第1特集 中国暗転 - store.toyokeizai.net · contents 2014 11/15 表紙から...

CONTENTS 2014 11/ 15 表紙から もはや高成長への復帰が ないことが明らかになっ た現在、目指すべき「中国 夢」はどこにあるのか。 albedo/ PIXTA(ピクスタ) ファン / PIXTA(ピクスタ) 54 第1特集中国 暗転 世界が認めた中国の成長企業 復星集団……… 中国のバフェット 日本投資の全貌 奇虎360科技 百度を脅かすネット市場の風雲児 華為技術……… 通信のガリバー その発想と危機感 64 習近平 5 つの試練 経済政策/不動産市場/企業改革/法治の推進/近隣外交 アリババだけじゃない! 「『 ノーアウト満塁の リリーフエース』が 習近平の本音に近いのでは 津上俊哉 津上工作室代表 74 高成長の終わりと日本企業の商機 10 5 0 5 10 15 前年比、 %鉄道輸送量 電力消費量 201314 910 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 %注) 2014 年春の国際世論調査 英国 フランス ドイツ 中国 韓国 米国 ロシア タイ インド 日本 ベトナム フィリピン 70 60 50 40 30 20 10 0 そう思う 経済実態を表す指標は低空飛行 中国はいずれ米国に代わる超大国 になると思うか? (→P57) (→P61) 習近平の実像 「史上最弱」が豪腕指導者に化けた 62 中国と香港デモに共通する若者の不満 90 【1】 消費の進化は日中で同時進行 全土展開急ぐイオン 地元密着のヨーカ堂 【2】モール建設数は世界ダントツ 怒濤の建設ラッシュに過熱感 【6】 撤退には相応の覚悟と準備を 想定外の要求続々 【4】 介護福祉には国策の追い風 日式介護に注目 【3】進化する消費者 成金趣味を卒業 無印良品が大攻勢 【7】 法令順守要求は先進国並みに 独禁法の運用強化に対策は 【5】自分でやるより出資で儲ける 自力進出せずともチャンスあり 80 82 84 86 88 地方の 官製バブルは崩壊寸前 70 看板政策・ 都市化の落とし穴 72 INTERVIEW日本は中国とどう付き合うべきか 津上俊哉 津上工作室代表 /ジェラルド・カーティス 米コロンビア大学教授 平野 聡 東京大学法学部准教授 74 79 56 92 成長鈍化で中国が揺らぐ 注目業界トップ10 総ざらえ 中国民営企業ランキング Part 1 Part 2 76 中国ビジネス7つの新常識

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Page 1: 第1特集 中国暗転 - store.toyokeizai.net · contents 2014 11/15 表紙から もはや高成長への復帰が ないことが明らかになっ た現在、目指すべき「中国

CONTENTS 2014 11/15

表紙からもはや高成長への復帰がないことが明らかになった現在、目指すべき「中国夢」はどこにあるのか。

albedo / PIXTA(ピクスタ)ファン / PIXTA(ピクスタ)54【第1特集】

中国暗転     世界が認めた中国の成長企業復星集団……… 中国のバフェット 日本投資の全貌奇虎360科技… 百度を脅かすネット市場の風雲児華為技術……… 通信のガリバー その発想と危機感

64

習近平 5つの試練経済政策/不動産市場/企業改革/法治の推進/近隣外交

アリババだけじゃない!

「『ノーアウト満塁の リリーフエース』が 習近平の本音に近いのでは」

津上俊哉津上工作室代表

74

高成長の終わりと日本企業の商機

1115号_1特_中国 p3-4

▲10

▲5

0

5

10

15(前年比、%)

鉄道輸送量

電力消費量

2013年 149月 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9

(%)(注)2014年春の国際世論調査

英国フランスドイツ中国韓国米国

ロシアタイ

インド日本

ベトナムフィリピン

706050403020100

そう思う

■ 経済実態を表す指標は低空飛行

■ 中国はいずれ米国に代わる超大国 になると思うか?

