一人一人の子どもの意欲と技能を高める体育科の指導法に関する … ·...
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- 1 -体育
一人一人の子どもの意欲と技能を高める体育科の指導法に関する研究
個を生かすゲーム的活動の工夫を通して
長期研修員 中村 勝
研究の概要
本研究は,小学校5・6年合同体育(14名)のバスケットボールの授業において,ドリルゲーム・
タスクゲーム・ミニゲームというゲーム的活動を中心に据え,個を生かす工夫により一人一人の子ど
もの意欲と技能を高めていこうとしたものである。具体的には,それぞれのゲームを少人数にして一
人一人が十分活動できるようにするとともに技能のポイントをアドバイスし合うなど 「わかり・でき,
る」ことを大切にして子どもの意欲と技能を伸ばしていこうとする研究である。
キーワード
意欲と技能 体育 個を生かす ドリルゲーム タスクゲーム ミニゲーム 「わかり・できる」
1 主題設定の理由
(1)子どもを取り巻く状況から
本県の児童生徒の体力は 「平成14年度新体力テスト報告書 (県スポーツ健康課)において,全国, 」
と同じように長期的な低下傾向が続いていると報告されている。また,中央教育審議会では,子ども
の体力低下の原因を次のように答申(平成14年9月)している。
◇保護者をはじめとした国民の意識の中で,子どもの外遊びやスポーツの重要性を軽視するなどに
より,子どもに積極的に体を動かすことをさせなくなった。
◇子どもを取り巻く環境については,
, 。・生活が便利になるなど子どもの生活全体が 日常的に体を動かすことが減少する方向に変化した
・スポーツや外遊びに不可欠な要素である時間,空間,仲間が減少した。
・発達段階に応じた指導ができる指導者が少ない。
・学校の教員については,教員の経験不足や専任教員が少ないなどにより,楽しく運動できる指導
の工夫が不十分との指摘がある。
現在の子どもたちの運動状況を見ると,運動に興味を持ち活発に運動をする子とそうでない子とに
二極化している傾向がある。さらに,学年が上がるにつれ,体育嫌いや運動嫌いが増加していくとい
う事実もある。
こうした状況の中,子どもたち一人一人が運動に親しみ,運動の楽しさや喜びを味わい,意欲を持
って体育活動に取り組めるようにしたい。子どもたちは体育の授業で精一杯運動したい,上手になり
たい,楽しみたいと思っていることだろう。ベネッセ教育研究所の「モノグラフ・小学生ナウVOL2
0-1」の調査によると,体育は教科の中では一番人気が高い教科であると報告しており,体育の授業
を心待ちにしている子どもは多い。
子どもたち一人一人の期待を受けた体育の授業の中で,快い汗をかいた子どもたちの表情が見られ
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たり 「今日の体育は楽しかった」とか「自分の目標が達成できた」とかいった満足感のある言葉が聞,
かれたりするそんな体育の授業を創りたいと思う。
(2)個に応じた指導の充実から
体育は個の違いが学習場面に顕在化しやすい教科である。それは,運動技能や体力の違いがそのま
ま学習に現れやすいし,集団でいっしょに運動を行う際にも個の違いがはっきりと目に見えやすいか
らである。したがって,子ども一人一人のよさや可能性を伸ばしていく上において,個に応じた指導
は欠くことのできないたいへん大切なことである。
このところ,一人一人の子どもの意欲を大切にしながら,技能や体力,および主体性を育てていこ
うとする「楽しい体育」という方向に視点が移されている。このことは,「生きる力」や「自ら学び,考
える力」の育成を重視した学習指導要領の改訂があったこととともに,画一的・一斉的な授業の中で
, ,は 子どもたち一人一人の運動能力に差があるがゆえに一人一人に応じた技能が身に付かなかったり
また意欲をなくしてしまったりするなど,運動による成功感や成就感を味わえない子どもが増えてき
たことなどが影響していると考えられる。
こうしたことから考えると,一人一人の子どもの実態(心身の発達的特性,運動への興味・関心,
技能習熟の程度など)に即した,いわゆる個に応じた指導を行うことで,子どもは意欲を持って活動
していくことと思われる。また,子どもの意欲を大事にしていくと,運動を愛好的になり,自発的・
自主的な活動によって,技能や体力の向上も見込まれ,ひいては生涯体育・スポーツにつながってい
くのではないかと考えられる。
2 研究のねらい
小学校体育科のボール運動領域において,個を生かしたゲーム的活動(ドリルゲームやタスクゲー
ム,ミニゲーム)を行い,子どもたち一人一人の運動への意欲と技能を高めていく指導の在り方を明
らかにし,今後の体育の指導に役立てる。
3 研究の基本的な考え方
(1)ボール運動における子どもの意欲と技能
ボール運動における子どもたちの一番の興味・関心は,ゲームであろう。個人対個人,集団対集団
の競争自体に楽しさがある。また,競争に勝つためにチーム内で協力し合って作戦を立てたり,個人
的技能・集団的技能をみんなで練習したりすることにも楽しさがある。ゲームを中心に学習を進めて
いくことで,子どもたちは意欲を持って活動していくことだろう。
バスケットボールを技能の面から考えると,基礎的な技能(ドリブル・パス・シュート)の習得が難
しいために,試合におけるゲーム様相は稚拙になりがちであり,勝敗に対するゲームとしての楽しさ
は味わえても,技能を習得する喜びをなかなか味わえないのが現状である。そこで,集団としてのゲ
ームを成立させるための基礎的技能向上を,画一的な指導にとどめることなく,ゲーム感覚で指導す
ることが必要ではないかと考えている。運動が苦手な子にとっても自信を持ってプレーができるよう
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に,ゲーム的活動を通して基礎的技能を楽しく身につけさせていきたい。
(2)個を生かすゲーム的活動
本研究の中で考えているゲーム的活動とは,ドリルゲーム・タスクゲーム・ミニゲームのことであ
る。この3つのゲームを授業の中に取り入れることで,子どもたちは個人のレベルでまたチームのレ
ベルで意欲を持ち,競い合うことを楽しみながら活動していけるのではないかと考えている。ドリル
ゲームやタスクゲームは,次のように説明されている。
① ドリルゲーム
本来,ゲームではないが,練習内容をゲーム化したものである。すなわち,目標とするゲームに
要求される最低限の技能が習得されなければゲームを楽しむことができない。そこで,それぞれの
ゲームに必要な運動に着目して,これらの技能を意欲的に高めるために,技能的な行動目標を設定
