個別株式ボラティリティの 長期記憶性と非対称性...2006)1. その他に,...

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No. 2009-001 ボラティリティ * 大学大学院 ( ) 2009/07 概要 , ボラティリティ した FIEGARCH モデルを いて, ボラティリティ った ある. から, ボラティリティが っている いえ かった. これ っている. ただし, , ボラティリティ , されて いる. CAPM モデルを いた った. マーケット・ポートフォリオ いたリスクに いボラティリティ っていたが, され かった. から, ボラティリティ されるが, から株 , され るこ がわかった. キーワード: , ボラティリティ, , , FIEGARCH, CAPM * するに たり, 大学 から メントをいただいた. コメントをくださった各 に感 したい. ただし, されてい る意 , また, ありう , する. 1-6-1 大学大学院 mail:[email protected]

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Page 1: 個別株式ボラティリティの 長期記憶性と非対称性...2006)1. その他に, S&P500(Bollerslev and Mikkelsen, 1996), S&P100(Taylor, 2001) もFIEGARCHモデルを適用したとき長期記憶過程に従っていることが示されて

No. 2009-001

個別株式ボラティリティの長期記憶性と非対称性∗

早稲田大学大学院商学研究科 竹内 (野木森) 明香†

2009/07

概 要

本稿は, ボラティリティの長期記憶性と非対称性を考慮した FIEGARCHモデルを用いて, 個別株式のボラティリティの実証分析を行ったものである.分析の結果から, 個別株式のボラティリティが長期記憶過程に従っているとはいえなかった. これは株価指数の分析結果とは異なっている. ただし, 株価指数と同様に, ボラティリティの自己相関は, 非常に高く非対称性も観測されている.次にCAPMモデルを用いた分析を行った. マーケット・ポートフォリオの

影響を取り除いたリスクにも高いボラティリティの自己相関は残っていたが,非対称性は観測されなかった. 以上のことから, 個別株式のボラティリティは自己相関が高く非対称性が観測されるが, その中から株式市場全体の効果を取り除くと, その非対称性が観測されなくなることがわかった.

キーワード: 個別株式, ボラティリティ, 長期記憶性, 非対称性, FIEGARCH,CAPM

∗本稿を作成するに当たり, 早稲田大学産業経営研究所嶋村紘輝研究分科会の皆様から有益なコメントをいただいた. 貴重なコメントをくださった各氏に感謝したい. ただし, 本稿に示されている意見は筆者個人に属し, また, ありうべき誤りは, すべて筆者個人に属する.

†東京都新宿区西早稲田 1-6-1早稲田大学大学院商学研究科 mail:[email protected]

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1 はじめに

金融証券のリスクを表す指標としてボラティリティと呼ばれる指標がある.この

ボラティリティは収益率の標準偏差として定義され広く使われている. ボラティリ

ティには大きく分けて二つの性質(ボラティリティ・クラスタリングと非対称性)

が存在すると指摘されている. 本稿では, 個別株式のボラティリティに着目し, 2つ

の性質が観測されるか分析を行った. 本稿で得られた結論は次の 2点である. ま

ず, 個別株式のボラティリティ・クラスタリングと, 株価指数で観測されたボラティ

リティ・クラスタリングの性質は異なるという結論が得られた. さらに, 個別株式

のリスクのうち「個別リスク」のボラティリティには, 非対称性と呼ばれる性質が

観測されないという結果が得られている.

ボラティリティ・クラスタリングとは, 株価のボラティリティが時間を通じて変

動し自己相関していることを捉えた性質である. 先行研究ではボラティリティの

自己相関は大変強いことが知られている. さらに, このボラティリティ・クラスタ

リングは, 自己相関の減衰速度によって, 短期記憶と長期記憶と呼ばれる 2つに分

けることができる. また, 別の性質であるボラティリティの非対称性とは, 株式市

場で特に観測される性質で, 株価が上がった翌日よりも下がった翌日のほうがボラ

ティリティの自己相関が大きくなるという特徴を捉えている.

これらボラティリティの特徴を捉えるモデルは数多く存在しているが,本稿ではそ

の中のARCH(autoregressive conditional heteroskedasticity)型モデルに注目して分

析を行う. このARCH型モデルの中ではGARCH(generalized ARCH, Bollerslev,

1986)モデル, GJR(Glosten et al., 1993)モデル, EGARCH(exponential GARCH,

Nelson, 1991)モデル, APGARCH(asymmetric power GARCH, Ding et al., 1993)

モデルがよく用いられてきた. しかし近年, 実際のボラティリティの自己相関の

減衰が, これらのモデルで捉えられるものよりも遅く, ボラティリティが長期記

憶過程に従っていることが指摘されてきた. そのような現象と整合的なモデルと

して, FIGARCH(fractionally integrated GARCH, Baillie et al., 1996)モデル,

FIEGARCH(fractionally integrated EGARCH, Bollerslev and Mikkelsen, 1996)

モデル, FIAPGARCH(fractionally integrated APGARCH, Tse, 1998)モデル等が

分析されている.

このボラティリティの長期記憶性はさまざまなデータで観測されている. 特に

長期記憶性と非対称性の二つの性質を捉えることができる FIEGARCHモデルは

株価分析へ適用されている. 日本のデータでは, 日経 225株価指数が長期記憶過

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程に従っていることが指摘されている (竹内 (野木森)・渡部, 2008; 渡部・佐々木,

2006)1. その他に, S&P500(Bollerslev and Mikkelsen, 1996), S&P100(Taylor, 2001)

も FIEGARCHモデルを適用したとき長期記憶過程に従っていることが示されて

いる. このように, 株価指数のボラティリティには長期記憶性があることが確認さ

れている2.

