

灌流評価に期待がもたれる.

一方,心エコー図法の習熟のためには一定の症例数の

経験が必要である.今後,負荷心エコー図法を含めた心

エコー図法の普及のためには,医師のみならず,検査技

師の養成が不可欠かつ急務であり,質・量の充実が望ま

れる.壁運動評価の客観化については自動心内膜トレー

スを応用した color kinesis 法がある355,356)が,近年は組

織ドプラ法を応用したストレインイメージング315,316,317)

が局所収縮能を評価する手法として壁運動評価への応用

が期待される.本法のコストについては,米国に比し検

査点数は低く,他の検査法に比べても廉価であるが,米

国に比し検査点数が低い.また操作が簡単で非侵襲的で

あり,得られる情報量が多く,両者のバランスを考慮す

れば,コストパーフォーマンスに優れた検査法であり,

利点は大きいと考えられる.

負荷心エコー図法では運動負荷と薬剤負荷が用いられ

る.薬剤負荷には血管拡張薬とドブタミンが用いられる

が,その感度はドブタミンの方が高い.虚血性心疾患に

おける負荷心エコー図法の診断目的は,冠動脈狭窄の存

在,重症度(虚血の広がり),急性心筋梗塞後の予後予

測,安静時壁運動異常部位のバイアビリティ評価である.

負荷による壁運動異常の出現領域により冠動脈病変の部

位が診断できる.70 % 以上の狭窄病変を有する例や多

枝病変患者で検出感度は高い.本法はトレッドミル検査

よりも心筋虚血検出に関する特異度が高い.低用量ドブ

タミン負荷で心筋バイアビリティの診断がなされ,高用

量ドブタミン負荷で心筋虚血の検出がなされる.負荷心

エコー図検査が陽性の例は予後が不良である.

与えられた負荷に対して反応し得る機能の程度を予備

能といい,これを調べるために負荷を加える検査法を負

荷試験と呼ぶ.冠動脈疾患において冠予備能は低下して

おり,負荷試験によって虚血性の壁運動異常が誘発され

る.循環器診療における負荷試験は冠動脈狭窄の診断と

心予備能としての心機能評価目的で施行される.この際,

評価手段として心エコー図法を用いるものを負荷心エコ

ー図法と呼ぶ.負荷心エコー図法はパルス反射法とドプ

ラ法を種々の負荷手段と組み合わせて行なわれる.簡便

かつ繰り返し可能であり,心筋の局所的壁運動異常の評

価だけでなく,負荷に対する心臓の全体的な機能変化も

評価ができる.

負荷心エコー図法は M モード法,断層法,ドプラ法

を用いて心血行動態変化を非侵襲的に繰り返し評価でき

る点に特徴を有する.負荷時には心拍数や呼吸数が増加

することが多いため,観察は困難となる.このような限

32

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

今後の課題44

負荷心エコー図法X

要 旨

はじめに11

負荷心エコー図法の特質と技術的側面22

負荷心エコー図法の特質A

界を克服するため,心内膜面の用手的トレース法や自動

トレース法を用いた壁運動の定量的評価法,あるいはデ

ジタル処理により各負荷時相の壁運動を同時に比較評価

できる分割画面表示法などが導入されてきた.定量的評

価法は信頼性の面で問題が残されて,多くの施設では未

だに検者の視覚評価に頼ったデジタル分割画面の壁運動

評価法を用いている.心内膜面の描出能を改善する手段

としてコントラスト法およびハーモニックエコー法が導

入され効果をあげている.

組織ドプラ法も壁運動異常の評価法として負荷心エコ

ー図法に用いられる357).しかし組織ドプラ法では心全体

の運動や隣接する健常心筋による牽引などの影響を除外

しえず,心尖部からのアプローチでは心尖部に近づくに

従い運動速度が低下するなどの限界がある.このような

組織ドプラ法の欠点を克服する新手法としてストレイン

イメージングが導入され,虚血領域の検出や心筋バイア

ビリティの評価手段として使用される358-360).

慢性虚血性心疾患を対象とする負荷心エコー図法での

負荷手段を表 13に示す361-369).運動負荷法は生理的であ

るが,負荷時に呼吸数が増加し良好な画像記録が困難と

なる欠点を有する.ペーシング法は患者への侵襲性の点

で難がある.このため負荷手段としては薬剤負荷が一般

に用いられる.負荷薬剤としては,日常臨床の面より多

くの循環器医がその取扱いに習熟しているドブタミンが

壁運動評価目的には好んで用いられている.

慢性虚血性心疾患における負荷心エコー図法の主たる

目的は,冠動脈狭窄の存在およびその重症度,言いかえ

ると虚血の存在と広がりの診断である.その他,急性心

筋梗塞後の予後予測や再灌流療法後の心筋機能評価370)

にも用いられる.安静時に存在する心機能異常が経皮的

冠動脈インターベンションにより回復し得るかどうかの

判定にも負荷心エコー図法は利用される371,372).

慢性虚血性心疾患において負荷試験は,心筋虚血を誘

発してその存在と広がりを診断する目的で行なわれる.

通常,評価手段としては心電図が用いられる.しかし,

安静時から ST-T 波形異常,脚ブロック,左室肥大など

のある症例では心電図による虚血の評価の妥当性が問題

となる.負荷心エコー図法では虚血による壁運動異常の

存在と程度およびその広がりが直接観察できる.このた

め負荷心電図法に比べ心筋虚血診断の感度および特異度

は高い.

心筋虚血の代表的な画像評価法として心臓核医学検査

がある.負荷核医学検査に対する負荷心エコー図法の利

点としては,高価な装置や大がかりな施設を必要としな

い,取り扱いに難がある放射性医薬品を必要としないこ

とより,簡便かつ廉価に検査が行える点にある.一方欠

点として,肺や肋骨の影響で良好な記録が困難な例があ

ること,検査に際して術者の技量が大きく関与すること

があげられる.これらが施設間における本法の感度,特

異度の大きなばらつきを生む最大の原因と考えられる.

1)冠動脈狭窄の診断

負荷により生じた壁運動異常とその広がりから心筋虚

血の部位が診断できる.検出感度は多枝病変患者の方が

1 枝病変患者より高く,70 % 以上の狭窄を有する患者

の方が 70 % 未満の病変を有する患者より高い373,374).ま

た,心筋梗塞の既往を有する患者の方が検出感度が高く

なる375).負荷心エコー図法による誘発可能な心筋虚血の

存在,分布,程度は心臓カテーテル検査の適応を決める

上で有用な情報を提供する.検査成績が陰性であれば将

来の心血管疾患の発生リスクが低い.近年,経胸壁心エ

コー図法を用いて冠血流予備能を評価することより,冠

血流速度評価部位より末梢の冠動脈狭窄を検出する手法

が導入された376).本法の問題点としては冠血流予備能評

価だけでは虚血心筋の広がりが検出できないことと,冠

動脈の検出に通常の心エコー図検査とは異なる修練が必

要な上,検査対象が前下行枝にほぼ限られ,回旋枝や右

冠動脈の病変評価が困難なことがあげられる.

33

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

技術的側面B

表 13 負荷心エコー図法の種類

1 運動負荷法

1) 動的負荷法

2) 等尺性負荷法

2 ペーシング負荷法

3 薬物負荷法

1) 交感神経作動薬

2) 冠血管拡張薬

4 その他の負荷法

慢性虚血性心疾患における負荷心エコー図法の意義

33

診断目的A

診断目的による検査法の利点と欠点B

検査により得られる結果とその診断意義C

2)気絶心筋の評価

心筋バイアビリティは心筋の生存性を意味し,臨床的

には気絶心筋(スタニング)と冬眠心筋(ハイバネーシ

ョン)が含まれる.気絶心筋は虚血解除後に長時間の心

機能異常を示す生存した心筋であり,冬眠心筋は冠血流

の減少による安静時心機能の持続的異常状態で心筋酸素

需給比率の改善により機能異常が改善可能な状態であ

る.気絶心筋が臨床的に問題となるのは急性心筋梗塞に

対する早期再灌流療法後に残存する心機能異常である.

この場合の心筋バイアビリティの評価は,予後判定,治

療法の選択などの上で極めて重要となる.イヌモデルを

用いたドブタミン負荷心エコー図法の報告では,低用量

のドブタミンによる再灌流心筋の収縮期壁厚増加の増大

が示されている377).気絶心筋ではドブタミン,イソプロ

テレノール,ドーパミン,エピネフリンなどの陽性変力

薬の投与や期外収縮後の心収縮増強作用などによって一

時的に収縮性を正常近くまで回復させることができる.

こうした事実を背景に,低用量ドブタミン負荷心エコー

図法を用いた気絶心筋の臨床評価法が報告されてい

る378).またその際,高用量ドブタミン負荷を同時に行な

うことにより,残存する心筋虚血の検出も可能である379).

ドブタミン負荷心エコー図法は,心筋バイアビリティと

心筋虚血の両者が一度の検査で検出可能であり,心筋バ

イアビリティがあって心筋虚血を起こし得る患者の選別

と血行再建術の適応決定に有用である.ストレインイメ

ージングは視覚的壁運動評価法や組織ドプラ法に比べ局

所の壁運動動態検出に優れるため,心筋バイアビリティ

を感度よく評価できる380).

3)冬眠心筋の評価

冬眠心筋は臨床的には,高度冠動脈狭窄を有する領域

に左室機能異常がある場合に冠血行再建術の適応を決定

する際に問題となる.冬眠心筋の診断には PET や Tl-

201 心筋血流イメージングなどが用いられてきた381).こ

れらは心筋の血液灌流や代謝活動を検出することにより

心筋バイアビリティを診断するものである.気絶心筋の

場合と同様,冬眠心筋でもドブタミン負荷により収縮予

備能の検出が可能なことが動物モデルで示されてお

り382,383),臨床的にも低用量ドブタミン負荷心エコー図

法が冬眠心筋の検出法として用いられる367,384).しかし

冬眠心筋では慢性的な低灌流により引き起こされた不全

心筋の収縮予備能低下を,低灌流状態が持続している中

で心筋虚血を悪化させ得る陽性変力薬により検出しよう

とする矛盾に留意する必要がある.すなわち,ドブタミ

ン負荷により心筋虚血が増悪し,収縮予備能が隠蔽され

る可能性もある.

4)予後の予測

運動または薬剤による負荷心エコー図法における心筋

虚血誘発の有無は予後予測の上で有用である.負荷心エ

コー図法が陰性の場合には心事故の発生頻度は低い385).

負荷心エコー図法は,通常のトレッドミル検査より心筋

虚血検出に関する特異度が高い386).トレッドミル検査が

陽性でも,負荷心エコー図法で異常壁運動が検出されな

い例は心事故の発生頻度が低い387,388).一般に負荷心エ

コー図検査が陽性の例は予後が不良で致死性あるいは非

致死性の心事故が発生する可能性が高い389,390).

5)心予備能評価

負荷心エコー図法により心予備能の評価が可能であ

る391).慢性虚血性心疾患においても心筋虚血による心機

能変化が検出できる.壁運動異常を伴う虚血性心疾患の

心機能評価には心臓の形態変化に依存しないドプラ法が

適しており392),心筋虚血による左室駆出血流速度および

左室流入血流速度波形の変化が報告されている393-395).

しかし,これらの変化は虚血部の大きさだけでなく心拍

数,前負荷,後負荷など種々の因子の影響を受けるため,

壁運動異常の検出に比べると直接的な心筋虚血診断手段

とはいえずその感度も低い.主に左冠動脈前下行枝を対

象として経胸壁からのアデノシン負荷心エコー法を用い

た冠血流予備能の評価が行なわれる.

現在の負荷心エコー図法はデジタル化された画像情報

の保存が可能で,分割画面を用いて負荷前後の壁運動を

同一画面上で比較しながら評価できる.このような手法

が完備されてから視覚的壁運動評価の信頼性は飛躍的に

改善された.負荷手段としては運動負荷と薬剤負荷が一

般的であり,薬剤負荷の手段としてはアドレナリン作動

薬または血管拡張薬が用いられる.血管拡張薬にはジピ

リダモールとアデノシンがあり,盗血現象を利用して心

筋虚血を誘発する.このため,血流分布の不均衡を検出

するのに優れた核医学心筋血流イメージング法の負荷手

段には適しているが,壁運動異常を検出する心エコー図

検査ではアドレナリン作動薬より感度が低くなる396,397).

壁運動異常を用いた冠動脈狭窄の検出に際してドブタミ

ンが一般的に用いられる.各種負荷法の冠動脈疾患診断

精度を表 14に示す398).

34

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

診断能D

虚血性心疾患患者における負荷心エコー図法の問題点

は,高齢者ほど記録不良例がみられやすいことである.

この点では,超音波造影剤を用いると心内膜面描出能の

改善が期待できる.最大の問題点は視覚的壁運動評価法

では術者の技量や主観の影響が大きいことである.この

点に関しては color kinesis 法,心内膜自動トレース法,任

意方向 M モード法,実時間 3次元心エコー法などのより

客観性の高い壁運動異常評価法やドプラ法を利用した組

織ドプラ法,ストレインイメージングなどの新技術が開

発されている.ストレインイメージングは従来の組織ド

プラ法と異なり心臓全体の動きや隣接する心筋による牽

引などの影響を受けにくく,局所心筋の変動を評価可能

で負荷心エコー図法の感度と特異度を改善する点で大い

に期待できる.最重要の課題として,我が国では負荷心

エコー図法が医療保険によりサポートされていないこと

があげられる.今後,負荷心エコー図法をルーチン検査

として定着させていくには,本法に習熟した医師および

超音波検査士を養成していくことが不可欠である.この

ためには経済的な裏付けが最も望まれるところである.

本法は血流中に注入した微小気泡をエコーのコントラ

スト源として,心エコー装置により心筋血流を可視化す

る方法である.カテーテルを用いて左右の冠動脈にそれ

ぞれコントラスト効果のある薬剤を注入し灌流を観察す

る従来の方法に加えて,経静脈性の超音波造影剤が登場

したことが,経静脈性心筋コントラスト法を可能にした.

経静脈性心筋コントラスト法は,簡便かつ非侵襲的に心

筋微小循環の評価が可能であり,心筋梗塞や狭心症での

灌流異常の評価などに広く用いられている.心筋梗塞で

は,責任冠動脈が完全閉塞していて灌流領域の心筋がほ

ぼ線維化していればコントラストによる染影を認めな

い.狭心症では,狭窄冠動脈の安静時の血流は正常冠動

脈に比しそれほど減少していないので,心筋コントラス

トエコー法には差が出にくい.そこで運動負荷,または

ドブタミンや ATP などの薬剤投与による負荷をかけて,

灌流の相違を評価する.また,同じ狭窄冠動脈部位の心

筋でも心内膜側の心筋の方が虚血がおこりやすいため,

心筋コントラストエコー法では,負荷時には狭窄冠動脈

支配領域での心内膜側の染影が低下していることも観察

することが可能である.

心筋コントラストエコー法に先立って,心エコー図法

で微小気泡を静脈から注入し心腔を明瞭に描出する心腔

コントラストエコー図法が臨床応用された.この後,コ

ントラスト心エコー図法の関心は心筋に向けられ,1980

年代からカテーテルにて直接冠動脈に注入する心筋コン

トラストエコー法の基礎研究が米国で始まり,日本でも

1990 年前後から臨床応用されはじめた.心筋コントラ

ストエコー法の臨床応用が進むにつれて,肺血管床を通

過できる超音波造影剤が開発され,経静脈性心筋コント

ラストエコー法の可能性が広がった.しかし,当初は経

静脈性心筋コントラストエコー法の画質が十分でなく,

よりよい超音波造影剤の開発と超音波装置の改良が進め

られた.現在では反射波の 2次高調波を画像化するハー

モニック法や超音波による微小気泡の破壊を極力抑える

ための間歇送信法などを基礎とした様々な方法が開発さ

れ,新たな超音波造影剤とこれらの新技術との組み合わ

せにより,心筋コントラストエコー法が広く臨床応用さ

れつつある.

本検査は血流中に注入した微小気泡をエコーのコント

ラスト源として,心エコー装置により心筋血流を可視化

する検査法である.

現在,冠動脈注入法に用いられているコントラスト薬

剤は,ヘキサブリックスなどの通常のカテーテル用の造

影剤である.用手撹拌法は簡便であるが,できる気泡の

35

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

今後の課題44

心筋コントラストエコー法XI

要 旨

はじめに11

心筋コントラストエコー法の特質と技術的側面22

冠動脈注入法A

表 14 各種負荷法の冠動脈疾患診断精度

負荷法 感度(%) 特異度(%)

運動負荷心電図 55~80 70~90

負荷心筋シンチグラム 80~95 70~95

運動負荷心エコー図 70~95 75~95

ドブタミン負荷心エコー図 75~90 75~95

ジピリダモール負荷心エコー図 45~80 80~95

サイズが不均一で,かなり大きい気泡が含まれることが

あるので,冠動脈に注入するには不向きである.現在で

は,より細かく均一な気泡がつくられる超音波撹拌器を

用いた撹拌が主流となっている.作り方は,3 方活栓に

内筒を外した 10 cc の注射器をつけ,造影剤を 5-10 cc

入れ,超音波撹拌器の先端を液面すれすれにあて,約

30秒撹拌し,3方活栓のもう一方につけた別の注射器で

ゆっくり撹拌された基剤を吸入する.このとき,白色の

大きな泡を吸わないようにする.その後,20-30 秒待

つと,徐々に透明になる.これを約 2-3 cc とって左及

び右冠動脈カテーテルから冠動脈に注入する.大きな気

泡が入らない限り,注入した後の血行動態変化や心電図

変化は軽度である.

1)超音波造影剤

現在,本邦において臨床使用が認められているのは第

1 世代の超音波造影剤レボビストのみであり,第 2 世代

以降の超音波造影剤は現在開発中である.レボビストは

ガラクトースの結晶であり,結晶が微小な空洞を無数に

形成し,ガラクトースが溶解することにより発生する無

殻の微小バブルである.投与方法は,短時間で一気に注

入するボーラス投与法と,ある時間(30 秒から 5 分程

度)一定量を投与する持続投与法がある.ボーラス投与

法は簡便かつ,造影剤の濃度が一気に増すために十分な

染影を得られるが,一方その染影時間は短くまた,シャ

ドーやブルーミングなどのアーチファクトを起こしやす

いため,多少の経験を要する.持続投与法は,手技がや

や煩雑であるが,一定の染影が比較的長い時間得られる

ためアーチファクトも少なく,またその間にゲインやフ

ォーカスなど機器の設定をより最適に調節することも可

能である399).これらの投与方法はそれぞれの長所・短所

を考慮し施設により目的や経験により使い分けられてい

たが,一定の投与方法の確立を目指した検討が,現在行

われているところである.

2)超音波装置の設定:特に心筋コントラストエコー法における設定

通常のモード(基本モード)では心筋染影は充分得られ

ない.超音波造影剤であるバブルが超音波で容易に崩壊

することやバブルが非線形性の反射をすることから,バ

ブルを可視化するために様々な方法が考案されている.

主な考案された点は,ハーモニック法と送信法の組み

合わせである.超音波造影剤であるバブルが超音波によ

って崩壊する際の反射は非線形性であることから,バブ

ルの信号をより効率的に捉えるにはハーモニック法が必

要不可欠である.現在では基本的なセカンドハーモニッ

ク法以外にも様々なハーモニック法がそれぞれ最新のエ

コー装置に搭載されている.一方,送信法は,間歇送信

法とリアルタイム送信法がありそれぞれ利点・欠点を有

するが,投与する超音波造影剤の種類と,使用するハーモ

ニック法の組み合わせによりどちらの送信法が最適か決

まってくる傾向がある.また,これらと別に超音波の強

さの指標である音圧や焦点部位にも注意する必要がある.

3)間歇送信法

ここ数年の研究で,多くの経静脈性コントラスト剤は

超音波照射により破壊されることが解っている.超音波

で心筋の染影を観察しようとすればするほど,コントラ

スト剤が破壊されていくという矛盾が生じる.そのため

に,なるべく超音波を照射しないで心筋の染影を観察す

る間歇送信法が考案された400).本法では,心電図同期を

かけて数心拍に一度しか超音波を照射しなければ,その

分コントラスト剤の破壊を防げて染影を明確にするとい

うものである.しかし,間歇送信法ではリアルタイム性

という超音波の持つ特質が失われ,壁運動の評価が不可

能であるうえに,長時間探触子を同一の位置に保持しな

ければいけないなど,手技に熟練を要する.

この欠点を補うために開発されたものがリアルタイム

送信法で,間歇送信法より短時間に心筋微小循環の観察

が可能となり,また同時に壁運動の評価が可能である.

リアルタイム送信法とは,バブルを破壊することなく,

弱い超音波照射下のバブル共振によって得られる弱い反

射波を効率よく画像化する方法として開発されたもので

あり,現在まで数種類が開発されている401,402).しかし,

リアルタイム法に適した第 2世代以降の超音波造影剤が

本邦では臨床応用されるに至っていない.

4)セカンドハーモニック法

一般の超音波装置では送信した周波数と同じ反射波を

受け取って画像を構築する.そのために構造物と同様に

ノイズ等も画像化してしまう.超音波が構造物に反射す

ると,同じ周波数の反射だけでなく,その 2 倍,3 倍の

周波数の反射波も戻ってくる.当然,それらの音響信号

は第 1波(同じ周波数の反射)よりも弱いため,画像化

するのは条件的に不利であるが,非線形性の強いマイク

ロバブルでは,第 2高調波の音響信号も比較的強く画像

化が可能である.この時,心筋やノイズなどの第 2高調

波はかなり減弱しているために,第 2高調波のみを画像

36

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

経静脈性コントラストエコー法B

化したときにはマイクロバブルが存在したところだけが

明確に表示できるというのがセカンドハーモニック法で

ある403).

5)パワードプラ法

コントラスト剤が心筋に入るとその反射は増大し,位

相が変化する.さらにバブルの崩壊により第 1波と最終

波の信号が著しく異なることからパワードプラ法の認識

しやすい状態となる.このとき,血流の途絶した部位や

低下した部位の染影は低下する.このような表示の方法

は B モード法とは若干異なった印象とはなるが,感度

が高いことから心筋染影法の新しい技術として注目され

ている404).

6)その他のハーモニック法

セカンドハーモニック法は第 2高調波の音響信号を検出

する方法であるが,第 2高調波においては組織からの信

号を完全に除去することができない.この点を改善し,

受信周波数をバブルからの反射波の特徴に合わせ最適化

した方法がウルトラハーモニック法と 1.5 ハーモニック

法である.それぞれ受信周波数を第 3 高調波,1.5 高調

波付近にすることで,組織からの信号がほぼなくなり,

バブルからの信号のみを検出することが可能になった.

また,リアルタイム法を目的としたハーモニック法には

パルスインバージョンドプラ法やコヘレントイメージフ

ォーメーション法,パワーモデュレーション法などがあ

る.これらの方法と第 2世代以上の超音波造影剤を併用

することで,壁運動の評価と同時に心筋微小循環の評価

が可能である401,402).

1)灌流領域の同定

冠動脈注入法による心筋コントラストエコー法は,カ

テーテルを用いて左右の冠動脈にそれぞれコントラスト

剤を注入して灌流状況を観察する.心筋梗塞を起こした

責任冠動脈が完全閉塞し,その灌流領域の心筋が線維化

しているとコントラストによる染影を認めない.責任冠

動脈が開通している場合,その灌流領域の心筋が完全な

線維化に置き代わっていなければコントラストによる染

影を認める.しかし,このような不完全な染影の分析は

解析法として基準化が難しく,現在も論議がある.それ

でも心筋に異常がなく責任冠動脈が閉塞していない場合

に限り,心筋はよく染影される.

心筋コントラストエコー法を用いれば,左冠動脈と右

冠動脈の支配領域が明瞭に可視化できる.しかし,左前

下行枝と回旋枝の灌流領域を分離するためには造影用の

カテーテルを超選択的にそれぞれ左前下行枝と回旋枝に

挿入してコントラストエコー法をしなければならない.

肥大型心筋症に対する経皮的中隔心筋焼灼術の目標冠動

脈決定のための超選択的心筋染影には特殊なカテーテル

を用いて少量の造影剤を注入する方法が推奨されてい

る405).

2)狭窄冠動脈の灌流程度の評価

心筋コントラストエコー法で狭窄冠動脈領域の灌流が

どのように評価できるか研究されている.狭窄冠動脈領

域であっても安静時の血流は正常冠動脈に比しそれほど

減少していないので,心筋コントラストエコー法の安静

時血流には差が出にくい.ドブタミンや ATP などを負

荷して,灌流程度の差を評価する試みがある.また,同

じ部位の心筋でも心内膜側の心筋の方が虚血がおこりや

すいため,頻拍負荷時に狭窄冠動脈にコントラスト剤を

注入すると,心内膜側の灌流が減少するとの報告があ

る406).

3)側副血行の同定

従来の冠動脈造影法でも側副血行路の確認は比較的容

易である.しかし,冠動脈造影法だけでは側副血行の機

能や灌流領域の評価は充分ではない.側副血行路のドナ

ー(供給)冠動脈からコントラスト剤を注入して,心筋

コントラストエコー法を行うとコントラスト剤は側副血

行路を介してレシピエント(受け取り側の)冠動脈の灌

流領域を染影する407).心筋コントラストエコー法を用い

ると,レシピエント冠動脈が完全閉塞していても,側副

血行路のドナー冠動脈がどれほど灌流しているのかを知

ることができる.また,高度の狭窄があるレシピエント

冠動脈に血行再建術をした後では,多くの症例では側副

血行路が消失又は減少する.この時,血行再建術を施行

した冠動脈の灌流が増加している事も心筋コントラスト

エコー法を用いると容易に確認できる.さらに,重要な

ことは心筋梗塞や血行再建術中に本来の冠動脈の灌流領

域が他の冠動脈から側副血行路等を介してどれほど守ら

れているかもリアルタイムに観察できる.このような情

報は,次の治療戦略を考慮する上で重要である.

37

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

慢性虚血性心疾患の診断における心筋コントラストエコー法の意義

33

冠動脈注入法A

4)急性心筋梗塞再灌流療法後の心筋救済効果の判定

急性心筋梗塞の治療として経皮的冠動脈インターベン

ションによる再灌流療法は有力な治療法となっている.

再灌流療法の進歩は当然ながら,その灌流領域の心筋バ

イアビリティに関心を向けさせた.しかし,冠動脈の再

疎通に成功しても,梗塞領域の心筋救済が行われてない

症例が存在する.そのような症例では責任冠動脈を再疎

通しても,造影剤が充分に末梢まで満たされない現象が

みられ,no reflow 現象と呼ばれる.責任冠動脈の再疎

通直後に心筋コントラストエコー法を用いると,20-30

% の症例には成功の指標である梗塞領域でのコントラ

スト剤による輝度上昇が認められないことがわかった.

さらに,このような症例では,輝度上昇を認めた例に比

べ慢性期の心機能の回復や予後が不良であると報告され

ている408).このような現象は責任冠動脈の支配領域の組

織に微小循環障害が生じているためと理解されている.

心筋コントラストエコー法を用いると no reflow 現象を

簡便かつリアルタイムに評価できる.しかし心筋コント

ラストエコー法による心筋染影を no reflow と reflow に

完全に分けることは難しく,中間的な所見として淡く染

影されたり,まだらに染影されたりする低染影領域もあ

り,現在この取り扱いについて議論されている409,410).

5)急性心筋梗塞再灌流療法後の治療指針の決定

再灌流療法後に no reflow 現象を示した症例をどう治

療するかは重要な課題である.最近,白血球による末梢

塞栓や血小板の活性化を抑制することができれば,no

reflow 領域の梗塞巣を減少させられる可能性が報告され

ている.ある種の血管拡張薬が経皮的冠動脈血栓溶解療

法(PTCR)や経皮的冠動脈形成術(PTCA)に併用され,

その有効性が検討されている411).このような薬剤投与後

に心筋コントラストエコー法を用いると no reflow 領域

がどのように変化したかも合わせて検討可能である.

経静脈性の超音波造影剤を用いたコントラストエコー

法の臨床応用には,心筋コントラストエコー法に加え,

ドプラ信号増強効果と心腔コントラストエコー法がある

ため,後 2者についても簡単に述べる.

1)ドプラ信号増強効果

大動脈弁狭窄の圧推定や左冠動脈前下行枝遠位部の血

流速度計測は,最近の心エコー装置を用いれば比較的高

率に測定可能である.ドプラ血流速波形記録が計測に十

分でない場合に経静脈性コントラスト剤を用いるとほぼ

全例でドプラ血流速波形のエンベロープを明瞭に得るこ

とができる412,413).さらに最近では右冠動脈血流や左回

旋枝の血流速度計測に際して経静脈性コントラスト剤に

よりドプラ信号を増強させることで,その測定成功率が

高まりつつある414,415).

2)心腔コントラストエコー法

心エコー法では胸郭の形状や体形の問題から十分な画

質が得られない場合がある.心腔コントラストエコー法

はそのような場合,簡便に心内膜の描出を改善する416).

心尖部アプローチでは近距離音場にある心尖部は観察し

にくいが,心腔コントラストエコー法を用いることで心

尖部の描出が鮮明となる.このことを応用して左室機能

低下患者,前壁中隔梗塞患者で生じる心尖部の壁在血栓

や心尖部肥大型心筋症の心尖部の観察などができる.ま

た狭心症の診断を目的とする負荷エコー法は短時間で左

室の心内膜面の同定が重要である.負荷エコー法に心腔

コントラストエコー法を併用することで心内膜同定が容

易となり壁運動異常の診断率が改善される.

心エコー法は左室機能や容量測定に使用されることが

多いが,再現性のある測定には熟練を要し,また容量測

定においては画質の影響による過小評価の問題があっ

た.心腔コントラストエコー法における心内膜の描出は

これらの測定にも影響を与え,再現性が向上し容量測定

における過小評価も是正されることが報告されてい

る417).心エコー図では各種の自動計測ソフトを用いるこ

とで客観的に心機能や局所壁運動を評価することが可能

であったが,これらのソフトを使用するにあたっては通

常の検査よりもさらに良好な心内膜の同定が必要とされ

るため,十分に利用されているとは言い難い.近年,心

腔コントラストエコー法を併用することで自動計測ソフ

トがより多くの症例で適応可能となり,かつ正確な測定

値を得ることができるようになった418,419).

3)心筋コントラストエコー法

経静脈性心筋コントラストエコー法は経静脈性心筋コ

ントラスト剤ならびにハーモニックイメージを基礎とし

た様々なイメージング法を使用することにより,経胸壁

から心筋微小循環を評価し様々な病態診断を目的にした

方法である.現在本邦では臨床で使用できる超音波造影

剤は心筋梗塞急性期は適応外とされている.そのため適

応は主に慢性期心筋梗塞の心筋灌流の観察や狭心症での

虚血部位の同定に限られる.慢性期心筋梗塞患者におい

て心筋灌流を観察することで血行再建術の適応の判断

38

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

経静脈性コントラストエコー法B

と,その後の心機能回復の予測が可能と報告されてい

る420).狭心症の診断には薬物負荷または運動負荷を必要

とするもののシンチグラムとほぼ同等の虚血評価ができ

ると報告されている421,422).運動負荷エコー時には心筋

コントラストエコー法を併用することで発生する壁運動

異常の評価と心筋灌流の低下を同時に観察することが可

能であり,より確実に虚血部位の診断が可能であるとす

る報告もある423).さらには虚血によって生じる心内膜下

の心筋灌流異常の評価が可能であるとする報告もされて

いる424).最近では,心筋染影を視覚的に認識しやすく定

量化するソフトも導入され臨床適用の可能性が広がりつ

つある.経静脈性心筋コントラスト法の特徴は簡便かつ

侵襲性が低く,ベッドサイドでの心筋灌流の評価が可能

である点,より生理的な状態で検査を行えるという点で

ある.今後の心エコー装置の発展と次世代の超音波造影

剤の開発などにより,臨床適用がさらに広がっていくも

のと期待される.

本邦では第 2世代の超音波造影剤が臨床で使用できな

いため,心筋コントラストエコー法は間歇送信法が主流

である.将来リアルタイムでの観察が可能となればさら

に臨床の場で広く用いられると期待されている.

X 線コンピュータ断層撮影法(computerized tomog-

raphy,CT)による慢性虚血性心疾患の評価は,最近の

マルチスライス CT(multi-slice CT,MSCT;多列検出

器型 CT,multi-slice detector CT,multi-detector CT,

MDCT とも表現する)の急激な進歩によりさまざまな

可能性を秘めている.従来の冠動脈石灰化の定量評価か

ら,冠動脈内腔狭窄の有無,非石灰化プラークの検出,

ステント内開存度,冠動脈バイパスグラフトの評価,梗

塞心筋と心内血栓の検出と数多くの報告が進んでいる.

特に冠動脈の非石灰化プラークは破裂することで冠閉塞

を起こし,急性心筋梗塞などの致命率の高い急性冠症候

群をきたすことが知られており,これを非侵襲的に検出,

予防的な治療を開始することは急性冠症候群に対する新

たな治療戦略となりうる.CT は近い将来診断カテーテ

ル検査に置き換わることも予想され,さらに現在開発中

の一回のスキャンで心臓全体を撮像できる立体 CT が発

売されると拍動する血液の循環動態や心筋灌流を 4次元

画像上で可視化するなど,まったく新しい循環器診断の

時代が来るかもしれない.

循環器診断における CT の歴史は心電図同期が可能で

最速 50 msec での撮影が可能な電子ビーム CT(electron

beam tomography,EBT)から始まった.EBT により冠

動脈の明瞭な画像を得ることができ,石灰化の定量評価

という形で冠動脈硬化の進行度,予後を予測することで

循環器診断学に多大な貢献をもたらした425,426).しかし

検査が高価であることと,放射線量が少ないため心臓以

外の臓器の画質が明瞭でないことより,国内では一部の

施設でしか使用されなかった.1998 年に登場した心電

図同期が可能な MSCT により使用施設が飛躍的に増え,

現在 16 列のデータ撮影システム(DAS)をもつ機種も

多くの施設で使用されており,32-64 列 MSCT も稼動

可能である.また EBT も放射線量を上げることで時間

分解能,空間分解能が大幅に改善し,CT は近年最も発

達した診断領域の一つであるといえる.本章では MSCT

を中心に,EBT,新開発の 256 列を持つ立体 CT の慢性

虚血性心疾患に対する有用性を述べる.

従来 CT は 1 回のスキャンで一枚の画像を得ることが

できたが,MSCT は複数の DAS を持つことで 1 回のス

キャンで複数枚の画像を得ることができる.当初は 4列

であったが,現在主流は 16列であり,32列,40列,64

列の機種も登場した.多列化によるメリットは 16 列

MSCT を例にとると,同じスライス厚であれば 16 倍の

速度で撮影が完了し,同じ撮影時間であれば 16 分の 1

のスライス厚で撮影が可能である.スキャナーは一回転

最速 0.4 秒前後まで改善しており,心電図同期撮影と組

み合わせることで拍動の影響の少ない明瞭な冠動脈,心

臓の画像を得ることができる.心電図同期撮影には,①

撮影直前の数心拍の RR 間隔の平均値から特定心位相の

みを収集する方法と②心電図情報を同時に記録しながら

撮影後に任意の心位相のデータを収集する方法がある.

EBT は電子ビームを電磁石により偏向させ,被検者

直下に配置された 4列のターゲットリングに照射するこ

39

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

今後の課題44

X 線 CTXII

要 旨

はじめに11

X 線 CT の特質と技術的側面22

とで X 線を発生させて画像データを収集する.MSCT

と異なり回転機構などの稼動部品を使用していないた

め,MSCT で不可能な 50 msec という走査時間が可能で

ある.従来は MSCT より画質が劣っていたが,新しい

機種では放射線量を上げ,良好な画像を得ることができ,

それでも MSCT より放射線被爆が少ないため,冠動脈

スクリーニングなどにおいて威力を発揮する.

