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筑波大学附属盲学校教材

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筑波大学附属盲学校教材

視覚障害者用教材リスト

筑波大学附属盲学校

シロフォン付玉の塔 高見節子

さわる絵本 杉山利子

ペグさし 杉山利子

書見台 池田典子

地図つくり 池田典子

伴走用ロープ 原田清生

ゴールボール 原田清生

立体図形と展開図(点図) 高村明良

グラフキット 石崎喜治

植物の観察 武井洋子

シロフォン付玉の塔

図 シロフォン付玉の塔1

対象

3歳以上

分野

自立活動(手指の活用、視覚の活用、空間概念の形成)

ねらい

手指の操作を誘い、操作能力を促す。小さな玉をつまむ際は、親指と人指指で物を摘む

作業を行なう。玉が確実に穴の上にきた時に離さなければ、玉がうまく穴にはいらない。

「目と手の協応・両手の協応作用」が促される。

転がっていく玉を目で追うことで、物を「注目する 「目で追う」ことを誘う。」、

最後に自分の予想通りに音がすることで期待がかなえられ満足し、もう一度やりたいと

意欲を持つことができる。

落ちていく玉が鉄琴の階段を転がる時、美しい音色がでる。一回に落とす玉の量や間の

取り方によって響きやリズムも様々であり、遊び方の工夫ができる。

遊び方

) 最上段の板の開いている穴に、附属の小さな1

玉を入れる。

) 玉がスロープ状になった板の溝の中を転がっ2

( 2)ていく 図。

) 最後のところに階段状に仕掛けられた鉄琴の3

上を通過する時、美しい音色を出す。

2図

) 転がっていく玉を指や大きな玉で止め、次々に玉を入れながら溜まった玉を、一度4

に転がすという遊び方もある。

図 幼児の遊んでいる様子3

作り方

) ドイツのベック社の玩具である。玩具の大きさ cm×h cm1 45 28

( ) 、 。 、2 10) 小さな玉 直径 mm程度 は 土粘土を丸めて着色したものである 木製の玉

ビー球、金属の玉でも代用できる。

) 最後の階段状に仕掛けられた鉄琴は、ソファミレドの音階で、チロリロリンときれ3

いな音がでる。鉄琴は音階があれば他の素材でも代用できる。

) 大きな玉(直径 mm程度)が、入るように穴をおおきくし、板の溝を広くする3 35

ことで、対象年齢が広がる。

) 穴をなくし、大きな玉をスロープ状の板の溝に直接置くような形にしてもよい。4

(図 )玩具の大きさ cm×h cm4 75 47

) 玉は、見てとらえやすいように着色するとよい。5

4図

さわる絵本

図 ロシア民話「大きなかぶ」1

対象

1歳以上

分野

国語・理科・社会など

ねらい

見える子供たちは、実際には見たことがないものでも、描かれた絵から情報を得ること

ができ、幼児の時から絵本を楽しんでいる。その絵本の絵を立体的にして、盲児もさわっ

てわかるようにするもの。

文字の部分は拡大文字にして、その上に透明なシールに点字を打ったものを貼り、盲児

も弱視児も、さらには、視力のある幼児も共に、読んでさわって楽しめるようにする。

使い方

・まだ文字が読めない段階から、一緒に見ながら(さわりながら 、絵本の読み聞かせ)

