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タンザニア研修報告書 2016.10 種の保存展示課 長尾充徳,安井早紀 2016 9 21 日~30 日の 10 日間以下の通り,タンザニアのゴンベ・ストリーム国 公園とセルー動物保護区にて,野生動物および生息環境の視察を行ったので報告する。 1.参加者 甲田彰(宝塚市) 甲田真佐枝(宝塚市) 近藤祐治(名古屋市東山動物園) 中村直嗣(名古屋市東山動物園) 橋本直子(京都大学霊長類研究所) 川口ゆり(京都大学霊長類研究所) Liesbeth FRIAS(京都大学霊長類研究所) Gao JIE(京都大学霊長類研究所) 田中ちぐさ(日本モンキーセンター) 荒木謙太(日本モンキーセンター) 長尾充徳(京都市動物園) 安井早紀(京都市動物園) 12 名※敬称略 同行者:座馬耕一郎(京都大学アジア・アフリカ研究センター) 2.日程 9 21 日(水)第1日目 2100 関西空港4階 エミレーツ航空前集合 搭乗手続き 2340 エミレーツ航空 EK317 便にてドバイへ向け出発(所要時間:10 時間 10 分) 9 22 日(木)第2日目 450 ドバイ到着 乗り換え 1040 EK725 便にてダルエスサラームへ向け出発(所要時間:5 時間 25 分) 1505 ダルエスサラーム着 入国審査・通関後到着出口へ 1900 オリエンテーション カリブ(歓迎)夕食会 9 23 日(金)第3日目

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タンザニア研修報告書 2016.10

種の保存展示課 長尾充徳,安井早紀 2016 年 9 月 21 日~30 日の 10 日間以下の通り,タンザニアのゴンベ・ストリーム国

立 公園とセルー動物保護区にて,野生動物および生息環境の視察を行ったので報告する。 1.参加者 甲田彰(宝塚市) 甲田真佐枝(宝塚市) 近藤祐治(名古屋市東山動物園) 中村直嗣(名古屋市東山動物園) 橋本直子(京都大学霊長類研究所) 川口ゆり(京都大学霊長類研究所) Liesbeth FRIAS(京都大学霊長類研究所) Gao JIE(京都大学霊長類研究所) 田中ちぐさ(日本モンキーセンター) 荒木謙太(日本モンキーセンター) 長尾充徳(京都市動物園) 安井早紀(京都市動物園) 計 12 名※敬称略 同行者:座馬耕一郎(京都大学アジア・アフリカ研究センター) 2.日程 9 月 21 日(水)第1日目 21:00 関西空港4階 エミレーツ航空前集合 搭乗手続き 23:40 エミレーツ航空 EK317 便にてドバイへ向け出発(所要時間:10 時間 10 分) 9 月 22 日(木)第2日目 4:50 ドバイ到着 乗り換え

10:40 EK725 便にてダルエスサラームへ向け出発(所要時間:5 時間 25 分) 15:05 ダルエスサラーム着 入国審査・通関後到着出口へ 19:00 オリエンテーション カリブ(歓迎)夕食会 9 月 23 日(金)第3日目

7:00 ホテル発 空港へ送迎 9:50 プレシージョン PW486 便にてダルエスサラーム発

13:15 キゴマ着 14:00 Lake Tanganyika Hotel にて昼食 16:00 ボートにてキゴマ発 18:00 ゴンベ着 9 月 24 日(土)第4日目 8:50 チンパンジー・トレッキング

12:30 カコンべ滝訪問 14:00 Jane Goodall の feeding spot 訪問 14:30 宿泊施設に戻る 9 月 25 日(日)第5日目 8:15 チンパンジー・トレッキング

14:00 ゴンベ発 ボートにてキゴマへ 16:30 キゴマ着 9 月 26 日(月)第6日目 午前 市内観光 13:45 PW487 便にてキゴマ発 ダルエスサラームへ 16:35 ダルエスサラーム着 9 月 27 日(火)第7日目 6:00 ホテル発 空港へ 7:30 空港着 8:30 コースタル航空にてダルエスサラーム発 セルーへ 9:15 セルー到着 キャンプにチェックイン&昼食