また 4 次元立体 CT という異なるコンセプトの CT も

現在開発中である427-430).フラットパネル CT(VCT,

General Electric),256 列 Cone-Beam CT(Athena, Sony-

Toshiba)と名称,形式は異なるが,共通しているのは

特定の臓器全体を一回の走査で撮影することを目的とし

ている.つまり心臓を例にとると,MSCT では心電図情

報を記録しながら異なる心拍であるが同じ心位相(例え

ば拡張末期)のデータを 20-30 秒かけて収集,積みか

さねることで心臓の立体画像を得る.しかし立体 CT で

は心臓全体のデータを一回の走査で得ることができるた

めわずか 1-2 秒で撮影が完了し,しかも心電図同期撮

影を行わなくても体軸方向に連続性のある画像を得るこ

とができる.

CT を用いた診断目的として,EBT を用いた場合は定

量的冠動脈石灰化評価が挙げられる.MSCT を用いた場

合は,1)定量冠動脈石灰化評価,2)冠動脈内腔狭窄評

価,3)冠動脈非石灰化プラークの検出,4)冠動脈壁の

評価,5)冠動脈ステント内開存度の評価,6)冠動脈バ

イパスグラフトおよび吻合部以降の開存度評価,7)冠

動脈 outward remodeling の評価,8)陳旧性心筋梗塞の

梗塞心筋や心内血栓の検出が挙げられる.

利点としては非侵襲的であることが挙げられる.また

通常の冠動脈造影検査が血管内腔の投影像であるのに対

し,組織分解能が優れる CT は内腔のみならず,血管壁

の石灰化,非石灰化プラークという組織性状評価も可能

である.これは冠動脈造影検査よりむしろ血管内超音波

法(intravascular ultrasound,IVUS)に近い.不安定狭心

症や急性心筋梗塞などの急性冠症候群がむしろ内腔の維

持された脂肪に富んだ非石灰化プラークが危険とされて

いるため431-433),むしろプラークの組織性状が優先され

る場合に有用である.

欠点として放射線被爆434)と造影剤使用があげられる.

急性冠症候群を攻略するためのスクリーニングとして造

影 CT を用いて冠動脈非石灰化プラークを検出するには

どのような症例に検出されるか検証し,この検査の正当

性を提示しなくてはならない.また時間分解能,空間分

解能は冠動脈造影検査に劣る.また現行の MSCT,EBT

では不整脈や頻脈を持つ症例では明瞭な画質を得ること

が困難である.

1)CT検査による冠動脈石灰化の定量評価

冠動脈に石灰化がある場合には粥状硬化があるとされ

ており,心電図同期可能な EBT による石灰化評価は頚

動脈エコーとならび動脈硬化の指標としても用いられて

いる.しかし加齢により中膜におこる Menckeberg type

の石灰化と内膜における粥状硬化病変による石灰化を鑑

別できず,前者は内腔狭窄に関与しないとされているた

め,しばしば石灰化部位と内腔狭窄が一致しない.EBT

による冠動脈石灰化の定量評価の歴史は 1990 年に

Agatston が報告したのが始まりであり425),以後 Agatston

スコアと命名されたこの方法を用いて大規模臨床試験が

行われ,スコアに応じて心事故の発生率や冠動脈有意狭

窄の有無を予測できると報告された426). 2004 年には

冠動脈心疾患の危険予測にフラミンガム危険スコアに,

EBT による冠動脈スコアを加えることで,特に危険度

が中等度で治療方針が立てにくい症例に有用であると報

告された435).しかし部位別の解析で石灰化部位に必ずし

も内腔狭窄がなく,これは内腔を維持するため血管のサ

イズが大きくなる outward remodeling のためといわれて

いる.これは病理学的な検討においても冠動脈プラーク

総面積と石灰化面積は相関するが,プラーク総面積と内

腔面積の逆相関は無く,プラーク総面積が内腔の30%ぐ

らいまでは血管自体が拡大することで代償するためであ

ろうといわれている436).同一患者の冠動脈硬化の経年的

変化を評価するのに用いられる一方,AHA/ACC ガイド

ラインでは冠動脈石灰化が無い場合に以後 2-5 年以内

に心事故が起こる率は非常に低いとされており437),急性

冠症候群のハイリスク群を除外するのにも使用される.

2)CT による冠動脈内腔狭窄の評価

従来 3 mm ビーム幅の造影 EBT を用いて冠動脈内腔

の評価に関する報告がされた438,439).現在では MSCT を

用いることにより 1 mm 未満のスライス厚にての冠動脈

内腔の評価が可能であり,MSCTを用いた血管造影と冠

40

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

慢性虚血性心疾患における X 線 CT の意義33

診断目的A

診断目的による検査法の利点と欠点B

CT 検査により得られる結果とその診断的意義C

動脈造影の有意狭窄検出の比較に関する報告440,441)では,

MSCT の無病正診率(陰性的中度)は 97 % と非常に高

く,CT による血管造影で正常と診断されれば冠動脈造

影でも有意狭窄は無いといえる.逆に CT 血管造影で異

常が見つかっても冠動脈造影上で有意狭窄は無い偽陽性

を経験することが多い.その原因として,1)冠動脈の

石灰化病変と造影された内腔の区別がつかないこと,冠

動脈石灰化がある部位は前述のように outward

remodeling で内腔は維持されていることも多い.2)不

整脈や撮影中の心拍数の変動により画像の Z 方向(体

軸方向)連続性が途切れて狭窄にみえる技術的な原因.

これは 16 列まで多列化したことと画像再構成方法の改

善により大幅に改善している.3)現在の CT は従来の

軸位横断面のほかに,冠状面,矢状面,血管の長軸,短

軸等任意の断面で評価できる.しかし実際には軸位横断

面で観察することが多いが,冠動脈造影では観察不可能

な角度であるため,偏心性病変について冠動脈造影と異

なる所見の原因となるかもしれない.4)3 次元画像で

評価する際には表示設定によって正常冠動脈内腔でも狭

窄に見えることがある,などが挙げられる.EBT を用

いて定量的冠動脈造影所見との血管径の絶対値を比較し

た論文もあるが 3 mm442)もしくは 1.5 mm ビーム幅443)を

用いた研究であるため臨床的には受け入れられるレベル

ではない.スライス厚 1 mm 以下の最新式 MSCT での

評価が待たれる.

3)CT による冠動脈非石灰化プラークの検出

急性冠症候群は脂質に富んだ冠動脈の非石灰化プラー

クを覆う線維性被膜がストレス等で破裂,中身が血管内

腔へ漏出することで血小板等の凝集が起こり血栓閉塞を

起こすことで生じるとされる431).急性冠症候群の発症直

前の冠動脈造影所見は 50% 以下であることが多く,非

石灰化プラークが存在している場合 outward remodeling

が生じて内腔が維持されているほうが破裂のリスクが高

いとされている432,433).したがって冠動脈評価における

MSCT は,冠動脈造影にかわる内腔評価の検査法ではな

く,血管内超音波法の役割を非侵襲的に行う検査法とし

てむしろ内腔が維持された非石灰化プラークを検出する

ことにより急性冠症候群に対する新たな診断,治療戦略

を決定することが期待される.冠動脈造影の冠動脈内腔

評価における精度の検討では,カテーテルが行われた有

症状の患者で冠動脈造影上正常とされた 884の部位に血

管内超音波法を行い,血管内超音波法で正常だったのは

わずか 60 部位(6.8 %)であったと報告している444).

MSCT を用いた非石灰プラークの検出について,血管内

超音波法により観察されたソフトプラークと対応させた

ところ非石灰化プラークの平均 CT 値は純粋な脂肪成分

より高いと報告されている445).16 列 1 mm 未満のスラ

イス厚で検出された非石灰化プラークと血管内超音波法

所見との比較検討もなされている446).

4)CT による冠動脈ステント内開存度の評価

金属性ステントはアーチファクトを生じるため,初期

の EBT を用いた検討ではステントの局在を示すのみで

あったが,MSCT を用いた検討では 1 mm 未満のスライ

ス厚で撮影することによりステント及びステント内の血

管の開存度も評価できる報告が続いている447-450).今後

は再狭窄率の低い薬剤溶出性ステントが主流となると思

われるが451,452),材質,金属製部分の厚みが開存度評価

に影響を与えるため,新ステントの登場で再度 CT によ

るステント内開存度の評価を行う必要がある.

5)CT による冠動脈バイパスグラフトの評価

冠動脈自体よりも動きの少ないバイパスグラフトは冠

動脈より評価は容易であり,吻合部以降の開存度の評価

も可能である453-456).静脈グラフトは血管径が太く上行

大動脈近位部より出て撮影範囲も短いため撮影は容易で

ある.しかし低圧系である静脈グラフトは閉塞率も高い

ため現在動脈グラフトに置き換わりつつある.動脈グラ

フトには内胸動脈,橈骨動脈,胃大網動脈が用いられる

ことが多く,その特徴は静脈グラフトと異なり血管径が

細いこと,撮像範囲が広くなることが挙げられる.4 列

MSCT を用いた検討では,さまざまな動脈,静脈グラフ

トの開存度が評価455,456)されている.現在は 16列MSCT

が主流であり,撮像速度,撮像範囲が改善し,さらに良

好な報告が期待できる.

6)CT による冠動脈壁の評価

2001年に心臓移植後の冠動脈壁の 3次元画像が報告さ

れたが457),現在の CT の空間分解能では冠動脈壁の描出

は困難である.空間分解能は劣るが組織分解能に勝る磁

気共鳴画像法のほうが有望であると考える.

7)CT による冠動脈 outward remodeling の評価

冠動脈造影と異なり CT は血管壁も評価できるため,

血管内腔に加えて血管外径の測定も可能であり,石灰化

プラークがあった部位の血管外径が近位部の正常部位よ

り大きくなっている outward remodeling の画像化も可能

であると報告されている458).

41

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

8)陳旧性心筋梗塞の梗塞心筋や心内血栓の検出

心電図同期撮影により明瞭な左室心筋の画像を得るこ

とができる.梗塞心筋は微小循環が欠如しているための

早期造影不良,壁厚の菲薄化459),そして線維化組織への

晩期異常集積と定義される.また左室内血栓も明瞭に観

察できる460).

1)CT 検査による冠動脈石灰化の定量評価

時間分解能に優れる EBT による石灰化スコアがゴー

ルドスタンダードといわれている.時間分解能が EBT

より劣るが,普及が著しい MSCT による石灰化プラー

クの検出能は IVUS と比較した場合,感度 94 %,特異

度 94 % となっている446).また EBT と MSCT の石灰化

スコアを比較した報告では両者は良好な相関があり,特

に小さなプラークのスコアの再現性は MSCT が優れて

いるとされている461).また EBT の冠動脈石灰化スコア

は MSCT より高い傾向にあり,石灰化スコアが 11 以上

では EBT,MSCT 両者の冠動脈疾患への危険予測の評

価は同等であるとの報告もある462).

2)CT による冠動脈内腔狭窄の評価

冠動脈内腔の有意狭窄を評価する目的において,

MSCT による血管造影法は冠動脈造影を比較対照とす

ると,感度 92-95 %,特異度 86-93 % と報告されてい

る440,441).

3)CT による冠動脈非石灰化プラークの評価

16 列 1 mm 未満のスライス厚で撮影された MSCT の

報告では,非石灰化プラークの検出を血管内超音波法と

比較すると感度 78 %,特異度 87 % であり,石灰化の全

くない非石灰化のみのプラークの検出感度はわずか 53

% であったが,近位部に限ると感度 91 %,特異度 89 %

と MSCT による非石灰化プラークの検出能は良好であ

った446).

4)CT による冠動脈ステント内開存度の評価

16 列 MSCT を用いた冠動脈ステント内開存度の評価

の報告450)はあるが,ステントの材質,金属製部分の厚

みが開存度評価に影響を与えるため,今後主流となる薬

剤溶出性ステントを用いた評価の報告が望まれる.

5)CT による冠動脈バイパスグラフトの評価

4列MSCT を用いた検討では,さまざまな動脈,静脈

グラフトの開存度が評価455,456)され,評価する心位相を

工夫することで 94-95 % の精度が得られている.現在

は 16 列 MSCT が主流であり,撮像速度,撮像範囲が改

善し容易に撮影が可能であり,さらに良好な報告が期待

できる.

6)陳旧性心筋梗塞の梗塞心筋の検出

左室カテーテル所見との比較により,MSCT を用いた

梗塞心筋の検出は感度 85 %,特異度 91 % と報告されて

いる459).

前述したように,冠動脈非石灰化プラークの検出にお

いて MSCT や EBT は臨床上有用と考えられるが,エビ

デンスとして認められるには,内腔が維持された非石灰

化プラークを有する患者群が対照群に比し,急性冠症候

群を高率に発生することを確認する臨床研究が必要と考

えられる.しかし現時点では多くの施設で CT において

非石灰化プラークが確認されれば,冠危険因子の補正,

スタチンの投与,抗血小板薬の投与を行っていると思わ

れる.胸痛があった症例で MSCT 上非石灰化プラーク

があり血管内超音波法を施行し,内腔は維持されていた

がソフトプラークが検出されたためステント埋込み治療

を行った報告があったが463),このように内腔が維持され

た非石灰化プラークを発見された段階で再狭窄率の少な

い薬剤溶出性ステントを積極的に埋め込む時代が近い将

来に訪れるかもしれない.

MSCT,EBT による血管造影がカテーテルを用いた冠

動脈造影に置き換わるかどうかに関しては,前述のよう

に動きの激しい冠動脈そのものよりバイパスグラフトの

評価が容易なため,バイパスグラフトの開存評価が先行

すると考える.バイパス術後評価においては,内胸動脈

グラフトが主流のため撮像範囲の広い 32-64 列 MSCT

が EBT より主役になると思われる.冠動脈については

解決すべき点があるが,スキャナーや再構成法の進歩,

β遮断薬等の薬剤により適切な心拍数にコントロールす

ることでより石灰化病変や金属性ステント内部の評価の

精度が高まると考える.

立体 CT が市場に登場しているが,プロトタイプ立体

CT428-430)を使用した経験から感想を述べる.これは一回

転で心臓を撮像することができ,まったく同じ時間の容

42

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

診断能D

今後の課題44

積データを得ることができるため,心電図同期撮影を行

わなくてもギャップのない画像を得ることができる.

10-20 秒連続撮影をすることで拍動する立体画像に大

静脈から右房,右室,肺動脈さらに肺静脈,左房,左室,

大動脈と造影剤が入って出て行くという血液の循環動態

を可視化することができる.これらの画像から前壁心筋

梗塞による左室瘤症例での瘤内の血流うっ滞や心筋灌流

を 4次元画像上で可視化する等まったく新しい循環器診

断の時代が来るかもしれない.

冠動脈血流予備能は冠動脈の機能的狭窄度を反映する

優れた機能的指標である.その計測にはこれまで主にド

プラフローワイヤや PET が用いられてきたが,最近の

高速磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging,

MRI)の進歩により,呼吸停止下に冠動脈血流計測が可

能となった.MRI による冠血流予備能計測は,冠動脈

狭窄病変の機能的狭窄度の診断,経皮的冠動脈インター

ベンション後の再狭窄の評価,冠動脈バイパスグラフト

狭窄の診断などに応用可能である.また将来,冠動脈

MR アンジオグラフィと冠血流予備能の計測を併用する

ことにより,特異度の高い磁気共鳴(magnetic resonance,

MR)による冠動脈狭窄の非侵襲的診断が期待される.

今後の課題は,MRI の時間分解能の改善によって拍動

性の動きの大きい右冠動脈の血流計測精度を向上させる

ことである.

虚血性心疾患では,梗塞領域における心筋バイアビリ

ティの判定と冠動脈狭窄に伴う心筋虚血の診断が特に重

要である.最近の MR 撮影装置と撮影ソフトウェアの

進歩によって心臓領域における MRI の適応分野は拡大

し,心筋バイアビリティや心筋虚血の診断を高い精度で

行えるようになった.反転回復(inversion recovery)法

を用いた遅延造影 MRI は負荷を要しない簡便な検査法

であり,急性期から慢性期までの梗塞病変が心内膜下梗

塞を含めて明瞭に描出される.遅延造影領域は TTC 染

色による病理学的梗塞領域と良く一致し464),梗塞心筋の

壁内における広がり(transmural extent)は心筋の機能的

回復を示す良い指標となる.心筋灌流 MRI は,Gd-造影

剤を肘静脈から急速静注し,造影剤の心筋初回循環の動

態から心筋血流を診断する検査法であり,心内膜下虚血

も良好に描出される.最近の高速撮影技術の進歩により,

心筋灌流 MRI は心筋血流 SPECT と同等以上の診断能を

示すようになっている.冠動脈有意狭窄に伴う冠血流予

備能の低下は,位相コントラスト(phase contrast)MRI に

よる冠血流計測を用いて直接計測することも可能である.

MRI は生体内の水や脂肪に含まれるプロトンの核磁

気共鳴現象を利用した画像診断法であり,放射線被曝が

ないという特長を有する.心拍動に伴う動きに対応する

ため心電図同期撮影が用いられる.MRI は CT のように

物理的回転部分がないため,心拍内における時間分解能

を自由に設定できる利点がある.呼吸性の動きに対して

は呼吸停止撮影または呼吸同期撮影が用いられる.心臓

MRI は撮影時間が長くリアルタイム性に欠けるとされ

てきたが,パラレルイメージングや Kt-blast 法などの技

術革新により,心エコー図法に近い高速撮影も可能とな

りつつある465).

遅延造影 MRI は急性期~慢性期心筋梗塞における梗

塞病変の存在と範囲の診断,心筋バイアビリティの評価,

心筋症における線維化病変の診断に有用である.ジピリ

ダモールや ATP 負荷心筋灌流 MRI は冠動脈有意狭窄に

伴う心筋虚血の診断に用いられる.シネ MRI は左室お

よび右室機能の診断と局所心筋壁運動の評価に有用であ

る.位相コントラスト MRI による冠血流計測を行うと

冠血流予備能を非侵襲的に評価できる.

MRI は核医学検査と比較して空間解像度が高いため,

心内膜下梗塞や心内膜下虚血を診断できる利点がある.

また,組織コントラスト分解能が高いため,遅延造影

MRI は造影 CT よりも明瞭な梗塞心筋-正常心筋コント

ラストを示す.放射線被爆の心配がなく,造影検査を行

っても腎機能に対する影響が少ないことも MRI の大き

な利点である.MRI は空気や骨の影響を受けず,任意

43

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

MRIXIII

要 旨

はじめに11

MRI の特質と技術的側面22

慢性虚血性心疾患の診断における MRI の意義33

診断目的A

診断目的による検査法の利点と欠点B

方向の断面で動画像を撮影できるため,再現性と客観性

の点で優れている.

一方,MRI は装置が高価でありベッドサイドで実施

できず,MRI 検査予約待ちの長い施設では心臓 MRI 検

査枠を確保することが困難である.撮影時間もかなり短

縮されてきたが,高解像度の 3次元画像の撮影に必要な

時間はマルチスライス CT と比較すると長い.心筋灌流

MRI などの新しい撮影法では,装置メーカーによる診

断能のばらつきが認められる.

遅延造影 MRI は急性期から慢性期までの心筋梗塞病変

を鮮明に描出する.特に心内膜下梗塞を確実に診断でき

ることは他の画像診断法にない特長である.遅延造影

MRI は,いわゆる冬眠心筋や気絶心筋の状態において心

筋壊死が含まれているか否かを明瞭に示し,病態の把握

に役立つ.遅延造影 MRI による心筋バイアビリティ診

断は血行再建術の適応など治療方針の決定に有用である.

負荷心筋灌流 MRI では,冠動脈狭窄に伴う心筋虚血

領域が描出される.狭心症などにおける冠動脈狭窄病変

の診断だけでなく経皮的冠動脈インターベンション後の

再狭窄の診断も可能である.核医学検査よりも空間分解

能が高いため,心内膜下虚血や多枝病変の診断に優れて

いる.

シネ MRI は,空間解像度の高い動画像を任意方向の

断面で骨や空気の影響を受けずに撮影できる特長を有

し,左室変形や壁運動異常を有する心筋梗塞症例におい

ても正確な左室機能計測値が得られる.MRI による左

室機能や心筋重量の計測は再現性が高く結果のばらつき

が少ないため,経時的変化や治療効果を判定するのに適

している.ドブタミン負荷シネ MRI は心筋バイアビリ

ティの診断において遅延造影 MRI よりも高い診断精度

を示す466).

遅延造影 MRI における梗塞心筋の壁方向の拡がり

(transmural extent)は心筋収縮機能の回復と高い相関を

示す.慢性期冠動脈疾患を対象とした報告467)によると,

局所壁運動異常を示すセグメントのうち血行再建により

機能回復が認められる率は,梗塞心筋の壁方向の拡がり

が 0 % のセグメントでは 78 %,1-25 % では 60 %,

26-50 % では 42 %,51-75 % では 10 %,76-100 %

では 1.7 % である.心内膜下梗塞の診断能を動物梗塞モ

デルを用いて検討した報告によると,遅延造影 MRI に

よる診断感度は 88 % であり,Tl-201 SPECT の 21 % と

比較してかなり高い468).

冠動脈造影を基準として負荷心筋灌流 MRI による冠

動脈狭窄度を評価した検討によると,MRI は優れた冠

動脈病変診断感度(89.6 %)と特異度(85.2 %)を示す469).

負荷心筋灌流 MRI による冠動脈狭窄病変診断能は負荷

心筋 SPECT より有意に高く,負荷心筋血流 PET とほぼ

同等である470).

心臓 MRI 検査法のうち,遅延造影 MRI は診断有用性

がほぼ確立されており,MR 装置による診断能のばらつ

きが少なく負荷検査の必要もないため,すでに日常診療

に役立つ検査法となっている.一方,心筋灌流 MRI の

診断能には装置メーカー間の差異が認められ,これは主

に心内膜下のアーチファクトが内膜下虚血様を呈するこ

とが原因である.撮影系列の改良と心筋血流定量解析ソ

フトウェアの開発が求められている.心臓 MRI 検査で

は定常状態(steady state)法を用いた撮影が主流となっ

ており,高性能の傾斜磁場が必要となる.ただし最近の

1.5 テスラ MR 上位機種の傾斜磁場性能は十分に高く,

実際には神経刺激の閾値を越えないように傾斜磁場性能

を抑えて撮影が行われている.3 テスラ高磁場 MRI は,

中枢神経系等の MR 画質を大きく向上し有用であるが,

心臓領域では高周波によるヒト温度上昇や磁場不均一に

よる画質低下などのマイナス効果も大きいため,有効性

は限られる.

冠動脈血流の非侵襲的スクリーニングや経皮的冠動脈

インターベンション後の経過観察として,冠動脈磁気共

鳴アンジオグラフィ(magnetic resonance angiography,

MRA)の実用化への努力がなされてきたが,最近にな

り日常臨床に使用可能なレベルの画質が得られるように

なってきている.撮像法はデータ収集方法の相違により,

2 次元法と 3 次元法に大別されるが,一回に広範囲の撮

像を行う 3次元法が現在では主流となっている.狭窄病

変に対する診断率は,近位部に限ればかなり満足すべき

結果が得られるようになっている.本法はここ数年で急

44

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

診断能D

検査によって得られる結果とその診断的意義C

今後の課題44

MRAXIV

要 旨

速に普及したマルチスライス CT と比較して,空間分解

能で劣ることや撮像時間が長いといった欠点があるが,

造影剤を用いずに検査が可能なことや石灰化の影響を受

けないなどの利点もあり,虚血性心疾患の評価において,

マルチスライス CT と相補的な役割を演じることが期待

される.

虚血性心疾患のスクリーニング検査として,また経皮

的冠動脈インターベンション後の経過観察のための検査

として,冠動脈 MRA が期待されている.MRA は脳動

脈,胸腹部大動脈,末梢動脈など多くの血管病変では既

に実用化されている.一方,冠動脈では脳動脈や四肢の

動脈と比較すると,開発が大きく遅れることとなったが,

その理由として冠動脈は呼吸ならびに心臓の拍動に大き

く影響を受け,直径も 3-4 mm と細いことなど,時間

分解能,空間分解能の制限の強い MRA には不利な血管

であることが挙げられる.3-4 mm 径の血管の狭窄病

変を検出するためには,1 mm 以下の空間分解能が必要

であり,心拍動と呼吸運動による動きを停止させた状態

で,全てのデータを収集する必要がある.また心外膜側

冠動脈は厚い脂肪織内に埋もれており,精度の高い脂肪

抑制撮像法が必須である.

このような問題に対して,呼吸停止下で心電図同期撮

像が可能な高速撮像法と精緻な脂肪抑制法が 90 年代初

頭に登場し,臨床応用に有利な 2 次元法による MRA が

実現した471).1994 年には一部の商業機での撮像が可能

となり,本法でも臨床研究が開始された.

1996 年にはナビゲーターエコー(navigator echo)法

による呼吸同期法を用いた 3 次元法 MRA が商業機に搭

載され472),その後さまざまなハードウェアやパルス系列

(pulse sequence)の改良を重ねることにより473-478),冠動

脈疾患の診断に応用可能なレベルまで画質が向上してき

ている.

冠動脈 MRA はデータ収集方法の相違により 2 次元法

と 3 次元法に大きく分けられる.2 次元法は 1990 年代初

頭の冠動脈 MRA 開発当初から用いられてきた方法であ

り,k 空間セグメント化などを利用したグラディエント

エコー(gradient echo)系列の高速撮像法を使用する479-481).

心電図同期を使用し,基本的に一回の息止めにて一つの

撮像断面を得て,これを繰り返すことにより冠動脈の評

価を行う.一つの撮像断面内に,屈曲した冠動脈を広範

囲に描出することは困難な作業であり,通常は近位部の

みの評価に限られる.このような事から,現在では 2次

元法を用いる機会は少なくなっている.

一方,3 次元法では一回の撮像により一定のボリュー

ムの情報を収集するため,連続した薄いスライスを得る

ことが可能である.2 次元法のように,適切なスライス

方向を選択する必要もなく,撮像に熟練を必要としない.

ただし,一度に広範囲の撮像を行うために,撮像時間が

長くなる欠点があり,呼吸同期法を併用するなどの対策

が必要となる482-484).

3 次元法では,呼吸運動の影響を排除するために,呼

吸同期法を併用するが,その方法として横隔膜の位置情

報を直接モニターするナビゲーターエコーを用いる472).

この場合,患者は安静時呼吸をしていればよく,データ

数を増やして高空間分解能の MRA 像を得ることが可能

であるが,データの収集効率が悪いために撮像時間が長

くなる欠点がある.撮像スラブを主要冠動脈の走行に沿

って薄くすることで撮像時間を短縮する方法や,空間分

解能をさらに向上させる方法もある477).

一方,3 次元法には呼吸同期法を用いずに,一回の息

止め内(20-30 秒以内)に撮像する方法もある.ハー

ドウェアの性能向上による繰り返し時間(TR)/エコー

時間(TE)の短縮により可能となってきたが,実際に

は空間分解能の制約や 1心拍あたりのデータ収集時間の

延長,あるいは撮像スラブをできるだけ薄く設定するな

どの工夫が求められる.

従来型のグラディエントエコー系列では,造影剤を用

いて冠動脈のコントラストを向上させることができる.

ナビゲーターエコーを併用した 3次元法では,撮像時間

が長いために満足するような増強効果は得られないが478),

呼吸停止下の場合は,造影剤をボーラス静脈注入後に撮

像すると,コントラストの高い MRA 像を得られる485).

しかし,手技が煩雑であること,最近になり造影剤を用

いずに高い S/N 比の冠動脈像が得られる方法が登場し

たことなどにより,現在では造影剤を使用する意義は少

なくなっている.

45

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

はじめに11

MRA の特質と技術的側面22

2次元法と 3次元法A

呼吸同期法と呼吸停止下法B

造影剤の利用C

最近になり,グラディエントエコー系列を発展させた

方法で,定常状態にて画像を収集する定常状態(steady

state)系列が登場し,冠動脈 MRA に広く用いられるよ

うになっている486).各社 true FISP(fast imaging with

steady precesion),balanced FFE(fast field echo),true

SSFP(steady state free precession)などと呼ばれている

方法で,極めて短い繰り返し時間(TR)/エコー時間

(TE)と大きなフリップ角(flip angle)で撮像し,高い

信号・雑音(S/N)比とコントラスト分解能が得られて

いる.

もう一つ最近用いられるようになった新たな技術とし

て,パラレルイメージングがある.冠動脈 MRA の撮像

時間短縮には,これまで高速撮像法による繰り返し時間

(TR)の短縮やエコートレイン数の増加といった方法で

行われてきたが,傾斜磁場強度やスリューレート(slew

rate)などのハードウェア性能にはおのずと限界がある.

パラレルイメージングは,位相エンコードステップを減

少させることでデータ収集時間を短縮できる方法で,従

来からのさまざまな撮像法に利用でき,冠動脈 MRA に

も応用することが可能である.ただし撮像時間短縮と引

き替えに S/N 比の低下をきたすため,元来 S/N 比の高

い定常状態系列に合わせて用いられることが多い478).

上記の定常状態系列とパラレルイメージングを併用

し,呼吸同期下にて心臓全体をカバーするような広範囲

撮像を行う方法が最近注目されており487),かなり末梢ま

で鮮明な冠動脈像が得られるようになっている.1 mm

以下の高空間分解能で撮像するため,撮像時間はかなり

長くなるが(7-15 分),位置決めの手間が省けるため,

実際の検査時間はそれほど長くならずに済む.取得した

画像データをページングで観察したり,種々の再構成を

して評価を行う.

慢性虚血性心疾患における冠動脈 MRA の役割として

は,狭窄・閉塞病変の検出の他,経皮的冠動脈インター

ベンション後の再狭窄検出,冠動脈バイパスグラフト狭

窄の診断などへの応用が考えられる.MRA は造影剤が

不要で放射線被曝がない大きな利点を有しているが,狭

窄病変のスクリーニングに用いるには,空間分解能が不

十分なこと,近位部のみの評価に限られること,ステン

ト内腔の評価が困難なことなど多くの課題がある.ただ

しハードウェアやパルス系列の改良が重ねられており,

冠動脈造影に代わる非侵襲的検査法としての役割を担う

ことが予想される.また最近では,シネ MRI による左

室機能や局所壁運動評価,心筋灌流 MRI による心筋虚

血の評価,遅延造影による心筋バイアビリティ評価など,

虚血性心疾患に必要な情報を一度に得る comprehensive

cardiac study が注目されているが,これらの検査に冠動

脈 MRA を組み込むことで,診断精度がさらに高まると

期待される.

虚血性心疾患患者を対象とした冠動脈 MRA における

冠動脈閉塞・狭窄検出率には,以前よりさまざまな報告

があり,40-90 % とかなりのばらつきがある474-476,480-484).

これには,各々撮像装置や撮像方法,あるいは対象とす

る冠動脈セグメントが異なることなどが関与していると

推測される.最近,同一機種と同一撮像法(呼吸同期を

併用した 3次元高速グラディエントエコー法)を用いた

欧米での多施設共同研究が行われ,109 例での結果が報

告されているが488),50 % 以上狭窄の有無について冠動

脈造影と比較した結果,全体の正確度が 72 % であった.

このうち左主幹部と 3枝病変に対する結果は特に良好で

あり,臨床応用が可能との結論が得られている.本邦か

らの最近の報告477)では,呼吸同期併用 3 次元高速グラ

ディエントエコー法を用いた検討で,50 % 以上狭窄に

対する診断能は,感度 80 %,特異度 85 %,正確度 84 %

であった.また定常状態系列とパラレルイメージングを

併用した呼吸停止下 3 次元法では,50 % 以上狭窄に対

し感度 75 %,特異度 86 %,正確度 83 %との成績が得ら

れている478).

前述のように,狭窄や閉塞病変に対する良好な成績が

示されてきており,冠動脈 MRA は日常臨床に使用可能な

レベルになりつつあるといえるが,空間分解能,時間分

解能ともに十分とはいえず,今後さらなる装置や撮像法

の改良が必要と考えられる.また,高精度の MRA を撮

像可能な装置が,一部の高級機種に限定されるため,検

査が一部の施設でしか行われていないのが現状といえる.

現在でも多くの新技術が開発・研究されている.ハー

ドウェアでは,3.0 テスラの高磁場装置が本邦でも稼働

46

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

Whole heart coronary MRAE

慢性虚血性心疾患の診断における MRI の意義33

診断目的A

診断能B

今後の課題44

定常状態(steady state)系列とパラレルイメージングD

し始めており,冠動脈への応用が試みられている.高磁

場特有のアーチファクトの問題などがあるが,正常ボラ

ンティアを用いた欧米での報告489)では,高い空間分解

能と S/N 比の両者が実現されており,従来装置と比し

高い診断精度が得られる可能性がある.

造影剤に関しては,血管内プール造影剤の開発・治験

が欧米で進行中である.従来からの報告では,血管内プ

ール造影剤の使用により,冠動脈のコントラストや末梢

枝の描出率が格段に向上することが示されている490)が,

副作用が多いなどの問題もある.

従来法による MRA での冠動脈内腔の評価ではなく,

壁の性状を評価する血管壁イメージング(vessel wall

imaging)の研究が現在盛んに行われている491).今後,

動脈硬化性プラークの性状評価において,豊富なコント

ラストを有した MRI の役割がさらに高まるものと期待

される.

冠動脈造影は冠動脈の解剖の詳細を知るための最も優

れた検査法である.本法は虚血性心疾患の重症度診断,

予後予測,治療適応,治療効果判定に有用である.しか

しながら,本法は患者の機能的な重症度や冠病変の生理

学的異常を直接的に示すものではない.冠動脈造影・左

室造影より得られる重要な生命予後の規定因子として,

左主幹部 50 % 以上の狭窄及び左心機能の低下した(左

室駆出率<50 %)3 枝疾患がある.また本法で得られる

冠動脈病変部位・狭窄度・血管径・病変長・血栓像の有

無・石灰化の有無などの因子は,経皮的冠動脈形成術

(PTCA)の初期成功および長期成績を予測する上で重

要である.さらに冠動脈末梢病変の有無は冠動脈バイパ

ス術の適応決定に重要である.

冠動脈造影は冠動脈の狭窄性病変(時に拡張性病変)

の存在の有無,部位,分布,程度(狭窄度)を冠動脈全

体にわたって評価することのできる検査法である.種々

の非侵襲的検査法の進歩にもかかわらず,現在のところ

選択的冠動脈造影は上記目的のためのゴールドスタンダ

ードである.

1958 年 Mason Sones は左右のバルサルバ洞にカテー

テル先端を置き,20-30 ml の造影剤を 3-6 秒かけて

注入するいわゆる semiselective 法を考案した492).さらに

1959 年に woven dacron 製の可動性に富むカテーテルを

作成し,選択的に左右冠動脈に挿入することに成功した.

1967 年に Judkins は,左右冠動脈造影用に先端形状を工

夫したカテーテルを作成し,経皮的に大腿動脈より挿入

する方法を確立した493).その後,選択的冠動脈造影法と

して,上腕動脈切開法による Sones 法と経皮的大腿動脈

穿刺法による Judkins 法が用いられてきた.今日では経

皮的穿刺法が主流となり,穿刺部位も大腿動脈のみなら

ず上腕動脈あるいは橈骨動脈も使用されている.カテー

テルサイズも従来の 8 French から 6 French へと主流が

変わっており,5 French,4 French のカテーテルも使用

されている.このようなカテーテルの細小化によって,

冠動脈造影は侵襲的検査でありながら,外来でも施行可

能となった.冠動脈の微細な観察や各冠動脈の分離を十

分に行うためには 35 mm のシネアンジオグラフィが前

提であった.シネ撮影をするには,高電圧発生装置,X

線管球,イメージインテンシファイアー,シネカメラが

必要であったが,急速なデジタル化の進行によって,大

部分の施設でシネアンジオグラフィが行われなくなり,

撮影された画像はコンピュータのハードディスクや CD

などの電子メディアに保存されるようになった.その結

果,データの保存スペースもわずかで済む上,解析等も

より簡便に行えるようになっている.また,動画対応デ

ジタルフラットパネルディテクタの開発などによって,

画質の向上や被曝線量の減少も進んでいる.

冠動脈造影の問題点としては,まず合併症の問題があ

る.冠動脈造影による死亡の頻度は 0.2 % 以下,主要合

併症(脳血管障害,心筋梗塞,出血)の頻度は 0.5 % 以

下であるとされている494).運動負荷試験で血圧低下を認

める症例や低い心拍数で広範に強い ST 下降を認める症

例では合併症の危険性が高いとされている495).さらに他

の危険因子としては,左主幹部疾患,重症 3枝疾患,低

左心機能例,重症大動脈弁狭窄症,高齢などが指摘され

ている496).

