ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... ·...

37
- 43 - 教育課題研究「学級経営」【3年研究の1年目】 ソーシャルスキルトレーニングの実践とプログラム作成 塚田 珠緒、高橋 健、池田 貴史、根本 玲子 Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)を活用してクラスの現状を把握し、 課題となるスキルを向上させるために、ソーシャルスキルトレーニング(SST)プログラ を実践した。併せて、クラスの現状にあったプログラムを開発した。 「ソーシャルスキル」とは、「愛着」や「道徳心」を行動に移すときに必要になる技術のことである。大き く分けて、「自己理解・自己表現力」「他者理解力」「相互理解力」の3つの要素から成る。 はじめに 今年度から教育課題「学級経営」が、平 成18年より3年間「不登校問題」で取り 組んできた内容を引き継ぐこととした。 これは、学校生活における不適応行動が 「不登校」だけではなく「いじめ」や「暴 力行為」など様々な形で表れていることか ら、より多くの教職員にこの実情を理解し てもらい、問題解決に向けた有効な方法を 提案するねらいがある。 また、早稲田大学教育学部講師岡田佳子 先生をお迎えし、Q-U(楽しい学校生活 を送るためのアンケート)の概要や分析方 法及びソーシャルスキルトレーニングプロ グラムについてご指導いただいた。 研究の内容 1 Q-Uとソーシャルスキルトレーニン グに関する講義を受講 今年度から研究員が一新したことから、 研究を進めるにあたってQ-UとSSTプ ログラムに関する基本的事項を学んだ。 SSTについては、「セルフエスティー ム(自己肯定感)」と「ストレス耐性(ス トレスマネジメント)」が基盤となる。 「セルフエスティーム」は集団に属するた め、「ストレス耐性」はルールを守るため にそれぞれ必要な力とされる。 そして、人と関わろうとする意欲が生ま れ、人と関わるなかで自分と他人との意見 の対立が起こり、対立解消の力をつけてい くことを体系的に学んだ。 2 Q-Uによるクラスの現状把握 ≪年2回実施≫ 各研究員の学級や個人の状況を把握する ためにQ-U(楽しい学校生活を送るため のアンケート 河村茂雄著)を研究員が担 任している小学6年生と中学2、3年生で 実施した。 Q-Uは、①「学級満足度尺度」②「学 校生活意欲尺度」③自由記述で構成されて いるが、「学級満足度尺度」のみの実施と し、児童・生徒の学級への満足度を測った。 これは、個々の児童・生徒について承認 得点(クラスに自分の居場所があり認めら れているという思いを測る)と被侵害得点 (学校で孤立したり、いじめの被害にあっ ているという思いを測る)を求めて分布図 で表したものである。 分布図は次のようになる。 図1 分布図における各群の位置 承認得点 (3)侵害行為 (1)学級生活 認知群 満足群 (4)学級生活 (2)非承認群 不満足群 要支援群

Upload: others

Post on 23-Jun-2020

5 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 43 -

教育課題研究「学級経営」【3年研究の1年目】

ソーシャルスキルトレーニングの実践とプログラム作成

塚田 珠緒、高橋 健、池田 貴史、根本 玲子 Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)を活用してクラスの現状を把握し、

課題となるスキルを向上させるために、ソーシャルスキルトレーニング(SST)プログラ

ム*を実践した。併せて、クラスの現状にあったプログラムを開発した。 *「ソーシャルスキル」とは、「愛着」や「道徳心」を行動に移すときに必要になる技術のことである。大き

く分けて、「自己理解・自己表現力」「他者理解力」「相互理解力」の3つの要素から成る。

はじめに

今年度から教育課題「学級経営」が、平

成18年より3年間「不登校問題」で取り

組んできた内容を引き継ぐこととした。

これは、学校生活における不適応行動が

「不登校」だけではなく「いじめ」や「暴

力行為」など様々な形で表れていることか

ら、より多くの教職員にこの実情を理解し

てもらい、問題解決に向けた有効な方法を

提案するねらいがある。

また、早稲田大学教育学部講師岡田佳子

先生をお迎えし、Q-U(楽しい学校生活

を送るためのアンケート)の概要や分析方

法及びソーシャルスキルトレーニングプロ

グラムについてご指導いただいた。

研究の内容

1 Q-Uとソーシャルスキルトレーニン

グに関する講義を受講

今年度から研究員が一新したことから、

研究を進めるにあたってQ-UとSSTプ

ログラムに関する基本的事項を学んだ。

SSTについては、「セルフエスティー

ム(自己肯定感)」と「ストレス耐性(ス

トレスマネジメント)」が基盤となる。

「セルフエスティーム」は集団に属するた

め、「ストレス耐性」はルールを守るため

にそれぞれ必要な力とされる。

そして、人と関わろうとする意欲が生ま

れ、人と関わるなかで自分と他人との意見

の対立が起こり、対立解消の力をつけてい

くことを体系的に学んだ。

2 Q-Uによるクラスの現状把握

≪年2回実施≫

各研究員の学級や個人の状況を把握する

ためにQ-U(楽しい学校生活を送るため

のアンケート 河村茂雄著)を研究員が担

任している小学6年生と中学2、3年生で

実施した。

Q-Uは、①「学級満足度尺度」②「学

校生活意欲尺度」③自由記述で構成されて

いるが、「学級満足度尺度」のみの実施と

し、児童・生徒の学級への満足度を測った。

これは、個々の児童・生徒について承認

得点(クラスに自分の居場所があり認めら

れているという思いを測る)と被侵害得点

(学校で孤立したり、いじめの被害にあっ

ているという思いを測る)を求めて分布図

で表したものである。

分布図は次のようになる。

図1 分布図における各群の位置

承認得点

(3)侵害行為 (1)学級生活

認知群 満足群

(4)学級生活 (2)非承認群

不満足群

要支援群

被侵害得点

Page 2: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 44 -

この分布図における各群の児童・生徒の

主な特徴は次のとおりである。

(1)学級生活満足群

「承認得点」が高く、「被侵害得点」は

低い。この群に属する児童・生徒は学習意

欲、友達との関係が良好で活動意欲が十分

にある。

(2)非承認群

「承認得点」と「被侵害得点」ともに低

い。この群に属する児童・生徒は認められ

ることが少なく、クラスでも目立たない場

合が多い。

(3)侵害行為認知群

「承認得点」と「被侵害得点」ともに高

い。この群に属する児童・生徒は自己中心

的な面があり、人間関係でトラブルが多く、

孤立する傾向がある。

(4)学級生活不満足群(要支援群含

む)