10:30 ボートサファリ 13:00 キャンプに戻り,昼食 16:00 ゲームドライブ 18:00 キャンプに戻る 9 月 28 日(水)第8日目 6:30 ウォーキングサファリ 9:00 キャンプに戻り,朝食

10:30 ゲームドライブ 12:50 コースタル航空にてセルー発 ダルエスサラームへ 13:50 ダルエスサラーム着 ホテルへ 16:00 ダルエスサラーム市内観光 19:00 クワヘリ(さよなら)夕食会 9 月 29 日(木)第9日目 8:30 チェックアウト後,ホテル出発 9:30 ダルエスサラーム市内観光 ティンガティンガ村、スリップウェイで買い物など

12:00 空港へ 16:45 EK726 便にてダルエスサラーム発 空路ドバイへ(所要時間:5 時間 35 分) 23:20 ドバイ到着 乗り換え 9 月 30 日(金)第10日目 3:00 EK316 便にてドバイ発 関西空港へ(9 時間 10 分)

17:10 関西空港着 入国審査・通関後到着ロビーへ 解散 ※時刻はすべて現地時間。(日本との時差は UAE で-5 時間,タンザニアは-6 時間) 3.訪問地

ゴンベ・ストリーム国立公園 タンガニーカ湖の北側の湖畔にある,広さ 52 ㎞ 2,タンザニア最小の国立公園。1960 年

に動物行動学者のジェーン・グドールが,野生チンパンジーの研究を始めた地として有名。

セルー野生動物保護区

ゴンベ・ストリーム国立公園

北部に 40 頭,中央部に 50 頭,南部に 17 頭のチンパンジーの集団が生息しており,中央部

の集団のみ餌付けされていて,観察が可能となっている。ジェーン・グドールが調査によ

く使用していた場所であるジェーンズ・ピーク,チンパンジーの餌付けを行っていた小屋,

カコンベ滝などが観光スポットとなっている。チンパンジーのほかにも,アカコロブス,

アカオザル,ブルーモンキー,アフリカタテガミヤマアラシ,センザンコウ,アルマジロ,

シベットなどの哺乳類が生息する。 ☆今回観察したチンパンジー 9 月 24 日(土) 7:50~8:50 宿泊施設の前のマンゴーの木にマンゴーを食べに来たところを観察。 SAMPSONI(♂) FANSTINO(♂) 10:30~11:30 森の中で,休憩しているところを観察。

9 月 25 日(日) 9:10~12:10 (途中,観察できない時間を含む) 移動し,高い木の上で休憩した後,アリ釣りを行う GOLDEN と GLAMER,さらにアリ塚 に現れた ELIZA と ESPERANZA を観察。 GOLDEN(♀) ELIZA(♀) | | GLAMMER ESPERANZA セルー野生動物保護区 タンザニア南西部にある,面積 50000 ㎢を誇るタンザニア最大の保護区。1905 年に狩猟

用の保護区として設立され,1982 年には世界遺産に登録されている。保護区内にはルフィ

ジ川が流れ,その北部に観光用のキャンプやロッジが点在する。保護区のほとんどは狩猟

が許可された区域で,ごく一部が観光客に開かれている。

GREMLIN(♀)

GAIA(♀)

GOOGLE(♂,5歳) GABO(♀,1歳)

GIMRI(♂) GRAND(♂,8カ月)