し,自己評価させやすいように工夫されたものである。
② タスクゲーム
課題が明確で,その課題が目的的に学習されるような課題ゲームのことである。タスクゲームの
基本原則は,①そのゲームで習得させたい技術的,戦術的課題が明確であること,②課題に応じて
人数のミニ化を図ること,③本来のゲームの特性を失わないこと,の3点としている。
ここ最近ボール運動において,楽しみながら個人的技能の向上を目指すドリルゲームを授業の導入
におき,その後総当たり戦や対抗戦のゲームを行うという流れの実践が見られる。ドリルゲームに関
, , 。していえば チームを単位とした中で行われ その中で個人的技能の向上を図っていく実践例が多い
しかし,そこではチーム力向上に主眼をおいたもので,一人一人が十分生かされていない面もある。
本授業では,14名と少人数であるため,チームの中の一人一人をより重視した「個を生かすゲーム
的活動」を考えている。この授業で考えている「個を生かすゲーム的活動」とは,個人あるいは少人
数で競い合うことで一人一人の意欲を高め,より個人的技能・集団的技能を伸ばしていこうとするも
のである。競い合うことで劣等感を持つ子どもについては,仲間や教師からの励ましやアドバイスに
よって意欲を持たせていきたい。また,個人ごとに設定しためあてに向かって活動を行い,その活動
を経た個人の変化をより積極的にとらえていく個人内評価やお互いの活動を励まし合っていく相互評
価を重視していきたい。チームの中において思うように動けない子どもにとっても,個人で明確なめ
あてを持つことにより,一人一人が夢中になって取り組める活動にしていきたいと考えている。
本授業で共通課題として考えた個を生かすゲーム的活動
①ドリルゲーム
ア シュートゲーム
○ 秒シュート…リング下から30秒間に何本シュートが入るかを試すゲーム。30
○ ドリブルシュート
・1分間にドリブルシュートが何本入るかを一人あるいはチームで試すゲーム。
○ セットシュート
・自分のとどく距離から直接シュートをする。1分間で何本シュートが入るかを試すゲーム。
イ ドリブルゲーム
○ ドリブル1対1
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, 。・ある一定の区域内でお互いにドリブルをしながら 相手のボールを出し合うことを競うゲーム
ウ パスゲーム
○ 連続パス…2人1組あるいはチームで1分間に何回パスができるかを試すゲーム。
②タスクゲーム
ア ドリブルなしのパスゲーム…ドリブルをしないでパスだけを使って行うゲーム。
・ドリブルをしないことで,パスをもらう動きやそのタイミングを覚えることを目的とする。
イ 3ゴールシュートゲーム…3つのゴールにシュートできるゲーム。
・あいているスペースを見つけてドリブルしたり,フリーの人に素早くパスを出したり逆にパスを
もらえるように動いたりして,シュートに結びつける目的で行う。シュートチャンスが多くなる
ことで,シュートをする楽しさや技能が身に付く。
③ミニゲーム…3人対3人,4人対4人のゲーム。
。・ドリルゲームで身につけた技能やタスクゲームで習得した動きを生かした総合的なゲームである
少人数で行うことで一人一人の役割がより明確になり,意欲面でも技能面でも個を生かせる。ま
た,ボールに触れる回数が多くなり,運動量も増えることが予想できる。
これらのゲームは,個人やチームで競い合うことを前提としているが,このことは「勝者」と「敗
者」を決めること自体を目的にするのではなく,子どもの意欲,興味・関心を引き出すための動機づ
けとして,その積極的側面を教育に生かそうとしているものである。互いに友達やチームの優れたと
ころを見ることによって個人やチームに生かし,それを努力することにつなげ,さらに意欲や技能が
高まるようにしていきたいと考えている。
4 研究の仮説
,[ ] ,[ ]小学校5・6年生のバスケットボールの授業において 1 のような課題解決的な学習の中で 2
のような個を生かすゲーム的活動の工夫を行うことにより,子ども一人一人の意欲と技能[3]が高
まるようになるであろう。
[1]課題解決的な学習過程 [2]個を生かすゲーム的活動の工夫
【課題を発見・把握する段階】 ◎課題を解決する段階の中に,ドリルゲー
1 オリエンテーション・学習の見通し ム・タスクゲーム・ミニゲームを導入
2 試しのゲーム,課題発見・把握 〈工夫〉
【課題を解決する段階】 ○技能練習をゲーム化するので,意欲を持
3 課題解決・実践Ⅰ って活動できる。
○ドリルゲーム・タスクゲーム ○チームの中の個をより生かすため,活動
を個人あるいは少人数で行う。また 「わか,
4 課題解決・実践Ⅱ り・できる」ことを大切にしていく。
○ ミニゲーム ○ミニゲームで課題となったことをドリル
【課題解決のまとめと発展の段階】 ゲームやタスクゲームを活用し,チームご
5 学習内容の定着・まとめ とに選択し練習できる。
○ バスケットボール大会 ○個人内評価・相互評価を重視する。
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[3]意欲と技能
○ 課題の達成に向かって練習やゲームに取り組もうとしている。
意欲 ○ 運動が上達する楽しさや喜びを求めて活動しようとしている。
○ グループ(チーム)内で励まし合って,運動をしようとしている。
○ ドリブル・パス・シュートの個人的技能を身に付けることができる。
技能 ○ ボールを持たないときの動きができる。
○ チームの作戦を生かした動きができる。
5 研究の方法と内容
(1)研究の方法
①研究の方法 授業研究
②研究の対象 山梨市立堀之内小学校 第5学年・第6学年(14名)
③研究の単元 「バスケットボール (ボール運動)」
④研究授業の期間および時間数
平成15年10月1日~31日 12時間(事後調査を含む)
⑤結果の処理方法
ア 学習カード・ゲーム観察表 〈運動の技能〉
イ 形成的授業評価票(授業振り返り票) 〈運動への意欲〉
ウ 診断的・総括的授業評価票(事前事後調査) 〈運動への意欲〉
※イとウについては,筑波大学教授高橋健夫氏らが作成した調査票と診断基準を使用する。
エ 授業者による授業観察チェックリスト 〈運動への意欲・運動の技能〉
オ 研究協力員による授業観察記録 〈運動への意欲・運動の技能〉
カ 児童による学習の振り返りの記録 〈運動の技能〉
(2)研究の内容
①単元名 「バスケットボール (ボール運動)」
②目 標
運 動 チームに適した課題をもって運動を行い,その技能を身に付け,簡単な作戦を生かし
てゲームができるようにする。
態 度 互いに協力し,役割を分担して練習やゲームができるようにする。また,勝敗に対して
正しい態度がとれるようにする。