「承認得点」が低く、「被侵害得点」が

高い。この群に属する児童・生徒は学級に

居場所がなく、いじめや不登校に至る可能

性が高い。特に「被侵害得点」が高く、

「承認得点」が低い場合(分布図の学級生

活不満足群の左下)は要支援群とされ配慮

を要する。

各研究員が1回目のQ-Uを5~6月に

実施し、その後自分の学級の状況を分析し

た。

そして、その状況を踏まえて「課題とな

るスキル」や「担任として育てたいスキ

ル」を考え、どのようなSSTプログラム

が適切であるかを話し合った。

プログラムは、2学期から3学期にかけ

て5~7つ行い、プログラムの有効性をみ

るために2回目のQ-Uを2月中旬に実施

した。

その結果から変容を見る場合には、その

原因を追及し、改善できるよう心がけた。

このように、研究はPDCAサイクルに

沿って進められた。

3 ターゲット児童・生徒のソーシャルス

キルの現状把握≪年2回実施≫

各研究員のクラスで気になる児童・生徒

(各クラスより3名ずつ選ぶ)のソーシャ

ルスキル獲得度を見るために岡田先生と早

稲田大学本田教授が作成されたソーシャル

スキルアンケート(*参考資料1)を活用

した。

このアンケートでは、多様な要素を含む

ソーシャルスキルを「学校でのルールや道

徳性」「友達とのかかわり方」「基盤とな

るソーシャルスキル」の3つに大別した。

「学校でのルールや道徳性」では、教師

の役割理解や問題対応などに関する力、

「友達との関わり方」では、友達づくりや

関係の発展などに関する力、「基盤となる

ソーシャルスキル」では、状況理解や他者

理解、自己表現などに関する力を含んでい

る。

これにより、配慮すべき児童・生徒のソ

ーシャルスキルに関するアンケートを2回

実施し、分析した。紀要には3名中2名の

結果を掲載した。

4 ソーシャルスキルトレーニングプログ

ラムの実践と開発

平成20年度に作成した「不登校問題研

究報告書」やその他の資料を参考にして、

プログラムを実践することで、研究員が少

しずつSSTを体得していった。

その際、活用したプログラムは研究員が

クラスの状況にあうようアレンジした。

今年度は各研究員が実践したプログラム

のうち、「住宅事情」「予想外!よそうが

い」「I メッセージを持とう」「ストレス

対処法すごろくトーク」について指導案と

資料を紹介する。

Page 3: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 45 -

研究員の実践

(1)小学6年生での実施

①ソーシャルスキルプログラム授業実践

実施日 プログラム名 ターゲットとなるソーシャルスキル

1 7月13日(月) 「イニシアティブゲーム」 猛獣狩り・サークルシット

ダウンなど 共感できる力

2 9月 8日(火) 「イニシアティブゲーム」

わりばしET・ラインアップ

ゲームなど 共感できる力

3 10月20日(火) 「綾瀬ビルのテナントを探せ」 協力 自己表現 他者理解

4 12月16日(水) 「住宅事情」 協力 自己表現 他者理解

5 2月 3日(水) 「ウィンターサバイバル」 自己内省力 対立解消

*参考資料 「学校グループワーク・トレーニング3」遊戯社 日本GWT研究会著

「平成20年度不登校問題研究報告書」

「マンションの住人」SST用教材 クリエーションアカデミー 本田恵子著

②授業実践(自作資料)

(ア)プログラム名「住宅事情」

(イ)指導過程

活 動 内 容 指 導 上 の 留 意 点 備 考

1.準備・説明 5分 ①グループを作る。

②各グループに「住宅事情」の資料を配付

する。

②課題の内容と情報カードの配り方を説明

する。

・指示書(資料

1)

・情報カード(資

料2)

・部屋割り当て図

(資料3)

2.実施 25分 ①十分に時間をとり、他の人の意見を考慮

しながら考えをまとめさせる。また、結

論にいたった理由を必ず考えるように伝

える。

3.結果発表・ふりかえり

10分

①結果において、各グループの共通点、相

違点を取り上げ、その場所に決まった経

緯を聞き、いろいろな考え方があること

に気づかせる。

②「住宅事情」の活動を通して大切だと思

ったことを発表させる。

③ふりかえりカードを配付し、今日のふり

かえりをさせる。

・ふりかえりカ

ード

4.まとめ 5分 ①活動全体を見て、教師が感じたことやグ

ループやクラスで話し合うときに大切な

ことを話す。

Page 4: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 46 -

③クラス及びターゲット児童Aの実態

*1点に複数人重なる場合がある。

(ア)クラスの実態 第1回Q-Uプロット結果

実施日:平成21年6月上旬

対象:小学校6学年38人

8

11

14

17

20

23

6912151821

承認得点

被侵害得点

(イ)クラスの実態 第2回Q-Uプロット結果

実施日:平成22年2月中旬

対象:小学校第6学年36人

8

11

14

17

20

23

6912151821

承認得点

被侵害得点

学級生活満足群

23人・63%

非承認群

3人・9%

侵害行為認知群

4人・12%

学級生活不満足群

6人・16%

クラスの実態

生活について

・男女仲がよく、仲間はずれを作る

ことがない。

・クラス全体を引っ張っていくよう

なリーダーがいない。

・与えられた課題には真面目に取り

組むが、熱中しない。

学習について

・落ち着いて学習に取り組むことが

できる。

・自分の意見はあるが、進んで発表

しようとする児童は少ない。

・ねばり強く最後まで取り組むこと

が苦手な児童が多い。

育てたい力

・自己表現力

・自分とともに他者を理解し協力し

合える力

クラスの変容

生活について

・自分たちで考え、進んで行動でき

ることが多くなった。また、友だ

ちと協力して活動することに楽し

さを見いだすこともできるように

なり、その中で自分の考えや気持

ちを表現できる場面も見られるよ

うになった。

学習について

・話合い活動などでは、自分の意見

を発言するだけでなく、友だちの

意見を受け止めながら建設的な話

し合いができるようになった。

・学級全体で最後まで取り組もうと

声をかけあう姿が見られるように

なった。

B

学級生活満足群

22人・58%

侵害行為認知群

6人・16%

学級生活不満足群

6人・16%

非承認群

4人・10%

A

B

A

Page 5: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 47 -

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛

(ウ)ターゲット児童A ソーシャルスキル獲得度結果(実施日平成21年6月上旬/平成22年2月中旬)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

ルー

への

の関

ィー

ス耐

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

(エ)ターゲット児童B ソーシャルスキル獲得度結果(実施日平成21年6月上旬/平成22年2月中旬)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

ルー

への

に作

の発

ステ

ィー

ス耐

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

ターゲット児童Aの現状

・全体的にソーシャルスキルは獲得

できており、どんな場面でも安定

した力が発揮できている。

・「自己表現」がやや低く、断りた

いときに上手に断るなど、自分の

気持ちを相手に適切に伝えること

が苦手である。その結果、自分の

やり方に対する自信がなくなって

いる。

育てたい力

・自己表現力

・セルフエスティーム(自己肯定

感)

ターゲット児童Aの変容

・自己表現力が伸びており、プログ

ラムの効果が現れたと感じてい

る。また、友だちに声をかける事

も多くなってきた。

ターゲット児童Bの現状

・自分から友達の輪の中に入った

り、誘ったりすることが苦手であ

る。

・自分の気持ちや考えを上手く表現

できないため、友だちに受け入れ

られないと感じることが多い。

育てたい力

・セルフエスティーム(自己肯定

感)

