中小企業向け 経営改善事例集 ·...

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経営改善事例集 中小企業向け 中小企業向け 環境視点企業 変革 する平成25年3月

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Page 1: 中小企業向け 経営改善事例集 · 廃棄物削減、省エネなどの環境改善が、コストダウンや品質改善などの経営 改善につながるビジネスモデルです。環境経営力の強みが、経営力の強みになっている事例です。

経営改善事例集中小企業向け中小企業向け

~環境視点が企業を変革する~

平成25年3月

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はじめに

 国内企業の9割以上を占める中小企業は、中小企業憲章にも謳われております通り、正に「経

済を牽引する力であり、社会の主役」です。しかしながら現在、中小企業の経営環境は、資源価

格の高騰や電力料金の引き上げ等のコスト上昇要因に対し、それらを製品やサービスの価格に十

分転嫁できていない厳しい状況下にあります。また地球温暖化や環境汚染等、人類の活動に起因

する環境問題への対策も喫緊の課題となっており、中小企業も環境への対応を求められています。

 そのような中、環境が有する様々な価値に気付き、環境対策を実践することで、競争力強化、

付加価値向上、売上増加へとつなげている中小企業が数多くあります。

 環境対策には、省エネルギー対策、マテリアルフローコスト会計、環境マネジメントシステム

など多くの対策があります。それらの対策は、環境改善効果に加え、コストカットや組織力向上

などの経営改善効果があり、うまく活用すれば競争力強化、付加価値の向上、新規開拓へとつな

げられます。さらに、それらを複合的に取り入れ、戦略やビジネスモデルにまで環境を組み込む

ことで、より大きな経営改善効果を期待できるのです。

 そこで本誌では、環境対策の経営上の効果を知っていただくため、先行的に成果を上げている

企業事例をとりまとめました。本誌を手に取られた企業や支援者の皆様は、先行的な他社の事例

を自社の経営の参考にしていただき、環境視点で経営力を向上させることを期待しております。

 なお、この「事例集」の別冊として、環境対策を経営改善につなげるためのテクニック集「基

本編」「実務編」もご用意しましたので、併せてご活用ください。

 

 最後に、刊行にあたり多大なるご協力を賜った東京工業大学 特任教授 小山富士雄様を座長とす

る検討会委員各位、本誌への事例掲載をご快諾いただいた企業各位、本誌の刊行にご尽力下さっ

た皆様に、厚く御礼を申し上げます。

 平成25年3月 関東経済産業局 

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02 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

目 次

はじめに 1

目次(関係者、問い合わせ先) 2

第1章 中小企業における経営改善事例

製造業   東工業株式会社          環境改善が経営改善に直結 4

      株式会社市川精機          一歩先を行くエコビジネス 8

      株式会社梅田製作所          化学物質管理に完全対応 12

      エーアンドエー株式会社          効率改善と化学物質管理 16

      株式会社駒ヶ根電化          MFCA 導入による生産効率の改善 20

      サーマル加工株式会社          設備のこだわりにエコの思想 24

      株式会社第五電子          トップクラスの化学物質対応力 28

      株式会社プライムネット          適正規模が環境配慮 32

      アイティーオー株式会社          QE の視点で独自の省エネ 36

サービス業 株式会社ジャパンエンハンス          心・健康・環境をつなぐ 40

      日中交流サービスセンター株式会社          廃棄物を有価物に 44

      有限会社 ノザキサービスコーポレーション          エコクリーニングでファンを創出 48

      パナック工業株式会社          究極のリサイクルを目指す 52

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目次 ◆ 03

建設業   株式会社エコビルド          環境への強い思いで企業再建 57

      株式会社ナミキ          省エネ住宅による地域貢献 61

運輸業   株式会社ウインローダー          リユースのエコ物流 65

特集    日本電気株式会社          NECグループにおける環境経営への取り組み 69

第2章 経営改善支援事例

 栃木県と日産自動車株式会社    栃木県と日産自動車の連携による県内中小企業への現場改善支援 73

 板橋区    板橋区独自の省エネ診断による環境改善と経済改善の両立 77

 株式会社 シルベニア    省エネ偏重ではなく経営視点での改善 83

 株式会社 シントク    経営面での効果を伴った省エネ対策 85

 愛和保育園    教育効果を意識して地域の省エネに貢献 87

■作成検討会委員 小山富士雄(東京工業大学) 安城泰雄(MFCA研究所) 阿部泰之(東京都環境局) 笠原秀紀(いなほコンサルティング) 稲田裕司(㈱マインズコンサルティング) 山内輝暢(関東経済産業局)

■編集 大野幸生(ユーロジックス㈱)

■事務局 ㈱ マインズ

■問い合わせ先 経済産業省 関東経済産業局 資源エネルギー環境部 資源エネルギー環境課 総合エネルギー広報室 〒330-9715 埼玉県さいたま市中央区新都心1-1 TEL 048-600-0355~7

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04 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

東工業株式会社環境改善が経営改善に直結

 東工業株式会社の主力工場は、関東平野を滔々と流れる利根川の中流のほとり、埼玉県北熊谷市にあり、

水と肥沃な田園と緑豊かな自然環境に恵まれた立地条件にあります。そのため、事業活動もエコが大前提

となっています。地域に安全で安心してもらえるエコ水準を満たす中で、環境対応力が飛躍的に強くなり、

それが経営面での最大の強みとなりました。その強みを基盤に、技術力・マネジメント力の継続的向上を

図り、現在に至っています。廃棄物削減、省エネなどの環境改善が、コストダウンや品質改善などの経営

改善につながるビジネスモデルです。環境経営力の強みが、経営力の強みになっている事例です。

製造業/manufacturing industry

第1章 中小企業における経営改善事例

企業概要これまでの歩み

昭和30年 東京都品川区東大崎で創業 電球用ガラスバルブの生産を開始

昭和33年 東京都渋谷区幡ヶ谷に工場を移転 (現本社)

昭和45年 埼玉県大里郡妻沼町に同町の誘致工場として妻沼工場を新設、各種電球用ガラスバルブの量産体制確立

昭和47年 妻沼工場に第2工場を新設、電球用硬質ガラスバルブを量産化

昭和55年 ほ乳瓶の生産から印刷までの一貫生産を開始、ほ乳瓶の製造工場としてJIS規格を取得

平成5年 エンドフォーミングをオンライン化、ガラス管の生産から加工までの一貫生産を開始

平成11年 環境基準の国際規格「ISO14001」の認証取得

平成12年 排出ガスの大幅削減とエネルギー効率向上を目指し、ガラス溶融炉を環境対応の酸素燃焼方式に転換

平成14年 埼玉県より彩の国工場に指定

平成17年 品質基準の国際規格「ISO9001」の認証取得

平成18年 廃棄物のゼロエミッション宣言

代表取締役 福澤 元健

創 業 昭和30年

住   所電 話 番 号

本社 東京都渋谷区幡ヶ谷2-42-16   03-3377-0311工場 埼玉県熊谷市原井260   048-588-1177

U R L http://www.azuma-glass.com

事 業 概 要

電球用ガラス球、ガラス管、ほ乳瓶等の製造加工硬質・軟質の各種電球用ガラスバルブ・ガラス管の製造・販売硬質ガラスの各種瓶、並びにガラス製品の着色・印刷・蒸着加工

主 力 製 品電球用ガラス球、ガラス管、硬質ガラスほ乳瓶、硬質ガラス各種瓶ガラス電球、ガラス容器の着色・蒸着

主要取引先パナソニック株式会社、日本電気硝子株式会社、ピジョン株式会社、東芝ライテック株式会社、岩崎電気株式会社 他

資 本 金 3,200万円

売 上 高 約32億2,600万円

従 業 員 数 180名

福澤社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/東工業株式会社 ◆ 05

環境改善が経営改善 廃棄物削減、省エネがコストダウンや品質改善に

つながるビジネスモデルを創出しています。CO2削

減とゼロエミッションが、当企業の事業戦略です。

高い環境対応力 近隣地域は、かつて大きな環境汚染問題を経験し

たため、環境対応にシビアです。そのため、この地

で経営を行う大前提となる環境対応力が、自然に高

まりました。それが現在の強みにつながっています。

自らの頭で考える 「自らの頭で考える」力と仕組みが、高い技術力の

維持・向上とマネジメント・システムの継続的向上

を支えています。マネジメント・システムは、自社

内で継続的に改善し、高い水準で維持しています。

国内トップクラスの生産量 環境対応力とマネジメント・システムの強みを背

景に、世界でも有数の量産技術を誇っています。各

種電球用ガラスバルブの少量多品種の生産技術は国

内トップクラス、ほ乳瓶などの硬質ガラス瓶の生産

量は日本一です。

高い技術力を育成 金属とガラスの封着など、電球ガラスの特性には、

様々なポイントがあります。例えば、ほ乳瓶には物

理的・化学的特性について規格がありますが、それ

以上のシビアなニーズに応じ、成形加工の要点に関

する徹底した研究・探求を行って、競争優位の獲得、

企業価値の向上と高い技術力を育て続けています。

経営者の想い 事業の持続的発展のために、市場の変化・社会の

要求に追随すべく、活動推進します。ただし、社会

環境が変わっても、環境に対する基本的な考え方が

変わることはありません。環境に優しいものづくり

に徹し、「特別なonly one」として将来の成長につ

なげます。

瓶の成型から印刷、組み立てまで実施

硬質ガラスほ乳瓶ガラス電球の蒸着

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06 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

●環境経営の取り組み概要

燃料転換によるCO2削減と効率改善 温室効果ガス(CO2)排出削減の取り組みが本格

化する中、当企業では平成12年に酸素燃焼方式のガ

ラス溶融炉を導入しました。酸素燃焼炉は従来の空

気燃焼炉に比べ、生産重量当たりの二酸化炭素発生

量を約2割抑制することができます。

 酸素燃焼のポイントは、空気の80%を構成し、し

かも燃焼・加熱に関係しない「窒素」を排除するこ

とです。このため、窒素が高温下で酸化されてでき

るサーマルNOx(窒素酸化物)がほとんど発生しま

せん。排ガス量も大幅に減少し、熱効率も向上する

ため、燃料使用量が削減でき、二酸化炭素の排出量

も抑制できます。

 酸素燃焼方式溶融炉の採用による環境対策効果と

して、NOxの減少、ダストなどの持ち出し減少があ

り、省エネ・省資源効果として、燃料の消費減、ブ

ロア小型化による省エネルギー、所要資材の減少が

あげられます。

 また、ガラス溶融炉に使用する燃料を、重油単独

から二酸化炭素発生量の少ない燃料に転換しました。

重油・LPG・電力の3者併用、さらに、都市ガス(LNG)

と電力の2者併用へと転換することにより、二酸化

炭素の排出量削減を進めています。

 電力による加熱は、液体や気体燃料による加熱と

異なり、直接電極を溶融ガラス中に挿入して通電加

熱するため、ガラスへの熱伝導効率に優れ、二酸化

炭素の発生量を大きく削減することができます。

 さらに、LNGに燃料転換することによりSOx(硫

黄酸化物)を削減。タンクローリーによる燃料輸送

のCO2排出量ゼロも実現しました。

廃棄物の削減 ガラス溶融工程では、ガラス原料を高温で溶解す

るため、原料中の揮発成分が揮発します。投入され

たガラス原料がガラス溶融炉中で溶解し、ガラス製

品となって出てくるときに、高温で加熱されたガラ

ス原料の一部が揮発し、電気集塵機で回収されます。

回収されたダストは、廃棄物となっていました。

 従来の空気燃焼炉では、燃焼温度が低くてガラス

の気泡が発生し、それを抑えるため化学物質を使用

していたからです。しかし、酸素燃焼に転換するこ

とで、燃焼効率と燃焼温度が上昇して気泡が抑制さ

れ、化学物質投入ゼロを実現しました。電気集塵機

で回収されたダストはリサイクルされ、廃棄物ゼロ・

処理費削減・購入素材削減、省資源となって環境負

荷が低減し、経営効率も大幅に改善しました。

 また、平成8年当時は、水処理後のスラッジから

充分に水分を除くことができずに廃棄処理としてい

ましたが、ガラス原料として100%リサイクルでき

るシステムを構築しました。

 以上の対策により、平成8年当初393トンあった

廃棄物が4年後には3トンに減少し、99%以上の廃

棄物削減となりました。それと同時にこれらの対策

が経営効率改善に寄与し、環境と経営の両方に大き

な効果を生み出しました。

累積削減効果額127,794千円 / 11.5年

処理費削減額 8,500千円 / 年

原料換算削減量 73.2トン / 年

原料削減費用 2,613千円

年間コスト削減額 11,113千円

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第1章 中小企業における経営改善事例/東工業株式会社 ◆ 07

省エネ対策 省エネ対策として、コンプレッサーの高効率機種

への更新、高圧ブロアーの高効率機種への更新、空

調対策などを行っています。

●コンプレッサーの更新

対策前:640kW(9台)容量が異なり台数制御不能

対策後:全台数制御式で省エネタイプ定格450kW

    75kW×6台:1台はインバータータイプ

    予備機75kW(1台)

●高圧ブロアー更新

対策前:110kw

対策後:89kW 省エネ&不可調整式(手動)

        稼働日170日

●空調対策

対策前①22.5kW・3台 稼働期間365日

   ②37kW・1台

対策後①15kW・3台

   ②3kW(局所式)1台(24h)

●低温溶融への挑戦

 CO2発生を削減するために、現下でガラス溶融温

度をどこまで下げられるか低温溶融に挑戦していま

す。CO2削減率は7%です。

ガラス廃材の活用策 工場で発生する廃ガラスを原料(カレット)とす

れば、原料のガラス化反応に伴う消費エネルギーを

削減できます。そのため、工場内で発生するカレッ

トは100%リサイクル使用しています。しかし、市

中の蛍光灯廃ガラスは、水銀等の付着により、蛍光

灯ガラスや他のガラス製品へのリサイクルが難しく

課題となっていました。

 最近は技術的・経済的見通しが得られつつあるた

め、当企業も社外からの廃ガラス(カレット)のリ

サイクルを積極的に進め、現在バージン資源使用量

を50%に削減し、資源循環活動を推進しています。

この対策も、環境とコストダウンの両面に大きなメ

リットがあります。ただし、社外からの廃ガラスは、

使用前にRoHS対応を分析し、クリアしたものを使

用しています。

自社内で問題を発見し改善 これらの成果の基盤となっているのは、環境マネ

ジメントシステムです。当企業では、ISO14001を

導入していますが、認証を取得しているということ

以上に、自社内で多くのスタッフの知恵を活かして

問題を発見し、改善するという仕組みを構築してい

ることがポイントです。

 これは、認証を取得してもしなくてもできること

です。逆にISO等の認証を取得していても、このよ

うな仕組みを構築していないと、経営の効率改善は

思うように進みません。当企業には、環境力を経営

改善にリンクさせる基本体制ができているのです。

(取材協力:西武信用金庫)

累積削減効果額351,728千円 / 7.5年

省エネ効果(年間) 2,277,600kW

省エネ金額 36,897千円

メンテフリー効果 10,000千円

省エネ効果(年間) 85,680kW

省エネ金額 1,388千円

省エネ効果(年間) ①197,100kW

②199,920kW

省エネ金額(合計) 6,431千円

1号炉 60℃低下 3,100千円/年

2号炉 50℃低下 3,700千円/年

省エネ金額(合計) 6,800千円/年

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08 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

株式会社市川精機一歩先を行くエコビジネス

 環境重視の時代に先駆け、「LED情報板」製造事業などのエコ事業を展開している株式会社市川精機。全

国の大企業から注目を集め、大企業と提携して事業展開するとともに、電力使用効率化を求める外部環境

変化をとらえ、一般家庭もターゲットとして簡易電力監視機器の開発・製造を行っています。常に一歩先

を行くエコビジネスを提案。「環境」を意識し、外部環境変化をいち早くとらえて社会に貢献するとともに、

付加価値・競争力のある事業を立ち上げています。「環境」を事業(戦略、ビジネスモデル)に意図的に組

み込むことにより、外部環境変化という背景をも追い風として、経営改善に結びつけている企業です。そ

の取り組みが、業績の安定・向上にもつながっています。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

昭和38年 先代市川栄治により創業(機械加工業)

昭和48年 生産設備の自動化、省力化機器の設計・製造を開始

昭和49年 有限会社市川精機(資本金200万円)設立

昭和55年 市川將男が代表取締役に就任

平成8年 海外との取引を開始(香港経由中国)

平成11年 長渕事業所内に電子事業部を開設し、電子部品の製造検査を開始 本社内に精機事業部を開設

平成12年 資本金を1,000万円に増資 株式会社市川精機に社名変更

平成13年 現住所に工場を取得 本社、精機事業部、電子事業部を統合し合理化を図る

市川社長

代表取締役 市川 將男

創 業 昭和38年

住 所 東京都青梅市藤橋3-9-15

電 話 番 号 0428-30-0311

U R L http://www.ichikawa-seiki.co.jp

事 業 概 要環境関連、LED関連商品の開発・製造、通信機器及びシステムの開発製造、データ管理サービス

主 要 製 品高速道路・一般道向けのLED情報板、工事現場・車載型・POP用など各種情報板

主 要 顧 客

雪印メグミルク株式会社、株式会社東芝、ソニー株式会社、全日本空輸株式会社、リンナイ株式会社、西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社 等