学び方 自分のチームの特徴に応じた作戦を立てたり,ルールを工夫したりすることができるよ
うにする。
③単元の評価規準
内 容 の ま と ま り ご と の 評 価 規 準
運動への関心・意欲・態度 運動についての思考・判断 運 動 の 技 能
友達とともに,ボール運動の チームの特徴を知り,作戦 簡単な作戦を生かしてゲームをす
楽しさや喜びを求めて進んで取 を立てたり,ルールを工夫し るための技能を身に付けている。
り組もうとする。また,勝敗に たりしている。
対して正しい態度をとろうとす
るとともに,安全に練習やゲー
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ムをしようとする。
単 元 の 評 価 規 準
○チームに適した課題をもっ ○自分のチームのよさを生か ○状況に応じたパスやドリブル,シ
て,練習やゲームに進んで取り した作戦を立てている。 ュートなどの技能を身に付けてゲー
組もうとする。 ○作戦を成功させるための練 ムができる。
○ルール・マナーを守り,審判 習を選んでいる。
の判定に従おうとする。 ○人数やコートの大きさなど
○友達と協力し合い,練習の場 のルールを選んだり考えたり
をつくろうとしたり,用具の準 している。
備をしたりしようとする。
○運動をする場や用具の安全を
確かめようとする。
A規準(十分満足)B規準(おおむね満足)C規準(支援)④学習活動における具体的な評価規準
運動への関心・意欲・態度 運動についての思考・判断 運動の技能
○課題の達成に向かって練習やゲ ○チームや自分の力にあった適切な ○状況に応じたドリブルやパス,シ
ームに自ら進んで取り組み,バス 課題を立てている (課題の設定) ュートの技能を身に付けることがで。
ケットボールの楽しさや喜びを味 ○チームや自分の課題を達成させる きる (個人的技能)。
わおうとする (楽しさの追究) ための手だてをしっかり考えてい ○パスを受けたり,守ったりすると。
○ルールやマナーを守り,協力的 る (課題解決の工夫) きなどのボールを持たないときの状。
な態度で気持ちよくプレーしよう ○リングの大きさや得点方法など, 況に応じた動きができる (集団的A 。
とする (社会性) みんなが楽しめるルールを選んだ 技能)。
○友達と励まし合って助言し合い り,考えたりしている (思考) ○チームの作戦を十分に生かした動。
ながら運動をしたり,協力して用 きができる (集団的技能)。
具の準備や片付けをしたりしよう
とする (協力)。
○いつも運動する場や用具の安全
を確かめながら,活動しようとし
ている (安全)。
○課題の達成に向かって練習やゲ ○チームや自分の力に合った課題を ○ドリブルやパス,シュートの技能
ームに進んで取り組み,バスケッ 立てている (課題の設定) を身に付けることができる (個人。 。
トボールの楽しさや喜びを味わお ○チームや自分の課題を達成させる 的技能)
うとする (楽しさの追究) ための手だてを考えている (課題 ○パスを受けたり,守ったりすると。 。
○ルールやマナーを守り,気持ち 解決の工夫) きなどのボールを持たないときの動
よくプレーしようとする 社会性 ○リングの大きさや得点方法などの きができる (集団的技能)。( ) 。
○友達と励まし合って運動をした ルールを選んだり,考えたりしてい ○チームの作戦を生かした動きがでB
り,協力して用具の準備や片付け る (思考) きる (集団的技能)。 。
をしたりしようとする (協力)。
○運動をする場や用具の安全を確
かめながら,活動しようとしてい
る (安全)。
○今もっている力で楽しむことが ○チームや自分に必要な具体的な目 ○今できる技能をじっくり伸ばすよ
。 , 。 ,できるドリルゲームを行い,自分 標を持たせるようにする (課題の うにし 自信を持たせていく また
の課題を達成していく楽しさや喜 設定) 練習の仕方を工夫させたり,技能の
びを味わわせる (楽しさの追究) ○チームや自分の力を考え,努力す ポイントを示唆したりする (個人。 。
○みんなの協力の上にゲームが成 れば達成可能な課題を持たせ,どん 的技能)C
り立っていることを知らせ,ルー なことをすればクリアできそうか具 ○子どもの動きをしっかりと観察
ルやマナーの大切さを認識させる 体的に考えさせるようにする (課 し,よい動きをしたときにほめてあ。
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。 。 , ,ようにする (社会性) 題解決の工夫) げる また どこに動いたらよいか
○力を合わせて運動することのす ○その子がどんなことを望んでいる 子どもといっしょに確認し合う 集。(
ばらしさを具体的に感じ取れるよ のか話を聞いたり,学習カードにコ 団的技能)
うにしたり,努力している点を認 メントをしたりする (思考)。
めてほめたりすることにより,役
割分担を果たせるようにする (協。
力)
○安全に学習ができるように,約
束事を子どもとともに行うように
する (安全)。
⑤単元指導計画
過 時 学習内容と児童の活動 教師の 指 導・支 援 評価の観点と方法
オリエンテーション
①単元全体の見通しを持つ。 ○単元全体について学習資料や ・評価規準…□
課 ・学習のねらいと道筋を理解 学習カードを使いながら説明す ・評価方法…■
し,学習の進め方を知る。 る。 ・手だて…
題 ②6年生を中心に話し合い, ○グループ間が等質になるよう ・具体的ゲーム的活動
グループ チーム 編成をし に助言する。 …【 】( ) ,
を 役割を分担する。 ・ゲームをしていく中で,3人
1 ・7人ずつの2グループをつ と4人のチームのメンバーは入
発 くる。さらに,1つのグルー れ替えてもよいことを知らせて 《関心・意欲・態度》
・ プを3人と4人の2チームに おく。 □友達と励まし合って
見 分ける。 ○チーム観察係には,同じチー 運動をしたり,協力し
・ 2 ・係分担(得点・チーム観察 ム(親友チーム)のメンバーの て用具の準備や片付け
。把 係)とチーム名を決める。 パスやドリブル,シュート数を をしたりしようとする
チェックさせたり,動きを見さ □運動をする場や安全
握 せたりする。 を確かめながら,活動
③試しのゲームを行う。 ○教師は審判をしながら,ゲーム しようとしている。
す ・ルールを確認し,同じ人数 の様相をみる。 ■観察チェックリスト
のチーム同士で行う。 ○必要な場合は(得点係・チー ■形成的授業評価票
る ・1試合5分 ム観察係)の仕事を支援する。
○リングはシュートが入りやす 《思考・判断》
段 いワイドリングを使用する。 □チームや自分の力に