をする。

・幼児の絵本のみならず、図鑑や地図などの作成にも応用して、触ってものの形状など

がわかるようにする。

・立体のものを平面に描いた絵図の理解の導入とする。

図 「迷路遊びの本」 図 日本の昔話「かぐや姫」3 4

具体例

図 は、線の部分に紐状のものを貼り付けてさわれるようにしただけだが、盲児も弱視3

児も利用できる。両手の動かし方や、丁寧にたどって目的のところを見つける方法を学べ

る。

図 は、現在では、なかなか見ることもできない昔の衣装・風俗などを知ることができ4

る。

作り方

1)絵を簡略化して、布、糸、紙、皮、ボタン、木ぎれなど、さまざまな材料を用いて、

レリーフ状に作っていく。

2)すべてを盛り込もうとしないで、単純にして、主になるものだけを作る。

3)質感や色合いなどは、できるだけイメージに近くなるように工夫する。

4)台紙に貼り付けるが、動かして遊べるよう、貼り付けないで浮かせる部分や、開く部

分などを工夫する。また、マジックテープ、マグネットシートなどを使用して取り外

せるようにするのもよい。

5)1枚のカードとして利用できるが、本として綴じる場合は、リング状のものやひもで

綴じる。左側が文字のページ、右側がさわれる部分といったように、統一されている

と見やすい。

図 図鑑 図 地図5 6

ペグさし

1 2図 図

対象

3歳以上

分野

算数・理科・社会など

ねらい

つまんで挿すといった簡単な動作で手指の巧緻性を養いながら、平面上にさまざまなも

のを構成して遊ぶことができる。

方眼紙の代わりになるので、教科学習においても、形や面積、グラフなどの理解に用途

を広げて利用できる。

使い方

数 穴に挿しながらペグを数え、数唱と実際の数の一致の練習をする。

位置 縦・横・斜めの概念や、左から何番目といった平面上の位置関係の認識を養

う。

小さい6穴のものでは、点字の点の位置関係を確認できる。

形 挿してあるペグに輪ゴムやひもなどを張り、形の線分構成を知る。

面積 1 の升目で作っておき、構成した形の面積の求め方を考える。cm

グラフ グラフ用紙の升目として利用し、折れ線グラフなどを簡単に描く。

3 4図 図

具体例

図 は、ペグではなく、木ねじの上部を残して方眼に埋め込み、ひもを張って折れ線グ3

ラフを描いたもの。

図 は、児童の手ほどの大きさの板に、点字の6個の点に対応する穴をあけ、キノコ状4

のペグをさして、点字の点の位置関係がわかるようにしたもの。

作り方

1)盤

・適当な大きさの板に、等間隔で方眼になるように、ペグの太さと長さに見合った穴を

開ける。

穴の深さの均一が難しい場合は、薄い板に穴を貫通し、底になるように別の裏板を貼

る。

・グラフ盤としても利用する場合は、横軸、縦軸の目盛り数字を貼れるように、下側の

辺、左側の辺にあたるところは、穴の無い幅を少し残す。

2)ペグ

・つまみやすいこと、穴に落ち込まないことを考えて、挿す穴に見合ったものを作る。

・図形やグラフを描くための方眼紙代わりにするのであれば、あらかじめ木ねじなどで

ペグをさした状態に作る。釘だと差し込みが浅い場合、ゆるんで抜けてしまう。

書見台

図1 黒い書見台

対象

弱視児童・生徒

分野

全般

ねらい

弱視者が読み書きをする時に,机に覆い被さるような姿勢(図2)をとっていることが

多くみられる。これは対象物に目を近づけることによって,よりはっきりと見ようとする

。 , ,ためである しかし このような姿勢で長時間学習を続けることは苦痛を伴うものであり

。 , ,疲れやすさの一因になっている 書見台を使用することで 目と対象物の距離を保ちつつ

( ) , 。自然な学習姿勢 図3 に近づけることができ 学習効率の向上につながると考えられる

また,生徒によっては白い紙や机面によって反射される光もまぶしく感じられる場合が

ある。書見台の台面は光を反射しにくい黒色になっているので,まぶしさによる見えにく

さも軽減できる。

図2 書見台を使わない時 図3 書見台を使った時

使い方

1)台面を使いやすい角度に調節して使用する (図4,図5)。

2)台面に磁石が接着できるので,本のページがめくれて読みにくい時は,必要に応じて