本稿では, 株価指数の構成銘柄である個別株式のボラティリティに着目し分析を

行った. 日本の個別株ボラティリティでは, 長期記憶性を取り入れたARFIMAモ

デルと FIGARCHモデルを適用し長期的な予測をすると, 長期記憶性を取り入れ

たモデルのほうが予測力は上がるが, その予測力は個別のデータから推定されたパ

ラメータを用いるよりも, poolされたパラメータを用いたほうが改善されるという

結果が得られている (Lux and Kaizoji, 2007). また, 株価指数と同様にボラティリ

ティティ・クラスタリングの程度は非常に高く, ボラティリティ・クラスタリング

が高い銘柄は長期記憶性が観測されることも指摘されている (前川・河合, 2008).

本稿では FIEGARCHモデルを用いボラティリティの長期記憶性と非対称性の有

無を検討する3.

一方, 個別株式のリスクを表す別の指標として, CAPM(Capital Assets Pricing

Model)の β(以下 βCAPM)がある. この βCAPM は個別株式の変動が株式市場全体

の動きと同調する程度を示す. 本稿では個別株式のボラティリティ・クラスタリン

グと βの関係性を検討している. さらに CAPMでは, 個別株式のリスクを「市場

全体・経済全体に関わるリスク」と「会社固有のリスク (idiosyncratic risk, 個別

リスク)」に分解することができる. この個別リスクにも, ボラティリティ・クラス

タリングと非対称性を捉えるARCH型モデルを適用した分析がなされている (Fu,

2009; Brockman et al., 2009; Spiegel and Wang, 2005; Eiling, 2006). 本稿でも個別

リスクのボラティリティの分析を行い, その特徴の変化を検討する. 分析結果から

個別リスクのボラティリティには非対称性が観測されないということがわかった.

本稿の構成は以下のようになっている. 第 2節では, 長期記憶性の定義とモデル

の解説を行う. 第 3節では分析に使用したデータを紹介する. 第 4節で推定結果を

示し, 第 5節でまとめと今後の課題について述べる.

1稲田 (2006)では TOPIXの収益率に ARFIMAモデルをあてはめて 1970年代には長期記憶性が存在し, 1980年代以降では長期記憶性が存在しないという結果を得ている.

2株価指数以外のデータでは, 円ドルの為替レート (Tse, 1998), 株式の取引量 (Lux and Kaizoji,2007), 日経 225先物価格 (渡部・佐々木, 2005)で長期記憶性を取り入れたモデルの分析が行われている.

3TOPIXと日本の一部上場 15社の株価収益率にARFIMAモデルを適用した分析も行われている (Ray et al., 1997).

1

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2 モデル

本稿では日次株価データを用い, その収益率のボラティリティに長期記憶性と非

対称性と呼ばれる性質が観測されるか分析を行う. まず長期記憶性について簡単

に説明を行い, 収益率の定式化を示す. その後, 収益率の分散へ適用するARCH型

モデルを紹介する. また本稿では収益率Rtの期待値に 2通りの定式化を行う. そ

れらの定式化の違いを, Simple ARCH型モデルとCAPM ARCH型モデルという

呼び方で区別する.

長期記憶過程と短期記憶過程は, 自己相関の総和によって定義することができる.

ある変数Xtの自己相関を

ρ(h) =Cov(Xt, Xt+h)

Var(Xt)(1)

として表記するとき,∞∑

h=0

|ρ(h)| < ∞ (2)

であれば, その変数は短期記憶過程に従うといい,

∞∑

h=0

|ρ(h)| = ∞ (3)

であれば, 長期記憶過程に従うという4. ARCH型モデルの一つであるFIEGARCH

モデルではボラティリティの過程を長期記憶過程として捉えることができる.

分析対象である収益率の計算方法は, 大きく分けて, 離散型と連続型の二つがあ

るが, 本稿ではHafner and Herwartz (2001)や渡部 (2003)の先行研究に従い離散

型の収益率を使用して分析を進める. t期の株価を Stとし, 安全利子率を rftとし

たとき

Rt = 100×(

St − St−1

St−1

− rft

)(4)

で超過収益率を計算した. 本稿で使用する収益率は全てこの離散型の超過収益率を

使用した. また, t期の株価指数を Indextとしたとき, その超過収益率をMRtとし

MRt = 100×(

Indext − Indext−1

Indext−1

− rft

)(5)

として計算する.

4長期記憶過程の詳細は矢島 (2003), 稲田 (2006)を参照.

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2.1 Simple ARCH型モデル

収益率の定式化は多くのパターンがあるが, 本稿ではまず収益率の期待値を定数

とした単純なモデルを考える. リスクプレミアムを考慮した収益率は,

Rt = a + εt, (6)

εt = σtzt,   zt ∼ i.i.d.N(0, 1)

として定式化できる. 推定パラメータ aは, もし投資家がリスク中立的であるなら

ば a = 0となり, 株価の超過収益率は E(Rt) = 0となるはずである. この誤差項の

分散をモデル化したものがARCH型モデルである. 本稿では誤差項の分散のモデ

ルとして 3つのARCH型モデルの推定を行った.

まずボラティリティの長期記憶性と非対称性を考慮したモデルとしてFIEGARCH

モデルを推定した5. 渡部・佐々木 (2006), 竹内 (野木森)・渡部 (2008) に従い

FIEGARCH(1,d, 0)モデルを推定する. モデルは,

(1− βL)(1− L)dln(σ2t )− ω = g(zt−1), (7)

g(zt−1) = θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|). (8)

ここでLはラグオペレータ, β, d, ω, θ, γは推定パラメータである. これらの中で特

に (1−L)dの dは長期記憶性を捉えるパラメータである. また (8)式はボラティリ

ティの非対称性を捉えており, zt−1の符号によって書き換えれば

g(zt−1) = (θ + γ)|zt−1| − γE(|zt−1|), zt−1 > 0, (9)

= (−θ + γ)|zt−1| − γE(|zt−1|), zt−1 < 0. (10)

株価が下がった翌日のほうが上がった翌日よりボラティリティの変動が大きくな

るという経験則が正しければ (10)式の g(zt−1)が (9)式の g(zt−1)よりも大きくな

る. そのとき θは負の値に推定されるはずである. 以上から, FIEGARCHモデル

は, 長期記憶性と非対称性というボラティリティの 2つの特徴を含んでいることが

わかる.

