嚥下機能評価のスクリーニング検 査としての100ml水飲みテ …•...

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嚥下機能評価のスクリーニング検 査としての100mL水飲みテスト 100WST)について(第2報) 摂食機能研究会・山部歯科 山部一実 リハビリテーション・ケア合同研究大会2014 2014.11.8

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Page 1: 嚥下機能評価のスクリーニング検 査としての100mL水飲みテ …• 100wstは感度・特異度ともに高い評価方法であ り、これにより年齢による嚥下機能の違いを示せ

嚥下機能評価のスクリーニング検査としての100mL水飲みテスト(100WST)について(第2報)

摂食機能研究会・山部歯科

山部一実

リハビリテーション・ケア合同研究大会20142014.11.8

Page 2: 嚥下機能評価のスクリーニング検 査としての100mL水飲みテ …• 100wstは感度・特異度ともに高い評価方法であ り、これにより年齢による嚥下機能の違いを示せ

目的• 年齢により嚥下機能は低下すると考えられているが、それを示せる簡単な評価法はない。

• 嚥下機能のスクリーニングとして反復唾液嚥下テスト(RSST)や改訂水飲みテスト(MWSTと略)が標準化されており1)2)、「100mL水飲みテスト(100WSTと略)」は全く応用されていないのが現状。

• 100WSTは感度・特異度ともに高い評価方法であり、これにより年齢による嚥下機能の違いを示せるかどうかを検証したので報告する。

1)摂食・嚥下障害の評価(簡易版)日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会案2011 2)厚労省発出文書:高齢者歯科口腔健診実施マニュアル2014

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対象および研究期間

1. 対象長崎県平戸市にある老健(2か所)入所者、およびデイケア(3か所)利用者の方を対象に実施。測定途中で中止した対象者は集計から除外。

2. 研究期間2014.7月~2014.9月

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方法1. 方法

被験者に座位をとらせ、100ml入りのグラスをできるだけ早く飲むように指示。100ml全て飲み干すまでの時間を測定。

Wu et al., :Evaluating Swallowing Dysfunction Using a100-ml Water Swallowing Test. Dysphagia 19:43-472004

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100mL水飲みテストは大量の水を飲む検査ではない

• 本テストは、100mL水飲みテストという名称ではあるが、実際には対象者によって飲用する量、飲用の仕方はさまざまであり中止する方もおり、集計からは除外した事例もあった。

老健入所者 デイケア利用者

100WST(sec) 5~75 3~61Swallloing

speed(ml/s) 1.3~20.0 1.6~33.3

嚥下回数 2~13 2~10

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老健入所者の100WST

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95

N

年齢と100WST(sec)年齢 sec

正常 <10sec 14名 14%異常 >10sec 89名 86%

注:対象者には同時にMWSTも実施したが、いずれも<4>-<5>あった。

n-=103

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老健入所者の100WST

n-=103

相関係数r=0.20危険率:p<0.0548有意水準5%相関関係なし

0

10

20

30

40

50

60

70

80

50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100

sec

age

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デイケア利用者の100WST

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1001 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61 66 71 76 81 86 91 96 101

106

111

116

121

126

131

136

141

146

151

156

161

166

171

176

181

186

191

100W

ST&age

N

正常 <10sec 110名 57%

異常 >10sec 84名 43%

注:対象者には同時にMWSTも実施したが、いずれも<4>-<5>であった。

n=195

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デイケア利用者の100WSTn=195

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100

sec

age

相関係数r=0.33危険率:p<0.0001有意水準1%相関関係あり

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100WSTとMPT

0

5

10

15

20

25

0 10 20 30 40 50 60 70

MPT

(sec)

100WST(sec)

相関係数r=-0.36 危険率:p<0.0026有意水準1%相関関係あり

MPT:最長発声持続時間。発声機能のみでなく呼吸機能を示す指標

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100WSTとRSST(デイケア)

相関係数r=-0.18危険率:p<0.05有意水準5%相関関係あり

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

RSST(回

)

100WST

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100WSTと介護度の関係100WSTと介護度の関係男性 女性

男性:r=0.33 危険率:p<0.22有意水準5%相関関係なし女性:r=0.11 危険率:p<0.42有意水準5%相関関係なし

1

2

3

4

5

0 10 20 30 40 50 60

介護

100WST

0

1

2

3

4

5

0 20 40 60 80

介護

100WST

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100WSTの感度・特異度

今研究におけるMWSTの結果は全て<4>or<5>であった。

100WSTは、MWSTでは検出

できなかった高齢者には必要な検査ではないだろうか。

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まとめ

• 特に、デイケア利用者を対象にした場合にはMWSTやRSSTでは検出できない年齢による嚥下機能の低下を100WSTでは検出できる可能性が示された。

• 100WSTと年齢、MPTとの関連については有

意な相関が示されたが介護度との相関はなかった。

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今後の課題

• 海外での水飲みテストの実施方法は、数mLから100mLまで、嚥下機能に対応して使い分けている1)。

1)The Toronto Bedside Swallowing Screening Test (TOR-BSST):Development and Validation of a Dysphagia Screening Tool for Patients With Stroke,RosemaryMartino, PhD et al; • 今後は、我が国における水飲みテストの方法の一つとして、100mL水飲みテストの導入の必要があると思われる。

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