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動物の眼底の評価と 検眼鏡検査法 テキスト 1 動物の眼底の評価 I .正常な眼底 眼底 検眼鏡を通して見える眼の後部 眼底は単一の構造ではなく、むしろ網膜脈管系、感覚性網膜、色素性網膜、タペタム、脈絡膜、 強膜、視神経で複合的に構成されている。網膜の異常を確認できるようになる前に、様々な正常 像を把握しておく必要がある。 構造 正常でみられる変異(犬) 1.感覚性網膜 なし 2.色素性網膜 完全に色素沈着がある 部分的に色素沈着がある 色素沈着なし 3.網膜脈管系 蛇行 視神経静脈の旋回-完全もしくは不完全 4.タペタム 完全 部分的 欠損 様々 な色調(緑、黄色、オレンジが最も多い) 5.脈絡膜 顕著な色素沈着 軽度の色素沈着 色素沈着なし 6.強膜 なし 7.視神経 無鞘あるいは顕著な有鞘 これらの変異があらゆる組み合わせで存在する。これらの変異で目に見えるものすべてを我々 は眼底 と称するのである。犬では、ほとんどの場合、網膜と脈絡膜の色素沈着(通常オーツ麦の 色に見える)、タペタム領域の大きさと色調、視神経の有鞘の度合いといったものに正常で認めら れる変異がみられる。動物の正常な眼底鏡所見にも大きな種差がみられる。

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Page 1: 動物の眼底の評価 - Hist. Vet19/fundus_c.pdf動物の眼底の評価と 検眼鏡検査法 テキスト - 2 II.眼底疾患による影響 A.感覚性網膜 1. 網膜の菲薄化あるいは消失

動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 1

動物の眼底の評価

I.正常な眼底

眼底 - 検眼鏡を通して見える眼の後部

眼底は単一の構造ではなく、むしろ網膜脈管系、感覚性網膜、色素性網膜、タペタム、脈絡膜、

強膜、視神経で複合的に構成されている。網膜の異常を確認できるようになる前に、様々な正常

像を把握しておく必要がある。

構造 正常でみられる変異(犬)

1.感覚性網膜 なし

2.色素性網膜 完全に色素沈着がある

部分的に色素沈着がある

色素沈着なし

3.網膜脈管系 蛇行

視神経静脈の旋回-完全もしくは不完全

4.タペタム 完全

部分的

欠損

様々な色調(緑、黄色、オレンジが最も多い)

5.脈絡膜 顕著な色素沈着

軽度の色素沈着

色素沈着なし

6.強膜 なし

7.視神経 無鞘あるいは顕著な有鞘

これらの変異があらゆる組み合わせで存在する。これらの変異で目に見えるものすべてを我々

は眼底と称するのである。犬では、ほとんどの場合、網膜と脈絡膜の色素沈着(通常オーツ麦の

色に見える)、タペタム領域の大きさと色調、視神経の有鞘の度合いといったものに正常で認めら

れる変異がみられる。動物の正常な眼底鏡所見にも大きな種差がみられる。

Page 2: 動物の眼底の評価 - Hist. Vet19/fundus_c.pdf動物の眼底の評価と 検眼鏡検査法 テキスト - 2 II.眼底疾患による影響 A.感覚性網膜 1. 網膜の菲薄化あるいは消失

動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 2

II.眼底疾患による影響

A.感覚性網膜

1. 網膜の菲薄化あるいは消失

a. 原因

(1) 萎縮または変性

b. タペタム眼底領域に対する影響 - 反射性亢進、局所性あるいはびまん性

2. 網膜の肥厚

a. 原因

(1) 異形成(先天性の奇形)

(2) 炎症と細胞浸潤 - 網膜炎、脈絡網膜炎

(3) 浮腫

(4) 腫瘍

b. タペタム眼底領域に対する影響

(1) 反射性の低下、局所性あるいはびまん性

(2) 二次性網膜剥離(通常は網膜層の間に液体が貯留するため)

3. 網膜剥離

a. 機序

(1) 硝子体からの牽引(硝子体牽引帯、通常出血による)

(2) 網膜下の液体貯留(通常ブドウ膜炎に起因)

