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Title 都市ごみ焼却炉の排ガス急冷法によるダイオキシン類の生成抑制に関する研究

Author(s) 久保田, 英士

Citation (2008-03-19)

Issue Date 2008-03-19

URL http://hdl.handle.net/10069/16310

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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都市ごみ焼却炉の排ガス急冷法による

ダイオキシン類の生成抑制に関する研究

2007年 12月

長 崎 大 学 大 学 院

生 産 科 学 研 究 科

久 保 田 英 士

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目次

記号

第 1章 序章

1.1まえがき

1.2現在までの研究の経緯

1.3本研究の目的及び構成

第 2章 排ガス中のダイオキシン類の生成速度に関する調査と解析

2.1Dicksonの実験

2.2 Altwickerの4段階生成説と実焼却炉

2.2.1Altwicker以前の研究要約

2.2.2PCDD/F生成モデル

2.2.3生成反応式の検討

2.2.4Altwickerの研究をベースとしたダイオキシン類生成速度の

計算式と計算例

2.3StanmoreとClunies-Rossの研究

2.3.1Stanmore等の研究の要約

2.3.2PCDD/生成モデル

2.3.3Stanmore等の不均一モデルについて

2.4ダイオキシン類生成論の比較検討のまとめ

3章 排ガス冷却に関する調査と解析

3.1スプレイ水の蒸発と伝熱機構

3.2水滴の蒸発温度と冷却速度の計算法

3.2.1小林の理論

3.2.2甲膝の理論

3.2.3水谷の理論

3.3スプレイ水滴噴射による高温ガス冷却速度の検討

3.3.1計算式と計算の手順

3.3.2各式の蒸発定数の比較検討とまとめ

3.4Joule-Thomson理論および断熱膨張による排ガス冷却

3.4.1まえがき

.3.4.2Joule-Thomson膨張効果を応用したガス(空気)の冷却について

3.4.3Joule-Thomson効果と逆転温度

3.4.4VanderWaalsの式とノズル空気比容積の計算

‥3.4.5VanderWaalsの状態式にガス(空気)温度の計算

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3.5可逆断熱膨張によるガス(空気)温度降下の検討

3.5.1可逆断熱膨張後のガス(空気)温度の検討

3.5.2可逆断熱膨張時の圧力変化によるガス(空気)温度降下計算

3.5.3可逆断熱膨張時の比容積Vの変化によるガス温度降下の計算

3.5.4可逆断熱膨張時の圧力微小変化によるガス温度降下の計算

3.5.5可逆断熱膨張変化によるガス(空気)温度降下の纏め

3.6各冷却法のまとめ

3.6.1Joule-Thomson効果の検討

3.6.2可逆断熱膨張によるガス温度の効果

3.6.3各冷却法の比較

第 4章 排ガス冷却によるダイオキシン類生成抑制論に関する理論の提莱

4.1排ガス中のフライアッシュの温度

4.2石炭粒子の高温ガスによる加熱と石炭粒子内の温度の上昇

4.3フライアッシュの化学的特性

4.4燃焼ガスの化学的特性

4.5まとめ

第 5章 プログラム作成前の手計算による予備検討

5.1計算モデルの設定

5.2計算条件

5.3スプレイ水注入後のスプレイ水滴平衡温度

5.4蒸発開始までの時間の計算

5.5蒸発開始後スプレイ水量の経時変化の計算例

5.6ガス冷却速度の計算結果のまとめ

第 6章 排ガス冷却法によるダイオキシン類生成抑制計算

6.1プログラムに関する計算式一覧及び入力データ

6.1.1計算式一覧

6.1.2スプレイ水量の計算条件

6.1.3スプレイ水温の上昇

6.1.4スプレイ水飽和温度到達後における水滴径

変化と蒸発量の計算

6.2プログラムチャート

6.3計算プログラムの入力値の設定

6.3.1計算モデル

6.3.2計算条件

‥6.3.3シミュレーションの入力値

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第 7章 ダイオキシン類生成抑制プログラムによるシミュレーション結果

7.1シミュレーション結果のまとめ

7.1.1Altwickerの場合

7.1.2Stanmoreの場合

7.2シミュレーション結果とその有効性

7.2.1シミュレーションによるダイオキシン類の生成の検討

7.2.2実焼却炉の公開ダイオキシン類計測値

7.3都市ごみ焼却炉運転指標(スプレイ水量、空気量、熱伝達率)

第 8章 結言

参考文献

謝辞

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記号

第2章

ダイオキシン類生成速度関係(固定値)

SurfaceCoverage ∂(有効反応サイ ト率) 0.00004

灰 1グラム当たりダイオキシン量 Ps(ngDXN/g-ash) 420000

ガス定数 R(J/kgK) 287.03

排ガス中の灰濃度 CasIl(g-ash/m3) 1.0

灰の密度 〟(kg/m3) 2000

灰の直径 da(m) 0.00000008

Strickingfactor α 5×10~8

HClの部分圧 p(pa) 24.6

ダイオキシン類生成速度(変数値)

ガス温度 Tat) 273+I(℃)

クー リングファクタ β(K/sec) シミュレーション結果より算出する

第 3章

小林の計算式(変数値)

伝熱量 ¢(J瓜)

ガス温度 ♂g(K)

水滴初期温度 ♂β(K)

水滴表面温度 ♂W(K)

水滴表面の熱伝達率 α (W/m2K)

水滴直径 d(m)

水滴蒸気の濃度 Caw(kg/m3)

ガス中の水蒸気濃度 Cag(kg/m3)

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甲藤の計算(蒸発量と蒸発速度) (変数値)

水蒸気ガス混合熱伝導率 A(W/mK)

水滴の半径 1-0(m )

蒸発量 〟(kg瓜)

蒸気の比熱 Cp1(J戊gK)

蒸気の拡散係数 D(m2m1)

液滴の表面温度 βW(K)

液滴より遠い所の温度 ♂ ∞(K)

水滴の密度 JO1(kg/m3)

水谷の計算式(蒸発開始までの時間及び蒸発量と蒸発速度)(変数値)

熱伝達率 α(W/m2K)

水滴直径 d(m)

ガス温度 tg(K)

水滴温度 tH(K)

水滴の比熱 Cpl(J瓜gK)

水滴密度 βノ(kg/m3)

水蒸気の平均比熱 Cpv,(J/KgK)

水滴温度境界層の平均熱伝導率 dg(W/mK)

水滴表面のガス熱伝導率 右(W/mK)

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第 1章 序章

1.1まえがき

日本 は昭和 58年愛媛 大学が焼却炉 の排 ガス中にダイオキシン類 が大量 に

生成 していることを計測発 表 したのを契機 として、その抑 制対策 を始 めた。その

後 、当時の厚 生省 は平成 2年 「ダイオキシン類発 生 防止ガイドライン」を定めて

規制 をはじめ、平成 9年 「大気汚染 防止 施 行令 」を改訂 し、更 に平成 11年 「ダ

イオキシン類特別措 置法」が成 立し、正式 にダイオキシン類 の法律 による規制 を

開始し、現在 にいたっている。

著者 は平成 7年から、技術 士として、ロータリ式産業廃棄物焼却炉 の計画 、設

計 、製 作を行 い、平成 10 年 に完成 したが、工事 契約 がダイオキシン類規制 の

法律施 行 前 に行 ったので、その法律 の適 用 は受 けなかった。その後 、平成 13

年 、同じく技術 士 として、ガス化 炉 式産 業廃 棄物 焼却 炉 の計画 、設 計 、製 作 、

性 能テスト及 びダイオキシン類 の抑 制 対策 を行 った。この焼 却炉 はダイオキシン

類抑 制 の法 規 制 を受 けたので法規 制 に従 って、計 画 .設 計 を実施 したが、ダイ

オキシン類 は規制値 に達しなかったので、種 々の対策 を平成 19年 2月まで行い

規制値 以 下となった。その理 由は排 ガスボイラ出 口から煙 突 出 口までに再合成

するダイオキシン類抑制対策 が充分でなかった事 による。

本 論 文 はこの焼 却 炉 の低 温 部 における、ダイオキシン類 再 合 成抑 制 に関する

研 究であり、社会的 に貢献する有用な研 究 と考えている。

1.2現在までの研 究の経緯

1.2.1長崎県 下のごみ焼 却炉 の実態調査

著者 は平成 9年 のダイオキシン類 生成 規 制 の法律制 定を受 け、今後の技術

士業務 を行 うためにはダイオキシン類 の抑 制 について研 究する必 要 を痛感 し、

平成 10年 には長崎 県下の焼却 炉 10プラントの実地調査研 究を行った。その

結果 、図 1-1 に示すような実焼却炉 のダイオキシン類 の分布状態が判 明し、こ

れを基本 として、現在まで、約 9年 間に亘 り、ダイオキシン類 生成抑制の研 究を

行 っ て い る。図 1-1 に於 い て 節 炭 器 出 口 ガ ス 中 で ダ イオ キ シ ン類

1.0(ngTEQ/m3N)が同温度 300℃で約 2秒後 に再合成 し6.6(ngTEQ/m3N)に増

加 している。この再合成 を抑制するためには 180℃以 下 に冷却する必要がある。

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灰ピット

図 1.1.150t/D都市ごみ焼却炉とダイオキシン類 「実測値」

①火炉出 口

②ボイラ出 口

③節炭器 出 口

④反応蒸発器

⑤電気集塵機

⑥煙突部 出 口

5.5(ngTEQ/m3N)

2.0(ngTEQ/m3N)

1.0(ngTEQ/m3N)

6.6(ngTEQ/m3N)

0.43(ngTEQ/m3N)

0.75(ngTEQ/m3N)

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800-900℃

300-500℃

300℃

300℃

200℃

180℃

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1.2.2ガス冷却 によるダイオキシン類の生成抑制

スプレイ水噴霧 により焼却炉排ガスを急冷しダイオキシン類 の生成抑制を研究

した論文を調査した。

OB.R.StanmoreandClunies-Ross[1]等 は医療廃棄物焼却炉の高温ガス部

に熱交換器を設置し、空気などを使用して、1100℃の排ガスを 400-225℃に急

冷して、ダイオキシン類量の減少量を計測し、coolingfactor βを定義し導入し

た。

β=払 (K/sec)t

このβの値は 130-350(K/sec)とした。又スプレイ水滴径 dsp=350〃mでガス冷

却したが、ダイオキシン類の抑制効果 については記載されていない。

○ガス加熱冷却 によるダイオキシン類の生成抑制

B.k.GullettandP.M.Lemieux:RoleofCombustionandSorbentParameter

inpreventionofPolychlorinatedDibenzo-pdioxinandPolychlorinated

DibenzofuranFormationduringWasteCombustion[2]

B.K.Gullett等 は特殊焼却炉のモデルを製作し、ダイオキシン類を表面に持っ

ているフライアッシュをテスト管に入れ、窒素ガスをバーナーで加熱したり、テスト

管を焼却炉の中に設 けた冷却された炉壁 にテスト管を配置したりして、テスト管

中のガスの加熱冷却を行い、ガス冷却速度(K/S)を任意 に設定し、ダイオキシン

類 量 の増 減 を調 査 し、温 度 効 果 を計 測 した 。 例 えば 40.3K/S滞 留 時 間

tr=1.7secで 8000ng/m3Nが、tr=3.5secで 7000ng/m3Nと下がっている。また滞

留 時 間 tr=2(S)場合 、冷 却 速度 18.1K/Sで 16000(ng/m3N)は 40.3K/Sで

7000(ng/m3N)となる。しかしスプレイ水噴射 による、ダイオキシン類 の生成 量抑

制の実験は行っていない。

以上の 2つの論文がスプレイ水噴射または熱交換器 によるガス冷却とダイオキ

シン類の生成量の変化及びクーリングファクターの影響を調査した論文である。

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1.2.3焼却炉排ガス中のダイオキシン類生成速度論

本研 究はダイオキシン類 の生成速度論 が基本 となっているので、関係する約 60

論文を基本事項から詳細 に検討した。それらの論文の中で本研究の目的である、

シミュレーション計算プログラムに組こんでいる文献について以下述べる。

OShaubandTsang:DioxinFormationinlncinerator[3]ダイオキシン類生成の

前駆体を仮 定し、あわせてそれ等の生成 速度を仮定して、シミュレーションを行い、

ダイオキシン類の生成量の計算を行ったのが、ダイオキシン類生成速度 に関する

最初の研究であると言ほれている。

OshaubandTsang:PhysicalandChemicalPropertyofDioxinsin

RelationoftheirDisposal[4]焼却炉 におけるPCDD生成分解又物理化学

的性質について、考えられる事柄 について記述している。平衡関係や化学的

的運動論 について、説明して今後の研究の指針を書いている。

OL.C.Dickson(博士論文):MechanizmofFormationofPolychlorinatedDibenzo

DioxinsDuringMunicipalRefuselncinerator[5]Dickson は日本及びカナダの

焼却炉から採取したフライアッシュとペンタクロロフェノールをテスト装置 に入れ

N2ガスを通過 させ、加熱して生成するダイオキシン量を計測して、ダイオキシン量

の生成速度を厳格 に求めた。

OM.S.Milligan and E.R.Altwicker: ChlorophenoI Reaction on Fly Ash

2.EquilibriumSurfaceCoverageandGlobalKinetick[6]クロロフェノール

の吸着性 について温度と濃度を関数として、フライアッシュについて計測した。

低温部吸着サイト数 は フライアッシュ1グラム当たり6×1018サイトであることが初め

て計測された。

OE.R.Altwicker,R.Kumar,N.V.Kondoriand M.S.Milligan:SpoutedBedfor

theStudyofHeterogenous:SpoutedBedCombusterfortheStudyof

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HeterogeneousHazardousWastelncinerator[7]

噴流式燃焼テスト炉で、ガス、液体、固体の廃棄物 の燃焼テストを行った。今回の

レポートではトルエン(toluen)を燃焼した場合 の物理化学的研 究結果 について述

べている。この研究の目的はトルエン分解 の効率とダイオキシンの生成率を測定す

ることである。

OE.R.Altwicker,R.Kumar,N.V.Konduri and M.S.Milligan: The Role of

PrecursorsinFormationofPolychloro-Dibenzo-DioxinsandPolychlorO

-DobenzofuransDuringHeterogeneousCombustion[8]

ダイオキシン類 は C.H.0とClが存在すれば、適 当な条件下で PCDD/Fが生成さ

れる。都市ごみ焼却炉に於いて PCDD/Fが生成される場合 、ダイオキシン類の生

成 速 度 及 び 生 成 温 度 は今 尚 不 明 の点 があるので、実 験 炉 (Spouted Bed

combustor)を作成して、トルエンを燃料として PCDD/F の生成実験を行った。更

に前躯体の持つエネルギの測定も行った。クロロベンゼンの燃 焼から-キサクロロ

ベンゼンやペンタクロロフェノールの生成 は 0.1sec以下であることが判明した。フラ

イアッシュ上で生成されるPCDD等はもっと長い時間で合成される。

OB.R.Stanmore、[9]ModelingtheformationofPCDD/PCDFinSolidWaste

lncinerators 都 市ごみと医療ごみの焼却 において、塩素と触媒 の金属の存在 に

より大量のダイオキシン類(PCDD/F)を生成している。PCDD/F は 600℃以上のガ

スや 400-225℃のフライアッシュ上で生成されている。これらのベースとなる前躯体

は既 にガス中に存在 している塩化物 と炭 素をベースとして新しく生成される塩化

(DeNovo反応)等を包含して PCDDが生成される。この論文では、 都市ごみ焼却

におけるフライアッシュ上の DeNovo反応 と前躯体によるダイオキシン類の生成モ

デルとを併せた、経験的生成モデルを更に一般 的に発展させている。この経験的

生成モデルでは、PCDD生成速度式とPCDF生成速度式とは分離している。均一

相における PCDD の生成はクロロフェノールの濃度 によって制御される。又 PCDF

の生成 はクロロフェノールとクロロベンゼンによって制御される。これにより、ガスとフ

ライアッシュより生成されるダイオキシン量が区別される事 になった。更にガスダクト

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のガス冷却 により飛灰が冷却され、飛灰上の吸着を最小にして PCDD/Fの生成を

抑制で来る事 になる。そして飛灰の物性値 と焼却炉全体の温度とガス滞留時間が

判明すればダイオキシン類の生成量を知ることが出来る。

O B.R.Stanmore and Clunis-Ross,An EmpiricalModelforthe De Novo

FormationofPCDD/FinMedicalWastelncinerator[1]

10kg/h容量のテスト炉で医療廃棄物の燃焼テストを行い、PCDD/Fの生成 につい

て、900℃から 400-200℃の範 囲で急冷の効果 について研究した。この研 究結果

は寧ろ活性エネルギー(kineticenergy)によるダイオキシンの生成効果より、ガス相

の吸着作用 の方 が大きいことを示している。一般 に PCDD/F の生成 はガス相の

Hcl分子がフライアッシュの表面に拡散する事をベースとして、検討研究されている。

其の Hclがフライアッシュに衝突する量(HCl分子の衝突の回数として示される)を

strickingFactorαとして示されている。この論文の生成速度係数及び分解速度

係数は 400-200℃で有効である。またαの値 は後流(wetscrubber)では(4-5)×

10~8でありガス相の活性炭などでは(1-3)×10~9と減少した。

OClunies-Ross(博士論文):MinimisingDioxinsEmissionFromBiomedical

wastelncinerators[10]