磁石を使って固定するとよい (図6)。

3)文字を読むときだけではなく,書くときにも利用すると効果的である。

図4 図5 図6

作り方

A面は,下図のように木板・スチール板・

つや消し黒色シートを張り合わせる。

A面

黒色シート

B面 スチール板

木板

B面に,角度調節のためのストッパーを

取り付ける

B面に補強板を取り付け,A面と蝶番で

固定する。

A面に本をのせるための板を取り付ける。

金具の片方はA面の側面に取り付け,もう

片方は,固定用の板に取り付ける。どちら

も,自由に動かせる程度のゆとりを持たせ

て取り付ける。

地図つくり

図1 作成例 図2 部品

対象

6才程度~

分野

自立活動

ねらい

視覚障害者の歩行能力を高めることは,行動範囲を拡大して経験を豊富にすることにつ

ながり,自立した一人の人間として社会参加をするためにも非常に大切なことである。

障害を持たない児童の場合は,特に指導をしなくとも,日常生活の中で自然にその能力

を獲得していくものである。それは,視覚を通して歩行に必要な身体動作を模倣したり,

周囲の様子を容易に把握することができるからである。しかし,視覚に障害がある場合,

日常生活の中で歩行能力を獲得することは難しく,幼い頃から意図的・計画的な指導を行

うことが必要になってくる。

特に空間の概念を獲得することは重要であり,それが不十分であると,道に迷ったら自

分で戻ってくることができないなどの不都合が生じてしまう。指導にあたっては,自分の

体のイメージ・左右の理解等,自分を中心とした小さな空間から徐々に大きな空間の理解

へと学習を積み重ねていくことが大切である。その時,実際に体を動かしたり歩いたりし

た経験を模型などを使って再現したり,逆に模型などを触った後,実際に歩いて確かめた

。 , , ,りという活動が有効である 本教材は 自分と物 物と物の関係を理解できた児童に対し

室内のつくり,校舎のつくり,道路や建物の配置等の理解を促すことを目的として使用す

るものである。

使い方

水平においた板を地面,長い磁石を道,丸い磁石を建物などと仮定して使用する。実際

に歩いた道を磁石を並べて作ってみる,教師が作った地図を手でたどった後に実際に歩い

てみる,目的地までのいろいろな歩行ルートを考えてみる等の使い方が考えられる。

最初は地図と自分の向きを一致させた状態で行い,十分理解できたら,地図の向きを変

えて行ってみるとよい。

具体例

1)教室内の物の位置(図3)

「○○さんの机はどれでしょう 「ゴミ箱があるところに丸い磁石をおいてみましょ。」

う」など,教室の中の物の位置関係を理解させる。

2)廊下と教室の配置(図4)

最初は,自分の教室を基点として,隣の教室,向かいの教室を理解させる。次に隣の教

, 。室の隣の教室というように広げていき 基準を他の教室に変えても理解できるようにする

図3 教室内 図4 廊下と教室

3)道路と建物の位置関係

(図5)基点は右下の○。1周すると基点に戻ってくることを理解させる。

(図6)図5からつながっている道路・目的の建物の位置を理解させる。

(図7)更に道路・建物を増やした状態。目的地にいくためには幾つかのルートがある

ことを理解させる。

図5 図6 図7

作り方

磁石が使えるように木板にスチール板を接着し,その上からつや消しの黒色シートを貼

る(弱視児童が見やすいため 。部品(図2)は磁石を張り合わせて作るが,いろいろな)

手触りの素材を用意する,白や黄色といった高コントラストが得られる色を用いる等の配

慮をするとよい。

伴走用ロープ

図1

対象

全盲または、単独走の困難な児童・生徒、10才~

分野

体育

ねらい

走における、望ましいランニングフォームやリズムの獲得。および、自然でリラックス

した動作と安全の保障。

使い方

走者と伴走者が、お互いにロープの両端を持って走る。

リズムやフォームの獲得を目指す場合は、ロープを短めに持つと伴走者のリズムや動き

が走者に伝わりやすくなる。(図 2)また、長距離走やジョギングなど、リラクゼーション

を重要にしたい場合は、ロープを長く持つとよい。(図 3)