(3) 裂孔原性網膜剥離(網膜での裂孔、硝子体が裂開して網膜下に入り込む)

b. 原因

(1) 外傷

(2) 腫瘍

(3) 炎症

(4) 脈管および血液学的変化

(5) 過熟白内障に併発あるいは眼内手術後の発症(どちらも硝子体の変性に起因

する)

(6) 硝子体の退行性変性(加齢性)

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 3

B.網膜色素上皮(RPE)

1. RPE の萎縮(感覚性網膜全体の萎縮に併発して起こる)

a. 原因

(1) 慢性炎症(網膜炎、脈絡網膜炎)

(2) 遺伝性網膜変性

b. 眼底への影響

(1) タペタム眼底領域 - 既に色素脱失しているため観察は困難

(2) タペタム以外の眼底領域 - 色素脱失領域

2. 色素増殖

a. 原因

(1) 炎症(網膜炎)

(2) ビタミンE欠乏症(RPE にリポフスチンの蓄積)

b. 眼底への影響 - 色素の障害、色素沈着過剰

C.網膜の血管

1. 怒張

a. 原因

(1) 炎症(網膜炎または脈絡網膜炎)

(2) 全身性高血圧

(3) 過粘着性症候群 - 例:高ガンマグロブリン血症

(4) 多血症 - 1°、2°、など

(5) 脱水症

b. 眼底への影響

(1) 網膜脈管の怒張とおそらくは蛇行、網膜出血

(2) 網膜剥離

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 4

2. 狭細化

a. 原因

(1) 網膜萎縮**

(2) 緑内障

(3) 貧血症

(4) 血管の閉塞;血栓、など

(5) 低血圧症

b. 眼底への影響 - 網膜脈管の縮小

3. 血管の色調の変化 - ほとんどなし

a. 高脂血症 - ピンク色の脈管(“網膜脂肪血症”)

b. 低酸素症 - 暗赤色の血管

4. 網膜出血

a. 原因

(1) 炎症 - 例:リケッチア感染、細菌性敗血症

(2) 高血圧

(3) 腫瘍(特にリンパ肉腫)

(4) 造血系の異常 - 貧血、多血症、白血病、血小板減少症、凝固障害

(5) 外傷

b. 眼底への影響 - 出血

D.タペタム

タペタムに原発性の疾患が起こることはまれである。起こるとすれば、網膜や脈絡膜の疾患か

ら二次的に起こる可能性がある。例えば網膜や脈絡膜の重度の炎症によってタペタム層の破壊が

起こる可能性があり、その結果検眼鏡によって暗い部分や脱色した部分が確認される。

タペタムは脈絡膜の一部であるから、先天性の脈絡膜発育不全がタペタムの欠損として観察さ

れる場合がある(例:コリー眼異常における脈絡膜低形成)。

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 5

E.脈絡膜

1. 肥厚

a. 原因

(1) 炎症(ブドウ膜炎)

(2) 腫瘍

b. 眼底への影響

(1) 限局性あるいはびまん性の“膨隆”部分

(2) 限局性あるいはびまん性のタペタムの脱色

(3) 反射性の低下(二次性網膜浮腫や炎症に起因する)

(4) 局所性あるいはびまん性に網膜下滲出液や肉芽腫を生じる

(5) 網膜剥離

2. 脈絡膜の菲薄化

a. 原因

(1) 萎縮 - 慢性あるいは重篤なブドウ膜炎に継発

(2) 先天性発育不全 - コリー眼異常

b. 眼底への影響

(1) 萎縮 - タペタムの脱色や色素障害がみられる場合があるが、正常に見える

場合もある

(2) 低形成 - タペタムの欠損、脈絡膜の脈管の構造が異常で正常よりも少ない。

強膜が透けて見える場合がある(CEA)

F.強膜

検眼鏡で観察できるような変化が強膜に生じることはほとんどない。オーストラリアンシェパ

ードでは、先天性の異常(強膜の拡張やブドウ膜腫)が小眼球症と白内障に併発して起こる。

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 6

G.視神経

1. 過小

a. 原因

(1) 低形成 - 先天性

(2) 陥凹 - 慢性の緑内障に併発する後天的変化

(3) 萎縮 - 視神経や網膜の損傷から二次性に起こる

2. 過大

a. 原因

(1) 髄鞘形成の過剰(“偽性乳頭浮腫”)

