13 平成21年度戦略的開発研究(工学)報告書 ·...

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13.展開型柔構造による回収システムの研究 1 平成21年度戦略的開発研究(工学)報告書 研究課題名 展開型柔構造による回収システムの研究 研究代表者(所属) 鈴木宏二郎(東京大学大学院 新領域創成科学研究科) 研究分担者(所属) 秋田大輔(東京工業大学大学院 理工学研究科 国際開発工学専攻) 安部隆士(JAXA宇宙科学研究本部 宇宙輸送工学研究系) 今村宰(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻) 林光一(青山学院大学 理工学部) 山田和彦( JAXA宇宙科学研究本部 宇宙輸送工学研究系) 活動区分 WG □研究班( その他(来年度にWGの設置の申請予定) 研究活動期間 平成 17 年度 から 平成 25 年度(予定) 平成21年度 研究の概要 展開型柔構造による回収システムの実用化に必要な技術要素について,いくつかの実証 試験を実施した.インフレータブル構造を有する飛翔体の展開,及び,低速領域での自由 飛行の実証として,気球を利用したフライト試験を実施 ,また,高温高速環境下で使用可 能なインフレータブル構造の耐環境性実証試験として極超音速風洞試験 を実施した.そし て,それらの知見を元に,観測ロケット実験用の実験機の具体的な設計検討を開始し,気圏突入実験に使用可能な柔軟エアロシェルを試作し その評価を進めている .さらに, 将来の実ミッションの一つとして火星探査機への応用検討 も開始した. 特記事項

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Page 1: 13 平成21年度戦略的開発研究(工学)報告書 · が,火星探査計画(melos)への適用についても具体的に検討が開始されている. 継続理由(3年以上継続研究)

13.展開型柔構造による回収システムの研究

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平成21年度戦略的開発研究(工学)報告書

 研究課題名 展開型柔構造による回収システムの研究

 研究代表者(所属) 鈴木宏二郎(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)

 研究分担者(所属)

秋田大輔(東京工業大学大学院 理工学研究科 国際開発工学専攻)

安部隆士(JAXA宇宙科学研究本部 宇宙輸送工学研究系)

今村宰(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)

林光一(青山学院大学 理工学部)

山田和彦( JAXA宇宙科学研究本部 宇宙輸送工学研究系)

 活動区分 □WG   □研究班(      )  ■その他(来年度にWGの設置の申請予定)    

 研究活動期間 平成 17 年度 から 平成 25 年度(予定) 

 平成21年度  研究の概要

展開型柔構造による回収システムの実用化に必要な技術要素について,いくつかの実証試験を実施した.インフレータブル構造を有する飛翔体の展開,及び,低速領域での自由飛行の実証として,気球を利用したフライト試験を実施,また,高温高速環境下で使用可能なインフレータブル構造の耐環境性実証試験として極超音速風洞試験を実施した.そして,それらの知見を元に,観測ロケット実験用の実験機の具体的な設計検討を開始し,大気圏突入実験に使用可能な柔軟エアロシェルを試作し,その評価を進めている.さらに,将来の実ミッションの一つとして火星探査機への応用検討も開始した.

 特記事項

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13.展開型柔構造による回収システムの研究

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本研究の背景,目的,意義など

(背景)

 近年,日本国内においても,宇宙ステーションでの定常的な実験の開始や多くの小型衛星の打ち上げなど,宇宙活動が活発になってきているが,これを継続的に支え,さらに発展させるためには,宇宙輸送システムの充実が必須である.しかし,宇宙からの帰還システムに関しては,国内には具体的な計画がない.そこで,日本独自の大気突入回収技術として,展開型の柔軟構造エアロシェルによる大気突入回収システムを提案する.

(目的)

 柔軟構造エアロシェルを利用した帰還回収システムを実際のミッションに使用できるレベルまで成熟させることを目的とする.本研究提案では,特に,大気球や観測ロケットを利用したフライト試験での実証を中心にして,システム全体として実証を目指す.実験機を開発,実験を運用する中で,実用化に際する課題や利点を明らかにし,それらの結果をもとに,具体的な再突入回収ミッションや惑星突入探査ミッションへの応用提案を行う.

(意義)

 柔軟構造体による大気突入システムが実用化されれば,日本独自の回収技術が構築され,さらなる,宇宙活動の活性化に貢献する.また,柔軟エアロシェルの技術は,地球再突入回収ミッションへの適用だけなく,大気のある惑星探査ミッションへの応用も期待され,宇宙科学の発展にも寄与することが期待される.