FIEGARCHモデルは (7)式の dの値によって, 定常か非定常か, 長期記憶か短期

記憶モデルか変わる. 表 1では定常性をみたす dの値と長期記憶性をみたす dの値5GARCHモデルに長期記憶性をとりいれた FIGARCHモデルもある. しかし FIGARCHモデ

ルには, 0 < d < 0.5であっても収益率の分散が無限になってしまうという問題がある. そのため本稿でも FIGARCHモデルの推定は行っていない.

3

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を示している6. 表より, 分散と自己相関の和という二つの基準に依存した dの値

の範囲によってFIEGARCHモデルの性質が異なることがわかる. d = 1のときは,

(1−L)d = 1−Lより, 一階差分をとったボラティリティが定常過程になるため, ボ

ラティリティは単位根過程に従うことになる. d = 0のときは (1− L)d = 1となる

ため短期記憶モデルとなり, 後述する EGARCHモデルと等しくなる. 0 < d < 1

のとき長期記憶過程という. さらに, 分散の定義によって 0 < d < 0.5の時を定常

長期記憶過程, 1 > d > 0.5を非定常長期記憶過程という. 従って dの推定値によっ

てボラティリティに長期記憶性があるか判断できる.

表 1: FIEGARCHモデルと dの関係

d = 0 0 < d < 0.5 0.5 < d < 1 d = 1

分散 有限 無限(定常) (非定常)

自己相関の和 有限 無限 定義不可(短期記憶) (長期記憶) (単位根)

以下では表 1の長期記憶性が存在する範囲に dが存在するとき, FIEGARCHモ

デルの自己相関関数の無限和が発散し, 長期記憶性の定義 (2)式を満たすことを示

す. Hosking (1981)から, ARFIMA(1,d,0)モデル

(1− βL)(1− L)dyt = zt zt ∼ N(0, 1)

の h次の自己相関は

ρ(h) ∼ (−d)!

(d− 1)!

(1 +

1 + d

1− d+

(1 + d)(2 + d)

(1− d)(2− d)β2 + · · ·

)−1

h2d−1 (11)

となる. d = 1, 0の自己相関は (11)式で定義できないので, ここでは 0 < d < 1と

する. |β| < 1ならば,

B =

(1 +

1 + d

1− d+

(1 + d)(2 + d)

(1− d)(2− d)β2 + · · ·

)−1

> 0

と置き換えることができる. (11)式の最後の h2d−1は, h > 0から, 正の値である

から

|ρ(h)| ∼∣∣∣∣∣

(−d)!

(d− 1)!B

∣∣∣∣∣ h2d−1

6定常性を満たす dの値の詳細については補論参照.

4

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となる. 0 < d < 1のとき−1 < 2d− 1 < 1となるため, 数列収束に関するCauchy

の定理より∑∞

h=0 h2d−1 = ∞となり,

∞∑

h=0

|ρ(h)| =∣∣∣∣∣

(−d)!

(d− 1)!B

∣∣∣∣∣∞∑

h=0

h2d−1 = ∞

がいえる. FIEGARCH(1,d,0)モデルのときも, σ2t の h次の自己相関は (11)式で定

義されるため d > 0のときにボラティリティは長期記憶過程に従う7. また d = 0

のときの自己相関関数は

ρ(h) = βh (12)

である. このとき, |β| < 1ならば,

∞∑

h=0

|ρ(h)| < ∞

となり収束する. 従って, FIEGARCH(1,0,0)モデルは短期記憶過程に従っている.

以上から, FIEGARCHモデルは, 長期記憶性と非対称性というボラティリティ

の 2つの特徴を含んでいることがわかる. しかしこのモデルをこのまま推定するこ

とは難しいため次の仮定をおく. 推定したい FIEGARCHモデル

(1− βL)(1− L)dln(σ2t )− ω = g(zt−1),

g(zt−1) = θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|),

は, ラグ多項式を近似展開すると

ln(σ2t ) = ω +

∞∑

j=1

bjln(σ2t−j)− ω+ θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|), (13)

bj = aj − βaj−1 (j > 1), b1 = d + β,

aj =j − d− 1

jaj−1 (j > 1), a1 = d.

(13)式の∑∞

j=1 bjln(σ2t−j) − ωには無限期過去までのボラティリティが含まれて

いるが, そのようなデータは存在しないので,

ln(σ20) = ln(σ2

−1) = · · · = ω,

ln(σ21) = ω,

7本稿では d < 0の場合は考慮していない. d < 0の場合も自己相関関数が定義できる. 詳細はHosking (1981).

5

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という仮定をおく8.

次に長期記憶モデルと比較するために, 短期記憶モデルと単位根モデルを推定

する. 本稿では, FIEGARCHモデルと同様に対数ボラティリティを定式化した

EGARCHモデルと IEGARCHモデルを選択し比較分析を行うことにする.

短期記憶モデルとして EGARCH(1,1)モデル

ln(σ2t ) = ω + β

ln(σ2

t−1)− ω

+ θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|) (14)

を推定した. FIEGARCHモデルと同様にパラメータ θがボラティリティの非対称

性を捉えている. ボラティリティ・クラスタリングを捉えているのはパラメータ β

である. また, (7)式を d = 0とおいた FIEGARCHモデルと等しい. ボラティリ

ティの初期値は

ln(σ20) = ω

と仮定した. 単位根モデルでは IEGARCH(1)モデル

ln(σ2t ) = ω +

ln(σ2

t−1)− ω

+ θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|) (15)

を推定する. 一期前のボラティリティの係数が 1であることから, 過去のボラティ

リティの影響は時間に依存して消えず, ボラティリティは単位根過程に従っている

ことになる. このモデルは, β = 1とおいたEGARCHモデル, d = 1, β = 0とおい

た FIEGARCHモデルと等しい. これまでと同様に, ボラティリティの初期値は

ln(σ20) = ω

と仮定した. 各モデルの特徴を表 2にまとめた. FIEGARCHモデルが, EGARCH

モデルと IEGARCHモデルを拡張したモデルであることがわかる.