・友だちに自分から声をかけていっ

たり、関係を発展させる力

ターゲット児童Bの変容

・他者を理解したり、関係を発展す

る力が伸びており、徐々に自信が

持てるようになってきたが、今後

も継続した支援が必要である。

Page 6: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 48 -

④成果と課題

成果

・Q-Uを実施することにより、教師の感覚でしか捉えられていない児童の意識や

学級全体の状況をつかむことができ、指導の方向性が明確になった。

・児童たちは、楽しみながらプログラムを行うことで、少しずつソーシャルスキル

を身につけていくことができ、特に「自己表現力」や「自己肯定感(セルフエス

ティーム)」を高めていくことが、児童同士の人間関係を作る力につながった。

・年々、ソーシャルスキルに課題がある児童が増えているので、どの子にもプログ

ラムの実践の必要性を感じる。そのために、学級での取り組みに留めず、学年全

体で実践することが、一人ひとりのスキルアップにつながると考える。

・今年度は、綾小研の特活部会で、「SSTをふまえ

た話合い活動」に取り組んだ。この実践が、今後市

内全体に広がることを望んでいる。

課題

・学級の課題となるソーシャルスキルを踏まえて、年間指導計画を立てることが難

しかった。

・ターゲット児童については、プログラムによりいくつかの項目でのスキルアップ

につながったが、学級生活不満足群に属する児童のプロットのばらつきがあり、

より細やかな個別支援が必要である。

・SSTのプログラムの実践では、認め合ったり、伝え合ったりする雰囲気がプロ

グラムの効果に大きく影響する。そのため、児童に良かった点や課題などをフィ

ードバックする振り返りの時間を充分に確保したい。

Page 7: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 49 -

「住 宅 事 情」

目 的 自分の持っている情報を、言葉によってメンバーに伝え、話し合い

での大切な行動や態度、協力することの大切さに気づく。

準備するもの ・住宅図 ・住宅事情の指示書 ・情報カード

・ふりかえりカード

活 動 内 容 指 導 上 の 留 意 点 備 考

1.今日の自分の気持ち

の状態を選ぶ。

2.グループに分かれ、

アイスブレーキング

として「パタパタ」

を行う。

・今の自分の気持ちを「よい」「ふつう」

「悪い」をグー・チョキ・パーで表す。

・グループで輪になり、リーダーが片手でひ

ざをパタパタたたくと、隣の人がそれをま

ねて次々と音と動作を伝えていく。実践す

る中で段々とスピードを速くする。

(状況に応じて、隣の人と手を交互に置いて

パタパタを行う)。

3.6人グループを作

る。

4. 指示書(資料1)を

読む。

5. 一人が情報カードを

配る。

6.指示書に従い、カー

ドに書かれている情

報を考慮し、それぞ

れの家族が住むマン

ションの場所を考え

る。

・各グループに「住宅事情」の資料を配布す

る。

・課題(指示書)の内容を説明する。

・情報カードの配り方を説明する。

(カードは裏返しのまま、選ばずに全員に配

る。)

・終了時刻を告げる。

・他の人の意見を聞き、よく考えて結果をだ

す。

・結論にいたった理由を説明できるようにさ

せる。

・指示書(資

料1)

・情報カード

(資料2)

・部屋割り当

て図

(資料3)

7.他のグループと結果

を比べ、共通点や相

違点を話し合う。

8.活動を通して大切だ

と思ったことを発表

する。

・共通点や相違点を取り上げ、その場所に決

まった経緯を聞き、いろいろな考え方があ

る事に気づかせる。

・「住宅事情」の活動を通して大切だと思っ

たことを発表させる。

・自分の情報をきちんと伝える。

・友だちの情報をきちんと聞く。

・みんなの情報を聞いて、情報をまとめる。

9.ふりかえりをする。

・ふりかえりカードを配布し、今日のふりか

えりをさせる。

・活動全体を見て、教師が感じたことやグル

ープやクラスで話し合うときに大切なこと

を伝える。

・ふりかえり

カード

活動時の

介入のポイント

約束が守れていな

いときには、随時

確認する。

Page 8: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 50 -

資料1

住宅事情指示書

【活動の仕方】

①1枚引いたカードが、自分の家族です。

②どこの部屋に住みたいかを決めてください。

③順番に自分が住みたい場所とその理由を話してください。

④どこに住むかが決まったら、資料3(部屋割り当て図)に A~F

を記入してください。

その際、「なぜ、そのように決まったのか」理由を話し合ってく

ださい。

【ルール】

①友だちの話は最後まで静かに聞きましょう。わりこみをしては

いけません。

②自分の気持ち(意見)をしっかり伝えてください。

③友だちの事情も、相手の気持ちになって考えてください。

④話し合いで決めます。(じゃんけんなどで決めないでください。)

⑤困ったときは、先生に声をかけてください。

みなさんは、新しいマンションに住むことになりました。

部屋は6室あります。自分が手にした情報カードに書かれている家

族の事情や他の家族の事情をよく考えて、25分以内に誰がどの部屋

に住むかを決めてください。

Page 9: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 51 -

資料2

家族A

①家族構成:女性(35才) ペットのフェレット ②職 業:フリーライター

③収 入:不安定 多い月と少ない月がある。

④生活の様子:仕事は、家にいていろいろな雑誌の記事を書いている。

家族B ①家族構成:夫(55才) 妻(50才) 娘(18才) ②職 業:会社員(夫) 主婦(妻) 高校3年生(娘)

③収 入:平均以上あるが、娘が私立高校で出費が多い。娘は私立大学を進学希望

④生活の様子:夫は仕事がいそがしく帰宅が遅い。

娘は大学の受験勉強中で、うるさい音や小さな子どもが好きではない。

家族C

①家族構成:夫(32才) 妻(30才) 双子の男の子(2才) ②職 業:体育の教師(夫) 主婦(妻) やんちゃでけんかし、走り回る(双子)

③収 入:平均並み

④生活の様子:妻はどじで、お皿を割る、洗濯物を落とすなどがしょっちゅうある。

双子の男の子はやんちゃで、家中走ったり飛び跳ねたりすることが多い。

家族 D ①家族構成:夫(75才) 妻(72才) ②職 業:なし

③収 入:年金暮らし

④生活の様子:おじいさんは、植物を育てるのがすき。

おばあさんは、足腰が弱く杖をついているが、階段がのぼれないほどでは

ない。小さい子の面倒を見るのがすき。

Page 10: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 52 -

家族 E

①家族構成:夫(26才) 妻(24才 妊娠7 ヶ月) ②職 業:共働き

③収 入:低め

④生活の様子:産休に入ると、収入は現在の半分になる。

家族 F

①家族構成:お父さん(45才) 中学2年の兄(14才) 小学5 年の妹(11才) ②職 業:お父さんはサラリーマン

③収 入:平均並み

④生活の様子:お父さんは、子どもの時間に合わせて出勤・帰宅するので残業はできない。

兄は、ロックバンドが好きで、家でもギターをひく。

Page 11: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 53 -

資料3

4 部屋とリビング

日当たり良好

夏は暑い

(家賃は1番高い)

3 部屋とリビング

部屋は明るい

(家賃は2番目)

2部屋とリビング

ルーフテラスあり

(家賃は3番目)

2部屋とリビング

ルーフテラスあり

(家賃4番目)

3 部屋とリビング

日当たりは悪い

(家賃は 5 番目)

管理人の部屋

2部屋とリビング

庭がある

日当たりは悪い

(家賃は6番目)

Page 12: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 54 -

ふ り か え り カ ー ド

年 組 名前( )

●今日の活動をふりかえり、あてはまる番号に○をつけましょう。

(できた・・・3 ふつう・・・2 できなかった・・・1)

(1)自分の情報を正確にみんなに伝えることができた。

( 3 ・ 2 ・ 1)

(2)自分の情報をみんなにタイミングよく伝えることができた。

( 3 ・ 2 ・ 1)

(3)友だちの情報を正確に受け取ることができた。

( 3 ・ 2 ・ 1)

(4)活動に積極的に取り組むことができた。

( 3 ・ 2 ・ 1)

(5)プログラムを解決していく中で、みんなの気持ちを考えることができた。

( 3 ・ 2 ・ 1)