(2) 視神経炎

(3) コロボーマ(視神経の発育異常)

(4) 腫瘍(例:LSA)

b. 眼底への影響 - 視神経乳頭の腫脹や不明瞭化、出血がみられる場合もある

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 7

検眼鏡検査法

検眼鏡検査とは眼底の検査である。獣医師が動物の眼底を検査する方法は一般に、直像検査法

と倒像検査法の 2 種類がある。最近では Welch Allyn 社が PanOptic 検眼鏡という新製品を発売し

ている。これは、使用法が直像検眼鏡と類似しているが、視野は 20 ジオプトリーレンズを用いた

倒像検査と同程度のものが得られる。いずれの方法でも、短時間作用型の 0.5%トロピカミドで薬

理学的に散瞳させれば、眼底はより検査しやすくなる。トロピカミドを点眼してから約 10~20

分で、瞳孔は対光反射を起こさずに広く散大しているはずである。この薬理作用は、大半の飼育

動物で 4~6 時間は持続する。

1.直像検査法 直像検眼鏡はほとんどの飼育動物で眼底の評価に使用できる。しかし最も有効なのは、大動物

の眼検査である。直像検眼鏡による検査では、網膜の正立像が 15~18 倍に拡大される。しかし画

像のサイズが非常に小さいので(およそ視神経板の直径分または眼底全表面積の 2~3%)、常に

目が動いている小動物では完全な眼底検査を行うことが非常に難しい。大動物の眼は比較的安定

しているので(あまり眼窩内で動かない)、直像検眼鏡で十分に検査が行える。

利点 欠点

1. 可搬性

2. 安価

3. 拡大率(15~18 倍)

