地球環境との共生 - tdk · tdk-lambda uk ltd. production manager tim puttick...

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生産活動に伴う CO 2 排出量 (環境負荷量) 環境負荷には、資源利用、水資源利用など多くの要素 がありますが、TDKにおける環境負荷の最大のものは、 「生産活動に伴う CO 2 排出」と認識し、削減に取り組 んでいます。 環境貢献には、再生可能エネルギーの使用など多くの 要素がありますが、TDKにおける環境貢献の最大のも のは、「製品による CO 2 排出削減」と認識し、拡大に 取り組んでいます。 製品による CO 2 排出削減量 (環境貢献量) TDKでは、グループ全体の環境方針として「TDK環境憲章」を制定し、「地球環境との 共生」を重要な経営課題の一つと認識するとともに、持続可能な発展に寄与することを 目指しています。実現に向けて、環境ビジョン「TDK 環境活動2020」を策定し、電子 部品業界では初めてとなる「カーボンニュートラルの達成」を目標に活動を展開してい ます。 地球環境との共生 4 106.8万 t-CO 2 125.1 万 t-CO 2 生産活動に伴う CO2 排出量 (環境負荷量) 製品による CO2 排出削減量 (環境貢献量)  【 TDK の目指す「カーボンニュートラルの達成」】 生産活動に伴う CO2 排出量(環境負荷量)- 製品による CO2 排出削減量(環境貢献量) ≦ ゼロ 30 TDK CSR レポート 2015

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Page 1: 地球環境との共生 - TDK · TDK-Lambda UK Ltd. Production Manager Tim Puttick 生産活動に伴うCO2排出量(環境負荷量)の削減 TDKグループは、生産活動に伴うCO

2001年からスポーツ用品やアパレル関連の企業に在籍し、サプライチェーンにおける人権課題を中心に活動を行ってきた。2013年6月より、公益財団法人にて外国人技能実習制度に関わり、2014年8月より、株式会社エナジェティック グリーン、共同代表に就任し、CSRに関する研究、コンサルティングを行っている。

株式会社�エナジェティック�グリーン共同代表取締役

和田�征樹�氏

サプライチェーンにおけるCSR推進

■和田氏の主な意見・提言

 顧客からの監査要求が高まり続ける中、それに対応するTDK各拠点の負担は今後も増していくことが見込まれます。職場の人権・労働について、業界を問わず問題となり得るのは強制労働・児童労働・長時間労働など特定の項目です。これらは先んじて自社で調査結果を取りまとめ、問い合わせがあればいつでも提出できるよう備えておくことも大切でしょう。 現在、各拠点でこれまで受けた外部監査・内部監査の内容、結果、対策などの履歴を一元化し公開する試みを進められているとのこと、これは素晴らしい取り組みです。今後に向けた

リスク回避策として有効な上、顧客の要請に応え続けるためにも意義が大きく、ぜひ積極的に推進していただきたいと願います。 また、海外拠点の設立に備え、確実に実行すべき項目をチェックリスト化し、品質や設備、コストなどとともにCSR観点を組み込んだ、フィージビリティスタディをしている点は大変優れています。「現地」「現場」「現物」「現人」という4現主義に基づく展開の重要性をよく理解された行動をお願いしたいと思います。

サプライヤーとしての取り組みについて

 数多くある取引先に対し、SAQ(自己調査票)や監査、改善指導を一律に行うのは難しく、優先順位を意識した取り組みが求められます。取引先の依存度などを踏まえ、TDKとしてのガイドラインを明確にしていくことが欠かせません。 取引先へのCSR監査を行い、監査する人材育成にも注力する今、その先に何を目指すかが問われる段階を迎えています。

取引先への改善指導では、共に成長していくという視点から、指導を通じて相手企業の組織強化をサポートする「キャパシティ・ビルディング」の考え方が一層重要になります。情報開示の一環として、どのような項目をいかに指導したか、今後レポートにも盛り込んでいけるとよいように思います。

バイヤーとしての取り組みについて

 TDKは川中企業であるからこそ、サプライヤーとバイヤーの二側面からサプライチェーンを見渡すことができます。サプライチェーンで今何が重視されてきているかという傾向の把握は常に欠かせません。NPO・NGOとも連携し、人権課題の最新動向やCSR監査について指導を求めるといったことも一考されるとよいでしょう。

 これまでSAQ策定などで川中企業が強い存在感を示してこられなかったのは残念な点であり、グローバル化が進む中、川中企業としての考えをしっかりと表明していくことは不可避となっています。業界連携や業界横断を強化し、国際社会でイニシアティブがとれるような基準づくりに期待します。