排ガス中の SO2ガスのインヒビターとしての効果を調査のためテスト装置を作成して、

低温部 においては大きな効果があることを確認 した。

又焼却炉 出 口の高温部 に熱交換きを設置して、ガス急冷テストを行いダイオキシ

ン類を大幅に抑制した。またスプレイ水滴 dsp=40〃m でガスの急冷テストを行った。

更にHClによるStickingfactor αを使用して、ダイオキシン類生成式を誘導した。

○水谷幸夫 燃焼工学 (3版)[11]スプレイ水滴の加熱蒸発 について記述してい

る。蒸発理論 には Longwellの蒸発係数 が使用されている。この方法 により、スプ

レイ水滴のガス冷却のシミュレーションを行った。

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OKaiTupparainen工Halonen,P.Ruokojrarvi,JuhaniTarhanenandJ,Ruuskanen:

FormationofPCDDsandPCDFsinMunicipalWasteIncinerationandits

lnhibitationMecanizm:AReview Chemoapher,Vol.36.No.7pp1483-1511,

1998[12]

Kai等は現在までの PCDD/Fの生成 に関する研究論文(105論文)を検討して、こ

れらの生成及び生成速度論を纏めている。

O「現在までの研究の経緯」のまとめ

平成 10年長崎県下の 10焼却炉プラントの現地調査を行い、其の調査結果

(図 1-1)を基本として、平成 19年迄ダイオキシンシン類生成速度論とガス急冷法

について研 究し、ダイオキシン類抑制プログラムを作成し、焼却炉の運転データを

使用してシミュレーションを行い、公 開されたダイオキシン類計測値 に対し、有意な

結果を得る事が出来た。

1.3本研究の目的及び全文の構成

1.3.1研究の目的

著者 は平成 9年ダイオキシン類規制の法律制定をうけ、ダイオキシン類抑制方

法として、排ガス中にスプレイ水滴噴射 により、ダイオキシン類 の生成温度以 下ま

で急冷し、ダイオキシン類生成の抑制の研 究を平成 10年より現在まで行っている。

現在までは、焼却炉排ガス出 口に熱交換器 を設置し高温ガスを空気などで冷 却

して、排ガスの急冷でダイオキシン類 が抑制される実験がオーストラリアで実施され、

ダイオキシン類 の抑制の効果を計測している。しかしスプレイ水噴射 による計測レ

ポートはない。

著者 は実焼却炉の運転実績やスプレイ水噴射ノズルの調査などを行い、更 にダイ

オキシン類の生成速度論の調査を基本から行った。

更にスプレイ水の噴射及び伝熱論の調査研究を行い、これらのダイオキシン類の

生成速度論 と伝熱論を統合してダイオキシン類抑制計算プログラムを作成 し、実

焼却炉のシミュレーション解析を行い、ダイオキシン類生成抑制 に貢献することを

目的としている。

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1.3.2研究全文の構成

本論文第 2章以下の内容 について説明する。

2章 :本章はダイオキシン生成速度 に関する文献調査を基本から詳細 に行った。

ODicksonはペンタクロロフェノールとフライアッシュの表面を150-400℃に加熱しダ

イオキシン類 の生成量を実験により求めた。そして 250℃で最大のダイオキシン生

成量を得た。

OAltwicker等はDicksonなどの研究を基として、ダイオキシン類の 4段階生成説

を賓焼却炉 の運転データを検討 して、修正 を行った。著者 の論文のダイオキシン

類生成 に関する部分は主として、この研究結果 によっている。

OStanmore等は賛焼却炉を観察し排ガス中の塩酸分子がフライアッシュの表面

に存在する有機物質と反応しダイオキシン類が生成される DeNovo反応 によると

してダイオキシン類生成速度 式を誘導した。又焼却炉 の出 口に熱交換器を設置

してガスの急冷を行いダイオキシン類 の生成抑 制テストを実施した.又スプレイ水

噴射 によりガス温度を 150℃まで冷却した。(然しスプレイ水噴射 によるダイオキシン

類の抑制などに対する研 究はおこなっていない。従ってスプレイ水噴噴射 によるダ

イオキシン類抑制研究は著者の研 究が初めてとなる。)

第 3章 :排ガス冷却関する文献(小林、甲膝 、水谷)調査および Joule-Thomsonの

理論及び断熱膨張によるガス冷却 について研究を行った。

○小林 は油滴 の加熱蒸発の研究 において、蒸発開始直前までは油滴 は固体とし

て扱っている。蒸発後は蒸発定数 C。を定義して、実験 によりその定義が正しいこと

を証明し、水の場合も適用できることを証明している。

○甲膝 は水滴が静止空 中における加熱蒸発似ついて理論的 に解 明研 究してい

る。然し実験 による確認 は行っていないが、小林の実験を用いて証 明できるとして

いる。

○水谷 は油滴の蒸発 開始までは、油滴 は直径 、密度液温は一定とし、放射伝熱

はないとし、熱伝達(率)により加熱される。蒸発 開始後は油滴直径 の自乗 は蒸発

定数 Ceに比例して減少するとしている。此処 に用いられているCeは Longwellの

8

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理論式である。著者 は上記 3論文を検討したが、シミュレーションでは蒸発時間

は水谷の場合が短いが、蒸発 定数 がもっとも理論的 に求められている、水谷の

式を使用した。

OJoule-Thomson効果をVanderWaalsの式 に適用するとき、そのとき誘導され

る式を代数的に解 法し、入 口圧力 0.147MPa温度 473Kを与えて出 口温度を計

算すると十分 に低い温度 188Kが得られた。実用 には特殊設計のコンプレッサー

が必要である。

○断熱膨 張の場合 ,入 り口圧力を与えただちに大気圧迄冷却する場合,圧力変

化の場合分轄して大気圧 に降下する場合 、ガス比容積変化させる場合 に対し

て、検討したが出 口温度はダイオキシン類の抑制 に必要な温度まで降下してい

る。この場合も特殊設計のコンプレッサーが必要である。

ー第 4章 :排ガス中のフライアッシュの温度はガス温度と等しいとしているのでその

根拠 となる計算 法と、排ガスの化学的特性 について記し低空気率運転注を提

案した。

第 5章 :プログラム作成前の手計算 による予備検討

プログラム作成前 に計算モデル、計算条件 、スプレイ水量の計算、排ガス中のス

プレイ水 中の平衡温度 野計算 、蒸発 開始までの時 間、蒸発 開始後のスプレイ

水の蒸発時間を計算し、それらの妥 当性を確認した。

第 6章スプレイ水滴 による排ガス中のダイオキシン類の生成抑制 に関するプログ

ラム

○ダイオキシン類生成 については Altwicker、Stanmoreの式を使用した。又スプ

レイ水滴の加熱蒸発 についは水谷の式を採用し、Excelを用いて計算プログラ

ムを作成した。

○計算の対象となる冷却ダクトの長さは 10mであるが出 口ガス温度計算時に繰

返し計算を行なわずダクト長さを 100分割してシリーズに計算を行った。

9

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第 7章プログラム入力値 は都 市ごみ焼却炉 150t/dの運転データを検討して用

い、シュミレーション行い、その結果をまとめている。

OAltwickerの場合:ガス温度 とスプレイ水滴径を変化させて、シミュレーションを

行った結果 、図 7.1に示す通りダイオキシン類 の生成 量は中高の釣鐘状となり

約 350℃で最大となる。スプレイ水径が小さくなるほど、ダイオキシン類生成 量が

小さくなっている。又ダイオキシン類抑制率を導いている。

Ostanmoreの場合 :温度効果をクーリングファクターとして表現しいる。

○シミュレーションによって得たダイオキシン類 を公 開ダイオキシン値 と比較のた

め換算法を記した。

○シミュレーションにより、焼却炉の運転法の指針を示している。

第 2章 排ガス中のダイオキシン類 の生成速度 に関する調査 と解析

2.1Dicksonの実験 [5]

Dicksonは実験 に使 用した飛灰 の表面 に付着する有機 物を化学的 に除去した

後、実験装置 に挿入し純粋なN2ガスと13C-pentachlorophenolを飛灰表面を通

過させ、温度を 150-400℃と変化させて、ダイオキシン類の生成量を計測した。

Dicksonの実験装置(図2.2)と実測結果(図 2.3)に示す。

図 2-2Dicksonの実験装置

10

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4

G凹UnGOtldS出凹N凹

t)NOUZIXOIGh

OS}弓

tZf)OtIUt言

3

52

2

1

50

0

250C150C 300C 340C 400C

TEMPERATURE

Z Z 4CDD E ヨ 5CDD 匿 詔 6CDD 匿 国 7CDD 区ヨ 8CDD

図 2.3Dickson実験結果

図中の各縦軸は温度毎に生成するダイオキシンの種類別 に記されている。最高量

は250℃で4.1%であった。其の値 は400℃で0.1%に減少した。150℃ではオクタダイ

オキシンのみ生成した。200-300℃では塩化作用と脱塩化作用 が平衡 していると

考えられる。高温部ではダイオキシンの吸着 と蒸気状態が平衡し、ダイオキシンの

生成は減少すると考えられる。

iF!

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2.2Altwickerの 4段階生成説と実焼却炉[7][8]

2.2.1Altwicker以前の研究の要約

01988年 ShaubandTsangはダイオキシン類の生成は不均一ガス相において

行ほれるとして、次の反応式を提案した。

ps+pg-Ds Kr=275√T/973Exp(-11500/RT) (2.1)

Ds-Dg Kdes=1013Exp(-53400/RT) (2.2)

その提案はフライアシュ上の前駆体とガス相中の前駆体が反応(reaction)しダ

イオキシン類が生成し、その一部が脱着(desorption)するとした。

但 し P=前駆体 D=ダイオキシン類 (S=灰の表面、g=ガス相)

rは生成反応、 desは脱着減少を示す

DicksonとKarasek(1987)は実験で、ペンタクロロフェノールを 6-60

分間フライアッシュ中で反応 させ、ダイオキシンン類の生成は4%と言

う高い反応率を得た。 これはフライアッシュの触媒作用によると考え、

更に生成ダイオキシン類が脱塩分解 している事も見出 した。

この理由から、脱塩分解反応の式が shaubとTsangの式 (2.1)(2.2)に加

えらる事になった。アレニウス式 K=A.Exp(-E/RT)の物質による定数 A

の大きさと活性化エネルギ Eに関する知識がこの論文の基本 となって

いる。 この反応式 と常数は下記の通 りである。

Reactlon Ps+Pg-Ds Kr=275(T/973)Exp(-22150/RT)

Desorption Ds-Dg Kdes=1013Exp(-53500/RT)

DechlorinatlonDs-Pro Kdechl=1022Exp(-15000/RT)

DecompositionDs-Dpro Kdecomo=1012・8Exp(-40000/RT)

但 しPro=Dechlorinationの生成物、Dpro=Decompositlonの生成物

図 2-4は DIcksonの 60分間実験データのグラフであ り、上記の 4段

階式 と良く一致 している。

以上が Altwickerの論文が発表 される前までの研究の要約である。そ

の後 Altwlcker等は Dicksonとkarasekの式を実焼却炉の

12

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データを用いて修正 している。Altwickerなどの研究のモデルや計算式

は次項で述べる。

2.2.2PCDD/Fの生成モデルについて(Altwlcker等の研究)

此処で予想 している焼却炉モデルは下記の通 りである。 モデルはガス温

度 250℃において反応経路を 1秒間で通過 し、その時焼却炉出口に於け

るダイオキシン類は 70(ng/m3)であった。入 口と出口の平均前躯体濃度

は 7.56×1010分子/cm3である。固相の前躯体濃度は報告が無いのでコン

スタン ト.サーフェイス.カバ レージ βを 0.01と仮定 した。

供給 された粒子 (solid)は入 口で 530(粒子/cm3),出口では 45(粒子/cm3)

である。いろいろのモデルにより計算 されたダイオキシン量は第 2-1表

の通 りである。

表 2-1モデルによる計算をベースとしたダイオキシン生成量

モデル 温度 (℃) Ds(ng/g) Dg(〃g/m3) Dtota1(ng/m3)

Shsub,Tsang 200 0.55 4.0×10~16 0.032

250 1.85 3.1×10~13 0.ll

300 5.1 7.5×10ー11 0.295

Dickson 200 2.5×10~5 1.2×10~14 1.4×10ー6

6min 250 1.2×10~4 6.7×10-12 2.3×10~5

300 1.3×10~3 1.2×10ー9 7.8×10~5

Altwicker 200 4.6×10ー6 3.3×10一21 3.7×10~7

4-Sstep 250 4.8×10~5 8.0×10~18 1.8×10~8

表 2-1の 3列 (Dsng/g)はフライアッシュの表面に付着 したダイオキシ

ン量を示 している。4列 (Dg 〃g/m3)はガス相に吸収 されたダイオキシン

量であ り、最後の列は焼却炉サンプル採取部における全ダイオキシン量

を示 している。全ダイオキシン量の濃度は次式で計算できる事が判明し

た。

Dtotal(ng/m3)=0.058×Ds(ng/g) + Dg(〃g/m3)×103

13

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温度はテス トからテス ト迄の間で計測 され,200℃、250℃、300℃で実験

は行われた。表 2.1か ら分かるように Dg の値は低温 と強い脱着作用

(Desorption)により微量である。又 Dicksonnの式は実際のダイオキシン

類の実測値に良くあっている。

Altwicker等 (1989)により、これ等の式の平衡関係 (Equillbirium) と

感度 (sensltlvity)について、再検討 されたが変更 されることは無かった。

2.2.3生成反応式の検討

前節 (2.1.2)で検討 した通 り、生成反応式はその平衡関係 と感度について

検討 されたが、粒子表面の吸着率 (surfacecoverage) は β=0.01と仮定

して生成反応式が検討 された。

此処でこの反応断面積 βに就いて検討する。

shaubとTsang(1985)は ∂=0.01、粒子直径は 10〃mとして検討 した。然

しこの 10〃mの値は実焼却炉の煤塵計測テス トで得 られる粒子の直径 よ

りも遥 かに大 きい と考 え られ る。従 って Dickson は表面積 を 2.3-

3.6(m2/gram)とすることを勧めた。この表面積の平均値は 3.0(m2/gram)

であり、粒子直径は 0.8(〃m)に相当する。粒子の表面濃度は実焼却炉の

フライアッシュの実測値か ら300-1200(ng/gram)とした。この表面濃度

は相当反応断面積 (surfacecoverage)0オーダー (0.001-0.0001))に

相当する。

此処で例をあげて計算によりβを求めると次の通 りである。

フライアッシュの表面濃度が 1200(ng/gram)のとき、 βの値は次の通 り

である。

Cs=1200(ng/gram)=1200/トリクロロフェノールの分子量

=1200/197.35=6.08(nmol/gram)

=3.66×1015(mol/cc)

1grのフライアッシュ=3×104(cm2/gram)×3×1014(site/cm2)

=9×1018(site)

14

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o=3.66×1015/9.8×1018=0.0004(Dimensionless無次元 とされている)

以上の検討によりAltwlcker等は次の式を導いている。

ReactionPs+Pg-Ds K=5.OE9√T.Exp(-20800/RT) (2.3)

DesorptionDs-Dg K=1013Exp(-53400/RT) (2.4)

Dchlorlnation.Ds-ProKdechl=105Exp(-15000/RT) (2.5)

DecomposltionDs-DproKdecom=1013Exp(-37500/RT) (2.6)

こ の 反 応 式 に よ る 結 果 は 図 2-5 に 示 す よ う に

oswago(1988)Pittsfield(1987)の焼却炉のデータとよく一致 している。

他方、shaubと Tsangのモデルの値はこの結果より低 くなっている。こ

の理由から(2-1)式の preexponentialであるAの値を 8桁 ぐらい大きく

す る 必 要 が あ る 。 こ の パ ラ メ ー タ の 変 更 に は 推 定 衝 突 率

(estimated.implngementrate)を用いる事が合理的である。

通常ガス相の濃度はは 300℃において、1010-1011(molecules/cc)であり、

この衝突率は 1017-1018(molecules/cm2.sec)である。preexponentialA

の値を考えて、衝突回数は 1015-1016(molercules/cm2.sec)であり、この

値であれば、アレニウスの運動エネルギー以内にあると思われる。

Desorptlon、 Decompositlon、Dechlorinatlonの常数は Dicksonの実

験結果に合わせるため少 し変更する必要がある。 この変更を行 うために

焼却炉のガス分析値を調べて更に温度に関する基本的なデータが必要な

事が分かった。例えば、高温においては、分解による放出は期待出来な

いし、DIcksonによれば 200-400℃ではダイオキシンの脱着

(Desorptlon)は 20%減少 している。VoggとStleglitzは 200-400℃では

脱着は無い としている。 この事は更に良く調査する必要がある。また図

2-4は Dicksonの実験によるガス温度 とダイオキシン類の生成量の関係

であり、Altwickerはこのデータを基本 として解析 した。

15

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Altwickerのまとめ [7]

(1)1987Dicksonにより、彼の実験データにより、4段階方式が提案 さた。

(2)反応速度式の常数は実焼却炉のデータを用いてアジャス トしている。実焼却

炉のデータは常に実験室のデータより遥かに速い。その理由は新 しいフライア

ッシュと反応する事が多 く、適当なサイズに接する事が多い からと考えられる。

0-09g

0.Oo∽

fJ(yj7:000N

OOgT

(【邑JBt9

S.a

O.〇〇l

1000 2000 3000 4000 500.0

TEMPERATURE(C)

図 2-4Dicksonの実験によるガス温度 と

ダイオキシン類生成量

16

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慧 rlSB o,frDF,oou:BdSt芸 .ILL,C竃 rsahtAOニ 慧 Tiニ ;i誌 ,IncxinIe:慧 tatQI(03VegO) (25】path,○ =rLCine亡atOr tPittSfiel郎 (24IDatzL. ThcinCinarAtOr rCLSultS rEtpredent th亡 n舵 inCreaSB i一lDthJEatVtIen thf,Esp-inl色ヒ and thBboiler outlet, r8SPBCtiv色1y.andtub Stat=k.