④ゲームを通して,グループ ○ゲームを通して気がついたこ 合った課題を立ててい
階 ごとにチームや個人の課題 とをお互いに出し合う中で,チ る。
(めあて)を話し合う。 ームや個人の課題を持たせる。 ■観察チェックリスト
○グループ間の話し合いを聞き ■学習カード
ながら 必要な場合は助言する ■形成的授業評価票, 。
ねらい1 個人的技能や集団的技能を高めながら,ゲームを楽しむ
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①チームや個人の課題を解決 ○試しのゲームを通して出され
していくために,ドリルゲー た課題を解決させていくため
課 ム・タスクゲームを行う。 に,必要なドリルゲームやタス 《技能》
【ドリルゲーム】 クゲームを紹介する。 □ドリブルやパス,シ
題 ア シュートゲーム ○ゲームを行う中で,ポイント ュートの技能を身に付
3 ・30秒シュート となることは指導をしていく。 けることができる。
を (3・4・5・6時) ○個人的技能を高めるために,
・ ・セットシュート(4時) シュート・ドリブル・パスのド 《技能》
解 ・ドリブルシュート(5時) リルゲームを最低1つは共通に □パスを受けたり,守
4 イ ドリブルゲーム する。 ったりするときなど,
決 ・ドリブル1対1(6時) ○タスクゲームも同様に集団的 ボールをもたないとき
・ ・ドリブル鬼ごっこ 技能を高めるために,共通課題 の動きができる。
す ・ドリブルリレー として行う。
5 ウ パスゲーム ○ドリルゲーム・タスクゲーム ■観察チェックリスト
る ・連続パス(3・4時) は基本的に個人あるいは少人数 ■学習カード
・ ・パス2対1(2対2) でできる内容にし,一人一人が ■形成的授業評価票
段 【タスクゲーム】 十分ボールに触れ,活動ができ ■ビデオ
6 ア ドリブルなしのパスゲーム るようにする。
( )階 3・4時
イ 3ゴールシュートゲーム
Ⅰ (5・6時)
ウ スリーオンスリー
②ドリルゲームやタスクゲー ○一人一人の活動の様子に応じ
ムの結果や技能のポイント, て,直接的にまたは学習カード
気づいたことなどを学習カー を通して励ますようにする。
ドに記録しておく。
ねらい2 自分たちのチームの作戦を生かして,ゲームを楽しむ①グループ(チーム)ごとに ◎グループ(チーム)の課題に 《思考・判断》
課題練習のためのドリルゲー 合ったドリルゲーム・タスクゲ □チームや自分の課題
課 ム・タスクゲームを行う。 ームを選択させる。 を達成させるための手
・グループ(チーム)で選択 だてを考えている。
題 したゲームをする。 ○歩数計を利用して本時の運動 ■観察チェックリスト
7 ・ドリルゲームの30秒シュー 量を調べさせる。 ■学習カード
を トは共通課題とする。 ■形成的授業評価票
・ ②自分たちの作戦を立て ミ ○ゲームを始める前に,チーム 《関心・意欲・態度》,【
解 ニゲームⅠ】を行う。 の作戦を立て,意図を持ってゲ □課題の達成に向かっ
8 ・3人対3人,4人対4人の ームに臨ませるようにする。同 て,練習やゲームに進
決 チームでする。 時に 個人のめあても持たせる んで取り組み,バスケ, 。
・ ・1試合5分 ○親友チームに作戦やめあてを ットボールの楽しさや
。・勝敗は親友チームの合計点 知らせておくようにする。 喜びを味わおうとする
で決める。 ○教師が審判をする中で,各係 ■観察チェックリスト
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の仕事を円滑に行わせる。 ■形成的授業評価票
③1ゲーム目が終わったとこ ○勝敗だけの反省にとどまるこ 《思考・判断》
ろで,次のゲームに向けての となく,ゲーム中の動きを中心 □チームや自分の課題
話し合いをする。 に話し合わせる。 を達成させるための手
す ・作戦をコートの図を使って ○親友チームのアドバイスを参 だてを考えている。
9 考えたり,親友チームのアド 考にさせる。 ■観察チェックリスト
る バイスを受けたりして,2ゲ ○話し合いの様子を見聞きしな ■学習カード
・ ーム目に向かう。 がら,チームや個人に助言をす ■形成的授業評価票
段 る。
④話し合いをもとに 【ミニ ○親友チームは作戦が生かされ 《技能》10 ,
階 ゲームⅡ】をする。 ているかよく見ているようにさ □チームの作戦を生か
・1試合5分 せる。同時にチーム観察係の仕 した動きができる。
Ⅱ 事もさせる。 ■観察チェックリスト
⑤グループ(チーム)ごとに ○チームの作戦が生かされてい ■学習カード
反省をする。 たかを中心に話し合わせる。 ■形成的授業評価票
・チーム内で自己評価を,親 ○親友チームの観察係からの報 ■ビデオ
友チームのメンバーで相互評 告をもとに,自己評価の参考に
価を行う。 させる。
⑥本時のまとめをする。 ○親友チームの合計点で勝敗を
・勝敗の結果を確認する。 発表する。 《思考・判断》
・チームで話し合ったことを ◎各チームで話し合った反省を □リングの大きさや得
発表する。 発表させ,評価する。 点方法など,ルールを
・個人のめあてについて自己 ◎個人のめあてに対する評価を 選んだり,考えたりし
評価する。 する。 ている。
・ルールの工夫を考える。 ○リングの大きさや得点方法な ■観察チェックリスト
ど ルールの変更の要望を聞く ■形成的授業評価票, 。
ねらい3 バスケットボール大会をして,ゲームを楽しむ課
題 ①バスケットボール大会をす ○これまでのゲーム的活動を生 《関心・意欲・態度》
解 る。 かして 学習のまとめとさせる □ルールやマナーを守, 。
決 ・グループ対抗の5人対5人 り,気持ちよくプレー
の で試合をする。 しようとする。11ま ・1人が最低3クォーター出 ■観察チェックリスト
と ・ 場する。 ■形成的授業評価票
め ・試合時間は,5分×4クォ
と ーター12発 ②単元全体の学習を振り返 ○学習カードを振り返らせた
展 る。 り,感想を書かせたりすること
の ・個人やグループの伸びを学 で,個人やグループの成果を見
, 。段 習カードで確かめる。 つけ 次につなげる総括をする
階 ・自分の学習を振り返るため ○単元全体をまとめ,次単元に
に,学習感想を書く。 向けて新たな意欲を持たせる。
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6 研究の結果と考察
バスケットボールの授業において,個を生かしたゲーム的活動の工夫(ドリルゲーム・タスクゲー
ム・ミニゲームの導入)を行ったことにより,一人一人の子どもの意欲と技能が高まったのかを検証
した。運動の意欲については,診断的・総括的授業評価(事前事後調査)と形成的授業評価の比較から