資 本 金 1,000万円

売 上 高 約1億4,000万円

従 業 員 数 7名

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社市川精機 ◆ 09

事業開発力と価格競争力 当企業は、高い事業開発力が強みです。経営者の

発想力を生かし、環境視点を組み込んだ新規事業を

次々と開発・製造しています。当企業は、設備・シ

ステムも自社開発できるため、価格競争力もありま

す。これらの競争力が、収益を確保しつつ安価に製

品を提供できる強みとなり、業績好調の主因となっ

ています。

「環境」を戦略にして経営改善 「環境」を戦略にし、ビジネスモデルそのものに組

み込むことによって強みを発揮しています。「環境」

を事業に意図的に組み込むことで、外部環境変化を

も追い風にして、経営改善に結びつけています。

経営者の想い 当企業は、以前からエコ事業を実施していたわけ

ではありません。かつては、別事業で非常に高い業

績を上げていました。その時に好調だった既存事業

を完全に止め、これからはエコが重要だと、現在の

LED 掲示板開発製造にシフトしました。

 経営者の社会や環境を思う意識と、時代の変化を

読み、事業戦略として大転換を図ることができる卓

越した戦略眼・ビジョンを描く力が、次々と新しい

エコビジネスのアイディアにつながっています。

 「環境」は、時代的にも不可欠です。ビジネスに対

する厳しい見通しが多い中で、「環境」は成長分野。

外部環境変化に目を向け、アイディア・知恵を出せば、

仕事はいくらでもあると考えています。

 「社会のため、環境のため」に発想すると、アイデ

ィアが尽きません。ただ利益を上げるのではなく、

自分のできる範囲で徹底的に、社会のため、環境の

ため、子や孫のためにと考えると、無尽蔵にエネル

ギーが湧いてきます。利益のためだけだと、ここま

でエネルギーは湧いて来ません。「環境」は自分も育

ててくれるのです。

 現在は無借金経営で、業績も安定しています。こ

れから先は、大きな利益を上げるよりも、世の中の

ためになることをし、何かを残すことによって、恩

返しをしたい。未来のために社会に役立つ技術・シ

ステム、エコの足跡を残したいと思っています。

●環境経営の取り組み概要

LEDを活用した情報掲示板の開発 経営者自身の環境重視の思いがあり、そして環境

重視の潮流をとらえて、LEDを活用した事業を始め

ました。LED情報掲示板の開発・製造は、企業や社

会の省エネに役立つ事業として好調で、現在は当企

業の業績を支えています。

高速道路用渋滞情報板

車載用情報板

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10 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

情報板の軽薄化 さらに、表示板を薄くし、軽量化しました。その

結果、取付躯体や基礎工事を小型化でき、省資源化

にも貢献しています。表示板の厚みを1/5~1/10あ

るいはそれ以上にすることで、材料コスト削減、販

売コスト削減、工事の簡易化、工期短縮にもなるこ

とから、お客様の収益拡大にもつながり、道路、建

設現場、POP、遊園地などからも依頼が来るように

なりました。

 コスト面で既存品と比べて格段に競争力が高いだ

けでなく、環境にも非常に良いため、EQ(環境視点

の競争力と品質・事業視点の競争力の融合)で他と

差別化でき、大手企業との取引にもつながりました。

家庭用電力モニターの開発 現在、企業の電力監視装置は、多くの種類が製造

販売されていますが、一般家庭用の装置は手薄です。

そこで、家庭での省エネ・節電、コストダウンに役

立つ家庭用電力モニターを開発・製造しています。

家庭用では、電力使用状況を数字だけでなく、ビジ

ュアル的にわかりやすく表示する工夫も行っていま

す。本装置を少しアレンジすれば、小規模企業向け

電力監視装置の開発・製造も可能になり、中小企業

への導入を支援する製品として期待されています。

太陽光発電の開始 当企業は、今年度より太陽光発電を開始する予定

です。容量は30kW。自社における省エネ・節電の

みならず、自社設置の設備を活用して様々な実験を

行い、太陽光発電絡みの新規事業開発につなげます。

薄型LED使用例

ハーフミラー組込例

家庭用電力モニター送信部

電力表示ユニット

家庭用電力モニター表示部

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社市川精機 ◆ 11

 今後は、太陽光パネルの発電状態を見える化する

設備の開発・製造を考えています。メンテナンスの

効率化、発電・売電の効率維持、高効率発電システ

ムに役立つ様々な機器・システム・サービスを開発

中です。自社設置の発電設備で様々な実験を行うこ

とができるため、新規事業開発にかかるコストが極

めて低く、QCE(品質・コスト・環境)の視点で競

争力の高い事業開発です。

省エネの徹底 経営者からのトップダウンで、貼り紙・口頭によ

る省エネ推進メッセージを行っています。従業員の

意識改革を最重点課題と考え、使っていない場所・

機器の電気を消す、蛍光灯のLED化、電力モニター

の導入などを行いました。音声装置を活用し、ピー

ク電力を超えそうな場合は、構内放送で省エネ指示

を出すことで全員の意識に訴えています。

玄関のLED照明化

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12 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

株式会社梅田製作所化学物質管理に完全対応

 株式会社梅田製作所は、表面処理の専業ながら、サプライチェーンマネジメントの取り組みを通して、

部品加工から表面処理まで、大手企業の要望に対する一貫処理生産を行う体制を持っています。当企業は、

RoHSなどの化学物質対応を含め、外注、川上・川中企業のマネジメント力、製品の加工・表面処理のト

ータルプロデュース能力に優れた企業です。環境経営に関しては、特に化学物質管理に力を入れており、

RoHS、REACH(SVHC)対応工場として、大企業の要求に対してほぼ完全に対応し高い評価を受けてい

ます。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

昭和49年 東村山市にて創業

昭和53年 武蔵村山市に移転 アルマイト加工とネームプレート製造を主

たる事業として有限会社梅田製作所を設立

昭和57年 ネームプレート事業を独立 近隣に板金工場を設立

昭和61年 第二工場の稼働開始(亜鉛めっき、ニッケルめっき)

平成22年 株式会社へ商号変更

代表取締役 梅田 正之

専務取締役 梅田 吉男

創 業 昭和49 年

住 所 東京都武蔵村山市伊奈平1-17-8

電 話 番 号 042-560-7371

U R L http://umeda-ss.co.jp

事 業 概 要亜鉛めっき、ニッケルめっき、無電解ニッケルめっき、アルマイト処理

主要サービス

電気亜鉛めっき(三価クロメート処理、ユニクロ処理(六価)、重クロム色クロメート処理(六価))電気ニッケルメッキ(ニッケル3号)無電解ニッケルめっき(鉄、銅、アルミ)アルマイト処理(各種染色、長尺もの(3m×高さ1.4m)、硬質アルマイト、潤滑アルマイト)化成処理(ノンクロム処理(パルコート))有色クロム酸処理(六価)(コンタミを防ぐマネジメントシステム整備)

主 要 顧 客

株式会社東京精密、株式会社東芝府中事業所、東芝三菱電機産業システム株式会社、株式会社日立国際電気、日本航空電子工業株式会社、超音波工業株式会社

資 本 金 1,000万円

売 上 高 約5億円

従 業 員 数 50名

梅田専務

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社梅田製作所 ◆ 13

大きなアルマイト漕 関東で有数の規模を誇る大きなアルマイト漕が強

みとなっています。アルマイト漕は3m×高さ1.4m

の大きさで、短納期対応が可能です。表面処理が美

しく仕上がり、RoHS、REACHにも対応しています。

経営者の想い 金属加工のモノづくりにおいて、めっきはなくて

はならないものです。当企業の表面処理は、基本的

に一般的なめっき加工であり、特に独創的なめっき

加工ではありません。その中でも目指している事は、

外観重視の美しいめっきを提供することです。この

ために日々社員一丸となってめっきの基本に忠実な

作業をする努力をしています。美しいめっきは製品

に付加価値を付け、同業他社に対し競争力を有して

います。今後もお客様に喜ばれる表面処理を目指し、

「困ったときには梅田製作所がある。あそこに頼めば

大丈夫」と言われるような企業づくりをして、オン

リーワンではなくて、地域、いや日本でナンバーワ

ンにしたいと思っています。

●環境経営の取り組み概要

高効率蛍光灯で省エネ めっき工場では、非効率な蛍光灯を高効率蛍光灯

に取り換えました。この改善により、電力削減量は

10,013kWh-7,683kWh=2,330kWh/年、電力使

用量削減額は2,330kWh×18.2円(電力単価)=

42.4千円(年間)となります。また、更新した照明

器具はひもスイッチ付にしたため、さらなる電力削

減効果が見込めます。

ボイラの運転時間短縮 ボイラの運転時間を終業前30分前に停止し、消費

電力の削減を行っています。その効果は、都市ガス

削減量10.85千㎥、都市ガス削減金額858千円/年と

推定されます。

 ボイラ運転短縮時間:0.5h×268日=134h/年

 ボイラ容量、負荷率:114㎥/h、71%

 ガス単価:79.1円/㎥

 都市ガス削減量:10846㎥/年=10.85千㎥

 原油換算量:12.2kL/年

 CO2削減量:23.9(t-CO2/年)

 都市ガス削減金額:10,846×79.1=858千円/年

関東有数のアルマイト漕

110W型 照明種類全て2灯用 台数 合計容量

(kW)消費電力量(kWh/年)

改善前 FLR110W 10 2.25 6,241

改善後 Hf86W 10 1.73 4,799

40W型 照明種類全て2灯用 台数 合計容量

(kW)消費電力量(kWh/年)

改善前 FLR40W 16 1.36 3,772

改善後 Hf32W 16 1.04 2,885

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14 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

蒸気配管の保温対策 ボイラー室が現場から離れていたため、非効率な

状態でした。そこで、配管の見直しを行い、距離を

大幅に縮めることにより、省エネ効果を高めました。

電力監視体制の構築 電力監視システム導入を予定しています。現在の

契約電力は404kWです。電力監視システムを導入し、

使用電力量の見える化をリアルタイムで行います。

工程のロスや生産計画の効率化など工程・生産管理

の改善も併せて行うことで、ピーク電力の10%以上

の削減を目指します。手堅く5%程度の削減を想定

すると、年間基本料金削減額は20kW×1,233.75円

/kW(電力基本料金)×(185-100)/100×12

=252千円/年となります。

治具改善による環境負荷低減 治具改善により、作業効率の向上、生産時間の短

縮を図っています。これにより、生産効率の改善と

人財の有効活用、省エネルギーを両立しています。

エアブロー工程の工夫 めっき種工程の後に、エアブロー工程を設けてい

ます。これは、一見すると省エネにはマイナスに見

えますが、実はシミ防止になり、品質の向上、次工

程である乾燥工程のエネルギー削減になります。品

質向上とエネルギー削減の両立ができるのです。

RoHS、REACH(SVHC)対応工場 RoHS、REACHなどの化学物質管理について、お

客様(大企業)の要求に対してほぼ完全に対応し、

大企業から評価されています。

RoHS対応 RoHS対応の非含有証明について、要望がある場

合は、全て取り寄せて対応しています。副資材など

必要なものについては、ほぼすべてMSDS(化学物

質安全性データシート)を収集し、川下企業に提出

します。また、非常に重要なマテリアルに関して情

報が不足した場合、必要に応じてステイクホルダー

と協働し、化学物質分析を行います。分析費用につ

いては、大企業の支援を受けています。

治具

MSDS

非含有証明書

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社梅田製作所 ◆ 15

REACH対応 欧州のREACH規則への対応についても、大企業

の要望に従い、懸念物質(SVHC)に関する調査書

を提出しています。REACH規則SVHC調査対応も、

現在は大企業の要望にほぼ対応しています。

化学物質管理とマネジメントシステム 当企業は、化学物質対策として、RoHS規制物質

などが自社工程で混入しないようにマネジメント上

の仕組みを整えています。大企業との取引が多く、

お客様が工場視察に訪れますが、良く管理できてい

るため満足度が高いようです。今後、化学物質管理は、

情報の伝達とともにマネジメントシステムの整備が

重視されてきます。その点からも、当企業の取り組

みは高く評価できます。

分析結果報告書

REACH SVHC調査書

REACH SVHC調査書

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16 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

エーアンドエー株式会社効率改善と化学物質管理

 エーアンドエー株式会社は、マグネシウム等の金属及び樹脂類の難加工材の切削・精密切断、ユニット

製品の組み立て・電気調整までの一貫生産を行う企業です。高い技術・開発力と経営陣の人脈を有効に活

用した、高い連携コーディネイトによる高精度な部品加工能力(高い精度のQCD、不良率低減)に加え、

開発・設計から製造までの一貫生産体制により、取引先のメリットを高めたビジネスモデルを構築しました。

RoHS対応企業として化学物質管理を行うとともに、高い生産精度・マネジメントシステム精度により、

環境負荷低減(時間短縮、端材削減、生産効率改善、スタッフの能力向上による効率改善など)、コストダ

ウンを実現しています。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

昭和48年 秋川市に資本金1000万円で設立 電子顕微鏡、X線装置、真空関係の設計製

造を始める昭和55年 ライフスコープを製作平成元年 携帯電話中継基地の製造依頼に対応 本格的に部品製造に入る 各種アナログ導波管も同時進行平成3年 資本金を2000万円に増資平成7年 内視鏡及びデジタルカメラ等の3D加工に

製造を移行 難削財、マグネシウム等の加工開始

平成12年 循環型社会構築に沿う業務用生ごみ処理機を開発し、TAMAビジネスプランコンテストで関東経済産業局長賞、多摩協会優秀賞を受賞 部品加工、組立、電気調整と一貫性あるユニット製品として納品を開始

平成21年 新社屋にて業務を開始平成23年 田澤信之が取締役会長に就任 田澤直樹が代表取締役に就任

代表取締役 田澤 直樹

創 業 昭和48年

住 所 東京都西多摩郡日の出町平井15-8

電 話 番 号 042-588-7966

U R L http://www.a-and-a-co.jp

業 種 加工業

事 業 概 要

金属・樹脂・マグネシウムなど素材の高精度加工を中心とし、主に半導体業界における部品加工を行う。技術開発にも力を入れ、半導体で培ったノウハウを生かして「環境」「美容・健康」「介護・医療」と未来に向けた新分野進出の挑戦に取り組む。

主 要 顧 客 大手半導体メーカー

資 本 金 2000万円

売 上 高 約6億6千万円

従 業 員 数 40名

田澤社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/エーアンドエー株式会社 ◆ 17

新製品の開発・新技術の開発 高い技術・開発力、経営陣の人脈を有効に活用し、

高い連携コーディネイト能力を発揮します。その強

み・特徴を活かして、新製品の開発や新技術の開発

を行います。

素材加工から組立までの一環生産 マグネシウム等の金属・樹脂類の難加工材の切削・

精密切断からユニット製品の組み立て・電気調整ま

での一貫生産を行います。14台のマシニングセンタ

ー、6台のロボットドリル等を持ち、医療機器・介

護福祉機器の企画設計から加工組立までの一貫生産

などを行っています。

 また、新規事業においては、開発・設計から製造・

組み立てまで、全ての工程を当企業で管理します。

エコの強みを経営力に反映 高い生産精度・マネジメントシステム精度により、

生産の無駄・むらを排除した高効率生産体制を構築

しています。環境負荷低減(時間短縮、端材削減、

生産効率改善、スタッフの能力向上による効率改善

など)、コストダウンを実現しました。

経営者の想い 自社製品を世界に広め、設計・開発も更に強化し、

メーカーとして時代のニーズに合った商品を売り続

ける会社になっていたいと考えています。

●環境経営の取り組み概要

空調の温度管理 平成22年度までは積極的な温度管理を行っておら

ず、各部署で自由に設定していました。夏季はどの部

署でもおおむね25度以下、冬季は26度以上でした。

平成23年度より、オフィス・工場ともに設定温度を、

夏季は25~27度、冬季は22℃設定としました。空調

のフィルター清掃は「1回/月」実施し、ブラインドに

よる遮熱対応などを行っています。

省エネ・節電意識の徹底 休憩時間の完全消灯(10時からの10分間、お昼の

12時から13時の間、15時からの10分間)。蛍光灯、

反射板のこまめな清掃を実施(連休前には必ず電球関

連を掃除し照度を上げる)しています。これらの対策

により、ピーク電力で7%程度の節電を実現。現在も

省エネ対策を実施中です。

パルシステム 無駄・むらを排除した工場・システム

5 軸 マシニングセンター

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18 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

化学物質管理(RoHS 対応) RoHS対応企業として、川下企業の要求に従い、

完全なRoHS対応を行っています。川上企業からの

主材料(鋼板など)に関するRoHS 対応の非含有証

明書、不使用証明書、ミルシート等の入手と川下企

業への伝達を行います。副資材については、RoHS

対応の不使用証明書あるいはMSDS(化学物質安全

性データシート)、外注先については、表面処理業者

へのクロメート処理等に関して、RoHS対応の不使

用証明書の入手と川下企業への情報伝達を行います。

化学物質管理(独自に化学分析) 当企業では、特殊な表面処理工程を有する専門事

業者とサプライチェーンを組んでいます。その場合

には、独自に化学分析を依頼し、分析結果を含めた

情報伝達を行っています。高い化学物質対応能力・

サプライチェーンマネジメント能力を持つことで、

川下企業からの対応要請に完全対応しています。

不使用証明書

化学物質分析結果

MSDS管理リスト

化学物質分析結果

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第1章 中小企業における経営改善事例/エーアンドエー株式会社 ◆ 19