図 2-5 4段階生成速度式 と実焼却炉データ

17

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2.2.4Altwlcker の研究論文をベースとしたダイオキシン類の

生成速度の計算式 と計算例 (適用範囲ガス温度 400℃~200℃)

ReactionPs+Pg-DsK=5.09E√TExp(-20800/RT)

DesorptionDs-Dg Kdes=1013Exp(-53400/RT)

DechlorinationDs-ProKdechl=105Exp(-15000/RT)

DecompositionDsーDpro Kdeco=1013Exp(-37500/RT)

上記の係数式を反応速度式に代入すると次式が得 られ る。

d(Ds)/dt=Kr.β.(Pg) この計算結果を(Ds)1で表す

d(Dg)/dt=d(Ds/dt)=Kdes.(Ds)1

この計算結果を(Ds)2で表す

d(Ds)/dt=Kdechl.(Ds)1 この計算結果を(Ds)3で表す

d(Ds)/dt=Kdecom.(Ds)1 この計算結果を(Ds)4で表す

従って実際のダイオキシン類の濃度は次式で与えられる。

(Ds)=(Ds)卜 (Ds)2-(Ds)3-(Ds)4

これ等の計算式を用いて、次頁以降に計算例を記 している。

18

(2.7)

(2.8)

(2.9)

(2.10)

(2.ll)

(2.12)

(2.13)

(2.14)

(2-15)

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(2.ll)式による(Ds)1の計算 (Reaction)

d(Ds)/dt=Kr.β.(Pg) (mg/g)/sec

但 しR=1.987(cal/mol.k)T=温度 (反応)(k)=200+273=473(k)

8=0.0004(surfacecoverage)(dlmenslonless)

Ds=Ds(ng-Dix/g-ash)×0.058(g-ash/m3)の元は(ng-Dlx/m3)で表 さ

れる。

Pg=7.56×1010(mol/cm3)/6.22×1023(molecule/mol)

=1.256×10~13(mol/m3)

=1.256×10~13×197.4(g-trichlorophenol/cc)(197.4は trichl)

=2.48×10~11(g-trlchlorophenol/cc)

=(2.48×10~2)(ng-trichrolophenol/cc)/0.058(g-ash/m3)

=2.48×104(ng-trlchrolophenol/m3)/0.058(g-ash/m3)

=4.20×105(ng-Dix/g-ash)

(注、此処では 1-trichrolophenolが 1PCDDに相当するとしている。

参考文献 (27)によると、2.4.5Trichrolopheno1-Sodium-Salt2分子

で、PCDDを 1分子生成できると報告 されている。 )

Kr=5.0×109√473Exp(-20800/1.987×473)=27.177(1/sec)

d(Ds)/dt=27.177×0.0004×4.20×105×(0.058)

=2.6448×102(ng/m3)(1/sec) (Ds)1と表す

(6)式による(Ds)2の計算 (Desorptlon)

(Dg)/dt=d(Ds)/dt=Kdes(Ds)1 この計算結果は(Ds)2と表す

但 し Kdes=1013Exp (-53400/RT)

=1013Exp (-53400/1.978×473)

=0.212×10ー11(1/sec)

d(Dg)/dt=d(Dg)/dt=(0.212×10~11)×(2.6448×102)

=0.56×10~9(ng/m3)(1/sec) (Ds)2と表す

19

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(7)式による(Ds)3の計算 (Dechlorination)

d(Ds)/dt=Kdechl(Ds)1 結果は (Ds)3と表す

但し

Kdechl=105Exp(-15000/RT)

=105Exp(-15000/1.978×473)

=0.0117(1/sec)

d(Ds)/dt=0.117×2.6448×102=0.0309×102(ng/m3)(1/sec)

(Ds)3となる

(8)式による(Ds)4の計算 (Decomposition)

d(Ds)/dt=Kdecom(Ds)1 結果は (Ds)4と表す

但し

Kdecom=1013Exp(-37500/RT)

=1013Exp(-37500/1.978×473)=0.472×10~4(1/sec)

d(Ds)/dt=(0.472×10~4)×2.644×104

=1.248×10~2(ng/m3)(1/sec)

(Ds)4となる

全生成ダイオキシン量(Ds)下記の通 りである。

(Ds)=(Ds)1-(Ds)2-(Ds)3-(Ds)4

=2.6488×102- (0.56×10ー4)- (0.0309×102)

-(1.248×10~2)

=2.6148×102(ng/m3)(1/sec)

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2.3StanmoreandClunies-Ross[9][10]の研究

2.3.1研究の要約

ある種のフライアッシュはダイオキシン類を生成 しない。例えば石炭燃

焼灰はこれに相当する。その理由は前躯体と塩素との反応に於いて触煤

作用をする金属がない からだと言われている。 銅は特にダイオキシン類

の生成及び分子状の塩素の生成にも有効と言われている。又酸素が 2%

以下になるとデノーボ反応ではダイオキシン類の生成速度は減少 した。

このことは実焼却炉でも同様の傾向が見られるが、熱力学平衡計算では

決定する事は出来なかった。pcDDとPCCFとの生成比は 0.3以下である

(PCDD/PCDF<0.3)。ダイオキシン類生成における塩素 (C12)の役 目は依

然として論争中である。無機塩素が存在 してもフライアッシュ上にはダ

イオキシン類は生成 しない(Addik1998)。土中に吸収 された塩(NaCl)は

ダイオキシン類を生成 している(Takasuga等 2000)。固相状の有機塩素

があればガス状の塩素が無 くてもダイオキシン類を多量に生成できる

(Gullet1994)。また都市ごみ焼却炉の運転では ドロマイ ト(Dolomite)投

入 してダイオキシン類の生成を塩酸(HCl)の濃度によりコン トロールす

る事が出来た(Takesita1989)。MilllganとAltwicker(1996)は古典的方

法でダイオ キシ ン類 の生成 を説 明に於 いて、前躯体の生成反応

(Reaction),吸着 (Adsorption)、脱着(Desorption)、の変化の経路では

吸着 エ ネ ル ギー と灰 の表 面能 力 が重 要 で あ る と した。Ray と

Altwlcker(2000)はデノーボ反応においては、炭素表面にはダイオキシ

ン類は生成 しないとしている。灰の外部表面積は吸着(Adsorptlon)と生

成反応(Reaction)を慎重に考えるとき、特別の性質を持っていると考え

られる(Stanmore,2002)。

Altwlcker(1996)は坂着 (Adsorptlon)、生成 反応 (Reaction)、脱着

(Desorption)を基礎 として、前躯体生成のモデルを作成 している。活性

21

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サイ トとして、 1つは短時間(sec)の超活性サイ ト(superactiveslte)で

あり、他の 1つはPCDD/Fを生成する長時間反応サイ トである。その

モデルは(1)焼却炉における超活性反応サイ トであり、 (2)実験室の通常

サイ トであり、適正な生成速度を求める事が出来て成功している。

2.3,2PCDD/F(ダイオキシン類)の生成モデルについて

現時点では熱力学と活性化反応 (kineticreaction)を基本 とした基礎式

作成は不可能である。ShsubとTsang(1983)はこれ等の方法で反応速度式

を決めようとしたが出来なかった。現在用いられている反応速度の式は

経験的実積値による修正が行はれている。

生成モデルには不均一モデルと均一モデルの2つがあるが、均一モデル

では生成ダイオキシン量が実焼却炉に較べて極めて小さいといわれてい

る。此処では主として不均一モデルについて述べる。

2.3.3Stanmoreなどの不均一モデルについて

Altwicker(1996)により灰 1gあたりの活性サイ ト(activatedsite)の

数は計算されていて、約 2×1018(ケ/g,ash)であり、これは 10~5(mol/

g,ash)に等 しい。Gullet(1994)に よれ ば pcDD/F の付 着 生成 量 は

10~9(mol/g,ash)であり、活性サイ トは飽和していないとされる。

不均一反応におけるダイオキシン類の生成は前駆体によるものか、デノ

ーボ反応によるものか、分からなかったが、Stieglitz(1997)は両方とも

singleringcompoundを通過するが、singleringcompoundはPCBの前

駆体でないことを発見した。これにより不均一反応はデノーボ反応 とさ

れた。ガスと灰の表面の反応は活性化エネルギー(kineticenergy)によ

り活性化 したガス分子が灰の表面に衝突 して行われるとして、取 り扱わ

れている。

ra。S=p/(√27TMRT) (mol/m2sec) (2.16)

但し P=吸着剤(Adsorbent)の部分圧力 M=吸着(Adsorbent)

の分子量 R=ガス定数 T=絶対温度

22

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吸着分子の衝突回数をstickingfactor αとすると(1)式は次の通とる。

dm(。。。。/f)/dt-(αP)/(√27tMRT) (mol/m2・sec) (2・17)

(2.17)式は Stanmore等が提案 した式である。 αの値は実験用焼却炉の

データによった。この StlckingFactorの採用は焼却炉の観察によって

提案されたものである。400-225℃の間では、ダイオキシン類の生成量

は炉中に灰が存在する時間に比例すると言 う事実によっている。ガス疏

速度に比例 していると言える。ダイオキシンの生成速度が運動力学論に

従 うとすれば温度の変化によりもっと急激に変化するはずである。

短時間における生成速度は飛行中のガス分子が活性サイ トに衝突し、そ

こで反応 しダイオキシン類を生成 していると考える。又、デノーボ反応

は塩酸(HCl)の濃度に比例している。Gullet(1990)とWikstrom(1996)は

都市ごみ焼却炉において、塩素(cl)が 0.6-0.8%(HC1220ppmに相当)堰

加 したらダイオキシン類が増加 したと報告している。これ以後焼却炉の

研究では塩酸(HCl)濃度のみ記録された。

さらにDe反応の条件は次ぎのとお りである。

1ダイオキシン類は球面をした灰の表面で生成される。灰の表面積は

As=3/d(m2/g)、dは灰の直径 (〃m)、灰の密度は 2000(kg/m3)と仮定し

ている。

2DeNovo反応にはガス状の塩酸(HCl)が必要である。塩酸が直接作用す

るか、又は金属塩 として作用する。 この塩酸の衝突回数によりダイオキ

シン類の生成量が決まる。

3 ダイオキシン類の生成 と分解は互いに競争関係にある。

4灰の密度はダイオキシン類の生成量と互いに独立している。

5ある与えられた灰について、反応の場としての密度は灰の種類や大き

さに無関係である。

6平均値として、1モルのダイオキシンを生成するには、6モルの HCl

が必要である。

23

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stanmore等のデノーボ反応によるダイオキシン類の生成速度は下記の

通 りである。[9]

dmp。。。/ド/dt=((0.38×109cash)/〟da) 〔(0.72αP/√T)

-3.78×1013Exp(-20000/T)Xp)〕

(ng.pcdd/f)/(Nm3.sec) (2.18)

但 し P=HClの部分圧力(pa) T=温度(K)

Xp=灰表面におけるダイオキシン類濃度(mol/m2)

cash=灰の濃度 0.6(g/m3) β=はいの密度 2000(kg/m3)

d。=灰 d32の平均直径 (m)

(2.18)式はHClの入力値を指定する(2.17)式0.72αP/√Tで表す事が出

来る。叉熱分解項は X。の量に比例する 3・78×1013×Exp (-20000/T)x。

で表すことが出来る。ダイオキシンとフランは炭素から異なる課程を経

て生成 されるが(2.18)式は集団として計算 している事になる。これらの

生成反応は飛灰の表面で行われている。 αの値は実焼却炉では 2×10~9

である。重油燃焼のデータを整理 して αの値は次式であらわされる。

α=13.6×10~9Exp(0.11SO2)

S02はガス中の濃度(ppm)

(2.19)

(2.18)式は流速をベースとしたダイオキシン類の生成式であり、高温度

400-225℃に対応できる。また他方で低温における生成反応式が必要で

ある。低温生成反応式は灰の表面の金属触媒作用によるものである。

stieglitzは DeNovo反応によるダイオキシン類の生成速度は CO2生成速

の度に比例するとしている。銅 cuはDeNovo反応によるダイオキシン類

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生成に効果があると報告 した。低温度におけるCO2生成に対する銅 cuの

触媒効果はMcKee、Baker、Soete等により、活性化エネルギーは 79-94

kJ/mol と報告 されている。preexponentialfactorA[K=Aexp(-E/RT)の

A]は計測されていない。なぜなら普通の焼却炉の数時間単位のテス トよ

り大幅に短いテス ト時間が原因である(Stieglltz)。

Stlglitz等の報告では、300℃以上では、CO2濃度 と関係なくダイオキシ

ン類 の生成速度 は一定 になった。300℃ で 15min 関 の生成速度 は

15(ng/g-ashsec)であった。

有機物を生成する反応は炭素の表面において行われるが炭素の表面積は

関 係 は な い とい わ れ る が 、 実 際 は粒 子 の 表 面 積 は 関 係 す る

(stanmore,2000)。活性化エネルギーは 87kJ/molであり、粒子の表面積

は 0.025(m2/g)である。DeNovo反応による生成式は Stiglitzのデータか

ら次式を得る。

(dm。。。。/F/dt)=0.3Exp(-10500/T) (mol/m2sec) (2.20)

流速 コン トロール域のダイオキシン類生成過程の吸着、生成反応 は

(2.18)式で示 される。

(2.18)式の計算には適当な前躯体の物性値 と濃度を使用 した。吸着速度

については少 し経験をもっている(Stanmore,2000)。RgheiとEicemann

は加熱 した飛灰の上にガス相のTeCDDを流 し、吸収量を計測した。吸収

量は 100-300℃で増加 し、2.5分で完了した。固体モデルの場合は Stlck-

ingfactorはα=6×10~6であった。MiliganとAltwlckerの経験によれば

α=3×10~6である。この値は実焼却炉のα=2×10~9に比較 して 1000倍の

の値を示 している。 叉 HCLによるDeNovo反応に比較 しても 1000倍大きい

値 といえる。活性的サイ トは単純な吸着であり、反応を伴 う吸着ではない

といえる。

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OStanmoreの(2,18)式によるダイオキシン類生成量の計算例

デノーボ反応によるダイオキシン類の生成量は下記のとお りである。

(dmp。。。/F)/dt-(0.38×10~9×cash)/(〟.d32)[(0・72αP/√T)

-3.78×10J13Exp(-20000/T)Xp]

=[(0.38×10~9×0.6)/(2000)(10ー6)]

×[(0.72×1.5×10ー8)×24.6]/√473

-3.78×1013Exp(-20000/473)×1×10~10

=134(ng.pcdd/∫/Nm3sec)

但 し P=24.6(Pa)、β=2000(kg/m3)、cash=0.6

X。-1×1010(mol/m2)、d。2-1×10~6(m)(飛灰の直径 1〃m)

T=200+273(K)

ガスの急速冷却の場合、クー リングファクタβ及びダイオキシン類生成

抑制率 77を考慮すると下記のとお りとなる。

77 =0.5(スプレイ水噴射のとき)、 β-130とすると

[(n)dmp。,。/f/dt]/β=0.5×134/130-0.51 (ng/Nm3)(1/K)

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2.4各ダイオキシン類生成論の比較検討のまとめ

2.4.1ダイオキシン類生成量計算結果

計算結果は表 2-2に記す通 りである。

表 2-2 ダイオキシン類生成量計算結果

計算条件 Altwicker Stanmore

D(Ds)/dt 261(ng/m3)(1/S)

(dm.pcdd/f)dt 134(ng/m3)(1/S)

スプレイ水滴 0.51

急冷時 (ng/m3)(1/k)

問題点 ∂及び Pgの算定 Xpの算定が明ら

2.4.2各ダイオキシン類生成速度論の比較検討

次頁、表 2-3「ダイオキシン類生成速度論の比較 とまとめ」参照のこと

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Altwickerとstanmoreの生成速度論の比較は次のとお りである。

表 2-3ダイオキシン類生成速度論の比較 とまとめ

Altwickerの場合 stanmoreの場合

生成論の基本 アレニユウスの化学反応式 ラングミュールの吸着論とアレニ

的概念 の速度係数を実焼却炉の運転データにより修正 ウス式の速度係数の併用

反応の形態 前駆体よりDXN生成 De-NoVoによるDXN生成

生成抑制の計算式 4段階説(生成、脱着、脱塩分解) 2段階説(生成、熱分解)

基礎実験 Dicksonの実験フライアッシュ、実験器具を洗浄 し、13Cラベル法を用い厳格にDXNの生成率を計測 し、150-400℃でダイオキシン類が生成することを証明した○ 特になし