考察した。また運動の技能については,学習カード・ゲーム観察表,授業者による観察,研究協力員
による授業観察,児童による学習の振り返りの記録から考察した。
(1)運動への意欲について
①課題の達成に向かって,練習やゲームに取り組もうとしていたか。
図1の事前事後調査の比較から課題の達成への意欲は高まったといえる。また,図2の自主的学習
を見てみるとドリル・タスクゲームの段階が高くなっている。特にドリルゲームの30秒シュートやセ
ットシュート,ドリブルシュートといったシュートの技能を獲得していくゲームを子どもたちは意欲
的に行っていた。このことはバスケットボールの楽しさがシュートにあることを裏付けている。
図1からめあて(課題)を持って運動することについても,意識の向上は見られている。図2を見る
と,学習に慣れてくるに従ってめあて意識が高くなっている。しかし,めあての持たせ方に課題が残
った。一人一人の子どもに自分のめあてをいかに強く意識させていけるか。授業の中で学習内容が変
わる際に,課題意識をいかに持続させていけるか。それには,やはり子どもたちにめあてをじっくり
考えさせる手だてや時間が必要だったと反省している。
②運動が上達する楽しさや喜びを求めて活動しようとしたか。
事前事後調査の比較
2.785
1.786
2.143
3
2.214
2.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
精一杯の運動 めあてを持つ 自発的運動項目
点
事前
事後
グラフ内数字は評価の段階を示す
5
5
55
32
(図1)
各学習での形成的評価の比較
0
1
2
3
4
5
6
7
3 5 8 9 11 時
段階
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0点
精一杯の運動 めあてを持った学習
自主的学習 精一杯の運動めあてを持った学習 自主的学習
1234
ドリル・タスクゲーム ミニゲーム 5対5
(図2)
5 5 5
4
3
2
4 444
3
2
44 4
事前事後調査の比較
2.571
1.5
2.52.428
2.285
2.571
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
工夫して勉強 時間外練習 できる自信
項目
点
事前
事後
(図3)グラフ内数字は評価の段階を示す
55
4
5
1
5
各学習での形成的評価の比較
0
1
2
3
4
5
6
7
3 5 8 9 11 時
段階
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
点
技能の伸び 新しい発見 楽しさの体験技能の伸び 新しい発見 楽しさの体験
ドリル・タスクゲーム ミニゲーム 5対5
(図4)
5 5 5
4
55
3
444
3 3
44 4
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図4のドリル・タスクゲームの段階において,新しい発見と楽しさの体験の値が高くなっている。
これは,ドリルゲームにおいて確率の高いシュートの仕方など 「わかり・できる」ことをねらいとし,
て学習したことによるものだと分析している。また,図3の時間外練習が伸びているのは,チーム対
抗でタスクゲームやミニゲームをするにつれて,相手チームに勝ちたいという意欲が出てきたからだ
と考えられる。
図4の形成的授業評価から,自分で技能の伸びを感じるのはドリル・タスクゲーム,ミニゲームの
段階において,それぞれの学習に慣れたところで感じている。ただ,図3の「運動が上手にできる方
だと思う」といったできる自信の意識がさほど高まっていないのは,集団で行うボール運動において
個人として自分がどれだけ上手になったのか自信が持てなかったのではないかと考えられる。
③グループ(チーム)内で励まし合って,運動しようとしていたか。
図5において全員が「楽しく勉強」できたことや 「友人・先生の励まし」が事後に高まっているこ,
とから,グループを中心に励まし合って運動しようとしていたことがわかる。授業の中では特に30秒
シュートや,ミニゲームでチーム観察表をつけたり話し合ったりする過程において,アドバイスや励
まし合いができた。この相互的なかかわりが意欲につながっていったと考えられる。それは,友だち
や教師からのアドバイスを個人やチームのプレーに生かしている子どもが多くいたこと(14人中12人)
からもうかがえる。
(研究会の話し合いより)
○ミニゲームでゲーム観察表を用い,成功したパス数やドリブル数,シュート数を調べた。このゲ
ーム観察表を使用することでゲームを集中して見るようになり,また自分の回数についても関心
を持つようになった。さらに,児童が観察表を必要なときにはいつでも見られるような工夫をす
ることで,より個に返っていくのではないか (第9時)。
【運動への意欲についてのまとめ】
事前事後調査の比較からも,単元を通して運動への意欲は高まったといえる。形成的授業評価を学
習段階での変容からみると,第3時・5時の値が高く,ドリルゲーム・タスクゲームの有効性があっ
たといえる。学習の振り返りの記録を見ると,ドリルゲームのシュートゲームが役にたち楽しかった
ことがわかった。ドリルゲームにおいて子どもたちが意欲的に運動できたのは,楽しさの源であるシ
ュート練習を「わかり・できる」ことを柱として活動したからだと分析している。
また,形成的授業評価を個人単位で総得点にして比べてみると,子どもたちが一番高く評価してい
たのはミニゲームだった。子どもたちは少人数のチームで作戦を立てたり,十分運動したりできるミ
事前事後調査の比較
2.643 2.6432.786
32.928 2.928
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
楽しく勉強 友人・先生の励まし 約束ごとを守る 項目
点
事前
事後
5
54
5
4
5
グラフ内数字は評価の段階を示す (図5)
各学習での形成的評価の比較
0
1
2
3
4
5
6
7
3 5 8 9 11 時
段階
0.0
0 .5
1 .0
1 .5
2 .0
2 .5
3 .0
点
なかよく学習 協力的学習
なかよく学習 協力的学習
1234
ドリル・タスクゲーム ミニゲーム 5対5
(図6)
5
4
5
4 44
3
5
4 4
- 12 -体育
ニゲームを好ましく思っている。ミニゲームはチームで競い合うこと自体が楽しかったり,仲間と作
戦を立てチームワークが図れたりするので楽しさがあるのだろう。子どもたちが一番楽しかったこと
の中で,試合がたくさんできたこと・点を取れたこと・みんなでいっしょにやれたこと・友だちとふ