(→P57)

(→P61)

習近平の実像「史上最弱」が豪腕指導者に化けた62

中国と香港デモに共通する若者の不満90

【1】消費の進化は日中で同時進行  全土展開急ぐイオン 地元密着のヨーカ堂【2】モール建設数は世界ダントツ 怒濤の建設ラッシュに過熱感

【6】撤退には相応の覚悟と準備を 想定外の要求続々

【4】介護福祉には国策の追い風 日式介護に注目【3】進化する消費者 成金趣味を卒業 無印良品が大攻勢

【7】法令順守要求は先進国並みに 独禁法の運用強化に対策は

【5】自分でやるより出資で儲ける 自力進出せずともチャンスあり

8082848688

地方の「官製バブル」は崩壊寸前70看板政策・都市化の落とし穴72INTERVIEW│日本は中国とどう付き合うべきか  津上俊哉 ●津上工作室代表/ジェラルド・カーティス ●米コロンビア大学教授 平野 聡 ●東京大学法学部准教授

74

79

56

92

成長鈍化で中国が揺らぐ

注目業界トップ10総ざらえ

中国民営企業ランキング

Part1

Part276 中国ビジネス7つの新常識

Page 2: 第1特集 中国暗転 - store.toyokeizai.net · contents 2014 11/15 表紙から もはや高成長への復帰が ないことが明らかになっ た現在、目指すべき「中国

CONTENTS 2014 11/15

核 心 リ ポ ー ト

16

日銀の追加金融緩和、GPIFの積極運用転換に、マーケットは驚いたが…

113437

|経 済 を 見 る 眼 ||こ の 人 に 聞 く || 少 数 異 見 |

世界は日本を中心に回っていない/齋藤 誠

浜川一郎 ● JCB社長|新興国開拓し3年後1億会員誰がためのバズーカ砲第2弾

24 トヨタが利益2兆円へ部品会社に示す"配慮"

28 浜銀・東日本銀が統合へ平時に高まる再編機運

26 時価総額でトップ陥落武田「復活」への疑問符

30 スマホ責任者を"更迭"窮地ソニーの覚悟

PR5

96

ビジネスアスペクト ASEANカンファレンス/人口6億人の          巨大市場を取り込め!動き出すASEAN          経 済統合と日本企業の針路広告特集  環境・CSRの未来戦略

本誌の記事は「東洋経済オンライン」「日経テレコン」「ジーサーチ」「ELNET」のデータベースに収録されており、フリーキーワードで検索、出力できます。

図表作成:小堺賢吾/杉本祐子

10月25日号 訂正情報78〜79ページ「進化する車両素材」の記事で、79ページの最下段にある「現在、両者に代わり〜」で始まる段落とその次の段落を、以下の文章に差し替えます。 現在、両者に代わりより軽量化できる素材はないか、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)で開発が続けられている。期待されているのが難燃性マグネシウム合金だ。アルミ合金の比重の3分の2と軽量なため、鉄道車両では1割強の軽量化が可能となる。またFSWといった既存の溶接技術を活用することもできる。 ただし現状では、「マグネシウム合金の板を組み合わせて立体にしたときにどうなるか、試験をしている最中」(森久史・鉄道総研研究員)と実現には時間がかかりそうだ。アルミ合金に比べて数倍という高価な点もネックだ。

スプリントの業績改善は待ったなし。単独の米国戦略に打開策はあるのか

スプリントの苦戦、Tモバイル買収の断念——。その傍らで「第2のアリババ」探しに打って出た。

巻 頭 特 集

42 孫正義の挫折と逆襲

50 関心はすでにインド 主役は外国人参謀

44「瀬戸際」スプリント撤退阻止への白熱舞台裏

48 世界戦略の要衝で生じた誤算

53 INTERVIEW   川邊健太郎 ● ヤフー副社長「コンテンツが王者になる」

104106108110112113114116

オン・オフの切り替え 仕事場をどう作るか/佐藤 優

「戦える軍隊」への進化を党に命じられる海軍/小原凡司

ウクライナの選挙とロシアの運命/カール・ビルト ほか

日銀追加緩和でもアベノミクス変調は続く/星 浩

追加緩和で株価上昇も消費税再増税なら持続せず/藤戸則弘

米国は利上げ急がず世界景気回復期待の円安に/亀岡裕次

印刷用紙|2回値上げも焼け石に水実質賃金の低下が圧迫、家計消費支出は戻り鈍い

| 知 の 技 法 || 中 国 動 態 ||グ ロ ー バ ル ア イ||フ ォ ー カ ス 政 治|| 株 式 観 測 || 為 替 観 測 || 価 格 を 読 む ||マ ク ロ ウ ォ ッ チ|

