身体拘束の適正化のために身体拘束に伴う疑問と不安… 2 拘 束 す る と...
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おかげさまチャンネル 講座シリーズ
身体拘束の適正化のために~ご利用者の人権と安全を守る~
介護弁護士 外岡潤
身体拘束に伴う疑問と不安…
2
拘束するときの
記録の取り方?
どんなときに
拘束は
許されるの?
拘束せずに
転んでしまったら
どうなるの?
拘束はどんな場合
でも絶対にしては
いけないの?
本講座の目的:
• 身体拘束に関する考え方と定義を学び、理
解を深める。
• 止むを得ず身体拘束する際にとるべき方法
や注意点を学ぶ。
• 身体拘束と虐待の関係性を考える。
3
2018年~身体拘束廃止未実施減算
下記の運営基準を満たしていない場合には、1日あたり10%の減算となる。
• 身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録すること
• 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3
月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること
• 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
• 介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に(年2回)実施すること
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突然ですがミニテスト&アンケートをします。
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左上端に、自分の氏名を記入してください。
解答
1.(1)× (2)× (3)× (4)〇 (5)×
(6)△ (7)×(8)×
2. 切迫性 非代替性 一時性
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7
8
ご利用者の
ご利用者の
あちらを立てればこちらが立たず…
「身体拘束はいけない。」口で言うのは簡単だけど…
自由 安全
「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」 第11条第4項
指定介護老人福祉施設は、指定介護福祉施設サービスの提供に当たっては、
当該入所者又は他の入所者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、
身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。
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「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」 第11条第5項
指定介護老人福祉施設は、前項の身体的拘束等を行う場合には、
その態様及び時間、その際の入所者の心身の
状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しな
ければならない。
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身体拘束の考え方
そもそも「身体拘束」に当たるか(定義の問題)?
↓ 当たるとして
「違法な身体拘束」に当たるか(3つの要件)?
↓ 当たるとして
利用者側の同意、記録、検証をどこまで行うべきか?
+
「虐待」にも当たるか(虐待との関係)?
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身体拘束の問題↓
驚くほど手がかりとなる法令や判断基準がない!
現場はグレーなケースが沢山…
どのような基準で判断すれば良い?
資料2の各事例は、身体拘束に当たるでしょうか。資料1を参考にグループで協議しましょう。
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外岡流・身体拘束の定義:
↑ があるか否かは、単に当該利用者の身体
の安全を確保するというだけでは足りず、他の利用者の生命身体、財産の安全を守るといった止むを得ない事情が認められるか否か、から判断する。 14
特定の利用者 の
行動の自由 を
合理的理由 なく 奪う行為
合理的理由
センサー・カメラの考え方は…
特定の利用者の行動の事由を制約する可能性はあるが、その態様からして「奪う」とまではいえない。
ご利用者の転倒を防ぐという理由は、合理的理由といえる。
もし「利用者が不穏な動きをしないか四六時中監視する」という
目的のために設置しているというのであれば、
利用者の行動の自由を不合理に制限しているということになり身体拘束であり違法である、という評価に繋がる可能性が高い。
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<身体拘束が許容されるための三要件>
1.切迫性
利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険に
さらされる可能性が著しく高いこと
2.非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法
がないこと
3.一時性
身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
※3つの要件をすべて満たす状態であることを「身体拘束廃止委員会」 等のチームで検討、確認し記録しておく
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例:他の居室に入り込み物を持ち去ってしまう利用者
• 女性入所者(認知症、要介護度3)
• 一般フロアに入居。他の入所者の部屋に勝手に入り込み、衣類等を持ち去ってしまう。
• 拾ったものや小物を、オムツの中に入れてしまう。
• 他入所者から苦情が多く、刃物を持っていたこともあり、危険性が高い。
→施設として、どう対処すべき?