4.所感 まず,ゴンベでのチンパンジーの観察についてだが,幸いなことに 2 日間とも近距離で

観察を行うことができた。1 日目は,出発前にオトナオス 2 頭が宿泊施設の前のマンゴーの

木に食事にやって来た場面とトレッキング中に出会った,オトナメスとその子ども達の計 6頭の休息時の観察であった。

2 頭のオトナオスは,アヌビスヒヒが前日からよく上って採食していた同じ木に登り,そ

れほど熟していない果実を食べていた。アヌビスヒヒはチンパンジーの採食しているすぐ

側までは行くことはなく,チンパンジーが去った後に上って採食していた。チンパンジー

がアヌビスヒヒを食べたとは聞いたことはないが,アカコロブスなどを群れで狩りをし,

捕食することが頻繁に目撃されているため,チンパンジーから少し距離を置き,餌などに

よるトラブルを避けているようにも見えた。休息時間の観察では,母子や母意外の個体と

子どもとの関係を観察でき,当園でのコイコ,ニイニ母子或いはローラ,ニイニとの関係

性を見ている時と全く同じような感覚にとらわれた。母親は子どもが少し離れた場所まで

行ってしまうと心配そうに長時間子供を目で追っており,母子関係の深さが見て取れ,子

どもと他個体の関係では遊びの場面で年長の個体が片手しか使わずにもみ合ってじゃれる

場面もあり,セルフ・ハンディキャップなども確認できた。2 日目は,母子 2 頭の移動を追

跡し,その親子関係などを見ることができた。移動は母親が先行して子どもが付いていく

という感じであった。移動時には母子ともに横の枝よりも縦の幹や弦などをよく使用して

おり,子どもは隣の木の枝に飛びつくなどの移動も頻繁に見られた。2010 年にガボン共和

国を訪れ,野生ニシゴリラの観察を行って,その樹上性の高さに驚き,現在の「ゴリラの

おうち」の建設にその観察が役立ったが,今回チンパンジーの移動を観察することにより,

不安定な枝や弦を巧みに利用しての移動を目の当たりにして,新しくチンパンジーの施設

を建設する際にゴリラとの移動の比較を見せる事へのヒントとなった。また,ベッドも何

か所か確認でき,次の施設にはこのベッドの解説や体験的なものができるのではないかと

感じた。ガボンの森でも全く同じことを感じたが,動物園ではチンパンジーの獣舎にはチ

ンパンジーの展示や解説しかないのが現状であるが,チンパンジーの生活する森には他の

霊長類もいれば草食動物や肉食動物など他種多様な生き物たちが暮らしている。それらの

中のチンパンジーとしての展示ができないものかとこれから考えていこうと思う。また,2日目は移動の観察の後,幸運なことにシロアリ釣りをしている場面に遭遇した。同行して

頂いたチンパンジーを研究している京都大学の座馬氏もしっかりと観察したのは初めてと

のことで,約 1 時間その場面をじっくりとみることができた。今までアリ釣りは,餌を手

に入れるための一手段と考えていたが,じっくりと観察するとその考えが一変した。アリ

釣りを行っている個体の手や地面には数匹のアリが歩いており,わざわざ穴から釣り出さ

ずとも手に入れることができる状況だった。「ゴリラのおうち」で数字のお勉強をしている

ゲンタロウを見ている時と同じで,始めはアリを捕るための手段だったのかもしれないが,

段々と手段の方が目的となり,捕れた時の達成感に繋がっているのではないかと感じた。

ゲンタロウも一生懸命数字の配列の勉強を行っているが,決して強制されたわけでもなく,

そこから与えられる餌を摂取しなくても良いはずなのだが,自分の中に餌以上の心を満た

す何かがあるように思えてならない。今回のアリ釣りも同じような思いがチンパンジーの

中にあり,長時間アリ釣りを行い続けていたように思われる。動物園でエンリッチメント

としてアリ釣りを取り入れる場合は,物理的な満足感よりも,この「達成感」や「楽しみ」

というような精神的な満足感を与える努力をすることへの必要性を強く感じた。 セルー動物保護区では,多数の草食獣や鳥類を観察し,ライオンが樹上で休息する場面

も見ることができた。特に複数のカバが川の中に暮らしている場面は,動物園では観るこ

とのできないため,カバは群れで生活しているということを改めて思い知らされた。当園

の施設では,施設の関係から 1 頭しか飼育管理できないが,カバは複数で生活していると

いうことを来園者に知ってもらえる工夫が必要なのではないかと感じた。インパラやイボ

イノシシの子どもが慌てて逃げる場面では,被捕食者として常に周りに気を配りながら暮

らしている群れの中で,まずは危険を誰よりも早く察知することが自分の命を守る一番の

手段であるということを痛感した。 今回,タンザニアのエコツーリズムというものを体験したのであるが,ガイドの方々が,

自国の動物を誇りとし外国からの来訪者に動物や植物,タンザニアの自然について,実に

深いところまで自信をもって解説をしていたことが驚きと共に感動した。以前訪れたガボ

ン共和国では,まだエコツーリズムがスタートしていなかったというところを差し引いて

も,ここまで自国のことに誇りを持っているという印象は受けなかった。ガボンでのエコ

ツーリズムをスタートさせようと努力されていた京都大学の山極教授(現京都大学総長)