図 2 図 3

伴走をするときの留意点

1) 二人三脚の要領で、お互いの手足の動きを合わせる。(図 4~6)

図 4

図 5

図 6

2) 後ろから押したり、前に出て強引に引っ張ったりしない。

3) 左右どちら側で伴走するほうが良いのかを、走者と相談する。

4) 路面状況の変化(凸凹や上り下りなど)やコース状況の変化(曲がり角など)は、事前に

走者に知らせる。

合図の例:「10m先に上り坂があります」,「あと 5mで、右に曲がります」

5) 止まる時は、急に止まらず、必ず声をかけて合図をする。

6) 伴走者は、ピッチやストライドを走者に合わせることが望ましい。そのため、体格(身

長)や走法の似た伴走者が、無理なく伴走することができる。

ゴールボール

図 1 図 2

対象

6才以上

分野

体育

ねらい

ゴールボールは、パラリンピックの正式種目に取り入れられている唯一の視覚障害者向

け団体競技である(2004 年現在)。プレイヤーは、全員アイシェード(図 2)を着用して視覚

情報をシャットアウトするため、ボールの発する音だけを頼りにプレイする。幼少期には、

発生する音を追いかけるという能動的・主体的な運動経験をすることが出来るため、運動経

験の不足が問題とされている視覚障害幼児にとって、大変良い教材となる。

また、ボールを転がしたりブロックしたり、音を頼りに移動するなど全身運動としても

効果的である。

さらに、ルールが簡易であるとともに世界共通であるため、多くの視覚障害者がゲーム

を楽しむことができる。視覚に障害のない人も一緒にゲームを楽しむことができることも、

大きなメリットである。

使い方

ゴ ー ル ボ ー ル の ル ー ル は I.B.S.A.(国 際 視 覚 障 害 者 ス ポ ー ツ 協 会 )の H P (URL:

http://www.ibsa.es/eng/)に掲載されている。年齢に合わせて簡易ルールを適用していく

ことが望ましい。

簡易ルールの例

1) 本来 3 人対 3 人で行うゲームであるが、選手同士の衝突を避けたり、ボールに触

れる機会を増やしたりすることを目的に、1 人対 1 人や 2 人対 2 人などで行う。

2) コートを狭くして行う。(本来は 18m×9m)

3) 発育発達段階に合わせて、ルールを適用していく。

4) 発育発達段階に合わせたゲーム時間を設定する。

ゴールボールに使用するボールは、重く(1.25kg)て低年齢の子供には扱いづらいので、

幼少期の練習用として、サッカーボールやバレーボールなどをポリ袋で包んだ簡易ボール

(図 3,図 4)や鈴入りボールなどを使用するとよい。簡易ボールは、転がすとポリ袋の音が

する。

簡易ボールを使用する場合は、ボールが軽くてバウンドしやすいため、事故に注意する。

図 3 図 4

コートのラインは、ラインテープの下にひもを通して、立体的に作る。(図 5)このこと

により、プレイヤーは、自分のポジションや、方向の概念を得ることができる。

図 5 ゴールボールのコート

立体図形と展開図(点図)