近年ではカテーテルの細小化,カテーテル手技や合併

47

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

冠動脈造影XV

要 旨

冠動脈造影法の特質と技術的側面11

冠動脈造影法の特質A

検査法の進歩B

検査法の問題点C

症治療手段の向上により重大合併症の頻度は減少傾向に

ある.例えば冠動脈解離による心筋梗塞の発生は,しば

しば緊急冠動脈バイパス術や死亡に至る重篤な合併症で

あったが,近年では速やかなステント留置術により心筋

梗塞を回避することが可能である.さらに従来はイオン

性造影剤によりアナフィラキシーショックを呈すること

が稀でなかったが,非イオン性造影剤の使用によりその

頻度は激減している.欧米では非イオン性造影剤による

血栓形成の問題が指摘されているが,日本人の場合には

大きな問題にはなっていないようである.

冠動脈造影の施行が経皮的冠動脈インターベンション

や冠動脈バイパス術の濫用の原因となるとの批判があ

る.後述する適応を逸脱した冠動脈造影の施行により,

臨床的意義の明らかでない経皮的冠動脈インターベンシ

ョンや冠動脈バイパス術の増加をもたらすという,いわ

ゆる occulo-stenotic reflex の問題は以前より指摘されて

いる.

表 15に ACC/AHA のガイドラインを改変した冠動脈

造影の適応分類を示す497).

冠動脈造影の診断目的として,虚血性心疾患の有無の

診断,虚血性心疾患の重症度の診断,侵襲的治療に対す

る解剖学的適性の診断,各種治療の効果判定が挙げられ

る.

冠動脈造影は冠動脈の解剖の詳細を知るための最も優

れた検査法である.冠動脈造影により知ることのできる

解剖学的条件としては,狭窄性病変の存在・程度・部

位・分布や冠動脈径,側副血行,血栓像,冠動脈攣縮,

冠動脈奇形などである.冠動脈造影は虚血性心疾患の重

48

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

冠動脈造影の適応分類D

表 15 冠動脈造影の適応分類(文献497 ACC/AHA のガイドラインを改変)

狭心症例

クラスⅠ

1.薬物療法に反応不良な狭心症

2.不安定狭心症

3.非侵襲的検査の結果,ハイリスクと考えられる症例

4.左心機能低下例

5.陳旧性心筋梗塞

6.主要非心臓手術術前

クラスⅡa

1.コントロール良好な安定狭心症であるが,若年性のもの,あるいは重要な危険因子を有するもの,あるいは ADL の改善・薬剤の減量を希望するもの.

2.非侵襲的検査の結果,ハイリスクではないが虚血の存在が示唆されるもの

3.非定型的胸痛であるが,薬物治療を考慮する場合や患者の不安が強い場合.

4.非侵襲的検査施行不能あるいは評価不能の場合.

クラスⅡb

1.クラスⅡa 1. 2. 以外の安定狭心症

無症候症例

クラスⅠ

1.非侵襲的検査の結果,ハイリスクと考えられる症例

2.低左心機能症例

3.主要心臓手術術前で,非侵襲的検査により虚血の存在が示唆される場合.

クラスⅡa

1.非侵襲的検査の結果ハイリスクではないが,虚血の存在が示唆される場合.

2.陳旧性心筋梗塞で若年性のものあるいは重要な危険因子を有するもの.

慢性虚血性心疾患の診断における冠動脈造影の意義

22

診断目的A

症度診断にも重要である.この場合,重症度診断とは生

命予後に関するリスクの層別化を意味する.この際に指

標となるのは,病変部位,狭窄度,罹患枝数,左心機能

などである.しかしながら後述するように,冠動脈造影

は患者の機能的な重症度や病変の生理学的意義を直接的

に示すものではない.予後に関しては,冠動脈造影で識

別できない多くの因子が関与することは明らかである.

冠動脈造影は虚血性心疾患の診断のみならず,経皮的冠

動脈インターベンションや冠動脈バイパス術などの治療

に対する解剖学的適性をみる上でも重要である.

さらに各種治療の効果を解剖学的に判定することも冠

動脈造影の診断目的の一つである.経皮的冠動脈インタ

ーベンション後の再狭窄,冠動脈バイパスグラフトの開

存度,冠動脈病変退縮,新規病変の出現などの評価が冠

動脈造影により行われている.

冠動脈造影によって得られた病変の生理学的意義の評

価は容易ではない.近傍の造影上「正常」とされる部位

を対照とする狭窄度の評価が一般的であるが,対照部位

に存在する動脈硬化のために,その評価は一般的に過小

評価となる.また絶対径としての最小血管径を評価して

も,本来あるべき血管内径は病変部位により異なるため

に,血管内径の異常値を定義することは困難である.さ

らに不規則な形状の冠動脈内腔では,内腔面積の推定が

困難である.経皮的冠動脈インターベンション直後にお

いてこの問題は顕著である.

冠病変の評価においては再現性の問題が避けられな

い.特に視覚的判定においては再現性に問題が起きやす

い.この点を克服するために,エッジディテクション法

やビデオデンシトメトリー法などの定量的冠動脈造影法

(quantitative coronary arteriography,QCA)が開発されて

きた498).定量的冠動脈造影法を用いることにより,再現

性・客観性は著しく向上するが,解像力の問題から内径

1 mm 以下の部位の正確性は劣る.一方,病変の生理学

的意義の評価については,内径 1 mm 前後のレンジがき

わめて重要である.冠動脈造影によって得られる像は,

内腔辺縁像であり,冠動脈壁性状・病変進展の程度につ

いての情報は得られない.

虚血性心疾患の有無の診断に関しては,診断能の項で

述べた限界はあるものの,冠動脈造影は冠動脈狭窄の存

在,冠動脈攣縮の存在を視覚的に示す最も優れた検査法

である.虚血性心疾患の存在を明確にすることによって,

抗血小板薬・抗高脂血症薬・硝酸薬・カルシウム拮抗

薬・β遮断薬などの薬物治療の必要性が明確になる.

1)重症度の診断

虚血性心疾患の重症度の診断は冠動脈造影の最も重要

な目的である.重症度評価とは,生命予後に関するリス

クの層別化である.生命予後を規定する因子で,冠動脈

造影・左室造影より得られるものとして現在明らかにさ

れているのは,左主幹部 50 % 以上の狭窄の存在及び左

心機能の低下した(左室駆出率<50 %)3 枝疾患の存在

である499).これらの病型においては,冠動脈バイパス術

により生命予後改善効果が示されている.経皮的冠動脈

インターベンションについては,これらの生命予後改善

効果についてのデータは得られていない.

2)治療適応

侵襲的治療(経皮的冠動脈インターベンション・冠動

脈バイパス術)に対する解剖学的適性の診断は冠動脈造

影でのみ可能である.冠動脈造影により得られる病変部

位・狭窄度・血管径・病変長・血栓像の有無・石灰化の

有無などの因子は,経皮的冠動脈インターベンションの

初期成功および長期成績を予測する上で重要である.冠

動脈末梢病変の有無は冠動脈バイパス術の適応決定に重

要である.

3)治療効果判定

経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄・冠動脈

バイパスグラフト開存・冠動脈病変退縮などの有無を評

価する目的で,冠動脈造影が施行されることが多い.臨

床試験においては,冠動脈造影によって得られる細小血

管径などを指標とすることにより,少数の症例数で有意

差を得ることが可能となる.近年の経皮的冠動脈インタ

ーベンションに関する大規模試験において,定量的冠動

脈造影の果たした役割は大きい.しかしながら臨床試験

における追跡終点は造影上の指標ではなく,臨床的指標

であるべきとする指摘もしばしば行われる.特に治療効

果判定のための冠動脈造影の臨床的意義については明ら

かにされていない.さらには追跡冠動脈造影の施行によ

り経皮的冠動脈インターベンションの再施行の頻度が増

加するとの報告もある500,501).

冠動脈造影の適応については,年齢・職業・ADL・

合併疾患の有無・患者の希望など多くの要素を考慮し

て,総合的に判定されるべきもので,一律の適応基準を

49

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

診断能B

検査により得られる結果とその診断的意義C適応基準D

設定することは困難である.しかしながら標準的な適応

基準を明確にすることは,冠動脈造影の濫用を防止する

上で重要と思われる.冠動脈造影の大きな目的の 1つは,

経皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術な

どの侵襲的治療の適応決定である.経皮的冠動脈インタ

ーベンションや冠動脈バイパス術の治療効果として,現

在明らかになっているものは,狭心症の改善効果であり,

その意味で狭心症を有する症例と無症候性の症例に分け

て考えることが重要である.

冠動脈攣縮誘発試験はエルゴノビンないしアセチルコ

リンを選択的に冠動脈内に注入して冠動脈を造影して行

われる.本法は安静狭心症における冠動脈攣縮の証明お

よび非定型的胸痛患者における冠動脈攣縮の除外を目的

としてなされる.一部の労作狭心症や心筋梗塞例にも行

われる.冠動脈攣縮の検出は感度・特異度ともに 80-

90 % と高い.負荷試験前の薬物治療や,発作の活動性

の低い患者では,感度が低くなる.本法で誘発された冠

攣縮が臨床的に病的意義があるか判断に迷う例もある.

多枝同時冠攣縮は長期予後が不良である.

我が国では安静狭心症が多く存在する.この安静狭心

症の大部分は冠動脈造影により冠動脈攣縮が証明され

る502,503).しかしホルター心電図装着時に狭心発作が起

こるのは必ずしも高頻度ではない.そのために安静狭心

症例に対して,種々の薬剤により狭心症発作誘発試験が

試みられる.

冠動脈攣縮誘発試験は通常,冠動脈造影施行中に行わ

れる.代表的な試験としてエルゴノビン負荷試験504)お

よびアセチルコリン負荷試験505)がある.エルゴノビン

負荷試験は従来 0.05-0.2 mg のエルゴノビンの大動脈

内注入によって行われてきたが506),最近では 20-32μg

の冠動脈内注入が行われることが多い507).アセチルコリ

ン負荷試験では 20-100 μg のアセチルコリンの選択的

冠動脈内注入が行われる.

表 16 に冠動脈攣縮誘発試験の適応基準として ACC/

AHA のガイドラインの適応分類を改変したものを示

す497).

診断目的は,安静狭心症及び一部の労作狭心症におけ

る冠動脈攣縮の証明,安静狭心症の重症度の診断,非定

型的胸痛患者における冠動脈攣縮の除外,である.

合併症として,エルゴノビンの大動脈内注入において

は攣縮の寛解に長時間を要することや,多枝同時攣縮に

よるショックで心肺蘇生を要することがある.選択的注

入の場合には通常,硝酸薬の冠動脈内注入に速やかに反

応し攣縮の寛解を認める.アセチルコリン負荷では高度

徐脈を呈することが一般的であり,一時的ペーシングが

必要である.

冠動脈攣縮誘発試験は一般に感度・特異度ともに

80-90 % と高い505-510).しかしながら負荷試験前に薬物

治療が施行されていたり,攣縮の活動性の低い患者では,

ホルター心電図で ST 上昇が確認されている例でも攣縮

が誘発されないことがある.また冠動脈攣縮の活動性に

は日内変動があることが知られており,早朝においての

50

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

冠動脈攣縮誘発試験XVI

要 旨

冠動脈攣縮誘発試験の特質と技術的側面11

冠動脈攣縮誘発試験の特質A

技術的側面B

適応基準C

表 16 冠動脈攣縮誘発試験の適応基準(文献497 ACC/AHA のガイドラインを改変)

ClassⅠ

1.典型的な安静時胸痛あるいは再現性のない労作時胸痛を有するが,心電図でとらえられていないもの.

2.労作性胸痛に見合う程度の冠動脈狭窄が認められないもの

ClassⅡa

1.発作時 ST 上昇のとらえられた異形狭心症

2.心筋梗塞症で有意冠動脈狭窄のないもの

慢性虚血性心疾患の診断における冠動脈攣縮誘発試験の意義

22

診断目的A

合併症B

診断能C

み発作が誘発される例がある508).また以前に胸痛の既往

が全くない患者でも心電図変化を伴う冠動脈攣縮が誘発

されることがあり,これらの冠攣縮の病的意義の評価は

困難である.さらに心電図変化を伴わず,完全あるいは

亜完全閉塞に至らない冠動脈攣縮の病的意義の評価も困

難である.

安静狭心症および一部の労作狭心症において冠動脈攣

縮を証明することにより,狭心症として硝酸薬・カルシ

ウム拮抗薬の長期投与が正当化される.さらにβ遮断薬

の使用を行うか否かという治療指針上の情報も得られ

る.安静狭心症の重症度の診断において,多枝同時冠動

脈攣縮を呈する患者は長期予後が不良であるとされてい

る509).このような例で薬剤の投与量や投与期間の決定の

ための指針となる.非定型的胸痛患者における冠動脈攣

縮の除外は,特に日本人において重要である.冠動脈狭

窄を認めないからといって,狭心症を否定することはで

きない.一方で非定型的胸痛患者に対して狭心症の確定

診断を得ずに,漫然と硝酸薬・カルシウム拮抗薬を長期

投与することも問題である.非定型的胸痛を有する患者

に冠動脈攣縮負荷試験を行い治療の必要性を決定するこ

とは重要である.

冠動脈狭窄評価は冠動脈造影で行われてきたが,血管

内超音波法(intravascular ultrasound,IVUS)を用いるこ

とで冠動脈造影所見と IVUS 所見との解離が指摘される

ようになった.その原因の 1つは IVUS が石灰化病変の

描出に優れていることである.冠動脈の動脈壁は一般に

エコー輝度から内膜・中膜・外膜の 3 層に分離できる.

内膜は肥厚がなければ明瞭に描出されないので,IVUS

上の 3 層構造は粥状硬化の存在を示す.3 層構造を示す

動脈硬化病変では最内層に存在するプラークをエコー輝

度によりソフト,ハードに分けることができる.血管断

面積の計測は内膜・中膜・外膜を IVUS システム上でト

レースし,内腔面積を引いて計算する.IVUS はバルー

ンによる経皮的冠動脈形成術後に生じた冠解離の検出に

鋭敏である.大きなフラップを生じた場合や経皮的冠動

脈形成術では十分な内腔面積が得られなかった場合,ス

テント留置術の適応を決める上でも有用である.IVUS

による計測値は経皮的冠動脈形成術のバルーンカテーテ

ルの選択には定量的冠動脈造影(quantitative coronary

arteriography,QCA)と並んで有用である.さらに経皮

的冠動脈形成術のエンドポイントの決定には拡張後得ら

れた内腔面積や生じた冠解離が評価項目となる.

血管内超音波法(intravascular ultrasound,IVUS)とは

超小型の超音波振動子を血管内腔に誘導し,血管の短軸

方向の断層像を得る手段である.IVUS が臨床応用され

るのは振動子の小型化が可能となった 1980 年代後半か

らである.現在ではイメージングカテーテルの径は

2.9F-3.5F のものが主に使用されている.超音波波長は

30 MHz が主流であるが,最近になって 40 MHz のもの

が開発され,より詳細な画像が得られるようになってき

ている.その原因として 1つは IVUS が石灰化病変の描

出に優れていることである.

イメージングカテーテル先端部の振動子から超音波を

射出し,その反射を電気信号に変換したうえで血管断面

を再構築するものである.振動子から超音波を射出する

方法は大きく分けてソリッド型と機械走査型に分けられ

る.ソリッド型では 64 個の超音波振動子を円筒状に並

べており,それぞれから超音波を発生させ 360度方向の

画像を得るものである511).ソリッド型では回転する部分

がないことが特徴である.機械走査型では 1つの振動子

がイメージングカテーテル内で 1800 rpm の高速で回転

し,360 度方向の画像を再構築するものである512).イメ

ージングカテーテルの冠動脈内への誘導は monorail 型

の経皮的冠動脈形成術バルーンカテーテルの手技と同様

である.イメージングカテーテルが目標部位を越えたと

ころから引き抜きを開始する.引き抜きは手動あるいは

モーターを用いて一定速度で行い,連続して得られる断

層像を S-VHS ビデオなどの記録装置に記録する.検査

に際しては冠動脈に少なからず侵襲を与えることになる

ので十分な注意が必要である.検査に伴う合併症として

は冠動脈攣縮,冠動脈内膜の損傷・解離や血栓の形成,

急性心筋梗塞などがある513).

51

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

冠動脈攣縮誘発試験により得られる結果とその診断的意義D

血管内超音波法(IVUS)XVII

要 旨

はじめに11

血管内超音波法の特質と技術的側面22

従来,冠動脈狭窄評価のゴールドスタンダードは冠動

脈造影法であったが,IVUS が臨床応用されてからは得

られる情報は飛躍的に増加した.そして冠動脈造影所見

と IVUS 所見との解離が指摘されるようになった.その

原因として 1つは IVUS が石灰化病変の描出に優れてい

ることである.報告では経皮的冠動脈インターベンショ

ン時に対象冠動脈の 60-80 % に石灰化を認めた514-516).

またもう 1 つ,Glagov 現象といわれる血管リモデリン

グの存在が IVUS にて in vivo で解明された.これは冠

動脈硬化が進展しプラークの増殖が進むにつれて,血管

断面に占めるプラークの割合が 40 % 以下までは血管断

面の拡大が生じて内腔面積の狭小化を代償するというも

のである517).これらの知見は経皮的冠動脈インターベン

ションにおいてデバイスの選択からエンドポイントの決

定まで幅広く用いられており,いまや IVUS は冠動脈イ

ンターベンションにとっては日常的でありかつ必須の検

査法であるといえる.

冠動脈造影は造影剤による影絵にすぎないために

IVUS 所見とは様々な解離を示す.冠動脈造影にては正

常と診断される血管においても動脈硬化の進展がみられ

ることが明らかとなった444).冠動脈の動脈壁は一般にエ

コー輝度から 3 層に分離できる.内腔側から内膜・中

膜・外膜となっているが,内膜は肥厚がなければ明瞭に

描出されないことも多い.Fitzgerald によると内膜肥厚

が 178 μm 以上の場合に内膜が明らかに描出されいわ

ゆる 3 層構造を呈する518).よって現在では IVUS 上の 3

層構造の存在が粥状硬化の存在を示す.いわゆる 3層構

造を示す動脈硬化病変では最内層に存在するプラークを

エコー輝度によりソフト,ハードに分けることができる.

外膜のエコー輝度を基準としてそれより低いエコー輝度

のものをソフト,外膜エコーと同等あるいは輝度の高い

ものをハードと定義するのが一般的である.石灰化病変

はエコー輝度上はハードプラークに属するが,後方に音

響陰影を伴う点で区別することができる.また IVUS は

動脈硬化病変の定量化にも優れている.現在のシステム

では標的部位の遠位部までイメージングカテーテルを進

め,そこから引き抜きを行い,得られた画像をビデオテ

ープに記録し,オフラインにて各種の計測をすることが

可能である.血管径,内腔径,及び面積を計測する.血

管外膜とその外層の区別は明らかでないことが多く,外

膜と中膜の境界より内側を血管断面とするのが一般的で

ある.血管断面積を IVUS システム上でトレースし,血

管断面積を計測する.同じく内腔面積を計測し,前者か

ら後者を引いた値をプラーク面積(あるいはプラーク面

積+中膜面積)とする.

経皮的冠動脈インターベンションにおいても上記の知

見が応用される.冠動脈内プラークの性状によってはデ

バイスを使い分ける必要がある.特に石灰化プラークで

は通常のバルーンによる経皮的冠動脈形成術が困難なこ

とが多く,rotational ablation システムを用いたデバルキ

ングが有効な場合がある.また,プラーク量がきわめて

多く,冠動脈内で偏心性に存在する場合は方向性冠動脈

粥腫切除術(directional coronary atherectomy,DCA)が

有効な場合が多い.バルーンによる経皮的冠動脈形成術

後に生じた冠解離の検出には IVUS は鋭敏である.大き

なフラップを生じた場合や経皮的冠動脈形成術では十分

な内腔面積が得られなかった場合にはステント留置術の

適応となる.この場合も IVUS は有用である.経皮的冠

動脈形成術を行う場合バルーンカテーテルの選択には

QCA と並んで IVUS による計測値が有用である.さら

に経皮的冠動脈インターベンションのエンドポイントの

決定には拡張後得られた内腔面積や生じた冠解離が評価

項目となる.

イメージングカテーテルの引き抜きを一定速度で行え

ば得られた画像を 3 次元再構築することが可能である.

IVUS の 3 次元再構築はシステム的に未完成であるが,

プラークの位置情報をいっそう明らかにすることができ

る.また病変長の測定,血管容積,プラーク体積の測定

が可能である.

IVUS はこれまでゴールドスタンダードとされてきた

冠動脈造影と比べてより詳細な冠動脈の解剖を提供し,

特に冠動脈インターベンションの分野にはなくてはなら

ない手段である.今後はハード面では更にプロファイル

が小さく,フレキシブルで,解像度の高いカテーテルの

開発が望まれる.解析ソフト面では画像の 3次元再構築,

組織性状の解析等が期待される.

52

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

慢性虚血性心疾患の診断における血管内超音波法の意義

33

目 的A

判定基準B

経皮的冠動脈インターベンションの適応C

今後の課題44

冠血管内視鏡により冠動脈内腔の詳細な構造および性

状が直視的にリアルタイムに得られ,冠動脈硬化の主体

である血栓およびプラークの診断に有用である.血栓は

赤血球主体の赤色血栓,血小板主体の白色血栓,その混

合である混合血栓に分類する.プラークは表面の色調に

より黄色プラークと白色プラークに分類する.黄色プラ

ークは線維性被膜が薄く大きな脂質コア(lipid core)を

有する不安定プラーク(vulnerable plaque)である.黄

色プラークの頻度や程度が強いほど,冠動脈硬化が進行

していることを示す.また冠動脈造影上の狭窄が解離に

よるものか,血栓によるものかの判断が難しい場合,冠

血管内視鏡により血栓の診断を確定できる.血栓が強く

関与している場合は血栓溶解療法を中心とした抗血栓療

法が適応になり,解離が強く関与している場合にはステ

ント留置術が第一選択となる.また経皮的冠動脈形成術

後,冠動脈造影上狭窄度がほとんど解除されたようにみ

えても,血管内視鏡で観察すると内腔に突出物が観察さ

れることがあり,このような場合においてもステント留

置術が有用である.このように従来は影絵であった冠動

脈造影により経験的判断から治療選択がなされてきた

が,冠血管内視鏡により客観的な判断で治療選択が可能

になった.

冠動脈造影法は,虚血性心疾患の診断において最終的

な診断法である.しかし冠動脈造影法は,冠動脈内に充

満された造影剤の影絵の評価のため,冠狭窄の程度は明

らかとなるが,より詳細な病変形態や性状の評価は困難

である.その冠動脈内腔の詳細な構造および性状が,冠

血管内視鏡検査法の登場により直視的にリアルタイムに

得られるようになった.冠血管内視鏡は,特に冠動脈硬

化の主体である血栓およびプラークの診断能に優れてい

る.

冠血管内視鏡は,直視的に冠動脈内腔を観察する装置

として内視鏡ファイバー,誘導カテーテル,本体から構

成される.内視鏡ファイバーは,観察目的部位に光を照

らす照明用ファイバーと得られた画像を本体へ送る画像

用ファイバーからなる519,520).得られる画質の優劣は,

照明用ファイバーを構成する石英ファイバーの本数によ

って決まるが,現在 3,000-6,000本からなるファイバー

が主流である.画像は本体の CCD カメラに送られ,テ

レビモニターに映し出されると同時に S-VHS などの記

録装置に記録される.

冠血管内視鏡システムは,内視鏡ファイバーと誘導カ

テーテルが一体となった一体型システムと,別々になっ

ている分離型システムがある.システムにより構造と使

用法が異なるが,基本概念はどのシステムも同じである

ので代表的な一体型システムの手技を中心に述べる.一

体型冠血管内視鏡システムはモノレール方式になってお

り,経皮的冠動脈形成術バルーンカテーテルと同様に

0.014 inch のガイドワイヤーにそって冠動脈内にシステ

ムを進める.目的部位まで到達すると,冠動脈内を観察

する際に障害となる冠血流を遮断するために先端部のバ

ルーンをインフレーションする.同時に先端より生理食

塩水または低分子デキストランを注入し,冠動脈内腔を

可視化する.

現在,血栓およびプラークの診断基準に統一された基

準はない.血栓に関しては,赤血球主体の赤色血栓,血

小板主体の白色血栓,その混合である混合血栓に分類す

る521).プラークに関しては,表面の色調により黄色プラ

ークと白色プラークに分類する.方向性冠動脈粥腫切除

術(DCA)より得られた切片の研究により冠血管内視

鏡にて観察される黄色プラークは変性した破裂しやすい

プラークと密接に関係している522).黄色プラークは,線

維性被膜が薄く大きな脂質コア(lipid core)を有する不

53

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

血管内視鏡検査XVIII

要 旨

はじめに11

血管内視鏡検査の特質と技術的側面22

血管内視鏡検査の特質A

技術的側面B

慢性虚血性心疾患の診断における血管内視鏡検査の意義

33

判定基準A

安定プラーク(vulnerable plaque)であると考えられる.

冠動脈硬化病変の性状を診断することも冠血管内視鏡

検査法の重要な目的である.1980年代半ば Davies らは,

冠動脈内プラークの破綻を契機に血栓形成が起こり突然

死を含めた心血管イベントが発症することを報告し

た523).1992 年に Fuster は,不安定狭心症および急性心

筋梗塞をプラーク破裂に引き続いて血栓形成がおこるこ

とで発症する疾患群として急性冠症候群(acute coronary

syndrome)という概念を提唱した524).このように心血管

イベントの発症には冠動脈内プラークの性状が重要であ

る.一方,臨床の場では冠動脈内プラークの性状を把握

するのは困難であったが,冠血管内視鏡検査の出現によ

り可能となった.急性冠症候群の責任病変における黄色

プラークは 50-100 % に観察され,労作狭心症が 15-

69 % に観察されるのに対してより高頻度である525-533).

このような結果は,急性冠症候群の発症に黄色プラーク

の関与が強いことを示す.黄色プラークは,冠動脈造影

上有意狭窄を認めない部位にも存在し,急性冠症候群が

冠動脈造影上有意狭窄ではない部位が責任病変になると

いう報告を裏付ける.このことは逆に急性冠症候群の発

症を冠動脈造影では予測することが困難であることを示

唆する.黄色プラークの存在は,冠動脈硬化が存在する

ことを意味し,黄色プラークの頻度や程度が強いほど,

冠動脈硬化が進行していることが推測される.

冠血管内視鏡検査法は経皮的冠動脈インターベンショ

ン治療後の冠動脈内腔の構造的把握に有用である.冠動

脈造影上,血管内膜解離による陰影欠損か,血栓による

陰影欠損かの判断に悩むことがある.解離か血栓でその

後の冠動脈インターベンションに対する対応が異なる.

冠血管内視鏡を行うと血栓は明瞭に検出できる.血栓が

強く関与している場合は,血栓溶解療法を中心とした抗

血栓療法の適応となる.一方,解離が強く関与している

場合には,ステント留置術が第一選択となる.また,冠

動脈造影上狭窄度がほとんど解除されたようにみえて

も,血管内視鏡で観察すると内腔に突出物が存在してい

ることがあり,このような場合もステント留置術が有用

である.このように,従来影絵である冠動脈造影から経

験的判断でおこなわれてきた治療選択を,冠血管内視鏡

を含む心血管イメージングにより客観的な治療選択が可

能となった.

冠動脈インターベンション後の慢性期評価で病変部の

活動度を評価できる.病変部に血栓が付着していれば,

内皮形成が未成熟であり,依然として危険な病変である

ことがわかる.ステント留置後の内膜リモデリングがい

われており,ステント留置より約 6カ月で内膜被覆が完

了し,3年の経過で内膜の修復機転は終了するとされる.

冠動脈造影施行時に冠動脈内圧測定を追加して血流予

備量(fractional flow reserve,FFR)を求めることにより

冠動脈狭窄の機能的重症度を評価でき,評価対象となっ

た冠動脈狭窄が心筋虚血の原因となるか否かの判断がで

きる.FFR には側副血行血流も含めた心筋血流全体を

評価する心筋部分血流予備量(FFRmyo)と側副血行血

流を除いた冠動脈血流を評価する冠動脈部分血流予備量

(FFRcor)がある.FFRmyo が 0.5 であれば最大充血時

に狭窄遠位部の心筋には狭窄のない場合の 50 % しか血

流が供給されない.FFR 値は定量的冠動脈造影や PET

を用いた冠血流予備量と有意に相関する.FFR<0.75 が

機能的に有意であり,虚血の原因となる.この診断基準

は,冠動脈造影上中等度の狭窄で冠動脈造影所見だけで

はその狭窄が有意であるか否かの判断が困難な症例にお

いて,自転車エルゴメータ負荷試験,エルゴメータ負荷

タリウム心筋血流イメージング,ドブタミン負荷心エコ

ー図法等の負荷試験の陽性率と強い相関を示す(感度

90 %,特異度 93 %).冠動脈形成術時の終了点として

FFR が 0.90以上が目安となる.

現在慢性虚血性心疾患の診断の基準となる検査法は冠

動脈造影法とされる.しかしながら同法により得られる

解剖学的情報のみからでは冠動脈疾患の機能的重症度を

完全に評価することは困難であり,何らかの生理学的指

標と組み合わせて冠動脈疾患を評価する必要性が指摘さ

54

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

硬化病変の性状診断B

経皮的冠動脈インターベンションの適応C

治療評価D

冠動脈内圧測定と FFRXIX

要 旨

冠動脈内圧測定の特質と技術的側面11

冠動脈内圧測定の特質A

れてきた.冠動脈内圧は冠動脈造影時に施行できる生理

学的検査として以前より研究されてきたが十分に普及し

てこなかった.それは主に,1)冠動脈のサイズに比較

して圧測定器具(カテーテル)自体のサイズが大きく,

冠動脈狭窄度が増大するにつれてカテーテルの大きさ自

体が圧データそのものに影響を及ぼすためデータの信頼

性が乏しかったこと,2)従来の冠動脈内圧の評価法が

主に冠動脈狭窄前後の安静時の圧較差によるものであ

り,かつ他の血行動態の指標を無視したものであって,

その評価した値が十分な臨床的有用性を示せなかったこ

とによる.しかしながら近年,0.014 インチという細さ

の圧ガイドワイヤーの開発と血流予備量(fractional flow

reserve,FFR)の概念の登場により,上記の問題点が解

決され,冠動脈内圧測定法は冠動脈造影法を生理学的側

面から補完しうる有用な手段となった534).すなわち圧測

定用ガイドワイヤーの登場により,その測定値の信頼性

が向上し,FFR の登場によりその診断的意義が確立さ

れた.FFR には側副血行血流も含めた心筋血流全体を

評価する心筋部分血流予備量(FFRmyo)と側副血行血

流を除いた冠動脈血流を評価する冠動脈部分血流予備量

(FFRcor)があり,前者は(Pd-Pv)/(Pa-Pv),後者は

(Pd-Pw)/(Pa-Pw)の式により求められる535).ここで Pd

は冠動脈狭窄遠位部の最大充血時平均冠動脈圧,Pv は

最大充血時平均中心静脈圧,Pa は大動脈あるいは冠動

脈狭窄近位部の最大充血時平均冠動脈圧,Pw は冠動脈

閉塞中の冠動脈狭窄遠位部の平均冠動脈圧である.一般

に Pv が高くなければ FFRmyo は Pd/Pa にて近似され

る.FFR とは狭窄を有する冠動脈遠位部の最大充血時

血流量を,同じ血管に狭窄がないと仮定した場合に予測

される最大充血時血流量で除してその分画(またはパー

センテージ)として表わすものであり,血圧や心拍数や

心収縮力その他の血行動態指標の変化に左右されない.

また多枝病変症例においても正確に評価できるなどの利

点を有する.術者間,各測定間の測定誤差は小さく,再

現性に優れているのも特徴の一つである536).FFR が

0.75未満であればその病変は機能的に有意であると判断

する.また FFRmyo と FFRcor の差分を計算すれば心筋

への血流供給に対する側副血行血流の寄与度(Qc/

QN=FFRmyo-FFRcor;Qc=側副血行路血流,QN=正

常な最大心筋血流)を定量的に評価できる.

前述したとおり冠動脈内圧測定には圧測定用のガイド

ワイヤーの使用が推奨される.圧測定用のガイドワイヤ

ーには先端に圧センサを備えた圧センサ付きガイドワイ

ヤーとガイドワイヤーの内腔を通して圧波形を記録する

fluid-filled タイプの圧ガイドワイヤーがある.測定され

る圧波形は前者の方が正確であるが,専用モニタが必要

であり,通常の圧トランスデューサに直接接続できると

いう点では後者が便利である.両ガイドワイヤーともに

固さ,操作性ともに通常の経皮的冠動脈インターベンシ

ョンにおける第一選択として十分耐えうる.冠動脈イン

ターベンションあるいは冠動脈造影に熟練した術者であ

れば安全に検査を施行できる.冠動脈内圧測定のために

はまずガイドワイヤーを病変部より遠位部まで先端を通

過させた後に最大充血を誘導し,Pd を測定する.同時

に Pa はガイドカテーテルから,Pv は右心房に留置した

カテーテルより記録する.場合により Pv は割愛できる.

最大充血はパパベリン,ATP(あるいはアデノシン)の

冠動脈内投与,ATP(あるいはアデノシン),ジピリダ

モールの静脈投与により誘導する.所要時間はキャリブ

レーションから最大充血誘導後の経過観察まで数分から

十数分程度である.

FFR の目的として,冠動脈狭窄がその遠位部にある

心筋の虚血の原因となるか否かの診断および血行再建の

必要の有無の判断,冠動脈形成術の生理学的成功度の評

価,側副血行血流の定量化に用いた場合有用性が期待で

きる.

本法の利点として,冠動脈造影施行時に冠動脈内圧測

定を追加して FFR を求めることにより手軽に冠動脈狭

窄の機能的重症度を評価でき,評価対象となった冠動脈

狭窄が心筋虚血の原因となるか否かの判断ができる.圧

ガイドワイヤーをそのままガイドワイヤーとして用いて

冠動脈インターベンションに移行することもできる.従

来冠動脈インターベンション前に施行されてきた様々な

負荷試験を省略でき,かつ診断的冠動脈造影時に必要に

応じてそのまま冠動脈インターベンションを追加でき

る,あるいは不必要な冠動脈インターベンションの施行

を回避できるため,医療的,時間的コストを大きく削減

できる.データの再現性に優れ,術者間,各測定間の測

定誤差が小さい.他の侵襲的検査法とは異なり,血行動

態の変化や他枝病変の有無に左右されずにデータを算出

55

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

技術的側面B

慢性虚血性心疾患の診断における冠動脈内圧測定の意義

22

目 的A

利点と問題点B

できる.側副血行血流を定量的に評価できることなどが

ある537).一方,問題点として,圧ガイドワイヤーの操作

は若干の習熟が必要である.診断カテーテル時に計測で

きるのは FFRmyo のみであり,他の検査法と同様に診

断カテーテル時には FFRcor および Qc は評価できない.

冠動脈内圧測定の結果は(Pd-Pv)/(Pa-Pv)または

(Pd-Pw)/(Pa-Pw)の式により FFRmyo または FFRcor

の値を算出して評価する 538).診断カテーテル時には

FFRmyo のみ求めることができる.FFRmyo は狭窄を有

する冠動脈遠位部の最大充血時心筋血流量の,同じ血管

に狭窄がないと仮定した場合に予測される最大充血時心

筋血流量に対する割合である.例えば FFRmyo の値が

0.5 であるとすれば当該冠動脈の遠位部の心筋には狭窄

のない場合の 50 % しか最大充血時に血流が供給されな

いことを示す.FFR が 0.75 未満であればその病変は機

能的に有意であり,虚血の原因となるため治療の対象と

なる.FFR が 0.75 以上であれば血行再建の必要はない.

また,冠動脈形成術時の終了点として FFR が 0.90 以上

が目安となる.