生産管理の高精度化による効率改善 生産管理の高精度化を図り、効率改善、無駄・むら・

ロス・ミスの低減を行っています。その結果、大幅

な環境負荷低減、生産効率向上、収益向上に結び付

きました。当企業では、加工する部品種類により、

20ほどの工程を持ちます。かつては、手書き帳票で

生産状態を管理していました。進捗状況も現場に行

かないと見えず、設備稼働状況は把握できていない

状況でした。

 現在は、PCを使って情報通信の仕組みを徐々に導

入し、高精度化を進めています。その結果、作業の

進捗状況や設備の稼働状況を把握したいときに、リ

アルタイムで把握できるようになりました。特急品

が入ったときにも、設備稼働状況等からどのような

タイミングで生産したらよいかがわかり、迅速に無

駄なく生産計画の再設計・生産管理ができます。

従業員のスキルアップで時間短縮 従業員ごと、工程ごとの作業状況も確認できるた

め、従業員のスキル評価にも役立てています。作業

が早い従業員の見える化ができるため、その従業員

をベンチマークにして他の従業員の教育に役立てる

ことで、全従業員のスキルアップにつなげています。

その結果、作業時間が短縮し、総合的に極めて大き

な教育効果、工程時間短縮効果、不良率削減、納期

短縮などにつながりました。大きな環境負荷低減効

果とともに、収益改善・品質向上(均一化)・生産効

率向上に役立っています。

材料の無駄削減 購入材料サイズの適正化、面取り改善(1個取り

から複数個取りへ)など、様々な工夫で材料の無駄

削減を実現しました。省資源(環境負荷低減)かつ

コストダウン(経営改善)を両立しています。

マネジメントシステムとCAD、CAM の融合によって高効率化・無駄の排除を行い、効率改善・環境負荷低減を実現

MS、生産管理システムの整備により整然とした工場、工程の無駄やミスが少ない

生産管理改善により、いつ、どの設備があくのか、誰の手が空くのかがひとめで見える。特急品対応も可能。無駄のない生産管理計画が瞬時に策定できる。また、各工程の作業時間も人別に分かるため、従業員教育にも効果的で、効率改善との相乗効果がある。

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20 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

株式会社駒ヶ根電化MFCA 導入による生産効率の改善

 株式会社駒ヶ根電化は、MFCA(マテリアルフローコスト会計)を導入し、生産効率の改善を行ってい

ます。MFCAとは、製造プロセスにおける資源やエネルギーのロスに投入した材料費、加工費などを把握

しコスト評価する手法で、負の製品の見える化がポイントになります。めっき処理市場が縮小傾向にある

中で、めっきの新たな可能性を追求するとともに、ISO/TS16949(自動車業界での品質マネジメントシ

ステムの国際標準規格)取得に加え、MFCAによる水や薬品の使用量削減など、経営管理の視点からも新

たな取り組みに挑んでいます。中小企業ではあまり普及が進んでいないMFCAを導入して成果を出したこ

とが高く評価され、平成22年には「環境効率アワード2010」MFCA 部門特別賞を受賞しました。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

 要求が厳しい自動車の「重要保安部品」の加工に取り組んできたため、高品質な製品に対応できるようになった。現在では、長野県内でも有数の大型亜鉛めっき処理装置を保有し、小型ラックから大型バレルまで多彩な設備を完備し、日本の「ものづくり」の発展に貢献している。

代表取締役 山下 善廣

創 業 昭和21年7月

住 所 長野県駒ヶ根市飯坂2-5-10

電 話 番 号 0265-82-5161

事 業 概 要

金属表面処理加工業「水+薬品+知恵&最適QCDめっきサービス」中央アルプスより流れる清涼な水と高機能な薬品を使用し、自社の限りない経験による知恵を複合することで、お客様に安心してご利用いただける最適な品質・価格・納期を提供するめっきサービス会社を目指す。

主 力 製 品亜鉛ニッケル合金めっき、錫めっき最終製品用途:自動車部品・電子部品

資 本 金 1,660万円

売 上 高 約15億円

従 業 員 数 108名

アルプスを望む本社・工場

県内有数の大型亜鉛めっき処理装置多彩な製品群

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社 駒ヶ根電化 ◆ 21

絶え間ない改善活動が環境対策に 原価の低減と環境負荷の低減が目指す方向は同じ

であるため、生産工程における不良品の削減が環境

対策となります。そこで、全社的なTPM改善活動を

実施し、「重要クレーム0」「不良率低減」を目標に

しています。不良品を減らすことがコスト削減にな

り、環境負荷も低減します。

 TPMによる見える化は、社員個人の資質を上げ会

社のレベルも高めます。故障でラインが止まると大

きなロスになり不良も発生します。そこで、確実に

ラインの定期点検を行い、高い稼働率を実現します。

社員の成長に繋がる教育の実施 社内の講習会を年に4回開催しています。テーマ

は、社内でチーム活動を続けてきたTPM活動や

MFCAなど多岐に渡り、社員が発表する機会を設け

ることで、社員の大きな成長につなげています。日

頃は思っていても言葉に出さない人が良い提案をし

てくれたり、会社としてチームの達成状況を聞くこ

とでPDCAをうまく回していくという効果もありま

す。

環境対策で高い業績を維持 排水処理、ISO、六価クロムフリー、鉛レス、シ

アン削減等の環境対策が安定したビジネス展開につ

ながっています。企業が選ばれる時代です。着実な

環境対策と絶え間ない改善活動で、常に業界の最先

端に位置し、低コスト高品質を追求しています。

顧客とWin-Win の関係を構築 自社工場にめっき処理施設を持つには、許認可手

続きなど多くの費用と時間が必要です。そこで、当

企業の工場内に特定顧客専用ラインを導入。お客様

が満足する製品を納入することで、Win-Win の関係

を実現しました。このような専用ラインが2本あり

ます。単なる「加工業者」ではなく、新たなモノづ

くりの「パートナー」として認識されているのです。

 また、ラインの改善活動(TPM 活動)は、取引先

の大手企業担当者の指導を受けています。大手企業

からは、自社とは視点の違った改善提案も受けられ

ます。技術力アップのためにも協働関係は重要です。

経営者の想い 企業理念は、企業が順調かつ堅実に営業を続けて

いくこと、「俺がやらねば誰がやる。今やらなくてい

つできる」を社是としています。これを受けて「八

宝心書」という行動指針を策定しました。日頃大切

にしている共通の想いを、社員が自ら作成したもの

です。

 会社は、社員との共同資産。社員のモチベーショ

ンを引き出すには、「社員に利益を還元する」こと。

決算時に利益が出たら臨時ボーナスで応え、中小企

業では稀な社員持株会制度も導入しています。

生産の見える化ボード

八宝心書

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22 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

●環境経営の取り組み概要

企業責任を果たすための環境対応 西に中央アルプス、東に南アルプスを仰ぐ「アル

プスがふたつ映えるまち」駒ヶ根の地で、「環境負荷

物質を使用する企業の責任」を重く受け止め、環境

保全と環境対応技術を追求しています。

環境経営は経営と不可分 めっき業は、環境対応と生産効率が直結している

ため、環境経営と一般的な経営とを分けて考える必

要はありません。ISO取得とMFCA導入による無形

の効果は大きいと考えています。経営者がISOを取

るという方針を社内に示すことで、会社の方向性が

示され、社員にも一体感が生まれます。審査が通っ

た後は、社員も達成感を味わい、自信を深めること

になりました。

 今年は、自動車産業に特化した品質マネジメント

システムの国際標準規格であるISO/TS16949を取

得しました。キックオフ当初は、コンサルタントに

お願いすることも考えましたが、自社で何とかやり

抜きました。それだけ、社員のレベルが向上したの

かもしれません。MFCA導入により、この活動に参

加した社員は、社内でより一層活躍する場面が多く

なりました。

 ISOやMFCAなどの環境経営の実施は、環境改善

の効果のみならず、品質向上・コスト削減につなが

ります。さらには、横断的なチーム組成による社内

全体の活性化、社内発表会などを通じた社員の成長、

社員の成長による企業体質の強化など、波及効果が

大きいと実感しています。

ISOと環境関連取り組みの歩み平成14年 ISO9001 認証更新

平成18年 ISO14001 認証取得

平成21年 MFCA 導入

平成22年 「環境効率アワード2010」特別賞受賞

平成24年 ISO/TS16949取得

MFCAによる経営改善の具体例 めっきの電流効率の改善と環境対応策を模索して

いたころ、長野県の環境対応型ものづくり収益向上

普及事業と出会いました。平成21年にMFCAを導入

し、継続的に取り組んで現在4年目に入っています。

■1年目:全自動静止ジンケート亜鉛めっきライン

改善スキル

●ある程度電流値を下げても、めっき皮膜析出効率

は変わらないことを確認。それ以降の電流値を下げ

ることに成功しました。

山下社長と環境効率アワード表彰状

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社 駒ヶ根電化 ◆ 23

●めっきした製品に付着する余分な薬剤の次槽への

持出しを抑えるため、めっき槽へシャワーを装着。

●イオン交換水活用による水の再利用推進●ボイラ

ー配管・フランジ部への断熱材使用●各槽側面に断

熱材の貼り付け●乾燥炉に空気遮断版の取り付けな

ど。

■2年目:全自動バレルジンケート亜鉛めっきライン

改善スキル

●イオン交換水活用による水の再利用推進。

●めっき液の温度を見直し、温度調整によるめっき

皮膜厚のバラツキを是正●使用薬品の見直し●液更

新頻度(建浴)の見直し。

■3年目:無電解ニッケルめっき手動ライン

手動ラインで初めて実施。

改善スキル

●配管の保温対策実施●めっき槽及び乾燥機への

昇温対応の見直しなど。

■4年目:環境対応の要である「排水処理ライン」

●目下鋭意取り組み中です。

(取材協力:駒ヶ根市)

50万円/月のコストカット達成地下水使用量 40%減電気使用量 38%減光沢剤使用量 38%減灯油使用量 11%減亜鉛使用量  5%減

30万円/月のコストカット達成

地下水使用量 36%減

電気使用量  3%減

灯油使用量 22%減

12万円/月のコストカット達成

地下水使用量 17%減

電気使用量  8%減

灯油使用量 16%減

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24 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

サーマル化工株式会社設備のこだわりにエコの思想

 水素炉に特化し、焼鈍処理を行う専業メーカーのサーマル化工株式会社は、特殊な設備にこだわり、他

社ではできない焼鈍処理、光輝処理を行っている企業です。真空炉など一般的な設備は全く持たず、水素

炉のみを使用した専業熱処理によるビジネスモデルを構築しています。現在12基のピット炉を持っていま

すが、水素炉をこれだけそろえている中小企業はほとんどありません。真空炉など他の処理方法の場合は、

廃棄物や不純物が発生したり、炉の他に真空ポンプを動かす電力が必要になったりします。しかし、当企

業の技術で排出されるのは水素のみ、消費電力は電炉にかかる部分のみです。水素炉に特化して磁気焼鈍、

光輝焼鈍を同時に行うというビジネスモデル自体に、エコの思想が込められているのです。経営者の「目

的や目標を見定めて、そこに向かう強い意志」も隠れた強みの一つといえそうです。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

昭和41年 磁性材料の光輝焼鈍処理会社として戸田市中町に創業(初代山越社長)

沖電気工業との業務提携が成立し、同社の協力工場となる

昭和46年 事業拡大のため下笹目に工場を移転

昭和61年 初代社長退任、石井文任社長就任

平成14年 経営革新法認可法人を取得

平成19年 石井文任退任、石井孝德社長就任

平成21年 彩の国工場として指定される

平成22年 BCP計画策定

代表取締役 石井 孝德

創 業 昭和41年

住 所 埼玉県戸田市早瀬1-18-3

電 話 番 号 048-421-4880

U R L http://www.sa-marukakou.com

事 業 概 要熱処理業。磁気焼鈍、光輝焼鈍を行い、設備を水素炉に特化することで、特徴と強みを発揮。

主要サービス

水素焼鈍、光輝焼鈍、モリブデン、コバール、純ニッケル、パーマロイ、インコネル、タングステンなど特殊素材の光輝熱処理、レアマテリアルの回収。

主な納入実績

三菱重工業株式会社、株式会社豊田中央研究所、パナソニック株式会社、富士フィルムオプティクス株式会社、株式会社日立製作所、JFEスチール株式会社、大崎電気工業株式会社、株式会社神戸製鋼所、日本航空電子工業株式会社、ソニーイーエムシーエス株式会社、株式会社ブリヂストン、株式会社東芝、三菱マテリアル株式会社、三井金属工業株式会社、オリエンタルモーター株式会社、日本電産コパル、日本モレックス株式会社

資 本 金 1,000万円

売 上 高 約1億6,000万円

従 業 員 数 6名 水素炉(水素炉専業としての強みを発揮)

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第1章 中小企業における経営改善事例/サーマル化工株式会社 ◆ 25

磁気焼鈍と光輝焼鈍を同時に実施 水素の還元処理により、非常にきれいな表面処理

が可能になります。また、水素の還元作用を活用す

ることにより、焼鈍処理と光輝処理を同時に実現す

ることができます。

水素による不純物の混入抑止 モリブデン、コバール、純ニッケル、パーマロイ、

インコネル、タングステンなど特殊素材の光輝熱処

理を行います。特殊素材の処理では、多くの場合、

加工中に不純物混入を抑えるのに水素が有効です。

レアアースの酸化還元 水素による還元処理で、レアアースの回収を行い

ます。水素による素材の脆化、水素焼鈍による脱磁

などの特徴を存分に利用します。

2基の水素試験炉でスピード処理 2基の水素試験炉を持つことにより、小ロットの

熱処理を適正価格かつスピード処理で提供します。

大規模炉では一般的にコストが高くなるため、小規

模、超短納でご依頼の場合には試験炉で対応します。

こうした、小回りの利く熱処理サービスができるこ

とも、当企業の強みの一つです。

手間がかかってもきめ細かく対応 当企業では、一般的には敬遠されるワークの整列

処理を行っています。手作業で手間がかかりますが、

重要なサービスと考えています。こうしたきめ細か

い顧客対応も、当企業の強みとなっています。

純鉄磁気焼鈍・光輝焼鈍済みの製品

レアアース遷移金属処理後レアアース遷移金属処理前

アーマチュア整列処理後

パーマロイ薄品種

インコネル時効硬化

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26 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

経営者の想い ここ10年近くは好調が持続していますが、厳しい

時期もありました。現社長が就任する1年前、人事

の混乱により優秀な人材が他社に引き抜かれたり、

人がいなくなった時期がありました。

 この時は、現社長が「何とかする」という強い意

志で、企業業績回復のためにいろいろな会合に出向

き、人に会いました。そのほとんどは空振りでしたが、

参考になることもありました。参考になることは取

り入れ、しかし、それで終わらず、自らの頭で考え、

新たな解決策、オリジナルの対策を打ち出していき

ました。

 そのうち徐々に受注が増えて回復し、現在の好調

な業績に至りました。現社長は、特別なことはして

いないと言いますが、そうした静かで謙虚な発言の

裏に、どのような時でも決して希望とやる気を失わ

ずに前進するという強い意志が感じられます。

●環境経営の取り組み概要

新設炉導入でヒートチャートを改善 現在12基ある炉のうち、2基を最新型に変更しま

した。最新の2 基は常用で1200℃、最高1250℃ま

で加熱することができるため、競争力が一層高くな

りました。今まで受注できなかった仕事の受注にも

つながるため、経営力向上の効果も高いといえます。

 エネルギー視点では、立ち上がりの速度が速くな

り、炉出し後の冷却時間も短縮したため、立ち上が

りで2時間以上、炉出し後で3時間程度の製造時間が

短縮ができ、その間の省エネが実現しました。

 当企業は熱処理業であるため、電力消費の大半は

炉にかかり、照明および空調による電力消費は全体

の10%にも及びません。そのため省エネ対策は、電

炉対策が中心となります。この省エネ効果は大きく、

従業員の作業時間短縮、照明などの使用時間短縮に

もつながり、総合的に大きな効果が得られました。

 上記のヒートチャートは、左が新設炉導入前、右

が導入後です。15時スタートで、立ち上がり時間が

19時から17時へと2時間短縮されているのがわかり

ます。また、炉出し時間が、新設炉導入前の5時か

ら2時へと早まっています。温度が下がらないと炉

から出せないため、冷却も早く炉出し時間も早い新

設炉は、大きな省エネ効果があります。

 旧炉

  パイロマックスN1

   常用:1100℃

   ワーク投入容量:500㎏

新炉

  パイロマックスPMD1200を自社で最適アレンジ

   常用:1200℃(最高1250℃)

   ワーク投入容量:500 ㎏

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第1章 中小企業における経営改善事例/サーマル化工株式会社 ◆ 27

炉の保温対策による改善 今までは、炉の蓋の保温対策が不十分でした。新

設炉にし、作業工程の中で炉の蓋をしっかり締める

などの保温対策を行うことで、年間12,271kWの消

費電力削減が実現しました。

電力監視により25%の節電を実現 平成24年に入り、電力監視を行い生産管理に生か

すようにしました。電力データを見ると、電力使用

量の増減が大きいことがわかりました。電力を大量

に消費して一気に作業を行い、作業しない時間帯を

作っていたのです。そこで、業務を平準化すること

で作業量の均一化を図り、電力使用量もピークを抑

えることができました。

 数か月前のピーク電力は1時間当たり270kWで

したが、今夏は210kW未満に抑えて25%ほどの節

電を実現しました。省エネ効果に加え、一人当たり

作業量が相当増えたにもかかわらず、仕事に追われ

ることなく余裕をもって仕事ができるようになりま

した。

 以下のグラフは、ある1週間の時間別電力使用量

のデータです。改善前はピーク時の電力使用量が不

均一ですが、改善後は均一化されています。

RoHS対応工場宣言 当企業は、大企業との取引が多いのが特徴である

ため、RoHSに完全対応しています。現在、大企業

各社からは、RoHSなど世界の化学物質規制への対

応を要請されています。当企業では、トリクロロエ

チレンや処理後の防錆油など、化学物質規制に関連

する物質を扱っているため、化学物質使用に関する

大手各社のグリーン調達基準に従い、川上企業から

MSDS(化学物質等安全データシート)を取り寄せ

たり、RoHS対象物質の非含有証明を行うなど、完

全な対応を目指し実施しています。今後も、こうし

た対応をしっかりと行っていきます。

(取材協力:埼玉県商工会連合会、戸田市商工会)

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28 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