によると,ガボンはフランスの植民地として支配されており,それまでのガボンの文化や

誇りなどを根こそぎ奪われてしまっていて,国民が自国に誇りや愛国の精神が薄いという

ことを伺った。首都のリーブルビル周辺こそ近代的なビル群が見られ,子どもたちが十分

な教育を受ける環境が整っていたが,ゴリラを観察した村などは学校もなく,子ども達が

教育を受ける施設すら整っていなかった。しかし,今回訪れたタンザニアはイギリスの植

民地として同じように支配されていたものの,その国民の誇りや文化までは奪わなかった

ように感じた。町や保護区などで出会った人々は明るく,自国に対する誇りを失っていな

い印象を受けた。タンザニアの人々は都会でも田舎の村でも親御さんたちは非常に教育熱

心だという話を伺った。支配をうけた国の違いも根本にはあると思うが,次世代を担って

ゆく子供たちへの教育について熱心であるかどうかということは,その国民性にも大きな

影響を与えるのだということも今回の研修で痛感した。 今回の研修で,チンパンジーの飼育展示のヒントを得ることができ,群れ動物の飼育展

示の方法を検討することを再確認し,教育の大切さを痛感できたことを自分自身の中で咀

嚼し,今後来園者や市民の方への還元に役立てていきたいと考えている。 (長尾)