117118123125126

魅せるゴルフが輝くコースセッティング/三田村昌鳳

『夕張再生市長』を書いた鈴木直道氏に聞く ほか

会社のルールを変えるには?/長谷川 裕

読者の手紙、編集部からイル・ディーヴォの思い出/童門冬二

|ゴ ル フ ざ ん ま い||ブックス&トレンズ||文化系サラリーマン諸君!||Readers & Editors||生涯現役の人生学|

11経済を見る眼齋藤 誠

118ブックス&トレンズ 

『夕張再生市長』鈴木直道

112株式観測藤戸則弘34

この人に聞くJCB社長 浜川一郎

113

為替観測亀岡裕次

   三 人 三 談

38 「80年代」が復活した第1回

1980年代ブームの勢いが止まらない。いまの日本には、文化、産業から株式市場に至るまで、80年代の香りが濃厚に漂っている。

「株式がバブル期と酷似」丸山 俊

「ファミレスが復権」今 柊二

「新人類によるブーム」北村明広

新連載

長期国債やETFの買い取り増でなり振り構わぬ黒田日銀。株は一時暴騰、円安も進んだが、副作用も。

緊急特集日銀追加緩和

サプライズ

※今号は「企業と天才」を休載します

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43 週刊東洋経済 2014.11.15 422014.11.15 週刊東洋経済

孫正義の挫折と逆襲

挫折 と 逆襲孫正義の

客獲得コストは惜しまない」。8月

に孫は前任CEOを事実上更迭し、

全幅の信頼を置くとするマルセロ・

クラウレをトップに据えた。押され

っぱなしだった大手他社への逆襲を

虎視眈眈と狙っている。

 金の卵を追い求めつつも、今のソ

フトバンクにとっては米国事業の立

て直しが最重要課題。孫はこのピン

チを乗り切れるのか。

の卵を産むガチョウになり

たい」。11月4日に都内の

ホテルで決算会見に臨んだソフトバ

ンク社長、孫正義の表情は3カ月前

より晴れやかだった。

 3カ月前、孫は米国携帯大手Tモ

バイルUSの買収断念で挫折を味わ

う。傘下へ収めたスプリントとの合

流がかなわなかったためだ。

 今回一転して孫が饒舌になったの

は、出資するアリババが今年9月に

米国上場を果たした影響が大きい。

2000年当時、孫がアリババへ出

資した20億円は今回の上場によって

10兆円弱の含み益に変貌した。孫は

会見でアリババを含む子会社群の資

産を金の卵に例え、それを生み出す

自らをガチョウと位置づけた。

 〝ガチョウプレミアム〞という言葉

も飛び出した。ソフトバンクの時価

総額は9・4兆円(11月6日終値時

点)だが、孫はプレミアムが反映さ

れてないと主張する。

 10月、孫はグーグルのナンバー2

だったニケシュ・アローラを副会長

として招聘。同氏主導で「第2のア

リババ」探しに奔走している。

 

ただし、今回の決算でソフトバン

クは15年3月期の業績予想を引き下

げた。営業利益が悪化するのは、実

に12期ぶりとなる(左㌻図)。

 原因は1・8兆円を投じて手に入

れたスプリントの業績悪化だ。「顧

「金

巻頭特集

Tモバイル買収断念から3カ月。単独の戦いを強いられたスプリントは苦戦が目立つ。その傍らで孫は「第2のアリババ」探しに打って出た。=敬称略=本誌:田邉佳介、山田泰弘、二階堂遼馬デザイン:池田 梢 進行管理:茨木 裕

スプリントの業績改善は待ったなし。単独の米国攻略に打開策はあるのか撮影:梅谷秀司

11/15号_巻頭P1-2

0

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▲2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

(注)会社公表資料を基に本誌作成。2014年度は会社予想

(兆円) (億円)

2000年度

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14(予)

売上高(左目盛)

営業利益(右目盛)