以上の 3つのボラティリティ・モデルは最尤法を用いて簡単に推定することがで

きる. まず, ボラティリティの式の中に t時点の確率変数が含まれていないことか

ら, 1期前までの情報を条件としたとき, t期のボラティリティは確定した値として

計算できる. 従って, εtの尤度を考えるとき, σtは確率変数ではなく, 定数として捉

えることができる. そのため, εtの尤度は条件付尤度を使えば, 通常の最尤法と同

様に表記することが出来る. ただし, 株価の収益率の分布が, 正規分布よりも裾の

8FIEGARCHモデルは, ボラティリティの対数をモデル化しているため, 推定パラメータによらずボラティリティは正の値となる. 従って, GARCHモデルのようにボラティリティが常に正の値をとるように推定パラメータに制約を置く必要がない.

6

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表 2: パラメータの捉えている特徴

モデル 制約FIEGARCH (1− βL)(1− L)dln(σ2

t )− ω = g(zt−1)

EGARCH (1− βL)ln(σ2t )− ω = g(zt−1) d = 0

IEGARCH (1− L)ln(σ2t )− ω = g(zt−1) d = 1 β = 0

厚い分布に従っていることが知られているため, ここで用いる推定方法は正確には

擬似最尤法である. 推定に用いるデータ数を T とすると, 対数尤度関数は

ln L = −T

2ln(2π)− 1

2

T∑

t=1

ln σ2t −

1

2

T∑

t=1

ε2t

2σ2t

(16)

となる. どのボラティリティ・モデルに σtが従っているとしても, 対数尤度関数は

変わらないため, 本稿では全てのモデルでこの対数尤度関数を最大化して, 推定値

を求めている.

2.2 CAPM ARCH型モデル

個別株式にCAPMを適用したとき, リスクの指標として β(以下 βCAPM)と呼ば

れる指標が広く使われている. βCAPM は, 対象となる株価収益率が市場全体の動

きを示すポートフォリオ (マーケット・ポートフォリオ)と相関する程度を表して

いるものである. 本稿でもCAPMを推定し, この βCAPM とボラティリティの自己

相関の間の関係を検討した. さらに先行研究で指摘されているように, CAPMモ

デルの誤差項のボラティリティにもクラスタリングと非対称性が観測されること

が指摘されている. そこで, ここでは誤差項にEGARCHモデルを仮定したCAPM

モデル

Rt = a + βCAPMMRt + ut,

ut = σtzt,   zt ∼ i.i.d.N(0, 1)

ln(σ2t ) = ω + θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|)+ β

ln(σ2

t−1)− ω

(17)

の推定を行った. ここでMRtをマーケット・ポートフォリオの超過収益率とする.

本稿ではこの超過収益率の代理変数として日経 225株価指数の超過収益率を用い

た. ボラティリティ・クラスタリングを示すパラメータ βとの混乱を避けるため,

7

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マーケット・ポートフォリオの係数を βCAPM として表記する. このモデルでは,

収益率Rtを,マーケット・ポートフォリオに依存する βCAPMMRtと, 会社の個別

要因に依存する utに分解することができる. この utのリスクのことを「個別リス

ク」と呼ぶ. 本稿ではこの個別リスクにも, クラスタリングと非対称性という二つ

の性質が観測できるか, EGARCHモデルを用いて検討を行った. さらにボラティ

リティに IEGARCHモデルを仮定した推定も行なった.

Rt = a + βCAPMMRt + ut,

ut = σtzt,   zt ∼ i.i.d.N(0, 1)

ln(σ2t ) = ω + θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|)+

ln(σ2

t−1)− ω

(18)

推定方法は, 前出の Simple ARCH型モデルと同様に擬似最尤法を用いている.

誤差項 utの分布を正規分布で近似するとき, 推定に用いるデータ数を T とすると,

対数尤度関数は

ln L = −T

2ln(2π)− 1

2

T∑

t=1

ln σ2t −

1

2

T∑

t=1

u2t

2σ2t

(19)

となる.

3 使用データ

本稿では日経225株価指数の構成銘柄の日次データ終値を利用してSimple ARCH

型モデルとCAPM ARCH型モデルの推定を行った9. 2008年 1月 4日から 1500営

業日前までのデータを使って各モデルを擬似最尤推定した. ただし, データが 1500

営業日分揃わない銘柄は分析対象から外している. 結局, 推定したデータは全部で

200銘柄となった. 推定銘柄とその東証業種コードを表 8, 表 9, 表 10, 表 11に示す.

そのほかに, 日経 225株価指数終値と, 安全利子率として翌日物無担保コールを使

用した10.

4 推定結果

前述のデータを使用し, Simple ARCH型モデルと CAPM ARCH型モデルの最

尤推定を行った. 各モデルの推定結果を以下に示し, 二つのモデルの推定結果を比9日経 NEEDSのデータを使用している

102007年 1月 6日の個別株式データはあるが, 日経 225と CRの該当データが無かったため, 翌日の 2007年 1月 5日のデータで代用した.

8

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較する.

Simple ARCH型モデルの推定結果から, 長期記憶性パラメータは有意とはいえ

なかった. 長期記憶性を捉える dの有意性をみると, 表 3で示すように, 1割程度の

銘柄でしか dは有意に推定されていない. より詳細に推定値をみると, 図 1より, d

の推定値にはばらつきがあり推定値の多くは 0付近に存在していた. 表 3で dの推

定値と定常性の関係をみると, そのほとんどは有意ではないが定常な範囲 (d < 0.5)

で推定されているが, 16銘柄は非定常な値 (d > 0.5)で有意に推定された11. また,

図 2より, 長期性のパラメータと βの推定値の間にトレードオフがあることがわか

る. この傾向は, 図 3の上 2図に示されている FIEGARCHモデルの dと βの推定

値プロットでも同様である. 図 3の 3つ目のプロットにはEGARCHモデルの βの

推定値が示されているが, βの推定値は大変1に近くボラティリティが単位根過程

に近いことがわかる.