ゴンベでは,観察を行った 2 日間とも,とても近い距離でチンパンジーを観察すること

ができた。トレッキングに出発する前に,宿泊施設の前にやってきたオス 2 頭を除けば,

今回観察したのは,主に母子を中心とした,オトナメスと若いコドモたちだった。1 日目に

観察したグループでは,1 歳のコドモが,同年代または少し年上の個体と遊ぶ様子や,母親

に甘える様子などを観察することができ,複雑な社会を形成するチンパンジーのコドモが,

小さい頃に,母親だけでなく身近にいる様々な年齢の個体と接することの重要性を改めて

感じた。2 日目には,親子のチンパンジーがアリ釣りをする様子を観察することができた。

母親の GOLDEN は,枝をアリの巣に差し込んで抜いた時に,枝についたシロアリの数が

少ないと,食べずに指で枝から取ってしまい,たくさん枝についていたときは枝をそのま

ま口に持っていって,シロアリを食べていた。手にもシロアリがたくさんついており,巣

穴の周辺にも歩き回っているシロアリもたくさん見えているのだが,GOLDEN はそれらに

は見向きもせず,せっせと巣穴に枝を入れていた。今回のアリ釣りの様子を見るまで,チ

ンパンジーのアリ釣りという行動は知っていたが,ただチンパンジーがアリを食べるため

に道具を使って捕るというだけのものだと思っていた。しかし,彼らはシロアリが食べた

いという欲求だけでアリ釣りをしているのではなく,枝を使ってアリを釣るということ自

体を楽しんでいる可能性があるということを知り,これまで以上に興味深い行動だと感じ

た。このような,様々な年齢の個体間での社会行動や高度な知能を要する行動の重要性や

魅力は,チンパンジーに限らず,社会性を持っていたり,高い知能を持っていたりするど

の種にもあてはまることであり,動物園においても来園者にこのような姿をたくさん見て

頂けたり,知って頂けるようにしていきたいと思った。 訪問時,タンザニアは乾季の終わりにあたるということだったが,ゴンベは想像以上に

葉のついた木なども多く,サバンナの乾季のイメージとはかなり違っていた。森の中には,

至る所に植物のツルが垂れ下がっており,特に若いチンパンジーたちはかなり細いツルに

も平気でぶら下がって遊んだり,移動したりしていた。ツルにぶら下がりながらじゃれあ

うコドモの姿は,飼育下でも再現できれば魅力的だと思った。トレッキング中には,チン

パンジーのベッドも,いくつか見つけることができた。チンパンジーが野生では自分でベ

ッドを作って眠るということも,一般的にはあまり知られていないと思われるため,展示

などで伝える工夫ができたら面白いと感じた。 また,トレッキングの際に同行してくれた,ゴンベ周辺の地域出身のガイドの方たちは,

流暢な英語を話し,チンパンジーや彼らが生息する環境,その土地の歴史に関する様々な

知識を非常に熱心に話してくれた。これは,現地の人が自分たちの住んでいる地域の動物

についての知識がなかったり,それらを外国人観光客に伝える能力がなかったりする現状

を,他の地域で見てきた経験のある私にとっては,とても印象的だった。現地に住んでい

る人々が,自分たちの住む場所について知り,海外からの観光客に説明ができることは,

エコツーリズムの形として理想的だと思われるが,これも 1960 年からジェーン・グドール

が長期にわたって調査を行いながら現地の人々と関わってきた成果の一つなのかもしれな

いと思った。 セルー動物保護区では,カバやキリン,インパラ,イボイノシシなどを頻繁に見ること

ができた。中でも,カバが群れで生活する様子は,渡航前から見るのを楽しみにしていた

ので,たくさん見ることができて嬉しかった。さらに,動物園ではほとんど聞くことのな

いカバの鳴き声も頻繁に聞くことができた。また,帰る間際には,6頭のライオンの集団

を近距離でゆっくり観察することができた。母親と,そのコドモたちという集団構成だっ

たが,コドモたちが木の上で休み始め,その後母親が先導して順番に移動を始めるという,

動物園ではなかなか見られないようなライオンの姿を目撃することができた。このような

動物園では再現の難しい野生の姿も,きちんと伝えていく工夫をしていきたいと感じた。 今回,最も意外だったのは,アフリカゾウを見られたのが,ボートサファリの際,たま

たま 5 頭の群れが川に水を飲みに来た数分間だけで,ゲームドライブでは 1 頭も見かけな

かったことだった。セルーでは,数年前までの密猟がかなり激しく,ゾウたちが,昼間は

谷に隠れて夜間に活動する,または密猟者から守ってくれる,レンジャーたちのいるヘッ

ドクォーター近辺で生活する,というように行動を変えてしまっているそうである。密猟

者たちは,ヘリコプターで上空からゾウの背中を撃って殺し,象牙を取るそうだ。アフリ

カでは,象牙目的のゾウの密猟が後を絶たないという話は以前から知っていたが,ゾウた

ちの行動を変えるほどの影響を与えていることにとても驚いた。このように,人間のせい

で数を減らしたり,行動を変えてしまっている種は他にも数え切れないほどいるはずであ

る。現在飼育している動物の中にも多くの絶滅危惧種がいるので,動物園にいる個体を通

して,彼らの生息地での現状を来園者に伝えていくことも,今後,力をいれていかなけれ

ばならないと感じた。短時間の観察ではあったが,まだお乳を飲む子のいる母親ゾウの張

った乳房や,茂みの奥の何かに驚いて群れ全体が警戒する行動をとる様子,その際にリー

ダーのメスゾウの側頭腺から分泌物が出ていることなど,これまで飼育下でしか見たこと

のなかった様々なものを野生でも見ることができ,非常に貴重な経験となった。 セルーは,乾季のイメージ通り,葉のついた木は少なく,かなり乾燥した印象のある場

所がほとんどだった。それでも川の周辺には緑があり,川辺でカバが草を食む様子も見ら

れた。川の周辺にはハチクイやカワセミなどの鳥も多く,狭い範囲に多くの動物種が生息

していた。さらに川辺でゾウやキリンなどの大型哺乳類も観察することができ,乾季の動

物たちにとっての,川の重要性を実感することができた。 今回の研修では,以上のように,様々な動物の野生での姿や行動,そして彼らの生息環

境を見ることができた。この経験を生かして,今後,飼育している動物たちの魅力が伝わ

るような展示やガイドを目指し,生息地での動物たちの現状を伝える努力をしていきたい。 (安井)

ゴンベ・ストリーム国立公園 ヒガシチンパンジー (Pan troglodytes schweinfurthii)