●他のグループの発表の内容でよかったところ

●今日の授業をふりかえって感想を書きましょう。

Page 13: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 55 -

(2)小学6年生での実施

①ソーシャルスキルプログラム授業実践

実施日 プログラム名 ターゲットとなるソーシャルスキル

1 6月 1日(月) 「色、誕生日、身長などの一列並びゲーム」 協力 他者理解 状況理解

2 7月 7日(火) 「かたちづくり」1 協力 問題解決 状況理解

3 9月 4日(金) 「かたちづくり」2 協力 問題解決 状況理解

4 11月18日(水) 「動物マンションのお引越し」 協力 自己表現 問題解決

5 1月14日(木) 「綾瀬ビルのテナント」 協力 自己表現 問題解決

6 2月 9日(火) 「住宅事情」 協力 自己表現 問題解決

7 2月16日(火) 「予想外!よそうがい」 協力 自己表現 他者理解

* 参考資料 「キレやすい子へのソーシャルスキル教育」ほんの森出版 本田恵子著

「学校グループワーク・トレーニング3」遊戯社 日本GWT研究会著

②授業実践(自作資料)

(ア)プログラム名「予想外!よそうがい」

(イ)指導過程

活動の内容 指導上の留意点 資料

1.準備・説明 10分

①班の隊形の机を囲んで、4~5人のグルー

プごとに席に着く。

②「めあて」「やり方」「ルール」を黒板に

掲示して、説明する。

③自分について準備カードに記入させる。

④グループの友だちが、どの項目に当てはま

るかを予想して書かせる。

・掲示用

「めあて」「やり方」

「ルール」

・「準備カード」

・「ワークシート」

2.実 施 25分

①発表する順番を決めさせる。

②1 項目ごとに一人ずつ、他のメンバーが予

想を発表する。全員が予想を伝えたら、本

人に正解とその理由を発表させる。

③全員が終わるまで繰り返させる。

3.結果発表・ふりかえり

7分

①自分について発見したことや友達について

気づいたことなどを振り返りシートに記入

させる。

②記入したことを基に、グループで話し合わ

せる。

・振り返り

シート

4.まとめ 3分

①「予想外!よそうがい」をして、よかったことや

思ったことを書かせる。

Page 14: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 56 -

③クラス及びターゲット児童の実態 *1点に複数人重なる場合がある。

(ア)クラスの実態 第1回Q-Uプロット結果

実施日:平成21年5月中旬

対象:小学校6学年31人

(イ)クラスの実態 第2回Q-Uプロット結果 *1点に複数人重なる場合がある。 実施日:平成22年2月中旬

対象:小学校第6学年31人

クラスの実態

生活について

・ 基本的な生活のルールはしっか

りしているが、子ども同士のリ

レーションが弱い。

・ 明るく素直だが、支持待ち傾向

にある児童が多い。

・ 個別の配慮が必要な児童がいる

(被いじめ、不登校、LD 傾

向)。

学習について

・ 与えられた課題には真面目に最

後まで取り組むが、自ら進んで

取り組む児童は少ない。

・ 友だちの反応を気にして、自信

を持って意見を言えない児童が

いる。

育てたい力

・ 互いに認め合える力

・ 自己表現力

学級生活満足群

8人・26% 侵害行為認知群

1人・3%

学級生活不満足群

8人・26%

非承認群

14人・45%

クラスの変容

生活について

・ 結果は、前回よりも学級生活満足

群に属する児童が増加した。

・ 卒業に向けて、奉仕作業を始め、

学年でいろいろな活動に取り組む

ことで、学級や学年でお互いを認

め合える機会が増えた。

学習について

・ 課題に取り組む態度は大きく変わ

らないが、臆せず自己表現できる

児童が増えてきた。

・ 仲間同士の関係が深まり、自分に

自信を持つことができるようにな

ってきた。

侵害行為認知群

1人・3%

学級生活満足群

17人・55%

学級生活不満足群

10人・32%

非承認群

3人・10%

Page 15: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 57 -

(ウ)ターゲット児童A ソーシャルスキル獲得度結果

(実施日 平成21年5月下旬/平成22年2月中旬)

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛け)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

教室

でのルー

課題

への取り組み

の先生との関係

友だちと一緒

に作業

友だち作り

友だちの維持

関係

の発展

自己表現

他者理解

状況理解

ルフ

エステ

ィー

ストレス耐性

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

(エ)ターゲット児童B ソーシャルスキル獲得度結果

(実施日 平成21年5月下旬/平成22年2月中旬)

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛け)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

教室でのルー

課題

への取り組み

他の先生との関係

友だちと一緒に作業

友だち作り

友だちの維持

関係の発展

自己表現

他者理解

状況理解

セルフエステ

ィーム

ストレス耐性

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

ターゲット児童Aの現状

・ 学力は高いが、授業中ぼんやりして

声を掛けるまで課題に取り組まない

ことが多い。

・ ルールについての意識は確立してい

るが、周りの状況や相手の気持ちを

考えないため、友達ができず、孤立

感を抱いている。

育てたい力

・ 「自己表現力」

・ 「他者を理解する力」

ターゲット児童Aの変容

・ 少しずつ相手について考えられるよ

うになり、自分から声をかける場面

が増えつつある。

ターゲット児童Bの現状

・ 何事にも意欲的で、明るく元気に

過ごしている。ただ、学習や行事

で褒められることを仲間に妬ま

れ、いやな事を言われて、落ち込

むことが少なくない。

育てたい力

・ セルフエスティーム(自己肯定感)

・ 自己表現力

ターゲット児童Bの変容

・ 依然として「自己表現」やセルフ

エスティームについては課題があ

るが、「友だち作り」や「友だち

の維持」に関するスキルは向上し

ている。

Page 16: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 58 -

④成果と課題

成果

・Q-Uの活用により自分の学級経営を見直すことができた。学級生活満足群が

8人から17人に増え、非承認群が14人から3人に減ったことは、SSTプロ

グラム実践の成果であると思う。

プログラムを取り入れることで、児童の『互いに認め合う力』や『自己表現』

の力は少しずつであるが、身についてきたように思う。

・ ターゲット児童については、アンケート結果で大きな変化は見られなかったが、

課題であった『友だち作り』において、学級の中で一緒に活動したり休み時間

におしゃべりする友だちができたことは喜ばしいことであった。

・ 研究員がプログラムについての情報を提供することにより、学校全体として、

高学年の担任を中心に、SSTについての関心が高まり、実践するクラスが増え

てきた。

課題

・ 要支援群の児童たちが中央寄りになったとはいえ、学級不満足群が32%を占

める結果となった。このことから、集団全体だけではなく、個人の支援の場面

を充実する必要がある。

・ 学校全体で、担任がプログラムに取り組むための環境(教材の準備や保管など)

を整えていく必要がある。また、職員全体での研修の機会も多く持ちたい。

Page 17: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 59 -

「予想外!よそうがい」

目 的 ・他者に興味を持ち、他者の意外な面について話し合うことの楽しさを体験

する。

準備するもの ・準備カード ・ワークシート ・振り返りシート

活動内容 指導上の留意点 資料

①めあての確認をする。

②4~5人のグループを

作る。

③ワークシートに予想を

記入する。

④一人ずつ発表をする。

⑤振り返りシートに感想

を書く。

⑥グループで話し合う。

⑦振り返りシートにまと

め書く。

・ グループ作りがスムーズに行われるよう

考慮する。

・ 自分について準備カードに記入させる。

・ グループの中で、それぞれの項目のどれ

に当てはまるかを予想して記入させる。

日頃話している事や行動を思い出しなが

ら回答させる。 *児童の実態に応じて、質問項目を変えるとよ

い。

〔例〕苦手な食べ物・得意な運動等

・発表する(出題する)順番を、サイコロや

ジャンケンで決める。

・ 一項目ごと、他の3人が予想を発表す

る。全員の予想を伝えたら、本人が正解

とその理由を話す。

・ 全員が終わるまで、繰り返す。

・ 自分について発見したことや友だちにつ

いて気づいたことなどを振り返りシート

に記入させる。

・ 記入したことを基に、グループで話し合

わせ、発表させる。

・ このプログラムを実践して、良かったこ

とや思ったことを書かせる。

*10分程度、振り返りの時間をとるとよい.