営業利益の悪化は「12期ぶり」 ─ソフトバンクの業績─

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特集/中国暗転 第1特集

542014.11.15 週刊東洋経済55 週刊東洋経済 2014.11.15

月10日から北京で開かれるA

PEC(アジア太平洋経済協

力会議)首脳会議で、安倍晋三首相

と中国の習近平国家主席が久々に顔

を合わせる。2011年の野田佳彦

訪中以来止まっていた首脳外交の再

開への期待が高まっている。

 だが、正式な首脳会談が実現して

も、日本企業の行動に与える影響は

限定的だろう。このところ、日本企

業には対中投資を控えてインドネシ

アやタイへの投資を優先する傾向が

顕著だが、その主たる理由は日中関

係の悪化ではない。賃金上昇や人民

元高などで中国での生産コストが高

まってきたことが本質だ。

 中国の生産年齢人口は15年にピー

クを迎える見通しだ。豊富な労働力

を安く提供するという発展モデルは

維持できない。固定資産投資に依存

した成長にも限界がある。輸出の伸

びもそう期待できない。

 内需を拡大するために、中国が国

民の購買力引き上げに動くのは自然

なことだ。労働集約型産業の競争力

は下がるが、中国の「市場」としての

魅力を高めることになる。

 だが、30年にわたり平均10%以上

の成長を続けてきた中国社会は急に

は変われない。そこでスタートした

のが習主席による「虎(巨悪)もハ

エ(小物)もたたく」大々的な反腐

敗キャンペーンだ。その狙いは、国

民の意識を根底から変えることでは

ないか。

 効率度外視で大規模プロジェクト

を推進し、成長率をカサ上げする余

裕はもうない。続々と続く党幹部の

粛正は、政治権力と結び付くのが儲

けの早道だった時代の幕引きを内外

に宣言するものだ。一方で政府がら

みの消費が萎縮したことも響いたの

か、足元では住宅や自動車の販売が

急減速。景気が想定以上に後退する

懸念も浮上している。

 環境汚染から労務対策まで、中国

ビジネスのリスクは数え切れない。

それでも多くの企業が中国を目指し

たのは、リスクを上回るだけのリタ

ーンが期待できたからだ。成長鈍化

でリターンが縮小していくとすれ

ば、あらためてリスクを吟味しなけ

れば中国での事業は続けられない。

 暗転する風景の中に光を求めるな

ら、中国政府がさまざまな分野でル

ール整備に本腰を入れ始めたことだ

ろう。これが事業リスクの軽減につ

ながるのかを注視する必要がある。

また、高齢化など中国社会が抱える

問題は日本企業にとって商機になり

うる。ステレオタイプの中国像を捨

てなければ、目下の巨大な変化は読

み取れないと心したい。

11

腐敗幹部を追い詰める習近平政権の「虎退治」は経済

構造改革と表裏一体だが、副作用が強く景気の急減速

が懸念されている。今、日本企業は何をなすべきか。

本誌:西村豪太、杉本りうこ、秦

卓弥、田嶌ななみ、

山田雄大、福田恵介、長谷川

デザイン:川邊玲奈 進行管理:富久田朋子 中

暗転

高成長の終わりと日本企業の商機

減少する収益機会

リスクは減らせるか

ロイター/アフロ

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成長鈍化で

中国が揺らぐ

習近平の経済「新常態」

特集/中国暗転

57 週刊東洋経済 2014.11.15 562014.11.15 週刊東洋経済

近平政権の経済運営は﹁新常

態︵ニューノーマル︶﹂とい

う言葉に集約される。無理な成長は

求めず、過剰投資によって膨らんだ

バランスシートや産業構造の歪みの

是正を優先するという方針だ。30年

にわたって平均10%以上の成長に慣

れてきた中国社会に、高成長時代と

の決別を突き付ける。

 だが、社会主義市場経済という仕

組みは厄介だ。地方指導者は成長率

を上げたいばかりに、不動産開発に

血道を上げる。特権にあぐらをかく

国有企業は民営企業が育つチャンス

を奪う。地方の勝手を止めるために

は法の整備も不可欠だ。鉄鋼やセメ

ントの過剰生産のはけ口を海外に求

める必要もある。こうした矛盾は根

底ですべて複雑に絡み合っている。

一気に掃除する役回りの習国家主席

は、その重責を果たしうるか。

国の統計は信頼できない。頼

りにできるのは電力消費量、

鉄道輸送量、銀行融資の増加率だけ

だ││。内部告発サイトのウィキリ

ークスで暴露された李克強首相の言

葉だ。李氏が遼寧省党書記だった2

007年、米国の駐中国大使にそう

語ったとされている。

 7年を経て、今や経済政策の司令

塔の役割を担う李首相は、9月に天

津で開かれた夏季ダボス会議で自ら

これらのデータに触れてみせた。曰い

く、﹁7、8月の電力消費量、貨物

運送量などの変化は国際的な注目を

集めているが、まだ合理的な範囲に

あると見ている﹂。

 三つの指標の中でも、大きな変化

を見せたのは電力消費量と鉄道輸送

量だ。8月には共に前年比マイナス

になった︵左図︶。実体経済はかな

り悪いのではないかと判断するのに

十分な数値だが、李首相はこれに先

手を打った。﹁中国政府が最も重視

しているのは雇用だ。8月時点で新

規雇用者の増加数は︵通年目標の︶

1000万人に近づいている﹂。そ

のうえで﹁成長率が7・5%前後を

維持していれば、多少高かろうが低

かろうが合理的といえる﹂。

 