図 1: dの推定結果

05

1015

Den

sity

0 .2 .4 .6 .8 1d

非対称性を表すパラメータは, 表 5より, FIEGARCHモデルで 30%, EGARCH

11Bollerslev and Mikkelsen (1999), Taylor (2001), 渡部・佐々木 (2006), Wang and Hsu (2007)でも同様に d > 0.5という推定値が得られている.

9

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表 3: FIEGARCHモデル (d)の有意性

      全体 d < 0.5 d >= 0.5

推定数 200 184 16

1%有意 22 7 15

5%有意 1 1 0

10%有意 3 3 0

合計 26 11 15

図 2: dと βのトレードオフ

0.2

.4.6

.81

d

0 .2 .4 .6 .8 1beta(FIEGARCH)

10

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図 3: dと βの推定値0

.2.4

.6.8

1FI

EG

AR

CH

(d)

0 50 100 150 200no

Simple

0.2

.4.6

.81

FIE

GA

RC

H(b

eta)

0 50 100 150 200no

Simple

.6.7

.8.9

1E

GA

RC

H(b

eta)

0 50 100 150 200no

Simple

.2.4

.6.8

1E

GA

RC

H(b

eta)

0 50 100 150 200no

CAPM

11

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モデルで 10%強, IEGARCHモデルでは約 2%の銘柄でしか有意に推定されなかっ

た. 図 4の上図でプロットされた推定値から, マイナスの値で推定された銘柄もあ

ることがわかる. このような現象は日経 225株価指数では観測されていない. ただ

し, マイナスの値で推定されたパラメータ数は, プラスの値で推定されたパラメー

タ数よりも多いことが表 4から確認できる.

表 4: 非対称性パラメータ (θ)の有意性

Simple CAPM

FIEGARCH EGARCH IEGARCH EGARCH IEGARCH

正の値 推定数 47 47 66 98 85

1%有意 4 0 1 1 2

5%有意 1 2 0 4 1

10%有意 0 1 1 4 0

合計 5 3 2 9 3

負の値 推定数 153 153 134 102 115

1%有意 13 2 0 0 2

5%有意 24 12 1 1 0

10%有意 16 9 1 4 2

合計 53 23 2 5 4

そのほかの推定値の結果を表 5にまとめる. 表 5より, aも全ての銘柄で有意とは

いえないことがわかる. 尤度の比較を行ったところ,表6と図5より, FIEGARCHモ

デルの尤度がEGARCHモデルと IEGARCHモデルに比べて高いとはいえないが,

EGARCHモデルのほうが IEARCHモデルよりも尤度は高い傾向があることがわ

かる. 長期記憶パラメータが有意ではなかったこと,尤度の比較からもFIEGARCH

モデルが, そのほかのモデルよりもボラティリティ変動を捉えているとはいえない

ことがわかる.

次に CAPM ARCH型モデルの推定結果を示す. 図 3の下図より, ボラティリ

ティ・クラスタリングの数値は Simple EGARCHモデルと同様に大きな値で推定

されている. 推定値は 1に近いものが多い. 次に非対称性パラメータの結果をみる

と, 表 4より有意に推定された銘柄は殆どないことがわかる. また, 負に推定され

たものと, 正に推定されたものの銘柄数の差がない. 図 4下図の非対称性パラメー

タのプロットからも, 推定値が 0を中心に分布していることが確認される. 以上か

12

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図 4: θの推定値−.

20

.2.4

.6es

timat

ed v

alue

0 50 100 150 200no

FIEGARCH EGARCHIEGARCH

Simple

−.4

−.2

0.2

.4es

timat

ed v

alue

0 50 100 150 200no

EGARCH IEGARCH

CAPM

13

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表 5: パラメータ推定結果

a ω θ γ β d

FIEGARCH

1%有意 7 176 17 124 177 22

5%有意 5 7 25 28 1 1

10%有意 10 6 16 16 3 3

合計 22 189 58 168 181 26

EGARCH

1%有意 6 82 2 86 194 −5%有意 4 25 14 33 3 −

10%有意 6 16 10 18 2 −合計 16 123 26 26 199 −

IEGARCH

1%有意 22 159 1 126 − −5%有意 16 18 1 28 − −

10%有意 13 5 2 16 − −合計 51 182 4 170 − −

表 6: 尤度の比較

Simple ARCH type model 個数EGARCH>FIEGARCH 173

IEGARCH>FIEGARCH 45

EGARCH>IEGARCH 194

14

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図 5: 尤度のプロット−1

000

−500

050

010

00lik

elih

ood

0 50 100 150 200no

EGARCH−FIEGARCH IEGARCH−FIEGARCH

Simple

010

020

030

040

050

0lik

elih

ood

0 50 100 150 200no

CAPM

15

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ら個別リスクの非対称性はほぼなくなっていると考えられる. そのほかのパラメー

タの結果を表 7にまとめる. βCAPM は殆どの銘柄で有意に推定された. 尤度の比

較を行うと図 5より, IEGARCHモデルよりもEGARCHモデルのほうが尤度は大

きいため, 以下ではCAPM EGARCHモデルから推定された βCAPM の推定値を用

いて分析を進める.

表 7: パラメータ推定結果 (CAPM)

a βCAPM ω θ γ β

EGARCH

1%有意 4 188 73 1 73 189

5%有意 7 3 27 5 27 1

10%有意 9 0 16 8 16 1

合計 20 191 116 14 116 191

IEGARCH

1%有意 17 195 139 4 122 −5%有意 18 0 25 1 27 −

10%有意 14 1 12 2 11 −合計 49 196 176 7 160 −

最後に, Simple ARCH型モデルと CAPM ARCH型モデルの推定結果の比較を

行う. まず, ボラティリティ・クラスタリングの程度を表す βは Simple ARCH型モ

デルでもCAPM ARCH型モデルでも同様に高い値となった. 図 6では EGARCH

モデルのパラメータ βの推定値の比較を行っている. 上図から, 2つの推定値は同

じような変動をしていることが見て取れる. 2つの推定値の差 (Simple EGARCH

モデルの β−CAPM EGARCH モデルの β)をプロットしている下図では, どちら

の推定値が大きいかはわからない. 今回のデータでは, Simple EGARCHモデル

の βが, CAPM EGARCHモデルの βよりも大きい銘柄は全部で 97銘柄であった.