れあえたことを挙げていることからもうかがえる。
以上のことから,運動への意欲に関わっては特にドリルゲーム・ミニゲームの活動が有効であった
といえる。
(2) 運動の技能について
①ドリブル・パス・シュートの個人的技能を身に付けることができたか。
《ドリルゲームの活動から》
ア 30秒シュート
[自分のためになったと思う… 人( 人中 ] [一番楽しかった…2人 (学習の振り返りより)13 14 ) ]
○心に残っていること
・30秒シュートで最高記録が出せた。 ・30秒シュートの最後の日に13回という最高記録が出た。
・30秒シュートのような記録を伸ばしていくゲームがとても心に残っている。
○友だちや先生のアドバイス・言葉かけによって役立ったこと
・30秒シュートのとき 「四角の角にあてた方がいいよ 」と言われたので,角にあてたら入るよう, 。
になった。
・30秒シュートでアドバイスしてもらったら,最後に最高記録が出てよかった。
〈30秒シュートの記録〉 (表1)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14N O最高回数 13 13 13 15 13 8 14 12 6 9 12 6 6 6
+7 +6 +5 +5 +5 +5 +4 +4 +3 +3 +2 +2 +1 ±0( )1回目との比較
(研究会の話し合いより)
○30秒シュートはめあてを持って活動できるので,意外とおもしろい。自分自身で記録の伸びが
確認できるので,挑戦する意欲がわいてくる。また,自分の高まりが見て取れる (第5時)。
○30秒シュートは入った回数の伸びを確認できたり,友だちと競い合ったりできるので,個人の
成就感が味わえる (第9時)。
イ ドリブルシュート
[自分のためになったと思う…8人(14人中 ])
○できるようになったこと・自信になったこと
・ドリブルシュートができるようになった (10人)。
○友だちや先生のアドバイスや言葉かけによって役立ったこと
・シュートするときは,枠の角にあてること。
○わかったこと・気づいたこと
・30秒シュートと同じで,四角に軽くあてれば入る (7人)。
, 。( ) , 。( )・ななめからやると やりやすい 2人 ・ドリブルをして ツーステップでシュート 3人
・シュートする前に高くジャンプする (2人)。
・リズムよくタイミングよくシュートする (2人)。
- 13 -体育
○心に残っていること
・試合中にドリブルシュートができたこと。
・シュートをしても入らなかったけど,シュートの練習を何回もしたら入るようになった。
(研究会の話し合いより)
○足のステップやボードへのあて方がうまくできていない子どもには,個々に助言をしていく必
要がある (第5時)。
, 。○ドリブルシュートが上手になり ゲームの中でもシュートがだいぶ入るようになってきている
また,斜めからシュートすることが定着してきている (第9時)。
ウ セットシュート
[自分のためになったと思う…8人(14人中 ])
○わかったこと・気づいたこと
・山ボールを使うと入りやすい。
○心に残っていること
・シュートしてもリングにはね返ったりして入らないことの方が多かったから,点が入ったときう
れしかった。
(研究会の話し合いより)
○これまで運動が苦手だと思っていた子どもが友だちのまねをしながらセットシュートが上手に
なり,シュートもよく入るようになっている。
○チーム対抗で行ったセットシュートでは,意外な子どもが上手にシュートを決めていたり,今
までシュートが入らなかった子どもが最後にシュートを決めたりして喜んでいた。
○ドリブルシュートばかりでなく,セットシュートを指導の中に入れておくことは,シュートの
感覚がつかめるようになっていくので大切であるように思う。 (第5時)
エ ドリブル1対1
[自分のためになったと思う…4人(14人中 ] [一番楽しかった…2人])
・負けてしまったけど,楽しかった。 ・ドリブルしながらボールを出すのは大変だった。
○わかったこと・気づいたこと
・低くドリブルすれば取られない。 ・体でボールを守る。 ・手(うで)でガードする。
ドリルゲームについて,子どもたちはチーム競争よりも個人で行うものの方が自分のためになった
と答えている。ドリルゲームはチーム競争の中でも個が生かされるが,個人でやった方が自分の伸び
が確かめられたり,より自分に返るという意識が持てたりするので,個人の方がよいのだろう。その
中で,30秒シュートやセットシュート,ドリブルシュートといったシュートに関わるものは楽しさが
あるので,進んでやろうとしていた。とりわけ,30秒シュートが支持されているのは,継続して行っ
たことで自己の記録の伸びがわかり,挑戦する意欲につながったからだと考えている。やはり,体育
においても見通しが持てるものは意欲につながっていくようだ。さらに,この30秒シュートはドリブ
ルシュートに発展していくつながりを持っている。
ドリブルシュートは一見簡単そうに見えるが,やってみるとツーステップが難しかったり,ボール
をあてる位置や強さが不正確になったりして,子どもたちは苦労していた。しかし,個人で練習をし
たり,教師や友だちからアドバイスをもらったりしていくうちにできるようになっていった。このこ
とから,シュートのコツを自分の体とともに頭でも理解していくこと,つまり「わかり・できる」こ
とを大切にしていくことにより,意欲と技能を高めていけると考えられる。
- 14 -体育
(研究会の話し合いより)
,「 」 , ,○ドリルゲームの中で わかり・できる ことをねらいとして 30秒シュートやセットシュート
ドリブルシュートなど,ポイントとなることを子どもから発見させることを大切にしたので,
基礎的技能が高まってきている (第5時)。
○研究授業を二度行ったが,第5時より第9時の方が子どもたちの技能は高まっているように思
う。特に,シュート力がついている (第9時)。
②ボールを持たないときの動きができたか。
《タスクゲームの活動から》
ア ドリブルなしのパスゲーム
[自分のためになったと思う…4人(14人中 ])
○できるようになったこと
・パスアンドランが使えるようになった。
○わかったこと・気づいたこと
・固まりすぎだった。パスができないので,もっと広がった方がよい。(5人)
・バウンドパスを多くする。(5人)
・バウンドパスとチェストパスがもっとうまくなればやりやすい。
, 。 。・パスだけでボールをつなぐのは すごく難しかった ・パスの時に相手より前に出た方がいい
・ボールをもらったら,すぐパスをしないと取られてしまう。
【授業者の観察から】
, 。パスだけで攻めることにあまり慣れていない子どもたちにとって このゲームは難しかったようだ