図1 立体図形 図2 点図の展開図

対象

10歳から15歳,全盲・強度の弱視の児童生徒

分野

算数,数学

ねらい

物を見た経験のない児童・生徒や小さい頃に視力を失った児童・生徒に,触覚を通して基本的な立

体図を理解させ,さらに立体を展開図(平面上で表した図)で示す方法を理解させる。また,展開図か

ら立体図形を正確に復元する力を身に付ける。

展開図からもとの立体図形を理解する能力は,つぎのような応用力も養う。1つは,投影図(上か

ら見た図,前から見た図などの組み合わせた図)から立体図形を復元する能力,2つは,手の中に収

まらない大きな立体の全体を部分部分の触察から理解する能力,3つは,言葉による説明から立体を

理解する能力である。

使い方

立体図形(図1)から展開図(図2),展開図から立体図形を理解する。

基本的な立体図形をもとに行うことが大切である。

1)導入部分

①基本的な立体の理解:両手で立体を観察して,全体的な形の特徴を理解すること,面と面,辺と

辺,頂点と頂点の関係などを理解すること,面の数,辺の数,頂点の数などを理解すること,1つの

頂点に集まる面の数や辺の数を理解すること

などを通して,基本的な立体の正確な理解とそのイメージを作る。

②展開図の考え方:ふたのない箱を切り開いたり立方体や直方体を切り開いたりして展開図の考え

方を理解する。

2)立体図形に展開図から切り取った紙(図3)を巻き付けたものを示し,その紙を広げたり巻き付け

たりしながらその立体の展開図を理解する。(図4)

3)立体図形と展開図から切り取った紙をそれぞれ同時に提示し,立体図形での面と面との位置関係

は展開図中のそれぞれどの位置にあるか,立体図形での辺や頂点は展開図中のどの位置にあるかなど

を理解する。

4)立体図形を触って,対応する展開図を探す。

5)展開図を触って,対応する立体を探す。

6)展開図を触りながら,立体図形を復元したときにくっつき合う辺や頂点を考える。必要に応じて

展開図から切り取った紙を立体に巻き付けて確認する。

図3 展開図を切り取った紙

図4 展開図を立体図形に巻き付ける

注意

1)最初に立体図形や展開図を触らせるときには,立体図形と展開図の方向をそろえて提示すること

が大切である。

2)教師が手を添えて児童・生徒の行う操作をサポートするだけでなく,必ず言葉による説明を付け

加える。このようにすると,児童・生徒自身が自分の操作を他の人に言葉で説明できるようになれる。

グラフキット 図 1 図 2 使用例 対象 9歳以上 分野 算数・理科・社会など

ねらい グラフを使うと数量の間の傾向や関係を容易に見つけることができる。そのため,グラ

フの利用は,算数,理科,社会の学習において欠かせない。見ることのできない生徒にお

いてもグラフの利用は重要である。このグラフボードを使うと,見ることのできない生徒

も自らグラフを描け,利用できる。 グラフの導入として,児童生徒の興味や関心のある,身の回りの量をグラフにするとよ

い。例えば,1日の気温の変化とか,1ヶ月の植物の成長(高さ)など対象はいろいろ考

えられる。 使い方 1) ラベルに横軸と縦軸の量を点字と墨字で 書いて切り取る。 (図 3) 2) 1)で切り取ったラベルを点字用グラフ用紙 の横軸,縦軸に貼る。 3) グラフボードの上に点字用グラフ用紙を載せる。 4) 調べた結果をもとに,該当する点に画鋲を刺す。(図 4) 図 3

5) 完成したグラフを左側からたどり,おおまかな形を把握する。

図 4 図 5

具体例 図 5 は,2004 年 11 月 17 日,東京の1日の気温を調べたものである。この日は快晴で

あった。14 時ごろ,この日の最高気温になっていることがわかる。別の晴れた日について

グラフにしても,最高気温が 14 時ごろになる。 *温度を測るのは教師が行ってもよい。

作り方 1)グラフ板 ・図 6 のように,木製の板と同じ 大きさのコルク板を接着剤で貼り合わせる。 2)点字用グラフ用紙 ・図 7 のように,点字用グラフ用紙は点字 の印刷機で作成する。