応用実験 実焼却炉の実測データを解析 し、実焼却炉により、次の 2つの

モデル炉を作成 して解析を行つ 実験を行なったO

た○筆者もこのモデル炉を用い ① 排ガス中にS02を注入 LDXN

て、研究論文を作成 した○ の生成抑制量を調査 したD②排ガスダク トに熱交換器を設置して、ガス急冷法によるDXNの生成抑制率 βを算出したo

特色 先ず基礎理論の検討、基礎実験を S02のDXN生成抑制効果、温度

行い、実焼却炉の運転状況を検言、効果ついて、実験装置を作成 して

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第3章 排ガスの冷却に関する調査と解析

3.1スプレイ水滴の蒸発と伝熱機構の検討

スプレイ水滴の常温から飽和温度(蒸発開始温度)迄の対流伝熱、蒸発機構、水滴

表面からの物質(水分)の拡散等の検討を行い、更に、最適な伝熱、蒸発計算法、

排ガス急冷時間計算法等の検討を行 う。

○概要 高温排ガス中にスプレイ水ノズルによって噴射された水滴はガスからの

対流伝熱と水滴からの水分の拡散のバランスにより水滴は飽和温度(水滴の周囲

の部分圧力に相当する温度)に達し,その後は定常的な蒸発を行 う事になり、同時

にガス温度も降下する。このガス温度降下速度によって、ガス中のダイオキシン

も抑制されると考えられる。Altwickerなどの研究 〔7〕によるとダイオキシン類

の生成時間は t≪0.1secとほれている。

○排ガス中のスプレイ水の挙動

此処で検討する焼却炉ガスダクトの排ガス速度は5- 6(m/S)であり、スブイ水噴出

速度は 30(m/S)であり、ガスとの相対速度は 25(m/S)となる。水滴直径は約 100(FL

m)である。 水滴はガス分子を追い越して進んでいる事になる。ガス分子自身は熱運

動しているので、分子近傍の短い距離では高速度で動いていると言われている。そ

の運動エネルギーは温度として表れていることになる。

以上のことからNu数はガスと水滴の相対速度を用い、水滴の直径に対して求める事

になる。ここでは水滴直径は 100(〃m)ついて検討しているのでNu=2としているが,

この値は実測値ではないし実測は今のところ困難である。将来の研究事項であると

いえる。

○対流伝熱と水分の拡散

水滴の昇温を考える時、先ず水滴面-の伝熱は対流伝熱が主であり、放射伝熱は

ガス温度が 400-300℃と低いので、考慮する必要は無いと考えている。対流伝熱

により水滴が加熱されると同時に、水滴表面から水分子の拡散が起こると共に熱

エネルギ放散も起こる事になる。更に水滴の加熱が進むと、水滴外表面の部分圧

力と等しい飽和圧力となり、その飽和温度となる。実計算に於いて、水滴外表面

の部分圧力を計算することは困難であるから、飽和温度

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は 100℃と仮定し、それ以後は定常状態の蒸発が続くとして解析している。又水滴

直径が 1(〃m)以下となると、蒸発速度が極めて遅くなる。従って、スプレイ水滴

はダク ト出口においても、水分(蒸気ではない)として存在している事になり、ガ

ス分子約 10-10(m)の 1万倍位の直径をもつ水滴が煙突から排出される事になると

思はれる。

○水滴中の温度分布

水滴表面が飽和温度に達しても中心部は飽和温度にならない。(実際の伝熱速度は

有限であるから)然 し此処では水滴の温度は常に一定に保たれるとして計算して

いる。

以上の検討事項に基づき、本研究は行っている。

○スプレイ水滴(50〃m)の構造の場合について以下水分子の構造、個数など検討した。

水分子の構造は一日-0-日-であらはされる。その長さは、(1.76×10†8)×3=5.28×

10~8(cm)である。水滴 50(〟m)の中の水分子の個数を概算すると次の通りである。(50

×10~6)/5.28×10110)=9.4×10-4(H20/1辺)

従ってこの水分子群が直径部に於いて1列に並んでいるとして、一辺が 50(ljm)の

立方体の中には(9.4×10)3=830×1012(ヶ)となる。 球体の場合は430×1012(ヶ)なる。

この水分子の配列は次の通である。[13]

(口絵 :理論計算で求められた20.C液体中の水分子の動き)(第14章参照)

赤樺は約 2psの間に起こった各原子の変位の大きさと方向を示す。数十個の

水分子が水素結合 (直簸)で掛 fれた集団となって動いている様子が見られる。

(名古屋大学理学部の大峰巌教授と松本正和助手の計算による。)

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○ガスダクト中のスプレイ水滴、フライアッシュ、ガス分子の個数概算

50(〃m)のスプレイ水滴の粒子数 Nl

l水滴の重さ

〔(4/3)7t(25×10-6)3〕 ×960=6.283×10~11(kg/ヶ)

スプレイ水滴の個数

N1-5666(kg/h)/6.282×10~11(ヶ)/h=2.5402×1010(ヶ/S)

2500(万個/S)

10(〃m)のフライアッシュの個数 N2

Altwickerによれば0.058(g.ash/Nm3)である。又都市ごみ焼却炉

150(T/day)のガス量は34500(Nm3/h)であるから、灰の量は

0.058×34500=2001(g/h)となる。

1個の灰の重さは、(4/3)7t(5×10~6)3×2000=1×10~12(g/ケ)

フライアッシュの個数N2は

N2=2001(g.ash)/1×10~12=2001×1012(ヶ/h)

=5.55×1012(ヶ/S)

=5.55(兆ヶ/S)

ガス分子の個数 N3

0℃、1(kg/cm2)、22.4(1)の理想気体の分子数 N=6.022×1023(ヶ)

ダクトの体積=3.3×1.2×5=19.8(m3/sec)=19800(1/sec)

ガスの分子個数=(19800/22.4)×6.022×1023

=5323×1023(ヶ/sec)

=53230× (兆)×(兆)(ヶ/sec) (天文学的数量である)

○スプレイ水噴射(50-100〃m)により焼却炉排ガスと其のガス中に含ま

れる1-10〃mのフライアッシュ上の有機物分子と塩酸塩酸分子の反応に

より生成するダイオキシン類の生成抑制が行われている世界は、分子の

大きさと数から推定すれば、別世界である事が理解されると考えている。

31

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3.2水滴の蒸発温度、冷却速度の計算法

3.2.1小林 [14]の計算法

直径 d。初期温度 80の水滴が温度 8gの高温の気体中に入って加熱され、表面温度

が或る定常の温度 βWになるまでの期間が、加熱期間とみなされる。この間の蒸発

による直径の減少は小さいので、それを無視して考えれば固体の加熱と同様になる。

平衡状態に達して蒸発しつつある液面の表面温度βWは、乾湿球湿度計に相当する

ものであるが、次のようにもとめられる。即ち、外部からdt時間に伝達される熱量

dQが全部蒸発に使われるとし、dt時間に蒸発量をdE2とすれば

dQ=α(aglow)7Td。2dt

dE2=h(Caw-Cag)7Td。2dt

dQ=LdE2

∴ (α/h)(♂g-∂W)/L=Caw-Cag

(3.1)

(3.2)

(3.3)

となる。但し、α:熱伝達率、Ca:水滴の蒸気の濃度、L.1蒸発潜熱、A:物質移動係数、

添え字 W、 gはそれぞれ液面及び遠方の気体を示す。

この場合、伝熱と物質移動の間に相似則がほぼ成立すると考えてよいからヌッセル

ト数Nu-αdo/九g-hd。/D=Sh=シャーウッド数とすれ(3.3)式は

(ag-0w)/L=(Caw-Cag)D/Ag (3.4)

となる。但し、dg :気体の熱伝導率、D:水滴蒸気の拡散係数である。

液面に於いて飽和蒸気になっているものとすれば、液面に於ける水滴蒸気濃度 caw

は表面温度 ∂Wの関数である。従って、Cawと温度の関係がわかっていれば、式(3.4)

から表面温度 βW (飽和温度)が求められる。

水滴は非常に小さいので、簡単のため一様に加熱されると考えると水滴の温度が β。

から ∂Wまで昇温するに要する熱量Q lは水の密度を p l、比熱C。1とすれば Q l-

(7td。3/6)pIC。1(Ow- 00)であるO表面温度は 0。から O wまで変化するが、簡単のた

め、(β。-∂W)/2を取ると、外部から伝わる熱量はt1時間に

α(Og-(0 0+Ow)/2)7Td。2tl

である。

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これを Qlと等しいとおくと、加熱時間tlは次式で与えられる。

d.pICpl(OwIa.)

tl-3a28glewleo(3.5)

更にこの場合、d。は非常に小さいので、Nu=αd。/九 g=2としてよい から

(3.5)式は

do2pICpl(Ow-Oo)

tl=6Ag28g-0 -001γ(3.6)

水滴粒の蒸発時間

この期間は水滴は ∂Wが一様になり、外部から伝わる熱量は全部蒸発に

使はれるとしてdt時間にd(d)だけ減少するとすれば

dQ-α(Og-Ow)7td2dtニーLp17td2 [d(d/2)]

故に d(d)/dt--2α(Og-Ow)/Lpl

となる。前述のように αd/九gであるから

d(d(d)/dt)=-4kg(Og-Ow)/Lpl

故に d(d2)/dt=-[8九g(Og-Ow)/Lpl]=Ce (3・7)

となる。直径の二乗を時間で微分したものは、一定の常数となる法則

が得られる。(3.7)式の括弧 〔〕内は蒸発定数と呼ばれる。

33

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3.2.2甲藤 [15]の計算法

甲藤は小林より更に詳細に水滴表面の物質移動について検討している。

図 3.1 液滴まわりの温度,濃度分布

上図に於いて、半径 r。の球面よりの単位時間の蒸発量をWとする。液滴を囲む任意

半径 rの球面を考えると、この球面を単位時間に流出るする正味質量は明らかに W

である。今これを対流によるもの、及びそれに相対的な拡散によるものに、分離して

書けば

W=wIW-47Tr2〟D(dwl/dr)

此処に、 wlは蒸気の質量濃度、そして右辺第一項は質量流量 Wの混合気流によって

運ばれる蒸気量、第二項は混合気流に相対的な拡散によって移動する蒸気量である。

上式を整理して

47Tr2pD(dwl/dr)=-W(1-wl) (3.8)

次に上記の球面を外部から内部-単位時間に流入する正味エネルギーは、液体の蒸

発潜熱がLのとき明らかにWLである。今これを混合気の熱伝導及び質量移動に伴 う

保有エネルギーの輸送に分解すれば

WL=47tr2人(dO/dr)-WCpl(0-Ow)

右辺第-項は熱伝導(九は混合気の熱伝導率)による流入熱量、第二項は球面を流出

する蒸気 W(今空気は静止とする)が持ち出すエンタルピ(液滴温度 βWを基準に測

る)であって Cplは蒸気の定圧比熱(厳密には温度 8-8W間の平均比熱)である。上

式を整理して

34

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47tr2人(dO/dr)=W〔L+Cpl(0-Ow)〕

液滴温度ow及び単位時間の蒸発量W

(3.8)式を(3.9)式で割れば

(3.9)

(pD/A)[dwl/(1-W)]=-dO/〔L+Cpl(0-Ow)〕

此処でD,Cplは温度の関数、p、九は温度及び蒸気濃度の関数である。

この式で夫々適当な平均値を使い一定と考えれば、この式は容易に積分される。そ

して液滴表面で∂=∂W、wl=Wl.W、遠方で8=∂∞とすれば

〔(卜wl∞)/(1-wl.W)1/Le'-1+[cpl(∂∞-βW)]/L (3.10)

ここでLeー=I)/(九CplP)で定義されるルイス数である。液滴表面の蒸気濃度wl.Wは

液滴温度 ∂Wに相当する飽和蒸気圧によって一義的に決まる。

然しながら、(3.10)式で具体的に液滴温度 owを具体的に求めることは困難である

から、此処では日本機械学会、伝熱工学資料第4版に記載されている方法を用いる。

[22]

計算の詳細は 5.3.(2)に記している。水滴周囲の飽和温度は 80℃である。又(3.9)

式を積分し、r=r。で8-8W、r=-で∂=∂∞の条件より

W=(47Tr。九/Cpl)1n〔1+Cpl(0∞-Ow)/L〕 (3.ll)

蒸発速度

実際の液滴では半径 roが減少する。実験の結果によると液滴直系の乗の減少速度は

次式の通りである。

Ⅹ =-d(2r。)2/dt (3.12)

は液滴挿入後の短時間(液滴がほぼ平衡温度 ∂Wに達するまで)を除き一定で、蒸発定

数と名付けられている。この定義により蒸発定数 xと単位時間の蒸発量Wの間に次の

関係が導かれる。

X=2W/7t.r..Pl (3.13)

此処にβ1は液体の密度である。

そして蒸発により液体が蒸気になるとき、1般に比容積が大きくなる。従って蒸発し

つつある液体に対し、各瞬間ごとに前記の定常状態が成立する。

35

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(準定常状態)と近似する事が出る。故に(3.12)式を(3.14)式に代入て

X=(8A/Cpl.Pl)ln ll+Cpl(OcJOw)/L] (3.14)

またある瞬間の液滴半径をr。とし、蒸発が終わるまでの時間をt。とすれば(3.13)、

(3.15)式より容易に次の無次元関係が得られる。

(K′t。/r。2)-4fCi/X-1/21n 〔1+Cpl(0∞-Ow)/L〕

但し、fC,=九/(Cpl.Pl)で定義される一種の温度伝導率であり、九

(3.15)

は混合気の熱伝導率、cplは蒸気の定圧比熱、 plは液体密度である。なお空気温度

∂∞が低く液面温度 ∂Wとの差が小さいときはCpl(∂∞-∂W)/L≪1となる。このとき

(3.16)式は次のように近似できる。

(FC,t。/r.2)=1/ 〔2Cpl(OcJOw)/L〕 (3.16)

この関係は、混合気熱伝導のみを考え、移動蒸気によるエンタルピ輸送を無視した

場合に得られる結果と同じである。

3.2.3水谷[11]の計算法

水滴の加熱蒸発計算式の誘導

時刻 t=Oに於いて高温度の雰囲気に入れられた水滴は暫くの間殆ど蒸発せず周囲

から熱を受けて昇温する。この時期対して(1)蒸発は全く起こらない。 (2)放射は

無視できる。 (3)水滴の内部温度は一定である。 (4)水滴の密度β1は一定に保たれ

ると仮定すると、ヒー トバランスから次式が得られる。

α7td2(tg-to)=(7t/6)d3pIC。1(dTl/dt) (3・17)

但し、α=熱伝達率、Cp]=水滴の比熱、tg=周囲の温度、t。=水滴温度

d=水滴直径

ヌッセル ト数 Nu-αd/d導入して式を書き換えると

(dTl/dt)-(6kgNu/Cpl.Pl.d2)(Tg-Tl)=0

九g=水滴周囲の温度境界層の平均熱伝導率

Nu=2(1+0.276PrO・333ReO・5)

(3.18)

(3.19)

但し、PT=ガスのプラントル数 REF水滴径 dを基準とするレイノズル数

36

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Tg=ガス温度を一定とするとき、Cp1、2g、Nuの平均値を Cpl.mean、jg.meaD、

Nu.meanとすると(3.18)式は次の通となる。

Tl=Tg-(Tg-Tl。)Expト(6人gmean・NUmean・t/Cpl。ean,P1.d2)t〕 (3.20)

定常蒸発の開始

水滴の温度が 100℃になると蒸発を開始する。この場合次式が成立する。

d(d2)/dt=-Ce

∴ d2=d。2- ce (t-て)

do:t=0のときの直径

蒸発速度定数ceは理論的に次ぎのLongwellの式で与えられる。

Ce=(4kgNu/Cpv'pl)lnlll+̂ sCpv(Tg-Tl)] /kg・L] (3.23)

但し Cpγ′:水滴の蒸気の平均比熱

dg :水滴の温度境界層の平均熱伝導率

ds :水滴表面のガスの熱伝導率

L :水滴の蒸発熱

Tl :水滴温度(ケルビンK)

で 時間遅れ 0(sec)

これ等の計算式を用いて400℃のガス温度が100℃になるまでの時間を推定できる。

37

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3.3スプ レイ水滴噴射による高温ガス冷却速度の検討

3.3.1計算式 と計算の手順

○高温ガス中にスプ レイ水滴を噴射 して、ガスを急冷す る方法を理論的に

解明 した論文に水谷、小林及び甲藤がある。これ らは水滴 (油滴)が高温ガ

ス中で熱伝達により加熱 され、まず蒸発可能な飽和温度まで上昇するに必

要な時間を求めている。 (甲藤はこの飽和温度に達す る時間については述

べていない)次に蒸発が開始後は、蒸発量は一定の蒸発速度定数 (ce また

は x)に比例 し、またその水滴直径の減少の二乗に比例 して減少すると言

う事実を用いて、数式化 し、この数式が水に対 しても成立することを証明

している。

これ らの蒸発速度定数を高温ガス中のスプレイ水滴の蒸発について、検討

し求め、蒸発が完了するまでの時間を計算 した。

○手計算の手順

最初に水滴が飽和温度に達 した時点のガス温度を計算 し、所要時間も求め

る。

次にスプ レイ水量が 50%蒸発す る時点のガス温度、 とスプ レイ水滴直径

をもと蒸発度定数を求めて、所要時間を計算する。最後に 99,9%蒸発す

る時点のガス温度 とスプ レイ水直径を求め、蒸発速度定数 をもとめて、所

要時間を計算する。これ らの和がスプレイ水滴による冷却速度を与えるこ

とになる。実際の計算は物性値が充分にないので困難が生ずることになる。

又ガス温度の算出は、熱量、比熱、温度の 3要素で温度を算出する必要が

あるので TryandErrorを繰 り返 して近似的にもめることになる、大変

な作業を行 う必要がある。

これ らの検討結果をまとめて、次貞以下に記す。

38

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〔1〕水谷の式 蒸発速度定数、蒸発時間、ガス温度等

①計算条件のまとめ

④減温塔入 り口ガス温度 300℃

⑥減温塔出口ガス温度 190℃

⑥燃焼ガス量 49611 kg/h (40008Nm<3仙 )

④スプレイ水温度 20℃

㊥スプ レイ水量 2254kg/h

(訂スプレイ水滴直径 350 (pm)