4. 使いやすい

5. 正立直像

1. 視野が狭い

2. 操作距離が短い

3. 立体視なし

4. 網膜辺縁部を観察できない

5. “活発な”動物では実施しにくい

方法

直像検眼鏡にある加減抵抗器のスイッチを入れ、十分な光度(明るすぎない程度)に合わせる。

ジオプトリー設定は 0 に合わせる。診察室は暗くしておく。まずは検査を行う眼から約 30~60 cm

離した位置で検眼鏡をのぞく。明るいタペタム反射を観察できたら、網膜構造に焦点が合うまで

検眼鏡を眼の方へゆっくりと近づけていく。眼から約2.5~5 cmの距離で焦点が合うはずである。

動物の左眼を観察する場合は検査者も左目を、右眼を診る場合には右目を使う。反対側の目(検

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 8

眼鏡で見ていない側の目)は開いておく。動物の眼底に焦点が合ったら、網膜血管の位置を確認

して視神経へとたどっていく。視神経の位置を確認した後、眼底のほかの部位も系統的に調べて

いく。ジオプトリー回転盤の目盛りを 1~2 ジオプトリー上下に動かし、網膜構造の焦点を合わせ

ながら使用する。検査中は常に 2.5~5 cm の焦点距離を維持するべきである。

2.倒像検査法

倒像検査法は比較的高価な双眼間接検査法か、光源が1つの手持ち式レンズを用いて行うこと

ができる。2 種類の機器にはそれぞれ利点と欠点がある(後述)が、特性と方法は非常に類似し

ている。検査者が倒像検査法に熟練してくると、もっと有効に、そして小動物の眼底をスクリー

ニング検査することが早くできる。倒像検査法には光源と、通常は 20 ジオプトリーの手持ち式レ

ンズを使用する。この方法では 3~5 倍に拡大された反転倒立像が得られる。これは眼底から投影

された虚像であり、手持ち式レンズで焦点を合わせる。手持ちレンズには、安価な B&L レンズ

から高価で精巧な光学レンズまでいくつかのタイプがある。検査者には、ちょうど手持ちレンズ

の前に像が存在するように見える。この方法の利点は、広い視野が得られるため、短時間で完全

な眼底検査を行えることである。

<双眼倒像検査法>

利点 欠点

1. 視野が広い

2. 患者の頭部からの距離がある

3. 立体視

4. より混濁した透光体を通過する

5. フリーハンドで行うことができる

1. 反転倒立像

2. 直像検眼鏡に比べ習得が難しい

3. 高価

<焦点用光源とレンズを使用した倒像検査>

利点 欠点

1. 安価

2. 可搬性

3. 視野が広い

4. 患者の頭部からの距離がある

1. 立体視なし

2. 反転倒立像

3. 直像検眼鏡に比べ習得が難しい

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動物の眼底の評価と

検眼鏡検査法

テキスト - 9

方法

診察室は暗くし、助手に動物の頭を保定させながら、検査者は焦点用光源(例:明るいペンラ

イト、直像検眼鏡、Finnoff 徹照器など)を、検査する眼から腕の長さの距離で保持する。動物の

眼から明るいタペタム反射を得るには、光源を検査者の目の近くで維持しなくてはならない。反

射がみられたら、レンズを眼の 2.5~5 cm 手前まで近づけて検査する。レンズの手前に虚像とし

て眼底が現れるはずである。光源やレンズを動かすことで眼底を完全に調べることが可能になり、

また眼底のほかの部位も観察できるようにこれらを一直線上に保持しておく。像が見えなくなっ

た場合には、検査者はレンズを外し直して再度タペタム反射を映し出させて行う。

3.PanOptic検眼鏡を用いた検眼法

この機器は最近、Welch Allyn 社から獣医師向けに発売されたもので、検査者が器具を使用して

眼底に光を投射させ、光源と同軸に沿った視界窓を通して見ることにより眼底の真の直像を得る

ことができるという点で直像検眼鏡と類似している。発光装置で光を角膜上の一点に収束させ、

光の経路を患者の眼底に分散させて眼底の広い領域を照らすことができる。25 度の眼底視野を得

ることができ、この視野は直像検眼鏡の 5 倍の大きさで、直像検眼鏡と倒像検査法で得られる視

野のほぼ中間的な大きさになる。器具のヘッド部分は、WelchAllyn 社製の直像検眼鏡ヘッド用に

設計された標準的な透徹照明器具のハンドルに合うようになっている。

方法

この方法は散瞳をさせなくとも行えるが、著者は散瞳させた方がより実施しやすいと考えてい

る。まず眼鏡を着けている検査者は眼鏡を外した方が良い。検査窓を覗きジオプトリー回転盤を

使用して内部空間を通し対象物に焦点を当てる。動物の大半は、ほぼ“0”設定に合わせると良い。

検査窓のダイヤルは小さな窓にセットし(緑色の線の位置)、検眼鏡のスイッチを入れて光度加減

抵抗器を最大にしておく。検査者は患者から 15 cm 離れ、患者の側頭側から 15~20°の角度の位

置に立つ。眼底を照らすとタペタム反射(タペタムのない動物ならば赤色の反射)が確認できる。

動物の眼瞼を開いたまま保持し、検査者は患者の眼に向かってゆっくりと近づく。アイカップは

適切な位置にあれば動物の眉と接触するはずである。これに中程度の圧迫をかけることによって

最良の視野を得ることができる。犬によってはアイカップの下で眼瞼を閉じてしまい検査しにく

くなるので、器具を使用している間はアイカップを取り外し、薬物により散瞳させるのが最も有