・ 友達のことを知ろう。

・ 自分について発見しよう。

・準備カード

・ワーク

シート

・ふり返り

シート

Page 18: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 60 -

「予想外?よそうがい」準備カード

名前

☆次の質問に対する答を「答の例」から一つ選んで、答の欄に記号で書きましょう。

☆うらにも名前を書き、折りたたんで答が見えないようにしておきましょう。

質問 答の例 自分の答 理由

苦手な教科 (ア)国語

(イ)音楽

(ウ)社会

(エ)算数

(オ)図工

好きなテレビ番組 (ア)お笑い

(イ)アニメ

(ウ)クイズ番組

(エ)ドラマ・映画

(オ)歴史もの

好きな季節 (ア)春

(イ)夏

(ウ)秋

(エ)冬

好きな給食の献立 (ア)カレーライス

(イ)ジャージャー麺

(ウ)マカロニグラタン

(エ)ハンバーグ

(オ)やきそば

Page 19: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 61 -

「予想外?よそうがい」ワークシート

★やり方 ①お友達に当てはまりそうなものを「予想される答」の中からひとつ選んで、

「予想」のところに記号で書きましょう。

②本人の答のところは、あとで本人が答を発表したら、書きましょう。

質問 予想される

答えの例

さん

さん

さん

さん

予想

苦手な教科 (ア)国語

(イ)音楽

(ウ)社会

(エ)算数

(オ)図工 本人の答

予想

好きなテレビ番組 (ア)お笑い

(イ)アニメ

(ウ)クイズ番組

(エ)ドラマ・

映画

(オ)歴史もの 本人の答

予想

好きな季節 (ア)春

(イ)夏

(ウ)秋

(エ)冬 本人の答

予想

好きな給食の献立 (ア)カレーライス

(イ)ジャージャー麺

(ウ)マカロニグラタン

(エ)ハンバーグ

(オ)やきそば 本人の答

Page 20: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 62 -

「予想外!よそうがい」 ふり返りシート

年 組 番 名前

だいたい自分の予想通りだった

人は誰ですか? 予想外だった人は、誰ですか?

「予想外!よそうがい」をして、よかったことや思ったことを書きまし

ょう。

自分について発見したことや友だちについて気づいたことを書きましょ

う。

Page 21: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 63 -

(3)中学2年生での実施

①ソーシャルスキルプログラム授業実践

実施日 プログラム名 ターゲットとなるソーシャルスキル

1 6月16日(火) 「ムシムシ教室の席がえ」 協力 自己表現力

相手の言葉を最後まで聞く力

2 12月 8日(火) 「イニシアティブゲーム」 協力 自己判断力 自己表現力

3 12月21日(月) 「住宅事情」 意見を調整する力 自己判断力

相手の言葉を最後まで聞く力

4 2月 9日(火) 「Iメッセージを持とう」 自己表現力 他者理解

5 2月16日(火) 「ももちゃんのおつかい」

協力 状況理解 対立解消できる力

*参考資料 「平成20年度 不登校問題研究報告書」

日本GWT研究会(2003)「学校グループワーク・トレーニング3」遊戯社

「足柄ふれあいの村・イニシアティブゲーム野外編」

園田雅代・中釜洋子・沢崎俊之(2002)「教師のためのアサーション」東京図書

日本GWT研究会(2003)「学校グループワーク・トレーニング3」遊戯社

本田恵子(2007) 「マンションの住人」SST用教材 クリエーションアカデミー

②授業実践(自作資料)

(ア)プログラム名「Iメッセージを持とう」

(イ)指導過程

活動の内容 指導上の留意点 資料

1.準備・説明 17分

①「攻撃的」「受身的」「Iメッセージ」の3つの表現

の特徴について考えさせる。

②ケース1(友だちとのトラブルの場面)について3

つの表現方法を考えさせる。

③自分が日常生活の中で、どのパターンの行動をするか

考えさせる。

④Iメッセージが望ましい表現方法であることを理解さ

せる。

・カード3枚

・SSTカード

2.実 施 20分

①ワークシートを配り、ケース2~4について3通りの

表現方法を考えさせる。

②ロールプレイ(ペア)を行わせる。

③言う側・聞く側・第3者の感想を聞かせる。

④ケース2~4のIメッセージをいくつかのペアに指名

して発表させる。

⑤Iメッセージが自分の主張をしながらも相手も納得さ

せる一番適切な方法であることに気づかせる。

・ワークシート

3.結果発表・ふりかえり

5分

①「ふりかえりシート」を配り、記入させる。

②生徒の気づきを確認したり、良かったところを伝え

る。

・ふりかえり

シート

4.ま と め 8分

①Iメッセージがどんな言葉か指名し発表させる。

②「Iメッセージ」が互いに気持ちよく過ごすため

の言葉であることに気づかせ、今後の生活で実践して

いくことを伝える。

Page 22: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 64 -

③クラス及びターゲット生徒の実態

*1点に複数人重なる場合がある。

(ア)クラスの実態 第1回Q-Uプロット結果

実施日:平成21年6月中旬

対象:中学校2学年 37人

(イ)クラスの実態 第2回Q-Uプロット結果 *1点に複数人重なる場合がある。 実施日:平成22年2月中旬

対象:中学校第2学年37人

クラスの実態

生活について

・ルールが十分内在化していない。

・生徒同士の人間関係が希薄である。

・一部の影響力の大きいインフォーマ

ルなリーダーに学級の雰囲気が左右

される傾向が見られる。

学習について

・教科により学習態度が異なる。

・頑張ろうとしている生徒が不満を抱

えている可能性がある。

育てたい力

・自己を大切にし、気持ちや考えを相

手に適切に表現し伝える力

・互いに認め合える力

A

学級生活満足群

16人・43%

侵害行為認知群

3人・8%

学級生活不満足群

8人・22%

非承認群

11人・30%

学級生活満足群

20人・54%

非承認群

8人・22%

侵害行為認知群

3人・8%

学級生活不満足群

6人・16%

クラスの変容

生活について

・周囲を見ることができるようにな

り、生徒たちが互いに声をかけ合

い行動している。

・ひとり一人の友達関係が広がっ

た。集団活動で意見や考えを言っ

たり、真剣に聞いたりする姿勢が

見られる。

学習について

・どの教科においても学習に対する

意欲が高まっている。

・お互いに前向きに取り組む姿を認

め合えるようになった。

A

Page 23: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 65 -

(ウ)ターゲット生徒A ソーシャルスキル獲得度結果 (実施日H21 6月上旬/ H22 2月下旬)

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛け)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

教室

でのルー

課題

への取り組

の先生との関係

友だちと一緒

に作業

友だち作り

友だちの維持

関係

の発展

自己表現

他者理解

状況理解

セルフ

エステ

ィー

ストレス耐性

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

(エ)ターゲット生徒B ソーシャルスキル獲得度結果(実施日H21 6月上旬/H22 2月下旬)