図 6 図 7

植物の観察

対象 図1 チューリップ

6~10歳ぐらい

分野

理科

ねらい

1つの植物を育てながら、その変化を観察し続ける。観察を継続することで、自然への興味・関心

を持たせ、触って観察する力を身につけさせる。また、観察したことをその場で言葉にし、ノートに

記録させ(書かせ)、表現能力を身につけさせる。

観察に適した植物

1)種子をまいてから、発芽、成長、開花、結実、

種子の収穫までの1サイクルを短期間に観察できる植

物がよい。日々変化がみられる植物は、生徒の興味を

惹きつける。

2)1つの花や実が大きいもので、1本の株に花や

実がたくさんつくものがよい。触って観察するには小

さいものはわかりにくい。また、触わって花や実が取

れても、次々と花が咲くものであれば、1サイクルの

観察が中断されることはない。

3)最初に観察する植物は、身近で、基本的な形態

のものがよい。めずらしい形態の植物は、多くの植物

を知ってからでないと、めずらしいということがわか

らない。

1)~3)の条件を満たす植物として、日本では 図2 アサガオ

アサガオがよく用いられている。アサガオの大きさは、

花全体が直径10cmぐらいで、実が直径1.5cmぐらいである。つる性の植物だが、つるの這わせ方を工夫

すれば、株全体の高さを1mぐらいにまとめることができる。春に種子をまき、夏に花が咲く。花は

毎日のように咲き、次々と実ができ、秋になると、青くてみずみずしい実は茶色くなって乾燥し、中

から種子が現れる。花のつくりを触って観察するときには、ユリやチューリップのように花びらだけ

でなく、内部のおしべやめしべも大きいものがよい。ただし、ユリやチューリップの花にはがくが無

いので、がくの存在については他の花(アサガオなど)で確認しなければならない。

触って観察させるときのポイント

1)はじめに全体像を把握させてから、

部分を詳しく観察させるようにする。見え

る人は、無意識のうちに一瞬で、観察する

ものの全体像を捉えているが、視覚障害者

にはそれができない。部分1つ1つを確認

して、その部分1つ1つを頭の中でつなげ

たあとに、イメージとして全体像がわかっ

てくる。観察するときには、生徒が触って

いる部分が、全体の中のどの部分なのかを、

生徒自身がわかっていなければならない。

図3 ユリ

2)両手で触って観察させるようにする。

片手で観察すると、観察対象物が動いてしまう。利き手ではない方の手で対象物をしっかり固定し、

もう一方の利き手で観察すると、じっくり触って観察できる。数を数えたり、長さを測ったりすると

きは、一方の手を基準の位置に固定させ、もう一方の手を移動させて行う。

3)観察には時間をかける。触って観察することには時間がかかるので、教師は焦らず、時間に余

裕を持った授業の計画をたてなければならない。

4)生徒が発見者の立場にたてるような観察にする。生徒が自分で育てた植物がどんな変化をみせ

ているかを、生徒が自分で観察して知ることができるように配慮する。教師や誰か他の人に言われた

ことを確かめるための観察より、生徒が自分で発見する観察の方が、喜びも興味も倍増する。そして、

生徒自身が観点をたてて観察する能力を身につけさせることができる。生徒が発見者の立場にたてる

ような観察にするには、教師は最初から説明しすぎてはいけない。「ここはこうなっているから、み

てごらん」という言い方ではなく、「ここはどうなっているかな?」「他に変化はありませんか?」

というように、観察を促すようにすすめていくとよい。また、必要に応じて、教師は生徒の手に手を

添えながら一緒に触って観察するようにする。

5)生徒の発見(観察事項)を、言葉によって他の生徒とも共有できるようにする。触って観察し

ているときは、まず、生徒に何を発見(観察)したのかを言わせ、その後、教師や他の生徒との言葉

のやりとりによって、他の人にも通じる表現に導く。その後、ノートに文字で記録させ、生徒1人1

人にノートに書いたことを読ませて発表させる。観察したことを文字で書いたり、他の生徒が、自分

と同じ観察事項をどう表現しているかを聞くことを毎回の授業で行うことは、生徒に表現能力を身に

つけさせることにつながる。