独創的な点

 柔軟構造エアロシェルを大気突入機に応用するという概念自体は1960年代から提案されている.大気突入時の最大空力加熱が大幅に低減できるなどの利点があるため,様々な形状や応用について研究が行われてきたが,現在まで,実際のミッションに適用された例はない.本研究提案では,「インフレータブルトーラスで形状を維持する薄膜フレア型エアロシェル」に注目し,その実用化に必要な技術の成熟という視点からの研究開発を進める.特に,フライト試験用の実験機開発を軸に据えることで,実験機の設計を進める中,実用化に際しての問題点を明確にしていく.なお,近年,この概念は,次世代の大気突入技術として注目されており,ESAのIRDT計画,NASAのIRVE実験などのフライト試験に加え,NASAでは惑星探査への応用を目指した基礎研究(PAIDAE計画)も積極的に実施されている.

本研究の目的

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13.展開型柔構造による回収システムの研究

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研究計画・方法(開始年度から)

平成17年度 

 第2次気球実験(平成16年度に実施)の分析

  →実用化に際しての重要な技術課題を抽出(展開構造体,膜材料,空力特性の把握,回収技術など)

 展開型の大型軽量エアロシェルの開発

  →インフレータブル型,金属バネ型,ハイブリッド型の比較検討

 次のマイルストーンとして,大気球及び観測ロケットを利用したフライト実験計画の策定開始

平成18年度 

 展開型の大型軽量エアロシェルを実現する方法としてインフレータブル型エアロシェルを開発

  →エアロシェルの試作,展開試験,構造試験などを実施.

 フライト試験用(観測ロケット実験and/or気球実験)の搭載機器(テレメータやセンサなど)の開発,試験 

平成19年度 

 重点課題とした技術要素の実証試験の準備

  小規模の気球実験の提案(インフレータブル飛翔体の機能実証)

   →インフレータブルトーラスを有するエアロシェルの構造強度試験や展開試験を実施.

  極超音速風洞試験の準備(膜面材料の耐環境性能実証)

   →レーザーや加熱器での材料試験,東大柏極超音速風洞を利用した予備試験を実施

平成20年度

 極超音速風洞による極超音速気流中の柔軟エアロシェルの挙動,及び,空力特性試験

   →JAXA調布のφ1.27極超音速風洞にて,柔軟エアロシェル模型を用いた実験手法を確立. 

 小規模の気球実験「小型インフレータブル飛翔体の展開及び自由飛行実証試験」が採択.

   →小型のインフレータブルエアロシェルを有する実験機の開発完了(直前に天候不順で延期).

研究計画と方法

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13.展開型柔構造による回収システムの研究

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研究計画・方法(つづき)

平成21年度 (研究成果の詳細は,P4,P9以降を参照)

 気球を利用した小型インフレータブル飛翔体の展開及び自由飛行試験の実施

 フレア型,及び,インフレータブル型模型の極超音速風洞試験の実施

 観測ロケットによる大気圏突入実証試験の具体化,実験機用の柔軟エアロシェルの開発開始

-----------------------------------以下予定------------------------------------------------------------

平成22年度 

  観測ロケットによる大気圏突入実証試験用の実験機の開発に注力する.

    柔軟エアロシェルの設計製作.極超音速風洞,大型低速風洞試験での最終機能実証.

    搭載機器の環境試験,実験機への組み込みを行い,実験機の詳細設計を確定.

  地球帰還ミッションや惑星探査ミッション(火星複合探査(MELOS)等)へ具体的に応用検討を行う.

平成23年度:観測ロケット実験の実施(柔軟エアロシェルの大気圏突入環境での機能を実証)

平成24年度:大気球試験(5m規模のエアロシェルを有する飛行体の展開,飛翔,海上回収の実証)の準備

平成25年度:大気球実験の実施(実サイズ柔軟エアロシェルを用いて展開,飛翔から回収運用を実証)

  →観測ロケット実験と大気球実験にて,実用化にむけたすべての技術実証は完了.

   その後は,軌道から再突入回収ミッションや火星探査ミッションなど具体的な計画への発展を想定.

本研究の到達目標

• 本研究提案の最終的な目標は,宇宙空間に存在するものを安全かつ地球に帰還させるシステムを構築することで,その候補の一つである,柔軟構造エアロシェルを利用した帰還回収システムを実際のミッションに使用できるレベルまで成熟させること,そして,具体的なミッション提案を行うことである.

• H21年度の到達目標は,観測ロケットによる大気圏突入実証試験を実施するための要素技術を実証すること,そして,それを踏まえた上で,観測ロケット実験計画を具体化,設計,試作を開始することである.