遠くにパスが投げられないので,どうしても固まってしまう状況になる。しかし,その状況から広が
って攻めることやピボット,バウンドパスの必要性などいくつかの課題が生じてくるので,課題が明
確になる意味ではよいゲームであった。
イ 3ゴールシュートゲーム
[自分のためになったと思う…3人(14人中 ] (表2))
わかったこと ・ 気づいたこと 観察者プレイヤー
・もっと近くからシュートできるようにしたい。(4人)
シュート ・ドリブルシュートを確実に入れる。前があいていたら,ドリブルシ 9人 8人
ュートをする。(4人) ・シュートを確実にして勝ちたい。
パ ス ・バウンドパスが少なかった。もっと使った方がよかった。(4人) 5人 4人
・パスをうまく使う。
パスを ・もっとパスをもらえる場所にすばやく動いた方がよかった。(4人)
もらう ・パスがつながってよかった。(2人) 7人 4人
動 き ・みんな固まっていたので,次からはもっと広がってプレーしたい。
ディフェ ・相手をマークする。 4人 0人
ンス ・マークしないと,どんどんパスされてしまう。(3人)
・声を出せばよかった。(2人)
声 ・声が出ていてよかった。みんなで声を掛け合っていた (6人) 2人 8人。
・声を出した方がいい (2人)。
【授業者の分析から】
3ゴールシュートゲームではシュートチャンスが数多くあるので,プレイヤーも観察者もシュート
- 15 -体育
に関することに着目している。ゲームの中では,ドリブルしても一度止まってからセットシュートを
することが多く,しかも遠くからシュートをしているのでシュート成功率は低くなっている。こうし
た状況から,子どもたちは確実にシュートを入れるためには近くからシュートをすることや,ドリブ
ルシュートが大切であることに気がついている。また,相手がいない場所でパスをもらえばシュート
チャンスができるので,パスをもらう動きの大切さにも気がつくようになっている。パスでは,比較
的相手に取られにくいバウンドパスを使おうとする意識を強く持っている。
プレイヤーと観察者で違いが出たのは,ディフェンスと声のことである。プレイヤーはマークをし
っかりしないとシュートされてしまうと感じている。これは,プレーをしてみての実感なのだろう。
一方,観察者の多くは,声を掛け合うことの大切さを意識している。声を出すことでパスがもらえ,
チャンスになることを端から見て気づいているのだろう。
(研究会の話し合いより)
○3ゴールシュートゲームは,ドリブルシュートやパスをもらう動きなどが入ってくるので,効
果的なゲームだと感じた。ただ,ルールにおいて相手がリバウンドを取ったときは,違うゴー
ルにシュートをするようにしていくとオープンスペースの活用ができるのでよりよいと思う。
タスクゲームは課題ゲームといわれるように,そのゲームで習得させたい技術的・戦術的課題が明
確であることを原則としている。本授業の中で取り上げたドリブルなしのパスゲームと3ゴールシュ
ートゲームはともにボールを持っていないプレイヤーがいかに動くかが一つの大きな課題となった。
, ,子どもたちは制限があり 特別なルールで行うことにとまどいがあったり不慣れであったりしたため
思うように動けない子どももいた。しかし,このタスクゲームを行ったことで,個人やチームのよい
ところや足りないところがわかり,個人的技能や集団的技能を伸ばす足がかりとなった。特に,固ま
らないで広がって攻めることやパスをもらえる場所に動くこと,またバウンドパスやピボット,ドリ
ブルシュートの技能を上達していく意識を持てたことはたいへん有効であった。
③チームの作戦を生かした動きができたか。
《ミニゲーム・5対5のゲームから》
ア ミニゲーム
[自分のためになったと思う…9人(14人中 ])
○一番楽しかったこと
・少人数で作戦を立てたり,競い合えることが楽しい (8人)。
○できるようになったことや自信になったこと
・バウンドパス(3人) ・ドリブルがうまくなった (2人) ・パスがうまくなった (2人)。 。
○アドバイスや言葉かけによって,自分のプレーに役立ったこと
・パスがうまくできるようになった。 ・前に相手がいないときはドリブルをすること。
・ ドリブルしてね 」と言われてから,ドリブルを心がけるようになったのでよかった。「 。
・相手にボールがいったら,すぐ守りに行った方がいい。 ・チームプレーがよくなった。
・速攻を先生が教えてくださったので,試合に役立った。
○心に残っていること
・ドリブルが上手になったこと。
・作戦を立てたり,チームごとに練習したりするのがよかった。自分のめあてに向かって練習したり
- 16 -体育
するのもよかった。 ・声が掛け合えるようになった。今までできなかったことができた。
(研究会の話し合いより)
○ゲーム中の教師の声かけが生きており,即時的な評価として子どもに返っている。その声を子ど
もがどう受け止めているかを学習カードなどを利用しながら捉えておくようにするとよい。
「みんなと対決して強くなったと思う 「見ていて,みんな強くなっている 」という感想があっ。」 。
たように,ミニゲームや5対5のゲームを通して友だちの技能の上達を感じている。特に,パスやド
リブルなどの個人の技能が上達していった。これは,少人数で行ったことでドリルゲームやタスクゲ
ームで取り組んだことを生かすことができたり,スペースが広くなることで一人一人のボールの扱い
が比較的楽になったからだと考察している。
ミニゲームでは,少人数のためドリブルシュートをする機会は多い。最初はノーマークになるも3
ゴールシュートゲームの時と同様にドリブルをして止まってからセットシュートをする子どもがほと
んどであったが,ドリブルシュートを覚えるにつれて活用する回数が増えていった。そして,ゲーム
の中でもドリブルシュートで点を入れる場面が多くなった。子どもたちは友だちのプレーを見たりし
ながら,ドリブルシュートの重要性を認識していったのではないかと考えられる。
運動の技能についてのまとめ】【
ドリルゲームを「わかり・できる」ことをねらいとして進めたことで,個人的技能が向上した。ま
, ,た タスクゲームでは個人的技能の活用やボールをもらう動きを身に付けることを目的にしたところ
技能面や戦術面の向上が図れた。さらに,ミニゲームでは自分たちの作戦を生かす中で,個人的技能
の向上が見られた。こうした一連のゲーム的活動を少人数にして一人一人がより多く活動できるよう
にしたり,お互いにアドバイスしたりする相互評価を重視したことで,一人一人の技能が高まってい
った。結果として,ドリブルシュート(11人)やバウンドパス(4人 ,ドリブル(2人 〈複数回答) )
あり〉ができるようになったり,自信になったりしたと学習の振り返りの中で答えている。特に,ド