川中企業として業界で求められる役割

生産活動に伴うCO2排出量

(環境負荷量)

環境負荷には、資源利用、水資源利用など多くの要素がありますが、TDKにおける環境負荷の最大のものは、

「生産活動に伴うCO2 排出」と認識し、削減に取り組んでいます。

環境貢献には、再生可能エネルギーの使用など多くの要素がありますが、TDKにおける環境貢献の最大のものは、「製品によるCO2 排出削減」と認識し、拡大に取り組んでいます。

製品によるCO2排出削減量

(環境貢献量)

TDKでは、グループ全体の環境方針として「TDK環境憲章」を制定し、「地球環境との共生」を重要な経営課題の一つと認識するとともに、持続可能な発展に寄与することを目指しています。実現に向けて、環境ビジョン「TDK 環境活動2020」を策定し、電子部品業界では初めてとなる「カーボンニュートラルの達成」を目標に活動を展開しています。

地球環境との共生4

106.8万t-CO2 125.1万t-CO2

生産活動に伴うCO2排出量(環境負荷量)

製品によるCO2排出削減量(環境貢献量) 

【 TDKの目指す「カーボンニュートラルの達成」】生産活動に伴うCO2 排出量(環境負荷量)- 製品によるCO2 排出削減量(環境貢献量) ≦ ゼロ

サプライチェーン全体でCSRを推進するために、

TDKに期待すること、評価できる点は何か―

株式会社エナジェティック グリーンの和田征樹氏を

お迎えし、意見交換会を実施しました。

サプライチェーンにおける社会・環境配慮3

実施日:2015年5月11日

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TDK-Lambda�UK�Ltd.Production�Manager

Tim�Puttick

◎生産活動に伴うCO2排出量(環境負荷量)の削減TDKグループは、生産活動に伴うCO2 排出量削減のため、設備投資や各拠点での省エネ活動に取り組んでいます。

 「TDK環境活動2020」では、「2021年3月までにCO2 排出量を100万トン以下に抑える」※をグローバルのCO2 排出削減目標として掲げています。2014年度も引き続き各国の製造拠点での省エネ活動を推進した結果、CO2 排出量は目標値である 107 万トン以下に対して、106.8万トンとなり、目標を達成しました。

2014年度実績  

甲府工場の事例紹介

部門間でコミュニケーションを取り、省エネを進めています

 工場竣工から 30 年以上が経過している甲府工場。老朽化した設備の更新とあわせた省エネ活動を進めました。活動を進める上で重視したのはコミュニケーション。もともと多くの事業部が混在していた工場で、部門を越えた横断的なコミュニケーションが不可欠だったのです。建屋や生産設備の改善を行う際も、使用者と何度も話し合い、「省エネを行うことで製品の製造条件に悪影響を与えないか」というリスクに関する情報から、「もっとこういう使い方がしたい」「もっとこうすることでコストも下がるのでは」といった要望や意見をお互いに共有し、両者のメリットを可視化した上で、活動を進めてきました。こうした活動を通じて、関係者とのコミュニケーションや、それぞれの立場で意見交換ができる雰囲気づくりの重要性をあらためて認識しました。これからも「環境への貢献」という側面においても、創造によって文化、産業に貢献する企業であり続けたいと考えています。

 TDK甲府工場では、生産用およびクリーンルーム空調に使用する冷却水を製造するターボ冷凍機の老朽化更新に伴い、高効率機を導入するとともに、冷却水を搬送するシステムを見直し、熱量の可視化、冷却水の流量の可変化、冬期のフリークーリング※を導入しました。削減したCO2 排出量は、999トン/年でした。

Voice

※対象は、2011年度より活動を開始した、「TDK環境活動2020」制定時の適用範囲としています。

※フリークーリング:冬期に冷却塔(外気冷熱利用)で空調や生産装置の冷却水を製造するシステム。 ターボ冷凍機の負荷を削減することで、大きな省エネルギー効果が期待できる。

TDK株式会社 甲府工場 省エネ部会

◎製品によるCO2排出削減量(環境貢献量)の拡大TDKグループの環境貢献量を拡大するため、製品の開発・製造における技術的成果を貢献量として可視化することを進めています。