FFR 値の診断能は他の検査により得られる検査結果

との比較において実証されている.FFR は定量的冠動

脈造影により得られる諸指標と強い相関を示す(r=

0.79~0.82)539).FFR は PET を用いて評価した冠血流予

備量と有意に相関する(FFRmyo: r=0.87,FFRcor: r=

0.86).FFR 値 0.75 未満を陽性とする診断基準は,冠動

脈造影上中等度の冠動脈狭窄を有していて冠動脈造影所

見だけではその狭窄が有意であるか否かの判断が困難な

症例において,自転車エルゴメータ負荷試験,エルゴメ

ータ負荷タリウム心筋血流イメージング,ドブタミン負

荷心エコー図法等の負荷試験の陽性率と強い相関を示す

(感度 90 %,特異度 93 %).45 症例中 24 例において

FFR が 0.75 以上で冠動脈形成術は見送られた症例のう

ち,14 ヵ月の経過観察期間中に新たな冠動脈形成術を

必要とする症例はなかった.FFR が 0.75 以上で冠動脈

形成術を施行せずに 18±13 ヶ月経過観察した 100 症例

においても同様の結果が得られている540).冠動脈形成術

時の FFR が 0.90 以上となった症例においては再狭窄率

が低いことが報告されている541).

ドプラガイドワイヤーを用いることにより心臓カテー

テル検査中に冠血流速を計測することが可能である.安

静時と最大反応充血時を比較することにより,機能的な

冠狭窄度を評価することができる.最大反応性充血は,

パパベリン,アデノシン,ATP,あるいはジピリダモー

ルなどの薬物負荷により冠細小動脈を最大拡張した,薬

物負荷最大充血を用いて行う.微小循環障害がない場合

には,冠血流予備能(coronary flow reserve,CFR)を用

いて機能的狭窄度を評価しうるが,微小循環障害がある

場合には,狭窄のない対照血管の冠予備能と比較した相

対的冠血流予備能(relative CFR,rCFR)を用いて心外

膜側の冠狭窄度を評価する.冠血流速予備能が末梢循環

障害によって左右される性質を利用して,心外膜側の血

管に狭窄のない症例で末梢循環障害の存在も検討されて

いる.さらに,急性心筋梗塞の責任血管の再灌流後の血

流パターンから末梢循環障害を予測し,予後を予測する

ことが可能である.

冠循環においては,冠血流はある範囲で冠灌流圧が変化

してもさまざまな機序により一定になるような自己調節

機序(autoregulation)が働いている.冠動脈は心外膜側

の血管とそれ以下の微小な血管で構成されているが,こ

の微小な血管が冠動脈の抵抗血管として血流の調節を行

っている.心筋酸素消費量が増加すると,その増加につ

れて抵抗血管が拡張し冠灌流が増加する機序が作用して

需給バランスが保たれる.この冠灌流の増加を冠血流予

備能(coronary flow reserve,CFR)とよぶ.健常人では

負荷時に収縮していた抵抗血管が拡張し冠血流量が増加

するが,冠動脈疾患患者では安静時にすでに拡張してい

るために負荷時の冠血流量の増加がない.この冠予備能

が冠狭窄度の増加に伴い低下することが明らかにされ,

健常者では 4.0 程度で微小循環障害がない場合には 40

% 狭窄当たりから低下し始め,75 % 以上の有意狭窄で

は 2.0 未満となる.この性質を用いて冠動脈の狭窄を機

能的に評価する方法である.

56

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

検査により得られる結果とその診断的意義C

冠動脈血流速計測XX

要 旨

はじめに11

冠血流量を測定するカテーテルはあるが,ドプラワイ

ヤーは血流量を測定するのではなく冠血流速を測定して

おり,血管径が一定であれば流量と流速は比例関係とな

ることから最大反応性充血時の平均最大血流(averaged

peak velocity,APV)と安静時の APV の比が CFR とな

る.末梢循環障害がない場合には,CFR は心外膜側の

狭窄度を表すが,微小循環障害がある場合には有意狭窄

がなくても CFR は低下し,必ずしも解剖学的な狭窄度

を反映しない.それゆえ狭窄病変のない対照血管の

CFR と計測血管の CFR の比を用いて相対的冠血流予備

能(relative CFR,rCFR)を計測し,機能的冠狭窄度の

指標とする場合がある.しかし 3枝病変例では機能的狭

窄度を測定できない,あるいは対照血管に微小循環障害

がある場合には評価できないなどの限界がある.

ドプラワイヤーによる血流速の測定には,1)安定し

た血流パターンを得ること,2)薬物による最大血流量

を得ることが必要になる.血流パターンについては,ワ

イヤーの位置でパターンが変化する場合には正確に評価

できないので,常に安定したパターンを得る場所で記録

するようにする.最大血流量を得ることのできる薬物と

しては,アデノシン 3 燐酸(アデホスR),塩酸パパベ

リンなどの薬剤が用いられる.アデノシン 3燐酸は静脈

内投与で使用され,塩酸パパベリンは冠動脈内投与が行

われるが,QT 延長をきたすため,まれに心室性不整脈

が出現することがあり注意を要する.

FFR と同様に,冠動脈狭窄がその遠位部にある心筋

の虚血の原因となるか否かの診断および血行再建の必要

の有無の判断,冠動脈形成術の生理学的成功度の評価,

側副血行血流の定量化に用いた場合などに有用性が期待

できる.

経皮的冠動脈インターベンションのワイヤーとして用

いることができる 0.014 inch のワイヤーであるため操作

が簡便である.また狭窄を超えることなく血流速を記録

できるので狭窄度を評価しやすい.ただ微小循環障害の

有無を常に考慮しておくことが必要である.

通常は CFR が 3.0 以上であるが,2.0 以下になると虚

血が生じる狭窄であると考えられる.経皮的冠動脈イン

ターベンション終了時の効果判定としては,CFR>2.5で

冠狭窄度が 35 % 以下であれば再狭窄率は低率であると

される542).経皮的冠動脈インターベンション後にも冠狭

窄が解除されているにもかかわらず CFR の改善が認め

られない場合には末梢循環障害(心筋肥大,心筋バイア

ビリティの有無)が関与することが考えられる.また冠

血流パターンにより末梢循環障害が推測される.特に急

性心筋梗塞例で冠狭窄を解除した場合には,冠血流速波

形における拡張期波の減衰速度は左室機能回復の程度と

相関し,左室機能の予後予測に有用とされている543).

冠血流計測は冠予備能を測定し虚血を検出することが

可能な上に微小循環を測定しうる有用な手段であるが,

逆に 2つの因子を考慮しなければ結果を解釈できないと

いう欠点もある.したがって,他の手段と組み合わせて

狭窄度,あるいは末梢循環障害を評価する必要がある.

現在,血流量計測可能な圧ワイヤーも臨床使用されるよ

うになり,より簡便な方法で冠循環全体を把握すること

が可能になりつつある.

57

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

冠動脈血流速計測の特質と技術的側面22

冠動脈血流速計測の特質A

技術的側面B

慢性虚血性心疾患の診断における冠動脈血流速計測の意義

33

目 的A

利点と問題点B

検査より得られる結果とその意義C

今後の課題44

慢性虚血性心疾患の病態把握および診断には,心筋虚

血の有無の判断が重要である.重症度判定及び治療戦略

決定のためには各種検査法の適切な選択が必要である.

臨床症状による評価も無視できないが,心筋虚血診断の

ためには目的に応じた検査法を選択する.心筋虚血診断

には運動負荷心電図検査が最も広く使用される.その所

見により,低リスク群,中等度リスク群,高度リスク群

の分類も可能である.高度リスク群では治療をかねる冠

動脈造影検査が優先される.心筋虚血の確定,心筋虚血

の重症度や治療方針の選択のためには負荷心筋血流イメ

ージングや負荷心エコー図法が用いられる.また,これ

らの検査法は心筋生存性(バイアビリティ)の診断にも

使用される.一方,冠攣縮狭心症診断にはホルター心電

図が繁用され,確定診断には冠攣縮の誘発冠動脈造影が

なされる.

慢性虚血性心疾患において,心筋虚血の診断は疾患診

断と病態把握に不可欠である.その対象は,安定労作狭

心症,無症候性心筋虚血,冠攣縮狭心症,心筋梗塞があ

る.それぞれの病態ならびに目的に応じて検査法の選択

が異なる.問診による症状の聴取,胸部 X 線検査,安

静時心電図検査は,一般的検査として病態把握に重要で

ある.近年,治療法の進歩が著しく,その治療法の選択

に心筋虚血診断の定量的ならびに部位診断が必要であ

る.特に,冠動脈狭窄病変に対する経皮的冠動脈インタ

ーベンションや冠動脈バイパス術の適応決定には心筋虚

血の誘発の有無が必要である.心筋虚血診断について,

非侵襲的検査法では,運動負荷心電図検査法が広く使用

されており,診断的ならびに重症度判定に有用な検査法

である.しかし冠動脈罹患部位の同定,無症候性心筋虚

血,心筋梗塞後の心筋バイアビリティや残存虚血,再狭

窄の検出などには限界がある.これらを適切に評価する

には,心エコー図法,心筋血流イメージングが必要であ

る.心筋虚血の重症度が高いハイリスク群には,冠血行

再建術のため冠動脈造影検査が必要である.

一方,冠攣縮狭心症は病態を全く異にする.その診断

にはホルター心電図や冠攣縮誘発試験が必要である.最

近では無症候性の心筋虚血診断の重要性が高まってい

る.今後,心筋虚血の評価を多面的に行うと予想され,

その目的に応じた検査法を十分理解することが望まれる.

1)症 状

狭心症の診断は,患者の話す症状を正確に聴取するこ

とが最も重要な出発点である.病歴の聴取は単に鑑別診

断へのアプローチだけでなく,患者の社会的背景や性格

の把握,患者・医師の信頼関係の形成,インフォームド

コンセントにも重要である.

症候学的には“胸痛”の部位,性質,持続時間,出現

の状況や消失の仕方を聴取する.痛みの性質は“圧迫さ

れる様な”“しぼられる様な””“つまってしまう様な””

“重い感じ”などが典型的である.逆に“さされる様な”

といった鮮明な痛みは稀で,そのような訴えは診断的価

値が低い.持続時間は数分以内であることが多い.労作

で誘発される場合は労作中止後 1-2 分で消失する.30

分以上に及ぶ場合は非虚血性か心筋梗塞への進展を考え

る.

痛みの部位は正中部,胸骨裏面が典型的であるが,狭

心痛は関連痛であり漠然とした部位であることも多い.

また,放散痛が唯一の訴えであることがあり,背中,上

腕,首,喉,歯,後頭部,心窩部等の痛みも狭心症を念

頭に置く.狭心痛の出現は身体的労作や精神的ストレス,

寒冷等によって誘発されるが,速効性硝酸薬の使用にて

1-2分以内に消失する544,545).

狭心症は安定狭心症と不安定狭心症に分類される.不

安定狭心症の病型としては,ACC/AHA guideline の分

類4)や Braunwald の分類などいくつかのものがある.突

58

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

慢性虚血性心疾患の病態と診断目的に基づいた検査計画法

心筋虚血の診断I

要 旨

はじめに11

慢性虚血性心疾患における心筋虚血の診断(冠攣縮狭心症をのぞく)

22

症状と理学的所見A

然死,急性心筋梗塞を発症する危険率が高く病歴聴取に

際して注意を要する.

一方,各種検査法にて一過性心筋虚血が認められても

無症状のことがある(無症候性心筋虚血).とくに高齢

者,糖尿病合併者,心筋梗塞の既往のある者に多い546).

症候性であれ無症候性であれ,一過性心筋虚血の出現に

は日内変動があり,自然発作は午前中と夕方から夜間に

かけて多い547).

2)理学的所見

理学的所見には特記すべき所見のないことが多い.虚

血性心疾患の血行動態を反映した 3 音,4 音の聴取や僧

帽弁逆流性雑音の聴取されることがある.理学的所見は

狭心症を診断する際に確定的でないが,胸痛を伴う他の

鑑別すべき疾患(心筋心膜疾患,肺・胸膜疾患,消化器

疾患等)の除外に大切である.また,高脂血症,高血圧,

糖尿病等の動脈硬化危険因子,末梢動脈疾患の合併の有

無などに理学的所見は必要である4).

本邦においても糖尿病,高脂血症,高血圧,喫煙は 4

大危険因子である.冠動脈危険因子については必ず病歴

で聴取する.若年者(40 歳以下)では性別(男性),虚

血性心疾患の家族歴が重要であり,中高年者では糖尿病

の合併が重要である548-550).

1)標準 12誘導心電図

狭心症状を有する患者に安静時 12 誘導心電図を記録

することは必要であるが,慢性安定狭心症患者の 50 %

以上は正常心電図所見を示す551).したがって,安静時心

電図所見が正常であっても重症冠動脈疾患を除外するこ

とはできない.心筋虚血に一致した ST-T 変化を有する

患者,特に高血圧,高脂血症,糖尿病などの冠危険因子

をもつ患者では,他の検査法による無症候性心筋虚血と

の鑑別が重要である552,553).また,心電図にて左室肥大

を示す例では,ST-T 変化が加わるとその予後はさらに

悪くなるため,冠動脈狭窄病変の有無を調べることが大

切である.

女性や高齢者では,安静時 ST-T 変化は,偽陽性を示

すことが多い.しかし,術前に高齢者に安静時 ST-T 変

化がみられた場合,慎重に対応すべきである554).心室内

伝導障害例においては,安静時 ST-T 変化は覆い隠され,

偽陰性を呈するので注意を要する.

心筋梗塞発症前の安静時心電図で,発症前 1ヶ月以内

に T 波が陰転化した領域は梗塞責任冠動脈を推定させ

る.ST 下降は前壁梗塞例では発症の予測所見であるが,

下壁の梗塞発症では発症と関連しない555).

異常 Q 波は,心筋梗塞既往を示唆し,冠動脈病変部

位に一致する.しかし Ⅲ 誘導のみ,V1,V2 誘導のみ

の Q 波は正常との鑑別が必要である.また Q 波は,心

筋梗塞の経過中に消失(約 15 %),非 Q 波梗塞,R 波増

高不良,左脚ブロックや WPW 症候群による Q 波の見

過ごし,新しい梗塞が古い梗塞の対側に起こる場合での

反衝効果(countrecoup effect)による古い梗塞領域での

Q 波の縮小・消失556),など梗塞による異常 Q 波を修飾

する因子が多くある.病歴や他の非侵襲的検査を参考に

して診断する必要がある.非 Q 波梗塞を含む陳旧性心

筋梗塞の診断,鑑別に,心エコー図法や心筋血流イメー

ジングならびに体表面電位図が有用である.前壁心筋梗

塞後 1-6ヶ月の間に,陰性 U 波が出現したり陰性 T 波

が陽性化する例は,左室壁運動異常の改善を示すことが

多い555).

2)胸部 X 線検査

胸部 X 線は,多くの慢性狭心症患者では正常である.

一方,心筋梗塞既往例や急性心筋梗塞例,ならびに冠動

脈疾患以外の胸痛を伴う心疾患例,心疾患以外の胸部症

状を訴える患者などには,異常所見を認めることが多い.

心陰影の拡大は,心筋梗塞既往,急性左室不全,心膜液

貯留や大動脈弁あるいは僧帽弁閉鎖不全症による慢性容

量負荷が存在することを示す.肺うっ血像の併存は診断

上重要である.

単純胸部 X 線では,冠動脈の石灰化像は検出感度が

低い.透視法により冠動脈石灰化が陽性なら,胸痛を伴

う患者の 94 % に有意狭窄病変が認められる557).しかし

単純 X 線では,感度が 40 % と低い.最近では,マルチ

スライス CT,高速 MRI の進歩により冠動脈狭窄病変,

機能的狭窄度の診断が可能になった.今後,これらは心

筋虚血の診断に有用な手段となろう.

3)運動負荷心電図

我が国では,トレッドミル運動負荷試験やマスター二

階段法が多く行われている.自転車エルゴメータも施行

されている.虚血性心疾患の診断のためのマスター二階

段法は通常ダブル負荷が用いられる.本邦では 0.1 mV

以上の水平型あるいは下降傾斜型の ST 下降と,ST 上

昇が陽性基準として採用されている.0.1 mV の ST 下降

の診断精度は感度 77-85 %,特異度 76-83 % で,トレ

ッドミル運動負荷試験に劣らない.しかし,マスター二

階段法ダブル負荷は 7 METs に相当し,症例によっては

59

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

非侵襲的検査B

過負荷になることがあるので,偶発症予防の観点から十

分に観察が必要である.それ故,虚血性心疾患の確率が

高い場合には運動負荷中の連続心電図記録が可能な運動

負荷法を選択することが望ましい.

本章においては虚血性心疾患の診断に頻繁に用いられ

るトレッドミル運動負荷試験を中心に述べる.

a)運動負荷試験の対象症例

運動負荷試験実施前に試験の意義を患者に説明し,同

意書を取得することが望ましい.運動負荷試験にともな

う偶発事故を予防するためには,患者選択基準を充分に

吟味することが重要である.運動負荷試験の絶対禁忌と

相対禁忌を表 2 に示す.安定労作狭心症の疑診例を対

象として運動負荷試験を行う場合には,患者の年齢,性

別,胸痛の特性,病歴,理学的所見,心電図などに基づ

いて冠動脈疾患の検査前確率(pretest probability)を検

討した上で行うように心がける.本邦ではこの検査前確

率についての報告はないが,欧米においては表 17 のよ

うな報告があり,参考になる558).典型的な労作狭心症の

病像をとる症例では,検査前の疾患予測率が非常に高い

ために運動負荷試験結果がどうであれ,狭心症である確

率は高い.一方,検査前確率が中等度の症例では,運動

負荷試験が診断に大きな影響を与える.運動負荷試験適

応について表 18に示す4).

b)運動負荷試験方法

検査室の装置,備品,環境,および手順については日

本循環器学会・運動に関する診療基準委員会のガイドラ

インが参考になる.

c)検査方法

冠動脈疾患の診断のためには適切に負荷方法を選択す

る必要があり,かつ,適切な心電図記録が必要である.

特に誘導方法の選択が重要であり,12 誘導心電図の同

時記録と血圧の負荷中 1分毎の測定が望ましい.

d)プロトコール

虚血の診断を目的とする運動負荷試験には症例の運動

能に柔軟に対応できるトレッドミル法,あるいは自転車

エルゴメータ法の使用が望まれる.虚血診断の負荷プロ

トコールはトレッドミルではブルース法,エルゴメータ

法では 25 ワット漸増法が多く用いられる.エルゴメー

タでは,トレッドミルに比較して大腿四頭筋疲労のため

に最大酸素摂取量(VO2max)に達する前に運動を中止

してしまうことが多いので,それを勘案して判定する必

要がある.運動負荷を行った場合には使用したプロトコ

ールを記載し,運動耐容能を運動の推定代謝率

(metabolic equivalents,METs)として報告する.

e)運動負荷の終点(表 3)

運動負荷試験は,症例毎の予測最大心拍数の任意に定

めたパーセントに達したときに中止するのが一般的であ

る.虚血の診断のためには胸痛発現などを考慮し,他の

中止基準で終了させる場合もある.すなわち,負荷終点

の決定は,十分な負荷であることと,過負荷にならない

ような症候限界終点を原則とする.目標心拍数で中止す

る場合は,β遮断薬服薬中,心拍数異常,心拍数の過剰

反応などを考慮する.

60

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

表 17 年齢,性別,症状別にみた冠動脈疾患の検査前確率

30~39歳 男 中 等 度 中 等 度 低   い 非常に低い

女 中 等 度 非常に低い 非常に低い 非常に低い

40~49歳 男 高   い 中 等 度 中 等 度 低   い

女 中 等 度 低   い 非常に低い 非常に低い

50~59歳 男 高   い 中 等 度 中 等 度 低   い

女 中 等 度 中 等 度 低   い 非常に低い

60~69歳 男 高   い 中 等 度 中 等 度 低   い

女 高   い 中 等 度 中 等 度 低   い

典型的狭心症 非典型的狭心症年齢(歳) 性別 狭心症確診例 狭心症疑診例 非狭心症性胸痛 症状なし

30歳未満と69歳を超える症例のデータはないが,冠動脈疾患有病率は加齢とともに上昇すると推測される.該当する年代範囲ぎりぎりの症例には確率が<高い>または<低い>ほうにややずれる症例がいる.“高い”は>90 %,“中等度”は10~90 %,“低い”は<10 %,“非常に低い”は<5 %.

f)運動負荷試験の判定

運動負荷試験の判定には,自覚症状,運動耐容能,血

行動態,心電図所見を総合して行う.とくに虚血性胸痛

の有無,運動耐容能異常,収縮期血圧と心拍数の異常反

応などを勘案し,さらには心電図変化に及ぼす修飾因子

を考慮に入れ判定する.虚血性心疾患の診断に用いる運

動負荷試験の指標として ST 偏位が最も価値があると認

められており,これを越える指標はないと米国の AHA/

ACC ガイドラインは報告している1).ST 下降(0.1 mV)

を指標とした場合,虚血診断能は AHA/ACC ガイドラ

インのメタアナリシスでは感度 68 %,特異度 77 % であ

り1),本邦では感度 73-78 %,特異度 67-74 % と大き

な差はない16).なお,我が国では ST 偏位の他に種々の

指標についての研究報告がなされている.

(¡)誘導の選択

一般的に胸部誘導に比し,肢誘導であるⅡ誘導では偽

陽性率が高い.それ故,下壁誘導を加えた誘導よりも

V5 誘導のみで優れた成績が得られる.すなわち,心筋

梗塞既往のない患者で安静時心電図が正常の場合,運動

時 ST 下降が下壁誘導のみにみられる場合,冠動脈疾患

の確率が低いことを勘案して評価する.

(™)ST 変化

ST 変化の陽性は,J 点から 0.06-0.08秒後の ST 部分

が 1 mm 以上の水平型または下降傾斜型の ST 下降ある

いは Q 波のない誘導での ST 上昇とする.下降傾斜型

ST 下降は,水平型 ST 下降よりも冠動脈疾患を強く予

測させるが,両者とも上行傾斜型 ST 下降よりも診断能

が高い.勾配が 1 mV/sec 未満の上行が緩やかな ST 下

降(upsloping pattern)の場合には,冠動脈疾患の確率が

高くなる23).

運動による ST 上昇は,ベースラインの ST レベルよ

り測定するのを基本とする.安静時心電図に陳旧性心筋

梗塞の Q 波がみられる場合の ST 上昇の意義については

壁運動異常,あるいは梗塞領域の残存心筋であるという

解釈があり,一致した見解が得られていない559).このよ

うな症例で ST 下降を伴う場合には,別の領域の虚血,

あるいは ST 上昇に対する対側性変化である可能性が高

い559).

(£)T 波の変化

一般的に ST 変化を伴わない T 波の陰転化は非特異的

所見である.陰性 T 波の陽転化は陳旧性心筋梗塞例に

みられることが多く,心筋虚血と無関係に生じる.しか

61

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

表 18 慢性虚血性心疾患の診断における運動負荷試験への選択基準

ClassⅠ

1) 成人の症例で(完全右脚ブロック,1 mm 未満の安静時 ST 下降患者を含む),性別,年齢,自覚症状に基づいて推定した試験前の冠動脈疾患の確率が中等度である場合(クラスⅡ,クラスⅢに示す例外を除く)

ClassⅡa

1) 冠攣縮狭心症患者

ClassⅡb

1) 年齢,自覚症状,性別から試験前冠動脈疾患の確率が高い症例

2) 年齢,自覚症状,性別から試験前冠動脈疾患の確率が低い症例

3) ベースラインの ST が 1 mm 未満下降しているジゴキシン服用例

4) 左室肥大の心電図所見を示し,ベースラインの ST が 1 mm 未満下降している症例

ClassⅢ

1) 安静時心電図にて以下の異常を示す症例:

●早期興奮症候群(WPW 症候群など)

●電気的心室ペーシング中の症例

●安静時 ST 下降が 1 mm 以上

●完全左脚ブロック

心筋梗塞が証明された症例,または冠動脈造影で有意病変が確認された症例で心筋虚血とリスクについて判定する場合

ClassⅠ:運動負荷試験の有用性,有効性が証明されているか,あるいは有用,有効であると見解が一致している.

ClassⅡa:運動負荷試験が有用,有効である可能性が高い.

ClassⅡb:運動負荷試験の有用性,有効性がそれほど確立されていない.

ClassⅢ:運動負荷試験が有用,有効でなく,ときに有害となる可能性がある.あるいは有害であると見解が一致している.

し,残存心筋虚血が加わっている場合もある560).

(¢)U 波

本邦では運動負荷における U 波の陰転化を判定陽性

基準として採用している施設が多い.陽性基準としては

多くは-0.05 mV 以上としている.陰性 U 波は心筋虚血

の重要な所見であり左前下行枝近位部,あるいは左主幹

部の高度狭窄病変を示唆する所見である561).さらに,運

動負荷回復期に右側胸部誘導の一過性陽性 U 波の増高

も心筋虚血を反映することが報告されている562).

(∞)R 波の変化

R 波が安静時に比し,最大運動負荷時に増高,もしく

は不変を陽性,減高するものを陰性とする判定法があ

る27).運動による R 波高の変化には多くの因子が影響を

与えるので,その変化の診断的意義は少ない.

(§)HR-ST ループ

心拍数を横軸に ST 下降を縦軸下向きにしてプロット

し,運動中から回復期にかけて描かれるループが時計回

転なら真陽性,反時計回転なら偽陽性の確率が高くなる

という ST 変化の判別法である26).しかし,その信頼性

は高くないという報告が多い30).

(¶)軸偏位

運動による左軸偏位は左前下行枝,あるいは前壁中隔

の虚血を反映することが報告されているが563),壁運動異

常によって出現する可能性もある.

(•)コンピュータ処理

運動負荷心電図のコンピュータ処理はフィルタとアベ

レイジングによって波形を再構成するために ST 下降の

偽陽性の原因となりやすい.しかし,これによって診断

能に影響がでるかどうかについてはまだ見解の一致をみ

ていない16).ST 偏位の評価をする際にはコンピュータ

が出力した平均心電図と生データ心電図を比較し判断す

べきである1).

g)負荷試験の結果に影響する因子

(¡)薬 剤

①ジギタリス

ジギタリス服用により運動負荷にて ST 下降が出現

し,その変化は血中濃度に依存する.ジギタリスの効果

が消失するには少なくとも 2週間投薬を中止しなければ

ならないが,診断検査前には必ずしも中止する必要はな

い.ジギタリス服用の有無による診断精度への影響は

AHA/ACC のガイドラインによるメタアナリシスでは,

服用した場合は感度 68 %,特異度 74 %,服用していな

い場合はそれぞれ 72 %,69 % でほとんど差はなかった.

しかし,ジギタリス服用例における ST 下降は虚血性心

疾患の判定基準にはなり得ないとの報告もある一方,

ST/HR スロープとΔST/ΔHR インデックスの組み合わ

せにより,冠動脈疾患の診断が可能であるとの報告もあ

る564).

②β遮断薬

β遮断薬は運動時の最大心拍数に著明な影響を与え,

心拍数の変化が不十分となり診断価値が下がる可能性が

ある.しかし,ルーチンに行う運動負荷試験で,虚血を

示唆する症状がある場合にはβ遮断薬をあえて中断する

リスクをとる必要はない.

③その他の薬剤

降圧薬,血管拡張薬など各種の薬剤により血圧の反応

が変化し,検査結果に影響がでることがある.また硝酸

薬の急性投与により,心筋虚血に伴う狭心症や ST 下降

出現が抑制されることも留意すべきである.

(™)心電図異常

①左脚ブロック

左脚ブロック例には運動による ST 下降が出現する

が,虚血と関連しない.

②右脚ブロック

運動による ST 下降が胸部誘導(V1-V3)において

しばしば出現するが,虚血には関係しない.しかし,左

側胸部誘導(V5 と V6),あるいは下壁誘導に出現する

変化は,虚血の真陽性と考えてよい565).

③再分極異常を伴う左室肥大

左室肥大による心電図異常のために運動負荷試験の特

異度は低下するが,感度は変わらない.それ故,左室肥

大を伴う場合にも運動負荷試験を第一選択とし,異常な

結果を示す症例のみが追加検査の適応となる.

④安静時 ST 下降

安静時 ST 下降は,冠動脈疾患の既往にかかわらず有

害な心イベントの指標とされる.安静時 ST 下降を示す

患者の ST が運動時にさらに下降することは,冠動脈疾

患の感度の高い指標になる.安静時 ST 下降が存在する

62

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

場合の判定基準は水平型あるいは下降傾斜型で安静時の

ST レベルからさらに 0.2 mV 以上の ST 下降が用いられ

ている.

(£)女 性

一般に,無症状の女性のトレッドミル運動負荷試験に

おける ST 下降の診断特異度は高くない.女性には非虚

血性 ST 下降が多く,下壁誘導部位で最大 ST 下降が出

現する場合は偽陰性の徴候である40).

(¢)心筋梗塞後

心筋梗塞後の心筋虚血は梗塞部位と非梗塞部位のいず

れにも生じる.いずれの場合も非 Q 波誘導における ST

下降が判定基準となる.ST 下降基準は狭心症の場合と

同じく水平型および下降傾斜型 0.1 mV の ST 下降とす

る.異常 Q 波の存在する陳旧性心筋梗塞では,負荷心

電図の判定において異常 Q 波誘導の ST 上昇の意義につ

いて心電図のみで判断することは難しい.

4)ホルター心電図

ホルター心電図法は他の諸検査法に比し,患者に負担

を与えることなく日常生活中の心筋虚血の診断,程度,

頻度,好発時間帯などの解析が可能である63).

ホルター心電図は,安静狭心症が最もよい適応である.

安定労作狭心症では診断感度が運動負荷心電図より低

い.その理由はホルター心電図による心筋虚血の診断基

準や性能の信頼性に関する統一した,あるいは推奨でき

る基準が少ないためである.記録中に一過性 ST 下降が

出現したとしてもそれが真の虚血か否かの判定に困難が

伴う.

現在,本邦や欧米における虚血性 ST 下降の陽性基準

は,J 点より 0.08 秒で 0.1 mV 以上で,かつ水平型ある

いは下降傾斜型で 1 分以上持続する ST 下降とし,ST

上昇の陽性基準も 0.1 mV 以上で 1 分以上持続する虚血

性 ST 上昇が推奨されている69).これらに胸痛を伴う場

合は,虚血診断の確度は高くなるが,無症候性 ST 変化

の場合は他の要因で変化していないかを十分検討する必

要がある.陳旧性心筋梗塞の場合は ST 下降の他に,前

述のごとく ST 上昇の解釈も困難であり,虚血性変化の

判別が難しい.それ故,ホルター心電図の適応は運動負

荷が禁忌の症例,あるいは負荷が十分かけられない症例

が対象となる.

5)心エコー図法

a)心筋虚血の心エコー図所見

心エコー図法にて検出される心筋の虚血性変化で,臨

床的に用いられるのは収縮期の壁運動と壁厚増加の異常

である.冠動脈の閉塞直後より収縮期の壁運動と壁厚増

加が低下する566,567).壁運動は隣接する非虚血部分の影

響を受けやすく,収縮期壁厚変化の方がより正確に心筋

虚血の存在とその程度を診断できる.壁運動異常はその

程度により,正常(normokinesis),低収縮(hypokinesis),

無収縮(akinesis),奇異収縮(dyskinesis)に分類される.

心筋虚血は狭心症,無症候性心筋虚血,急性心筋梗塞

の際に生じる.前 2者では壁運動と壁厚増加の異常は一

過性であるが心筋梗塞では持続性である.

一過性の心筋虚血の際にはあらゆる壁運動異常が虚血

の強さに応じて起こる.臨床的には一過性心筋虚血の際

の壁運動異常は低収縮に留まることが多い.心筋梗塞の

壁運動異常は無収縮,奇異収縮が多い.梗塞領域に生存

した心筋がある場合には壁運動異常は低収縮に留まるこ

とが多い.

壁厚増加異常は M モード法で,壁運動異常は M モー

ド法,断層法および組織ドプラ法,color kinesis 法などで

評価される.後 2者はまだ一般的手法とは成り得ていな

い.M モード法はサンプル数が多く時間分解能が高く

壁厚および壁運動の詳細な時相解析に適する.一方,断

層法は多断面から左室を 2次元的に観察でき壁運動異常

の存在と広がりを評価するのに適する.ストレインイメ

ージングは組織ドプラ法と異なり心全体の運動影響が少

なく,より正確な局所運動評価法として期待されている.

断層法を用いた壁運動異常の評価は,一般に肉眼での

観察によりなされる.このため,観察者の主観に左右さ

れやすい.この問題を改善する目的で,客観的,半定量

的,定量的評価法が検討されてきた.壁運動異常の定量

評価法の一つに,左室をセグメントに分割し点数を割り

当て,点数の合計を壁運動スコアとして算出する手法が

ある.セグメント数は 16 分割するアメリカ心エコー図

学会案が代表的である331).

壁運動評価にコンピュータを用いて定量化する試みも

ある.拡張期と収縮期の心内膜をトレースし,両者を重

ね合せて重心点から壁運動の変化率を評価する方法であ

る.しかし,この手法は心臓全体の運動の影響を強く受

け,必ずしも正確な壁運動評価にならない.この欠点を

改善する目的で心血管造影で用いられるセンターライン

法が導入された.これらコンピュータを用いた壁運動評

価法はデータ入力が繁雑なため現在では大半の施設で行

63

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

われていない.

心筋虚血の評価においてはその局在診断が最重要であ

るが,心筋虚血に伴い総体としての左室機能も障害され

る.左室機能障害としては収縮障害と拡張障害があり前

者は M モード及び断層図法で,後者はドプラ法を用い

て評価される.

b)安静時心エコー図法

安静時の心エコー図検査時に,狭心症発作や無症候性

心筋虚血が局所壁運動異常として検出されることは稀で

ある.このため,慢性虚血性心疾患に対する心エコー図

法は,心筋梗塞や他の心疾患の除外目的で行われる.

心筋梗塞では冠動脈の支配領域に局所性の壁運動およ

び壁厚増加の異常がみられる.慢性期になるとエコー輝

度の上昇と心筋壁厚の菲薄化がみられる.近年知られる

ようになった気絶心筋や冬眠心筋などの病態は壁運動異

常に基づいて心筋梗塞の程度を評価することを困難にす

る.急性期には気絶心筋のため心筋梗塞による壁運動異

常の範囲は過大に評価されやすく,慢性期では隣接する

健常心筋の収縮に連結する壁運動のため異常範囲を過小

に評価しやすい.

急性心筋梗塞時の非梗塞領域の健常心筋は,代償性の

機転により壁運動亢進を呈する.このため,健常領域の

心筋が虚血時に壁運動亢進を示さない時は逆に多枝病変

の存在を疑う.

c)負荷心エコー図法

負荷試験は虚血を誘発し,これを検出することにより,

心筋虚血の存在とその広がりを診断する.負荷心エコー

図法は心電図による評価と異なり,虚血による壁運動異

常の存在と強さおよびその広がりを観察できる.異常部

位から冠動脈病変が類推できる.虚血の存在の検出感度

は多枝病変のほうが 1枝病変より高い.また冠動脈狭窄

度が 70 % 以上と以下では検出感度は異なる370,371).心筋梗

塞を有する例では検出感度はさらに高い372).このように

負荷心エコー図法は心筋虚血の存在,分布,程度を評価

して,心臓カテーテル検査の適応を決定できる.また,

冠狭窄病変に対する血行再建術の適応決定にも有用であ

る.

運動または薬剤による負荷心エコー図法の心筋虚血誘

発の有無は予後予測の上で有用とされる.負荷心エコー

図法が陰性の場合,心事故の発生頻度は低い.負荷心エ

コー図法は,通常のトレッドミル検査よりも心筋虚血の

検出に関する特異度が高い.トレッドミル検査で心電図

所見が陽性でも,負荷心エコー図法で異常壁運動が検出

されない例は心事故の発生頻度は低い.一般に負荷心エ

コー図法が陽性の例は予後が不良で,致死性あるいは非

致死性の心事故が起こる可能性が高い.