株式会社第五電子工業トップクラスの化学物質対応力

 株式会社第五電子工業では、人を重視する経営者の思想がビジネスモデルを支えています。経営者は、

人との関係を非常に重視し、全ての関係者に対して極力コミュニケーションを取ろうと努めています。そ

の対応の一つが、大手企業の要請に対してできる限り応えるという経営の意思決定となり、一般に中小企

業には難しいと思われた化学物質対応要請を全て受け入れ対応できる仕組みの構築につながっています。

その結果、本事例集の中にたびたび出てくる化学物質対応力に関して、同規模の中小企業では他に追随を

許さないビジネスモデルとなりました。経営者の思想は、化学物質以外の部分でも大いに発揮され、環境

経営力の強化はもちろん、完成度の高い製品精度や表面処理精度など、様々な強みを生み出しています。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

昭和34年 創業

昭和37年 有限会社として改組

昭和48年 本社工場新設移転(現住所へ)

平成5年 株式会社に改組

平成18年 新工場新設、クリーンルーム完成

代表取締役 水田 光臣

創 業 昭和34年

住 所 神奈川県相模原市緑区橋本台2-7-23

電 話 番 号 042-774-2345

U R L http://www.netdaigo.com

事 業 概 要 半導体製造装置ユニット製造、金属加工

主 要 製 品半導体製造装置、電子機器、真空機器、精密機器、洗浄機器

主 要 顧 客

東京エレクトロン株式会社、株式会社島津製作所、大日本スクリーン製造株式会社、株式会社日立国際電気、住友住機械工業株式会社、株式会社トッパンテクノ、東邦電子株式会社 他

資 本 金 1,000万円

売 上 高 約5億1,800万円

従 業 員 数 35名

水田社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社第五電子工業 ◆ 29

高い化学物質管理対応力 当企業は、「化学物質管理」と「環境マネジメント

システム」の精度の高さで大手企業の信頼を勝ち取り、

経営力強化に成功しています。特に、化学物質管理の

対応能力は特筆すべきものがあり、関東トップクラス

といっても過言ではありません。サプライチェーン・

マネジメント(以下SCM)の能力が非常に高く、化

学物質管理の分野で大手企業の管理を代行・支援して

います。高い環境経営力が当企業の業績を支えており、

大手企業との取引拡大に寄与しています。

高い部品完成度と一貫生産体制 当企業で製造する部品の完成度が一つの強みとな

っています。部品のスペックはもちろん、表面処理

の高い完成度に自信があります。また、板金・機械

加工・溶接加工から組み立てまでの一貫生産体制を

持つことも強みとなっています。

経営者の想い 近年、中小製造業では、設備で勝負する傾向が顕

著になってきています。確かに様々な業界で、最新

鋭設備の有無が経営力に大きく影響することは否め

ません。それでも経営は、最後は人の力で行うもの

だと考えています。必要な最新設備は導入しますが、

当企業では人財と教育を重視しています。

 社内はもちろん、社外とのコミュニケーション、

人を大事にする発想が基礎となって、取引も製品精

度も高まると確信しています。当社がステイクホル

ダーや大手企業と確かなつながりを持ち、取引パー

トナーとして関係強化ができているのも、根底に人

の力があると確信します。これからも技術力はもち

ろん、人間力を高めることで精度の高い経営を目指

していきたいと考えています。

●環境経営の取り組み概要

電力監視による省エネ 当企業では、電力監視装置を導入しています。一

昨年の契約は164kWで、85%に達した時点で警告

音を設定しました。警告音が発せられると、経営者

および総務より、空調など事前に決められた機器の

電源オフを全部署にアナウンスします。

 これにより、昨年は12.2%のピークカットを実現

しました。消費電力量(年間電力使用量)も、一昨

年比19%以上の削減に成功しています。さらに今年

は、昨年比10%の節電を目指しています。現在は目

標を上回る削減率で推移しており、一昨年比で20%

以上の節電となっています。

照明の変更による省エネ・節電 照明は、旧工場、新工場とも400Wの水銀灯を使

用していました。それを、旧工場では高出力初期照

度補正タイプの高効率な蛍光灯に変更しました。鏡

面反射鏡を取り付け、光をより効率的に反射させて

照度を確保することで、50%以上の省エネを実現。

新工場では、メタルハライドランプに変更すること

で、50%近い省エネを実現しました。電力単価を

17.5円とすると、年間電力削減量は8,321kWh/年、

電力削減額は14万6千円となります。

改善前 照明種類 台数 合計容量(kW)

消費電力量(kWh)

旧工場 水銀灯400W 9 3.6 7,862

新工場 水銀灯400W 11 4.4 9,610

改善後 照明種類 台数 合計容量(kW)

消費電力量(kWh)

旧工場 蛍光灯177W 10 1.77 3,866

新工場 メタルハライドランプ220W 11 2.42 5,285

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30 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

受電設備の省エネ・節電 既存の変圧器は、導入後約40年を経過し、いつ壊

れてもおかしくない状態でした。当然効率も悪いた

め、交換時期であったことも考えて高効率変圧器に

変更しました。これにより、年間消費電力削減量は

8,909kWh、年間電力削減金額は15万6千円となり、

投資額150万円は10年以内に回収できる見込みで

す。コスト削減としても、価値ある対策でした。

KES導入による経営改善 KES(環境マネジメントシステム・スタンダード:

京都議定書発祥の地、京都から発信された環境マネ

ジメントシステムの規格)を導入しました。コンサ

ルタント任せにはせず、自社で自主的に内容をブラ

ッシュアップしています。リーダーを決めて業務報

告会を月1回実施し、チームを組んで継続的改善の

仕組みを創出中です。経営者中心に意識改革を行い、

みんなが自分の頭で考えて経営改善する仕組みづく

りに取り組んでいます。

スキルマップによる見える化 業務に関するスキル・技能要素を抽出し、製造部

門に関してはスキルマップを作成。従業員の技能・

技術・スキルの見える化を行っています。そのデー

タを基に教育計画を設計し、off -JTなどに役立てて

います。これにより誰に何を教育すると良いのかが

把握でき、従業員のスキルアップに非常に有効です。

 ただし、製造部門に関してはOJTの設計がまだ不

十分で、製造部門以外の取り組みも今後の課題です。

こうした仕組みを整備し、今後さらに教育訓練に生

かしていく予定です。また、製造部門を含め、作業

効率向上のためのドキュメント(手順書、帳票類など)

の整備も今後の課題です。

改善前:水銀灯

改善前:水銀灯

旧工場

新工場

改善後:蛍光灯

改善後:メタルハライドランプ

改善後改善前

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社第五電子工業 ◆ 31

RoHS対応工場宣言 RoHSなど化学物質管理に関して、大手企業からの

要望をほぼ完全に満たす対応力を持っています。複数

の大手企業の要請内容を精査し、自社独自のグリーン

調達ガイドラインを作成。そのガイドラインを基に、

川上の全企業にRoHS対応の依頼・情報収集を行う仕

組みを確立しています。

 川上の小規模な企業に関しては、必要に応じて現地

視察し、必要な事項を説明します。情報収集に関する

教育や、講演・説明も行っています。川上企業にマネ

ジメントシステム面のチェックを要請することで、サ

プライチェーンの対応力を向上させているのです。

 また、非含有証明(全社対応)、含有情報(JAMP、

JGPSSI対応)、MSDSによる情報伝達体制を整備して

います。必要に応じて化学物質分析データも収集しま

す。調達部品や調達先を変えたときには、大手企業に

対して管理データの変更も行います。

 化学物質管理については、中小企業としてほぼ完璧

な対応をしており、当企業は大手企業にとって非常に

重要な役割を果たしています。その対応力は非常に高

く評価されており、化学物質管理に対してのクレーム

は皆無といっていいほどです。この対応力が当企業の

経営力、大手企業との提携関係を支えています。

(取材協力:相模原商工会議所)グリーン調達ガイドライン約定確認書

非含有証明書

グリーン調達ガイドライン同意状況管理

取引先別、化学物質管理状況評価表

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32 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

株式会社プライムネット適正規模で環境配慮

 純水装置は、ほとんどが大手企業の独壇場です。しかし、大規模な施設やシステムが中心であるため、

イニシャル・コストもランニング・コストも高いだけでなく、必要以上の容量を持つことによる無駄の解

消も課題となっています。その課題を解決するため、株式会社プライムネットでは、必要な規模の容量で

無駄がなく、適正価格のオリジナル純水・超純水装置を開発・製造し、販売しています。性能も、お客様

に合わせて最高精度から適正精度まで対応可能です。技術の根底には、「環境配慮」の思想が組み込まれて

います。技術および設備は環境負荷の低減に非常に大きな効果を発揮し、お客様のコストダウン・効率化

にも直結しています。中型・小型設備は市場が小さく、大手企業も大掛かりな開発をしにくいため、技術

力の高い中小企業が最高レベルの技術サービスを提供して活躍できる領域です。品質と環境が融合した中

小企業のビジネスモデルを紹介します。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

平成11年 東京都練馬区にて創業 純水装置の開発、製造を開始

平成12年 有限会社プライムネットを設立 (資本金300万円)

平成14年 株式会社プライムネットに改組 (資本金1,000万円)

平成19年 資本金2,000万円に増資

平成21年 災害用のRO浄水ユニットを開発 災害用の海水淡水化ユニットを開発

平成23年 超純水システムの独自ブランド設立

平成24年 逆浸透膜を利用したナノ水素水、ナノ酸素水等の機能水の開発を開始 逆浸透膜を利用した殺菌目的の機能水の開発を開始 日本機能水学会第11回学術大会で『逆浸透膜を利用した電解水』のテーマで研究成果を発表

代表取締役 高山 正春

創 業 平成11年

住 所 東京都西東京市西原町4-2-9

電 話 番 号 042-451-8630

U R L http://www.aqlia.com

事 業 概 要

純水・超純水装置、小型飲料プラント、海水淡水化装置、逆浸透膜・イオン交換樹脂、紫外線殺菌灯、各種フィルターなどの設計・開発・製造・販売及びその保守管理

資 本 金 2,000万円

売 上 高 約8,000万円

従 業 員 数 7名

高山社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社プライムネット ◆ 33

大手企業と競争できる技術開発力 純水、超純水などの浄水技術、システム、電子基板

およびそのソフトウェア、ハードウェアの開発に高い

技術力を持っています。浄水技術・設備のコンペ、見

積もりの競合では、大手企業に交じって中小企業では

ほぼ当企業1社が参加。大手企業との競合の中で受注

していくほどの技術・製品精度が強みです。

清涼飲料水ラインで20㎥/hの造水 従来の大型設備と比較して、適正規模、膜の改良な

どにより大幅な省エネを可能とする浄水設備を提供し

ました。清涼飲料水ラインに使用し、20㎥/hの浄水

容量を実現。コストダウンと省エネを両立させました。

大型設備に比べて高い省エネ効果 デジカメのメッキ洗浄ラインで使用し、逆浸透膜

2段仕様とすることにより、1μS/cm程度の水質を

実現しました。技術面の省エネ研究により、同社従

来品よりも消費電力で半分近い改善となりました。

 また、研究施設の精密加湿に使用し、上記システ

ム同様非常に大きな省エネ・コストダウン効果をあ

げることができました。

製販融合の人材育成 製販融合の教育体制により、高い事業推進能力を

持つ人財を育てています。業務は分担制ではなく最

後まで関わるスタイルとし、メインスタッフは技術

者でありながら事業・営業感覚を併せ持っています。

経営者の想い 国内の純水装置全体の市場は、今後売上ベースで

大きく落ちていくと思います。その中で、省エネ、

コストダウンを実現する装置は、市場の信頼を得ら

れるはずです。そのことは、当社の業績が年々少し

ずつ上がってきていることにも現れています。最小

限機能の提供を新たな基盤とすることで、シェアを

大きく伸ばしたいと思っています。

 技術・開発力、製品力には自信があります。省エネ・

コストダウンの視点では、お客様や社会に役立つ製

品づくりに関して当社製品は負けないと考えていま

す。様々なアイディアがあるので、中小企業ゆえ資

金力がないという課題を解決して、より良い技術開

発、製品開発を具現化したいと考えています。

 また、海外で地元のメーカーと協働して、事業展

開をしたいと思っています。日本とインド、そして

最終的にはアフリカに進出することが目標です。

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34 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

●環境経営の取り組み概要

コンパクト型システムの開発 従来の純水システムはセントラル方式で、センタ

ーに大規模な純水装置をおいて、各部署、建物、エ

リアに純水を圧送していました。各エリアの最大容

量の総和がセンターの容量になるため、大容量にな

ってしまいます。しかし、実際の事業活動では大容

量は必要なく、エネルギー・コストやメンテナンス

コストを抑えたいところです。そこで当企業では、

必要なエリアに必要な容量のシステムをネットワー

ク型で配置するコンパクト型システムを開発。水、

電力消費量、イニシャル&ランニングコストの大幅

削減を実現しました。

消費電力の少ないシステムを導入 これまでの純水装置は、省エネタイプでも逆浸透

膜に1.5MPaの圧力をかけ純水を生成していました。

当企業では研究を重ね、0.6~0.8MPaという低圧膜

を活用できるシステムを開発しました。その結果、

より消費電力の少ないシステムとなり、従来に比べ

て45%近い省エネ効果を上げることができました。

しかも、水質は従来製品と比べて同程度以上。品質

を下げることなく、省エネに成功したのです。

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社プライムネット ◆ 35

輸送コストと環境負荷の低減 当社では、浄水技術を浄化装置として応用活用す

る事業を行っています。例えば、有機栽培用として

菌の培養を行い、菌をビンに詰めて販売している企

業に対し、菌を培養している水から水分子だけを取

り除いて濃縮する装置・浄化システムを開発しまし

た。その結果、溶液を1/28に濃縮できるようになっ

たため、製品も小型化が可能になり、大幅に運送コ

ストを引き下げることに成功しました。

 その企業は、陸奥市と東北・北海道全域を年間

480回、平均走行距離400kmを輸送していたところ、

輸送回数を24回に減らすことができました。その結

果、年間軽油消費量を32klから1.6klに削減でき、

大幅な省エネ、CO2削減効果を実現できました。燃

費6km/lトラックでの輸送と仮定すると、CO2削減

量は78.58(t-CO2)となります。

  システム導入前のCO2排出量

    32×2.585=82.72(t-CO2)

  システム導入後のCO2排出量

    1.6×2.585=4.14(t-CO2)

オゾン殺菌システムの開発 現在進行中の研究は、当企業の逆浸透膜技術を応

用して独自電解漕を開発し、添加物なしでオゾン殺

菌システムを開発することです。オゾンは殺菌力が

強く、また、最終的な汚染物質が出ないため環境負

荷低減効果も高いなどのメリットがあります。純水

にオゾンを添加できれば、酸化力が低くなって装置

や配管などが腐食せず、オゾンも分解しにくいため

効果が持続するという実験結果が出ています。

 現在当社でも、大手メーカーのライン配管の殺菌

などを行っていますが、どうしても化学物質で殺菌

するため、その後の処理で廃棄物、有害物質が出て

しまいます。中和に薬剤も必要です。上記のオゾン

殺菌システムができれば、余分な廃棄物、化学物質

を使わず、しかも現在の薬剤で殺菌できない多くの

ものも殺菌可能になります。当企業は、全ての開発

に環境視点を組み込み、付加価値が高く、事業的に

も強く、社会に貢献する技術・製品・システムの開

発を目指しています。

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36 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

アイティーオー株式会社QEの視点で独自の省エネ

 アイティーオー株式会社は、QE(品質・環境)の視点を重視し、他社と同じ加工機を持っていても、そ

の活用方法や様々な工夫により精度の高い製品を製造している企業です。また、お客様の要望に対して「で

きないと言わない」加工力を強みとしています。その精神がいたるところに反映され、省エネ一つを取っ

てみても一般的な対策とは異なっています。的確な設備投資を行って加工機を最新式にすることにより、

品質向上とともに作業時間を短縮。メーカー推奨ではなく、自社に合うものを研究し選択することで、高

精度データ管理を実現。溶接機の省エネをインバータ化で行うのではなく、デジタル化を進めて消費電力

を大幅に削減、など独自の省エネを推進しています。平成19年からはRoHS対応を実施し、現在は取引先

の要望に完全対応しています。

製造業/manufacturing industry

企業概要これまでの歩み

昭和47年 東京都昭島市にて創業

昭和52年 有限会社伊藤工業所設立

昭和53年 東京都西多摩郡瑞穂町に新工場設立

昭和58年 西多摩郡瑞穂町に第二工場設立

平成19年 アイティーオー株式会社に社名変更

平成21年 伊藤社長就任

デザイン性を重視した筐体の製造例当企業の加工は、デザイン面での制約がありません。どんなデザインでも板金加工で対応し、金型レスでコストダウンが可能です。

代表取締役 伊藤 義緩

創 業 昭和47年

住 所東京都西多摩郡瑞穂町富士山栗原新田231-12

電 話 番 号 042-556-2502

U R L http://www.ito21.co.jp

事 業 概 要精密板金・プレス・溶接加工・レーザー加工・セラミック基盤加工

資 本 金 1,000万円

売 上 高 約1億4,000万円

従 業 員 数 19名

伊藤社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/アイティーオー株式会社 ◆ 37

自らの頭で考える 創造的に問題解決を行い、独自の解決策を生み出

しています。省エネに関しても、一般の省エネ診断

的な改善ではなく、工程、生産管理、設備をQE(品

質、環境)の視点で見直すことで、独自の省エネ対

策を実施しています。工程や工法の改善も含め、現

在更なる経営力アップに取り組んでいます。

きめ細かな顧客対応力 当企業の特徴は、一般の板金加工業者に比べて、

取引顧客の数・分野が多岐にわたることです。レー

ザー加工機の導入は、国内でも早い時期であったた

め、汎用機としての産業分野の加工に加え、研究開

発向けの仕事も多く受注しました。取引先の分野が

多岐にわたり、幅広いお客様からの要望に応えてき

た結果、様々な分野に応用が利く加工対応力を身に

着けることができました。

 このような経験から、お客様への提案力が高く、

一般の板金業者では不可能といわれる顧客要望に対

しても、具現化する創造的加工力を持っています。

また、お客様にコストダウン提案ができることに加

え、板金加工業者としては珍しく組み立てまで行う

ことも強みとなっています。

経営者の想い 通常は、金型が必要とされるような複雑な形状で

も、汎用ベンド機と溶接技術を駆使して製作が可能

です。近未来の精密板金スタイルとして、「超精密板

金」を掲げています。お客様のスペックに則った品

質追求はもちろんのこと、手掛ける製品をデザイン

の制約や金型コストの負担から解放したいと考えて

います。

 金型と同等精度を板金加工で実現できる技法の開

発、高い精度を持つ立体造形技術の開発を目指して

います。品質と技術力にこだわり、精密板金の世界

で有名になりたいと考えています。

 新興国の台頭により、金型を用いる加工は今後ま

すます厳しくなってくると思います。今後は、金型

の代替としての超精密板金を目指し、規模は問わず

コアな部分で、幅広いお客様よりも緊密なお客様を

相手に、凝った製品づくりをしていきます。高精度

にこだわり、価格転嫁できる業態を狙います。

●環境経営の取り組み概要

加工機の更新による省エネ レーザー加工機を最新省エネ型にしたことによっ

て、効率及び冷却能力が向上し、省エネ性能も向上

しました。出力を上げても、使用電力が以前よりも

低くなっています。加工スピードが格段に速くなっ

たことで、切断品質が大きく向上しただけでなく、

作業時間の約50%短縮にも成功しました。

 過剰な設備投資は、大手企業も躊躇するところだ

と思いますが、このように的確な設備投資を行えば

QEC(品質・環境・コスト)が大きく向上するこ

とになります。もちろん、設備投資には大きな費用

がかかりますが、品質の大幅な向上を含めて総合的

に見ると、こうした戦略的設備投資は効果的です。

レーザー加工機

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38 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