リブルシュートが多かったのは,ドリルゲームでシュートを中心に活動したこと,3ゴールシュート
ゲームやミニゲームでドリブルシュートをする機会が多かったからだと分析している。
(3)運動についての思考・判断
ここまで本研究の中心である運動への意欲と技能について検証をしてきたが,もう一つの評価規準
「運動についての思考・判断」についても検証してみたい。
思考・判断については,チームや自分の力に合った課題を立てること,その課題を達成させるため
の手だてを考えることを評価の対象にした。ドリルゲームでは「わかり・できる」ことをねらいとし
て学習を進め,シュートやパス,ドリブルにおける技能のポイントを一人一人で考えたことが技能の
上達に向けての手だてとなった。タスクゲームでは技能面や戦術面でチームや個人が身に付けなけれ
ばならないことに気づくことが多くあった。ミニゲームではゲーム観察表をつけたり,親友チームの
プレーを見てアドバイスをしたりしたことで,チームや個人の課題が見えてきた。そして,それらの
課題をチームの練習に取り入れ,ミニゲームに生かすことができた。
ドリルゲーム,タスクゲーム,ミニゲームのそれぞれにおいて,気づいたことを学習カードに記入
, , ,したり お互いにアドバイスし合ったりしたことで 自分たちのプレーを客観的に捉えることができ
個人やチームの課題を解決していく手だてとなった。
これらのことから,思考・判断についても個を生かすゲーム的活動が有効だったといえる。
- 17 -体育
以上,上記(1)から(3)の結果から,個を生かすゲーム的活動の工夫を行ったことにより,一
人一人の子どもの意欲と技能はおおむね高まったといえ,研究仮説は妥当であったと判断できる。
7 研究の成果と今後の課題
個を生かすゲーム的活動(ドリルゲーム・タスクゲーム・ミニゲームの導入)の工夫が,一人一人
の子どもの意欲と技能を高めることに有効であることがわかった。総合的に見ると,ドリルゲームと
ミニゲームは個人的技能や意欲を高めることに有効であり,タスクゲームは思考・判断を高めること
に有効だったと考えられる。補足になるが,一人一人の運動量を調べるために歩数計をつけて活動を
行ったところ,子どもたちはたいへん興味を持って自分の歩数を確認していた。歩数計をつけたこと
が,精一杯動こうとする意欲の向上につながった。また,ゲームの様子をビデオに撮り,バウンドパ
スやピボット,パス・アンド・ランなどのプレーを見合った。それが子どもたちの意識に残り,次か
らのプレーに生かすことができた。ディフェンスについてはほとんど教えていないが,ゲームをする
に従って子どもたちは自然とマークして守ることを意識していった。
今後の課題として,授業の中でのドリルゲームの位置付けや授業時間の柔軟な扱いが考えられる。
今回ドリルゲームは授業の最初に入れたが,タスクゲームやミニゲームを中心に据え課題が出たとこ
ろで取り入れることもできよう。また,授業時間について45分の中では十分な活動を行うのに多少無
理な部分もあったので,60分あるいは90分授業の計画の中で行うことも考えられる。さらに,本授業
の中では子どもたちの要望がなかったため通常のルールで行ったが,得点方法やコートなどルールに
ついての工夫をすることによって,子どもたちの意欲と技能を一層高められるものと期待される。
今後,さらに他の種目や領域についてもゲーム的活動を取り入れ,子どもたちが目を輝かせながら
自分を高めていける授業づくりに取り組んでいきたいと考えている。
参考文献 研究協力員
・小学校学習指導要領解説体育編 文部科学省 小澤 和彦 甲運小学校教諭
・小学校体育科 基礎・基本と学習指導の実際 榊原 俊二 堀之内小学校教諭
-計画・実践・評価のポイント- 内藤 光洋 境川小学校教諭
池田延行 渡邉 彰 戸田芳雄 東洋館出版社 渡辺 孝 吉田小学校教諭
・体育の授業を創る 渡邊 昭男 富士見台中学校教諭
高橋健夫・編著 大修館書店
・体育の授業方法論 研究指導者
出原泰明著 大修館書店 清水 清 教育指導部研修主事
・学校体育授業事典
監修 宇土正彦 平成 年度 山梨県総合教育センター15
編集 阪田尚彦 高橋健夫 細江文利
大修館書店 長期研修員研究報告書
研究協力校
堀之内小学校 校長 伊藤 邦昭 執 筆 者 長期研修員 中村 勝
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ドリルゲームの導入
【30秒シュート】
○30秒シュートは,シュートの基本練習として取り入れた。子どもたちに「30秒間にたくさんシ
ュートを入れるためにはどんなシュートをしたらいいか 」と投げかけ,試してもらった。その。
中で,シュートが多く入った2人に実技してもらった。1人は正面から直接シュートする方法,
もう1人は黒い枠の右上の角にあてて入れる方法を取った。この2人の方法を参考にして個々に
練習してみると,子どもたちは後者のやり方を取り入れていた。そこで,それに付け加えて左右
交互にシュートすることを提案し,以後継続して取り組んでいった。この30秒シュートは発展と
。 ,してドリブルシュートのボードへのあて方につながっていく 正面から直接シュートする方法は
セットシュートの中で取り上げた。
【ドリブルシュート】
○休み時間にもバスケットの試合をして遊んでいる子どもが多かったので,まずは個々でドリブ
ルシュートの練習をした。様子を見ながら一度全員を集め,上手な子どもに実技してもらった。
ドリブルしてボールを持ってからツーステップでシュートすること,ボードへのあて方は 秒シ30
ュートと同じであることを確認し,再度練習した。その後,3つのゴールをドリブルで移動しな
がらのドリブルシュートを行った (1分間に何本入るかを試すゲーム)。
【セットシュート】
○1・2時の試しのゲームでワイドリングを取り付けて行ったときに,子どもたちは上からスト
ンと入るようにすればシュートが入る感覚を持っている。その感覚を理論上から理解させるため
に,リングの中にはバスケットボールがいくつ分入るかを予想させた。1人(2つ分)を除いて
みんな1つ分と答えた。脚立を使い,実際に調べさせてみた。ボール2つ分入ることを確認した
ことで,結構リングの中は広いんだと子どもたちは実感したのではないかと思う。そのことをも
とに,離れたところからシュートをするときは山ボールでシュートすると入りやすいことを確認
した。
【ドリブル1対1】
○コート上にあるサークルを利用して行った。お互いにドリブルしながら,相手のボールを外に
出してしまった方が勝ちというゲームである。このドリブル1対1はチーム対抗戦で行った。1
対1で行うスリルもあり,子どもたちは楽しくゲームを行っていた。対戦相手を変えたり,また
違うチームと対戦したりした。