⑧スプレイノズル配置 減温塔の中心に 1本

②計算結果スプレイ水 水滴の

噴射点 飽和温度

↓ J300

ガス湿度

(℃ 200

100

軸㈲

3

蒸発速度

定数

CehB/h

0

0

0

000000

0

0

5

0

5

0

5

0

00001

1

1

4321所要時間

(see) o

l 1J295 l218 El

l

20 0

350 350 277 I

'e

t2sec lt3sec39

5×10'5

合計7.43see

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〔2〕小林の式 蒸発速度定数、蒸発時間、ガス温度等

①計算条件のま とめ

④減温塔入 り口ガス温度

⑥減温塔出 口ガス温度

⑥燃焼ガス量

④スプ レイ水温度

㊥スプ レイ水量

(ヨスプ レイ水滴直径

300℃

190℃

496 11kg/h (40008Nm<3仙 )

20℃2254kg/h

350pm

⑧スプ レイ水 ノズルの配置 減温塔の中心に 1本

②計算結果

▼ T - -▼300

ガス温度

(℃) 200

100

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

10

5

0

0

0

5

0

0

0

0

0

1

1

1

4

3

2

1

295 218 11

[ l1.50 l20

350 277 I

×10~5 8.468×10■5

t2see l t3see

40

5.31×10■5

5.31

合計7.59see

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〔3〕甲藤の式 蒸発速度定数、蒸発時間、ガス温度等

①計算条件のまとめ

④減温塔入 り口のガス温度 300℃

⑥減温塔出口のガス温度 190℃

⑥燃焼ガス量 49611kg/h(40008Nm(3/h)

④スプレイ水温度 20℃

㊥スプ レイ水量 2254kg/h

①スプレイ水滴直径 350 〃m

⑧スプ レイ水 ノズルの配置 減温塔の中心に 1本

②計算結果

▼ ▼

300

ガス温度

(oC) 200

100

00

0

0

0

0

0

0

0

0

05

0

0

0

0

0

1

1

4

3

2

1

軸㈲

3

0

5

0

0

1

1

所要時間

(see)

295 218 11

20

350 1 l277l

41

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3.3.2.各式の蒸発速度定数の比較検討 とまとめ

○前述の通 り、最初の計算条件である、全ガス量、最初 と最後のガス

温度、全ス水量、最初のスプ レイ水滴径、は同 じとして、スプ レイ水

が飽和温度になる点、蒸発量が 50%,100%になる点について、計算 し

た結果排ガス温度、スプ レイ水滴径、などは 3者 とも皆同じであ り、

異なるのは、蒸発速度定数、所要時間のみである。

○所要時間(tl+t2+t3)は水谷の式では、7.43sec,小林の式で

7.59secであ り、甲藤の式では tl(検討 されていない)を除き(t2+t3)

7.64secである。

○蒸発速度定数(Ce又は x)の値は水谷の式ではCeは8.87×10L5-5×10

~ 5(m〈2/h)小林の式では Ceは 8.46×10~5-5.4×10~5(m2/h)であ り、甲

藤の式ではxは 7.8×10ー5-4.9×1015(m2/h)であるO水谷の Ceが最 も

大きく、冷却時間も短い。

○所要時間を検討すると、水谷 と小林の差は 2%であ り、水谷のほ うが

小 さいが僅少 といえる。 水谷の理論式は,Longwell〔17〕が熱力学の理

論を応用 して誘導 した蒸発速度定数 Ceを使用 しているので、ここでは

水谷計算式で計算 した。また後述のシミュレーションも水谷の計算式を

使用 している。

42

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3.4JouleThomson理論および断熱膨張による排ガス冷却

3.4.1まえがき

都市 ごみ焼却炉排ガス中のダイオキシン類再合成抑制に応用す るため、

Joule-Thomson膨張お よび可逆断熱膨張によるガス (空気)温度の降下に

ついて検討 し、詳細な計算を行 うと共に熱力学上の計算法の確立を目的 と

した解析を実施 し解析的解法を確立 した。

主要記号

Joule-Thomson係数 LL(k/atm) ガス (空気)圧力 p 伽pa)

温度 T (i) ガス (空気)比容積 V (kg/m3)

vanderWaals式の定数 a(m4/Kg) vanderWaals式の定数 b(m4/kg)

ガス (空気)比熱 cp(kJ/kgK) ガス (空気)エ ンタル ピ Jt(J/kg)

ガス (空気)流速 W (m/S) ガス (空気)定数 R在J/kgK)

3.4.2Joule-Thomson膨張効果を応用 したガス(空気)の冷却について 〔16〕

気体の定常流れにおける絞 り流れの場合、絞 りが起 こる前の点 1のエンタ

ル ピ hl,流速 w lと絞 りが起 こった点 2のエンタル ピ h2流速 W2との間に

次式が成立する。

hl'W 12-h2+W22 (3124)

速度 wl及び W2が 40m/sec以下であればそのエンタル ピは 0.799kJ/kgと微

小であるから省略 してよい と考えると、(3-24)式は次のように書かれ る。

hl-hっ (3・25)

一般にこの式は定常流の絞 りに対 して成 り立っ Joule-Thomson係数は下

記の(3)式で表すことができる。

p- (g )A-i lT (g ) p-V]-E l誓 書 ] p (3・26)

この〃は次の(3-27)式が成立するとき(3-26)式により0となる。

(av/aT)V-V/T (3・27)

理想気体はpv=RT で表はされ (3.27)式が成立す るので、 Il =0 とな り J-T

効果は 0となる。 この温度を逆転温度 (inversiontemperature)と言 う。

この逆転温度は圧力により若干変化するが、空気に対 しては 487℃であ り、

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水素に対 しては-72℃である。この逆点温度以下では絞 りによって,逆に温

度が上がる.気体の絞 りが起 こる前後の状態を pl,Vl及び p 2、 V2とす

ると気体圧力 plか らp2まで/=する外部仕事は p2V2 -PIVlであ り0とはな

らず不可逆 となる。

3.4.3 Joule-Thomson効果 と逆転温度

前述の通 り Joule-Thomson係数 〃は (3-26)式 によ り 次の通 りかかれ

る。

p-(芸)A-封T(Sl)PIV)

van der Waals の式 を用いた場合、van der Waalsの式 を

・-i(p・=)(V-b)t書 きなお して (aT/av)pを求 めると

〔芸)p -

1 1 RT(aT/av)TP-a/V2+2ab/V3

この式 を (3.26)式 に代入 して 〃の値 を得 る。

RTFLCp=p-a/V2+2ab/V3

-V (3,28)

理論的 には (3.26)式 を用いて、van der Waals の状態式の定数 a、 b

は臨界温度 の関数 であ りJl値 は比容積 Vが別途計算できれ ば算出でき

る。

実際には Joule-Thomson係数 〃は実測値 が用い られ る。空気の場合 は

FL=0.26K/atm=2.56(K/MPa)である 〔18〕。逆転温度 Tは (3.28)式の p =0

とお けば求 める事が出来 る。

T-(1/R)(pv-a/V'2ab/V2) (3・29)

3.4.4vanderWaals の式 とノズル入 り口空気比容積 vl (m3/kg)の計

vanderWaals の式 を用いて、ノズル入 口の条件、圧力 PJ=0.147(MPa)、

温度 Tl=200+273(K)の場合の空気比容積 vl(m3/kg)は次式 (3.30)で もと

めることが出来 る。

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vl3-vl2lT ・b]・7 -㌢ o(3.30)

此 処 、 R-0.2858(kJ/kgK)、 a=3KPk3=11.75(m4/kg)、 b-vk/3=1.06×

10ー3(m3/kg)とし、 vl =0.920(m3/kg)を得 る0

3.4.5 Joule-Thomson効果 によるノズル 出 口温度 T2の求 め方

van derWaals状態式の場合

表 3.1 ノズル入 口、 出 口の 条 件

Pl入 口圧力 0.147MPa P2出 口圧 力 0.107MPa

Tl入 口温度 473K T2(計算 で求 める値)

V1入 口比 容積 (m3′kg)(計 V2(計算 で求 める値)

vanderWaals状態式 において、ノズル入 口の圧力 Pl(MPa) 温度 Tl(K),

比容積 vl(m3/kg)とすれば (3.31)式が成立す る。

(pIV12 +a)(vl-b)-RTIV12 (3・31)

ノズル出 口について も、圧力 P2 温度 T2,比容積 V2とすれ ば (3.32)式が

成立す る。

(p2V22.aXv2 - b)-RT2V22 (3・32)

ガス定数 ノ‖ま定数 であるか ら、ノ‖こついて (3-31)、 (3-32)は等 しい と

置 き T2を求めることができる。

・2-Tllvv1222(pp21:揺 _-bb)']また、Joule-Thomson係数 〃は (3.34)式で与え られ る.

RT2a 2ab

p2~打 +~市

(3.34)式か ら T2は次の ごとく求め られ る。

・2 -i(cp〃+V2(p2-号.管)

(3.33)

(3.34)

(3.35)

(3.33)と(3.35)式は T2に関 しては等 しいか ら(3.36)式 を得 る。

45

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去(cpp・V2(

a 2abp2-- +i2

l■: 一一:1(:Z'・. aXl hlI_tP.t-aX、一一b)

(3.36)

この (3.36)式か ら V2(m3/kg)を求 めることが出来 る。

先 に求めた V2値 を (3.33)式又は (3.35)式 に代入 して、ノズル出 口のガ

ス温度 T2 を求 める事が出来 る. 求めた T2-188(K) (-85℃)である。

この T2=185℃ は Joule-Thomson係数 〃=0.26(K/atm) 〔18〕 を適用 して

い るが,これ は 280(K)(+7℃)にお ける実測値であ り、473K(200℃)に対

す る値ではない。

3.4.5vanderWaalsの状態式 によるガス (空気)温度 T2の計算結果

(a) 計算 の条件 ノズル入 口条件 として空気温度 は、最初 に Tl,空

気圧力 Pl=0.147MPa、P2=0,103MPaを与 える。

(b)出 口空気温度 T2の計算

ノズル入 口空気比容積 vl(m3/kg)は vanderWaals状態式 (3129)式

で求 め、ノズル 出 口空気比容 V2(m3/kg)は (3.35)式で求 める。更 に V2

倍 を(3-33)又 は (3-35)式に代入 して、 ノズル出 口の空気温度 T2(K)

を求 める。

Joule-Thomson係数は実測値 〃=0.26K/atm=2.56(K/MPa)at280(K)を用

いた。計算結果 は表 3-2に示す。

表 3-2Joule-Thomson効果 による空気温度の計算

入 口空気温度 T1 K 473 573 673

入 口空気比容積 V1 m3/kg 0.920 1.114 1.308

出 口空気 比容積 V2 m3/kg 0.523 0.535 0.596

比熱 Cp kJ/(kg.K) 1.025 1.047 1.071

以上で Joule-Thomson効果 に関す る van der Waals状態式 を用

いて、ノズル 出 口空気温度 T2の計算値 を求 める事が出来た。然 し乍 ら、

vanderWaals の状態式 によるノズル 出 口温度 は 0℃以下 となったの

で詳細な再検討行 ったが、同様 な結果 となった。然 し、更 に研究 を進

46

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めれ ばガス冷却 によるごみ焼却炉のダイオキシン類生成抑制 を行 う事

が出来 る と予想 している。

3.5可逆断熱膨張によるガス (空気)温度 降下の検討

3.5.1可逆断熱膨張後 のガス (空気)温度 の検討

可逆断熱変化 (Reversibleadiabaticchange)又は等エ ン トロピー変化

〔Isentropicchange〕はガス (空気)と其の周囲 との間に熱交換 がな く、

また摩擦 な どによる内部熱発生のない ときの変化である。

理想気体 の準静的変化 に於いては熱力学第 1法則 によ り下記の (3.37)、

(3.38)お よび (3.39)式を導 く事が出できる。

pvk=C(cons.)

Tvk-1-TIVk-i-T,Vつk-1

T TI T,

k11 k-1 k-1

pT PIT p,千

(3.37)、 (3.38)お よび (3.39)式 を用いて、可逆断熱膨張による温度降

下を検討す る。

3.5.2可逆断熱膨張時の圧力 P変化 によるガス (空気)温度降下計算

計算条件 :ノズル圧力 入 口 Pl=0.558MPa、出 口 P2- 0.103MPa、 入

口温度 Tl =373、473、573、673、773(k)とす る。 出 口温度 T2Kは 3-(39)

式 を用いて計算 した。

表 3-3 断熱膨張時の圧力 p変化 に よるノズル空気温度 の変化

空気温度 の降下 T2

入 口温 T1(K) 373 473 573 673 773

出 口温 T2(K) 226 287 348 408 470

3.5.3可逆断熱膨張時の比容積 Ⅴ変化 によるガス (空気)温度降下計算

○ 計算条件 :ノズル圧力 入 口 Pl=0.558MPa、出 口 P2110.103MPa、入

口温度 Tl=373、473、573、 673、773Kとす る。

○ 計算法 : 最初 に計算条件 のガス (空気)圧力 をベース として ノズ

ル の入 口、出 口ガス (空気)比容積

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vl, V2m3/kgを各温度 について求める。次 に (3.37)式 を用いて、断熱

膨張後の空気温度 T2Kを求める。

○ 計算例 :

ノズル入 口の比容積 vl: 断熱膨張前の比容積 は 1気圧,温度 293Kの

場合 0.844 m 3 /kgと与え られ るか ら、ゆっ くりと圧力 0.558MPa、温

度 373Kに変化す るとき、P㌍RTを用いて、比容積 vlは 0.1885m3/kgと

計算 され る。断熱膨張後の比容積 V2は次式 によって求 める事が出来 る。

旦三三生 ×0.1818=0.6533 (m3/kg)10.103

断熱膨張後 の空気温度 は次 ぎの通 りである。

Tvlk~1-T,V,k-1

(100+273)(0.1885)04-T,(0.6553)04

∴T2=226K= -47℃

計算結果を纏めると表 3-4の通りである.

表 3-4断熱膨張時の比容積 Vの変化による空気温度の降下

入 口空気 TI K 373 473 573 673 773

入 口空気比容積 vl m3/kg 0.188 0.238 0.289 0.342 0.390

出 口空気比容積 V2 m3/kg 0.653 0.820 1.00 1.17 1.35

注:圧力分割は行はないで,1回の断熱膨張で温度降下を計算した.

3.5.4 可逆断熱膨張時圧力微小変化 によるガス (空気)温度 の降下計算

○ ノズル圧力 :入 口 Pl=0.558Mpa、 出 口 P2=0.103MPa、 入 口温度

T2= 573、673、773K

但 し 373、473Kについては、6.2項 、6.3項の計算結果 、ダイオキ

シンの生成抑制温度以下 となってい るので、其の温度 を使用す る事

とし、此処では計算 を行 はわなかった。

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○圧力分割 の方法

2分割法 :入 口 0.558MPa、途 中 :0.294Mpa、出 口 0.103MPa、 5分

割法 :入 口 0.588Mpa、途 中 :0.539、 0.490、 0.392、 0.294MPa、

出 口 0.103MPa、 10分割法 :入 口 0.588MP、 途 中 0.539、 0.490、

0.441、 0.392、 0.342、 0.294、 0.245、 0.196MPa、 出 口 0.103

MPa

計算式 T2-Tl(告)ff 此処 に k-1・4 (空気,

○計算例 :2分割 の場合

① p]=0.588MPa、 P2 =0.294MPa、 Tl=573K

14-1

・2- (573(器 )丁 -573×0 50287- 470K

②圧力 と温度 p2 =0.294MPa 温度 T2 =470 K

・2-(47鳩芸)02857-348K

以上の計算結果 を表 3-5に纏 めてい る。

表 315断熱膨張時の圧力 pの微小変化による空気温度の降下

圧 力 分割 数 (回)i 1 2 5 10

最初の入 口温度 K 573 573 573 573

最後の出 口温度 K 348 348 348 348

注 圧力の分割回数に関係なく,最後の出口の温度は等しい.