マンゴーの実を食べるオス。

森の中や宿泊施設の前など,様々

な場所で見られた。

GREMLIN(左)をグルーミングする GAIA(右)。

GOOGLE(左)と遊ぶ GRAND(右)。

ツタや細い枝にぶら下がって遊ぶ GRAND と GABO。

アリ釣りをする GOLDEN(下)とGRAMMER(上)。

シロアリの巣穴に枝を入れるGOLDEN。

アカコロブス (Procolobus rufomitratus) アヌビスヒヒ(Papio anubis)

頭が赤いのが特徴。

木の上に作られたチンパンジーのベッド。

発情してお尻の腫れたメス。

距離を置いてこちらの様子を伺うELIZA(左)と ESPERANZA(右)。

チンパンジーが食べた,マブンゴの実。

セルー動物保護区

アカオザル(Cercopithecus ascanius)と

ブルーモンキー(Cercopithecus mitis)の交雑個体

アカオザルは尾が全て赤いが,この個体は根元部分が赤くない。

ハジロハクセキレイ (Motacilla aguimp)

チャムネハチクイ (Merops oreobates)

アラレチョウ (Hypargos niveoguttatus)

マサイキリン(Giraffa camelopardalis tippelskirchi) イボイノシシ(Phacochoerus africanus)

体の模様には,かなり個体差があった。

オスは闘争により,角の先の毛が抜けている。

前肢を折り曲げて,土の中の虫を食べる。

ゴンベから望むタンガニーカ湖。 観光地となっているカゴンベ滝。 森の中に生息するアブラヤシについて説明をする現地ガイド。

インパラ(Aepyceros melampus) カバ(Hippopotamus amphibius)

オスの個体。ハーレム型の群れを形成する。

ルフィジ川では,10~20 頭ほどの集団が多く見られた。

陸地に上がって草を食んでいる。

サバンナゾウ(Loxodonta africana)

ルフィジ川に出てきた 5 頭の群れ。

警戒の姿勢を取るリーダーと思われるメス。側頭腺分泌が見られる。

コモンウォーターバック(Kobus ellipsiprymnus ellipsiprymnus)

オグロヌー (Connochaetes taurinus)

グラントシマウマ (Equus quagga boehmi) African tree squirrel の一種

ケニアクーズー(Tragelaphus strepsiceros bea)

お尻の白い模様が特徴。メスの個体。

メスの個体。 オスの個体。

シママングース(Mungos mungo)

マサイライオン (Panthera leo massaieus)

木の上で休む若いライオンたち。 若いライオンたちのいる木のそばで休む,彼らの母親。

キャンプの周りで見かけることが多かった。

チャガシラハネナガインコ(Poicephalus cryptoxanthus)

ヒガシキバラカエデチョウ(♀) (Estrilda quartinia)

オリーブタイヨウチョウ (Nectarinia olivacea)

ハリオツバメ (Hirundo smithii)

ヒメハチクイ (Merops pusillus)

キタベニハチクイ (Merops nubicus)

シロビタイハチクイ (Merops bullockoides)

シロガシラトサカゲリ (Vanellus albiceps) ナイルワニ (Crocodylus niloticus)

ベルベットモンキー (Chlorocebus aethiops)

アフリカハサミアジサシ (Rynchops flavirostris)

コアオアシシギ (Tringa stagnatilis)

エジプトガン (Alopochen aegyptiaca)

アフリカヒヨドリ (Pycnonotus barbatus)

サンショクウミワシ (Haliaeetus vocifer)

ミミヒダハゲワシ (Torgos tracheliotos)

マミジロスズメハタオリ (Plocepasser mahali)

コガネハタオリ(♂) (Ploceus subasureus)

木の枝に作られたハタオリの巣。

オニアオサギ (Ardea goliath) ヒメヤマセミ (Ceryle rudis) オオヤマセミ(♂)

(Megaceryle maxima)

ホロホロチョウ (Numida meleagris)

ライラックニシブッポウソウ (Coracias caudatus)

死後 3 週間ほどたったメスキリンの死体。

アフリカンシベットの足跡。 インパラの糞。メスたちのあとにオスが最後に糞をする。

カンムリカワセミ (Alcedo cristata)

カンムリコサイチョウ (Tockus alboterminatus)

クロスキハシコウ (Anastomus lamelligerus)

アフリカブッポウソウ (Eurystomus glaucurus)