研究計画・方法

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13.展開型柔構造による回収システムの研究

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平成21年度研究成果の概要

研究成果

・大気球を利用し,「小型インフレータブル飛翔体の展開及び自由飛行試験」を実施した.(詳細はP10)

  上空(真空環境)でリモートに展開するインフレータブル展開システムの実証

  自由飛行環境下でのインフレータブルトーラスの構造強度に関する知見を取得

  低弾道係数飛行体の低速自由飛行環境下での飛行特性,及び,エアロシェルの挙動に関する知見を取得

・フレア型,及び,球状インフレータブル模型の極超音速風洞試験を実施した.(詳細はP11)

  フレア型エアロシェルの形状パラメータが空力特性や空力加熱環境にあたえる影響についてのデータ取得

  高速高温環境下でのインフレータブル構造体についての耐環境性についての評価,実証した.

・上記の結果をもとに,観測ロケットによる大気圏突入用の柔軟エアロシェルの試作を行った.(詳細はP12)

目標の達成状況

 平成21年度は,当初の予定どおり,気球実験の実施によりインフレータブル飛翔体技術を習得し,極超音速風洞試験によりインフレータブル構造の耐環境性の実証ができ,観測ロケットによる大気圏突入実証試験の実験機開発にむけた準備が整った.また,それらの知見にもとづき,観測ロケット実験用エアロシェルの試作も開始しており,本年度の目標は十分に達成された.また,惑星探査への応用検討も,当初の目標の一つであったが,火星探査計画(MELOS)への適用についても具体的に検討が開始されている.

継続理由(3年以上継続研究)  今年度の成果をもって,平成23年度に実施を提案している観測ロケットによる大気圏突入実証試験にむけて,技術的には目途を立てることができた.それらの技術をシステムとして実証するためには,観測ロケット実験を実施しなくてはならず,少なくともあと2年の継続は必要である.

 また,その後に計画している大気球を利用した大型のエアロシェルの展開,飛翔,回収実証試験の実施をもっ

て,軌道からの展開型柔軟エアロシェル帰還回収システムの準備が整えられるまでは,継続して研究を行う必要がある.

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13.展開型柔構造による回収システムの研究

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平成21年度研究業績(研究発表,特許,表彰など)

1) Kazuhiko Yamada, Daisuke Akita, Eiji Sato, Kojiro Suzuki, Tomohiro Narumi and Takashi Abe Flare-Type Membrane Aeroshell Flight Test at Free Drop from a Balloon (AIAA Journal of Spacecraft and Rocket, Volume 46, Number 3, Page 606-614, 2009)

2) Kazuhiko Yamada, Yusuke Kimura, Daisuke Akita, Takashi Abe, Kojiro Suzuki, Osamu Imamura, Masashi Koyama, A. Koichi Hayashi. Study on Low-ballistic-coefficient Atmospheric-entry Technology using Flexible Aeroshell” (ISTS Special Issue: Selected papers from the 26th ISTS, Transactions of JSASS, Space Technology Japan, Vol. 7 (2009))

3) Masashi Koyama, Kojiro Suzuki, Osamu Imamura, Kazuhiko Yamada Study on Mini Re-Entry System Using Deployable Membrane Aeroshell (ISTS Special Issue: Selected papers from the 26th ISTS, Transactions of JSASS, Space Technology Japan, Vol. 7 (2009))

4) Kazuhiko Yamada, Masashi Koyama, Yusuke, Kimura, Kojiro Suzuki, Takashi Abe, and A. Koichi Hayashi Hypersonic Wind Tunnel Test of Flare-type Membrane Aeroshell for Atmospheric entry Capsule (27th ISTS, Tsukuba, 2009, ISTS-2009-e-20)

5) Kazuhiko Yamada, Yuka Kato, Takashi Abe 19.Numerical Simulation of the hypersonic flow around the flare-type aeroshell (Sixth Asia Workshop on Computational Fluid Dynamics,Kashiwa, March, 2010)

学会誌,及び,国際学会発表

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13.展開型柔構造による回収システムの研究

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平成21年度研究業績(研究発表,特許,表彰など)

6) 山田 和彦、木村祐介、加藤優佳、牧野 仁、安部 隆士、林光一 「インフレータブル構造を有する超音速減速装置に関する研究」 (第41回流体力学講演会、調布、2009年6月)

7) 山田和彦,鈴木宏二郎,秋田大輔,林光一,安部隆士,石村康生,中篠恭一 「柔軟エアロシェルを利用した大気突入機に関する研究」 (第53回宇宙科学技術連合講演会,京都,2009年9月)