3.5.5可逆断熱膨張変化 によるガス (空気)温度降下のま とめ

① ガス (空気)圧力 0.588MPa よ り大気圧-噴 出す る場合 、 1回で噴 出

降温す る場合、圧力 の式T,=Tl

T2 =Tllt)

k-1

丁 をー用いて計算 した場合 と

k-1を用いて計算 した結果 は等 しい。

② 更に圧力分割計算 を行った場合、分割数 に関係 な く、出 口空気温度

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は等 しい。

③従って、1回だけで圧力噴射し、降温する方が良いと判断される。

④以上の検討結果ガス(空気)状態式を用いた熱力学の計算値 は最初 と最

後の状態値 によって決定 され ると言 う熱力学の原則 を立証す る事 にな

った。

3.6 各冷却法のま とめ

3.6.1Joule-Thomson効果 の検討

vanderWaalsの状態式 を熱力学的に得 られ る Joule-Thomson係数 〃

式 を用いて検討 した 。

結果 ノズル 出 口のガス (空気)温度 は 0℃以下 となった。 この 〃の値

は空気温度 280K(7℃)にお ける実測値 であ り、今回の検討温度 473-

573Kに対応す る値ではない。又更にガス圧力な どを適 当に選び、出 口

ガス温度 を上げれ ば、 ごみ焼却炉の排 ガス冷却 に適用すれ ばダイオキ

シン類 の抑制効果 も期待可能 と考 えてい る。然 しなが ら、573K以上の

高温ガスを 1.5- 6気圧 まで昇圧 させ るには特殊設計の コンプ レッサ

ーが必要である。

3.6.2可逆的断熱膨張によるガス温度 の降下

入 口温度 473K(200℃)~573K(300℃)で出 口温度 は 287K(15℃)~408K

(199℃ )とな り、前述のダイオキシン類抑制は可能であるが、先述の

通 り、高温ガス コンプ レサーの特殊設計が必要である。

3.6.3各冷却法の比較

スプ レイ水滴 による焼却炉排ガス冷却 は冷却用ガスダク トと水 ポ ンプ、

空気圧縮機 、スプ レイ水 ノズル装置が必要であるが、何れ の機械装置

も市販品を入手可能である。

然 しなが ら、Joule-Thomson効果又 は断熱膨張による場合 は、ガス温

度約 500℃のガス圧縮機 が必要である。 このよ うな圧縮機 は特殊設計

が必要 となる。

50

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第4章 排 ガス冷却 に よるダイオ キシン類生成論 に対す る理論 の提案

4.1排 ガス中のフライ ア ッシュ (飛灰)の温度

○排 ガス 中のダイオ キシ ン類 の生成 94-99%は フライ ア ッシュの表 面 で行

はわれ てい る [24] と言 ほれ てい るが、フライア ッシュの温度 はスプ レイ

水 に よって冷却 され るガス温度 と等 しい とした。排 ガス 中従 って此処 で其

の仮定が妥 当か否 か を検討す る。

○ フライア ッシュの Nu数 2 [16] [17]

この論文 で検討 の対象サイズは直径 0.8-1.0〟m である。 この よ うな微小

粒径 に対す る Nu=2 と経験則 か ら通常言 ほれ てい る。其 の条件 は粒子 に対

す る Re=0と言 はれ てい るが、現在 まで 0.8〃mの粒子 の Nuを実験 によって

確認 した と言 うレポー トはない。然 しなが ら、本研 究 の基本事項 であるか

ら,今 回は 0.8-1.0〟mの フライ ア ッシ ュも N。=2が成 立す る として、下記 の

様 に表面温度 を求 めた。

○ フライ ア ッシュの熱伝達係数 α

ガス温度

ガス熱伝 導率

tg=300+273=573(K))

A=0.0443(W/mK)

フライア ッシュ粒径 di=0.8×10~6(m)

α=AN。/dl=0.0443×2/0.8×10~6=110755(W/m2K)

= 95250(kcal/m2h℃ )

○ フライア ッシュの表面温度 の計算

(TheLumpedCapacitanceMethodに よる計算) [19]

温度 T。1のフライア ッシュを其 の温度 よ り低 いガス温度 Tgの中に突然投

入 した とき、時間 t後 の温度 Tal_1は次式で与 え られ る。

・a-1-Tg・(T- -Tg)expl-〔憲二〕t] (4・1)

但 し Tg =冷却時のガス温度 (300℃)

Tai=最初 のフライ ア ッシュ全体 の温度 (400℃)

Talー1=冷却後 の フライ ア ッシュの表 面温度 (℃)

51

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α=フライ ア ッシュの熱伝達率 95250(kcal/m2h℃ )

=110775(W/m2K)

β=フライ ア ッシュの密度 2000(kg/m3)

C。sh=フライア ッシュ (Si02 とした)の比熱

= 0.249(kcal/kg℃ ) =1.0425(kJ/kgK)

6α 6×110775

dpmhC ah O・8×10~6×2000×10425

・az-1-TgI(Taz-Tg)Ex4仁296×.06)xT志 .]

-300+(400I300)Exp(I296)=300+100xExp(-296)

=300.100×土=300∝)

計算結果 : t=冷 却時 間 が 0.0000001(sec)の場合 の フ ライ ア ッシ

ュの表面温度 Tal_1(℃ )を計算 した。Tal_1は 300℃ とな

った。

4.2石炭粒 子 の高温 ガスに よる加熱 と石炭粒子 内部 の温度 上昇 [21]

ShuabandTsang に よる と、ガス圧力 1kg/cm2g 温度 600℃ の とき、直

径 1000〃m(1mm)の石炭 の中心温度 は 1sec後 に 600℃ に達す る。 同 じ

条件 で 100〃mの石 の中心温度 は 0.01secで 600℃ とな る。サブ ミクロ

ン (1FLm 以 下)で は 1/1000sec 以 下 で あ るO 石 炭 の熱 侍 道 率 九C は

600℃ で 0.7(kcal/mh℃ )、 フライ ア ッシュはシャモ ッ トレンガ と元素

組成 が近似 してい るので、其 の熱伝 導率 九aは 600℃ で 0.3(kcal/mh℃ )

とす る と 1〃m灰 の中心温度 が 600℃ に達す る時間は 1/1000sec以下 と

言 え る 。

4.3フライア ッシュの化学的特性 〔21〕

shaub andTsangに よる と、焼却炉 のサブ ミクロンの フライア ッシュ

は Si02が多 くアルカ リ性 と言 ほれ てい る。アル カ リ性 で あれ ばフライ

ア ッシュの 周辺 には OHラヂカル が多 く存在 して、其 の作用 に よ り

ダイオキシン類 を分解 に寄与す る と述べ てい る。例 えば一例 を上 げ る

52

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と、 日本 にお ける飛灰分析 では SiO2=21.23%、 A120。=11.39%なってい

る。SIO2/A12=1.86である。

4.4燃焼 ガスの化 学的特性 〔21〕

都市 ごみ焼却炉の燃焼 はガス化炉等 をのぞ けば、通 常空気過剰率 A-

1.7位 で行 ほれ てい る。 この よ うな燃焼方法 に よる燃焼ガスは酸性 と

言 ほれてい るので、フライア ッシュの周辺 には H ラヂカル が多 く存在

す るが、Hラヂカル量 は OHラヂカル量 よ り少 ない と言 ほれてい る。ま

た OHラヂカル とHラヂカル の分解力 (反応速度)は等 しい。過剰空気

過剰率 九を 1いかに減少 し、FuelRich燃焼 を行 えば oHラヂカルが多

量 に発生 し、ダイオキシン類分解量が多 くなる。

実際の焼却炉では空気過剰率 九を出来 るだけ 1に近 ける方 が、ダイオ

キシン類分解上有利 であ り、熱効率 も上昇す る。

4.5 ま とめ

以上 4項 目について述べた中で 4.1項お よび 4.2項 はフライア ッシュ

表面温度 の計算法関係 の提案であ り、4.3項お よび 4.4項は燃焼ガス

の化学的特性 を考慮 した実焼却炉の運転法の提案である。

53

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第 5章プ ログラム作成前 の手計算 に よる予備検討

5.1計算モデルの設 定

a)ごみ の種類 、元素組成 C19.3、 h2.90、 n0.4、015.5、 s0.02、

cl0.2、水分 W53.48、 灰分 8.2 計 100%

b)ガス量等 (計算値) 乾 きガス量 5.2716 (kgdrygas/kgwetfuel)

水分 0.8411(kgH20/kgwetfuel)

湿ガス量 6.1127(kgwetgas/kgwetfuel)

ガスの分子量 27.383

ガス密度 γ=1.24(kg/Nm3)

C)計算モデル

長崎市設置 焼却炉

都市 ごみ焼却量 150 トン/日 (6160kg/h)

連続式焼却炉型 マルチ ン式火格子、排 ガスボイ ラ、ガス冷却塔、

EP(現在 はバ グフィル タに変更 され てい る)付属発電設備 蒸気 ター ビ

ン発電方式 (2000kw)

本論文 は この焼却炉 のガス冷却塔 にお けるダイオキシン量 の生成抑制

について研究 してい る。

5.2計算条件

a)ガスダク ト、入 口ガス温度 Tg=400℃

b)ガスダク ト、出 口ガス温度 T。=100℃~200℃を 目標 とす る。

C)ガス量の計算 よ り4.923(Nm3/kg.wet.fuel)

×6160(kg/h)=30326(m3/h)

ここでは実測値 は Gt=34500(Nm3/h)を採用す る。

d)Tl。=スプ レイ水温 Tl。=20(℃)

e)スプ レイ水滴 50(〃m)

いけ うち空 円錐 ノズル KBシ リーズ、20atg、15(1/m上n)10本 を使 した

場合 を想定 して検討 を行 った。

f)スプ レイ水量の算 出

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出 口ガス温度 はダイオキシン類 の生成 を抑制す る為、約 100℃まで下げ

るスプ レイ水量は この温度 に下げるに必要 な熱 量 を用いて算出す る。

400℃ か ら 100℃ まで下が る場合 のガス全エ ンタル ピ igt(kcal/h)

igt=42780(400Cp.mean-100Cp.mean)

=42780(400×0.275-100×0.266)=3507960(kcal/h)

必要スプ レイ水量 Wl(kg/h)

20℃ の水 を 100℃ まで上昇 させ るエ ンタル ピ iwt

iwt=WICpmean(100-20)

cpmean=(100℃ 鼻比熱 +20異比熱)/2=(1.007+1.000)/2

=1.0035(kcal/kg℃)

∴iwt=WIX1.00358(100-20)=W.×80.28(kcal/h)

100℃ の水 の蒸発潜熱 iw=Wl(539)(kcal/h)

∴igt=iwt+iwe

3507960=(80.28+539)Wl、スプ レイ水量 Wl=5665 (kgH20/h)

g)ガス温度、水滴温度 の変化

ガス温度 400℃ で冷却塔 に流入 し、20℃ のスプ レイ水で 100℃ まで冷却

され る。水滴 はガスに よって飽和温度 (βW)まで加熱 され 、その後蒸発

を開始 し、次第 に水滴 は d(d2)/dtの速度 で減少す る。 8Wの値 は 5.3こ

うの方法で計算す る。

5.3スプ レイ水注入後 のスプ レイ水滴平衡温度 の計算

(1)スプ レイ水滴平衡温度 (βW)に達す るときのガス温度低下の計算

スプ レイ水注入後 、冷却塔全ガス平均温度 tgm (℃ )

仮定 ow=80℃ とす る。

燃焼ガスの熱量=Gc.tgm.Cpm.=42780(400)0.271=4637350(kcal/h)

スプ レイ水全熱量=Wl.tW.Cpw=5665×(75-20)×1=311575(kcal/h)

スプ レイ水注入後のガス平均温度 tgmは下記 の通 り

Gc.tgm.cpm=4325775

47280× tgmXCpm=4325775

∴tgm.cpm=91.49(℃ )

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try and error method によ り最終的に次 ぎの通 りになる

tgm=345℃ cpm-0.2690kcal/kg.℃ とす ると

tgm.cpm=91.49(℃ )

∴tgm=345(℃ ) を得 る。 ∴ ∂∞=345℃ である。

(2)スプ レイ水滴平衡温度 (∂W) [15] [22] (参考計算)

先ず最初 に平衡温度 ∂wlを仮定 し、その後 に ∂W2を再計算 し仮定値 と等

しけれ ば Owl=Ow2となれ ば良いが、一致 しない時は再度 owlを変更 して、

再計算 して、新 しい値 の ∂wlの値 を見つ ける迄繰 り返 し計算す る。

スプ レイ水滴平衡温度 (∂W)の計算式

【(1-wl∞)/(1-wl.W)】1/Le'=1+ 【cpl (∂∞-8W)】/L

[15] (p233、ll.27式)参照

Le'=(九/Cpl.P)/D (液滴表面のルイス数)

但 し D=0.0792(m2/h)=0.0792 【(273+220)/273】 1・75=0.228(m2/h)

[15](p222拡散係数)参照

入=0.033(kcal/mh℃ ) (蒸気 220℃ )

Cpl=0.460(kcal/kg℃ )(蒸気 220℃ )

β =0.440(kg/m3) (蒸気 220℃ )

∴Let= [0.033/(0.460×0.440)] /D=0.1630/0.228=0.7151

L=潜熱=540(kcal/kg)

∂∞=345(℃ )は水滴周辺 の温度 であ り一定す る。

wl.Wの値 は次式で与 え られ る。

W..W=(pl/P) 【(Ml/M2)/[1-(1-Ml/M2)(pl/P)]】

=(0.4/1)【(18/27.3) /[1-(1-18/27.3)(0.4/1)】=0.260

[22] (p114、2式)参照

但 し P=全混合気圧力 (Pa)=101.3(kPa)=1(ata)

pl=水滴周囲の部分圧力 は水温 を 75℃ とす ると、蒸気表 よ り

pl=0.4(ata)となる。

Ml=18 (水の分子量)、 M2=27.38(ガスの分子量)

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W∞=水蒸気量/ガス量=5665(kg.steam/h)/42780(kg.gas/h)

=0.132(水滴より遠方の濃度)

/・[(ilo.132)/(1-wl.W)]1/Le'=l+[0.46(360-Ow)]/540

上式にwl.W=0.260 、8W=75(℃)を代入する。

左辺の値 と右辺の値が同じであれば、8W=75(℃)となる

左辺 〔(1-0.132)/(卜0.260)〕1/0・7151=1.250

右辺 1+[0.46(345-75)]/540=1+0.240=1.240

∴左 辺 と右辺 は殆 ど等 しいので 水滴周 囲の飽 和温度 は ∂W=75

(℃)となる。 (実際の Excelプログラムでは βW=100℃としている)

5.4蒸発開始までの時間(t。)の計算

(1)蒸発 開始時のスプレイ水滴のヌッセルと数(N。)

Re数 はガス速度とスプレイ水滴速度の相対速度、水滴直径を用いて計算

する。

ガス流速 ug-ガス流量 (Nm3)/ガスダクト面積(m2)

=(42780/1.24)/(1.24×3.3)=8431(m/h)(at0℃,1atm)

=8431×(400+273)/273×3600=5.77(m/S)

スプレイ水水滴の噴 出速度 vl(m/S)は下記 のとおりである.

スプレイ水滴の噴 出速度 vl(m/sec)、噴霧圧力20(kg/cm2)、粒径 50〃m

噴出 口径 1.8(mm)、スプレイノズル数 10本 をダクトに配置する。

∴1本のスプレイノズルの容量

=5665(kg/h)/10=565(kg.H20/h)

=9.43(liter/min.1本)

vl =Q/A=9.43×10~3/〔0.785×(0.0018)2〕

=3700(m/min)=61(m/sec)

又は vl=√2gh=(2×9.8×200)0・5=62(m/S)となるが、流速 はノズルを出てからは

広がりを見せ急速に減速すると考えられる。従って、ノズルメーカーの意見を入

れて、(1/2)V.をRe数計算 に採用する。

(1/2)×62=31(m/S) とする。

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Nu=2〔1+0.27×(PrO・333)×(ReO・5)

=2〔1+0.27×(0.690・333)×(460・5)=5.304

但し d=50(〃m) ug=vl-ug=3卜 6=25(m/S)

pg=1.24×273/(273+210)=0.7(kg/m3) (at210℃)

〃g=0.086(kg/mh)(400+20)/2=210℃

Pr=0.69 (at200℃)

故 にα=Nu.九g/d=(5.034×0.032)/50×10~6=3395(kcal/m2.h.℃)

但しNu=5.034 九g=0.032(kcal/m.h.℃)

(at(400+20)/2=210℃)

gaS

G=42780kg-gas/h

Tg=400 ℃ ○薫 温 20℃pl=1000 kg/m̂3

Cp=1.003kcal/kg.℃

d=50〃m

温度℃

400 ガス 温度

20i i

スプレイ水滴 時間

図 5-1 蒸発開始時の水滴径ガス水温の変化

58

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(2)蒸発開始迄の時間(to)の計算

次式 によりto(sec)を計算する。

Tl=Tg-(Tg-Tl)Exp【-(6九g.Nu/Cpl.pI.d2)×t。】

但しTl=βW=80(℃)、 Tlo=20(℃) (スプレイ水温度)

Tg=400(℃)、九g=0.0325(kcal/m.h.℃)〔at(400+20)/2=210℃〕

β1=1000(kg/m3)(at20℃)、Cpl=1.0035(kcal/kg℃)

Nu=5.034、d=50×10~6(m)

これ等の数値を上式 Tlに代入すると

Tl=400-380Exp(-0.428×10~6×t。) を得る。

蒸発開始温度 Tl=βW=75(℃)であるからto(sec)は次の通である。

80=400-380Exp(-0.4128×106×t。)

320=380/e((0.4128×106)t。

e〈(0.4128×10~6)=380/320=1.1875

0.4128×106×t。×log(e)=log(1.1875)

(注 :ここでは log(e)は eの常用対数を表す)

∴ t。=0.41×10~6 (h)=0.0015(sec)

蒸発距離 1eニー。×ug-0・0015(sec)×6(m/sec)-0・009(m)

計算結果

スプレイ水は 400℃のガス中にノズルより噴射されると、 0.0015sec

で 9mm移動して、 水滴 は 75℃に達する事 になる。

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5.5蒸発 開始後スプレイ水量の経時変化計算例

スプレイ水温、ガス温度変化

0.005sec

図 5-2 スプ レイ水滴,ガス温度 の変化

a)20%蒸発が完了す るまでのガスの状態値 (熱量、水滴水径、ガ

ス温度の変化)

水滴径 d(〃m)は蒸発量の変化 によ り次 の通 り変化す る。

(d。3-d13)/d。3=0.2 ∴dl=0.928do

∴dl=0・928×50×10~6=46・4×10ー6

蒸発量=5665×0.2=1133(kg.steam/h)