従って, 個別リスクのボラティリティ・クラスタリングが, 収益率全体のボラティ

リティ・クラスタリングに対して小さく, もしくは大きくはならないことがわかる.

次に, 個別株式のリスクを表す別の指標である βCAPM と長期記憶パラメータの

推定値を比較すると, CAPMの βCAPMの推定値が, 平均よりも極端に小さいか, 大

きいかする場所では, 長期記憶性パラメータは有意に推定されていない. 図 8より,

βCAPM が中間的な値のとき, 長期記憶パラメータ dの推定値のばらつきは大きい.

EGARCHモデルの βと βCAPM の関係を図 7からみても βCAPM が中間的な値の

16

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図 6: βの推定値の変化 (EGARCH)

.2.4

.6.8

1E

GA

RC

H(b

eta)

0 50 100 150 200no

Simple CAPM

−.4

−.2

0.2

.4.6

Sim

ple−

CA

PM

0 50 100 150 200no

17

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とき βのばらつきが大きいという同様の傾向が見て取れる. 以上からボラティリ

ティ・クラスタリングを現すパラメータの分散は βCAPM に依存していることがわ

かる.

5 おわりに

本稿は, ボラティリティの長期記憶性と非対称性を考慮したFIEGARCHモデル

を用いて, 個別株式のボラティリティの実証分析を行った. 分析の結果から, 個別

株式のボラティリティが長期記憶過程に従っているとはいえなかった. これは株価

指数の分析結果とは異なっている. ただし, 株価指数同様, ボラティリティの自己

相関は非常に高く非対称性も観測されている. 次に, マーケット・ポートフォリオ

の影響を取り除いたリスクにも, 高いボラティリティの自己相関が残っていた. し

かし, 非対称性は観測されなかった. 以上のことから, 個別株式のボラティリティ

は, その自己相関が高く非対称性が観測されるが, その中から株式市場全体の効果

を取り除くと, その非対称性が観測されなくなることがわかった.

今後の展開と課題として次の点が考えられる. まず, 長期性の有無はデータ期間

によって異なることが稲田 (2006) で指摘されていることから, データ期間をずら

すことで長期性の有無が変化する可能性がある. 本稿で使用した期間以外のデー

タを用いた分析を行う必要があるだろう. またパラメータの検定方法として, 竹内

(野木森)・渡部 (2008)のように, 擬似最尤法のパラメータの有意性検定を厳密に行

う必要があるだろう. 長期パラメータの推定については, 前川・河合 (2008)でシ

ミュレーションによる検討がおこなわれ, 複数のAR(1)過程の平均が長期記憶性を

持つ (Granger, 1980)という結果と同様に, ボラティリティに非常に高い自己相関

が観測される短期記憶過程では長期記憶パラメータが有意に推定されてしまうこ

とが指摘されている. 株価指数に長期記憶性が観測される原因の一つとして, この

点を考慮する必要があるだろう. 最後に本稿で用いたCAPMの定式化は非常に単

純なモデルを使用しているが, 先行研究のように財務データを取り入れた CAPM

モデルを仮定した場合, 本稿で得られたボラティリティの性質が変わるか検討する

必要があるだろう.

18

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図 7: βCAPM と βのプロット (EGARCH).2

.4.6

.81

beta

0 .5 1 1.5CAPM beta

Simple CAPM

図 8: βCAPM と dのプロット

0.2

.4.6

.81

d

0 .5 1 1.5CAPM beta

19

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A 補論

A.1 FIEGARCHモデルの定常性と長期記憶性をみたす dの値

d < 1/2の時, FIEGARCHモデルは定常な時系列となる. ここでHamilton (1994)

に従い解説を行う. まず,

f(y) = (1− y)−d (20)

と置き, この関数をテーラー展開すると,

f(y) = f(0) +f ′(0)

1!y +

f ′′(0)

2!y2 +

f ′′′(0)

3!y3 + · · ·

= 1 + dy +1

2!(d + 1)dz2 +

1

3!(d + 2)(d + 1)dz3 + · · ·

となる. この関係を使えば,

(1− L)−d = 1 + dL +1

2!(d + 1)dL2 +

1

3!(d + 2)(d + 1)dL3 + · · ·

=∞∑

j=0

hjLj (21)

hj ≡ 1

j!(d + j − 1)(d + j − 2)(d + j − 3) · · · (d + 1)d

とラグ多項式を展開することができる.

次に hj の近似を行う. ある関数 g(x) ≡ (1 + x)d−1を定義し, この関数を 0近傍

でテーラー展開すると

(1 + x)d−1 = 1 + (d− 1)x +1

2(d− 1)(d− 2)(1 + δ)d−3x2 (22)

ここで δは 0に十分に近い値. このとき x > −1かつ d < 1であるならば

(d− 1)(d− 2)

2< 0

となり, (22)式の第 3項が負の値になることから

(1 + x)d−1 ≥ 1 + (d− 1)x

が成立する. この式に x = 1/jを代入すると,

(1 +

1

j

)d−1

=

(j + 1

j

)d−1

≥ 1 +d− 1

j(23)

20

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となる. j > 0, d < 1のとき, j → ∞となれば近似がよくなる. この関係を利用し

て hjを

hj ≡ 1

j!(d + j − 1)(d + l − 2)(d + j − 3) · · · (d + 1)(d)

=

(d + j − 1

j

) (d + j − 2

j − 1

) (d + j − 3

j − 2

)· · ·

(d + 1

2

) (d

1

)

=

(j + d− 1

j

) (j − 1 + d− 1

j − 1

) (j − 2 + d− 1

j − 2

)· · ·

· · ·(

j − (j − 2) + d− 1

j − (j − 2)

) (j − (j − 1) + d− 1

j − (j − 1)

)

=

(1 +

d− 1

j

) (1 +

d− 1

j − 1

) (1 +

d− 1

j − 2

)· · ·

· · ·(

1 +d− 1

j − (j − 2)

) (1 +

d− 1

j − (j − 1)

)

∼=(

j + 1

j

)d−1 (j − 1 + 1

j − 1

)d−1 (j − 2 + 1

j − 2

)d−1

· · ·

· · ·(

j − (j − 2) + 1

j − (j − 2)

)d−1 (1 +

j − (j − 1) + 1

j − (j − 1)

)d−1

=

(j + 1

j

)d−1 (j

j − 1

)d−1 (j − 1

j − 2

)d−1

· · ·(

3

2

)d−1 (1 +

2

1

)d−1

= (j + 1)d−1

従って 0 < d < 1の時,

hj∼= (j + 1)d−1 (24)

と近似できる.