自社に合うCADによるコストダウン 大きなコストダウン効果と効率改善を生むデータ

管理に不可欠なCAD・CAM。一般的な加工機メーカ

ーの推奨ではなく、自社で研究し、より自社の加工

に合うCAD・CAMを選択することで、高精度データ

管理を実現しました。高精度なデータ管理は、原材

料削減やコストダウンにも寄与します。ここにも、

普通の対策をそのまま実施するのではなく、自らの

頭で考えて問題解決し、企画に活かすという精神が

生きています。

溶接機のデジタル化による省エネ 通常は、インバータ化などで省エネを行いますが、

当企業は違います。デジタル化することにより、ア

ーク発生時の消費電力を大幅に抑えました。これに

より、仕上がり精度が向上、歪みも軽減され、QC

Eの改善に役立っています。ここにも、自らの頭で

考えるという企業精神が生かされています。

データ管理によるロスの最小化 ネスティングデータ管理の徹底により、ロスを最

小限にし、材料、板厚ごとに切り出しを行っています。

最適な面取りをデータ管理により行うことで、無駄

がなくなり、材料歩留まり25%改善を実現しました。

また、プログラミング工程に労力を集中することで、

それ以降の作業がほぼ自動化でき、加工時間の25%

短縮につなげました。

データ管理も独自努力でブラッシュアップ

溶接工程も改善

改善前状態

改善後

製品ごとに整地にデータ管理を行い、無駄を削減。材料の削減、消費エネルギーの削減を実現しました。

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第1章 中小企業における経営改善事例/アイティーオー株式会社 ◆ 39

RoHS対応工場 平成19年より、鋼材などの主要材料に関して、ミ

ルシート、非含有証明で対応しています。ワイヤー、

タングステン、溶接棒など主要な関連材料に関して

は非含有証明を入手し、めっきなど外注管理も外注

先から非含有証明書を入手してRoHS対応を実施し

ています。現段階で、取引先が要望するRoHS対策

に完全対応しており、今後も対応力を強化していく

予定です。

メーカーからの化学物質分析証明書

RoHS 対応非含有証明書

溶接棒に関する非含有証明

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40 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

株式会社ジャパンエンハンス心・健康・環境をつなぐ

 株式会社ジャパンエンハンスは、「五感セラピー」というストレスを取り除く施術を行っています。主な

事業は、ストレスを抱える人をケアするサロン事業、ストレスを取り除く技術者を教育・育成するスクー

ル事業、化粧品やストレスケア商品の販売事業です。五感セラピーは、エステや整体とは異なります。い

ずれの事業も、施設設備、施術に使用する商品など、全てにおいて自然および環境配慮の考え方を根底に

持っています。設備のほとんどはリサイクル品、照明は全てLED、空調を使わないで済む設計にするなど、

環境配慮と品質、コストにこだわっています。特に、施術に用いる材料や化粧品は、徹底した環境調和型

材料を世界中から探し、全て化学物質フリーあるいは極限までエコにこだわります。このようなこだわりが、

健康・環境を重視する人々の評価を受け、ほとんどのお客様がリピーターとなっています。

サービス業/service industry

企業概要これまでの歩み

平成15年 五反田にて創業

平成19年 現社長が就任、化粧品の通販卸販売を開始

平成19年 五感セラピー創始者の五十嵐久美子氏と五感セラピー事業を開始 商品の徹底したエコ化を推進

平成21年 大手カタログ通販会社の子会社と提携し協働でサロン事業を展開。約100店舗に展開し、受講者は200名以上

平成22年 長崎市の株式会社ジャパンヒューマンセラピーと提携し、同市のホテルや五島列島に五感セラピー事業を展開。受講者約100名

平成24年 目黒区に移転。五感セラピーを体験し学ぶことのできる、サロンとスクールを展開中

代表取締役 糀本 通弘

創 業 平成15年

住 所 東京都目黒区碑文谷6-1-22

電 話 番 号 03-3792-5557

事 業 概 要サロン事業、スクール事業、化粧品通販卸売事業

資 本 金 1,000万円

売 上 高 約2億6,200万円

従 業 員 数 8名

五感セラピー創始者の五十嵐久美子氏当企業は五十嵐氏のメソッドを広めるため「五感セラピー」事業を始めた

糀本社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社ジャパンエンハンス ◆ 41

自然と心と体を一体化 当企業では、「心のケア」「健康」「環境調和」の全

体を一つと考え実現する「次世代ストレスケア事業」

を展開しています。自然と心と体を一体化させ、ス

トレスを取り除く技術(施術)を「五感セラピー」

と名付け、8年前にメディアを通して発信し、事業

展開を始めました。当然、環境配慮は大前提として

こだわっています。施設、施術に使用する商品、化

粧品、ストレスケア商品はいずれも環境調和型の商

品で、環境に悪い材料、商品は一切使用しないこと

を基本としています。

五感を癒やしストレスフリー 現代社会はストレスが非常に多く、目の疲れ・耳

鳴り・臭いが気になる・過食・肩が凝るなど様々な

症状を引き起こします。それは、「脳の信号機」が誤

作動を起こしている状態でもあります。

 五感セラピーは、ストレスを抱えた心と身体に「癒

し」「安心感」「満足感」を与えます。五感を癒すこ

とで、人はストレスフリーな状態に近づきます。そ

のためのサポートを行い、ベストコンディションに

導いていく。それが五感セラピーです。

施術技術の高さ 五感セラピー事業は、提唱者の五十嵐久美子氏と

始めました。「五感セラピー」の名付け親であり高い

技術を持つ五十嵐氏と、その直接の技術を受け継ぐ

スタッフの存在、そして事業に対する取り組み姿勢

と技術へのこだわりが、当企業の最大の強みです。

カウンセリング

診断ツール

五十嵐久美子氏

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42 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

技術・サービス・商品へのこだわり 平成15年の事業開始当初は、「五感」の言葉だけ

でも不審がられることが多く、また、エステティッ

クやリラクゼーションサロンとの違いが伝わらず、

「五感セラピー」への理解を得られなかったため厳し

い状況が続きました。当時は、「ストレスを謳う事業

者は怪しい」という環境でした。「五感セラピー」の

創始者である五十嵐氏の「人を癒したい」「ストレス

に苦しむ人々に、生き生きとした日々を送ってもら

いたい」という願いや目的を理解してもらえず、つ

らい日々が続きました。一時期は月商100万円程度

となり、経営の継続ができないのではないかと思う

時期もありました。

 技術者養成の際に合格水準を下げれば、スタッフ

や技術者は増え、全国への事業展開を希望する様々

な企業との協働事業展開の可能性もありました。し

かし、その道を選ばず、高い技術、サービスのクオ

リティー、施術時に使用する商品・材料への環境配

慮へのこだわりを捨てずに追い求め続けました。そ

して、本当にストレスや体調不良で悩む一人ひとり

に、施術体験を行いました。その結果、口コミによ

って施術を受けたい方、技術を学びたい方が次第に

増加し、現在の状況にまで業績が向上しました。

経営者の想い 一人ひとりがストレスを認識し、家族のことだけ

でなく、もっと大きな環境のことまでも考えられる

人たちがたくさん増えてほしい。それが次世代の子

供たちの心の環境、体の環境、世界の環境改善につ

ながると信じています。私たち大人は、子供たちに

より良い環境を創造し、維持していかなければなら

ないと考えています。(五十嵐久美子氏談)

●環境経営の取り組み概要

室内の照明を全てLED化 サロン内部の照明を全てLED化し、40W×24灯

を4.3W×24(LED)に変えました。

空調を不使用 サロンの中庭に屋根を付けることで、太陽光の室

内への直射を防いでいます。その結果、エアコンを

使わなくなりました。また、壁を珪藻土とすることで、

夏でもほぼ空調フリーのサロンを実現しました。

エコでハイセンスな空間 店舗設計では、棚など什器備品は全てリサイクル

品で対応しています。新規購入品はないほどの徹底

ぶりで、エコとコストダウンを実現しました。また、

環境にやさしいオリジナル塗装にするとともに、ハ

イセンスな空間を演出。環境配慮だけでなく、環境

とコストダウン、おしゃれ感も両立させています。

サロン内部

ショップ内部

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社ジャパンエンハンス ◆ 43

化学物質フリーの商品・サービス 商品・サービスの化学物質フリーを徹底的に追求

しています。環境・健康への配慮により圧倒的な顧

客支持を獲得、リピーター率の高いビジネスモデル

を構築しました。施術に使用するストレスケア商品、

化粧品、販売している商品は全てオーガニック、自

然に帰る素材でできた商品です。

 一例をあげると、

・白髪染め:通常はジアミンというツーンとした匂

いの化学物質が調合されていますが、当企業では化

学物質フリーの白髪染めを使用・販売しています。

・ファンデーション:通常はタール系色素が入って

いますが、当企業では、化学物質を含まないミネラ

ルファンデーションを使用・販売しています。

・入浴剤:化学物質フリーで純天然成分の入浴剤を

使用・販売しています。

・オリーブオイル:100%オリーブオイルでもグレ

ードが様々に分かれ、最高級といわれるオリーブオ

イルは酸化度が0.8%以下でエクストラバージンオ

イルといわれます。当サロンで施術時に使うオリー

ブオイルは、それ以上のスペックを持つ酸化度0.1%

の高純度100%オーガニックオリーブオイルです。

・美容液:植物(樹)から抽出した自然オイルの美

容液を使用・販売しています。

・香水:100%ローズなど、天然100%ものを使用・

販売しています。

・その他化粧品(スキンケア:クレンジング、洗顔、

ローション、クリーム)についても、オーガニック

認定のある商品を使用・販売しています。

心、健康、環境へのこだわり 心身の健康、環境にこだわったサービスを提供す

ることにより、その品質を評価する多くの方々がリ

ピーターとなっています。商品やサービスにそれな

りのコストをかけても、当企業のファンとなる人が

口コミで増え続け、経営面でも安定した活動をする

ことができるようになってきました。

 当企業のサービスは、「心身の健康、環境、安心・

安全」のテーマのもとに、徹底的にこだわったサー

ビス提供を行っています。そのサービスに対して、

お客様がファンになっています。当企業では、お客

様を単なるビジネス上の顧客ととらえるのではなく、

心と体のケアを通して本当のファンになっていただ

く。そして、当企業の施術を本当に納得していただ

いた時に、当企業や提携サロンなどのスタッフとし

て働いていただく道も用意しています。「みんな身内」

の意識でお客様と向き合っています。だからこそ、

常に最高のサービスを提供したいと願い、スタッフ

一同、日々研鑽しています。

スクール風景

診断風景

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44 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

日中交流サービスセンター株式会社廃棄物を有価物に

 日中交流サービスセンターは、国内大手製造業者や情報通信事業者などから、それまで廃棄物として排

出されていたものを有価物として引き取りリサイクルする事業、事業者から排出されたものを高度に再生・

精製し、バージン素材にして製造業に戻す事業を行っています。排出事業者としては、廃棄物処理コスト

の大幅な削減が可能になる資源の国内循環モデルです。日本全体のマテリアルフローを環境配慮型に変え

得るモデルの試行であり、企業の経済性、企業内マネジメントシステムのブラッシュアップにも寄与する

など、多くの社会的・企業的メリットを持つ興味深いビジネスモデルです。その他、事業者から排出され

たものを元の素材に戻す「価値のリサイクル」、レアメタルなどの希少資源を国内で循環させる事業も行っ

ています。

サービス業/service industry

企業概要これまでの歩み

 経営者は25年前、38歳の若さで将来を約束される立場であったにもかかわらず、中国国家機関の要職を辞して日本に渡った。経営者自身の人生哲学に日本の文化がマッチし、日本での起業を志した。祖国に妻子を残して単身日本に渡り、あらゆる業種のアルバイトをしながら創業の準備を行い、平成5年に価値あるものを活かしぬく究極のリサイクルを実現。リサイクル社会そのものを変革するようなビジネスモデルの構築を目指し、会社を設立。現在に至る。

代表取締役 王 伝江

創 業 平成5年

住 所東京都豊島区南大塚2-25-15South 新大塚ビル11階

電 話 番 号 03-5940-7290

U R L http://www.ncic.jp

主要事業所

東京本社、東北営業所、茨城営業所、九州営業所、仙台ヤード、塩釜ヤード、茨城ヤード、川崎ヤード、八代ヤード、熊本ヤード、フィリピン工場、中国江蘇州工場

事 業 概 要

非鉄金属原料の加工貿易、輸出入及び販売プラスチック原料の加工貿易、輸出入及び販売主力事業は廃棄物処理に分類されるが、一般の廃棄物処理とは一線を画すビジネスモデルで、廃棄物を有価物として受け入れ元の原料に戻す「資源リサイクル型価値創造事業」を行っている。

資 本 金 3,000万円

売 上 高 約58億3,000万円

従 業 員 数 45名王社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/日中交流サービスセンター株式会社 ◆ 45

国内トップクラスの競争力 国内でトップクラスといえる加工・再生処理精度

を持ち、マテリアルの歩留まりを飛躍的に向上させ

ています。廃棄処分になるものも手間をかけ、わず

かに付着しているマテリアルまで再生します。当企

業と同レベルで再生できる事業者は国内にはほとん

どなく、経済性を含んだ競争力は国内トップクラス

といえます。

中国、フィリピンに海外自社工場 廃棄物処理業界では、通常廃棄物の加工・再生処

理工場を持たずに外部委託を行っています。しかし、

委託先で何かあると業務が停滞してしまいます。自

社工場を持つことは、BCM(事業継続マネジメント)

の視点から見ても優位性が高いといえます。

経営者の想い 廃棄物を有価物ととらえ、価値あるものをリサイ

クルする、希少資源を日本国内で循環させるという

仕組みを創造します。すべてを価値あるものととら

え、「もったいない」の発想で可能な限りすべてを再

生し、国内最高レベルの再生を目指します。また、

この仕組みをアジア圏で展開したいと考えています。

 中国をはじめとしたアジア圏で、日本のようなサ

ービス・クオリティを目指したいと思います。高齢者、

社会福祉の領域で社会に貢献できるサービス事業や、

アジア圏で「安心・安全」をキーワードにした食品、

医療品関連のサービス展開も考えています。

●環境経営の取り組み概要

廃棄物を有価物に 当企業は、今まで廃棄物として捨てられていたも

のを有価物(価値あるもの)として再生し、バージ

ン素材として戻すというリサイクルの仕組みを創出

しています。究極のマテリアル・リサイクルにこだ

わり、すべてを原料に戻す技術・ノウハウを持って

います。

 業務用空調設備、通信伝送機器、配線ケーブル、

サーバー、配電盤、機器類、建築設備、プラスチッ

ク類など、今まで廃棄物として捨てられていたもの

を回収して精製・加工し、素材にして企業に戻して

います。社会の仕組みとしてリサイクルを行ってい

るところが一つのビジネスモデルとなっています。

排出事業者も、大きなコストダウンが可能です。

 このビジネスモデルは、多くの業種・業態で実現

可能・応用可能です。日本の多くの業種において、

廃棄物処理の流れを変え、今まで廃棄物として処理

されていたものを有価物として再利用する道を開き

ます。また、排出事業者のコストダウン、社会的な

環境負荷低減に非常に大きく役立てることができる

ビジネスモデルです。

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46 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