負荷心エコー図法を用いて心予備能の評価が可能であ

る388).慢性虚血性心疾患においても心筋虚血による心機

能変化が検出できる.壁運動異常を伴う虚血性心疾患の

心機能評価には心臓の形態変化に依存しないドプラ法が

適している389).心筋虚血に伴って左室駆出血流速度およ

び左室流入速度波形の変化が生じる390).しかし,これら

の変化は虚血部の大小だけでなく心拍数,前負荷,後負

荷など種々の因子の影響を受ける.このため,壁運動異

常の検出に比べると直接的な心筋虚血の診断手段とはい

えずその感度も低い.冠動脈病変に対するカテーテル治

療法の普及にともない,負荷心エコー図法は安静時にみ

られる心機能異常の治療後の回復,すなわち

reversibility の判定に目標が変化してきた368).

慢性虚血性心疾患を対象とする負荷心エコー図法にお

いて用いられる負荷手段を表 13 に示す366).運動負荷法

は負荷手段としては生理的であるが,負荷時に呼吸数が

増大するため,診断に必要な全ての断面で良好な心エコ

ー図を短時間に手際よく記録することは容易ではない.

運動終了時から画像描出までの時間が遅れたり,観察可

能なセグメント数が不十分であれば当然診断感度は低下

する568).ペーシング法は手法が繁雑であり患者への侵襲

も軽微とはいえない.このため負荷心エコー図法の負荷

手段としては簡便で再現性の高い薬剤負荷が一般的であ

る.薬剤負荷の手段としてはアドレナリン作動薬または

血管拡張薬が用いられる.血管拡張薬にはジピリダモー

ル,アデノシンがあり,冠盗血現象を利用して心筋虚血

を誘発する.このため,血流分布の不均衡を検出するの

に優れた心筋血流イメージングの負荷手段としては適し

ている.しかし壁運動異常を観察する心エコー図法では

アドレナリン作動薬に比べて感度は低い324,325).

組織ドプラ法も壁運動異常の評価法として負荷心エコ

ー図法に用いられる358).しかし,組織ドプラ法では心全

体の運動や隣接する健常心筋による牽引などの影響を除

外できない.また,心尖部からのアプローチでは心尖部

に近づくに従い運動速度が低下するなどの限界を有す

る.近年導入されたストレインイメージングは前述した

組織ドプラ法の限界を克服可能な新手法とされ今後の成

績が注目される.

6)心臓核医学検査

安定労作狭心症において核医学的に心筋虚血を診断す

る方法としては,心筋血流を反映する放射性医薬品を静

64

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

脈注射し,負荷と安静時の血流イメージを用いて診断す

る方法が中心となる.現在本邦で利用できる放射性医薬

品は Tl-201,および Tc-99m 標識の製剤である MIBI と

tetrofosmin がある.また,直接的に虚血を描画する血流

イメージとは異なるが,虚血の履歴を反映するものとし

て I-123 BMIPP 心筋脂肪酸イメージングあるいは I-123

MIBG 心筋交感神経イメージングも用いられる.

a)心筋血流イメージングによる狭心症の診断

(¡)心筋虚血の診断

血流トレーサである Tl-201および Tc-99m 心筋血流製

剤はその集積機構は異なるが,いずれも血流にほぼ比例

して心筋細胞に集積する.心筋血流イメージングは冠動

脈造影所見からは得られない心筋自体の虚血評価に大き

な意義をもつ.このような観点から,負荷心筋血流イメ

ージングは虚血性心疾患が主たる適応である.加えて,

完全左脚ブロック(ただし心室中隔に集積低下の偽陽性

が出現することがあり注意を要する)や早期興奮症候群

のために心電図評価が困難な症例,ST 下降はあるが心

筋肥大を伴っている症例やジギタリスを服用している症

例,負荷心電図のための運動ができず薬剤負荷心筋

SPECT が望ましい症例,血行再建や再灌流後で虚血の

評価やバイアビリティ評価が必要な症例などが良い適応

となる.

冠動脈狭窄病変に対する経皮的冠動脈インターベンシ

ョンや冠動脈バイパス術の適応決定には,虚血が誘発さ

れるか否かを評価する意味で心筋血流イメージングが重

要な役割を果たす.一般に冠動脈疾患の診断能は冠動脈

造影を基準とすると Tl-201,MIBI,tetrofosmin いずれ

も良好な診断精度を示し155-157,569),ほぼ同等の虚血診断

能を有している.冠動脈疾患の診断における核医学的検

査に関しては,ACC/AHA のガイドラインが 1995 年に

出され570),2003年に改訂されており参考になる571).

(™)無症候性心筋虚血の評価

無症候性心筋虚血は,安定狭心症,不安定狭心症,心

筋梗塞あるいは全く無症状の冠動脈疾患においてもしば

しば認められる病態である.冠動脈形成術や再灌流療法

などの治療後にも問題となる.核医学検査はこのような

心筋虚血の検出においても重要な情報を提供する59,572).

とりわけ無症状にも関わらず虚血を繰り返す症例では,

長時間心電図モニター,運動時の心電図に加え,核医学

的に,心筋血流イメージング,小型のガンマ線計測装置

を胸部におく携帯型持続心機能モニター(VEST)など

を用いて評価されてきた573,574).Cohn の無症候性心筋虚

血の分類のうち,心筋梗塞後や狭心症に無症候性心筋虚

血を合併する群では心筋血流イメージングが施行される

頻度が高い.

(£)治療後の虚血評価

心筋血流イメージングは,心筋梗塞後の虚血の診断や,

再治療のタイミング,以後の治療方針決定に寄与する.

経皮的冠動脈血栓溶解療法(PTCR),経皮的冠動脈形

成術(PTCA)179,575),冠動脈ステント留置術180),冠動脈

バイパス術576,577)による再灌流後の効果判定に,Tl-201,

Tc-99m 製剤ともに有用である.血行再建後の負荷心筋

血流イメージングで再分布あるいは fill-in を認めれば再

狭窄を疑う.ただし,少なくとも 4-6 週後に施行した

方が,再狭窄の感度,特異度ともに向上する.また,日

常臨床では,薬剤治療がどのように心筋血流を改善させ

ているかも調べることができる578).

(¢)虚血重症度の評価

負荷心筋血流イメージングの誘発虚血の部位と大きさ

は,冠動脈血流予備能低下の指標であり,心筋虚血の重

症度を示す.また,多枝病変や,左冠動脈の主幹部や前

下行枝近位などに起こる広範な虚血指標として,肺の

Tl-201 集積増加や一過性の心拡大も利用される158,159).

さらに負荷再分布像での,び慢性の Tl-201 洗いだし低

下も広範な虚血の指標として補助的に用いられる160).一

方,負荷心筋 SPECT 所見において正常と判定されれば,

予後は良好で 1 年以内の心事故発生率が低い161-163).冠

動脈狭窄はあっても実質的に虚血が生じないことを示し

ているものと考えられる.心電図同期 SPECT を負荷心

筋 SPECT に併用すれば負荷後の気絶心筋や心容積の付

加情報が得られ,重症度,予後の層別化にさらに有用で

ある165,166).

b)I-123 BMIPP および I-123 MIBG による虚血の診断

心筋虚血状態では,脂肪酸代謝が安静時血流変化に比

較して障害されやすく,I-123 BMIPP の集積低下が血流

低下よりも高度となる.狭心症では,安静時に心筋血流

異常を認めない場合でも,I-123 BMIPP 集積が低下する

ミスマッチが認められる.特に高度の心筋虚血領域や,

不安定狭心症で高頻度に認められる.I-123 MIBG も心

筋虚血の検出に利用される.重症心筋虚血症例や,虚血

発作を頻回に繰り返す心筋虚血領域を検出できる可能性

がある.

しかし,これら I-123 BMIPP や I-123 MIBG の集積低

下は虚血後の病態として興味深いが,誘発虚血自体の診

65

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

断は心筋血流シンチグラフィが主体となる.負荷が困難

な症例や,急性期,不安定狭心症などの補助診断として

の役割が大きいものと考えられる.

c)今後の課題

慢性虚血性心疾患における心筋血流評価の重要性が認

識されるようになっている.Tl-201,Tc-99m 血流製剤

ともに診断上の価値はほぼ確立されている.とくに Tc-

99m 標識製剤では,物理的特性,投与量,プロトコー

ルの自由度,心電図同期 SPECT 検査といった有利な特

徴があり,QGS(quantitative gated SPECT)プログラム

の普及と相まってルーチン検査として多くの施設で取り

入れられており,治療指針や予後評価への臨床応用が進

められている.さらに,F-18 FDG PET は 2002年から保

険適応となり,PET 装置の普及にともない日常臨床に

おける慢性虚血性心疾患への応用が進み,特にバイアビ

リティ評価に威力を発揮すると期待される.

1)慢性虚血性心疾患の診断における冠動脈造影の意義

慢性虚血性心疾患の診断に際し,症状と種々の非侵襲

的検査法は重要であり心筋虚血領域,重症度などに関す

る必要不可欠な情報をもたらす.しかし,安定労作狭心

症,無症候性心筋虚血の病因である閉塞性冠動脈病変の

存在,その部位,分布,程度,側副血行路の有無の評価,

また頻度は少ないが労作狭心症の原因となる冠動脈攣

縮,冠動脈奇形,川崎病に伴う冠動脈病変の診断にも選

択的冠動脈造影所見がゴールドスタンダードである545).

非侵襲的検査法による情報と冠動脈造影による冠動脈病

変の情報を総合的に評価し,慢性虚血性心疾患の重症度

診断,予後の推定,治療方針の選択,冠血行再建術(経

皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術)の

適応検討が可能となる.

2)冠動脈造影の適応基準

冠動脈造影の適応は,症状,非侵襲的検査所見,合併

疾患の有無,性別,年齢,職業,患者の希望などを総合

的に考慮して決定される.冠動脈造影は以下の場合適応

となる.すなわち,安定狭心症の症状を有するが運動負

荷心電図など非侵襲的検査が施行できない例,臨床症状

と運動負荷試験からハイリスクに属する例,糖尿病患者

など胸痛閾値の障害で無症候性心筋虚血が疑われる

例580),安定狭心症が疑われ職業特性より冠動脈疾患の診

66

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

侵襲的検査:冠動脈造影C

表 19 冠動脈造影の適応 ACC/AHA/ACP-ASIM Chronic Stable Angina Guidelines

ClassⅠ:

1) 心臓突然死(心停止,重症不整脈など)から蘇生された狭心症患者または狭心症が疑われる患者

ClassⅡa:

1) 非侵襲的検査にて診断が確定しない患者で,冠動脈造影による冠動脈疾患の診断の確定が検査に伴うリスクおよびコストを勝る場合.

2) 非侵襲的検査を施行できない患者(例えば慢性閉塞性肺疾患など)

3) 職業の特性により冠動脈疾患の診断が必要な場合(パイロット,消防士,警察官など)

4) 若年者にて症状,非侵襲的検査より非動脈硬化性冠動脈病変が心筋虚血の原因であると推定される例(冠動脈奇形,川崎病,原発性冠動脈解離など)

5) 冠動脈攣縮が疑われ誘発試験が必要な患者

6) 左冠動脈主幹部,3 枝冠動脈病変の可能性が高い患者

ClassⅡb:

1) 胸痛のために入院を繰り返し,確定診断が必要な患者

2) 冠動脈疾患を有する可能性があり確定診断を強く望む患者

ClassⅢ:

1) 冠動脈疾患を有する可能性があるが,冠動脈造影のリスクが検査により得られる利益より高い患者.

2) 冠動脈疾患を有する可能性は低いが確定診断を強く望む患者

ClassⅠ:冠動脈造影の有用性,有効性が証明されているか,あるいは有用,有効であると見解が一致している.

ClassⅡa:冠動脈造影が有用,有効である可能性が高い.

ClassⅡb:冠動脈造影の有用性,有効性がそれほど確立されていない.

ClassⅢ:冠動脈造影が有用,有効でなく,ときに有害となる可能性がある.あるいは有害であると見解が一致している.

断が必要な例581),また心停止や重症不整脈から蘇生され

た患者の多くも冠動脈疾患の診断を明確にし血行再建術

の必要性を判断する目的で必須である582).

女性で非定型的胸痛例では運動負荷試験の偽陽性が多

い583,584).運動負荷心電図が陽性であっても負荷心筋血

流イメージングなどの非侵襲的検査により心筋虚血陰性

なら冠動脈造影を必要としない.ACC/AHA/ACP-ASIM

Chronic Stable Angina Guidelines においては,狭心症が疑

われる例,また冠動脈疾患を有する例において狭心症状

の変化が認められる場合の冠動脈造影の適応が表 19 の

ごとく示されている.

3)冠動脈病変の評価

冠動脈病変を定量的に評価するには,冠動脈造影にて

認められた病変の近傍で造影上正常と判断される部位を

対照として,主要冠動脈枝なら内径 70 % 以上,左冠動

脈主幹部なら内径 50 % 以上の器質的病変を有意病変と

するのが一般的である4).定量的な評価にはエッジディ

テクション法やビデオデンシトメトリー法などが使用さ

れる585).冠動脈病変の評価の詳細については,本ガイド

ラインの別項を参照されたい.

4)冠動脈造影所見による予後推定(表 20)

冠動脈病変の重症度,左室機能は虚血性心疾患患者の

生命予後を規定する主要な因子である.CASS Registry586)

によると 12 年間の生存率(薬剤治療による)は,1 枝

病変群 74 %,2枝病変群 59 %,3枝病変群 40 %,また,

左室駆出率が 50-100 %,35-49 %,35 % 未満の各群

では各々 73 %,54 %,21 % である.また,病変枝数の

他,表 20 に示したごとく病変部位により予後に差が認

められる.特に左前下行枝近位部の高度病変の有無は予

後を左右し,左前下行枝起始部 95 % 以上の病変を含む

3 枝病変群の 5 年生存率は 59 %,左前下行枝起始部病

変のない 3 枝病変群では 79 % である587).左冠動脈主幹

部病変例の長期予後を検討した報告では588),50 % 以上

の左冠動脈主幹部病変を有する群の 15 年の生存率は,

薬剤治療群 27 %,冠動脈バイパス術群 37 %,median

survival は薬剤治療群 6.6 年,冠動脈バイパス術群 13.3

年であった.

本邦における検討では,薬剤により治療された冠動脈

疾患患者の 5年生存率が,1枝病変群 94 %,2枝病変群

88 %,3枝病変群 84 %,3枝病変 and/or 左冠動脈主幹部病

変を有し左室駆出率 50 % 未満群では 64 % であり589),

欧米に比較すると心事故の発生率は低い.また,1 枝病

変群590),2 枝病変群591)における検討では,5 年の event-

free survival rate は 1枝病変群 96.0 %,2枝病変群 94.5 %

であり,低左室駆出率(40 % 以下)は予後を悪化させ

るが,左前下行枝病変の有無により予後に有意差は認め

られなかった.

冠攣縮は欧米人に比較して日本人に多いとされ,邦人

研究者によって精力的に研究されている.本邦では抗狭

心症薬としてカルシウム拮抗薬の使用頻度が欧米に比し

極めて高いのも,冠攣縮の関与が多いとされることが一

因と考えられる.主に邦人の成績をもとに冠攣縮の診断

における各種検査の意義を概説する.

朝方や夜間の安静時胸痛が特徴的である.飲酒翌朝や,

環境温度の急激な低下により発作がおこり易い.失神を

来した既往歴のある例では右冠動脈近位部攣縮が多くみ

られる592).稀に家族性の例がある.急性心筋梗塞例にお

ける冠攣縮の関与は 20-30 % と考えられる593).

冠攣縮狭心症に特徴的な理学的所見は報告されていな

い.有意な危険因子として喫煙,男性があり,器質的狭

窄に証明される高脂血症や糖尿病などは胸痛症候群や対

照群と変わらない.喫煙はほとんどの報告で有意な危険

因子とされる594).米国の検討でも喫煙は 36-41 歳の閉

経前女性における冠攣縮の強力な危険因子と報告されて

いる595).eNOS 遺伝子のプロモーター領域の活性を低下

させる変異が冠攣縮例で有意に多く観察される596).失感

情症(alexithymia)は独立の危険因子とされる 597).

67

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

表 20 冠動脈病変による予後推定(薬物治療による)(文献 10より改変)

1 枝病変,75 % 93

1 枝病変,≧95 % 91

2 枝病変,75 % 88

2 枝病変,2 枝共≧95 % 86

1 枝病変,左前下行枝近位部≧95 % 83

2 枝病変,左前下行枝≧95 % 83

2 枝病変,左前下行枝近位部≧95 % 79

3 枝病変,≧75 % 79

3 枝病変,1枝以上≧95 % 73

3 枝病変,左前下行枝近位部75 % 67

3 枝病変,左前下行枝近位部≧95 % 59

冠動脈病変重症度 5 年生存率(%)

冠攣縮狭心症における心筋虚血の診断33

症状,危険因子A

HLA-DR2 は有意に冠攣縮に関与している598).アンジオ

テンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型中 DD タイプの

頻度は冠攣縮症例で有意に多い599).酸化ストレス関連遺

伝子パラオキソナーゼ(PON I)の Gln192Arg 多型が冠

攣縮例に頻度が高いことも報告されている600).

1)標準 12誘導心電図

発作部位に応じた誘導の発作時 ST 上昇が典型的で,

異型狭心症の呼称がある.このような例では 50 % 以上

の冠動脈狭窄を伴う例が有意に多いが,ST 上昇の有無

は病態を異にするものではなく601),貫壁性虚血の有無や

冠動脈支配領域に応じST 下降型と分かれると考えられる.

2)ホルター心電図

無症候性冠攣縮の存在を考えると,最も有意義な検査

である.虚血の持続が 5分以上のものは胸痛を伴いやす

い.ST 変化を来す冠攣縮のうち胸痛を伴うものは 20-

30 % とされる602).発作時重症不整脈の存在は予後に関

連する603).

3)心エコー図法

心疾患の合併の有無を検査する目的で施行される.非

発作時に冠攣縮を推定しうるものではない.発作時や心

筋梗塞合併例では当該部位の壁運動異常がみられる.肥

大型心筋症では冠攣縮合併が多いとされる604).

4)心臓核医学検査

過呼吸負荷心筋血流イメージングが過呼吸負荷心電図

より感度が高い.I-123 BMIPP は冠攣縮の検出に有用で

ある263-266).冠攣縮による心筋虚血の既往を捉えること

ができ,また治療後の経過観察にも役立つ.

5)冠動脈造影検査

器質的冠動脈狭窄合併の有無を検討する上で,必須の

検査といえる.高度器質的狭窄合併例では心筋梗塞発症

が多い605).突然死例は器質的狭窄のない群で多い605).不

整脈の合併は器質的狭窄の有無に無関係とされる605).予

後の悪いとされる多枝攣縮誘発例は器質的狭窄のない例

で多い509,603).

非発作時の検査所見では正常像を示すものが多く,各

種誘発法が考案されている.殊に失神や重症不整脈の合

併が危惧されるものでは,緊急事態に対する十分な配慮

が必要である.

1)過呼吸負荷試験

1 分間 30 回程度の過換気を数分行なうことで冠攣縮

を誘発できる606).感度は 62 % 程度だが特異度は 100 %

と報告されている607).

2)寒冷負荷試験

冷水中に 2-3 分間手をつけることで冠攣縮誘発を行

うことができる.しかし感度は過呼吸負荷の 1/3程度と

低い608).

3)運動負荷試験

トレッドミル,エルゴメータ,マスター等の負荷が行

なわれる.器質的狭窄のない冠攣縮症例での負荷陽性率

は運動負荷の施行時間や病勢により大きく異なる.本症

の狭心発作は早朝で誘発されやすく,午後では誘発され

にくい508).また狭心発作の活動期には誘発されやすく,

寛解期には誘発されにくい.

4)薬剤負荷試験

侵襲的に薬剤を冠動脈内注入して行なう攣縮誘発は,

診断における感度の点で突出しており現段階で最も信頼

しうる診断法である.現在国内で臨床的に使用可能な 2

薬剤について述べる.国内においてエルゴノビンはより

作用持続時間の短いアセチルコリンに取って代わられつ

つあるが,感度,特異度はより高いとされる.また,一

時ペーシングなしで施行可能である.このため非侵襲検

査の誘発剤として使用されることがあるが,安全性の点

で未解決である609,610).薬剤作用時間がやや長く,一側

冠動脈で攣縮誘発を観察した場合,他側の枝の誘発試験

よりも安全面から硝酸薬注入を優先せざるを得ないこと

が多い.

一方,アセチルコリン611)は冠動脈内注入により冠内

皮障害例で攣縮誘発が可能であり,正常内皮部では冠拡

張が観察される.作用時間が短いため,多枝冠攣縮の診

断,安全性の面で優れ,多くの施設で使用されている.

感度は 80-90 % とされる.右冠動脈は 20,50 μg,左

冠動脈で 20,50,100μg を使用するのが標準的である.

右冠動脈については 80 μg が必要でさらにエルゴノビ

ンを追加使用する報告もある611).アセチルコリンは負荷

時房室ブロックを出現させるため,全例一時ペーシング

をする必要がある.

68

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

検査所見B

誘発試験C

以上をまとめると,心筋虚血診断のためのフローチャ

ートは図 2のようになる.

69

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

心筋虚血診断のフローチャート44

*過呼吸  寒冷昇圧試験

冠危険因子を有する患者

無症状 非典型的胸痛 典型的胸痛

標準12誘導心電図 胸部 X 線検査 心エコー図検査など

運動負荷試験 運動負荷試験

陰性

陰性

陽性

陽性

陽性

負荷心筋血流イメージ 負荷心エコー図検査

負荷心筋血流イメージ 負荷心エコー図検査

観察 内科的治療 冠血行再建術

内科的治療 観察

冠動脈造影検査

冠動脈造影検査

ホルター心電図 冠攣縮誘発試験*

冠動脈造影検査 冠攣縮誘発試験(薬剤)

内科的治療

冠攣縮性狭心症の疑い

陰性

陰性

陽性

陽性

陰性

陰性

図 2 心筋虚血の診断手順

虚血性心疾患の診断,治療,予後予測において冠動脈

病変の評価は重要である.冠動脈造影がゴールドスタン

ダードとされていた時代においては,冠動脈の狭窄度を

形態的あるいは機能的に評価することが重要であった

が,虚血性心疾患の予後を規定する急性冠症候群の原因

となる不安定プラークが狭窄度とは関係なく存在するこ

とが明らかになり,虚血の評価だけでなく不安定プラー

クを同定することも重要となっている.冠動脈造影では

不安定プラークの同定ができないため,血管内超音波法

や血管内視鏡検査での血管イメージングはより正確な冠

動脈狭窄の形態的評価だけでなく,不安定プラークの検

出にも期待されるようになっている.一方,非侵襲的検

査においても最近のマルチスライス CT や ナビゲータ

ー・エコー法による呼吸同期法を用いた 3D 法 MRA467)

により冠動脈造影とほぼ同等なレベルにまで診断が可能

になりつつある.さらに,狭窄度だけでなく,プラーク

の性状をも明らかにしようとする試みがなされ,将来的

にはスクリーニング検査として期待されている.しかし,

慢性虚血性心疾患の治療に際しては,虚血の評価も重要

で,冠動脈造影はその評価のゴールドスタンダードであ

るが,形態的な評価だけでなく非侵襲的検査法である心

エコー・ドプラ,MRI や侵襲的なフローワイヤーや圧ワ

イヤーを用いた機能的評価が必要である.ただ,絶対的

な評価法がない現時点では,冠動脈狭窄度の評価に際し

て 1つの方法で決定するのではなく,他の虚血所見を考

慮した評価が望まれる.

虚血性心疾患は,長年にわたり徐々に進行する動脈硬

化ならびにこれを修飾する急激な冠動脈血栓の形成によ

り,狭心症や心筋梗塞として発症する.冠動脈病変の進

行と症状の出現とは必ずしも一致しない.冠動脈狭窄が

進行しても,冠動脈には需要に見合う血流を供給し得る

自己調節機序がある.狭窄度が進行してその機序が破綻

した時点で初めて狭心症状が出現する153).また心筋梗塞

は狭窄度がより軽度の病変から発症することが明らかに

された612).以上のような症状と病変の不一致はあるが,

冠動脈狭窄度を評価することは,症状が虚血性心疾患に

よるものであることを診断し,重症度を評価して,血行

再建を含めた治療方針を決定する上で必須である.

1957年,選択的冠動脈造影検査が行われて以来492,493),

冠動脈造影は冠動脈狭窄度決定のゴールドスタンダード

となった.最近は,マルチスライス CT,心臓超音波検

査や MRI でも冠動脈狭窄度の評価が可能である.侵襲

的検査では,血管内イメージング法の進歩に伴い,動脈

硬化の過程で血管内のプラークが増加するにつれて血管

内腔を保つように血管径が外側へ拡大する血管リモデリ

ングが明らかにされた517).血管内腔を評価する冠動脈造

影では,このような病変を評価できないことが知られて

いる444).さらに,血管内超音波法や血管内視鏡検査によ

る動脈硬化病変の観察はその病変の性状を決定し,急性

冠症候群の発症予測を可能にする.形態学的な冠動脈狭

窄の評価で症状を説明できない中等度病変に対しては,

機能的に冠動脈狭窄度を評価するフローワイヤー613)や

圧ワイヤー535)が行われる.

安定労作狭心症と無症候性心筋虚血614-617)では,有症

候性,無症候性に関わらず一定の労作で虚血所見が生じ

る.本項では病態の進行のない虚血性心疾患患者でかつ

心筋梗塞の既往のない症例の冠動脈狭窄度の評価法につ

いて述べる.

症状の安定している患者においては,負荷心電図にて

虚血性 ST-T 変化の出現を認めること,負荷心エコー図

法にて壁運動低下の出現を認めること,心筋血流イメー

ジングで血流低下を認めること,などが心筋虚血の客観

的指標となる.次のステップとして冠動脈狭窄度の評価

が必要となる.

1)冠動脈MRA

冠動脈 MRA は,最近の技術革新により狭窄・閉塞病

変の検出の他,経皮的冠動脈インターベンション後の再

狭窄検出,冠動脈バイパスグラフト狭窄の診断などを含

めた冠動脈病変の評価に有用である.MRA は造影剤が

不要で放射線被曝がない大きな利点を有しているが,狭

窄病変のスクリーニングに用いるには,空間分解能が不

70

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

冠動脈病変の評価II

要 旨

はじめに11

慢性虚血性心疾患における冠動脈狭窄の評価22

狭窄度評価の対象A

非侵襲的冠動脈評価B

十分なこと,近位部のみの評価に限られること,冠動脈

ステント内腔の評価が困難なことなど多くの課題があ

る.ただしハードウェアやパルスシーケンスの改良が重

ねられており,冠動脈造影に代わる非侵襲的検査法とし

ての役割を担うことが予想される.虚血性心疾患患者を

対象とした冠動脈 MRA における冠動脈閉塞・狭窄検出

率には,以前よりさまざまな報告があり,40-90 % と

かなりのばらつきがある474-476,480-484).これには,各々撮

像装置や撮像方法,あるいは対象とする冠動脈のセグメ

ントが異なることなどが関与していると推測される.最

近,同一機種と同一撮像法(呼吸同期を併用した 3次元

高速グラディエントエコー法)を用いた欧米での多施設

共同研究が行われ,109 例での結果が報告されている

が488),50 % 以上狭窄の有無について冠動脈造影と比較

した結果,全体の正確度が 72 % であった.このうち左

主幹部と 3枝病変に対する結果は特に良好であり,臨床

応用が可能との結論が得られている.本邦からの最近の

報告477)では,呼吸同期併用 3 次元高速グラディエント

エコー法を用いた検討で,50 % 以上狭窄に対する診断

能は,感度 80 %,特異度 85 %,正確度 84 % であった.

また定常状態系列とパラレルイメージングを併用した呼

吸停止下 3次元法では,50 % 以上狭窄に対し感度 75 %,

特異度 86 %,正確度 83 % との成績が得られている478).

負荷心筋灌流 MRI による冠動脈狭窄度を,冠動脈造

影を基準に評価した検討によると,MRI は優れた冠動

脈病変診断感度(89.6 %)と特異度(85.2 %)を示す469).

負荷心筋灌流 MRI による冠動脈狭窄病変診断能は負荷

心筋 SPECT より有意に高く,負荷心筋血流 PET とほぼ

同等である470)ことから,冠動脈 MRA を組み込むこと

で,虚血性心疾患に必要な情報を一回の検査で得ること

も可能となり,診断精度がさらに高まると期待される.

2)心エコー図法の利用

冠動脈病変を評価する上で心エコー図法を利用するに

は,負荷心エコー図法,冠動脈血流エコーイメージング,

心筋コントラストエコー法がある.負荷心エコー図法に

は薬剤負荷(ドブタミン,ジピリダモール,アデノシン,

ニトログリセリン)と運動負荷がある.薬剤負荷心エコ

ー図法ではドブタミンがよく用いられる.

a)ドブタミン負荷心エコー図法

ドブタミンを 5 μg/kg/分から始めて点滴静注し,3-5

分ごとに 10,20,30,40 μg/kg/分と段階的に増量し,

負荷前,低用量(10 μg/kg/分まで),最高用量,負荷

終了後の心エコー図を多断面で記録し,これを分画表示

により負荷前の心エコー図と同時表示することにより壁

運動の変化を判定するものである.負荷終点は年齢に応

じた目標心拍数への到達と胸痛や不整脈の出現である.

ドブタミンを最高用量まで負荷しても目標心拍数に達し

ない時は 0.25 mg のアトロピンを 1 分ごとに最高 1 mg

までボーラス静脈注入で追加する方法もある.一般に安

静時の壁運動と比較して最大負荷時に壁運動が低下した

場合を虚血陽性とする.冠動脈の有意狭窄の診断能は感

度 72-89 %,特異度 77-95 % である618,619).また,本

法と運動負荷心筋血流イメージングを比較した報告で

は,負荷心エコー図法が感度 76 %,特異度 81 % と,心

筋血流イメージングの感度 85 %,特異度 71 % に比べ特

異度の高いことが特徴である620).ドブタミン負荷心エコ

ー図法はコストが低く,病室で検査が可能,放射線被曝

がないことが利点であるが,検者の技術的訓練が必要,

体格等により画像が不良な例があることが欠点である.

検査の禁忌としては急性心筋梗塞(≦4-10 日),不安

定狭心症,左主幹部病変のある例,明らかな心不全,重

症の頻拍性不整脈,重症弁狭窄,肥大型閉塞性心筋症,

急性心膜・心筋炎,心内膜炎,大動脈解離,急性肺塞栓

症である.

b)運動負荷心エコー図法

運動負荷法としてエルゴメータを使用するには,負荷

中と負荷後の心エコー図を記録する.トレッドミルを使

用する場合には,運動終了後ただちに患者を左側臥位と

し,心エコー図を記録する.記録された心エコー図は比

較し易いように,心時相を一致させ,負荷前,負荷中,

負荷後を同一画面中に並列表示し,局所的な壁運動の低

下を検出する.運動負荷心エコー図法の診断能は感度

71-97 %,特異度 64-100 % である621,622).本法と運動負

荷血流イメージングを比較した報告では,運動負荷心エ

コー図法の場合感度 80 %,特異度 91 % で,運動負荷血流

イメージングの場合感度 84 %,特異度 83 % となり,運

動負荷心エコー図法は特異度が高かった620).なお,本法

の適応,合併症,禁忌は通常の運動負荷心電図に準ずる.

c)冠動脈血流カラーおよびパルスドプラ法

カラードプラ法およびパルスドプラ法による冠動脈血

流測定は経胸壁的にも経食道的にも行われる.経胸壁法

による初期の研究では測定部位は左前下行枝近位部に限

られ,その描出率も 65 % と低かったが623),装置の進歩

により最近では描出率や描出範囲も向上している624).冠

動脈狭窄例では,正常にみられる流速の拡張期優位性は

失われ,心周期全体を通じて低速血流が持続する特有な

71

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

波形をとる.

アデノシン負荷による冠血流予備能の測定では,冠動

脈の狭窄度が 50 % 程度の軽度例の診断にも有用であ

る.また冠動脈病変の検出のみならず心筋微小循環障害

の診断にも有用である.経食道エコー法を使用すると左

冠動脈主幹部から左前下行枝近位部,時に回旋枝や右冠

動脈近位部の血流を描出でき,経胸壁法と同様に冠動脈

病変の検出に役立つ.

d)心筋コントラストエコー法

経静脈性心筋コントラストエコー法は経静脈性超音波

造影剤ならびにハーモニックイメージを基礎とした様々

なイメージング法を使用することにより,経胸壁から心

筋微小循環を評価し様々な病態診断を目的にした方法で

ある.虚血の評価には,薬剤負荷または運動負荷を必要

とするもののシンチグラムとほぼ同等の虚血評価ができ

ると報告されている421,422).運動負荷心エコー図法の施

行時には心筋コントラストエコー法を併用することで発

生する壁運動異常の評価と心筋灌流の低下を同時に観察

することが可能であり,より確実に虚血部位の診断が可

能であるとする報告もある423).さらには虚血によって生

じる心内膜下の心筋灌流異常の評価が可能であるとする

報告もされている424).

3)X 線 CT

a)電子ビーム CT

超高速スキャン(50-100 msec)の電子ビーム CT

(EBT)による冠動脈石灰化の定量化に関する研究は多

い.総石灰化指数の高い症例の冠動脈有意狭窄の検出率

は高いが426),限局した粥腫内の石灰化と内腔の狭窄の関

係は不明確である.剖検による部位ごとの比較では,石

灰化の量と粥腫の面積に相関はあるが625),血管リモデリ

ングの影響で石灰化の量と内腔面積は相関しないとされ

る436).老年者では虚血の原因となる冠動脈病変に関連が

少ない Monckeberg 型中膜石灰化が共存することもある

ので,両者の形態的鑑別診断が望まれる626).

EBT を用いた冠動脈狭窄度の評価は,CT 値の設定に

より過大評価や過小評価が生じる.3 次元技術の一つで

ある volume rendering 法は各 CT 値の不透明度をカラー

表示する技術である.EBT との併用により,造影剤の

血管内腔イメージとは異なる動脈壁,粥状硬化の石灰化,

脂質コア,線維性被膜などの 3 次元画像表示ができる.

不安定プラークの非侵襲的な定性的検出に役立つと考え

られる627,628).

b)マルチスライス CT

マルチスライス CT(MSCT)により冠動脈内腔狭窄

評価,冠動脈ステント内開存度の評価,冠動脈バイパス

グラフトおよび吻合部以降の開存度評価が可能となった

だけでなく,冠動脈非石灰化プラークの検出や冠動脈

outward remodeling の評価など冠動脈病変の評価も可能

になった.しかし,放射線被爆のため病変の評価として

のスクリーニング検査には問題がある.また心房細動な

どの不整脈がある場合,石灰化の高度な病変の評価には

用いることができないなどの限界はあるものの,今後は

冠動脈造影に代わりうる可能性がある.冠動脈内腔の有

意狭窄を評価する目的において,MSCT による血管造影

法は冠動脈造影を比較対照とすると,感度 92-95 %,特

異度 86-93 % と報告されている440,441).16 列 MSCT を

用いた冠動脈ステント内開存度の評価の報告450)はある

が,正確な評価はできない.4列MSCT を用いた検討で

は,さまざまな動脈,静脈グラフトの開存度が評価455,456)

され,評価する心位相を工夫することで 94-95 % の精

度が得られている.現在は 16 列 MSCT が主流であり,

撮像速度,撮像範囲が改善し容易に撮影が可能であり,

無病正診率(陰性的中度)は 95 % 以上であるとの報告

もされている.冠動脈非石灰化プラークについては,16

列 1 mm 未満のスライス厚で撮影された MSCT の報告

では,非石灰化プラークの検出を血管内超音波法と比較

すると感度 78 %,特異度 87 % であり,石灰化の全くな

い非石灰化のみのプラークの検出感度はわずか 53 % で

あったが,近位部に限ると感度 91 %,特異度 89 % と

MSCT による非石灰化プラークの検出能は良好であっ

た446).また,冠動脈造影と異なり CT は血管壁も評価で

きるため,血管内腔に加えて血管外径の測定も可能であ

り,石灰化プラークがあった部位の血管外径が近位部の

正常部位より大きくなっている outward remodeling の画

像化も可能である458).また outward remodeling だけでな

く negative remodeling に関しても,血管内超音波法の

remodeling index との高い相関がある629).画像の関心領

域の CT 値をカラーマップで色分けしてプラークの性状

診断を行うプラークマップという方法で同定された冠動

脈インターベンション後の急性冠症候群患者のソフトプ

ラーク,インターメディエイトプラーク,石灰化プラー

クの血管内超音波法に対する感度がそれぞれ 92 %,87

%,89 % であり,ソフトプラークの血管内視鏡検査の

黄色プラークに対する感度が 80 %,87 % であったと報

告されている630).急性冠症候群におけるソフトプラーク

の臨床例についての報告もあり631),MSCT の臨床例での

適応拡大が期待される.