環境貢献量の可視化がさらなる設計のイノベーションに

 CT スキャナーなどの医療アプリケーション や、試 験 計 測 機 器 に 使 用 さ れ る TDK-Lambda UK Ltd. の 電 源 製 品 は、ア プ リケーションの多様な入出力要件にあわせて、設定や構成を任意に変更できることが大きな特長です。アプリケーションに最適な電源製品を選ぶことは、10 ~ 15 年の製品寿命全体を通じてエネルギー効率に影響を与え、最終製品のエネルギー消費量の改善につながります。 今回「環境貢献量の算定」に取り組み、気づいたことは、製品設計へのごくわずかな改善が最終製品の環境貢献量に膨大な影響を与えるということです。最適な電源製品を供給することで、お客様から高い評価を受けている当社ですが、これからも製品設計や製造、オペレーションでエネルギー効率のさらなる向上を追求し、お客様からの期待を常に上回る挑戦を続けていきたいと考えています。

Voice

2014年度実績   「TDK環境活動2020」では、「2020年度までに製品によるCO2 排出削減量を 100 万トン以上に拡大する」を目標として掲げています。2014年度は、電源製品の対象拡大やフラッシュメモリ、アルミ電解コンデンサ、リチウムイオンポリマー電池に着目して算定基準の整備に取り組み、製品貢献量は125.1万トンとなりました。

TDK-Lambda�UK�Ltd.の事例紹介 TDK-Lambda UK Ltd.では、TDKラムダ株式会社で実施した電源製品の環境貢献量の算定手法に基づいて、自社設計品の環境貢献量を算定しました。産業機器向けだけでなく、CTスキャナーなどの医療向けの用途も含まれる同社の電源製品。環境貢献量は、8.3万トンとなりました。

TDK-Lambda�UK�Ltd.の製品

医療用

産業機器

データセンター

※グラフの■の部分は、「TDK環境活動2020」制定後に新たに加わった工場の排出量を示しています。

生産活動に伴うCO2排出量の推移(グローバル)

2010 2011 2012 2013 2014

(万t-CO2)

100

50

0

109.5 111.0 110.3

103.1

119.0

106.3

12.7

7.2 126.9

106.8

20.1

製品によるCO2排出削減量の推移

※グラフの■の部分は、環境貢献量の算定基準の整備が完了したため、 新たに算出できた「新規取り込み分」です。

2011 2012 2013 2014 (年度)(年度)

(万t-CO2)

100

50

0

32.1

49.8

88.6

15.9

72.7

125.1

23.6

101.5

地球環境との共生4

31 T D K C S R レポート 2 015 32T D K C S R レポート 2 015

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独立行政法人 経済産業研究所コンサルティングフェロー

藤井�敏彦氏

 一般的に「カーボンニュートラル」は個々の製品や個別の取り組みなど各論で論じられがちですが、TDKは国際的に通用するフレームワークを構築した上で「真のカーボンニュートラル」を達成しており、非常に優れています。言い換えれば、TDK製品が社会に広がりTDKの売上が伸びるのに比例して、環境面で社会へのプラスの影響が増大するということ。これは投資家に対して

も、社会に対しても強力なメッセージとなります。 また、TDKではM&Aを展開されています。TDKグループ傘下になれば、その企業でもTDK水準の環境対策が行われ、ひいては世界に与える環境負荷を抑えることにつながっていくでしょう。そうした貢献の形も意識して社会に打ち出していけるとよいのではと思います。

■竹ケ原氏の主な意見・提言

 竹ケ原氏は「TDK の環境活動は極めて先進的で、他に例を見ないほど。カーボンニュートラルを実現した今、次のポイントとなるのは、環境だけでなく、社会的側面でもいかに価値を生み出していくかでしょう」と指摘。桑島はウェアラブル機器などを例に、「全重量の大部分を占める電子部品を軽量・小型化すれば、その分を別の役立つ機能の搭載に割り当てることができ、最終製品の利便性が向上します。そうしたところに、

社会的貢献量の定量化の余地があると思います」と可能性を示します。 今後に向けて、桑島は「『TDK環境活動2020』で掲げた目標は、当初は社内からも本当に達成できるのか? と言われるほど思いきったものでした。次の環境ビジョンでも、同様のインパクトある目標策定とその実行で、TDKらしさを発揮していきたいです」と意気込みを語りました。

カーボンニュートラルを超え、より高い価値の創出へ

有識者ダイアログ

1989年、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)へ入行。フランクフルトに計6年駐在し、「DBJ環境格付融資」を開発するなど日本の環境金融の第一人者として知られる。