効であると著者は考えている。アイカップを使用しない場合の焦点距離は、眼から約3cmである。

眼底像が見えたら、ジオプトリー回転盤をわずかに回転させると焦点の合った良好な像を得るこ

とができる。倒像法よりも優れている点は、使用法の容易さである。

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 1

眼底検査の解釈と眼底検査の解釈と検眼鏡検査法検眼鏡検査法

M.G. DavidsonProfessor, Ophthalmology

College of Veterinary MedicineNorth Carolina State University,

Raleigh, North Carolina USA

眼底眼底n 検眼鏡を通して見える眼球の後部

n 強膜、脈絡膜、網膜による異なった層により、複合的に構成されている

眼底の層眼底の層n 強膜

n 脈絡膜uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

眼底の層眼底の層n 強膜

n 脈絡膜uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

眼底の層眼底の層n 強膜n 脈絡膜

uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

眼底の層眼底の層n 強膜

n 脈絡膜uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 2

眼底の層眼底の層n 強膜

n 脈絡膜uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

眼底の層眼底の層n 強膜n 脈絡膜

uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

眼底の層眼底の層n 強膜

n 脈絡膜uタペタムu色素

n 網膜色素上皮(RPE)u非タペタム領域uタペタム領域

n 感覚性網膜u網膜血管系uタペタム反射に影響する

正常な眼底の変異正常な眼底の変異

n RPEu完全な色素沈着

u部分的な色素沈着

u色素沈着なし

正常な眼底の変異正常な眼底の変異

n RPEu完全な色素沈着

u部分的な色素沈着

u色素沈着なし

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 3

正常な眼底の変異正常な眼底の変異

n RPEu完全な色素沈着

u部分的な色素沈着

u色素沈着なし

正常な眼底の変異正常な眼底の変異

n網膜血管系u蛇行の程度

u血管径

u視神経静脈輪

正常な眼底の変異正常な眼底の変異

nタペタムu完全

u色のバリエーションが多い

u部分的

uなし

正常な眼底の変異正常な眼底の変異

n脈絡膜u重度の色素沈着

u軽度の色素沈着

u色素沈着なし

正常な眼底の正常な眼底の変異変異n視神経uサイズ

u髄鞘形成の程度

正常犬の眼底の変異正常犬の眼底の変異n色素u脈絡膜uRPE

nタペタムuサイズu色

n視神経u髄鞘u血管弧

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 4

系統的な眼底検査系統的な眼底検査

nタペタム領域n非タペタム領域

n網膜血管系n視神経

異常な眼底の解釈異常な眼底の解釈

n病変を記述するnどの眼底層がどの程度で罹患しているか考える

n広義の疾患プロセスについて検討するn特定の疾患プロセスについて検討するn最も可能性の高い病因の診断を検討する

感覚性網膜感覚性網膜

n反射性亢進 =感覚性網膜の菲薄化あるいは消失u萎縮

u変性

感覚性網膜感覚性網膜

n反射性亢進 =感覚性網膜の菲薄化あるいは消失u萎縮

u変性

感覚性網膜感覚性網膜

n反射性亢進 =感覚性網膜の菲薄化あるいは消失u萎縮

u変性

n附随する中央部の暗色領域uタペタムの壊死

uRPEの色素沈着亢進

感覚性網膜感覚性網膜

n反射性低下 =感覚性網膜の肥厚u炎症

u浮腫

u形成異常

u腫瘍

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 5

感覚性網膜感覚性網膜

n反射性低下 =感覚性網膜の肥厚u炎症

u浮腫

u形成異常

u腫瘍

感覚性網膜感覚性網膜

n反射性低下 =感覚性網膜の肥厚u炎症

u浮腫

u形成異常

u腫瘍

感覚性網膜感覚性網膜n 非タペタム領域の眼底の肥厚は、白色、黄白色、あるいは銀色の、境界不明瞭な巣状病変として認められる

n 同じ病変がタペタム眼底では反射性の低下した病変として認められる

n “月夜の白い雲”

網膜剥離網膜剥離

n RPEと感覚性網膜の分離u滲出液

u浮腫

u血液

u液状硝子体

網膜剥離網膜剥離

n牽引性n滲出性

n裂孔原性

網膜剥離網膜剥離

n眼底への影響u反射性低下

u非タペタム領域が白っぽく脱色する

u網膜の皺壁形成

u巨大な網膜の裂傷

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 6

網膜剥離網膜剥離

n眼底への影響u反射性低下

u非タペタム領域が白っぽく脱色する

u網膜の皺壁形成

u巨大な網膜の裂傷Ø毛様体との接合部で感覚性網膜が断裂Ø裂けた網膜は腹側に沈下する

網膜剥離網膜剥離

n炎症(滲出性、牽引性)n血管系、血液学的疾患(滲出性)