72

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

非侵襲的検査法で冠動脈狭窄度の評価が可能となりつ

つあるが,冠動脈狭窄度の評価のゴールドスタンダード

は依然として冠動脈造影である.冠動脈造影における狭

窄度の評価は,従来 AHA 分類の視覚的判定により行わ

れてきた.この方法は客観的評価が困難であるため,最

近ではエッジディテクション法やビデオデンシトメトリ

ー法などの定量的計測が行われる498).従来の AHA 分類

の 75 % を有意狭窄とする基準は心筋虚血の原因となる

狭窄を判定する上で有用である.しかし,冠動脈インタ

ーベンションの前後の評価,遠隔期に致る変化,あるい

は薬剤による介入試験における効果の判定,など同一症

例での経時的な変化をみるには定量的評価が必須であ

る632).

虚血所見が確認されていて冠動脈造影にて狭窄病変が

みられた症例では,冠動脈造影の定量的な狭窄度の評価

を行って問題ない.しかし,狭心痛などの症状と客観的

な心筋虚血所見が一致しない症例では,他の方法による

冠動脈狭窄度の評価が必要となる.この際,血管内超音

波法や血管内視鏡検査など形態的評価では十分でないの

で,ドプラワイヤー法613)や圧ワイヤー法535)を用いた機

能的評価が必要となる.この際注意すべきは,心筋肥大

や糖尿病など微小循環障害をもつ症例に適応しないこと

である.

心筋梗塞例における冠動脈狭窄の評価においては,心

筋梗塞領域の残存心筋の有無,非梗塞領域における虚血

の有無,左心機能が重要となる633,634).狭心症状がある

場合には,梗塞領域と非梗塞領域のそれぞれでの冠動脈

狭窄度の評価が必要である.ただ,心筋梗塞患者では無

症候性虚血が多いため,客観的虚血所見の有無が重要と

なる.また,左室駆出率が 40 % 未満の低左心機能例で

は予後予測のために冠動脈狭窄度の評価は必須である.

非梗塞領域における冠動脈狭窄病変の評価は,先に述

べた安定型虚血性心疾患と同様に行える.しかし,梗塞

領域の虚血評価においては心筋内微小循環障害が冠予備

能を修飾するので,機能評価法では診断を誤る.したが

って,冠動脈の形態的評価を用いて行われる.非侵襲的

検査としては MRA,MSCT が用いられる.また,侵襲

的評価法としては冠動脈造影,血管内超音波法,血管内

視鏡検査が用いられる.とくに,血管内超音波法は梗塞

責任部位にプラークの破裂像を検出できる付加的意義が

あり,また血管内視鏡検査では黄色プラークや血栓を認

めることで不安定病巣を診断できる635).

経皮的冠動脈形成術に伴うデバイスの選択,エンドポ

イントの決定,治療効果の判定には侵襲的冠動脈狭窄度

の評価が必須である.

1)デバイスの選択

経皮的冠動脈インターベンションに使用するバルーン

のサイズを決定するには,病変を囲む正常部位の血管径

を冠動脈造影で定量的に測定することが必須である.冠

動脈造影では明らかでない石灰化も血管内超音波法を使

用することにより検出可能である.その石灰化の程度で

デバイスの選択が決定される514,515).

2)エンドポイントの決定

バルーンによる拡大で冠動脈狭窄の軽減が認められて

も定量的に狭窄度が 35 % 以上であれば再狭窄を起こす

率が高い.また,冠動脈造影で 35 % 未満であっても,

血管内超音波法で内腔が十分確保されていない場合,圧

ワイヤーで FFR myo が 0.8 未満636),ドプラワイヤーで

計測した冠予備能が低値である場合542),再狭窄を起こす

率が高い.不十分な拡大で終了した場合にはステント留

置術の追加がなされる.

3)治療効果の判定

経皮的冠動脈インターベンション治療の 3-6 ヶ月後

に施行される冠動脈造影にて狭窄度の定量的計測が必要

である.再狭窄防止のための薬剤効果の判定,ステント

留置術による再狭窄防止効果の判定にも必須である.

これまでの冠動脈硬化病変は,心筋虚血との関連から

意味付けられてきた.しかし,血管リモデリングが病理

所見で,ついで生体でも血管内超音波法にて明らかにさ

れ517,444),一見正常にみえる血管でも動脈硬化がすでに

生じていることが示された.また,冠動脈造影は正常で

も,血管内視鏡検査では破綻の危険がある黄色プラーク

が存在する637).特に心筋梗塞の既往がある患者では不安

定プラークが多く認められることが報告され638),このよ

73

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

侵襲的冠動脈評価C

心筋梗塞例における冠動脈狭窄の評価33

狭窄度評価の対象A

冠動脈狭窄度の評価法B

インターベンションに伴う冠動脈狭窄度評価C

軽度狭窄病変の評価D

うな患者は vulnerable patient(不安定プラークをもつ患

者)と呼ばれ,再発の危険が高い639).今後,慢性冠動脈

疾患において急性冠症候群の発症を予防するには,これ

らの血管内イメージングを用いた評価が必要になるであ

ろう.さらに非侵襲的に vulnerable patient を同定するに

は MSCT あるいは MRA に期待されるところが大きい

と考えられる.

心筋バイアビリティとは心筋梗塞や高度の心筋虚血に

よって心筋収縮力が消失ないし低下しても,何らかの方

法によって虚血部の心筋に再灌流が行なわれれば,心筋

が生存できる性質をいう.バイアビリティに関しては冬

眠心筋(ハイバネーション)と気絶心筋(スタニング)

の 2つの病態が問題になり,単独で存在または共存して

いる.冬眠心筋は強い血流低下にさらされながらも収縮

をなくして壊死を免れている心筋で,気絶心筋は強い虚

血にさらされたあと虚血が解消された状態で,ともに心

筋細胞の正常な収縮性は欠如しているが代謝活性を含め

細胞膜は健全性を残す.収縮力の障害は侵襲的あるいは

非侵襲的な検査で証明される.気絶心筋はすでに血流は

回復しており,冠動脈造影,核医学的方法により心筋血

流が充分に存在することが確認される.血行再建により

局所または全体の左室機能が改善するだけでなく,虚血

性心疾患の症状は安定し,自然歴も有意に改善するため,

この時期においては種々の手段を使って心筋バイアビリ

ティを診断し,適応ある例に再灌流療法を行なう.

心筋バイアビリティとは心筋梗塞や高度の心筋虚血に

よって心筋収縮力が消失ないし低下しても,何らかの方

法によって虚血部の心筋に再灌流が行なわれれば,心筋

が生存できる性質をいう138).虚血性心疾患に対する経皮

的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術を中心

とする再灌流療法により収縮低下が認められた領域の機

能改善がしばしば認められ,陽性変力刺激にて反応する

部位が再灌流療法後に改善することが観察されたことに

発した概念である.このように心筋バイアビリティとい

う概念は臨床的なものであるが,完全な理解のためには

全体及び局所の機能に加えて血流,代謝の評価が必要と

なる.心筋梗塞例であってもその内部または周辺にバイ

アビリティのある心筋があれば,虚血が解消されること

によって心筋収縮力の回復が期待できるため,心筋バイ

アビリティ判定は経皮的冠動脈インターベンションや冠

動脈バイパス術の適応決定に欠かすことができない.

バイアビリティには 2つの病態がある.冬眠心筋(ハ

イバネーション)は冠動脈の高度狭窄のために,強い虚

血に陥った心筋が壊死は免れているが,収縮力を失って

いる状態であり379),数ヵ月もその状態が続くことがある.

それはあたかも冬眠(ハイバネーション)している動物

が春を待つ状態と似ていて,何らかの方法によって虚血

部の心筋に再灌流が行なわれるか心筋酸素需要が減れば

心筋収縮不全が改善する性質をいう138).ここでは代謝の

ダウンレギュレーションがおこり,エネルギー消費をお

さえて心筋壊死を抑制すると考えられており,このよう

な状態の心筋は再灌流療法が有効である.

一方,気絶心筋(スタニング)は強い虚血にさらされ

た心筋が,虚血が解消された後も収縮力を消失している

状態をいう640).動物実験で冠動脈結紮による一時的虚血

が除かれた後も壁運動の回復が遅れることから発見され

た.臨床的には労作狭心症,冠攣縮狭心症,心筋梗塞の

再灌流療法の後で見出される.動物が危機に際して気絶

した後,危機が去っても気絶状態(スタニング)がしば

らく残っていることから名付けられた.気絶心筋による

心収縮障害はふつう数時間以内に回復するが,心筋梗塞

後の再灌流療法時では数週間も持続することがあり,慢

性気絶心筋と呼ばれる.気絶心筋はすでに血流は回復し

ているので,その診断には冠動脈造影,核医学的方法に

より心筋血流が存在することを確認する必要がある.

最近では冬眠心筋において安静時血流や酸素代謝が比

較的保たれる部分もあるといわれ,前述の説では説明で

きない場面もある.また冬眠心筋では灌流予備能が低下

していることから,反復する間欠的な気絶心筋が関わっ

ているという説があり640-642),現在この 2 つの現象が連

続性のあるものか別個のものかは議論のあるところであ

る.病理学的には冬眠心筋には筋鞘のロスはあるが細胞

容積は減少していない.機能回復は細胞退行分化と関連

があり,進行した病理学的変化があれば予後や回復は不

良である.冬眠心筋であれ気絶心筋であれ心筋バイアビ

リティの検出は科学的,臨床的に意義が高い.しかし現

時点では心筋バイアビリティの定義におけるゴールドス

タンダードが存在しないため,方法論として,正確な血

流,代謝,膜機能,収縮および拡張機能,空間,時間的

74

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

心筋バイアビリティの診断III

要 旨

はじめに11

分解能による左室の 3次元構築が非侵襲的に評価できる

ことがカギとなる.

心電図での心筋バイアビリティの評価は異常 Q 波,

ST 上昇,運動負荷心電図所見および QT dispersion で行

われる.異常 Q 波は誘導点直下の心筋の貫壁性壊死を

反映し,異常 Q 波の広がりから壊死心筋の広がりが推

定できる.しかし,Q 波心筋梗塞患者の梗塞部心筋には

少なからず生存心筋が存在することから,異常 Q 波は

貫壁性壊死を正確に反映するものでない.

一方,心筋梗塞患者では運動負荷により梗塞部で ST

上昇が生じる.機序として,梗塞部残存心筋に生じた新

たな心筋虚血,あるいは対側心筋のレシプロカル変化な

どが考えられるが運動負荷誘発性の壁運動増悪も原因と

なり得,虚血やバイアビリティを必ずしも示唆するもの

ではない.運動負荷 ST 上昇を F-18 FDG PET で評価し

た検討643)では,心筋バイアビリティを感度 66 %,特異

度 100 % で診断できた.ドブタミン負荷時での梗塞部

ST 上昇は心筋バイアビリティを感度 69 %,特異度 83

% で検出した644).いずれも特異度は良いが感度がやや

劣った.運動負荷時の非梗塞部 ST 下降は,1 枝病変心

筋梗塞を対象とすると,F-18 FDG PET で心筋バイアビ

リティありと判定された症例を感度 84 %,特異度 100

% で検出した645).しかし,多枝病変例を含めると ST 下

降を梗塞部心筋のバイアビリティの指標とすることは問

題がある.陰性 T 波の陽転化や,陽性 U 波の陰転化の

研究もある560,646)(表 21).

標準 12 誘導心電図での QT 時間の誘導部位間の差,

QT dispersion が心不全や心筋梗塞などの心疾患の予後に

関与する因子として注目されている.この指標は急性心

筋虚血で増大することが知られ,心筋虚血の指標となる.

44名の慢性心筋梗塞患者で F-18 FDG の心筋バイアビリ

ティと QT dispersion を検討した報告 647)では,QT

dispersion が 70 msec 以上で心筋バイアビリティの診断

感度は 83 %,特異度は 71 % で,感度に優れた指標であ

った.

以上のように,心電図による心筋バイアビリティの評

価は充分といえない.他の検査法が施行できないような

条件下で限定的に用いる指標と考えられる.

安静心エコー図法は,その非侵襲性,簡便性,迅速性

から慢性虚血性心疾患の診断,病態評価に広く用いられ

る一方,その診断性能は得られる画質に依存し,評価は

半定量的評価にとどまったり,術者の熟練度・経験など

の影響を受けるなどの制限がある.心エコー図法による

心筋バイアビリティ検出の中心は負荷による収縮予備能

であり,また近年では造影剤などを用いた判定も行われ

る.

1)左室形態

慢性期の心筋梗塞でみられる壁菲薄化,エコー輝度の

増加や左室瘤形成は高度の心筋線維化の結果であり,心

筋バイアビリティは乏しいと考えられる.一方,梗塞を

起こしたにもかかわらず壁厚は菲薄化していない場合,

壁運動が消失していても冬眠心筋や気絶心筋の可能性が

ある.

2)壁運動とドブタミン負荷試験

左室内膜面の運動は心エコー図法による壁運動評価の

基本であり,B モード像でのトレースを用いて用手法ま

たは自動法で輪郭抽出が行われる.壁運動評価は,心臓

の前後運動の影響を避けるためにセンターライン法など

を使う.一方,内膜面の運動のみでなく,収縮期の壁厚

増大による評価も行われる.この場合は補正の必要がな

いが,心外膜と内膜の辺縁が充分に描出されていること

が条件となる.

安静時に左室壁が運動していることは心筋バイアビリ

ティの証拠となるが,壁運動障害が強い場合は冬眠心筋

や気絶心筋との鑑別は安静心エコー図法では困難であ

75

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

各種モダリティによるバイアビリティ検出法22

心電図A

表 21 心電図所見と心筋 viability 検出精度

Margonato A 529 運動負荷誘発性 ST 上昇 慢性心筋梗塞 34 名 66 %/100 %

Pierard LA 530 ドブタミン負荷誘発性 ST 上昇 慢性心筋梗塞 38 名 69 %/ 83 %

Nakano A 531 運動負荷誘発性 ST 下降 慢性心筋梗塞 1 枝病変 30 名 84 %/100 %

小野彰一 532 運動負荷誘発性陰性 U 波 慢性心筋梗塞 52 名 64 %/ 76 %

Schneider CA 533 QT dispersion 慢性心筋梗塞 44 名 83 %/ 71 %

報 告 者 方  法 対  象 感度/特異度

心エコー図法B

り,薬剤等を加えて壁運動が変化するかをみる負荷試験

が必要である.その中でもドブタミン負荷は最も普及し

ている方法である.冠動脈閉塞・再灌流実験で 10μg/

kg/分のドブタミンの静脈内投与により無収縮または低

収縮を示す領域の壁運動が回復することが示されてい

る648).負荷心エコー図法による心筋バイアビリティ診断

に関して,前向き調査・無作為割付デザインを用いた予

後評価を行った臨床研究は存在しないが,いくつかの観

察研究で心筋バイアビリティが検出された症例が血行再

建術を受けることによって予後改善がはかられることが

示されている649,650).急性心筋梗塞に対する血栓溶解療

法後の壁運動障害,すなわち気絶心筋はドブタミン投与

により改善する651).また冠動脈多枝病変においてドブタ

ミン負荷心エコー図法にみられる壁運動障害,すなわち

冬眠心筋の改善の有無により,再灌流療法後の壁運動回

復を予測できることが示されている367).Charney らはド

ブタミン負荷心エコー図法と安静時 T1-201 血流イメー

ジングを比較して,再灌流療法後におけるバイアビリテ

ィの検出能はほぼ同等であるが,心エコー図法の方がよ

り低費用であることを示した652).

心筋バイアビリティの診断のために行われる低用量ド

ブタミン負荷法は次のごとくである.ドブタミンは 2μ

g/kg/分より開始し,心電図モニターを行いながら 1 分

毎に血圧を測定する.自覚症状の出現,心電図上の ST

変化,不整脈多発,血圧上昇(200 mmHg 以上)または

収縮期血圧の 20 mmHg 以上の低下がなければ,3 分ご

とに 2μg/kg/分ずつ増量し,10μg/kg/分まで投与する.

心エコー図法は左室長軸,短軸,心尖部二腔及び四腔像

をドブタミン負荷前,各負荷ステージにおいてビデオに

記録し,終了後,負荷前後を同時表示し,壁運動を視覚

的判定する.無収縮,または高度の低収縮の部分での壁

運動が改善された時バイアビリティありと判定する.低

用量ドブタミン負荷心エコー図法による心筋バイアビリ

ティの検出の感度,特異度は 80-90 % と報告されてい

る367-369,653-657).ドブタミンの副作用の中で最も多いもの

は不整脈で多くは上室性期外収縮や心室性期外収縮であ

る.上室性頻拍や心室性頻拍の生じた場合は検査を中止

する.また,狭心痛が生じた場合も検査を中止し,ただ

ちにニトログリセリンを舌下またはスプレーで使用す

る.検査に当たっては他の負荷検査と同様,救急薬剤品

セット,除細動器を用意しておく.ドブタミン負荷試験

の禁忌は他の負荷試験と同様であるが一般に表 22 に示

すような病態が挙げられる618).壁運動異常の検出法とし

ては肉眼視による観察が一般的であるが,近年局所の心

筋運動を正確に評価可能と考えられるストレインイメー

ジングを評価手段として用いた心筋バイアビリティの評

価も報告され377),その併用で感度があがるという報告も

ある.負荷心エコー図法による心筋バイアビリティ診断

の欠点として描出不良,定性的判定,検者間の再現性な

どがあげられるが,最近では心筋収縮をドプラ法で検出

する組織ドプラ法658)をドブタミン負荷心エコー図法に

併用して診断精度が向上したとの報告がある380).

その他の負荷法として運動負荷,ジピリダモール負

荷649),ATP 負荷,ニトログリセリン負荷などもあるが

その有用性はドブタミン負荷ほど明らかではない.

壁運動異常の検出法としては肉眼視による観察が一般

的であるが,近年局所の心筋運動を正確に評価可能と考

えられるストレインイメージングを評価手段として用い

た心筋バイアビリティの評価も報告されている377).

3)心筋コントラストエコー法

選択的冠動脈造影時に冠動脈内にコントラスト剤を注

入し,末梢循環の run-off を評価する心筋コントラスト

エコー法を応用して心筋バイアビリティを判定する方法

が広く行われるようになってきている.心筋コントラス

トエコー法は理論的には再灌流療法が施行された急性心

筋梗塞の気絶心筋の評価に有用である.ドブタミン負荷

心エコー図法による収縮予備能の判定と異なり,心筋コ

ントラストエコー法では残存冠動脈狭窄,冠予備能,心

筋壊死,間質線維化の範囲などの因子に影響されないと

いう特長がある.コホート試験にて,心機能回復に対す

る心筋コントラストエコー法のバイアビリティ検出精度

は Tl シンチグラフィに比して特異度は劣ったが感度は

同程度であった659).今後心筋コントラストエコー法とド

ブタミン負荷心エコー図法の併用による感度の向上効果

が期待される.

再灌流療法に成功した梗塞心筋でもコントラスト剤流

入の不良が起こることがある408,660).これは no reflow 現

76

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

表 22 Dobutamine 負荷心エコー法の禁忌例

急性心筋梗塞(発症後 4-10 日以内)

不安定狭心症

左主幹部狭窄の判明している例

明かなうっ血性心不全

重症で生命の危険がある頻拍性不整脈

重症弁狭窄症

肥大型閉塞性心筋症

急性心膜・心筋炎,心内膜炎

大動脈解離

象といわれ,再灌流障害に基づく冠微小循環障害を示す

ものと考えられる.No reflow 現象を示す心筋は再灌流

後に残存する壁運動障害の回復が遅れ,しばしば壁運動

障害がそのまま持続することもある.最近では種々の経

静脈性超音波造影剤が開発され,末梢静脈からの超音波

造影剤の注入による心筋バイアビリティの評価の可能性

が期待できるようになった.当初は不良であった経静脈

性心筋コントラストエコー法の画質も超音波造影剤の開

発と超音波装置の改良が加えられ,ハーモニック法や超

音波による微小気泡の破壊を極力抑えるための間歇送信

法などを基礎とした様々な方法により広く臨床応用され

つつある.責任冠動脈が完全閉塞していて灌流領域の心

筋がほぼ線維化しているようなバイアビリティのない領

域には超音波造影剤による染影を認めない.運動負荷,

またはドブタミンや ATP などの薬剤投与による負荷を

かけて超音波造影剤による心筋染影で虚血診断も可能で

ある.心筋染影を視覚的に認識しやすく定量化するソフ

トも導入され,今後核医学的心筋血流イメージングに代

わる簡便な検査として臨床の場に受け入れられる可能性

もある.

核医学的手法を用いた心筋バイアビリティ検出は

SPECT では Tl-201 や Tc-99m 製剤を用い,PET では F-

18 FDG,N-13 アンモニア,O-15 水,Rb-82 ルビジウム

などが主に用いられる.

1)心臓核医学検査を用いた心筋バイアビリティ判定法

a)Tl-201による心筋バイアビリティ評価法

心筋血流イメージングは心臓核医学検査の主たる検査

であり,虚血性心疾患の診断や評価に利用されている.

Tl-201 はカリウムのアナログであり Na/K ATPase を通

じて能動的に心筋細胞内に取り込まれるという性質を持

つため,バイアビリティ診断は膜の健常性評価という形

で行われる.Tl は静脈注射された後,心筋血流に比例

して分布し心筋細胞内に取り込まれるため,虚血や梗塞

病変が Tl 集積低下として描出される.Tl の再分布現象

とは,血流の低下した領域が虚血心筋の場合,心筋から

の洗い出しが正常心筋や梗塞心筋に比べて遅く,初期像

で集積低下していた領域が 3-4 時間後の後期像で見か

け上分布が改善する性質によりおこる661).この再分布現

象の有無により虚血心筋と梗塞心筋の鑑別を行うことが

ルーチンに行われている.しかし,Tl-201の再分布がな

い領域の 30-50 % で血行再建術後の心機能回復がみら

れ,再分布による左室収縮能回復の予測には感度の低下

が問題視される293).これを改善するため,24 時間後の

再分布,安静時の再分布137),運動負荷後期像後の Tl-201

少量追加投与(再静注法)662)などが行われる.レビュー

にて Tl によるバイアビリティ評価法では感度は良好で

あるが心エコー図法に比べて特異度が低いとの結果が得

られており663),心機能情報の追加による特異度向上の試

みがなされている.

b)Tc-99m 標識心筋血流製剤による心筋バイアビリテ

ィ評価法

Tc-99m sestamibi や Tc-99m tetrofosmin などの Tc-99m

標識心筋血流製剤は Tl-201 同様心筋集積による心筋バ

イアビリティの評価が可能であり,Tl-201と同等の検出

能を有すると報告されている664,665).心筋バイアビリテ

ィを判定した研究において,Tc-99m 標識心筋血流製剤

が正常心筋の 50-60 % 以上の集積を示す領域をバイア

ビリティありとする報告がある170,171,664).

Tc-99m 標識心筋血流製剤では,ファーストパス法や

心電図同期心筋 SPECT を施行することで,左心機能指

標を容易に算出できるため,心筋血流状態のみでなく,

左室壁運動,壁厚変化などの付加情報を用いて心筋バイ

アビリティ評価の精度向上がはかられる666,667),再灌流

療法後の心機能予測にも有用性が示されている174,175).

さらにドブタミン負荷心電図同期心筋 SPECT にて心機

能予備能の面からバイアビリティ診断の有用性も示され

ている176-178).

c)PET を用いた代謝情報からの心筋バイアビリティ評

価法

心筋のエネルギー源は主に遊離脂肪酸とブドウ糖であ

る.空腹時健常心筋ではその約 60 % 以上を脂肪酸に依

存するのに対し,虚血心筋ではブドウ糖を用いる解糖系

に依存する.虚血が進むと嫌気性解糖系が主となり,さ

らにその状態が進行すると代謝の消失した心筋壊死に至

る.したがって心筋局所のエネルギー基質の利用率を計

測することにより,心筋虚血の有無およびその程度を詳

細に評価することが可能である.PET による判定には

血流の所見とブドウ糖代謝を示す F-18 FDG の集積の所

見を利用する.すなわち血流が低下しても糖代謝の亢進

した領域を虚血心筋,糖代謝が血流と同様に低下した領

域を梗塞心筋とする.この判定基準を利用すると,機能

低下した領域のうち術後機能回復する領域を 80-90 %

の精度で予測することができる668)と同時にこのような

mismatched pattern を持つ患者は心事故を起こし易く,

血行再建の必要性がある.F-18 FDG PETによる心機能

77

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

心臓核医学検査C

回復予測の報告のまとめでは感度 88 %,特異度 73 % で

あり血流評価に比べて特異度が良好である664).しかし,

F-18 FDG PET によるバイアビリティ診断を基に血行再

建術を行った研究のメタ解析では血行再建術により有意

に予後改善がみられるが,負荷心エコー図法や SPECT

との間に差は認められなかった173).ただ重症の虚血性心

疾患の場合,他の画像診断で十分な画像が得られないこ

とが多く,このような場合に鮮明な画像の得られる

PET の果たす役割は大きいと考えられる.

近年F-18 FDG PET に保険適応がなされ,また F-18

FDG の国内での供給体制の確立がなされつつあり,こ

れによりサイクロトロンなしに PET カメラを設備する

のみでブドウ糖代謝のイメージングが可能となる.さら

には SPECT 装置に特別なコリメータを装着したり,同

時計数回路を設置することで,ブドウ糖代謝の画像が得

られる.この F-18 FDG SPECT では PET ほどの高画質

は期待できないが,心筋バイアビリティの判定では

PET と同程度の成績が得られ669),今後 FDG による判定

法の普及版として期待される.

d)SPECT を用いた心筋脂肪酸代謝情報からの心筋バ

イアビリティ評価法

I-123 BMIPP の導入により,SPECT にて心筋脂肪酸代

謝の評価が可能となった.I-123 BMIPP は,投与後血液

中の遊離脂肪酸と同様に心筋に摂取され,BMIPP-CoA

となり,一部ミトコンドリアに移行する.しかし側鎖型

脂肪酸であるため,そのままではβ酸化を受けず,貯蔵

型脂肪酸として長時間心筋内に留まる.したがって C-

11 標識パルミチン酸のような直鎖型脂肪酸のように心

筋の洗い出しから脂肪酸のβ酸化を直接解析はできな

い.I-123 BMIPP 投与後の心筋集積から脂肪酸利用を解

析するものである.

虚血心筋では Tl-201 などの血流分布に比べて I-123

BMIPP 分布の低下する解離現象を呈することが多い.

これは脂肪酸の利用障害に伴って血流に比例して心筋細

胞内に拡散した I-123 BMIPP が利用されずに血中に逆拡

散されるためと考えられる670).このような解離を示す領

域では F-18 FDG 集積の亢進することが確認されてお

り,エネルギー代謝が脂肪酸からブドウ糖に移行した虚

血心筋を表現しているものと考えられる268).これを利用

して,血流と I-123 BMIPP の併用による心筋バイアビリ

ティの評価が可能である.血行再建術前後で BMIPP を

用いた心筋脂肪酸代謝の解析が行われ269,271),血流と代

謝の解離した領域に慢性期の機能回復がみられる.逆に,

血流も代謝も同様に低下した解離のない領域は梗塞心筋

と考えられている.

2)他の検査法との対比

核医学的手法とドブタミン負荷心エコー図法による心

筋バイアビリティ評価の比較が文献データから行なわれ

ている664).この検討からドブタミン負荷心エコー図法は

核医学的手法に比して,心筋バイアビリティ検出感度は

低いが,特異度が高いことが示されており,両者は相補

的役割を果たすと考えられる.

3)今後の課題

核医学検査は,生存心筋細胞に摂取されるトレーサー

の動態や心筋細胞のエネルギー代謝を解析することで,

心筋のバイアビリティ評価に関する有用な情報を提供し

得る.これまでの心筋バイアビリティの評価は,機能回

復の予測に焦点をあてていたが,今後は患者の生活の質

(quality of life,QOL)や予後の改善など広い視点に立っ

た判定が必要である.

1)方法

MRI による心筋バイアビリティ検出のため種々の方

法がとられるが,大別すれば,心形態・壁運動評価と

MR 造影剤を用いた効果判定の 2つに分けられる.

a)収縮予備能

安静時に壁収縮がみられない例における冬眠心筋の検

出に MRI では壁厚の保持と負荷による壁運動出現の 2

つの所見が用いられる.前者は拡張末期の壁厚が 5.5

mm 以上,後者は通常低用量ドブタミン負荷により拡張

末期に比べ収縮期壁厚が 1 mm 以上の増大が用いられ

る671,672).この際の MRI 撮像法としては,心電図同期に

よるシネ MRI や高速 MRI が使用される.ドブタミン負

荷は 10 μg/kg/分を末梢静脈より点滴注入し,3-5 分

後に撮像を行なう.ドブタミン負荷による壁運動の評価

として Tagging 法を行なうこともある673,674).PET によ

るバイアビリティ評価を基準とした MRI 収縮予備能の

感度は 88 %,特異度は 87 % であり671),心機能改善を基

準とした場合の感度は 89 %,特異度は 94 % と良好であ

ったとの報告がある675).気絶心筋の診断の場合も冬眠心

筋と同様の方法を用いる.低用量ドブタミン負荷による

気絶心筋の収縮期壁厚増大を 2 mm 以上とする報告があ

る675).さらに tagging 法により局所心機能を定量評価す

る試みもされている676).

78

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

磁気共鳴イメージング(MRI)D

b)MR 撮像法による造影効果(遅延造影)

Gd-DTPA や Gd-DOTA などの MR 造影剤を用いた

contrast-enhanced MRI では,梗塞心筋に遅延造影が生じ

る性質を利用して,バイアビリティを判定することが行

われる.MR 造影剤の造影効果は心筋組織の灌流と細胞

膜機能障害を示唆するが,局所血流量,造影剤の血管-

組織間腔-心筋細胞間の移行度に影響される.1990 年

代に登場した超高速 MRI により MRI による心筋血流や

組織障害パターンの組織学的評価との比較が多くなされ

てきた.MRI は核医学検査と比較して空間解像度が高

いため,心内膜下梗塞や心内膜下虚血を診断できる利点

がある.貫通性梗塞では核医学的バイアビリティ判定と

の診断一致率はきわめて高かったが,MRI 造影遅延を

示す領域が壁厚の 50 % 未満であるような心内膜下梗塞

領域に対して 47 % において核医学検査で梗塞と診断す

ることができなかった468).このように遅延造影 MRI は,

いわゆる冬眠心筋や気絶心筋の状態において心筋壊死が

含まれているか否かを明瞭に示し,病態の把握に役立つ

ため,遅延造影 MRI による心筋バイアビリティ診断は

血行再建術の適応など治療方針の決定に有用である.

2)特徴,利点,欠点

MRI では心時相毎の任意の断層像を容易に得ること

ができる.また,心内膜面と心外膜面の境界を容易に区

別できる.したがって,心筋バイアビリティ評価のため

に,わずかな壁運動を描出するには有利な方法である.

造影剤の使用は心筋内の経時的造影効果を定量的に測定

できる.バイアビリティに対する遅延造影 MRI 診断は

ほぼ臨床的に確立していると考えてよい.

3)診断能

慢性期心筋梗塞の F-18 FDG PET によるバイアビリテ

ィを基準として,壁厚の保持による冬眠心筋の診断感度

は 72 %,特異度は 89 % であった.ドブタミン負荷を用

いての壁運動回復による診断の感度は 81 %,特異度は

95 % であった671).ドブタミン負荷をおこなった経食道

心エコー図法と MRI による壁運動の診断能を比較する

と,経食道法による感度は 77 %,特異度 94 % に対し,

MRI による感度は 94 %,特異度 100 % であったとの報

告がある672).一方,急性心筋梗塞時に再灌流療法を行っ

た症例の気絶心筋の診断については 4-6 ヶ月後の壁運

動回復を基準として,壁厚の保持による診断感度が 92

%,特異度が 56 % であり,ドブタミン負荷による壁運

動出現を指標とした場合の感度は 89 %,特異度 94 % で

あったとの報告がある675).

4)適応と禁忌

バイアビリティが不明な虚血性心疾患の多くの例が適

応となるが,特に心エコー図法で壁運動の描出が不良な

例が推奨される.禁忌としては他の MRI 検査と同一で

ある.また,MRI 検査室ではモニターや緊急処置にとり

不便なため,心不全が進行すると考えられる例や,ドブ

タミン負荷にて重症不整脈が出現する例は不適である.

造影剤の使用は必須であるが,X 線 CT によっても

MRI と同様,壁厚測定,収縮期と拡張期の壁運動の評

価が可能である.また心筋 CT 値の経時的測定も可能で

あり造影様式パターンの違いがバイアビリティ評価に用

いられる.マルチスライス CT(MSCT)では 1 回のス

キャンで複数の画像を得ることができるが,造影剤を用

いた検査と組み合わせた contrast enhanced MSCT は呼吸

や拍動の影響の少ない明瞭な画像を得ることが可能とな

り,心筋血流そして心筋バイアビリティに関して多くの

情報が得られるようになった.造影 CT では造影 MRI

と同様に梗塞領域で初期の造影欠損(early defect,ED)

と遅延造影(late enhancement,LE)または残存欠損

(residual defect,RD)を示すことが特徴であるが MRI

に比べて制約も多く臨床的な有用性を発揮できる機会は

少なかった.近年 contrast enhanced MSCT の ED,LE,

RD 現象の心筋バイアビリティに対する意義が壁運動や

収縮能677),核医学的 SPECT 検査678),梗塞後壁運動改善

様式679)などとの比較により検討されてきており,今後

の発展が期待されている.CT によるバイアビリティ診

断の利点として,盲点になる領域がない,撮像時間が短

い,MRI のような金属製品の制約がなく急性期にも検

査可能,そして 1回の検査で同時に冠動脈狭窄,壁運動

が評価可能な点が上げられる.欠点としてヨードを使用

した造影剤が不可避な点,X 線被爆が問題となり,壁在

血栓や脂肪変性と ED や RD の鑑別が時に必要となる点

が上げられている.

1)方 法

虚血性心疾患の心臓カテーテル検査では,心筋バイア

ビリティの評価は左室造影によって行われる.経動脈的

に左室造影を行い動画として記録する.左室容積,駆出

率,左室局所の壁運動などの情報を得る.

79

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

X 線 CTE

心臓カテーテル,左室造影F

2)所見の意味,病態との関係

左室造影における局所壁運動はその部位の収縮能力を

反映している.壁運動の分類は,AHA 分類に基づき正

常(normokinesis),低収縮(hypokinesis),無収縮

(akinesis),奇異収縮(dyskinesis)と視覚的に評価され

る.壁運動異常を定量的に評価する方法として,定量性

に優れたセンターライン法が普及している680).

左室造影で壁運動が保たれていれば心筋バイアビリテ

ィの証明となる.しかし遷延する虚血後に生じる気絶心

筋や慢性の虚血による冬眠心筋に伴う高度壁運動障害に

おける心筋バイアビリティを判定することは困難であ

る.ただ,期外収縮後の心収縮増大機転( p o s t -

extrasystolic potentiation,PESP)により壁運動の改善が

認められる部位はバイアビリティがあると考えられ

る681,682).しかし PESP が認められなくてもバイアビリ

ティがないとはいえないことや,PESP による壁運動の

改善が心臓の負荷状態によって変化することに留意す

る683).硝酸薬の投与による壁運動の改善で心筋バイアビ

リティを判定する方法は684),PESP の評価と同様の注意

が必要である.

冠動脈の狭窄度や冠血流で心筋バイアビリティを評価

することは困難である.一般に冠動脈造影で側副血行路

を認める部位にはバイアビリティを有することが多い.