FIEGARCHモデルのラグ多項式を展開すると,

(1− βL) ln σ2t = (1− L)−dg(zt) (25)

= (∞∑

j=0

hjLj)g(zt) (26)

(1− βL) ln σ2t の分散は

Var((1− βL) ln σ2t ) =

∞∑

j=0

h2jVar(g(zt)) (27)

となる. Var(g(zt))は ztがホワイトノイズであることから, tに依存せず一定の値

になる. Var(g(zt))をΩとおくと∞∑

j=0

h2jVar(g(zt)) = Ω

∞∑

j=0

h2j (28)

21

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(28)式が有限であればVar((1− βL) ln σ2t ) < ∞となるため分散を定義することが

できる. ある有限の整数N > 1を考える.

N−1∑

j=0

(j + 1)2(d−1) =N∑

j=1

j2(d−1)

< 1 +∫ N

1x2(d−1)dx

= 1 +1

2(d− 1)

[x2(d−1)+1

]N

x=1

= 1 +1

2(d− 1)(N2d−1 − 1) (29)

N > 1であるため, 2d− 1 < 0ならばN →∞のとき (29)式は 1− 1/(2d− 2)へ収

束する. さらに |β| < 1と仮定すれば, Var(ln σ2t )も有限の値に収束する. 言い換え

れば,

d <1

2, |β| < 1, (30)

のとき, Ω∑∞

j=0 h2j は有限の値に収束し, FIEGARCHモデルは定常になる.

A.2 FIEGARCHモデルの展開

(7)式の形のままで FIEGARCHモデルを推定するわけではない. Taylor (2001)

ではMA型の展開とAR型の展開を比較したとき, AR型の展開のほうがパラメー

タ計算の収束が速いことが指摘されている. そこで本稿でもFIEGARCHモデルを

AR型に展開して推定を行う. ここでは渡部・佐々木 (2006)の補論Cを参照して

モデルを説明する. まず 0で近似したテーラー展開 (Maclaurin展開)

f(L) = f(0) +f ′(0)

1!L +

f ′′(0)

2!L2 +

f ′′′(0)

3!L3 + · · · (31)

を用いてラグ多項式の展開を行う. dに関連しているラグ多項式は

(1− L)d = 1 +d

1(−1)L +

d(d− 1)

2!(−1)2L2 +

d(d− 1)(d− 2)

3!(−1)3L3 + · · ·

= 1−(

d

1L + d× (1− d)

2L2 + d× (1− d)

2× (2− d)

3L3 + · · ·

)

= 1−(a1L + a2L

2 + a3L3 + · · ·

)

= 1−∞∑

j=1

ajLj, a1 = d, aj =

j − d− 1

jaj−1 (j > 1) (32)

22

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と展開できる. ラグ多項式全体では, (32)式を使うと,

(1− βL)(1− L)d = (1− βL)

1−

∞∑

j=1

ajLj

= (1− β)−∞∑

j=1

(1− βL) ajLj

= (1− β)− a1 − βa0 −∞∑

j=2

(aj − βaj−1)Lj

= 1− (β + a1)−∞∑

j=2

(aj − βaj−1)Lj

= 1−∞∑

j=1

bjLj,

b1 = d + β, bj = aj − βaj−1 (j > 1). (33)

このラグ多項式を使ってモデルを展開すると,1−

∞∑

j=1

bjLj

ln(σ2

t )− ω = g(zt−1),

ln(σ2t )− ω =

∞∑

j=1

bjLjln(σ2

t )− ω+ g(zt−1),

ln(σ2t ) = ω + b1ln(σ2

t−1)− ω+ b2ln(σ2t−2)− ω · · ·+ g(zt−1),

ln(σ2t ) = ω +

∞∑

j=1

bjln(σ2t−j)− ω+ g(zt−1). (34)

(34)式はその他の ARCH型モデルと同様に ln(σ2t )が過去の ln(σ2

t )と zt−1の線形

関数になっている. しかし実際のデータは無限には存在しないため, 無限期前のボ

ラティリティの値がわからず (34)式の第 2項が計算できない. このままでは, t期

のボラティリティを求めることができないため, 0期から, それ以前の期間につい

ては,

g(z0) = 0 (35)

ln(σ20) = ln(σ2

−1) = · · · = ω = E(σ2

t

)(36)

と仮定する. この仮定から 0期より過去のデータについては ln(σ2t−j)− ω = 0が

成立するため, t期のボラティリティの予測に無限期過去のデータは必要ない. 最

終的に推定したい FIEGARCHモデルは,

ln(σ2t ) = ω +

∞∑

j=1

bjln(σ2t−j)− ω+ θzt−1 + γ|zt−1| − E(|zt−1|) (37)

23

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bj = aj − βaj−1 (j > 1), b1 = d + β

aj =j − d− 1

jaj−1 (j > 1), a1 = d

ln(σ20) = ln(σ2

−1) = · · · = ω = E(σ2

t

)

ln(σ21) = ω

となる.