最初 の水滴

~~~~ ~ ~ \

ガス と水蒸気 の混合物 ~~~-

do=50〃m

20℃ か ら 75℃ -

図 5-3 水滴 の直径変化 と蒸発量状 の変化

60

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(注)ガス温度 tgoの計算 について

この tgoの計算上 の注意点は次 の通である。

水蒸気分子 とガス分子 は混合物 として扱 われ るが、水 は

d=48.4×10~6m、であ り、ガスや水蒸気分子の径 d=1×10~8mと

に比 して大 き く、液体 として取 り扱 う必要がある。

スプ レイ水噴射前 のガスの総エ ンタル ピ(ガス温度 360℃)

=純ガスの総エ ンタル ピ=G(kg/h)×Cp(kcal/kg℃)×tg(℃)

=42780×0.2692×360=4145890(kcal/h)

モル数お よびモル分率の計算

モル数

純ガス 42780/27.38=1561.4

水蒸気 1133/18 = 62.9

小計 =1623.3

モル数お よびモル分率の計算

モル数

純ガス 42780/27.38=1562.4

水蒸気 1133/18 =62.4

水 4532/18 =251.7

小計 =1877.1

(1)水 を含 まない場合

モル分率

×(1/1623.3)=0.961

×(1/1623.3)=0.039

=1.000

(2)水 を含む場合

モル分率

×(1/1877.1)=0.832

×(1/1877.1)=0.034

×(1/1877.1)=0.134

=1.000

混合ガス Cpの計算

=純ガス CpXモル分率+水蒸気 cpxモル分率+水 cpxモル分率

=0.2675×0.832+0.47×0.034+1×0.134

=0.3724(kcal/kg℃)

混合ガスの温度 tg2。の計算

全ガスエ ンタル ピ=混合ガスエ ンタル ピ

4145890=(混合ガス重量)×cpxtg2。

tg2。=290(℃)

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純ガス温度 tg2。(℃ )の計算

純 ガスの保有熱

ガス熱 量 水 の加 熱 水蒸発潜熱

=42780×400×0.270-5665(80-20)-(5665×0.2×540)

=2444880(kcal/h)

∴3993000=42780×tg2×Cp2

93.33=tg2×Cp2

tryanderror 法によ りtg2(℃ )を求 める。

tg2 Cp2 左辺 の値 (93.33)

300 0.2675 81

350 0.2678 93.90

∴tg2=350℃とな る

b)蒸発 量 20%完 了までの時 間 t2。(sec)

(此処では水滴周辺 はガス と水蒸気 だけが存在 し、水分 は存 し

ない と仮 定 してい る 。 従 ってモル分率 の値 が変 わってい る)

dO=50×10~6(帆)

dl=46.4×10~6(m)(20%蒸発後 の水滴径)

∴dm= 〔(50+46.4)/2〕 ×10ー6=48.2×10~6(m)

d(d2)/dtニーCe

∴ ∫d(d2)= -ceJdt

左辺 は 0- m 迄、右辺 は 0- tまで定積分す る

dm2=do2-cet

t=176.76×10~12/ce(h)

dl=do2-cet

t=96.4×3.6×10~12/ce (h)

蒸発 定数 Ceは次式で求 め られ る。

ce=(4人gm.Nu/Cpvtpl)1n【1+(入S/九g)(Cpvー/L)(Tg-Tl)】(m2/h)

但 し pl=960(Kg/m3)(水 80 ℃ )

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Agm=水滴表面の温度境界層 にお ける平均熱伝導率 (303℃)

純ガス熱伝導率=モル分率 ×熱伝導率

=0.961×0.0385=0.0370(kcal/mh℃)

水蒸気熱伝導率=モル分率 ×熱伝導率

=0.039×0.0380=0.0014(kcal/mh℃)

cpvー=水蒸気比熱=0.51(kcal/kg℃)

九S=水滴表面の純ガス熱伝導率=0.042(kcal/kmh℃)(350℃)

L=水滴蒸発熱=539(kcal/kg)

Tl=水滴 の温度=75℃

混合ガス 290℃ 温度境界層

純ガス Tg350℃

dl=46.4〃m

Tl=75℃

350℃ 純 ガス

水滴面

蒸発 中

図 5-4 水滴温度境界層 とガス温度 の変化

63

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Nu=2【1+0.276(Rem)050.5.(Pr)0・333】

Remの計算

平均ガス pg=1.24/2.172=0.570(kg/m3)

at (290+350)/2=320℃

(273+320)/273=2.172

平均水蒸気 ps=0.58(kg/m3)

混合ガス pg=0.961×0.57+0.039×0.58=0.56(kg/m3)

ガス平均速度 um= 【〔42980/0.56+1138/0.58〕/1.2×3.5】

=18786(m/h)=6.0(m/S)

混合ガス平均粘性係数 〃gm

純ガス 〃g=0.106(kg/mh)at350℃

水蒸気 〃 S=16.1×3600×10ー6=0.058(kg/mh)at75℃

〃gm=0.106×0.961+0.058×0.039=0.1041(kg/mh)

∴Rem=d.um.Pg/〃gm=46.4×10~6×18786×0.556/0.1041=4.46

混合ガスプ ラン トル数 Prm

純ガス Prg=0.69at350℃、水蒸気 prg=1.09at75℃

Prm=0.69×0.961+1.09×0.0389=0.705

∴ Nu=2【1+0.276×(Rem)05×(pr)0・333】

=2【1+0.276× (4.60・0・5) × (0.7950・333)】=3.06

∴ce=(4×0.0384×3.06/0.51×960)

×1n【1+(0.042/0.0389)×(0.51/539)×(363-80)】

=0.00023(m2/h)

水滴 の蒸発時間 t

∴t=96.4×3.6×10~12/ce(h)=96.4×3.6×10~12/0.00023

=1568869×10~12(h)=0.0056(sec)

(この計算 は全スプ レイ水分 の 20%蒸発の場合 である)

64

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5.6ガス冷却速度の計算結果 とま とめ

計算条件

家庭 ごみ焼却炉 150(ton/day)

ガス温度 初期 400℃ 冷却後 200℃

ガス流速 5- 6 (m/sec) スプ レイ水流速 32(m/sec)

ガス量 42780 (kg-gas/h)

スプ レイ水滴直径 50 (〃m) スプ レイ温度 (初期温度)20℃

スプ レイ水量 5665 (kg/h)

表 5-1ガス冷却速度 の計算結果 の纏 め

水谷 の式 小林 の式 甲膝 の式

蒸発 までの時間 tO (S) 0.0015(S) 0.005 な し

蒸発 開始後 20%蒸発 の時間t1(S) 0.0056(S) 0.011(S) 0.012(S)

蒸発 開始後 100%蒸発迄の時間 t2(S) 0.0293(S) 0.045(S) 0.068(S)

to(S)+t120%蒸発完了時間 0.0071(S) 0.016(S) 0.012(S)

TO(S)+t2 100%蒸発完 了時間 0.0303(S) 0.050(S) 0.068(S)

蒸発 定数計算値 Ce(S) 0.00023(m2/h)

蒸発定数計算値 小林 の式 0.00015(m2/h)

蒸発定数計算値 甲膝 の式 0.00010(m2/h)

65

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第 6章 排ガス冷却法によるダイオキシン類の生成抑制計算プログラム

6.1プログラムに関す る計算式一覧及び入力データ

6.1.1計算式一覧

○ ごみの元素組成 (シュミレーシ ョン条件で異なる)

炭素 C(wt%):19.3、水素 h(wt%):2.9、窒素 n(wt%):0.4

酸素 o(wt%):15.5、硫黄 S(wt%):0.02、塩素 cl(wt%):0.2

付着水分 h20 (wt%):53.48、灰 a(wt%):8.2、合計 100%

○燃焼ガス量、ガス組成、ガスの物性値 (ガス比重、ガス分子量)

重量ベース燃焼ガス量

理論空気量 Ao=11.6C+34.8h-4.35(o)+4.34S(kg/kg.fuel)

燃焼ガス組成

co2ガス量 =(44/12).C (kgCO2/kg.wet.fuel)

so2ガス量 =(64/32).S (kgSO2/kg.wet.fuel)

02ガス量 =0.23(A-1)Ao (kgO2/kg.wet.fuel)

N2ガス量 =n+0.77人Ao (kgN2/kg.wet.fuel)

HClガス量 =1.cl (kgHCL/kg.wet.fuel)

乾きガス量=CO2+SO2+02+N2+HCL (kg.dry.gas/kg.wet.fuel)

全水分量 H20=9h+W+(九.Ao.wo)

=9h+53.48+(a.Ao(0.008)) (kg.H20/kg.wet.fuel)

全湿ガス量=CO2+SO2+02+N2+Hcl+ 〔9h+53.48+(A.Ao.0.008)〕

(kg.wet.gas/kg.wet.fuel)

燃焼ガス比重 γ=1.24 (kg.wet.gas/kg.wet.fuel)

6.1.2スプ レイ水量の計算条件 (シ ミュレーシ ョン条件によって異なる)

ガスダク ト入 口、ガス温度 400℃ (スプ レイ水量の算定基準)

ガスダク ト出口、ガス温度 100℃( 同上 )

スプ レイ水温 20℃ ∴スプ レイ水量 5666 (kg/h)

66

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6.1.3スプ レイ水滴の温度上昇

スプ レイ水滴の温度上昇計算法は水谷の方法による。

○水滴が飽和温度に達するまでの伝熱計算式

dt(sec)時間に上昇する水滴温度の計算

(dTl/dt)= 〔(6人′g一.Nu)/C1.〟 1.d2〕〕(Tg-Tl)

但 し

dt: 水滴がガス中で蒸発する時間を示す (sec)

九gー:水 滴 周 囲 の境 界 温 度 に 於 け る ガ ス の 熱 伝 導 率

(kcal/mh℃)

Nu: 水滴径が小 さいので 2とする

Tg: ガス初期温度 (℃)

Tl: 水滴初期温度 20(℃)とす る

cl: 水の比熱 1.0(kcal/kg.℃)

d :スプ レイ水滴直径(〃m)(100,200,300,400,500など)

6.1.4スプ レイ水飽和温度到達後の t(sec)後における水滴径 dsp(〃m)

の変化 と蒸発量の計算

0.蒸発の開始 と水滴径の変化

この場合水滴径の 2乗の変化は蒸発定数 Ceに比例することが

験的に知 られている。

d(d2)/dt=-Ce

∴ Jd(d2)=-∫ce.dt

dm2ldo2=・Ce.t

但 L d。は t=0の時の直径

○蒸発定数 Ceの計算

蒸発定数は Longwellによって理論的に導かれている。

Ce= 〔(4九g、.Nu)/(Cpv.pl)〕ln 〔1+(九gs,Cpv)/(九g、.L)〕(Tg-T.)

67

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但 し

Cpv:水蒸気の平均比熱 (kcal/kg℃)

九gー:水滴の温度境界層の平均熱伝導率 (kcal/m.h.℃)

九gs:表面でのガスの熱伝導率 (kcal/m.h.℃)

L: 水滴の蒸発潜熱(kcal/kg)

Tl;水滴の温度

○滞留時間 t(sec)の計算

流速 Ⅴ=Ⅴ/S (m/S)

但 し

Ⅴ:ガス流量(m3/see)

S:ダク ト断面積 (m2)

ダク ト長 さ 1(m)とすると

滞留時間 t=1/v (sec)

○水滴径 d(m)の変化

d=10×((dXIO~1)2-cet)05 (mm)

○ダク ト内の水滴蒸発量 Wtspi

水滴の蒸発量は水滴直径 dの 3乗の変化によって表す こと

ができ最初の水滴量をWspiとすると、次の dt時間後には、

スプレイ蒸発量 Wーspiは次の通 りになる。

Wーspi=Wspl-(スプ レイ水滴減少量)

スプ レイ水蒸発量=

WspiX(7t(dspil)3)/6)/((7t(dspi)3)/6)

=wspiX(dspil)3/(dspl)3

スプ レイ水蒸発量

W、sp=Wspl-Wspi(dspil/dspi)3

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残水量

Wspi=(Wspi.) - Wーspl

○ 蒸発後の混合ガス量 Westl

westi=(燃焼ガス量+スプ レイ水量+水蒸気量)

=4.521(理論値)+w tspi(kg/m2.sec)

westl-1=Westiの次のダク ト内の混合ガス量

○蒸発前ガス温度

水滴温度 Tiく100℃の場合

水滴が 20℃か ら100℃まで上昇す る時のガス温度について

計算す る。

この場合水 とガスは混合 していない状態である。

スプ レイ水量 5665kg/hを100℃に加熱するに必要な熱量は

下記の通 りである。

Qw=Wsp(kg/m2.S)×(Tll。。-20)×Cw(kcal/kg℃)

ガス量 42780kg/hの温度低下は下記の通 りである。

Qg=West(kg/m2.S)×(Tgl-Tgil)cpg(kcal/kg℃)

Qw=Qgとして次式を得 る。

Tgi= ( (Wes t il.Cp.Tg i)-Cw (Tl l。。-20).wspi) /West i l.Cp

但 し

Westil=ガス量

Cp=ガス比熱 (kcal/kg℃)

cw=水の比熱 (kcal/kg℃)

○蒸発 中の混合ガス温度

Tl≧100℃の場合

水滴 100℃以上、水滴蒸発中の混合ガス温度の計算

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Tgi=((West-1.Cp.Tgi-1トWーspi.L)/(West-1+Wtspi)

但 し

west=燃焼ガス量 (kg/m2.S)

W、spi=エ レメン ト内の蒸発量 (kg/m2.S)

混合ガス (West+Wーsp)の比熱

cp=燃焼ガスの比熱 0.28-0.26(kcal/kg.℃)

(at400-loo℃)

cpst=水蒸気の比熱 0.51-0.316(kcl/kg.℃)

(at400-loo℃)

Cpw=水の比熱 1(kcal/kg.℃) 一定 とす る

○混合ガスの物性値 の計算 はモル数、モル分率を用いて計算 る。

モル数 モル分率

純ガス ml=ガス量/純ガス分子量(27.38) ml/M

水蒸気 m2=水蒸気量/水分子量(18) m2/M

水 m3=水量/水分子量(18) m3/M

合計 ml+m2+m3=M

混合ガス Cpの計算

=純ガスCp.(ml/M)+水蒸気 Cp.(m2/M)+水 Cp.(m3/M)

混合ガス Cpの計算結果=0.340(kcal/kg℃)である。

○ガス中のダイオキシン類 の生成量

page18、19、20及び page26の計算法を参照のこと。

6.2プログラムチャー ト

ダイオキシン類生成 を抑制す る計算 を行 うプログラムを Excelで

作成 した、作成 したフローチャー トを次頁に示す。なを iはエ レメン

番号である。

70

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図 1. フローチャー ト 71

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1.各ブロックの計算式

a) 入力

以下の項 目b)以降に記された入力項目の全てをここで入力する.

b) ダク ト

ェレメン ト長 さ l=三n

入力 :

SXn

断面積[m2]

流れ方向長 さ[m]分割数

C) 単位換算その他

燃焼処理量 West。

スプレイ量 Wspo

inWestx1000

∫×3600

inWspx1000

∫×3600

1inlr

dspo=indspxlO~3 [mm]

wsp0-号 dspo3×10~6×Nsp lkg/-2・S]

噴霧粒子数 Nsp=

入力 :

inW。st :燃焼処理量【仙】

inWs。 :スプレイ量【仙】

inds。 :初期水滴直径[〃m]

d) スプレイ水滴温度計算

水滴の上昇温度 (dt【S]における上昇)

dI;I

水滴温度

入力 :

A g

N、】

CI

Pl

61gNu

cl・Pl・(dspxlO~1

TIz=Tz_1+dT,_1

四日u

[個]

叫E

um左

熱伝導率【kcal/cm・S・℃]ヌッセル ト数 (2-定数)

比熱[kcalkg℃]

密度[kg/cm3] (水 :0.001)

]

]

rtL

r._L

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e ) 水 滴蒸発計算

cel-豊 n〈1+管 (Tgz- T z))

(dsplXIOll)2-(dspl_.×10」)2-ceレl(dt卜1-I)

dspz=10x

九g,Nu, plは前記

Cpv :水蒸気定圧比熱[kcaln'g・℃]

水蒸発潜熱 539lkcaMig]遅れ (定数 o)

水滴表面の純ガス熱伝導率[kcal/cm・S・℃]

f)水蒸発

各エ レメン ト内での蒸発量

残水滴量 W spz=W sp.-I-WIspz lkg/m2・S]

g) 蒸発後ガス量

ガス量 Westz=West卜l+W sp卜l

h) ガス温度 (蒸発前)

Tll<100℃の場合

水滴 100℃までのガス温度

[kg/m2・S】

westl_I・Cp・Tg z; Cw.(T z-Tl卜 1)・WspzWestz-1lCp

入力 :

Cp :ガス比熱【kcalA'g・℃】Cw :水の比熱【kcal瓜g・℃】

i) ガス温度 (蒸発中)

Tl≧100℃の場合

水滴 100℃以上.水滴蒸発中のガス温度

・gl-W estz-Lf _plA.Tgi-llspTw ipz'L[℃]

[cm 2/S]

1~Ill1111

73

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j)排ガスの計算重量速度は下記の通 りである。

理論空気量 A。=11.06C+34.8h-4.35(o)+4.34s

N2=0.8555× [n+0.77人A。] (kg-N2/m2sec)

02=0.8555×0.23(A-1)A. (kg-02/m2sec)co2=0.8555×(44/12)C (kg-CO2/m2sec)

so2=0.8555×(64/32)S (kg-SO2)/m2sec)

HCl=0.8555×1(C1) (kg-HCl/m2sec)H20-0.8555× [9h+53.4+入A。(0.008)] (kg-H20/m2sec)

但し inWest=6160(kgfuel/m2×3600sec)=0,8555(kgfuel/m2sec)

ガス流速の計算

N2ガス

02ガス

CO2ガス

SO2ガスHClガス

H20水蒸気

N2(22,4/28)(Tgl+273)/273 (m/sec)

02(22・4/32)(Tgl+273)/273 (m/sec)

CO2(22・4/44)(Tgi+273)/273 (m/sec)

SO2(22・4/64)(Tgl+273)/273 (m/sec)