ターゲット生徒Aの現状

・朗らかで周りの人が傷つくような

発言・行動はないが、周りに自分

の気持ちを伝えることができな

い。

・「状況理解」が低く、自分の行動

がどのような結果につながるのか

予測する力が十分でない。

育てたい力

・自分の考えや意見を言う力

・状況を理解し、判断する力

ターゲット生徒Aの変容

・その場の状況を理解し行動する姿

勢が見られるようになった。自分

の意見や考えを伝えることがで

き、級友に認められ友達関係が広

くなった。

ターゲット生徒Bの現状

・課題を把握し、行動することがで

きる。

・「人の気持ち」は理解できるが、

自分の気持ちを適切に伝えること

が苦手である。

育てたい力

・セルフエスティーム(自分に対す

る自信)

・自己表現力

ターゲット生徒Bの変容

・人間関係が広くなり、集団活動で

自分の意見や考えなど「自己表

現」ができるようになり、自分自

身に対する自信も高まっている。

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛け)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

教室でのルー

課題

への取り組

の先生との関係

友だちと一緒

に作業

友だち作り

友だちの維持

関係の発展

自己表現

他者理解

状況理解

セルフ

エステ

ィー

ストレス耐性

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

Page 24: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 66 -

④成果と課題

成果

・第1回目のQ-Uの結果に比べ、全体的に右上がりの傾向が見られ、学級生

活満足群が16人から20人に増加し、非承認群が11人から8人に減少し

た。これは、学級に必要なスキルである「自己表現力」「協力」を高めるプ

ログラムを実践した成果であると考えられる。

・全体的に見ると、承認得点が高くなった生徒が多く、これは集団の中の自己

の役割を理解するとともに、互いに認め合い、ひとり一人が自信を持って生

活を送ることができるようになったと考えられる。

課題

・第2回目のQ-Uの結果によると、承認得点が低い生徒も何人か見られる。

これは、自己表現の苦手な生徒が、活動の中で役割を果たしても、周りに認

められなかったと考える。日々の学級経営の中で、児童ひとり一人が大切で

あることを伝え、達成感を実感できる場面をつくっていき、お互いの良さを

認め合い言語化できる集団に育てていきたい。

・担任するクラスばかりではなく、学年全体でプログラムを実施することがで

きた。研究を生かし、学校全体で体系的に取り組める環境づくりをしていき

たい。

Page 25: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 67 -

「Iメッセージ」

目 的 他者を思いやりながら、自分の考えも伝える適切な方法を学ぶ。

準備するもの SST2択展開カード(拡大版) ワークシート(振り返りシート)

活動内容 指導上の留意点 資料

Iメッセージを学ぶ。

①3通りの表現の特徴について学

ぶ。

A:攻撃的(ケンカごし) ※相手は自尊心が傷つく。

B:受け身的(相手の言いな

り) ※相手は過ちに気づかな

い。

C:Iメッセージ(私は○○と思うよ)

※相手は素直に反省する。

②絵をみて場面を想定し、望ましい対応を考える(ケース1)。

ケース1

自分が持ってきたはずの体操着がな

い。ロッカーに体操着があり、取ろう

とすると、同じクラスの友達が「おれ

の体操着だ」と言って引っ張ってき

た。

③実際に自分がどんな対応をする

か考える。

④3通りの表現のうち、一番適切な表現がIメッセージであるこ

とを伝える。

※話し方には大きく3つのパターンが

あることを伝える。

A:自分の主張を一方的にし、相手のことを考えない。

B:相手の主張だけ聞いてしまう。

C:相手のことも考えながら、自分の主

張もする。

3通りの対応について考えさせる。 A:攻撃的

「おれの体操着だよ。かえせよ」

B:受け身的 「わかったよ」

C:Iメッセージ

「ちょっと待って。お互いロッカーとかかばんを確認しようぜ」

・掲示資料

・SST2

択展開カード

(拡大版)

日常生活において、自分がどのパターン

の表現をしているかを振り返らせる。

日常生活において、自分がどのパターン

の表現をしているかを振り返らせる。

Page 26: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 68 -

⑤ケース2~4について3通りの言い方を考え、ロールプレ

イをする。

ケース2

授業後、黒板にかかれている内容を

ノートに写していた時、Aさんが黒

板を消し始めました。あなたは何と

いいますか。

ケース3

給食の時間、あなたはカレーの配膳

係で、あと数人で配り終わります。

その時、B君が「大盛りにしてよ」と

言いました。あなたは何と答えます

か。

ケース4

ここ数日、友達のC君がボールペン

を借りに来ます。あなたは何といい

ますか。

・ワークシートを配り、ケース2~4に ついて、次の手順で行わせる。

ケース2~4について

①3通りの表現方法をワークシートに 記入する。

②ペアにして、ロールプレイを行わせ

る。いくつかのペアを指名して発表 させる。

③言う側・聞く側、第三者に感想を聞

く。

④Iメッセージが、自分の主張もしな がら相手も納得させる一番適切な表

現であることに気づかせる。

・ワーク

シート

⑥感想を記入する。

⑦授業の中で気づいたことや 感想を発表する。

・振り返りシートに記入させる。

・何人かに指名し、発表させる。

・ふりかえり

シート

⑧Iメッセージがどんな言葉か

発表させる。

⑨学校生活の中で「Iメッセージを使えば良かったな」と思

う出来事について振り返る。

⑩これから人と接するとき、どのようなことに気をつけたら

よいかを全体にフィードバックする。

・Iメッセージを使うことの良さに気づか

せる。

・今までの生活を振り返るとともに、Iメッセージを今後の生活で生かせるように

する。

Iメッセージが互いに気持ちよく過ごすた

めの言葉であることに気づかせる。

Page 27: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 69 -

≪Iメッセージで伝える意識を持とう≫

年 組 番 氏名

①攻撃的な話し方 ~自分の気持ちだけ主張する。 ②受身的な話し方 ~相手の主張を受け入れ、自分の気持ちを抑える。

③Iメッセージ ~相手を思いやりながら、自分の考えを言う。

☆ケース2 授業後、あなたは黒板に書かれている内容をノートにうつしていたとき、A

さんが黒板を消し始めました。あなたはなんといいますか。

「 」に入る言葉を考えよう。

Aさん :( 黒板を消し始める ) あなた:「 」

☆ケース3 給食の時間、あなたはカレーの配膳係です。あと数人で配り終わります。

そのとき、Bさんが「カレー大盛りにしてよ」と言ってきました。

「 」に入る言葉を考えよう。

Bさん : 「カレー大盛りにしてよ」 あなた : 「 」

攻撃的 受身的 Iメッセージ

攻撃的 受身的 Iメッセージ

Page 28: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 70 -

☆ケース4 ここ2、3日、毎日友達のCくんがボールペンを借りにきます。

今日も授業前にC君があなたのところにきました。

「 」に入る言葉を考えよう。

Cくん: 「ボールペン貸してくれる?」

あなた: 「 」

☆ まとめ (あなたはIメッセージがどんな言葉だと思いますか。)