株式会社�日本政策投資銀行環境・CSR部長

竹ケ原�啓介�氏

国際標準の規格づくりに業界を挙げて取り組む

第三者意見

 本年のTDK CSRレポートは、TDKのCSRへの取り組みが中長期的視点から次の段階に歩を進めようとしていることをはっきりと語っている。 たとえば多様性。もちろんTDKは従来から多様性を重視してきた。新たに策定された行動指針にあらためて明確にされたことも寄与しているのであろう、今年のレポートは素晴らしい内容である。読者にはぜひ「『成長戦略としての多様性の尊重』を考える」を熟読してほしい。性別や国籍という外部属性の違う人間をそろえることがダイバーシティなのではない。人はすべて違うのであり、「人が 2 人以上いればダイバーシティ」。そしてダイバーシティが成長に寄与するためには「全従業員がダイバーシティに適合した態度や行動をとる企業風土」が絶対に必要な前提になる。Kellerグローバル人事部部長は「ONE TDK の精神を確かなものにする」と正しく語っている。さらに、その文脈の上で「創業80周年を迎えるTDKの歩み」の記事および企業ビジョンVision2035を読んでみてほしい。意義がよりよく理解できるはずである。ビジョンの共有こそ多様性が正しく機能する前提である。そしてそのビジョンは社会の変化に歩調を合わせていなければならない。そのことをTDKは今年、実践したのである。 今年のレポートのもう一つ賞賛すべき点は多様性、非財務情報開示、サプライチェーンと多様な観点から外部の意見を取り入れていることである。サプライチェーンについては、取引先13社に改善指導を行うなど前進がみられる。そして、その次のステッ

プの一つがキャパシティ・ビルディングであり、和田氏が指摘するように今後のレポートへの盛り込みを期待したい。 次に環境面であるが、まずカーボンニュートラルの達成を高く評価したい。そしてレポートは、その達成の背景にある極めて重要な努力が甲府工場の取り組みの紹介の中で触れられている。「もともと多くの事業部が混在していた工場で、部門を越えた横断的なコミュニケーションが不可欠だったのです」。この指摘は環境に限らずCSR全般について当てはまる。部門を越えた横断的対話こそ、TDKのCSRを次の段階にもたらした最も重要な鍵の一つであろう。 次に技術による世界への貢献について、「TDKが創る未来社会」の記事、とりわけメディカル・ヘルスケア分野への応用を興味深く読んだ。センシング技術が障がいを持つ人の動きをサポートし介護の負担を軽減し得る!技術の社会への潜在的インパクトの大きさに驚かされた。引き続き不断の技術開発が求められることは言うまでもない。そして加えてこのような技術が実際に社会で使われる上で制度的な整備がもし必要となるなら、ぜひルールメーキングに積極的に取り組んでほしい。社会的技術イノベーションとそのイノベーションへの「社会的需要」を結びつけるためには、時とルールの創出が必要であるからである。 TDKは自社のCSRの取り組みのどこに不足があるのかをよく認識された上で、Vision2035の実現にあたり TDK が付託された社会的責任を果たすことを進めていただきたい。

実施日:2015年5月8日

 対談でまず確認されたのが、CO2 排出量の削減と、環境貢献量の増大を両軸で進めるには、社内の理解と協力が欠かせないという点です。「徐々に活動が浸透し、各事業部の削減量・貢献量を「算出」していた段階から、積極的に現場に働きかけ、それらを「創出」する段階へとシフトしてきている」と桑島は手応えを語ります。社内がこれらの環境貢献の価値を理解し、自分たちの取り組みの意義を実感するためにも、貢献に対して外部から評価を受け、現場へのフィードバックを重視する姿勢を伝えました。 また、TDKでは適切な評価を受けるためにも、拠り所となる合理性ある基準が業界として不可欠と判断。「業界各社がバ

ラバラの基準で環境配慮をうたっても混乱を招くだけで、標準化は欠かせません。日本の電機・電子業界が主導して策定を進めてきた国際規格が発行され、それを基にJEITA※と連携して作成した電子部品向けのガイダンスがようやく形となり、今後はそれを広く世界に発信していければと考えます」と横山は気概を見せます。竹ケ原氏からも、環境負荷・環境貢献をグローバルに通用する基準で算出し公開している点には大きな評価をいただきました。

※一般社団法人 電子情報技術産業協会 (Japan Electronics and Information Technology Industries Association)

「TDK環境活動2020」において2020年度を

目標年に掲げたカーボンニュートラルを、

2014年度に前倒しで達成したTDK。

次の活動目標を定めるべき局面を迎え、日本の環境金融の

第一人者である(株)日本政策投資銀行 環境・CSR部長・

竹ケ原啓介氏を迎え、生産本部安全環境グループ・

桑島哲哉および横山亮との対談を行いました。

◎次期環境ビジョンの策定に向けて

地球環境との共生4

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