HCl(22・4/36・5)(Tgl+273)/273 (m/sec)

H2[(Ws。。-Ws。1)+H20](22・4/18)(Tgi+273)/273 (m/sec)

∑=vl(m/sec)

入力: 廃棄物組成

C :(wt%) 19.3

h :(wt%) 2.9

n :(wt%) 0.4

0 :(wt%) 15.5

n :(wt%) 0.4

S :(wt%) 0.002

C1 :(wt%) 0.2

ash :(wt%) 8.2

^ :1,7

k)滞留時間 t-1/Vl(sec)

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1) ダイオキシン発生量(1)Alhvicker

Kr7-5109×109×師 ×exp(120800/R(Tg,・273))

ADs7=Krl・0・PgxO・058

1Ilo.3ex癌笥〕

-105exp〔諾笥 〕

-10.3exp〔諾 笥 〕入力 :β,Pg,良

m)ダイオキシン発生量(2)Stanmore

cd'=13.6×10~9×exp(-0.011×CSO2)

sDs1-0.38×10<9×Cash/(〟×d)((0.72×αP/(Tg+273)((1/2)ト3.78×

10人13exp(-20000/(Tg+273))Xp)×dt

入力 :Cash, P,d, α,P,Xp,CSO2

実際のダイオキシン類の発生量はクーリングファクターβで割る事により得ら

れる。

実際のダイオキシン類の生成量SDuct

SDuct-(SDsi)/β (ngTEQ/Nm3)

β=130-500(℃/Sec)である。[9,10]

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6.3計算プログラムの入力値設定

6.3.1計算モデル

都市ごみ焼却炉 150(トン/目(6410kgfuel/h)を想定し、排ガスボイラ出口の冷却塔

における燃焼ガス中のダイオキシン類生成抑制量のシミュレーションを行った。

Coollngtower

図 6.1スプレイ水による排ガス急冷部

冷却塔の配置

6.3.2計算条件

○固定値は次の通りである。

都市ごみ量 6.41(tごみ/h)

都市ごみ元素組成

炭素 C:30.83、水素 h:4.52、窒素 n:0.66、酸素 o:26.51、硫黄 S:0.03、塩素 cl:1.00、

水分 h20:31.3、灰分 ash:4.3不燃物 0.85合計 100%

冷却塔(図 6.1)

冷却塔の有効高さ 10m、計算上の分割 n=100、冷却塔の直径 4.2m、断面積

13.8m2、スプレイ水は下部より上方に向かって、噴射される。

○変数値

焼却炉の運転特性を知るために、下記の変数値を用いて、シミュレーションを行

った。

スプレイ水滴径 dsp(〃m)100、200、300、400、500及び 600-1000

過剰空気率 九:1.7(通常)、及び 2.0

燃焼ガス量 G:49414kg/h (入1.7)、及び G:57065kg/h(九2.0)

スプレイ水量Ws。:2・245ton/h、及び 5・00ton/h

ガスのヌッセルト数 N。:2及び 4

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○ 物性値 比熱 C。、熱伝導率入、密度 pなどは別途計算により求めた。

○ 物性値は計算範囲の温度の平均値を用い、ガス水蒸気の混合物の場合はガス、

水蒸気のモル分率も考慮 している。

6.3.3シミュレーションの入力値

ここでは前項まで述べたデータを参照して、入力値の 1例を入力する。

表 6.1入力値表

a.冷却塔の形状

塔の直径 [m] 4.2

塔の高さ [m] 10

断面積 S[m2] 13.8

流れ方向の長さ X[m] 10

分割数 (エレメン ト数) n 100

エレメン ト長さ 1[m] 0.1

スプレイ水噴射位置 ・p[m] 0.01

ガス重量速度 Wgaslkg/m2S]b.ごみ燃料と空気 量

燃焼ごみ処理量 1'n脆st[t/h] 6.41

ごみ重量速度 Mbstlkg/m2S] 0.129

ごみ元素組成[kg元素/kg-fue1] C 0.3083A 0.0452

A 0.0066

(フ 0.2651

∫ 0.0003

C1 0.0100

jl20 0.3130

ash 0.043

空気過剰率 i 1.7

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C スプレイ水

スプレイ水量 ‰[t/h] 2.245

‰[kg/m2S] 0.04518921

噴霧粒子系 aTsp[FLm] 100

dsplmm] 0.1

d熱物性値

熱伝導率 1g[W/mK] 0.0309

ヌッセル ト数 ノⅥ′ 2

水の比熱 〟(KJ/kgK) 1

水の蜜度 JO 1(kg/cm3) 0.001

初期水温 T10lOc] 20

初期ガス温度 ㌔♂[℃] 100

水蒸気定圧比熱 CpvlkJ/kgK] 0.47

水蒸気の潜熱 LlkJ/kg] 2260

遅れ時間 r[sec] 0

水滴表面の純ガス熱伝達率 d slW/mK] 0.0309

純ガスの比熱 (平均温度2770℃) CplkJ/kgK] 0.275

水の比熱 CW[KJ/kgK] 1

78

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eダイオキシン類量

SurfaceCover.age ∂(有効反応サイト率を示す) 0.00004

灰 1グラム当たりダイオキ Pg 420000

シン量 [ng-DXN/g-ash]

ガス定数 R[ca1/mo1.K] 1.987

排ガス中の灰濃度 Cash[g-ash/m3] 1.0

灰の密度 β[kg/m3] 2000

灰の直径 daー[m] 0.0000008

StrikingFactor α 5E-08

HClの部分圧力 P[pasca1] 24.6

79

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第 7章ダイオキシン類生成抑制プログラムによるシミュレーシ ョン結果

7,1シミュレーシ ョン結果のま とめ

7.1.1Altwlcker の場合

先に記入 した入力データを用いて,更にスプ レイ水直径 dsp(〃m)入 口ガス温

度 Tg。(℃)を変化 させて、シ ミュレーシ ョンを行った結果をグラフとしたものが、

図 7.1である。

ダイオキシン類の生成量は中高の釣鐘状 とな り、約 350℃で最大 とな り、約 3

65℃で 0となっている。スプ レイ水直径が小 さい程ガス温度は急速に降下 し、

ダイオキシン類の生成量は少ない。

図 7.1か らダイオキシン類の生成量は dsp-500〟mの折れ線 と横軸の温度線で囲

まれた面積で表 され る。 従って、dsp-400〃m等順次求めることが出来る。dsp-

500〃mを 100%として、dsp-400、300、200、100〟mについて、計算 しグラフ化

したのが図 7.2であ り、ダイオキシン類抑率 77 [0/.]である。

[s

NC

∈\Bu

]s

u!xo!pJosuo!1euuOJ

0 100 200 300 350 365

gasductin一ettemperatureoC

図 7.1スプ レイ水径 dspとダイオキシン類

80

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ダイオキシン類生成量、 77等の計算結果

入 口ガス温度 350℃、dsp lOO、200、400、500 〟mについて、同様の計算を行

った結果を表 7.1及び図 7.2に示す。

表 7.1ダイオキシン類生成量、 ts,77、等の計算結果

水滴径 ガス温 抑 制 バ グ フ ィ ル 滞 留 時 最終点のダイオキ

dsp〃m 痩 率 タ後 DXN 間 シン類

tg℃ n ng/Nm3 tssec TEQng/Nm3

500 350 1 578 5.8 39.4

400 350 0.71 433 5.8 17.1

300 350 0.40 111 5.9 5.9

200 350 0.25 42 5.9 3.4

100 350 0.19 25.5 5.9 1.7

0

0

0

0

0

0

2

0

8

6

4

2

(%)LL

uXPu

O!1°

uuOJ

J

o

alt21uO!SSa・J

dd

ns

0100200 300400 500

spraywaterdroplet(〟m)

図 7.2スプレイ水滴径 dspとダイオキシン類

抑制率 77

7.1.2Stanmoreの場合

stanmoreのダイオキシン類生成式を用いて、スプ レイ水滴径を大きく変化 さ

せてシミュレーションを行った結果、スプ レイ水径が大きくなるほど、ダイオ

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キシン類の生成量が減少する事にな り,Altwickerの場合 と逆になった。従って、

Altwickerのシ ミュレーシ ョン結果を採用することとした。

然 しなが ら、Stanmoreは本格的に検討 されなかったった温度効果 について、実

焼却炉の排ガス出入 り口にガス冷却器 を設置 して、ガス出入 り口に置けるダイ

オキシン類の計測を行い、ダイオキシン類抑制の温度効果 を示すクー リングフ

ァクター β [K/S]を導入 した。

クー リングファクター βは排ガス冷却器の入 口ガス温度 tgl[K]、出口ガス温度

tg2 [K]とし、この温度変化 に必要な時間を t[sec]とすると

β-tgl-tg2g (7.1)

で与えられ る。

7.2シミュレーシ ョン結果 と其の有効性

7.2.1シミュレーシ ョンによるダイオキシン類の生成量の検討

シミュレーションを行った賓焼却炉にはダイオキシン類生成抑制対策として、冷却塔、

活性炭(消石灰)注入装置、バグフィルタが設置されている。今回の計算プログラムによ

る解析は冷却塔について行っている。公開されているダイオキシン類計測値はバグフィ

ルタ出口の値である。従って活性炭、消石灰、バグフィルタの性能を調査し、シミュミュ

レーション結果より活性炭、消石灰、バグフィルタで除去されるダイオキシン類を差し引

いた結果と比較検討する。以下計算順に従って記す。

①図 7.1より,入 口温度 350℃の場合、スプレイ水滴径 dsp-100〃mで 2000

(ngDXN/m3Ns)である。

②図 7.2より、ダイオキシン類生成抑制率 77=0.19であるから、冷却塔出口では、

2000×0.19=380(ngDxn/m3Ns)である。

③活性炭と消石灰の混合物がバグフィルタの入り口に注入されている。これらのダイオ

キシン類の除去率は 99%であるから[23]、380×(1-0.99)=3.8(ngDXN/m3Ns)である。

④排ガス中の全ダイオキシン類 3.8(ngDXN/m3N)の分布存在状態[24]

1%は排ガス中に存在する。 3.8×0,01=0.038(ngDXN/m3Ns)

99%はフライアッシュ上に存在する。 3.8×0.99=3.762(ngDXN/m3N)

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⑤バグフィルタのダイオキシン類除去量

1%のダイオキシン類はバグフィルタのフィルタの綱 目を通過し捕捉されないとすると,

0.038(ngDXN/m3N)はバグフィルタより排出される。

99%のフライアッシュ3.762(ngDXN/m3Ns)の内,99.5%はバグフィルタで捕捉されるので

[25]、3.762×(卜0.995)=0.0188(ngDXN/m3Ns)となる。

⑥煙突入 口のダイオキシン類量は 0.038+0.0188=0.0568(ngDXN/m3N)となる。

⑦TEQ-の換算 0.0568/100=0.000568(TEQng/m3Ns)である。[26]

7.2.2実焼却炉の公開ダイオキシン類計測値

公開ダイオキシン類計測値はスプレイ水滴径 dsp-loo″mで 0.0000027(ngTEQ/m3)

ある。この値とシミュレーションによって得られた値 0.000568(ngTEQ/m3Ns)にダイオキ

シン類の生成時間をかけた値と比較するとよい。ダイオキシン類の生成時間t2(sec)は

次の通り求められる。

t =計測に必要なサンプリ ングガス量 3 125m 3

焼却炉全ガス量 11.06m d /see=0285 sec

従って 0.000568×0.285sec=0.000161(ngTEQ/m3N)となる。 この値は分析値 より

多きいが、法規制値 0.1ngTEQ/m3Nに比較 して、許容できる値 と考えている。

7.3都市ごみ焼却炉運転上の指標

○焼却炉の通常運転時の過剰空気率は え=1,7であるが、燃焼量が増加 し、九=2.0

とすると、ダイオキシン類の生成量はスプ レイ水径 dsp=300〃m、ガス温度 350℃

で 32%増加する。 (表 7.2)(図 7.3)

表 7.2空気過剰率九の増加によるダイオキシン類 dxn増加率o/.

入 口ダク トガス温度 100 200 300 350

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0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

6

5

4

3

2

1

(s

NCくLuJBu)su!xo!pJo

uo!1e∈

0)

0 100 200 300 350 365

gasductinlettemperature(℃)

図 7.3過剰空気率 九ダイオキシン類生成量 (ダイオキシン類抑制率刀を考旅 しない場合)

○焼却炉の通常運転時のスプ レイ水量は 2.245t/hであるが、他の条件は変更

しないで、スプ レイスイ量だけ 5.Ot/hとすると、ダイオキシン類はスプ レイ水

径 dsp=300〃m、ガス温度 tg=350℃で、ダイオキシン類は 31%に減少す る。 (表

7.3) (図 7.4)

表 7.3スプ レイ水量 Wsp増加 によるダイオキシン類 dxn減少率%

入 口ダク トガス温度℃ 100 200 300 350

(szc(TnJBu)suxpJouo!1tZtnJO

J

0 100 200 300 350 400

gasductinlettemperature(℃)

図 7.4スプ レイ水量 とダイオキシン類量 (ダイオキシン類抑制率nを考慮 しない場合)

○高温ガス と水滴間の伝熱係数であるヌ ッセル ト数は現在 2として、水滴の蒸

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発は計算 しているが、この値をスプ レイ噴出速度 とガス速度の差、相対速度を

考慮するときは、Nu=4とすることができる。この場合スプ レイ水滴 dsp300〃m、

ガス温度 tg=350℃でダイオキシンシン類量 70%に減少する。

(表 7.4)(図 7.5)

表 7.4Nu数増加によるダイオキシン類の減少率%

入 り口ダク トガス温度℃ 100 200 300 350

0

00

0

0

0

0

0

0

0

0

00

0

0

0

0

0

0

5

0

5

0

5

0

5

0

5

4

4

3

3

2

2

1

1

(s

N

C

くLuJBu)suxp-o

uo!Te∈LoJ

0 100 200 300 350 400

gasductinlettemperature(oC)

図 7.5ヌッセル ト数Nuとダイオキシン生成量(ダイオキシン類抑制率nを考慮 しない場合)

○新設焼却炉のダイオキシン類の生成量のシミュレーション

新設焼却炉の都市ごみ等の元素組成が判明すれば、それをベースとして、

燃焼空気量、燃焼ガス量、ガス温度が計算可能 とな り、スプ レイ水量を算

出でき、本論文で述べたダイオキシン類の推定も可能である。 従って新設

時スプレイ水による冷却を採用 した場合は、ダイオキシン類の生成量も推

定できる。このことに関 しては、本研究は極めて有用な研究 と考えている。

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8章 結言

本報告では都市ごみ焼却炉におけるダイオキシン類の理論的生成機構を明ら

かにするために Shsub、Dickson、Altwlckerおよび Stanmore、C1uniesRoss

等の論文を基本から詳細に検討 し、ダイオキシン類の生成に関する生成速度

論 と水谷、Longwell等によるガス急冷に関するスプ レイ水滴蒸発冷却理論を

検討 し、両者を総合 してダイオキシン類生成速度論を構築 し、Excelで計算

プログラムを作成 し、ガス温度及びスプ レイ水径毎のシミュレーションを行

った。

その結果、ダイオキシン類抑制率 77カーブを作成 し、Stanmoreの提案する

クー リングファクタβを併用 して、下記の式で焼却炉におけるスプ レイ水

滴噴射によるダイオキシン類の抑制効果を計算 し推定ができることになっ

た。

77(dmpc,,/F/dt)/B (8.1)

先述の Excelprogram を使用 し、都市ごみ焼却炉の新計画では、ごみの元秦

組成が判明すれば容易に生成するダイオキシン類量が推定できることなった。

更に現在運転中の焼却炉については、ダイオキシン類生成に関する運転特性

を検討 し、明らかにした事である。

これ らの研究成果により、今後のダイオキシン類を最大抑制できる、ごみ焼

却炉の計画を容易にできることになり、併せて、ごみ焼却炉建設後のダイオ

キシン類抑制運転の指針 を示すことができ、其の成果は大きいと考えている。

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社,pp119,1998

【27】監訳森 田昌敏 ,訳 篠原 亮太/貴戸 東 ,ダイ オ キ シ ン入 門(U.S.EPA

RESEARCH REPORTINGSERIES"DIOXINS")財団法人 日本環境衛生セン

タ pp7-8,1997

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謝辞

最初に博士課程での研究を放送大学の修士論文を更に深 く詳細に研究することを認め

ていただき感謝 しています。私は企業の技術者、また技術士として、発電ボイラや都市

ごみ焼却炉等の計画、設計及びそれらの機器の建設工事を長く指導してきました。実務

とその報告書の作成は十分と言われましたが、学術論文を書くことは初めてです。この

博士論文は私の生涯にとって、81才と言 う年齢を考えると、学術論文としては最初にし

て、最後になるのではない かと思っていますが、このような学術論文とダイオキシン類

の生成抑制と言 う社会に貢献する論文を書くことが、目的でしたから、それが達成でき

ることを、心から感謝 している次第です。

本論文の完成にあたり、下記の方々に感謝の意を表 したいと思います。

石田正弘教授には大学院-の入学を勧めていただき、スプレイ水噴射に関する事項を指

導していただき、茂地徹教授には伝熱理論の研究、特に排ガス中のフライアッシュの伝

熱論やJoule-Thomson効果とVanderWaalsの状態変化式の連立式の解法等指導して

いただきました。また武政剛弘教授と熊本県立大学有薗幸司教授には学会投稿論文作成

を指導していただき感謝 しています。特に有固幸司先生には学術誌の投稿論文の掲載に

尽力していただきました。又山田たかし助教にはワー ド操作法等指導していただきまし

た。皆様方のご指導により、此処に博士論文を完成できました。ありがとうございまし

た。

89