Iメッセージは… な言葉

○ 今日の授業を受けてのふりかえり ① 今までに「あのときこういう風に言えばよかったなぁ」と思う出来事はありますか。

② 自分の今までの言葉の使い方や今日の授業で気づいたことなどを書きましょう。

攻撃的 受身的 Iメッセージ

Page 29: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 71 -

(4)中学校3年生での実施

①ソーシャルスキルプログラム授業実践

実施日 プログラム名 ターゲットとなるソーシャルスキル

1 11月5日(木) 自分のストレスを考えてみよう ストレス耐性

2 1月19日(火) )ストレス対処法 ストレス耐性

3 2月 8日(金) 考え方をCHANGE! ストレス耐性

4 2月24日(金) すごろくトーク 自己理解・他者理解

5 3月 3日(水) 良いところ探し 自己理解・他者理解

*参考資料 河村茂雄(2006)「グループ体験による学級育成プログラム」 図書文化社

本田恵子(2004)「SSTカード」 クリエーションアカデミー

「平成20年度 不登校問題研究報告書」

②授業実践(自作資料)

(ア)プログラム名「ストレス対処法すごろくトーク」

(イ)指導過程

活動の内容 指導上の留意点 資料

1. 準備・説明 10分

① 予め作成した座席表を事前に知らせておき、始

業時には班の隊形で着席させる。

② 本時の目標(すごろくを通して色々なストレス

にどう対処するか考え、また、友達のストレス

対処法に学ぶ。)を知らせる。

③ すごろく用紙とサイコロを取りに来させる。

・座席表

・すごろく

用紙

・サイコロ

2.実施 25分

① 机間巡視し、円滑に進められているか確認し適

宜指示を出す。

② 温かい人間関係の中で行われているか確認し、

良い答えは褒め、アドバイスして回る。

3.ふりかえり 7分

① 終了させ、すごろく用紙とサイコロを戻させ

る。

② 机を前に向けさせ、振り返り用紙を配り、書か

せ回収する。

・ふりかえ

り用紙

4.まとめ 8分

① 振り返り用紙の中から、いくつか感想を紹介し、

今日の授業を日々の生活に生かすよう指導する。

Page 30: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 72 -

③クラス及びターゲット生徒の実態

*1点に複数人重なる場合がある。

(ア)クラスの実態 第1回Q-Uプロット結果

実施日:平成21年6月中旬

対象:中学校3学年31人

(イ)クラスの実態 第2回Q-Uプロット結果 *1点に複数人重なる場合がある。 実施日:平成22年2月中旬

対象:中学校第3学年31人

クラスの実態

生活について

・男女仲がよく、行事には意欲的に

取り組むが、自主的にけじめを持

った行動を取らず、教師の指示待

ちとなる場面が多い。

学習について

・どの教科の授業にも意欲的に取り

組むが、理解の遅い生徒が多い。

生徒からの質問が多いため、てい

ねいに時間をかけて教える必要が

ある。

育てたい力

・自己肯定感

・自己表現力

・他人の立場を理解し、協力できる

学級生活満足群

18人・56%

侵害行為認知群

2人・6%

学級生活不満足群

6人・18%

非承認群

5人・16%

学級生活満足群

18人・58%

非承認群

4人・13%

侵害行為認知群

4人・13%

学級生活不満足群

5人・16%

クラスの変容

生活について

・二学期後半から受験に向けての

生活に変わり、大半の生徒がス

トレスを感じている。

何にストレスを感じているか自

分をしっかり見つめ、ストレス

対処法を学習した結果、クラス

全体の雰囲気が落ち着いてき

た。

学習について

・お互いに問題を出し合ったり、

わからない問題を友達に教わっ

たりと協力しながら学ぶ姿勢が

見られた。

A

Page 31: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 73 -

(ウ)ターゲット生徒Aソーシャルスキル獲得度結果

(実施日平成21年6月中旬・平成22年2月中旬)

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛け)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

教室でのルー

課題

への取り組み

の先生との関係

友だちと一緒に作業

友だち作り

友だちの維持

関係の発展

自己表現

他者理解

状況理解

セルフエステ

ィーム

ストレス耐性

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

(エ)ターゲット生徒B ソーシャルスキル獲得度結果

(実施日平成21年6月中旬・平成22年2月中旬)

注:平均獲得度の目安は60~70%(網掛け)

領域別のソーシャルスキル獲得度(%)

20

30

40

50

60

70

80

90

100

教室

でのルー

課題

への取り組み

他の先生との関係

友だちと一緒

に作業

友だち作り

友だちの維持

関係

の発展

自己表現

他者理解

状況理解

セルフエステ

ィー

ストレス耐性

①学校でのルールや道徳性 ②友だちとの関わり方 ③基盤となるスキル

(%)

1回目 2回目

 度近がうかがえますでしょう

 でれているといえるでしょうもできるようになってきたことがティーム

 「項目ジメントプログラム友況理解対処法バイスたのではないかとり展中のかす

本人

 

ターゲット生徒Bの現状

・規範意識が足りない面がある。

・体育祭実行委員としての活動はでき

たが、学習には集中して取り組めな

い。

育てたい力

・規範意識

・集団行動のルールを守ること

・学習や作業に集中して取り組む力

ターゲット生徒Bの変容

・多くの友達と関われるようになり、

気持ちが安定してきた。

・課題への取り組みや状況理解につい

ては、支援が必要である。

ターゲット生徒Aの現状

・人の気持ちを理解する能力が低

く、人との距離の取り方がわから

ない。誰に対しても同じようにス

キンシップをする形で接するので

トラブルが多い。

・学習能力は低く、集中して課題に

取り組むことができない。

育てたい力

・場面に応じた行動をとる判断力

・学習や作業に集中して取り組む力

ターゲット生徒Aの変容

・行事や学活、係活動を通して、

色々な生徒との関わりの中で、人

との距離感がつかめてきたよう

だ。友達が少しずつ増え、トラブ

ルも減ってきた。

Page 32: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 74 -

成果と課題

成果

・Q―Uを活用することにより、普段見えている生徒の様子とは違う内面を知ることが

でき、クラス運営や生徒理解、指導の方針を決める際に大変役立った。

・中学3年生ということもあり、進路に向けての不安や焦りを誰もが抱えていた。その

ため、特にストレスマネジメントに重点を置き、「ストレス要因」や「ストレス対処

法」「考え方をchange」「すごろくトーク」などの一連のプログラムを実践した。

この実践は、生徒の気持ちを安定させたり、人間関係を円滑に結んでいくために有効

であり、生徒全員が共通に抱えている課題であったので、真剣に取り組むことができ

た(参考資料1 ストレスに関するアンケート結果)。

課題

・今年度は対象が中学3年生という事もあり、2学期以降大きな行事や進路指導に時間

がとられる事が多く、ソーシャルスキルトレーニングプログラムの時間の確保が充分

にできなかった。

・プログラムの実践がより早く始められれば、もっと効果が期待できたと思う。次年度

は、早い段階から継続的にプログラム実践を行いたい。

参考資料1 ストレスに関するアンケート結果(3学年)

(1)ストレス要因

1位 友だち関係(27人) ~気を使いすぎ気づかれする。ちょっかいをだされる。

勉強(27人) ~やるべきことが山積み

2位 親(18人) ~叱られる。気持ちをわかってもらえない。

3位 受験(10人)

4位 兄弟(9人)

5位 ルールを破る人(8人)~授業中うるさくする。勝手なことをする。

6位 だめな自分(5人)

7位 塾(3人)

(2)ストレス対処法を考えよう(生徒の意見を集約)

①友だちに気を遣いすぎて疲れる場合の対処法は・・・

・勇気を出して自分の意見を言う。

・友だちと距離を置く。

・最初に中途半端な関係を作らない。

②「何をやってもうまくいかない自分がいやだ」と思った場合の対処法は・・・

・ポジティブシンキング ・人に相談する。

・人と比べない。 ・あきらめずに挑戦する。

・うまくいくように努力する。 など

Page 33: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 75 -

資料1

Page 34: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 76 -

資料2

ソーシャルスキルトレーニング・ふりかえりシート (よくできた・・・5 できた・・・4 普通・・・3 あまりできなかった・・・2

できなかった)