n外傷(滲出性あるいは裂孔原性)n腫瘍(滲出性)n硝子体の変性(裂孔原性)u老齢性

u術後

網膜色素上皮網膜色素上皮

n色素脱失u非活動型の炎症

u変性

n色素増殖u変性

uリポフスチン

網膜色素上皮網膜色素上皮

n色素脱失u非活動型の炎症

u変性

n色素増殖u変性

uリポフスチン

網膜色素上皮網膜色素上皮

n色素脱失u非活動型の炎症

u変性

n色素増殖u変性

uリポフスチン

網膜血管系網膜血管系

n拡張u炎症

u高血圧症

u過粘稠性

u多血症

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 7

網膜血管系網膜血管系

n狭細化u感覚性網膜の萎縮

u貧血

u緑内障

u閉塞性血管疾患

u低血圧症

網膜血管系網膜血管系

n色の変化u高脂血症“網膜脂肪血症”

u低酸素症

網膜出血網膜出血

n鑑別診断は、ほかの組織の出血と同じであるu血管性

u炎症

u出血性疾患

u腫瘍

タペタム領域タペタム領域

n脈絡膜疾患による二次的な変化

nコリー眼異常

脈絡膜脈絡膜

n肥厚u炎症

u腫瘍

n菲薄化u萎縮

u低形成

視神経視神経

n過小u低形成

u陥凹(慢性緑内障)

u萎縮と髄鞘消失(視神経あるいは網膜の変性を生じる全ての原因)

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 8

視神経視神経

n過大u過剰な髄鞘形成(“偽性乳頭浮腫”)

u炎症

u乳頭浮腫

uコロボーム

u腫瘍

検眼鏡検査検眼鏡検査

n直像検査法

n倒像検査法

nPanOptic検眼鏡検査

直像検眼鏡u光源uミラー/プリズムu加減抵抗器付き電源u集光レンズ(+40D から -20D)u検査窓Øスリット(投影像)Ø目盛り(サイズ)

Øフィルター

•コバルトブルー

•赤色フリー

検眼鏡検査検眼鏡検査

直像検査法直像検査法

n拡大された実際の直像が得られ、眼底表面積の約2~3%が観察できる

検眼鏡検査検眼鏡検査倒像検眼鏡

u光源u加減抵抗器付き電源uミラーu 2個のプリズムuフィルターØコバルトブルーØ赤色フリー*

u手持ち式集光レンズØ10D~90D

* 実際は緑色光を示し、赤色部(出血部)が黒色痕として観察される

Page 18: 動物の眼底の評価 - Hist. Vet19/fundus_c.pdf動物の眼底の評価と 検眼鏡検査法 テキスト - 2 II.眼底疾患による影響 A.感覚性網膜 1. 網膜の菲薄化あるいは消失

眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 9

延長チューブ 10D 15D   20D  28D 60D 78D 90D

倒像検査法倒像検査法

n Finoff 徹照器を光源とする

n検査者は両手を使わなければならず、助手が患者の眼瞼を開く必要がある

n単眼像が得られる

倒像検査法倒像検査法

n 眼底の倒立反転像が得られ、用いるレンズにより眼底表面積の25~40%が観察できる

PanOpticPanOpticTM TM 検眼鏡検眼鏡

n単眼倒像検眼鏡の構成成分をもつ

n使用しやすいn視野が広いn倍率が高い

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眼底検査の解釈と検眼鏡検査法

スライド - 10

PanOpticPanOptic 検眼鏡検査検眼鏡検査

n拡大された直立像が得られ、眼底表面積の約10~15%が観察できる

使用する際の難易度使用する際の難易度

中間中間

難しい難しい

使用しやすい使用しやすい

PanOpticPanOptic 検眼鏡の利点検眼鏡の利点n 小さく、散大していない瞳孔でも容易に入射できる

n 眼底像を極めて広く全体に観察できるn 直像検眼鏡よりも広い視野が観察できるn 獣医師と動物との操作距離が長いn 直像検眼鏡を使い慣れている獣医師は、以下の点が優れていると感じた:u使用しやすさu画質の良さ - 散瞳させない眼球ではこれまで見たことのない、教科書に載っている画像写真のようだと例えた

直像検眼鏡

PanOptic検眼鏡