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身体拘束を実施する際の注意点
• 拘束の決定は、一部の職員だけでしてはならない。他職種で協議・検討すること。
• 拘束実施期間中、適正化委員会で定期的に会議を行い、身体拘束解除の可能性を検討すること。
• 原則として拘束の都度、記録が必要。
• 身体拘束の三要件を意識し、拘束の態様、時間、その際の入所者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録。
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記録の考え方:
• 記録の方法や頻度までは決められておらず、後から問題がないか検証できれば良い。
• ケースごとに妥当と思われる方法であれば問題ない。
• 本件では、毎回同じ方法、時間で行うのであれば、毎日記録する必要はない。月ごとのカンファレンスなど定期的にまとめ振り返る機会を設ける。
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「一瞬の拘束」を見落としていませんか?
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実務の流れの中に、本来検討すべき身体拘束が隠れていないか注意しよう。
現場から寄せられた質問:「日々の記録はどこまで徹底すべきか」
自閉症の利用者さんです。
起床と同時に、パジャマのセットのことが気になり、まだ着替えていない人の服を脱がせたり、破ったりしてしまいます。(時には起こすために、噛んでしまうことも多かったです)。
ダミーのパジャマセットを用意したこともあったのですが、納得して頂くことができませんでした。
現在は、その利用者さんが起床した時点から、他の方の着替えが終了するまで、施錠させて頂く対応を毎日させて頂います。その際、通常通りであれば、記録を取ってはいません。(開錠後にも落ち着かない等、いつもと違う状況があれば、その様子は記録しています)。個別支援計画の中で、支援の一つとして施錠対応の必要性を載せています。
毎日の記録に施錠対応したことを載せる必要はありますか?21
全国老施協平成30年度指導監査実態調査より
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「違法な身体拘束」と「虐待」の関係?
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身体拘束
違法適法
虐待
身体的虐待の定義:
• 高齢者虐待防止法
「高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。」
• 障害者虐待防止法
「障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。」
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「身体拘束は、虐待です。」
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毎回行政に「通報」?
そもそも、
なぜ、高齢者(ご利用者)に安易な身体拘束や虐待をしてはいけないのでしょうか?
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虐待防止のキーワードは
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人格 尊厳と
二つの言葉の「定義」と「意味」、連想される言葉を書き出し、隣の人と話し合ってみましょう。
人格=個人の心理面での特性。人柄。または
人間の人としての主体。
人格権=個人の人格的利益を保護するための
権利のこと
尊厳=尊く、おごそかで、犯してはならないこと。
気高く威厳があること。
すべての個人が、互いを人間として尊重
する法原理。
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憲法第13条「幸福追求権」
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
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出発点:人格を傷つけ尊厳を侵害する行為とは?
「人に対する憎しみ・敵意」
「危害を加えようとする邪悪な心」
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害意 の現れ
といえる行為のこと。
「害意」以外の虐待の原因?
• 無知、想像力の欠如
• 「ケア提供者本位」の発想
(「利用者本位」の逆)
• 感覚の麻痺(「赤信号みんなで渡れば怖くない)
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虐待への第一歩は
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言葉遣い
整容
ご利用者への と
ご利用者の への無関心
振り返ってみよう
• 上から目線(命令形、「~させる」「どうしてできないの」等)の言葉になっていませんか?
• 「問題行動」「認知」「徘徊」…相手を傷つける言葉
• ご利用者の髪型、顔の汚れ、臭い、服装の乱れに無関心になっていませんか?
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「何かあったらどうするの」病
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歩き回って転倒して
家族に訴えられたらどう
するの?
薬で「落ち着いて」頂こう
食事中に誤嚥したら
どうするの?
胃ろうにしよう
看取りをして殺人罪で
訴えられたらどうする
の?
病院に搬送しよう
どうすればこの現状を変えられるでしょうか?
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変われば相手も変わる!自分が
どう変わるか
• 利用者家族に「理解」と「協力」を求める
• できないことはできないとはっきり伝える
• コンプライアンスに則り粛々と行動する
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抱え込まない
全ては
「 不足」
から始まる!ご利用者(ご家族)との間でも、職員間でも…
小さなことでもオープンに話し合いましょう。
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コミュニケーション
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〒160-0023新宿区西新宿8-9-14 ベイベリー202号
℡ 03-5358-9855Fax 03-6730-6140E-mail: [email protected] (代表 外岡潤)
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