3)特徴,利点,欠点

左室造影は心エコー図法と異なり全例解像度の高い画

像が得られることと観察部位(方向)が一定であること

が最大の利点である.しかし不十分な造影や不整脈によ

り評価が困難なことがある.欠点としては,侵襲的検査

法であること,また異なる負荷条件下で左室壁運動を観

察するためには複数回の左室造影を行う必要があり,施

行が困難な場合もある.

4)適応と禁忌

適応は冠動脈疾患が疑われる患者である.しかし侵襲

的検査法であるが故の合併症もあり得るため,検査によ

って得られる情報が危険性を明らかに上回る場合が適応

と考えられる.負荷前後での壁運動評価は心エコー図法

で行われるべきであるが,不明瞭な心エコー画像しか得

られない患者には複数回の左室造影を行う適応がある.

5)結 論

心臓カテーテル検査単独で心筋バイアビリティを評価

することは困難であるが,左室収縮能評価のスタンダー

ドとして用いられている.

心筋バイアビリティ評価の意義の一つは,心筋梗塞例

に対して再灌流療法の有用性を予測することにある.心

筋バイアビリティは心筋梗塞後の時間と強く関係するた

め,発症 6時間以内の心筋梗塞についてはとくにバイア

ビリティの評価は行なうことなく緊急冠動脈造影を施行

し,再灌流療法の適応を決めるか,冠動脈造影を行なわ

ずに血栓溶解療法を行なう.次に発症 48 時間までの例

についてはバイアビリティを持つ心筋が残存することも

多く,治療の緊急性もあるため,通常,胸痛の持続,心

電図の新しい ST 上昇,心エコー図法の梗塞部壁運動の

存在等をバイアビリティの所見として治療を選択する.

以後の心筋梗塞については種々の画像診断を使用し,

心筋バイアビリティを評価した上で,再灌流療法の適応

を決定する必要がある.この際局所的に壁運動の消失し

ている例でも冬眠心筋としてバイアビリティが存在し得

るので,それらについては,低用量ドブタミン等を用い

た負荷心エコー図法または運動負荷や薬剤負荷による心

筋血流イメージングを行ない,バイアビリティの評価を

することが必要である.また PET 装置のある施設では

F-18 FDG PET をゴールドスタンダードとして用いるこ

とができる.MRI,MSCT も遅延造影現象や運動評価を

用いてバイアビリティ評価の臨床応用がなされてきてい

る.高度の一過性心筋虚血後,特に再灌流療法後の壁運

動消失については,気絶心筋としてバイアビリティが存

在し得るので評価が必要である.そこでは心筋コントラ

ストエコー法が有用であり,今後経静脈性超音波造影剤

の普及もあり有効かつ簡便なバイアビリティ診断として

の地位を確立していくと思われる.

慢性虚血性心疾患における心機能の評価法には,心エ

コー図法(安静および負荷),心臓核医学,CT,MRI,

心臓カテーテル検査および心室造影法が挙げられる.ま

た,心機能低下に伴って各種神経体液性因子が上昇する.

特に心筋障害などに伴って血中に分泌される血漿脳性ナ

トリウム利尿ペプチド濃度(BNP)の測定は,心不全の

80

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

検査法の選択基準33

心機能の評価IV

要 旨

診断,重症度,予後の評価に有用である(慢性心不全治

療ガイドライン参照).狭心症では,安静時の左室収縮

能は,重症の 3枝病変・左主幹部病変・虚血性心筋症な

どを除き,保持されていることが多い.一方,拡張能は

異常を示すことが多い.心筋梗塞において心機能の評価

は,重症度の診断,治療方針の決定,治療効果の評価,

予後の推測に必須である.収縮能・拡張能の評価は,心

エコー図法・核医学・心臓カテーテル検査および心室造

影法のいずれによっても可能である.正確性・再現性・

簡便性・非侵襲性など各々の評価法の持つ特性のいずれ

を優先するかにより,目的に応じて検査法を選択すると

ともに,場合によっては,相互に組み合わせて補完的に

検査を進めることが必要である.

慢性虚血性心疾患における心機能の評価については,

その対象となる疾患および各種検査法の特徴・意義を十

分把握して用いる必要がある.対象となるのは,狭心症

(安定労作狭心症,冠攣縮狭心症),無症候性心筋虚血,

陳旧性心筋梗塞である.心機能評価に用いられる検査法

としては,心エコー図法(安静および負荷),心臓核医

学,CT,MRI,心臓カテーテル検査および心室造影法

があげられる.

心エコー図法は,その非侵襲性,簡便・迅速な機動性,

反復施行容易な点などから,医療現場で心機能の評価に

繁用されている.ベッドサイドや救急処置室・手術室に

おいても広く用いられる.心機能を広い意味で捉えれば,

心筋虚血や心筋バイアビリティとも関わるが,これらに

ついては別項に詳述されているので,本稿では収縮・拡

張としての心機能に絞って述べる.

1)収縮能の評価

左室収縮能の評価は,拡張末期・収縮末期の左室内径

の計測より左室内径短縮率を求める方法320-324)と断層法

における左室内膜面のトレースより仮定式を用いて拡張

末期・収縮末期の左室容積を算出し左室駆出率を求める

方法325)がある.左室内径短縮率による収縮能の評価は,

心臓が回転楕円体に近似でき局所壁運動異常がない条件

下で成り立つ326,328).しかし,虚血性心疾患ではしばし

ば左室壁運動異常をともない測定誤差を生じる.断層法

から得られた左室駆出率による収縮能の評価では,誤差

を生じる測定上の問題として,画質が適正か,心尖を正

しく描出しているか,術者が熟練していて計測値に再現

性はあるか(intra- あるいは inter-observer variability)と

いう問題327)がある.近年,3次元心エコー図法が臨床応

用され,左室壁運動異常に影響されない左室容積計測が

ある685,686).

また,複雑な左室局所壁運動を表すために左室をいく

つかの分画に分けて,各分画の壁運動の得点を総計して

全体を評価する方法がある.米国心エコー図学会(ASE)

では,左室を 16 分画に分けて,各々の分画の壁運動を

正常 = 1 点,低収縮 = 2 点,無収縮 = 3 点,奇異収縮 =

4 点,心室瘤 = 5 点,に分類して,それぞれの領域を半

定量的に評価し,各領域の合計を 16 で除した値(wall

motion score index,WMSI)が臨床上用いられている331).

この値が大きいほど壁運動異常が高度である.

壁運動の評価法として視覚的壁運動評価法や組織ドプ

ラ法に比べ局所の壁運動検出に優れたストレインイメー

ジングが導入され,今後の発展が期待されている.

2)拡張能の評価

ドプラ心エコー図法により,簡便に拡張能を計測する

ことが出来る.パルスドプラ法により,僧帽弁先端部に

サンプルボリュームを設定して,左室流入血流速波形を

記録する.得られた波形から,早期流入波(E 波),心

房収縮波(A 波),E 波減速時間(DT),等容拡張時間

(IRT)を計測する.主に用いられる拡張能のパラメー

タとしては,E 波と A 波の比である E/A 比,DT,IRT

である.正常から拡張能障害が強くなるに従い,まず E

波高の減高と A 波高の増高による E/A 比の低下,DT

や IRT の延長という弛緩障害パターンを呈し(軽度拡

張能障害),さらに進行すれば,E/A 比,DT や IRT は,

一旦,正常化(偽正常化=中等度拡張能障害)し,つい

には,E/A 比は正常より高く,DT や IRT は短縮する拘

束性障害パターン(可逆性から非可逆性)に至る(高度

拡張能障害).

肺静脈血流速波形は,左房の弛緩・拡張により肺静脈

から左房へ流入する血流を示す収縮期波(s 波),僧帽

弁が開放し左室流入が開始して肺静脈・左房・左室が一

つの腔を形成するときに左房への流れ込み血流を示す拡

張期波(d 波),左房収縮による肺静脈への心房収縮期

逆流波(a 波)から成る.A 波と a 波の持続時間を比較

し,a 波の持続時間が大きければ,左室拡張末期圧の上

昇を推定することができる332).d 波の減速時間は肺動脈

81

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

はじめに11

慢性虚血性心疾患における心機能の評価22

心エコー図法A

楔入圧と負の相関を示し,短縮すると肺動脈楔入圧の上

昇を示す.

近年,偽正常化の少ない拡張能評価法としてカラード

プラ法から左室流入血流の伝播速度を用いる方法と,組

織ドプラ法から僧帽弁輪運動速度波形を用いる方法が提

唱された.僧帽弁輪運動速度波形は,左室流入血流速度

波形と同様に,拡張早期波(e’)と心房収縮期(a’)の

2 峰からなる.この波形は心筋そのものの拡張能を反映

するため,左室流入血流速度波形で E/A>1 の場合にお

いて正常拡張能か中等度拡張能障害かの鑑別が可能であ

る687,688).また,E/e’>15 の場合,肺動脈楔入圧の上昇が

推定される688).

心機能評価法としては,RI アンジオグラフィを用い

て,非侵襲的に左室・右室の全体の機能および局所の機

能評価が可能で,再現性・客観性も高い.

Tc-99m で標識された血液成分(赤血球またはアルブ

ミン)を用い,心腔内イメージングを行う.ファースト

パス法と平衡時マルチゲート法に大別される.前者では

ボーラス投与された RI が心室を通過する際の時間放射

能曲線(time activity curve,TAC)から,後者では RI が

均等に血管系内に分布した時点での心電図同期により得

られた心室 TAC から心室容量曲線を算出して,心機能

を評価する.

得られた左室容量曲線から,収縮期指標として左室駆

出分画(LVEF),一回拍出量(stroke volume,SV),収

縮早期 1/3 の平均駆出速度,最大駆出速度(peak

ejection rate,PER),拡張期指標として拡張早期 1/3 の

平均充満速度,最大充満速度(peak filling rate,PFR)

などが得られる.そのうち主な指標として,収縮能は

LVEF,拡張能は PFR が使われる190-201).これらを安静

時と運動時に測定し,運動による心機能変化をみること

もできる.また,SPECT 像から LVEF を求めることも

可能である.

局所壁運動の評価を行うには,左室の各部位に関心領

域(ROI)を設定し,各 ROI の LVEF を求める方法,各

フレームをシネモード表示して連続的に壁運動を視覚的

に観察する方法がある193,195).左室形態から心室瘤を判

定することもできる.

右室も左室と同様に心室容量曲線から右室の駆出分画

(RVEF)が求められる194).さらに,本法による長所と

して心房機能の観察も可能である.右心機能評価に関し

てはファーストパス法がより適している.

心筋虚血や心筋バイアビリティの評価のために Tl-201

や Tc-99m MIBI,Tc-99m tetrofosmin などの心筋血流ト

レーサを用いた心筋 SPECT を行う際に心電図同期収集

を行えば,心室容積,LVEF,局所壁運動,心筋壁厚増

加率などの指標を得ることができる689).最近,これらの

指標を自動解析するソフトウェアが広く普及してきてお

り,心筋 SPECT による血流と機能の同時評価が簡便に

行えるようになっている.

X 線 CT による心機能の評価として,超高速 CT やマ

ルチスライス CT による局所壁運動評価,造影 CT によ

る左室瘤,左室内血栓の描出などがある690).超高速 CT

は心拍動の影響を受けずに画像が得られる利点があり,

局所壁運動の評価も容易である.心電図同期による画像

再構成を行えば,従来型の CT 装置でも壁運動評価は可

能である.左室容積から駆出分画を求めることができる.

これは,マルチシネモード撮影法により心臓の連続短軸

横断像を得,収縮末期像と拡張末期像を描出することに

より壁運動を診断する.壁厚増加率を算出して壁運動の

重症度を定量評価ができる691).

カテーテル検査・心室造影法は,これまで他の検査の

ゴールドスタンダードであった.今後もその重要性は変

わらないが,より侵襲性の少ない他の検査方法が出現し

てきたのも事実である.今後より侵襲性の少ない精度の

高い検査法の出現が待たれる.

1)収縮能の評価

収縮期の指標として,駆出分画(ejection fraction,EF)

が最も広く用いられる.EF は心室造影法により,心室

容積が最大および最小となる像をシネフィルムの各コマ

から選び出し,心臓が回転楕円体であるという仮定式の

もとに170,692,693),拡張末期容積・収縮末期容積を求め,

その差分を拡張末期容積で除したものとして EF が計算

される694-696).この際注意すべきは,左室造影法では乳

頭筋や肉柱が造影された左室内腔輪郭内に含まれるた

め,真の内腔容積よりも計算値は過大評価の傾向になる

こと,点線源からの撮影のため拡大率を補正しなければ

ならないこと,この拡大率は画面外周ほど大きく,大き

な左室はより大きく計算されることである.

インピーダンスカテーテルは造影剤を必要とせず左室

容積・駆出分画を測定できる697,698).熱希釈法により心

拍出量も測定できる.EF 以外の収縮性指標として dP/

dt がある.これに前負荷・後負荷の変化の影響を補正

82

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

心臓核医学B

心臓カテーテル検査・心室造影法D

X 線 CTC

した(dP/dt)/P が用いられる699,700).圧-容積曲線から

左室 1回仕事量なども求めることができる.

冠動脈疾患では,局所壁運動の評価が,左室全体の評

価よりも鋭敏な指標となる.この評価法として,左室内

腔の重心から心内膜に対し放射格子を描き,拡張末期・

収縮末期の格子の長さを計測して評価する方法があ

る701-703).また拡張末期・収縮末期の左室内腔をトレー

スし,その中点に引いた中心線(センターライン)に垂

直となる 100本の線に沿って壁運動を計測する方法もあ

る704,705).

2)拡張能の評価

拡張機能の指標として,カテ先マノメータによる左室

内圧の計測による -dP/dt,左室弛緩の時定数(T また

はτ)706-709),左室造影ないし RI 法による左室最大充満

速度(peak filling rate,PFR)710)などがある.左室拡張末

期圧が上昇すると,-dP/dt の低下,T の延長,PFR の

低下がおこる.

心機能の評価は,疾患の治療方針を決定し,治療効果

を評価し,予後を推測するために必須である.収縮能・

拡張能の評価は,心エコー図法・核医学・心臓カテーテ

ル検査・心室造影法のいずれによっても可能である.心

臓カテーテル検査・左室造影法は,今なお,心機能のゴ

ールドスタンダードであり,本疾患においては,冠動脈

造影と併せて施行されることが多い.しかしながら,そ

の侵襲性のために反復して頻回に行うことは困難であ

る.また,簡便にベッドサイドですべての手技を行うこ

とは難しい.

一方,心エコー図法は,簡便性,非侵襲性が高く,重

症患者においても反復施行が可能である.心機能の評価,

心筋梗塞の合併症の診断にも用いられる.ただ,全例に

おいて適当な画質が得られるとは限らず,術者により結

果にばらつきが生じ得るという問題がある.

RI アンジオグラフィ(平衡時法を含む)は,左右両

心室機能,心房機能,全体機能と局所機能の両方を評価

することができる.客観的で再現性に優れ,経過観察,

治療効果判定にも適している.しかし設備の問題があり,

ベッドサイドでも簡便に施行できるとは言いがたい.一

方,心電図同期心筋 SPECT による心機能評価は簡便か

つ高精度であり,心筋虚血や心筋バイアビリティの評価

のために心筋 SPECT を行う際に心電図同期収集を行え

ば付加的に心機能に関する情報を得ることができる.

狭心症では,心機能,特に安静時の左室収縮能は保持

されていることが多い.重症の 3枝病変や左主幹部病変,

虚血性心筋症などの特殊な条件下では,安静時でも収縮

能の障害が認められる.一方,拡張能については,収縮

能の障害がみられないか軽度であっても異常を示すこと

が多い.

心エコー図法,心臓核医学,心臓カテーテル検査・心

室造影法のいずれによっても,収縮能・拡張能の評価は

可能で,それぞれの方法の利点,限界については心筋梗

塞の項で述べたのと同様である.

また,心筋虚血や心筋バイアビリティの診断,評価に

ついては,各種負荷法との併用により施行される.これ

らは,別項で述べられている.

心筋梗塞・狭心症の心機能評価においての課題は,核

医学の分野ではコリメータの小型化によりベッドサイド

でも施行し得る形態となること,心臓カテーテル検査・

心室造影法ではカテーテルの細径化,画像のデジタル化

によるデータ保存の簡略化や被爆線量の低減,造影剤の

使用量の低減が望まれる.心エコー図法においては,複

雑な心機能計測の簡略化・自動化と,より客観的で再現

性に優れた方法が望まれる.

慢性虚血性心疾患において累積生存率または死亡率を

検討すること,あるいは心臓死,将来の非致死性心筋梗

塞,心不全,狭心症の不安定化,入院,経皮的冠動脈イ

ンターベンションや冠動脈バイパス術の施行などの心血

管イベントの発生を予測することは検査法にとって重要

な役割である.各種検査法より得られる指標として,冠

動脈硬化危険因子,血漿 BNP 濃度の測定,運動負荷試

験の ST 変化や運動能指標,心筋血流イメージングの灌

流欠損の存在,冠動脈造影における病変の進展度,左室

83

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

慢性虚血性心疾患への適用33

心筋梗塞A

狭心症(無症候性心筋虚血・労作狭心症・冠攣縮狭心症)B

今後の課題44

予後の予測V

要 旨

造影や心エコー図法での左室機能が,予後の予測におい

て良い指標となる.

慢性虚血性心疾患において,予後の予測は治療法を選

択するうえで重要である.予後の項目として,累積生存

率または死亡率,心臓死,非致死性心筋梗塞,心不全,

狭心症の不安定化,入院,経皮的冠動脈インターベンシ

ョンや冠動脈バイパス術の施行などの心血管イベントの

発生がある.我が国ではどの検査によってどのような予

後が予測されるかについての大規模な調査研究や前向き

研究が乏しい.1980 年に世界 27 ヶ国で行われた冠動脈

疾患死亡の疫学調査では711),日本人の冠動脈疾患死亡率

は 10万人当たり年間男 65人,女 24人と最少であった.

この死亡率は北アイルランドの約 1/10,米国の約 1/6

である.このような条件の異なる諸外国の成績を,我が

国に当てはめてよいかどうか問題はある.しかし冠動脈

疾患死亡が大きく減少しつつある米国に比べ,我が国で

冠動脈疾患死亡が相対的に高くなっている711).このよう

な状況より,本稿では世界的な大規模研究の成果を踏ま

えつつ,可能な限り我が国の研究結果を取り入れて,予

後予測における各種検査法の意義を述べた.

虚血性心疾患の既往をもつ患者では脂質代謝異常(高

コレステロール血症,高中性脂肪血症,低 HDL 血症),

高血圧,喫煙,糖尿病,肥満の合併が多い程,心筋梗塞

を発症する頻度が増加する712).最近炎症マーカーの高感

度 CRP の測定が心事故を含む予後の予測に有用である

ことが示されている.

我が国の久山疫学調査でも一般住民で,Framingham

study と同様の冠動脈硬化危険因子の重要性が示された.

我が国の報告では,冠動脈造影検査で診断された虚血

性心疾患患者のうち内科的治療を受けた 990例(心筋梗

塞 61 % 含む)の 5 年生存率は,1 枝疾患 96.0 %,2 枝

疾患 93.8 %,3 枝疾患 83.2 %,左主幹部病変 89.3 % で

あった.また 10 年生存率は,1 枝疾患 91.9 %,2 枝疾

患 87.5 %,3 枝疾患 68.3 %,左主幹部病変 84.6 % であ

った713).491 例(心筋梗塞 57 % 含む)の報告で心臓死

のみによる 5年生存率は 1枝疾患 97 %,2枝疾患 84 %,

3 枝疾患 63 % で589),別の報告では 7 年生存率は 1 枝疾

患 96 %,2 枝疾患 86 %,3 枝疾患 64 %714)であるなど,

米国での調査に近い値が報告されている.生命予後を規

定する因子で,冠動脈造影・左室造影より得られるもの

として現在明らかにされているのは,左主幹部 50 % 以

上の狭窄の存在及び左心機能の低下した(左室駆出率

<50 %)3 枝疾患の存在であり,CASS 試験499)では,こ

のような症例に対しては,内科治療に比して冠動脈バイ

パス術の方が生命予後の改善を示した.

運動負荷心電図検査は心筋虚血の診断に加えて,虚血

性心疾患の重症度評価や予後推定にも有用である43-49,717).

運動負荷心電図検査による予後不良の指標として,胸痛

の有無にかかわらず ST 下降の存在42,43),2.0 mV 以上の

ST 下降の存在44),低運動量での ST 下降の存在45,46),血

圧の上昇不良47,48),低運動耐容能46,47,49)があげられる.

Duke 大学方式の予後予測式として,トレッドミルスコ

ア=(運動時間)-5×(最大 ST 下降 mm)-4×(胸痛指

標:胸痛なければ 0点,胸痛あれば 1点,胸痛が運動中

止理由なら 2点)があり,この値が+5点以上なら低リ

スク(年間死亡率 0.5 % 以下),+5 点から -11 点なら

中リスク(年間死亡率 0.5 % から 5 %),-11 点以下な

ら高リスク(年間死亡率 5 % 以上)である1).本邦で,

冠疾患を疑った 862例の心事故予測において,心筋梗塞

の既往,加齢,典型的胸痛,と共に Bruce protocol 6 分

以内の ST 下降出現が有意な心事故予測因子であったと

の報告がある.

心エコー図法で評価された安静時の左室収縮能低下は

長期予後に影響する347).すなわち,左室駆出率が低いほ

ど,また壁運動スコアが高いほど718,719),梗塞サイズが

大きいことを示し,予後不良を示唆する348).また同程度

の収縮能障害を有する場合,左室拡張能障害を示す拡張

早期左室流入血流速波形の減速時間が短いほど予後が不

良であった352,353,720).合併症の程度も予後に影響する.

中等度~高度の僧帽弁逆流の合併は 1 年後の生存率は

54 % と低く,虚血性僧帽弁逆流は予後不良の徴候であ

る350,721,722).逆流が高度なものは手術の適応となる351).

特に多枝冠動脈疾患と高度左室機能障害の合併は予後不

良の病態である.

局所心筋虚血により局所壁運動は低下するため,運動

ないし薬剤(ドブタミン)を用いた負荷心エコー図法を

行い,負荷により生じた一過性の壁運動低下より心筋虚

84

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

はじめに11

虚血性心疾患全般22

冠危険因子と冠動脈硬化重症度による予後予測A

運動負荷心電図検査による予後予測B

心エコー図検査による予後予測C

血の有無を判定する方法は予後予測に有用である723-732).

この負荷心エコー図法は,通常のトレッドミル検査より

心筋虚血検出に関する特異度が高い383).負荷心エコー図

法による心筋虚血が陰性の場合には心事故の発生頻度は

低い382,723).トレッドミル検査による心筋虚血が陽性で

も,負荷心エコー図法で異常壁運動が検出されない例で

は心事故の発生頻度が低い384,385).トレッドミル検査陽

性かつ負荷心エコー図検査陽性の場合には特に心事故の

発生頻度が高かった384).

心臓核医学検査の予後不良の所見は,第一に心筋血流

イメージングの血流低下の範囲と程度が高度の例であ

る.虚血を示す負荷時の血流欠損と再分布(あるいは

fill-in)陽性例は陰性例に比して予後が不良である(心

事故率 62 % vs 27 %)188).負荷時の心腔の一過性拡大は

広範な心内膜側の血流低下を反映するものと考えられ,

予後不良の所見であった733).肺における Tl 標識心筋血

流製剤の取り込みの増加は左心機能低下を反映し,カテ

ーテル所見,心電図変化,負荷達成量,性別から独立し

た心事故発生の予測因子であった734).

心筋血流イメージング上どのような所見が予後と関連

するかについても調べられている.左室 20 分画から総

計される欠損スコアを normal,mild,moderate,severe

に分類すると負荷時のスコアが大きくなるほど心臓死,

心事故ともに多くなり,severe 群は mild 群の 3.5倍の死

亡率であった.また同報告では,薬剤療法群(119 例)

と血管形成術群(158 例)を比較し,severe 欠損群にお

いては薬剤療法の心臓死が有意に高頻度であり,血流イ

メージング評価が治療選択に寄与した735).

負荷心筋血流イメージングの欠損陽性は冠疾患の診断

に有用であるが,近年,欠損陰性であることが予後良好

を示す所見として注目されている.5,183 例の調査735)で

は,欠損の無かった 2,496 例において心臓死と心筋梗塞

の 2年間の発症率は年間 0.7 % であり陽性例の 2.6 % に

比較して低率であった.冠動脈疾患の疑いのある例で運

動負荷血流イメージングが正常であった 309例を追跡し

た調査では,10年間の心臓死はわずか 1 % であった736).

心事故予測上の無病正診率(陰性的中度)は運動負荷心

電図に比し明らかに優れている737).

近年,Tl 標識心筋血流製剤よりも画質の優れた Tc 標

識心筋血流製剤が用いられ,また心筋血流と同時に左室

機能を評価できる心電図同期 SPECT 収集法が広く臨床

に用いられ,Tl 標識心筋血流製剤により得られた予後

の予測に対する有用性と同等またはそれ以上の結果が示

されつつある738-741).

狭心症において,I-123 BMIPP 心筋脂肪酸イメージン

グにて心事故の予後評価の有用性が報告されてい

る274,275).I-123 MIBG を用いた心筋交感神経イメージン

グは心不全を合併した場合の予後予測に有用であるが,

虚血性心疾患単独では検討されていない.また,RI ア

ンジオグラフィにより測定した運動時の左室機能が生命

予後の規定因子となること202)が報告されている.

心筋梗塞の既往を持つ 697例で,再梗塞と心臓死を平

均 10 年間追った Framingham study では,高血圧,高コ

レステロール血症,糖尿病,肥満が再梗塞の要因であり,

高血圧,高コレステロール血症,糖尿病,頻脈,再心筋

梗塞が心臓死の要因であった712).我が国の心筋梗塞の長

期予後調査において,再梗塞と突然死に高血圧,高コレ

ステロール血症,喫煙が重要であったとの報告がある742).

Framingham study を含む多くの欧米からの報告で高感度

CRP の測定が陳旧性心筋梗塞患者の心事故の予測に有

用であることが示されている.

我が国の報告で,416 例の心筋梗塞後の 5 年生存率を

冠動脈造影所見からみると 1 枝疾患 96.3 %,多枝疾患

93.3 %,10 年生存率は 1 枝疾患 92.6 %,多枝疾患 71.7

%で,冠動脈病変の広がりが予後を規定した.長期予後

は,多枝冠動脈病変,左前下行枝病変,低左室機能

(EF<40 %)が規定因子となっていた743).1 枝病変心筋

梗塞患者(407 例)の心筋梗塞を再発する冠動脈枝を追

跡した報告では,有意でなくとも元々より高度の狭窄を

もつ血管ほど梗塞責任血管となる頻度が高かった.また,

1,000例の 5年の予後を因子分析した本邦の報告744)では,

心不全,駆出率,病変冠動脈枝数,糖尿病,僧帽弁逆流

が死亡の予測因子であった.

心エコー図法も左室造影と同様に収縮能低下は長期予

後に関係し,壁運動スコアが予後予測の指標として用い

られる348).梗塞後に胸痛を有する例も心エコー図法によ

る経過観察により予後不良と報告されている349).同程度

の収縮能障害を有する場合,拡張能の指標である E 波

減速時間が短縮しているとより予後が不良である353).ド

ブタミン負荷心エコー図法は心筋梗塞例において,低用

量ドブタミンで心筋バイアビリティを検出し,高用量ド

85

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

心臓核医学検査による予後予測D 陳旧性心筋梗塞例33

冠危険因子と冠動脈硬化重症度による予後予測A

心エコー図検査による予後予測B

ブタミンで心筋虚血を診断できる利点がある.低用量ド

ブタミンでバイアビリティのある心筋領域が広い例は長

期経過で左室機能の改善が大きく心事故発生率が低

い745).また心筋虚血誘発例は心事故発生率が高く,心筋

虚血陰性は心事故発生率が低い746).

我が国の心臓核医学検査の報告では,心筋梗塞例にお

いて心プールアンジオグラフィ上の左室駆出率が 30 %

未満,Tl-201 シンチ上の広範欠損,ピロリン酸シンチの

広範集積が生存率の低下と関連した747).I-123 BMIPP 心筋

脂肪酸イメージングの検討では,I-123 BMIPP/血流イメ

ージングの乖離は心事故を予知する因子であった272,273,276).

自律神経機能異常を検出する心拍変動は,パワースペ

クトル解析を用いる方法と 24 時間心電図の RR 間隔の

総体の標準偏差を用いる方法がある.後者を用いて 808

例の平均 31 ヶ月の急性心筋梗塞後の予後を検討した報

告では,心拍変動が 50 msec より小さい群が 50 msec よ

り大きい群より 5.3 倍死亡率が高かった.副交感神経反

射異常を検出する圧受容体感度も急性心筋梗塞後の予後

を予測するのに役立つ.血圧上昇に対する心拍数の低下

(RR 間隔の延長)の比である圧受容体感度が 3.0 msec/

mmHg 未満では予後不良が予測される748).このような

心筋梗塞後の自律神経系異常は,重症不整脈を発生させ

やすく,予後不良の原因になっていると考えられる749).

我が国では冠攣縮狭心症の患者の多くはカルシウム拮

抗薬を服用しており,冠攣縮狭心症の予後は総じて良好

であるとされる605).特に有意な器質的病変を持たないか,

1 枝器質的病変例では心臓死は 1 %/年程度である605,750).

冠攣縮狭心症において心臓死ならびに心筋梗塞の発症に

影響する因子として,発作時の ST 上昇が多枝領域に渡

ること(多枝冠攣縮),合併する器質的冠動脈狭窄病変

が高度であることや多枝であること,カルシウム拮抗薬

を服用していないこと,発作の活動性が高いことなどが

挙げられる605,750).

無症候性心筋虚血の存在は心事故と関連する.全く無

症状の対象にトレッドミル運動負荷心電図と負荷タリウ

ム心筋イメージングを行った場合,無症候性心筋虚血陽

性例では,狭心症,心筋梗塞,心臓死の発生頻度が 4.6

年後に陰性例の 3.6-5.5倍58,59)高かった.安定労作狭心

症の診断がすでについていた例では,ホルター心電図に

て無症候性心筋虚血が検出された群が,9 ヶ月後のイベ

ント(不安定狭心症,血管形成術,心筋梗塞,心臓死)

発生率が 3.1 倍高かった751).無症候性心筋虚血例におい

て心臓死の多い機序の 1つに,虚血に関連した重症不整

脈があげられる.

虚血性心疾患の検査法にとって慢性虚血性心疾患の予

後を予測できるか否か,またその精度や独立性は重要な

課題である.このような検討は欧米で盛んだが,我が国

の研究成果は未だ十分でない.今後,我が国独自の研究

成果が待たれるとともに,高感度 CRP などのバイオマ

ーカーを含む新しい検査法についても予後研究を含めた

診断能の検討がなされることが望まれる.

慢性虚血性心疾患の治療には,薬剤療法,経皮的冠動

脈インターベンション,冠動脈バイパス術などがある.

これらの治療を選択していく上では,まず心筋虚血の診

断が重要で,冠動脈の狭窄度の判定をするために,最近

は MRA,X 線 CT も用いられているが,最終的には冠

動脈造影の施行を要する.ただし,冠動脈造影の所見だ

けでなく,他の検査結果も十分考慮して治療指針は決定

されるべきで,特に経皮的冠動脈インターベンション,

冠動脈バイパス術などの侵襲的治療の適応は慎重に検討

する必要がある.

陳旧性心筋梗塞などで心機能の低下した患者は,左室

壁運動を中心とした心機能の評価を要し,梗塞部位の責

任血管の治療では,原則として心筋バイアビリティの判

定が重要である.

虚血性心疾患において,冠攣縮狭心症や無症候性心筋

虚血などの存在や,糖尿病や脳梗塞,腎不全などの合併

が,その病態を複雑にしており,様々な検査結果を通し

て,予後の改善を目的とした治療指針が決定されること

86

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

心臓核医学検査による予後予測C

自律神経機能異常による予後予測D

冠攣縮狭心症例44

無症候性心筋虚血例55

今後の課題66

治療指針の決定VI

要 旨

が望まれる.

慢性虚血性心疾患に対する治療法として,薬剤療法,

経皮的冠動脈インターベンション,冠動脈バイパス術,

運動療法などがある.疾病の病態には人種差が存在する

ため,本来なら本邦での信頼できるデータをもとに,各

種検査法の結果で虚血性心疾患の病状を把握し,患者の

生活の質の向上や予後の改善を観点において,これらの

治療法が選択されることが重要である.しかし,本邦で

は虚血性心疾患に対する検査や治療の大規模な前向き研

究のデータは皆無に等しく,また,最近では薬剤溶出性

ステントが保険適応となって急速に普及し,冠動脈バイ

パス術も動脈グラフトを用いたオフポンプでの施行が多

くなるなど,侵襲的治療の手法も次々とめまぐるしく変

化しているため,治療法は主として術者の経験や技量,

施設の体制により決定されているのが実情のようであ

る.

本稿では海外での大規模臨床研究の結果をもとに,本

邦のデータも取り入れて,慢性虚血性心疾患の治療指針

を決定するための有用な各種検査法について述べる.

心筋梗塞の既往のない,基本的には左心機能の良好な

慢性虚血性心疾患の患者においては,各種の検査を通じ

て,主に心筋虚血の発作の程度を判定し,予後の観点か

ら病態のリスクの層別化を行う.その上で,併存症や年

齢なども加味して,薬剤治療などの非侵襲的治療のみか,

侵襲的治療も必要か,さらに侵襲的治療では経皮的冠動

脈インターベンション,冠動脈バイパス術をどのように

選択するかなどの治療指針を決定する必要がある.

現在,MRA や X 線 CT での冠動脈の形態学的評価の

精度はかなり向上してきたが,侵襲的治療を考慮する上

で,冠動脈造影は不可欠の検査法である.冠動脈造影上,

左主幹部の狭窄度が 50 % 以上,または,その他の冠動

脈の狭窄度が 75 % 以上の時,侵襲的治療を念頭におく

必要があり,原則として,他の検査の虚血所見を十分評

価した上で治療指針を決定する.

1)非侵襲的検査の評価

運動負荷心電図では,2.0 mV 以上の ST 下降44),低運動

量での ST 下降45,46),血圧の上昇不良47,48),低運動能46,47,49)

の例は予後不良で,Duke 大学方式の予後指標でも,ト

レッドミルスコア=(運動時間)-5×(最大 ST 下降

mm)-4×(胸痛指標:胸痛なければ 0 点,胸痛あれば 1

点,胸痛が運動中止理由なら 2 点)で,-11 以下なら

高リスク,+5 以上なら低リスクである1).ただし,脚

ブロック,著明な左室肥大,WPW 症候群やジギタリス

服用症例など,ST 変化の判定が困難な場合もあり,ま

た,運動負荷試験で心電図のみでの心筋虚血の判定は,

欧米同様に1),本邦でも感度,特異度は 70 % 前後に留

まっている16,18,19).そのため,可逆性灌流低下の部位を

同定することも含めて,負荷心エコー図法や負荷心筋血

流イメージングの活用は診断の精度を向上させる上で有

用である.また,心筋交感神経イメージング(I-123

MIBG)や心筋脂肪酸イメージング(I-123 BMIPP)で

は,負荷することなく,虚血の部位を描出することが可

能で,特に運動負荷の困難な患者において安全で有用な

検査法である248,752).

一般的に,心筋虚血を呈する範囲が大きい場合は高リス

クで,逆にこれらの検査で,心筋虚血の部位が非常に小

さい,または,心筋虚血の所見を全く認めず,症状的に

も安定している低リスクの場合は,治療の適応の再検討

を要する.

2)侵襲的検査の評価

血管内超音波法や血管内視鏡検査は冠動脈病変の性状

を診断する上で有用な検査法である.冠動脈造影で正常

と診断される血管においても,血管内超音波法により動

脈硬化の進展が検出されることもあり444),石灰化プラー

クの描出にも有用である.一方,血管内視鏡検査は血栓

とプラーク(黄色プラーク,白色プラーク)の判定に優

れ,冠動脈造影上の狭窄の性状(血栓や解離)を診断す

ることができる521,522).このように,両者の検査は侵襲

的検査であるものの,経皮的冠動脈インターベンション

の戦略を決定する上で有益な情報を提供してくれる.ま

た,冠動脈内圧測定と冠動脈血流速計測は冠動脈狭窄の

機能的重症度を評価することができる.