表 8: 推定データ銘柄一覧 (1/4)

銘柄/業種 銘柄/業種日本水産/水産・農林業 帝人/繊維製品大成建設/建設業 東レ/繊維製品大林組/建設業 三菱レイヨン/繊維製品清水建設/建設業 クラレ/化学鹿島/建設業 旭化成/化学熊谷組/建設業 王子製紙/パルプ・紙大和ハウス工業/建設業 三菱製紙/パルプ・紙積水ハウス/建設業 北越製紙/パルプ・紙日揮/建設業 日本製紙グループ本社/パルプ・紙日清製粉グループ本社/食料品 昭和電工/化学明治製菓/食料品 住友化学/化学明治乳業/食料品 日産化学工業/化学日本ハム/食料品 日本曹達/化学サッポロホールディングス/食料品 東ソー/化学アサヒビール/食料品 東亜合成/化学キリンホールディングス/食料品 電気化学工業/化学宝ホールディングス/食料品 信越化学工業/化学キッコーマン/食料品 協和発酵/医薬品味の素/食料品 三井化学/化学ニチレイ/食料品 宇部興産/化学日本たばこ産業/食料品 日本化薬/化学東洋紡/繊維製品 花王/化学ユニチカ/繊維製品 武田薬品工業/医薬品日清紡/繊維製品 アステラス製薬/医薬品日東紡/ガラス・土石製品 大日本住友製薬/医薬品

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表 9: 推定データ銘柄一覧 (2/4)

銘柄/業種 銘柄/業種塩野義製薬/医薬品 東邦亜鉛/非鉄金属中外製薬/医薬品 三菱マテリアル/非鉄金属エーザイ/医薬品 住友金属鉱山/非鉄金属テルモ/精密機器 DOWAホールディングス/非鉄金属トレンドマイクロ/通信業 古河機械金属/非鉄金属富士フイルムホールディングス/化学 古河電気工業/非鉄金属コニカミノルタホールディングス/電気機器 住友電気工業/非鉄金属資生堂/化学 フジクラ/非鉄金属新日本石油/石油・石炭商品 東洋製缶/金属製品昭和シェル石油/石油・石炭商品 オークマ/機械横浜ゴム/ゴム製品 コマツ/機械ブリヂストン/ゴム製品 住友重機械工業/機械旭硝子/ガラス・土石製品 クボタ/機械日本板硝子/ガラス・土石製品 荏原/機械住友大阪セメント/ガラス・土石製品 千代田化工建設/建設業太平洋セメント/ガラス・土石製品 ダイキン工業/機械東海カーボン/ガラス・土石製品 日本精工/機械TOTO/ガラス・土石製品 NTN/機械日本ガイシ/ガラス・土石製品 ジェイテクト/機械新日本製鉄/鉄鋼 ミネベア/電気機器住友金属工業/鉄鋼 日立製作所/電気機器神戸製鋼所/鉄鋼 東芝/電気機器日本製鋼所/機械 三菱電機/電気機器日本軽金属/非鉄金属 富士電機ホールディングス/電気機器三井金属鉱業/非鉄金属 明電舎/電気機器

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表 10: 推定データ銘柄一覧 (3/4)

銘柄/業種 銘柄/業種NEC/電気機器 日産自動車/輸送用機器富士通/電気機器 いすゞ自動車/輸送用機器OKI/電気機器 トヨタ自動車/輸送用機器松下電器産業/電気機器 日野自動車/輸送用機器シャープ/電気機器 三菱自動車工業/輸送用機器ソニー/ 電気機器 マツダ /輸送用機器TDK/ 電気機器 本田技研工業/輸送用機器三洋電機/電気機器 スズキ/輸送用機器ミツミ電機/電気機器 富士重工業/輸送用機器アルプス電気/電気機器 ニコン/精密機器パイオニア/電気機器 オリンパス/精密機器クラリオン/電気機器 キヤノン/電気機器横河電機/電気機器 リコー/電気機器アドバンテスト/ 電気機器 シチズンホールディングス/精密機器デンソー/輸送用機器 凸版印刷/そのほか製品カシオ計算機/電気機器 大日本印刷/そのほか製品ファナック/電気機器 ヤマハ/そのほか製品京セラ/ 電気機器 伊藤忠商事/卸売業太陽誘電/電気機器 丸紅/卸売業松下電工/電気機器 豊田通商/卸売業三井造船/輸送用機器 三井物産/卸売業日立造船/機械 東京エレクトロン/電気機器三菱重工業/機械 住友商事/卸売業川崎重工業/輸送用機器 三菱商事/卸売業IHI/機械 高島屋/小売業

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表 11: 推定データ銘柄一覧 (4/4)

銘柄/業種 銘柄/業種丸井グループ/小売業 東日本旅客鉄道/陸運業クレディセゾン/そのほか金融業 西日本旅客鉄道/陸運業イオン/小売業 日本通運/陸運業ユニー/小売業 ヤマトホールディングス/陸運業三菱UFJフィナンシャル・グループ/銀行業 日本郵船/海運業千葉銀行/銀行業 商船三井/海運業横浜銀行/銀行業 川崎汽船/海運業静岡銀行/銀行業 全日本空輸/空運業住友信託銀行/銀行業 三菱倉庫/倉庫・運輸関連みずほ信託銀行/銀行業 日本電信電話/通信業三菱UFJニコス/そのほか金融業 KDDI/通信業大和証券グループ本社/証券業 エヌ・ティ・ティ・ドコモ/通信業野村ホールディングス/証券業 東京電力/電気・ガス業新光証券/証券業 中部電力/電気・ガス業損害保険ジャパン/保険業 関西電力/電気・ガス業三井不動産/不動産業 東京ガス/電気・ガス業三菱地所/不動産業 大阪ガス/電気・ガス業平和不動産/不動産業 東宝/通信業東急不動産/不動産業 エヌ・ティ・ティ・データ/通信業住友不動産/不動産業 東京ドーム/サービス業東武鉄道/陸運業 セコム/サービス業東京急行電鉄/陸運業 CSKホールディングス/通信業小田急電鉄/陸運業 コナミ/通信業京王電鉄/陸運業 ファーストリテイリング/小売業京成電鉄/陸運業 ソフトバンク/通信業

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