「価値のリサイクル」で素材を再生 製造業者から排出される、アルミジョイントなど

を精錬して素材にし、製造業者に戻します。戻され

た素材は、バージン素材と同じレベルで再生利用す

ることが可能です。緊急時発電機、蓄電池など、そ

のままリサイクルできないものは、回収して指定の

国内精錬メーカーで処理してもらいます。

 廃棄物を価値あるものに変えることで、資源リサ

イクル、環境負荷低減、企業のコスト削減を実現し

ています。国内および海外に工場を持つ強みを活か

し、きめ細かい高効率なリサイクルモデルを構築す

ることにより、リサイクル率を向上させ、社会的に

は不法投棄の減少、CO2削減を可能にしました。

 また、レアマテリアルを含む各種原材料を日本に

戻す、資源リサイクル、マテリアル・リサイクルも

行っています。

リサイクル率の向上 国内加工業者が実施しない面倒な加工・精製処理

を実施することで、同じ排出量から取り出せるマテ

リアルが多くなり、リサイクル率が向上します。海

外に自社工場を持つため、国内よりも安価にしかも

丁寧に加工ができます。

 以下は、国内大手製造業の委託事業の事例です。

アルミジョイント加工前の状態

国内ではコストが合わず分別されないものまで細かく分別

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 当社独自の高精度リサイクルのビジネスモデルに

より、大手企業が自社内あるいは一般の精錬・加工・

リサイクル業者にて分別・精錬・加工を行うよりも

リサイクル精度が格段に高く、効率よくリサイクル

します。さらに、バージン素材同等の品質として再

使用ができるため、コストパフォーマンスが高いサ

ービスとして、大手企業からも評価を得ています。

省エネ・節電 照明、空調温度設定の見直し・最適化、OA機器の

使用最適化、省エネOA 機器への切り替え、事務部

門における電子システム化による業務効率化、時間

短縮などを行い、ここ数年は安定的に最大電力を抑

制できています。

 最近は、電力監視システムを導入し、ピーク電力

の抑制、省エネに役立てています。電力使用量の見

える化により、前年比約18%の節電を実現しました。

また、アイドリングストップ、オイル交換など、メ

ンテナンスの適正化、お客様訪問の適正化(訪問範

囲設定の最適化)などを徹底しています。

第1章 中小企業における経営改善事例/日中交流サービスセンター株式会社 ◆ 47

プラスチックや金属は種類別に正確に分別される

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48 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

有限会社ノザキサービスコーポレーションエコクリーニングでファンを創出

 21世紀に入り、クリーニング業界は右肩下がりの状況です。有限会社ノザキサービスコーポレーション

も同じ経営環境にさらされていますが、「環境」を軸に独自のサービスを常に開発してきました。ハンガー

のリサイクル、グリーン電力によるクリーニングもその一つです。そうしたビジネスモデルが、環境を重

視する市民の支持を受けています。徐々にファンも増えており、厳しい状況下でも業績は現状維持か微増

で頑張ってきました。しかし、東日本大震災により、業界もさらなる大打撃を受けました。スーパークー

ルビズなど、省エネ視点では評価が高い国民的取り組みも、同業界にとっては夏季の売上が極端に落ち込

むなど、経営環境は極めて厳しい状況です。次のビジネスモデル創出が必要になる中、当企業では次代の

エコクリーニングを目指し、石油を使わない脱ドライクリーニングの開発・実験に入っています。

サービス業/service industry

企業概要これまでの歩み

昭和47年 先代社長が創業

平成3年 ノザキサービスコーポレーション設立 野崎敬雄が社長就任 リサイクルハンガーを始める

   ワイヤーハンガー6円/個、プラスチックハンガー25円/個の時代に、全国から業者を探し、ハンガーを10円/個で契約。スーツなどは上下セットでハンガーに組んでいた時代に、作業性、ミス削減、管理効率の視点から、上下別々にハンガー管理し、ハンガーをお客様に返してもらうリサイクルシステムを考案。業界に先駆けて、リサイクルハンガーを採用した。

平成14年 ケミカルフリー商品を販売   関西の製造事業者と協働し、石鹸、水洗い助剤、仕上剤などのケミカルフリー商品を販売、自社のクリーニング工程にも導入開始

平成21年 エコクリーニング宣言   グリーン電力を導入し、曜日を決めてグリーン電力で洗濯する事業を開始

平成24年 次代のエコクリーニング事業を開始 水洗いクリーニング開発(脱ドライクリー

ニング)

代表取締役 野崎 敬雄

創 業 平成3年

住 所 東京都杉並区西荻南1-14-18

電 話 番 号 03-3247-8556

事 業 概 要クリーニング業、一般衣料のクリーニング

資 本 金 300万円

売 上 高 約6,300万円

従 業 員 数 正社員2人、パートアルバイト20名

野崎社長

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第1章 中小企業における経営改善事例/有限会社ノザキサービスコーポレーション ◆ 49

環境配慮への徹底的なこだわり 常に業界に先駆けて「環境」を経営の中に取り入れ、

他社と異なるサービスを提供しています。ケミカル

フリーなどもその一つで、他のお店では皮膚炎で苦

しんだお客様が、当企業のクリーニングでは症状が

出なくなったなど、環境・健康視点で顧客満足度の

高いサービスです。販売する商品も、天然素材を基

本に極力ケミカルフリーにするなど、環境にこだわ

っています。環境・健康の視点からファンとなるお

客様が多くなっています。

経営者の想い クリーニング業界で環境改善を発信したいと考え

ています。ハンガーリサイクルなどは、業界で常識

となりました。しかし、袋、ビニール、カバーなどは、

まだ改善されていません。当企業も個別包装など、

ビニール類などをたくさん使っているので、そうし

た現状を変えるエコ提案をしたいと思います。

 完成した衣類をビニールで個別包装してお客様に

渡していますが、リサイクルマークが付いていても、

お客様がどこまでリサイクルしているかはわかりま

せん。一点ずつの包装ではなく、まとめ包装ができ

ないかなど、業界やお客様を含めた大きな視点で環

境配慮を進めたい、研究していきたいと思います。

 技術開発にしても、われわれ一個店では影響力が

大きいとは言えません。しかし、今後は環境配慮型

ビジネスモデルの創出を含め、メーカーにも提案が

できるようにしたいと思います。

●環境経営の取り組み概要

リサイクルハンガーの導入 平成2年以前は、お客様にクリーニング後の商品

を渡す際に、ワイヤーハンガー(使用後廃棄物)を

使用していました。当企業が扱うハンガーの種類は、

Yシャツ用、ドライ用、ブラウス用です。そこで、

環境負荷を少しでも減らす事業活動を目指し、ドラ

イ用ハンガーの全量回収可能な仕組みを考えました。

高価ですが、衣服の型崩れのない高い機能を持つハ

ンガーを導入しました。

水洗い(脱石油)商品

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50 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

 当時業界では、こうした取り組みは皆無といって

よく、お客様の意識も十分に喚起できなかったため、

開始当初のプラスチックハンガー回収率は10%程度

でした。そこで、お客様にリサイクルハンガーの意

義を呼びかけるとともに、頑丈な新型ハンガーを導

入しました。新型ハンガーはコストも高く、回収率

を上げることからも初回だけ購入いただき、次回以

降はそのハンガーを持ってきていただく仕組みとし

ました。

 その結果、ドライ用ハンガー(年間使用総本数:

132,268本)の回収率はほぼ100%となり、リサイ

クル率は全体で38%に上昇しました。

ケミカルフリー・クリーニング クリーニングの際に、極力化学物質フリーを心が

けています。使用洗剤、補助剤などの材料における

ケミカルフリー、販売商品(石鹸をはじめとした各

種洗浄剤、ボディーソープなど)のケミカルフリー

化を推進しています。エコを認知し、お得意様とな

ってくれる人が徐々に増えています。

グリーン電力によるクリーニング 月曜日と金曜日は、グリーン電力を活用したクリ

ーニングを開始しました。年間電力使用量の10%を

グリーン電力にする活動です。環境意識のあるお客

様が、月曜日と金曜日に来店されます。この取り組

みを始めると同時に、「エコクリーニング宣言」を行

いました。

 グリーン電力に反応してくださるお客様は、価格

などの一般的価値でサービスを判断しません。その

ため、企業にとってはコスト競争から離れることが

できます。環境競争力がファンを少しずつ増やし、

優良顧客が増えています。

新型ハンガー導入によるCO2削減量

導入前 1.4(t-CO2)

導入後 5.2(t-CO2)

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第1章 中小企業における経営改善事例/有限会社ノザキサービスコーポレーション ◆ 51

照明及び空調の省エネ対策 西荻窪の本社・工場では、平成23年度に照明及び

空調の省エネ対策を行いました。照明は、外看板お

よび工場のバックヤードなど不要個所を消灯すると

ともに、店舗も30%消灯しました。空調は、3台の

のうち店舗の1台を停止し、作業所にあるビルトイ

ンタイプ1台の設定温度を26度(昨年は22度)と

しました。

 また、荻窪営業所では、平成23年度に看板消灯お

よび店舗の10%消灯、ストックヤードの50%消灯を

実施しました。空調は、設定温度を26度(昨年は

22度)としました。その結果、前年比約30%前後

の消費電力削減となりました。

 平成24年度は、本社・工場で、セットバック(フ

ロントの後ろの作業場)の照明を全てLEDに転換す

るとともに、店舗全照明の50%をLED化しました。

新規事業「ウェットクリーニング」 ドライクリーニングは問題点が多々ありますが、

すぐに代替できる方法がないため、現在のクリーニ

ングの主流となっています。環境視点、法的側面、

経済的視点から、次代のクリーニング手法が求めら

れており、当企業ではいち早く「エコ」の視点によ

るクリーニング方法の開発に着手しました。石油を

使わず、水で洗濯する手法を開発中です(ウェット

クリーニング)。

 専用の洗浄機国内第1号を導入し、専用の水洗い

用洗剤を使用して、全体の約80%をウェットクリー

ニングによるサービスで行っています。非常に先進

的な取り組みであり、脱石油、脱ドライクリーニン

グを具現化し、ケミカルフリーに一層近づく手法で

す。クリーニング界最大の課題である環境負荷低減

に決定的に寄与するため、各地の事業者やメディア

からの視察をうけ、話題にもなっています。

 新しい技術だけに、現場における問題もあります。

現在は、問題の発見と解決により、サービス品質の

向上に取り組む毎日です。本技術が完成すると、ク

リーニング手法の革命になる可能性を秘めており、

新ビジネスモデルとしても注目されています。今後

の動向を注視したいところです。

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企業概要会社沿革

昭和8年 東京都墨田区に「中村玩具店」として中村安治郎個人経営で発足

昭和13年 富士写真フイルム株式会社(現富士フイルム株式会社)とフィルム屑払い下げ契約を締結

昭和13年 東京都葛飾区に移転し、中村セルロイド工業所と改称

昭和23年 神奈川県南足柄市に広町工場を建設 株式会社中村セルロイド工業所と改称 写真フィルムより銀の回収事業を開始

昭和45年 社名をパナック工業株式会社と変更

昭和51年 PETフィルムの再生回収業務を開始

平成2年 使用済映画フィルム(TAC)のリサイクルを開始

平成9年 本社工場(現足柄工場)が「ISO14001」の認証取得

平成14年 開成工場が「ISO9001」の認証取得

平成18年 ポリカーボネートの再生回収事業を開始

平成20年 ポリカーボネート樹脂リサイクル技術が神奈川工業技術開発大賞「地域環境技術賞」を受賞

平成23年 ポリカーボネートコンパウント事業開始

52 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

パナック工業株式会社究極のリサイクルを目指す

 パナック工業株式会社は、ビジネスモデルそのものが環境配慮であり、かつ、それが他の追随を許さな

い強みになっている企業です。当企業の主な技術は、銀化合物の洗浄リサイクル技術、洗浄剥離技術、光

学向け樹脂加工技術ですが、その基本には「廃棄される素材をバージンに戻す」という究極のリサイクル

を目指す考えがあります。上記技術のいずれにも「環境」視点が根底に据えられており、積み重ねられた

技術力は高い競争力となっています。環境配慮の取り組みは、ビジネスモデル、戦略、技術、省エネ、E

MS、化学物質対策などあらゆる分野に及び、その取り組みが当企業の強みを形成しているのです。当企

業の省エネ、EMSの取り組みは、別冊「経営改善テクニック集基本編」にも記載してありますので、併

せてご覧下さい。

サービス業/service industry

代表取締役会長 中村 健作

取締役社長 河村 定夫

創 業 昭和8年

住 所 本社:神奈川県足柄上郡開成町吉田島4301

電 話 番 号 0465-86-0080

U R L http://www.panac.jp

事 業 概 要原材料に戻すレベルマテリアルリサイクルとプラスチックフィルム表面処理加工

主要サービス銀精錬事業回収リサイクル、洗浄剥離加工、光学用途向け樹脂再生・製造、プラスチックフィルム表面処理

資 本 金 8,360万円

売 上 高 約44億円(平成24年3月期)

従 業 員 数 190名(平成24年7月現在)

社長 河村定夫会長 中村健作

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第1章 中小企業における経営改善事例/パナック工業株式会社 ◆ 53

●環境経営の取り組み概要

環境を軸に事業を展開 当企業の環境経営の取り組みは、ビジネスモデル、

技術、省エネ、EMS、化学物質対策などあらゆる分

野に及びます。その取り組みが当企業の強みを形成

し、そのエコ技術が独自に発展した結果、他に例を

見ない特長あるものになっています。当企業の省エ

ネ、EMSの取組は、別册「経営改善テクニック集

基本編」に詳しく記載しているため、ここでは要点

のみ記述します。

銀回収リサイクル 当企業の銀回収リサイクルは、通常行われる乾式

ではなく、湿式と呼ばれる方法で高純度回収してい

ます。乾式とは、焼却工程を経て銀に付着している

ベース素材、物質を焼却して銀回収する方法です。

しかし、その方法では様々な化学合成物質・副生成

物が焼却で発生し、CO2とともに廃棄物として大気

放出されたり、廃棄埋立されてしまいます。

 当企業では、銀を湿式と呼ばれる方式で回収し、

99.99%以上の純銀に再生します。焼却方式でない

ため、焼却時に発生する有害物質・副生成物も抑制

され、また、焼却では放出されてしまう銀以外のベ

ース素材も、高度な剥離洗浄技術により全て回収。

全てをバージン素材同等に再生させるという究極の

リサイクルを行っています。

1.原料:写真感材フィルムの洗浄液を回収

2.凝集、固液分離:凝集剤を加えて固液分離

3.湿式還元:還元反応後、遠心脱水

4.精錬、電気分解:600℃から1200℃の高温で

焙焼・精錬。更に電気分解工程を経ることで99.99

%以上の純銀が析出

5.鋳込:30kgのインゴットに成形

洗浄剥離技術 ハードコート・プラズマコーティング・塗装・印

刷等が付加されたプラスチック成型品から機能層を

剥離し、樹脂素材をオリジナルに限りなく近い物性

で得ることが可能なリサイクル技術です。基材の品

質を落とさずに加工できるため、レベルマテリアル

リサイクルが可能です。

 写真、印刷、レントゲン、液晶用パネル、CD、

DVD、その他工業用など、各種フィルム、プラスチ

ック成型品を元の素材(バージンレベル)に戻すこ

とができます。

洗浄回収

リサイクル工程概要(写真用銀回収)

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54 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

光学系樹脂提供サービス バージン材料・リサイクル材料を単独、またはブ

レンドし、光学用途向けの低異物樹脂を提供します。

 クリーンルーム、高性能ポリマーフィルター等を

有したクリーンコンパウンドラインにより、各原料

をブレンドして、クリーン充填を行います。

 CD,DVD,BD 等のリサイクル原料とバージン原料

を任意の割合でブレンド・添加剤補正し、Disc向け

の樹脂を提供することも可能です。リサイクル原料

は、ポストコンシューマー材料、プレコンシューマ

ー材料として扱います。

化学物質管理による競争力向上 当企業は、メインマテリアルである樹脂や苛性ソ

ーダ、界面活性剤をはじめとして、研磨剤、凝集剤、

塩酸などの副資材まで、必要に応じて、RoHSや

REACHのSVHC対応の非含有証明の入手および発

行、MSDS 等による情報伝達を行っています。

 また、当企業は品質管理向上のため、定期的に蛍

光エックス線の分析や、ICP分析を行っています。

そのために自社内で分析装置・分析技術者およびそ

の体制を整備しているところが、化学物質管理視点

で多くの中小企業にない強みです。

RoHS 非含有証明例

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第1章 中小企業における経営改善事例/パナック工業株式会社 ◆ 55

フィルム表面処理事業 本事業は、前述のようにビジネスモデル自体がエ

コ事業という位置づけではなく、事業の運営におい

て、省エネ・環境マネジメントシステム・環境配慮

型生産工程改革などを機能させ、総合的に環境配慮

した事業です。(※省エネ・EMS 等については、別

冊「経営改善テクニック集基本編」参照)

サンドマット加工

 砂(珪砂)を吹き付け、フィルム表面を微細な凹

凸状にする技術です。艶消し効果、接着力向上、摩

擦係数低下など様々な効果があります。印刷、コー

ティング適性、異素材とのラミネート適性が格段に

向上しました。アルミなどの金属を真空蒸着するこ

とで高級感を醸し出し、ラベル、ステッカー、その

他電子材料のプロセス資材用途など、幅広い分野で

活用されています。

ヘアライン加工

 フィルムなどの表面に研磨材でスジ状の凹凸模様

をつける技術です。メタリックな光沢を放つライン

模様など、印刷では出せないシャープな高級感を生

み出します。ラベル、転写フィルム用途など家電製

品などにも活用できます。

ICP 分析結果例

REACH SVHC 不使用証明例

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56 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