87

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

はじめに11

心筋梗塞の無い虚血性心疾患22

虚血性心疾患の治療指針の決定の原則A

虚血性心疾患の治療指針の決定における冠動脈造影以外の検査の意義

B

欧米では,多枝病変や左主幹部の 50 % 以上の病変に

おいては,1 枝病変に比べて予後が不良であることが示

され743),特に左主幹部の 50 % 以上の狭窄が存在する患

者や左心機能の低下した(左室駆出率 <50 %)3 枝疾

患の患者は冠動脈バイパス術により生命予後の改善が示

された499).一方,非侵襲的な薬剤療法と侵襲的治療を比

較した大規模な前向き研究では,予後の評価から低リス

クと判断される患者は薬剤療法を推奨するデータがでて

いる753,754).ただし,低リスクの患者においても,経皮

的冠動脈インターベンションの方が薬剤治療より狭心痛

の出現の軽減,運動耐容量の改善が顕著であり,生活の

質を改善させるという報告もある753-755).

左室駆出率が低下した陳旧性心筋梗塞の予後は不良で

ある743,747,756).また,心室瘤を認める場合は心室瘤切除

術などの侵襲的治療の施行の検討が必要となる.したが

って,陳旧性心筋梗塞の患者の治療指針を決定するため

に,前述したような心筋虚血の診断とともに,心機能の

評価も重要である.

心機能の評価には安静心エコー図法が簡便で,非侵襲

的に迅速に施行できる.安静心エコー図法では局所の左

室収縮能,左室拡張能の評価,さらに,陳旧性心筋梗塞

では壁の菲薄化,エコー輝度の増加,心室瘤の形成など

の心室組織性状の変化も検出できる.また,弁機能の評

価や壁在血栓の観察にも有用である.ただし,心エコー

図法は主観的要素が入り込み,術者の熟練度に診断が左

右される面が大きい.その点,左室壁運動は左室造影で

客観的に評価できるが,最近は,MRI や Tc-99m 標識血

流製剤を用いた心電図同期イメージングなどの非侵襲的

検査法でも,局所の壁運動の評価や正確な左室駆出率の

算出が可能である.

1)負荷心エコー図法

心筋梗塞部位の責任冠動脈病変に対する侵襲的治療を

考慮する上で,梗塞部位の心筋バイアビリティの評価は

重要で,低用量ドブタミン負荷心エコー図法が有用であ

り367,653),超音波造影剤の使用で,心内膜面描出能の改

善が期待される.しかし,視覚的壁運動評価法では,術

者の主観に左右されるため,客観性の高い評価法が開発

されつつある.

2)心臓核医学検査法

種々の核医学検査法でも心筋バイアビリティの評価に

用いられる.まず心筋血流イメージングでは安静投与後

の画像が有用で662),Tc-99m 標識血流製剤での心筋血流

イメージングでは心電図同期 SPECT を追加することに

より診断能が向上する.また,F-18 FDG や C-11酢酸を

用いた PET 検査が心筋バイアビリティの評価により優

れていると報告され293,301),特に前者は保険適応となり

普及することが期待される.

3)磁気共鳴イメージング(MRI)

MRI は組織コントラスト分解能が高いため,明瞭な

梗塞心筋―正常心筋コントラストを示す.遅延造影

MRI は心筋バイアビリティの診断に有用で,さらにド

ブタミン負荷シネMRI は高い診断精度が示されている.

心疾患,特に心筋梗塞,心不全の予後と心臓自律神経

系との関連性が強い88,748,757).交感神経活動の評価とし

て,血中,尿中カテコラミンの定量,I-123 MIBG 心筋

交感神経イメージングによる定量的評価(放射能カウン

トの心臓・縦隔比,洗い出し率)などが,副交感神経活

動の評価として心拍変動(ノンスペクトル解析法,スペ

クトル解析の高周波成分)や圧受容体感受性が用いられ

る.心臓自律神経機能の改善を目的として,β遮断薬,

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などの薬剤療

法や運動療法が有効で758-760),また梗塞部位の再灌流が

副交感神経活動の改善につながる可能性も報告されてい

る761).

欧米に比べて本邦では冠攣縮狭心症の罹患率が高

い762).特に多枝冠攣縮症例では突然死の危険性も高く,

その診断は重要である750).冠攣縮狭心症は夜間・早朝の

安静時に多発する.その点で発作時心電図による診断は

ホルター心電図の施行が簡便で有用である.また早朝に

行う寒冷刺激試験・過換気負荷試験・運動負荷試験など

が冠攣縮狭心症の診断に有用とされているが,その診断

の感度はあまり高くない.

発作出現後,時間的に間もない場合は,心筋交感神経

88

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

心臓核医学検査による予後予測C

陳旧性心筋梗塞33

心機能の評価A

心筋バイアビリティの評価B

心臓自律神経機能からみた治療指針の決定C

冠攣縮狭心症44

イメージング(I-123 MIBG)や心筋脂肪酸イメージン

グ(I-123 BMIPP)の SPECT 像で心筋虚血の部位を同定

することが可能である.また冠攣縮の誘発に自律神経系

の関与も想定され,その解明に心筋交感神経イメージン

グ(I-123 MIBG)や心拍変動の解析が利用されてい

る763).

冠攣縮狭心症の確定診断のための代表的な検査法は血

管拡張薬を無投与の状態で,冠動脈造影検査を施行し,

アセチルコリン(20-100μg),または,エルゴノビン

(20-32μg)を冠動脈に注入する薬剤負荷試験で504,505),

前者では一次的ペーシングが必要である.可能であれば

左右冠動脈に薬剤負荷を行い多枝冠攣縮の有無を判定す

る.これらの薬剤負荷試験で冠動脈が 90 % 以上の狭窄

を生じたり,びまん性の狭窄に狭心痛や心電図上 ST 変

化を認めた場合を陽性所見とみなす(海外ではびまん性

のものを認めない場合もある).いずれの薬剤負荷法も,

その診断の感度・特異度とも 80-90 % と高い.

冠攣縮狭心症に対してはカルシウム拮抗薬が第一選択

となり,なおも症状的に改善しない難治性の冠攣縮狭心

症に対してはカルシウム拮抗薬の増量や他の血管拡張薬

の併用が必要となる.またホルター心電図で発作の時間

帯を確認することで薬剤の投与のタイミングを調整する

ことも有用である.

Cohn は無症候性心筋虚血を 3 型に分類した764).まず

心筋梗塞や狭心症の徴候がなく,全く無症状で,検診時

などに偶発的に心筋虚血が発見されるものをⅠ型とし

た.頻度は 4-5 % である.Ⅱ型は心筋梗塞に罹患後,

無症候性の心筋虚血を示すもの(頻度 10-30 %),Ⅲ

型は狭心症で有痛性のみならず,無症候性の心筋虚血も

有するものである(頻度 70-90 %).原則的には無症候

性心筋虚血においても有痛性の心筋虚血の対応と同様で

ある.ただし,無症候性心筋虚血の患者には高齢者,糖

尿病患者,脳血管疾患患者が多く含まれているため予後

不良と考えられる場合も多く,またⅡ型のように再梗塞

の出現は初回梗塞より予後が悪いため,その診断と治療

の選択は重要である.

無症状であるがゆえに,治療後患者の生活の質に大き

な改善が認めない場合も想定され,冠動脈造影で有意狭

窄を認めても,無症候性心筋虚血の治療には,有痛性の

患者以上に,運動負荷心電図や負荷心筋血流イメージン

グなど,他の検査所見とともに総合的な見地から治療指

針を決定する必要がある.

最近,本邦でも循環器疾患の検査や治療の分野で様々

な大規模前向き臨床研究が計画され,実際に現在進行中

のものもあるが,虚血性心疾患の治療法に関しての信頼

できる結果報告は未だほとんど認めない.本邦は欧米に

比べて,慢性虚血性心疾患に対する治療としてリスクの

層別に関係なく,経皮的冠動脈インターベンションを選

択する頻度が高いようであるが,その選択が患者の予後

の改善につながっているか,さらなる検討を要する.冠

攣縮狭心症に代表されるように,虚血性心疾患の病態に

おいても,人種差が存在する.今後,本邦での慢性虚血

性心疾患の検査や治療における大規模な臨床データが数

多く蓄積されることが望まれる.

また,急性冠症候群の予防には,責任冠動脈病変以外

の不安定プラークの検出も重要であることが示唆されて

おり,冠動脈の不安定プラークの非侵襲的な診断法の確

立も急がれる.

虚血性心疾患の治療の原則は,心筋への酸素供給の不

足を解消することにより,症状の改善と長期的予後を改

善することにある.治療法は,経皮的冠動脈インターベ

ンションや冠動脈バイパス術による冠血行再建術と抗狭

心症薬および二次予防のための抗血小板薬や高脂血症薬

等の薬剤治療に分けられる.治療効果の評価は,冠血行

再建術の場合には冠動脈病変の開存性に対する近接効果

の評価,および薬剤治療における自覚症状の消失や運動

耐容能の改善等の長期的な効果の評価が行われる.近接

効果を非侵襲的に評価するには,運動負荷心電図,負荷

心筋血流イメージング,負荷心エコー図法が用いられる.

侵襲的には冠動脈造影,血管内超音波検査がある.薬物

治療の臨床的評価には非侵襲的検査が主となり,運動負

荷心電図,ホルター心電図,負荷心筋血流イメージング,

負荷心エコー図法による評価を行う.

89

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

無症候性心筋虚血55

今後の課題66

治療効果の評価VII

要 旨

慢性安定虚血性心疾患の治療は,自覚症状と長期的な

生命予後を改善させることが目標となる.各種負荷試験

により治療による心筋虚血の消失あるいは虚血誘発閾値

の改善を評価する.心筋虚血による症状が改善すると運

動耐容能が増加するので,客観的な運動耐容能の評価も

重要である.生命予後に対する治療効果の判定には,治

療による予後規定因子の改善効果を検討する.一方で,

血行再建術後の治療成績の評価には冠動脈病変の開存性

を判定することも重要である.虚血性心疾患にはいくつ

かの臨床的病型があり,治療評価における検査法も病型

に応じる.臨床病型を,1)心筋梗塞のない虚血性心疾

患,2)陳旧性心筋梗塞,3)冠攣縮狭心症,4)無症候

性心筋虚血,にわけ,各種検査法の治療効果の評価にお

ける役割を記載する.

心筋梗塞のない虚血性心疾患での治療効果の評価とし

ては,自覚症状の改善の確認と,心筋虚血の改善効果の

判定が重要であり,ホルター心電図,負荷心電図の施行

が容易である.また,侵襲的,非侵襲的治療を問わず成

功例では運動耐容能が増加する753-755)ため,運動負荷試

験での評価は有用である.

心臓核医学検査では,SPECT 検査が一般的に行われ

る.心筋梗塞のない場合,運動負荷心筋血流イメージン

グの灌流低下が有用である.ただし,運動負荷時の心筋

血流画像は,相対的な心筋血流分布を反映しているので

3 枝病変では冠動脈病変を検出できない場合がある765).

Tc-99m 標識心筋血流製剤は,同時に心プールアンジオ

グラフィや心電図同期心筋 SPECT の施行ができ,左室

壁運動を評価できる.

I-123 BMIPP 心筋脂肪酸代謝イメージングと I-123

MIBG 心筋交感神経イメージングは,安静時の心筋血流

イメージと比較することにより,負荷を行うことなく心

筋虚血が判定できる.特に高齢者や運動が不可能な患者

に有用である248,752).しかし,I-123 BMIPP と I-123

MIBG の欠損は,検査前数週間の心筋虚血をメモリして

いるため,治療直後に施行すると治療前の虚血メモリな

のか治療時の一時的虚血の影響をみているのか分からな

い.また,I-123 MIBG 心筋交感神経イメージングにお

いては,高齢者や糖尿病など自律神経障害が存在する場

合,心筋血流が正常であっても下璧を中心に集積の低下

を認めることが多く,治療効果を評価する際に注意を要

する.

PET では心筋血流イメージングの際,冠動脈血流予

備能を測定することが可能で,薬剤療法の治療効果の判

定に有用である303).F-18 FDG 心筋糖代謝イメージング

は保険適応となり,心筋バイアビリティの評価に有用で,

かつ治療効果判定にも応用される可能性がある.

侵襲的治療の方針を判断する上で,冠動脈造影による

冠動脈の狭窄度や側副血行路などの評価は欠かせない

が,最近の X 線 CT や MRA は性能の進歩が著しく,冠

動脈の非侵襲的イメージングとして急速に普及してい

る.特に症状が安定した患者の治療後の評価(再狭窄の

有無,バイパス血管の開存性など)を,非侵襲的に行え

る点で非常に有用であり,さらに血管内超音波法や血管

内視鏡検査での侵襲的検査の評価に頼っている冠動脈壁

の性状の診断にも応用されつつある.今後,X 線 CT と

MRA の診断的精度がますます向上することが期待され

るが,心電図同期での検査法であるが故,不整脈や頻脈

のある患者には施行困難であることが難点である.

1)症状,心電図

陳旧性心筋梗塞に合併する狭心症の多くは労作狭心症

である.この労作狭心症の治療に抗狭心症薬,経皮的冠

動脈インターベンションや冠動脈バイパス術が用いられ

る.狭心症症状がある場合,治療効果の評価には自覚症

状の強度分類(CCS 分類)766)が簡便である.一方,陳旧

性心筋梗塞では無症候性心筋虚血が少なくない.無症候

性心筋虚血は予後不良であり,その治療評価は重要であ

る.

労作性心筋虚血の治療効果判定には,運動負荷心電図

と負荷心筋血流イメージングが用いられる.運動負荷心

電図では日本心電学会が示した「抗狭心症薬判定小委員

会報告」9)がある.ここでは同一運動時間における ST 下

降の改善と運動耐容時間の改善を判定の指標としてい

る.心電図上異常 Q 波のある陳旧性心筋梗塞患者では,

90

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

はじめに11

心筋梗塞のない虚血性心疾患22

心電図,心臓核医学検査A

X 線 CT,MRA,冠動脈造影B

陳旧性心筋梗塞33

陳旧性心筋梗塞に合併した狭心症ないし心筋虚血の治療効果の評価

A

負荷時の ST 上昇が心筋虚血を示す場合と左室壁運動異

常を示す場合とがあり,心電図所見からこれらを鑑別す

ることは難しい.無症候性心筋虚血では運動負荷心電図

に加えて,ホルター心電図と負荷心筋血流イメージング

が用いられる.ホルター心電図の場合,24 時間におけ

る ST 下降の生じる頻度と ST 下降の合計時間が指標と

なる.

2)負荷心筋血流イメージング

負荷心筋血流イメージングを用いると,負荷時の症状

や心電図の情報に加えて,一過性灌流欠損の有無や程度

で心筋虚血の治療効果を総合的に評価できる.心筋梗塞

の多くでは安静時にも灌流低下を有するが,負荷試験で

の一過性灌流低下の改善が効果判定の指標となる767).こ

れは梗塞部・非梗塞部を問わない.Tl-201心筋シンチで

は一過性灌流欠損の大きさと共に,灌流低下部の血流ト

レーサの取り込み率(% uptake)も指標となる767).しか

し個々の症例で,どれほど指標が改善すれば治療効果あ

りとするかについて一般的な基準は無い.

血行再建術後,負荷心筋血流イメージングで一過性欠

損を認めれば,一般的に再狭窄やグラフト閉塞を示す.

しかし血行再建後の間もない時期,負荷心電図で ST 下

降がみられても心筋血流イメージングが正常の場合があ

る.また血管は開通しているのに負荷心筋血流イメージ

ングで一過性欠損がみられることもある.このような偽

陽性は冠動脈バイパス術で動脈グラフトを用いた場合多

くみられる183).このような場合,数カ月後に灌流が改善

する.

以上のように,経皮的冠動脈インターベンションや冠

動脈バイパス術での再狭窄の判定には注意が必要であ

る.負荷心筋血流イメージングは 4-6 週以後に施行し

た方が,再狭窄の感度,特異度ともに向上する.

1)左室収縮能および拡張能

多枝疾患と左室機能低下はいずれも予後不良の因子で

あり,この 2つが合併すると特に予後が悪い.また,そ

のような例では治療法として冠動脈バイパス術が予後改

善に優ることが報告されている.このような例では心筋

虚血と左室機能の改善が治療目標となる.心筋虚血の治

療効果は上記の方法で評価する.

心筋虚血で左室機能が低下している症例への血行再建

療法の評価は,心機能の改善と心事故の減少で行われる

ことが多い.心機能の改善の指標として,多くは収縮能

の指標である左室駆出率が用いられる.左室駆出率の測

定は,米国では平衡時心プールアンジオグラフィが多く

用いられ,我が国では心エコー図法や左室造影法が用い

られることが多い.治療により左室駆出率がどれほど改

善すれば有意かについては未だ一般化された基準は無い

が,駆出率 5 % 以上の改善を有意とする報告がある768,769).

また駆出率 30 % 以下の虚血性心筋症患者では,血行再

建後の駆出率の改善は予後とは相関せず769),治療効果の

判定には注意が必要である.一方,最近用いられる心電

図同期 SPECT 法を用いた心筋シンチグラフィや,MRI

は左室機能と心筋灌流を同時に評価できることから,虚

血性心筋症の治療評価に今後有用性が期待される.一方,

拡張能についての治療効果の指標は現在定まっておら

ず,今後の課題である.

近年虚血性心筋症に対し,両室ペーシングによる心室

再同期療法や,外科的な左室形成術など,特殊な治療が

行われうるが,現時点ではそれらの効果判定は症例数の

多い専門施設に委ねるべきである.

2)僧帽弁逆流

心筋梗塞に伴う左室機能不全例では僧帽弁逆流を合併

することが少なくなく,これを合併すると予後が悪い.

逆流の原因として,左室拡大に伴う僧帽弁輪の拡大,僧

帽弁の心尖部あるいは側壁方向への牽引,乳頭筋機能不

全,僧帽弁腱索の断裂,僧帽弁の硬化などがある.治療

法として,冠動脈バイパス術に僧帽弁輪形成術や弁置換

術が併用される.治療効果はカラードプラ法にて僧帽弁

逆流の検出と重症度の評価を行う.僧帽弁逆流は 1-4

度に分類され,この程度が減ずれば改善と考えられる.

経胸壁心エコー図検査法の評価が難しい場合,経食道心

エコー図検査法が有用である.

急性心筋梗塞の発症後短い時間内に梗塞部が過剰に引

き伸ばされて左室腔が拡大すると,慢性期になって一層

左室拡大と収縮機能の低下が進行する例がある.このよ

うな過程を慢性期梗塞後左室リモデリングと呼ぶ.梗塞

後左室リモデリングは予後不良の徴候である.慢性期左

室リモデリングの予防と治療はアンジオテンシン変換酵

素(ACE)阻害薬がよく用いられる.また最近,心機能

低下を有する患者にも運動療法が行われるようになり,

持続的な運動習慣が左室リモデリングを進展させない治

療法となるかが問題になっている770).

左室リモデリングの予防効果があったか否かは,左室

91

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

心筋虚血を合併した左室機能不全(いわゆる虚血性心筋症)に対する治療

B 梗塞後左室リモデリングの予防と治療C

拡張末期容積の経時的変化が指標とされる.左室拡張末

期容積の評価には左室造影法,心エコー図法,平衡時心

プールアンジオグラフィ,心電図同期心筋 SPECT,

MRI などが用いられる.加えて左室収縮末期容積,左

室駆出率も同時に検討の対象となる.梗塞後左室リモデ

リングは,容積変化のみでなく左室形態の変化でもある.

左室形態の変化は,左室造影を用いて梗塞領域と非梗塞

領域を分離して各々の成分の拡大を評価する方法や,梗

塞部位の突出をみる指標や,左室の球形化を計る指標も

ある771).しかし,左室リモデリングの治療評価の指標と

して何が最適か,未だ一般化した結論はなされていない.

多くの研究では,左室容積が何 ml になれば,あるいは

何 % 拡張すれば左室リモデリングが生じたことになる

のかを定義していない.一部の報告に,左室拡張末期容

積の 20 % の増加を有意としているものがある772).しか

し大部分の研究は,治療群と非治療群で心筋梗塞の左室

容積変化に差があったか否かの検討である.定量的な基

準に関しては今後の問題である.

冠攣縮狭心症の治療評価は,安定労作狭心症のそれと

異なる.その理由として,発症機序が両疾患で異なり,

両者の間に病態や臨床像の違いがあるためであるが,胸

痛発作の改善は両疾患に共通の治療目標である.安定労

作狭心症では,冠血流を制限する有意な冠動脈狭窄病変

に基づいて,労作時の心筋酸素需要が酸素供給を上回る

ために心筋虚血が生じる.虚血の検出法ならびに治療評

価法として運動負荷試験が最も有用である.一方,冠攣

縮狭心症では冠攣縮による機能的狭窄による冠動脈の閉

塞あるいは亜閉塞によって冠血流量が減少して心筋虚血

を来す.冠攣縮狭心症の発作は夜間・早朝に多い.冠攣

縮により,心室頻拍・心室細動・完全房室ブロックのよ

うな致死性不整脈あるいは急性心筋梗塞に進展する.治

療対策を立てる上で,自覚症状の改善が最も重要な評価

方法である.その他に冠攣縮の病態の特徴を示す各種検

査法による評価方法が用いられる.

冠攣縮狭心症の代表的な疾患である異型狭心症の治療

評価を中心に短期的ならびに長期的な立場から述べる.

冠攣縮狭心症は不安定狭心症の病態を示すことが多

い.その発症機序は冠攣縮によるため,治療効果の評価

方法に統一した基準を用いる.厚生省の委託研究班によ

って作成された抗狭心症薬の臨床評価法に関するガイド

ラインにその評価方法が示されている773).本邦において

異型狭心症における抗狭心症薬の効能を取得するには,

このガイドラインに準拠した試験が要求される.米国で

も FDA の作成した基準がある.これらの評価項目は胸

痛発作回数の改善を一次エンドポイントとする短期間の

治療評価法である.

冠攣縮狭心症は経過中に突然死を来すことがあるた

め,薬剤の作用が冠攣縮の抑制に有効であるかどうかを

評価することも重要である.冠攣縮狭心症の冠動脈には

有意な狭窄病変を認めない症例が多く,薬剤投与によっ

て長期予後の良好なことが確認されている.しかし冠攣

縮狭心症のなかには治療抵抗性冠攣縮の例や,逆に自然

寛解を来す例もあり,発作消失が認められてもその長期

効果と薬剤との関連性を慎重に判断することが重要であ

る.これに対し冠攣縮誘発試験を用いた評価が試みられ

ている.

1)評価項目

評価項目には,胸痛が一般的に用いられており,その

発作回数の推移によって判定される.しかし,冠攣縮が

関与する狭心症は,胸痛発作回数は不安定であるうえに

重篤な合併症を来す危険性があるので,観察期をむやみ

に長くすることができない.したがって,診断が確立し,

治療および薬剤の評価に必要な胸痛発作回数があると判

断したならば,直ちに薬物の投与を開始すべきである.

冠攣縮狭心症,特に異型狭心症では,入院後胸痛発作が

1 日に数回あり,自然発作時心電図で ST 上昇が記録で

きたならばすぐ治療を開始する.冠攣縮の程度が軽く,

攣縮時の冠動脈狭窄度が完全閉塞に至らない症例では,

発作時 ST 下降を示すこともある.また,冠攣縮により

完全閉塞が生じても,側副血行路の発達により心筋虚血

が貫壁性に至らず心内膜側にとどまり,ST 下降を呈す

ることもある.

2)自覚症状による評価

異型狭心症の第1選択薬は,カルシウム拮抗薬である

が,投薬するとこれまで頻回に起きていた発作が完全に

消失することが多く,薬剤による効果は数日間で判定可

能である774,775).検査法によっては冠攣縮の発作予防効

果は単回投与にても可能である776,777).中には,カルシ

ウム拮抗薬によっても発作が消失しない例がある.その

92

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

冠攣縮狭心症44

冠攣縮狭心症の特徴A

冠攣縮狭心症の治療評価法B

冠攣縮狭心症における短期治療効果と評価方法C

場合には薬剤の投与時間が発作を抑制するのに必要な血

中濃度に達しているかどうかを確認する.多枝冠攣縮例

では,薬剤抵抗性の発作が多く,カルシウム拮抗薬の他

に硝酸薬やニコランジルの併用を要することがしばしば

ある.このように,薬剤による発作回数の推移とニトロ

グリセリン舌下錠の使用量によって治療効果を判断する

ことが可能である.

3)検査法による評価

以上の評価法は胸痛という自覚症状によって判定する

方法であるので,客観的に評価する方法も必要である.

運動負荷試験は特殊な症例を除いて通常使用できない.

安静時発作の改善を評価するには,長時間連続記録心電

図が有用である.これには監視装置によるものと患者携

帯用のホルター心電図がある.前者は集中治療室でしば

しば用いられる方法であるが,後者は一般病棟や外来で

も使用できる.ホルター心電図によって,ST 上昇回数,

ST 上昇持続時間,最大 ST 上昇度などが解析できるた

め,胸痛の有無にかかわらず心電図所見から治療効果を

判定できる.さらに,心電図所見を詳細に解析すること

によって,その薬剤の薬理学的特性や副作用などとの関

連性を調べることができる.

さらに,薬剤の有効性を調べるために,冠攣縮誘発試

験を用いることができる.エルゴノビンやアセチルコリ

ンによる冠攣縮誘発を治療前後で施行して胸痛や心電図

異常が発現するかどうかで判定する775).また,異型狭心

症は,早朝に発作が起きやすいため,早朝の運動負荷試

験によって評価することもできる776).さらに,過換気試

験,自律神経機能検査としての心拍・血圧変動解析によ

る評価,負荷心筋血流イメージング,心エコー図法によ

る治療前後の所見を比較することによって評価でき

る776-778).カルシウム拮抗薬はもっとも有効な冠攣縮予

防薬である.しかし,カルシウム拮抗薬による効果がみ

られず,α遮断薬やケタンセリンが奏功した例の報告が

あるが,これらの薬剤について多数例で薬効評価試験を

行うと,必ずしも有効性は確認されなかった.また,β

遮断薬の有効性は認められず774,775),むしろ悪化すると

の結果が得られている775).

1)冠攣縮狭心症の治療の継続

長期治療評価には,発作回数の推移で薬剤の効果をあ

る程度判定できるが,冠攣縮そのものが抑制されている

かどうかはわからない.薬剤を中止すると突然発作が起

きることや突然死をきたすことがある.したがって,冠

攣縮狭心症の長期治療効果を判定するのは,薬剤投与中

では難しい.これまでの研究では,投薬中にエルゴノビ

ンやアセチルコリンによる冠攣縮誘発試験で,再現性を

もって同じ冠動脈部位に冠攣縮が誘発されるとの報告が

あり779,780),薬剤は中止すべきでないとの意見が多い.

しかし,異型狭心症の中には,自然寛解を示す例のある

ことも指摘されており779),薬剤による治療を正確に継続

する必要のある症例と薬剤の減量あるいは休薬できる症

例の特徴を知ることが重要である.薬剤を中止できない

症例,あるいは経過中に注意を払うべき症例に,以下の

タイプが含まれる.ひとつは急性心筋梗塞に進展しやす

い症例で,特徴として冠動脈に有意な狭窄を有する例が

多い750,781-782).ふたつめは突然死を来す症例で,冠動脈

に有意な狭窄病変がなく多枝冠攣縮を来す症例に多く,

安静時のみならず労作時にも発作が起き,発作時に心室

頻拍,心室細動や完全房室ブロックなどを伴う605,782).

また,飲酒で発作が生じる例には,飲み過ぎによる突然

死が報告されており,厳重な注意が必要である750).

2)異型狭心症の長期予後

異型狭心症の長期予後について,本邦の報告では 3年

間の生存率は 96 % 以上と極めて良好である605,782).一方,

海外の報告では 84-92 % であり762),本邦の方が生存率

は高い.急性心筋梗塞の非発症率は,本邦では 85 % 以

上であるのに対し,海外では 63-77 % であり,生存率

と同様に心筋梗塞も本邦では発症しにくい.

長期予後の心事故発症に関する予測因子として,最も

重要な因子は,多枝冠攣縮(あるいは前壁・下壁誘導同

時の ST 上昇出現)の有無とカルシウム拮抗薬使用の有

無である750).また,急性心筋梗塞発症の予測因子は,こ

れらの因子の他に冠動脈病変の重症度が独立因子であ

り,突然死の独立予測因子は,狭心症発作に関連した不

整脈発現と失神発作である.なお,心筋梗塞への進展は,

異型狭心症の発病数ヶ月以内に起きることが多いとの報

告がある781).このような時期を過ぎると急性心筋梗塞の

発症は極めて少なく経過は良好であるが,中には,前述

のような突然死を来す例のあることを考慮すべきである.

無症候性心筋虚血は各種検査において一過性心筋虚血

93

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

冠攣縮狭心症における長期治療効果とその評価方法

D無症候性心筋虚血55

無症候性心筋虚血の治療選択A

を示すが,狭心痛を伴わない病態であり,臨床的には

Cohn の分類 783)が用いられている.ASIST,ACIP,

CAPE183,784,785)等の海外大規模臨床試験では無症候性心

筋虚血は通常の狭心症や心筋梗塞と臨床的意義は同等と

され,治療選択に大きな違いがないことが示されている.

したがって,治療効果の評価については通常の狭心症や

心筋梗塞と同様に,冠血行再建術や薬物療法に対する短

期的,長期的効果の評価を行う.

治療評価は臨床的に狭心痛発作を有さないため,各種

検査法にて評価すべきであり,この点は狭心痛を有する

場合とは大きく異なる.CohnⅡ,Ⅲ型いずれにおいて

も検査手順は同様で,短期的には負荷心電図,ホルター

心電図,負荷心エコー図法,負荷心筋血流イメージング

および冠動脈造影が中心となる.とくに心筋梗塞を合併

した糖尿病患者は糖尿病のない患者より予後は悪いとさ

れ,心筋梗塞の再発予防のため無症候性心筋虚血の検索

は積極的に行うべきである.定期的に運動負荷心電図,

負荷心筋血流イメージング,負荷心エコー図法等を行い,

虚血の増悪があれば冠動脈造影を施行する786).無症候性

心筋虚血において運動負荷心電図とホルター心電図の両

検査併用における評価では,心事故発生率は両者とも陽

性群 51 %,両者とも陰性群 8.5 % と,両検査の組み合

わせにて陽性診断,陰性診断の精度は共に向上する787).

また,運動負荷心電図ならびに負荷心筋血流イメージン

グを組み合わせた評価では,共に陽性所見を示した症例

の心事故発生率は 48 % で,どちらか一方が陽性か,あ

るいは両方で陰性だった症例の心事故発症率は 3-12 %

であり,長期的な治療効果の評価には運動負荷心電図と

負荷心筋血流イメージングの併用においても精度が高

い788).CohnⅢ型のごとく無症候性心筋虚血を併せ持つ

有痛性狭心症の心事故発生率を下げるには,自覚症状の

消失のみを治療の指標とできない.無症候性虚血を含め

た心筋虚血発作のすべてを治療すべきであり,自覚的な

狭心症が治療されているだけでは予後の改善は得られな

い.よって必ず他覚的検査によって治療評価をしなけれ

ばならない.冠動脈造影は治療効果の判定に必須である

が,短期的評価には形態の改善が主となるが,長期的評

価にはさらに長期予後の改善につながる機能的改善を評

価することが重要である.無症候性心筋虚血においても

左心機能の改善は重要な治療効果の評価因子である.心

エコー図法,平衡時心プールアンジオグラフィ,左室造

影等は局所壁運動評価および左室駆出率,左室容積算出

が可能で治療効果判定に有用な検査法であるが,検査選

択の詳細は陳旧性心筋梗塞の左室機能評価と同様である

ため省く.

無症候性心筋虚血の治療効果判定のための検査手順を

以下に示す.

短期的治療効果および長期的治療効果の検査手段とし

てもっとも繁用される.

CohnⅡ,Ⅲ型の無症候性運動負荷心電図陽性例は症

候性運動負荷心電図陽性例とその臨床的意義は同等と考

えられ,運動負荷心電図が陽性であれば心筋血流イメー

ジングで重症度評価を行う.器質的冠動脈狭窄を有する

無症候性心筋虚血にて運動負荷陽性者の死亡率は 7年間

にて 24 % である.一方,運動負荷心電図が陰性であれ

ばその予後は良く,治療効果判定の目安となる789).負荷

心電図の評価基準として同一運動時間における ST 下降

度,運動耐容時間の変化を使用するのが適当である9).

CohnⅡ,Ⅲ型におけるホルター心電図での無症候性

心筋虚血出現頻度は 22-59 %(平均 35 %)で中,長期の

薬剤の治療効果の判定に有用である.ST 下降 1 mm 以

上(水平型あるいは下降傾斜型)を 1分間以上認めた回

数,ST 上昇 2 mm 以上を 1 分間以上認めた回数をもっ

て,ST 偏位の総頻度,最大 ST 偏位,持続時間等にて

評価する.心筋梗塞症例においては冠性 T 波の存在に

より一過性虚血か否かの判断は難しいことがある62,790).

一般に経皮的冠動脈インターベンション後再狭窄患者

の 25% は無症状であり571,791),無症候性心筋虚血の診断

には本検査は不可欠である.またバイパス血管,特に静

脈グラフトが無症候性に閉塞した患者では本法が有用と

される1,792).心筋シンチグラフィ,PET および最近では

MRI が選択できるが,心筋シンチグラフィが一般的に

用いられている.Tl-201心筋血流イメージングでの灌流

欠損度とその可逆性は無症候性心筋虚血においても短期

的,長期的治療効果の評価に有用である.血行再建後の

短期的治療効果の判定において冠動脈造影をリファレン

ススタンダードとすると虚血性変化は良好な相関を示

し,灌流低下域の範囲は重症度を示す指標となる.また,

Tl-201心筋血流イメージングは薬剤による長期的治療の

効果の評価に対する有用性も確立している.メタアナリ

シスでは Tl-201 心筋血流イメージングの有病正診率

(陽性的中度)は 92 %,無病正診率(陰性的中度)は

94

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

無症候性心筋虚血の治療評価の指標B

運動負荷心電図C

ホルター心電図D

心筋血流イメージングE

78 % である.また,Tc-99m 標識心筋製剤も虚血の検出

精度は Tl-201と同等とされる156,731).

無症候性心筋虚血に限った治療効果の評価成績は不充

分であるが,症候性の虚血性心疾患に準じた効果判定を

行えば良い.運動または薬剤による心筋虚血誘発下の心

エコー図法は長期的治療評価の上で有用である.トレッ

ドミル負荷心電図で陽性であっても負荷心エコー図法で

異常壁運動が検出されない場合は心事故の発生頻度は少

ない.一方,負荷心エコー図法で異常壁運動が検出され

る例は心事故の発生の可能性は高い384,793).

経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄の有無,

冠動脈バイパスグラフト開存等を評価する目的で,短期

的な治療効果の判定には不可欠である.一方,長期的に

は形態的指標より,臨床的,機能的指標が重要であり,

運動負荷心電図や心筋血流イメージング等で顕著な虚血

性変化がなければ冠動脈検査は必要ない.長期的な治療

効果の評価における冠動脈造影検査の臨床的意義につい

ては脂質低下療法後の冠動脈硬化退縮効果等の判定には

必要と思われるが,費用,効果等をふくめた臨床的意義

は確立されていない635).

Tc-99m 心筋血流製剤による心電図同期 SPECT や

MRI にて心筋血流イメージングと心室壁運動の同時評

価が可能となり,治療効果判定や予後の予測の評価にお

いて重要な臨床的検査法の一つとなりつつある.各種検

査法の質的向上は今後さらに進歩していくと思われる

が,費用と効果の両方を考慮して,各種の検査法を選択

し組み合わせることが大きな課題である.

95

慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン

負荷心エコー図法F

冠動脈造影G

治療効果の評価における今後の課題44

96

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004年度合同研究班報告)

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