今年の実質GDP︵国内総生産︶

成長率は﹁7・5%前後﹂が目標だ。

10月21日に発表された今年7~9月

期の成長率は前年同期比で7・3%

だった。1~3月期の7・4%、4

~6月期の7・5%を下回り、通年

目標の達成には黄信号が灯った。

をうたってその引き下げを図ってき

たが、リーマンショック直後に総額

4兆元の景気刺激策を発動したこと

で帳消しとなった。09年には9・

2%の成長率のうち投資の寄与度が

8・1㌽に及んだ。

 地方政府指導者の実績作りのため

に成長率を引き上げるには、不動産

開発への投資が手っ取り早い。融資

プラットフォーム︵融資平台︶とい

われる資金調達機関を通じてカネを

集め、不動産開発プロジェクトに投

じる行為が横行。銀行を経由しない

資金調達、いわゆるシャドーバンキ

ング︵影の銀行︶を通じた地方債務

の膨張を許すこととなった。昨年6

月末時点で地方政府の債務と偶発債

務の合計は累計17・9兆元に及び、

GDPの34・4%に相当する。

 

中央はこれに歯止めをかけたい

が、地方政府の行動はそう簡単には

変わらない。地方政府の野放図な投

資にタガをはめるため、10月に中央

政府は地方政府の債務に規律をもた

らすための通達を出した。これ以上

債務を増やさないという原則の下、

融資平台を通じた借り入れは禁止さ

れる。今後の地方政府の資金需要に

は、地方債の発行と民間資金を活用

する官民連携︵PPP︶で対応する

こととされた。地方債発行の認可な

どを通じて地方政府の投資が制約さ

れれば、中国経済のあり方を大きく

 発表時に、国家統計局の報道官は

新規雇用者の増加数は9月末までに

1000万を超えたと述べた。これ

は、大規模な景気刺激策を求める勢

力を牽制するためのメッセージと見

ていいだろう。昨年10月に李首相は

失業率を上げないために必要とされ

る1000万人の雇用創出に必要な

水準として﹁7・2%﹂に言及して

いる。

 かつては失業率を上げないために

8%の成長率維持が必要だとされて

いた。だが、現在は雇用吸収力の大

きい第3次産業のウエートが高まっ

たため、7・2%で十分だというの

が李首相の見解だ。そのため、14年

の成長率目標はこの水準まで下げら

れるとの見方もあった。

 中国経済は投資への依存度が高い

のが特徴だ。胡錦濤政権は内需拡大

変えるインパクトを持つ。

 投資を抑制する一方で、今後の成

長維持には消費テコ入れがカギとな

る。そのためには、1人当たり所得

の引き上げが重要だ。都市部では最

低賃金の引き上げが継続的になされ

ているが、足元ではそれ以上に農村

住民の可処分所得の伸びが高い。

 農村への補助金はかなり手厚くな

Part1

1115号_1特_中国 p3-4

▲10

▲5

0

5

10

15(前年比、%)

(出所)中国国家統計局、国家能源局

鉄道輸送量

電力消費量

経済実態を表す指標は低空飛行

2013年 149月 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9

経済政策

過剰投資抑制に全力

習近平 5つの試練

李克強首相は新規雇用創出の実績を強調する

ロイター/アフロ

「下振れ」への許容度が高まっている ─経済成長率をめぐる李克強首相の発言─昨年10月21日

年間1000万人の新規雇用を創出するには7.2%以上の経済成長が必要だ6月18日 経済成長率は7.5%を下回らず、十分な雇用増加を保証する8月8日 「新常態」の下、これまでのように(速度に)執着はせず、発展の質を重視する9月10日 成長率が7.5%前後を維持していれば、多少高かろうが低かろうが合理的といえる10月11日 0コンマ数ポイントの上下はあっても、「7.5%前後」の範囲に属する

消費のテコ入れへ

所得の引き上げ