8) 本間直彦,山田和彦,鈴木宏二郎,安部隆士,秋田大輔,林光一,石村康生, 木村祐介,小山将史,牧野仁,安部大佑,永田靖典, 大道勇哉, 和泉有祐, 山下礼 「小型インフレータブル飛翔体の展開及び飛翔試験」 (平成21年度大気球シンポジウム,相模原,2009年10月)

9) 永田靖典, 本間直彦,山田和彦,鈴木宏二郎,安部隆士 「民間通信衛星を使った宇宙飛翔体用テレメータシステムの実証試験」 (平成21年度大気球シンポジウム,相模原,2009年10月)

10) 能勢温,中篠恭一,山田和彦 「柔軟エアロシェルのダイナミクス解析」 (第47回飛行機シンポジウム,長良川,2009年11月)

11) 鈴木宏二郎,○山田和彦,秋田大輔,石村康生,中篠恭一,今村宰,林光一,安部隆士 「柔軟構造エアロシェルを用いた大気突入システムの研究開発」  (第10回宇宙科学シンポジウム,相模原,2010年1月)

12) 山田和彦,鈴木宏二郎,本間直彦,安部大佑,牧野仁,永田靖典,秋田大輔,林光一,安部隆士, 柔軟構造大気突入機研究G 「大気球を利用した小型インフレータブル飛翔体の展開及び飛行実証試験」 (日本航空宇宙学会北部支部2010年講演会,仙台,2010年3月)

国内学会発表

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平成21年度研究業績(研究発表,特許,表彰など)

平成21年度宇宙航行の力学シンポジウム(相模原,2009年12月)で企画セッションを実施. 柔軟構造大気突入機関連で,下記の7件の発表.

13) 山田和彦,鈴木宏二郎,秋田大輔,石村康生,林光一,安部隆士,柔軟構造大気突入機研究G 「柔構造大気突入機に関する研究(MAACプロジェクト)と気球実験(MINI-MAAC)の報告」

14) 本間直彦,山田和彦,鈴木宏二郎,秋田大輔,石村康生,林 光一,安部隆士,柔軟構造大気突入機研究G 「観測ロケットによる展開柔構造エアロシェル大気突入機体の飛行実証試験計画」

15) 安部大佑,山田和彦,林 光一,安部隆士,鈴木宏二郎 「極超音速流中での柔軟エアロシェルの熱空力特性に関する実験的研究」

16) 渡邉保真,大道勇哉,和泉有祐,本間直彦,鈴木宏二郎,山田和彦 「柔構造エアロシェル大気突入機体形状に関するCFDパラメトリックスタディ」

17) 能勢 温,田嶋良雄,中條恭一,山田和彦 「柔構造エアロシェル定期突入機体のトーラス座屈強度に関する有限要素解析」

18) 石村康生,樋口 健,山田和彦 「インフレータブル構造における内圧の寄与と展開挙動が衛星姿勢に与える影響についての一考察」

19) 和泉有祐,鈴木宏二郎,今村 宰,渡邉保真,本間直彦,山田和彦 「無重力真空環境下の膜面エアロシェル展開ダイナミクス解析に向けて」

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平成21年度研究成果の詳細

膜材料の耐熱環境性能 極超音速での飛行特性

インフレータブル  エアロシェルの機能実証

基本コンセプトの実証 亜音速飛行実証

大気球実験

極超音速風洞試験 (with JAXA調布風洞)

2003,2004  2008~2009(H21)

小型気球フライト試験  (with JAXA大気球)

1)膜材料開発

2)空力特性取得

3)インフレータブル エアロシェル開発

観測ロケット実験 

4)回収技術の取得

超音速&遷音速風試 CFDによる解析

大気球実験

大型エアロシェルの展開 超低弾道係数機体の飛翔 海上浮揚する機体の回収

膜材料の実環境性能 実飛行環境飛翔性能 無重量真空下での展開

2010~2013  2014~

軌道上からの  帰還実証試験

要素技術の研究

極超音速風洞試験 加熱試験

2005~

技術課題の抽出

展開試験,強度試験 製作技術

要素技術の実証 システムの実証 最終実証

海上浮揚 着地位置特定手段

衛星通信技術

・低弾道係数の再突入→高高度での減速による空力加熱の大幅な緩和 ・展開型柔構造膜面エアロシェルによる低弾道係数の実現

展開型柔構造による回収システム技術の開発 →我が国オリジナルでオンリーワンの安全な再突入技術の確立へ

大型低速風洞試験 実機サイズエアロシェル構造強度の確認

本年度は,気球実験と極超音速風洞試験を実施し,その結果を踏まえて,観測ロケット試験に向けて具体的な準備を開始した.