(1) 今日の活動に積極的に参加できた。

5 4 3 2 1

(2) ストレッサーについて、対処法を考えることができた。

5 4 3 2 1

(3)友だちのストレス対処法を聞いて、参考になった。

5 4 3 2 1

(4)ストレス対処についての考え方が広がった。

5 4 3 2 1

(5)今日の自分の活動についての感想

(6)友達の対処法についての感想

Page 35: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 77 -

成果と今後の課題

成果

・研究員が日常の観察に加えて、Q-

Uによる客観的なデータを取り入れ

ることで、児童・生徒の内面を深く

理解し適切に学級集団を見立てるこ

とができた。それが、改善策として

のプログラム実践の効果を上げた大

きな要因である。

・これまでの研究では、小学校低学

年・中学年・中学生用のプログラム集

を作成した。今回の研究では、前回

の研究では作成できなかった小学校

高学年用のプログラムの充実が課題

である。

・研究員が、研究の成果である自作の

プログラムや SST に関する情報を勤務

校の教員に提供し、児童・生徒の現

状を解決する糸口となるグループワ

ークを提案できたことは大きな成果

と考える。

課題

・場合によっては、学級活動の時間が

充分にとれなくても、朝や帰りのホ

ームルームなどで気軽に取り組める

15分程度のショートプログラムも

作成し、プログラムの内容を充実さ

せていきたい。

・Q-Uでクラスを分析し、改善策と

してのSSTプログラムを紹介して

いきたい。

どんな場合も

全くできない

状況によってできなく

なることが多い

状況によってできたり

できなかったり

状況が変わっても

だいたいできる

いつでもできる

1.教室でのルール

1. どういうときには静かにしていなくてはいけないかがわかっている 1 2 3 4 5

2. 隣の席の子と話していいときといけないときがわかっている 1 2 3 4 5

3. 自分の教室以外の場所でも、同じルールを守ることができる 1 2 3 4 5

4. 先生が教室にいないときにどうしたらよいかがわかっている 1 2 3 4 5

5. 先生は、みんなのもの(独り占めしてはいけない)であるとわかっている 1 2 3 4 5

6. 担任・教科担当の先生の指示にすぐに従える 1 2 3 4 5

7. 家のルールと学校のルールの違いがわかっている 1 2 3 4 5

2.課題への取り組み

1. 課題に最後まで取り組める 1 2 3 4 5

2. 授業中に他のことを想像したり、ぼーっとしないでいられる 1 2 3 4 5

3. ひとりで作業することができる 1 2 3 4 5

4. 授業の準備ができる 1 2 3 4 5

5. 自分が取り組んでいる課題が、先生の指示したものかを確認している 1 2 3 4 5

参考資料1 ソーシャルスキルアンケート

Page 36: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 78 -

3.学校の中の他の先生との関係について

1. 代理の先生が来ても、いつもと同じように行動できる 1 2 3 4 5 2. 校長先生に対して、どのように行動すればよいかわかっている(校長室に呼ばれた

り、廊下で出会ったりしたとき) 1 2 3 4 5

3. 事務室や用務の職員を尊重したり、指示に従ったりできる 1 2 3 4 5 4. アシスタントの先生やサポーターの人にじょうずに助けを求めたり、指示に従うことが

できる 1 2 3 4 5

4.友だちと一緒に作業

1. 他の人を邪魔しないでいられる 1 2 3 4 5

2. 1人ひとりのペースの違いを受け入れることができる 1 2 3 4 5

3. 他の人に触るときの方法や距離が理解できる 1 2 3 4 5

4. 授業中にペアやグループで作業することができる 1 2 3 4 5

5. 掃除の時間に他のメンバーと一緒に作業することができる 1 2 3 4 5

6. 自分の役割(係りや当番)を行うことができる 1 2 3 4 5

5.友だち作り 1. 他の人に興味・関心を持つことができる 1 2 3 4 5

2. 困っている友だちを自分から助けに行くことができる 1 2 3 4 5

3. 他の人と一緒に時間をすごすことができる 1 2 3 4 5

4. 人から好意をもたれる存在になることができる 1 2 3 4 5

5. 他の人を自分のグループに誘うことができる 1 2 3 4 5

6.友だちの維持 1. 友だちの悪口をいわない 1 2 3 4 5

2. うそをつかない 1 2 3 4 5

3. 遊びの途中でグループに入ったり抜けたりできる 1 2 3 4 5

4. いろいろな状況での友だちとの付き合い方を知っている 1 2 3 4 5

5. 人につきまとったり、依存したりしすぎない 1 2 3 4 5

6. 友だちを独り占めしない 1 2 3 4 5

7.関係の発展 1. 自分のあやまちに対して、謝罪ができる 1 2 3 4 5

2. 友だちの意見やアドバイスを聞くことができる 1 2 3 4 5 3. 意見が対立したときに、ひとりが話しているときは、割り込まずに最後まで聞くことがで

きる 1 2 3 4 5

4. リーダーシップを発揮することができる 1 2 3 4 5

5. 意見が対立したときに、自分の意見をはっきりと、わかりやすく伝えることができる 1 2 3 4 5

8.自己表現

1. 自分の気持ちや考えをはっきりと表現することができる 1 2 3 4 5

2. 自分の気持ちや考えを相手がわかるようにことばで伝えることができる 1 2 3 4 5

3. いやなときは断ることができる 1 2 3 4 5

4. いろいろな表情ができる 1 2 3 4 5

9.他者理解

1. 他の人の気持ちを傷つけない 1 2 3 4 5

2. 先生や両親、他の人がどんな気分なのかがわかる 1 2 3 4 5

3. 同じ状況でも人によって捉え方が違うことを理解できる 1 2 3 4 5

4. 相手の気持ちを、表情や言葉の抑揚から読み取ることができる 1 2 3 4 5

Page 37: ソーシャルスキルトレーニングの実践と ... · ③ふりかえりカードを配付し、今日のふり かえりをさせる。 ・ふりかえりカ ード 4.まとめ

- 79 -

10.状況理解

1. どの情報を聞けばよいのか判断できる 1 2 3 4 5

2. これをやったらどうなるかを予測できる 1 2 3 4 5

3. 状況を広い視野で見ることができる 1 2 3 4 5

4. なぜそうなったのか(ある出来事が起こったのか)を理解できる 1 2 3 4 5

11.セルフエスティーム

1. 自分らしさがわかっている 1 2 3 4 5

2. 自分が得意なことに誇りを持つことができる 1 2 3 4 5

3. 困難な場面でも自分の力を信じることができる 1 2 3 4 5

4. 自分ができることを自分なりに一生懸命やることができる 1 2 3 4 5

5. 人の評価に左右されない 1 2 3 4 5

12.ストレス耐性

1. 思い通りにいかなくても、かっとならずにいられる 1 2 3 4 5

2. 失敗してもくよくよしないでいられる 1 2 3 4 5

3. マイナス思考にならずにいられる 1 2 3 4 5

《 出典 》

岡田 佳子・本田 恵子 2009

小中学生のソーシャルスキルトレーニングに関する研究(1)

―アセスメン用ソーシャルスキル尺度作成の試みー

日本教育心理学会 第51回総会(静岡大学)発表論文集、552.