低速

極超音速

惑星探査への  適用実証試験  

2018  火星複合探査

ミッション(MELOS)

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平成21年度研究成果の詳細

*大気球による小型インフレータブル飛翔体の展開及び飛翔試験

本試験用に開発した 小型インフレータブル

柔軟構造飛行体 カプセル直径20cm エアロシェル直径1.26m 実験機総重量3.3kg

1)インフレータブルトーラスを上空で自動的に展開するシステムの実証 2)雰囲気圧が大きく変化する飛翔環境でのインフレータブル飛翔体の挙動の観察 3)自由飛行環境下での柔軟エアロシェルを有する低弾道係数飛翔体の空力特性の取得及び安定性の確認

2009年8月25日,B09-04号気球で 大樹航空宇宙実験場にて実験実施

気球

ゴンドラ

実験機

4)飛行データは通常テレメトリに加え,通信衛星経由の位置情報の取得試験も実施

→再突入回収システムへの応用を検討中

1)高度24kmの上空でエアロシェルの展開に成功(ゴンドラ側のカメラから撮影)

3)自由飛行中にエアロシェルが空気力に耐えうる限界のインフレータブル圧を測定.事前の

風洞試験とほぼ一致することを確認.

フライトデータ

風洞データ

2)飛行中のエアロシェルの画像及び軌道データを取得.軌道データから抵抗係数を

推定.

1.264m エアロシェル展開時 収納時

カプセル内部

実験機の高度履歴(フライトデータと解析の比較)

飛行中のエアロシェルの画像

搭載した衛星通信モジュールと地上局のQL画面

<目的>

0.3sec

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平成21年度研究成果の詳細

*フレア型柔軟エアロシェル模型,及び,球形インフレータブル構造体の極超音速風洞試験

フレア型模型 インフレータブル模型

極超音速気流中(マッハ数9.45,淀み点温度900K)で模型を30秒間加熱し,表面温度は450℃以上に達したが, 気密は破れることがなく,ほとんど損傷もなかった.

→この結果を踏まえてインフレータブル部の設計を行う.

450℃

ZYLON紡績糸織物(0.15mm厚)のフレア型エアロシェルをアルミトーラスで支える模型を

製作した.フレア角などの形状パラメータを変化させ,空力特性などへの影響を調べた.

赤外線カメラによる 表面温度分布測定 結果

シュリーレン法による流れ場の可視化写真

1)フレア型柔軟エアロシェルの極超音速気流中での挙動,空力特性,空力加熱環境の測定. 2)フレア型模型の形状が各特性に与える影響を把握し,機体形状最適化のためのデータを取得. 3)耐熱材料で製作したインフレータブル構造の高速,高温の気流中での耐環境性の評価,実証.

フレア角度が大きい模型のほうが,減速性能 流れ場の安定性,空力加熱環境の観

点からは 大気突入機として有利であるとの結果を得る.

→数値解析等の支援を仰ぎつつ,機体形状設計に反映する.

ZYLON紡績糸織物(0.3mm厚)とシリコンゴム(0.3mm厚)の2層構造の直径約10cmの球形インフレータブル模型を作成した.内部にガスを入れた状態で通風し,その様子を観察した

2009年10月にJAXA調布の風洞技術センターとの共同で,Φ1.27m大

型極超音速風洞にて極超音速風洞試験を実施

実験に使用したΦ1.27m大型風洞の測定部外観と測定部内部

<目的>

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平成21年度研究成果の詳細

*観測ロケットによる大気圏突入実証試験にむけて

カプセル内部の搭載機器配置図

ハーフサイズエアロシェルの試作品 インフレータブル部は,強度,気密,耐熱,柔軟性の要求を 満たすようシリコンゴム+ZYLON紡績糸の多層構造を開発. 観測ロケットによる大気圏突入実証試験の実験シークエンス概略図

気球による小型インフレータブル飛翔体の展開及び飛行試験,JAXA調布でのφ1.27m極超音速風洞試験の結果を踏まえて,観測ロケットによる大気圏突入実証試験の準備を進めた.

*搭載機器の選定,動作試験の実施,機器配置案の提示(図右上) *実際の材料,製作方法での柔軟エアロシェルの試作(図右下)

1)無重量高真空下での柔軟エアロシェルの正常展開及び大気突入の実証 2)柔軟エアロシェルの大気突入機が大気圏突入環境で減速装置として機能することの実証 3)超音速~低速までの自由飛行環境下でのエアロシェルの挙動及び空力特性の取得

50cm

<目的>

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