スリット加工

 各種フィルムなど、一般工業用から光学用途までに

対応できる高精度なスリット技術です。クリーンルー

ムには、スリット後のフィルム表面同士の接触キズを

防ぐための高精度ナール加工設備を完備しています。

面状検査

 クリーンな環境の中で、微細な傷、汚れ、異物付

着などを最新鋭の設備・技術で検出、除去します。

検知レベルは、最小で0.039mm(TD)×0.025

(MD)、さらに2ch 静電電位測定器により、インラ

インでのフィルム帯電測定が可能です。

マネジメントシステムの改善 当企業は、ISO14001を国内で最も早い時期に導

入した中小企業の一社です。導入当初は、環境中心

の取り組みでしたが、その後、環境と経営の両面に

役立つ仕組みにブラッシュアップ。構築された教育

システムを基盤に、問題解決・企画展開を進め、環

境負荷低減、コストダウン、取引先開拓とあらゆる

経営改善を実現しました。

 効果の一例をあげると、水利用および下水使用量

の大幅削減、電力使用量の削減、廃棄物の大幅削減、

品質向上、コストダウン数千万円、不良品削減、モ

チベーションアップにつながる人事考課制度の開発、

新規事業企画提案など。非常に多くのテーマ・部門

において、経営力を向上させています。詳細は、別

冊「経営改善テクニック集基本編」をご参照ください。

生産倍増でも電力契約は同水準 省エネ活動も、マネジメントシステムの取り組み

と有機的に絡み合い、非常に高い効果を生み出して

います。当企業は、事業の拡大に伴って設備が増え、

負荷容量的は倍以上、生産も倍以上に増加しました。

しかし、省エネ努力により、電力契約を以前と同じ

水準に抑えることに成功しました。主力工場で契約

電力2000kWの規模となり、経済効果も絶大です。

詳細は、別冊「経営改善テクニック集基本編」をご

参照ください。

ナール加工部イメージ

光学用スリット機

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第1章 中小企業における経営改善事例/パナック工業株式会社・株式会社エコビルド ◆ 57

企業概要これまでの歩み

昭和28年 先代が「平野建築」 創業

平成元年 有限会社平野建築に改組

平成14年 株式会社エコビルドに改組 

   21世紀に入って強く環境を意識するようになり、ソーラーハウスと出会う。経営が苦しい時期だったが、どうしても環境調和型の仕事がしたいと強く思い、環境と仕事との融合へ完全にシフト。利益度外視で建築したソーラーハウスが評価を受けて、経営再建への歩みが始まった。   しかし、4棟目がどうしても受注できず、ソーラーシステムを組み込んだ事務所を建築。事務所が完成して、見学会に来たお客様がソーラーハウスの良さを実感すると、新築の注文が続き、企業再建が本格化した。

株式会社エコビルド環境への強い思いで企業再建

 株式会社エコビルドは、環境配慮の視点を根底にした建築・リフォーム提案を行っている企業です。エ

ネルギーコスト(電気代、灯油代など)を大幅に削減し、環境に良く、夏でも冬でも快適な住まいを提供

しています。特にソーラーハウスが強みですが、経営が苦しい時期に環境調和型の仕事がしたいと強く思い、

利益度外視でソーラーハウス一棟目を建築。それが話題になり、現在に至っています。社長の強い環境へ

の思いを事業に融合させて再建した企業事例です。短期的な対策ではなく、将来を見据えてコスト面でも

品質面でも最適な提案を行うことが顧客満足度を高めています。お客様の口コミによって依頼が後を絶た

ず、ここ数年は半年先まで仕事の予約が埋まっている状況が続いています。

建設業/construction industry

代表取締役 平野 寿一

創 業 昭和28年(平野建築)

住 所 東京都あきる野市雨間696

電 話 番 号 042-558-0751

U R L http://www.ecobuild.co.jp

事 業 概 要

注文建築、リフォーム、増改築工事職人のネットワークを持ち、自社に従業員を抱えずに多数の仕事をこなすビジネスモデルを確立。需要変動期への対応力が強く、常に収益を上げられる体制を構築している。

資 本 金 1,000万円

従 業 員 数

役員 4名 従業員 1名かつては大工などの職人を多数雇っていたが、現在は、前掲のネットワーク構築により職人をキャスティングしているため、職人ゼロ。

平野社長

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58 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

将来を見据えた最適な提案 住まいの本質的な診断を行い、短期的な対策では

なく、将来を見据えてコスト面でも品質面でも最適

な提案を行います。お客様の要望以外に直すべきと

ころはないか、後で確実に必要になる補修や対応策

は何か、後で修繕を行うと余分なコストが大きく発

生するものはないかなど、お客様の視点で可能な限

りのサービスを行います。

リピータが極端に多い 徹底してお客様の立場に立つ業務スタイルにより、

新築、リフォームを問わずリピーターが極端に多い

のが特徴です。現在、お客様は500件ほどですが、

そのほとんどがリピーターとなっています。また、

業務の50%以上は、オフィスから半径2km以内の

お客様です。地元での極めて強いブランド力をお客

様の口コミで創り出しています。

職人の独立を支援 かつて大工が5人以上いたときもありましたが、

現在は職人を雇っていません。従業員を自社のもの

とする考え方を改め、従業員であった職人の独立を

支援しています。当企業で育った職人及びその周り

の様々な職人とネットワークを組み、当企業単独で

はできない業務は彼らと提携することで、利益を下

げずに対応できるビジネスモデルを創出しました。

このモデルは、事業継続計画にも極めて有効です。

ゼロから一緒に考える 家は、大きな買い物です。家族一人ひとりが家に

ついて考えを持っているので、全員の意見が入った

家づくりを目指します。考え方、生活スタイル、こ

だわり、趣味、普段の生活など。作る側の良い家と、

住む側の良い家は違います。ハウスメーカーは作る

側の考え方一辺倒で、選択肢が狭い。当企業はゼロ

から一緒に考え、お客様の10人10色の家づくりを

行います。家は買うものではなく、作るものです。

大きな倉庫スペース 材料をトン単位で購入して保存するため、大きな

倉庫スペースを持っています。近隣地域だけでは、

本当に質の高い材料は購入できません。遠方に足を

延ばして、近隣地域では手に入らない良質の材料を

まとめて調達しています。材料自体で、オリジナリ

ティを出すことも可能です。これは、QCD(品質・

コスト・環境)すべての視点で強みとなります。

人がやらないことをやる 新しいことに目を向け、時代の2歩3歩先ではなく、

1歩先を行く経営への強い意志を持っています。常

に創意工夫が行われ、他社にはないサービスの提供

が随所に見られます。ソーラーハウスの開発もその

一つです。

経営者の想い 会社の発展は、10年程前に時代のニーズに先駆け

てソーラーシステムを備えたショールーム的な事務

所を建築したところから始まります。事務所に来て、

感じて、納得していただき、仕事の依頼をいただき

ました。今後は、次の時代のお客様のニーズに合う

ような提案物件を考え、次代に対応する新しいショ

ールーム作りたいと思っています。

 南側はソーラーで北側は太陽光発電にするなど、

熱と電気を一つの屋根でできるものを作りたいと考

えています。また、自然素材、地域木材、国内木材、

構造材などに様々な工夫をし、消費エネルギー最小

化建築物を追求することが目標です。

 売上金額や利益を優先せず、仕事の中身とお客様

の想い、希望、そしてお客様にとって本当のメリッ

トを優先して提案し、施工したいと考えています。

その場では利益にならなくても、本当に満足しファ

ンになっていただけると、何年か後に仕事を依頼さ

れ、利益になって帰ってきます。その結果が、現在

年間60件を超えるリフォーム(一部新築)依頼です。

常時、15件から20件以上の現場を動かしています。

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社エコビルド ◆ 59

●環境経営の取り組み概要

環境と仕事のリンクを強く意識 経営者は、21世紀に入ると強く環境を意識するよ

うになりました。次の時代のテーマとして「環境」

が重要、地球を大事にして子孫が安心して生きてい

ける環境にしなくてはならないとの思いから、環境

と仕事をリンクさせていきました。そして「環境」

にアンテナを張る中で、ソーラーハウスに出会った

のです。利益度外視でソーラーハウス一棟目を建築

すると、そのソーラーハウスが話題になりました。

お客様に提案できる事務所 ソーラーシステムを組み込んだ事務所を建てた時、

周囲から「事務所にソーラーはいらないだろう」と

反発・批判を受けました。しかし、ソーラーを組み

込んだ事務所の見学会で、エネルギーを使わずに夏

は涼しく冬暖かいことをお客様が実感。お客様に提

案ができる事務所を作りたいとの経営者の思いが実

を結び、新築の注文が続きました。

 事務所内では、冬は外気0℃でも18度、夏は外気

35度でも28~29度となっています。

当社主力のソーラーハウスとは 太陽熱を有効活用し、冷暖房が1年を通してほと

んど不要、もしくは極端に必要なくなるシステムで

す。消費エネルギーを削減し、燃料を使わないクリ

ーンエネルギーで、快適とコスト削減を実現する環

境調和型の建築です。当企業では、通常のソーラー

ハウスでは満足せず、創意工夫により効果の高いハ

ウスを具現化しています。

ソーラーシステムの事務所

新築事例

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60 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

集熱効果の高いシステム 2重断熱構造により熱を下に通さないため、小屋

裏は快適に過ごせる温度になっています。木片を独

自手法で交互に入れることにより、通常のソーラー

よりも断熱効果が格段に高くなりました。集熱面の

温度は93℃ですが、屋根直下の小屋裏は最高でも

30℃台に抑えられています。これは、画期的なこと

です。

QEの視点で素材にこだわる CO2削減を意識し、主に国産材を使用しています。

合板やフローリングも含め、檜の材料をふんだんに

使います。檜は合板であっても、水にさらしても狂

わず、白アリに強いという特長があります。また、

素材にこだわる一方で、身近にあるものを利用し創

意工夫をして、QCE(品質・コスト・環境)におけ

る高い顧客満足度を実現しています。当企業の建て

る建物は、環境にやさしいだけでなく品質も高い。

単にEだけでなく、Qだけでもない。EとQの両方の

顧客満足度を高めるために努力し工夫することで、

Cも満足させる。そうした環境経営ビジネスモデル

を確立しています。

独自工法により高い断熱効果を実現

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社エコビルド・株式会社ナミキ ◆ 61

企業概要これまでの歩み

昭和12年 創業

昭和58年 株式会社ナミキ建設設立 現会長が社長として陣頭指揮

平成4年 中心事業の周辺で収益性がある事業を展開する子会社を設立

  ○不動産バブル期が一番厳しかったが、建設業と現金取引のおかげで生き残る。  ○厳しい状況の中、財務的に手堅い経営を行い、全従業員が一致協力し、様々な工夫と努力により切り抜けた。地域密着及びビジネスモデルの強みを活かし、お客様の要望を吸い上げて顧客満足度を高めるサービスを開発。  ○会長を中心にアイディアを出し合い、ブラッシュアップして新規事業企画を創出。例えば、屋根材を当時主流だったコロニアル等の一般的な材料から、バリウムなどメンテナンスフリー素材に変更。変わったものが欲しいお客様には、三角屋根の商品提案を行うなど、顧客満足度の高い商品・サービスの試作を次々投入している。

株式会社ナミキ省エネ住宅の提供による地域貢献

 株式会社ナミキは、不動産業をメインに建設事業や不動産開発までを手がけている企業です。不動産業

がベースですが、建設事業部門を持ち、設計も自社で行っていることが大きな強みになっています。また、

会長はこの地で生まれ育ったことから、地域貢献を念頭に置いた経営を行っています。このことは、環境

への取り組みにも現れています。自社内での省エネはもちろん、自社が設計・施工・運営する賃貸住宅を

省エネ住宅とすることにより、地域全体の省エネにも寄与しています。経営トップが企業をエコ経営に導

きながら、地域を第一に考えた環境への取り組みが、地域との信頼関係をさらに強固なものにしています。

建設業/construction industry

代表取締役 並木 洋一

創 業 昭和12年

住 所 東京都板橋区成増3-12-1

電 話 番 号 03-3975-6222

事 業 概 要

建設事業、不動産賃貸事業、不動産事業開発主要顧客は、賃貸を営むオーナー、富裕層。また、税理士など顧客を持つ専門家が顧客を資産形成支援のために紹介してくれる。ナミキリフォームサービスなどの子会社を立ち上げ、現在6社。

資 本 金 4億2200万円

売 上 高 約54億4,000万円

従 業 員 数 正社員:100名、グループ全体:180名

石塚社長並木会長

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62 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

設計・施工・管理までの一貫経営 不動産業がベースですが、建設事業部門を持ち設

計も自社で行っていることが、他社に比べた大きな

強みとなっています。賃貸営業がビジネスの入口と

なりますが、これは手数料・手付金が中心で収益力

は高くありません。そこで、建設した賃貸物件の管

理を行います。現在15000室あるため、こちらは賃

貸収入サービスによる収益力があります。

 このように、低収益でも間口が広がる営業から取

引を拡大し、収益の高い事業につなげていくという

事業モデルを創出しています。このような事業を展

開する中で、周辺の新規事業を開発。例えば、サー

ビス付き高齢者賃貸住宅の建設運営などを行います。

周辺事業への進出 メイン事業を進める中で、その周辺事業の可能性

を実地調査し、内製化が可能と判断すれば、事業拡

大を行います。机上の空論ではなく、日常業務の中

で無理なく収益が上がる事業分野を確認し、内製化

することで収益性を高めます。こうした手法で、無

理なく事業を拡大してきました。新事業のために子

会社をつくり、現在子会社は6社になります。

地域との信頼関係と影響力 地元との信頼関係・信用度が高いことも、他社に

比べた大きな強みです。先々代がこの地で商売を行

っていたため、地元の抵抗なく事業を進めることが

できます。また、早い時期からアンケートを行って

地域のお客様の要望も聞くなど、地域に根ざした経

営を実践しています。

 例えば、地域の信頼を背景にワンルームを多数建

築しました。これにより、成増に若い人を呼び込む

ことに成功。地域の経済は、地元の人だけでなく若

い人が入ることで活性化します。当企業のビジネス

は、地元である成増の人口動態構成を変えるほどの

影響力を持っています。このような地域との関係は、

一朝一夕にできるものではありません。

経営者の想い 自社だけでなく、社会を含めた周囲が豊かになら

なければ真の繁栄はありません。そのスタートが、

社会貢献・地域貢献・地域密着という理念を掲げ、

戦略にまで高めて展開した事業でした。今後は、高

齢化社会への対応を考えています。社会貢献の一環

として、環境経営と高齢化社会対応を次の時代のビ

ジネスの柱に据えています。

 高齢者対応は、ビジネスチャンスであり社会貢献

でもあります。増大する高齢者のために、質が高く

て良い住まいを建てたいと考えています。高齢化社

会では、一般論として、賃貸物件の空室が現在の

12.5%から40%へと増大するといわれています。そ

こで、サービス付きの企画運営管理を行います。国

民全体に快適さを提供する「心の時代」にふさわし

い事業です。単に建設するだけではなく、総合的賃

貸管理を行うことで、時代に貢献したいと考えてい

ます。

 また、会長と社長による二人三脚の体制でステイ

クホルダーと組み、介護と医療がつながる事業も今

後の視野に入れています。その他、日本語学校の世

界展開など、経営者の頭の中にはその先の夢がいっ

ぱい詰まっています。

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社ナミキ ◆ 63

●環境経営の取り組み概要

電気を自給自足する住まい 当企業は、経営者の意向で震災前からエコ化を進

めていましたが、ある時、製材所が川を利用して電

気を創り、電気代ゼロを実現しているのを知りまし

た。そこで、「電気代がかからないアパート」をつく

ることができたら、それも強みになると考えたので

す。震災以降、電気代が安くなると喜ばれる傾向に

あったことも背景にありました。

 目標は、照明、発電、蓄電池、その他熱伝導が良

く効率の良いものを使用し、さらに売電までできる

住まいをつくることです。「自分の電気は自分で処理

できるのがいい」こうしたアイディアは通常否定さ

れることが多いのですが、当企業ではこうしたアイ

ディアが具現化されてきました。経営者の環境への

認識が高いからです。中小企業経営では、経営者の

意識が重要となります。

企画物件を省エネ住宅に 自社が設計・施工・管理する賃貸住宅を省エネ住

宅とすることで、社会における省エネ効果を高めて

います。お客様に渡った時に、省エネを持続的に行

える商品・サービスの提供を目指しているのです。

自社内で省エネを行うよりも、はるかに省エネ効果

が高い取り組みです。

 例えば、賃貸マンション「サンヴィアーレ」、サー

ビス付き高齢者住宅「シルフォート」など、自社で

企画・設計・建設・管理を行う住宅のエコ化を図り

環境力を高めることが、社会全体の省エネ・節電に

貢献します。省エネ・節電意識の向上にも、間接的

に寄与するといえます。

省エネ建築設計 自社の企画物件では、建築設計を自社で行う強み

を活かして、省エネ建築の設計を行っています。照

明はすべてLED、高効率空調導入など設備面の省エ

ネ対策を実施。さらに、省エネを意識した「風の流

れるマンション」の設計も行っています。一般のマ

ンションでは、風の流れは全く考えられていないた

め、1階で風の流れを創るという発想はありません

でした。

サンヴィアーレ外観

サンヴィアーレ内部のLED 照明

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64 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

照明LED化による省エネ効果 自社設計・建築・管理を行う賃貸マンション「サ

ンヴィアーレ」の照明は、すべてLEDにしました。

共用部分および専有部分の各照明を設計段階から全

てLEDとし、お客様の強い要望がある場合は、部分

的に蛍光灯を使用。LED換装前と比較した省エネ効

果は、以下の通りです(想定稼働率として、共用部

の平均点灯率50%。専有部は、1日24時間を100%

として、点灯時間を使用エリアに応じて3%~25%

としています)。

 サンヴィアーレ1棟による想定省エネ効果

 共用部:1.42kW×365=518.3kW  

 専有部:3.85kW×365=1,405.3kW

 年間省エネ効果:1,923.6kW 

 年平均販売数30棟での年間省エネ効果:

                57,708kW

今後の計画物件も照明は全てLED 平成25年度より設計・建築・施工・販売を開始す

るサービス付き高齢者賃貸住宅「シルフォート」の

照明も、全てLEDで企画・施工することにしました。

「食堂」「エントランスホール」「屋内廊下」「住戸居室」

などの大電力エリアから、「倉庫・車椅子倉庫」「ポン

プ室」「駐輪場」などほとんど照明を使わないところ

まで、全ての照明について企画段階から省エネ設計

を行い、省エネ・節電に寄与する施設の建設・管理

を行います。想定稼働率を考慮し、蛍光灯使用の場

合と比較した省エネ効果は、以下の通りです。

 シルフォートにおける想定省エネ効果 

 共用部:119.3kW×365=43,544.5kW

 専有部:16.5kW×365=6,022.5kW

 年間省エネ効果:49,567kW

 年平均販売予定数6棟での年間省エネ効果:

                297,402kW

自社オフィスビルの省エネ 自社の保有する主なオフィスビルは、3カ所あり

ます。それらオフィスでは、照明の間引きや空調温

度の設定変更、非稼働時の消灯・スイッチオフ、一

部照明のLED化など、無駄な電力消費の抑制により、

平成24年度はオフィストータルで前年度比約28%

の節電を達成しました。

(取材協力:城北信用金庫)

シルフォート外観

成増アクト支店

階数 電力種別 契約 最大電力本社 7 業務用 55kW 43kW

第6ビル 3 業務用 43kW 30kW

第11ビル 4 業務用 33kW 21kW

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社ナミキ・株式会社ウインローダー ◆ 65

企業概要これまでの歩み

昭和25年 荻窪小型運送株式会社として発足

昭和43年 荻窪高島運送株式会社に改称

昭和51年 高島運送株式会社に改称

昭和54年 髙嶋民雄社長就任

昭和59年 本社ビル完成

平成元年 株式会社ウインローダーに改称

平成13年 ISO14001認証取得(本社)

平成16年 新商品エコランド投入

平成17年 ゼロエミッションセンター設立

平成18年 ISO14001認証取得(全社)

平成19年 リサイクルショップ開設、中間処理場開設、「エコオク」開設

平成21年 髙嶋民仁三代目社長に就任 Pマーク取得/グッドデザイン賞受賞

平成22年 ロハスデザイン大賞受賞(コト部門) エコオクチャリティオークション開始 東日本大震災復旧・復興支援活動開始

平成23年 チャリティフリーマーケット開催 仙台でのボランティア活動

株式会社ウインローダーリユースのエコ物流

 株式会社ウインローダーは、産業分類上「運送業」に分類される物流事業者です。しかし、社長を中心

とした経営陣、そしてスタッフがアイディアを自由に展開し、一般の運送業者とは思えないほどユニーク

で楽しく、かつ顧客・社会に役立つビジネスモデルを次々と創造し、事業として推進しています。メイン

となるのが、お片づけサービス・不用品のオークション出品代行・リサイクルショップを有機的につなげ

た新しいリユースビジネスモデル「エコランド事業」。その根底には、徹底した「エコ意識」があります。

不用品はごみではなく、価値あるもの。お客様から提供される破損した不用品も、新たな価値を付加する

ことで生き返らせます。「不用品や壊れたものの再生」をも包摂するリユースの理念に基づくビジネスモデ

ルです。

運輸業/transport industry

代表取締役 髙嶋 民仁

創 業 昭和25年

住 所 東京都杉並区上荻2-37-7

電 話 番 号 03-3390-2161

U R L http://www.winroader.co.jp

事 業 概 要貨物自動車運送事業、梱包保管取り扱い事業、一般廃棄物・産業廃棄物積み替え収集運搬事業、産業廃棄物処分事業

主要サービスエコランド事業:オークション出品代行・買い取り事業、片づけサービス事業、保管事業などを手掛ける

資 本 金 5,000万円

売 上 高 約19億円

従 業 員 数 160名

髙嶋社長

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66 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

経営者の想い 社長には、エコへのこだわりの他にもたくさんの

想いがあります。物流に関係する事業は重要です。

誰かが運ばなければモノが届きません。その業界を

衰退させてはいけません。でも今のままでは、誰も

がやりたいと思える業界とは言えません。笑顔をあ

えて出し、面白く仕事をすると、人が集まって来ます。

実際は厳しい時もたくさんありましたが、つまらな

いのではいけません。トラック運転手の価値転換を

図り、トラック運転手ではないトラック運転手を目

指したいと思います。

 エコを最高の強みとして、働く一人ひとりが生き

生きと活動するビジネスモデルを創り上げました。

今では創造的に仕事をするスタッフが増えてきたと

実感します。主力事業に育った「エコランド事業」

をアジア全域に広げたい。そして、情報とモノを融

合させ、さらなるわくわくする事業を開発したい。

イベントと物流の融合など、可能性は無限にありま

す。当社の周りには人が集まります。そこからまた

新たなアイディアが生まれる予感がします。今に安

住せず、エコ意識を根底に持ち、世界を視野に入れ

て走っていきたいと思っています。

●環境経営の取り組み概要

エコランド事業 お片づけが苦手な人、モノが多く片づけられない

家庭やオフィスのために、お片づけサービスから不

用品のリユースまでをつなぐエコビジネスを展開し

ています。リユースの対象となる不用品は、「ごみ」

ではなく「価値あるもの」ととらえ、不用品を提供

するお客様と集荷からリユース・再生までを結ぶ価

値の循環システムを創造し支援する、新しいエコ物

流事業です。

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社ウインローダー ◆ 67

 まず、お片づけサービスを実施します。その際に

出た不用品を集荷し、その場でウェブ上に必要な情

報をインプット。ネットオークション「エコオク」

への出品代行を行います。売れ残った商品は、自社

リサイクルショップで販売します。自社リサイクル

ショップの3割が、お片づけサービスからの集荷品

です。リサイクルは、素材にデザインを加えて、新

たなエコプロダクツとして蘇らせるところまで、エ

コにこだわっています。

お片づけサービスを実施

お片づけ前

不用品を搬出

お片づけ後

エコオクに出品

クリーニングしてリユース

エコプロダクツ製作

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68 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

目指すのはごみゼロ社会 お片づけサービス、不用品のオークション出品代

行、リサイクルショップ、海外で必要とされる方へ

の商品提供、エコプロダクツの製作など。徹底して

未来へつなぐ、地球と環境を考える循環型物流です。

エコランドの海外展開 当企業では、日本だと流通しにくい家具を東南ア

ジア各国に輸出し始めています。日本では人気が低

いものでも、海外では非常に喜ばれるものが多数あ

ります。今後は、アジアは内需と考えるスケール感

を持ちながら、アジア全体でエコランド事業を展開

する準備を進めています。

 日本では使われなくなったモノも、海外では高級

品です。そのようなモノを海外に送り、フィリピン

など東南アジアの国で、現地の方々の仕事を創って

います。現地の方々が家具を磨く、そして販売する

という事業スキームを動かし始めています。

「つなげる、ココロ」プロジェクト ウインローダー/エコランドは、震災直後から様々

な団体と協働し、エコオクチャリティオークション、

現場でのボランティア活動、被災地復興支援写真展、

被災地の子供たちを始め、多くの方々の夢・想いを

支援する「僕らの夢プロジェクト」など、様々な支

援活動を行っています。これからも、物流会社とし

てできることを継続的に続けていきます。

(詳細は http://www.tsunageru-kokoro.com)

(取材協力:西武信用金庫)

タイにリサイクルショップオープン

フィリピンでは日本の商品が大人気

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第1章 中小企業における経営改善事例/株式会社ウインローダー・特集 日本電気株式会社 ◆ 69

日本電気株式会社NECグループにおける環境経営への取り組み

事業活動における環境負荷削減と、製品・サービスを通じた社会全体の環境負荷削減

 NEC は、パソコンや携帯電話、省庁・企業向けのIT サービス、通信事業者向けネットワーク、航空宇宙

や防衛、さらには電気自動車向け蓄電池など、幅広い事業をグローバルに展開し、これら事業を通じて「人

と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」になること

を目指しています。

 環境への取り組みは、1970年に公害防止環境管理担当役員を任命し、本社に「公害防止環境管理部」、

各事業場に「公害防止環境管理センター」を設置した時から始まり、1995年にはISO14001を取得しマ

ネジメントを強化。2002年にはNECグループ国内全分身生産会社でゼロエミッション達成するなど、常

に積極的な環境活動を推進しています。

NECが考える環境経営とは NECでは2000年頃より「環境経営」という言葉

を使っています。それまでは、一般的に「環境」は「経

営」とは直接結びつくものではなく、専門家が行っ

ていれば良いという考えであったのに対し、「環境」

への取り組みを積極的に推進し強化することが、結

果として「経営」にも貢献する、という考えを端的

に表しています。

 NECが考える「環境経営」には、3つの意味が含

まれています。一つ目は自社での環境負荷の削減、

二つ目が環境負荷の少ない製品・サービスの提供、

三つ目が製品・サービスの利用を通じた社会全体の

環境負荷削減への貢献です。これらの取り組みを通

じて、持続可能な社会の実現に貢献することが企業

価値の増大につながるものと考えています。以下に、

この3つの視点に沿って活動をご紹介します。

生産革新、コスト削減と一体で進める自社の環境負荷削減活動 生産現場では、コスト削減のための改善活動が行

われています。NECでは生産現場の環境活動を推進

する際に、生産革新を行いコスト削減することが環

境負荷削減につながること、つまり環境負荷を削減

することがコスト削減にもつながることを説明し、

環境視点での生産の見直しをお願いしています。

特 集

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70 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

 例えば廃棄物の削減では、具体的な廃棄物を取り

上げながら、その工程を資材購入段階まで遡ること

で、廃棄物も実はお金を出して購入した資材である

ことを実感してもらいます。逆に、廃棄物を実際に

廃棄する手続きを示すことで、廃棄にどれくらいの

費用がかかっているのかを知ってもらいます。そう

することで、廃棄物を減らすことが資材費の削減や

処理費用の削減になり、結果として会社の利益に繋

がるということを理解してもらえますので、当たり

前のように環境活動が展開されます。

 同様に、オフィスにおいても、省エネが環境負荷

低減とコスト削減になるということが浸透している

ので、職場単位で積極的な省エネ・節電活動が推進

されています。

 さらにオフィスでは、ITを活用した働き方の見直

しで、業務効率と同時にコスト削減と環境負荷低減

を目指しています。TV会議やWeb会議で移動による

環境負荷や出張費を削減し、何時でも何処でも仕事

ができる環境を提供することで、オフィスフロアそ

のものの面積を削減でき、賃料と空調・照明費用の

削減が、さらに環境負荷の削減につながっています。

環境で競争力を高める製品・サービスの開発 NECでは製品開発の際に、「品質」「価格」「納期」に

加え、「地球温暖化防止(省エネ/CO2削減)」「グリー

ン化(有害物質の含有禁止)」「省資源化(3Rの推進)」

の3つのエコの視点でチェックしています。特に優れた

環境性能を有する製品には、「エコシンボル」、「エコシ

ンボルスター」のラベルを付与して環境性能の高さを

アピールしています。

■エコシンボルスター製品事例

■「NECの環境配慮型製品体系」

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特集 日本電気株式会社 ◆ 71

 特に省エネ・節電に対するニーズの高まりを受け、

従来からの製品の消費電力削減に加え、製品そのも

のが自律的に省エネ・節電する機能や、利用者にム

ダな消費電力を示すことで利用者自身の省エネ・節

電行動を促す機能を製品に組み込み、製品使用段階

での環境負荷を削減しています。

社会全体の環境負荷削減に貢献する製品・サービス ITを活用すると、人やモノの移動、モノの保管、

紙使用など、環境負荷を削減することができます。

もちろんIT機器は電力を消費しますので、その分環

境負荷が増えますが、トータルでみるとIT活用は環

境負荷の削減につながります。NECは、製品・サー

ビスを組み合わせたITソリューションの提供を通じ

て、お客様の業務を効率化し、社会全体の環境負荷

の削減に貢献したいと考えています。

 また、NECではそれら環境負荷削減につながるソ

リューションを自社で実践し、その成果を実証して

います。玉川事業場にある「NEC玉川ソリューショ

ンセンター」(写真)では、「オフィスまるごとエコ」

をコンセプトに、省エネに対応した電力や空調など、

ビル設備の導入だけではなく、エネルギー消費の「見

える化」推進による従業員への啓発、ICTを活用し

たワークスタイルの革新により、CO2の排出量を大

幅に削減。従来のオフィス比でCO2排出量を約50%

削減し、それと同時に大幅なコスト削減も実現して

います。

■パソコンの消費電力の見える化事例 「エネパル®PCパック」

■遠隔会議ソリューションの活用による環境負荷低減効果例

http://www.nec.co.jp/products/bizpc/promotion/eco/index.shtml

● パソコン起動時に、前日のPCの利用状況をグラフで見える化し、ムダな部分を示すことで、PC利用者の省エネ行動を促進します。● 過去の利用状況から将来予測を行い、自律的に省エネ制御を行います。● さらに管理者が、オフィス内全てのPCの消費電力量やCO2排出量を一元管理することができ、ピーク時の消費電力をコントロールできます。

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72 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

これからの環境への取り組み グローバルでは、製品に含有する有害化学物質の

規制やリサイクルに関する規制が急速に強化され、

国内でも例えば東京都の環境確保条例では大規模事

業者に対してCO2排出量の制限を求め、その動きは

他の自治体にも広がりつつあります。このように企

業における環境活動の範囲も、以前と比べると大幅

に増え、責任も増しています。しかし、一方で環境

に積極的に取り組むことが、コスト削減はもちろん

企業イメージ・ブランドを向上させ、企業競争力に

つながっています。

 また、サプライチェーン全体での環境対応も求め

られています。これは、例えば企業が生産を海外へ

移すと、その企業のCO2排出量が削減できたように

見えますが、実は世界的にCO2排出は減らず、逆に

効率の悪い海外の設備で生産することでCO2排出が

増えてしまうという問題があります。サプライチェ

ーンで取り組まないとCO2排出が減らせないという

ことで、ヨーロッパを中心に始まった活動が世界的

な標準になりつつあります。

 CO2だけでなく、化学物質や廃棄物の問題も、実

はサプライチェーンが連携して取り組まなければ解

決できない問題です。これからは、ますます企業が

お互いに連携して取り組むことが重要になります。

我々NECグループもサプライヤー様や販売店様の協

力があって初めて環境経営を実現できると考えてお

り、NECの環境経営度の高い評価は、NECのお取引

先様全てを含めたサプライチェーン全体での活動の

成果だと考えています。NECグループは、これから

もお取引先様との連携を強化・充実し、サプライチ

ェーンが一体となった環境負荷低減を通じて、人と

地球にやさしい情報社会を目指していきたいと考え

ております。

環境に取り組む企業の皆様へ 企業が自社の環境負荷を削減していくことは当然

ですが、事業競争力を高める環境経営の要件は2つ

あると考えています。その一つは、環境性能の高い

製品やサービスを開発し、提供していくことです。

昨今の省エネ・節電意識の高まりのように、これか

らますます環境に対する消費者の環境意識が高まる

と思われます。つまり、市場で競争力を決める要素に、

価格や性能、デザインに加え、環境が重要な要素に

なってくると思います。製品・サービスの環境性能

を高める取り組みを行った企業が、競争力を持つこ

とになるでしょう。

 そしてもう一つが、サプライチェーンの連携です。

これからの環境経営は、個々の企業が活動を充実させ

ることはもちろん、サプライチェーン全体で活動を強

化し、上流・下流の企業としっかり環境面で連携でき

ることが、ビジネスの条件になる可能性もあります。

 環境経営は「コスト削減」になり、「製品の競争力

を向上」し、今後の「企業取引の基本要件」になっ

てきます。つまり「企業価値」を向上させる活動だ

と考えて、我々は環境経営に取り組んでいます。こ

のようなNECグループの環境経営の考えや視点が、

少しでも皆さまの活動にお役に立てれば幸いです。

■NEC玉川ソリューションセンター

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特集 日本電気株式会社・第2章 経営改善支援事例/栃木県と日産自動車株式会社 ◆ 73

栃木県と日産自動車株式会社栃木県と日産自動車の連携による県内中小企業への現場改善支援

 栃木県と日産自動車株式会社(以下、敬称略)の連携による現場改善講師派遣事業が大きな成果を生み

出しています。日本企業は規模、業種を問わず、グローバル競争により収益力と競争力の向上を実現する

ための絶え間ない活動を求められています。その中で本事業は、行政と大手企業が連携して地場企業の収

益力、競争力向上を支援する先駆的な取り組みです。そして、現場の改善が、結果的には環境の改善へと

直結していることがわかる事例でもあります。

事業の概要 現場改善講師派遣事業は、栃木県と日産自動車

NPW推進部のつながりから実現した中小企業への

支援活動です。日産自動車の改善の専門部隊である

NPW改善コンサルティング室の現役社員が、県内

中小企業の生産現場に入り、「品質(Q)」「コスト(C)」

「納期(D)」の改善について指導します。事業運営

にあたっての日産自動車や中小企業との各種調整な

どは(公財)栃木県産業振興センターが担当し、講

師の派遣は、概ね月1回のペースで2年間、最大24

回としています。

 この事業は平成21年から実施され、これまで13

社が派遣を受けています。栃木県では、収益力、競

争力の高い中小企業の育成を目指していくことを当

事業の目標に掲げています。

取り組みのきっかけ 中小企業の生産性向上、品質改善等の課題は、以

前から取り組まれている大きなテーマです。全国有

数の「ものづくり県」である栃木県は、「県内企業の

現場改善を支援するため、県内に工場があり、優れ

た改善ノウハウを有する日産自動車に是非協力をお

願いしたい」との思いから、この事業の協力を要請

したとのことです。

 日産自動車は、行政から地場企業を何とかしたい

という熱意ある要請を受け、地域貢献も企業の使命

として感じたことから、要請を受け入れることとし

ました。この事業は行政の事業なので、他の自動車

メーカーに部品を納入している企業や普段は取引の

ない小規模な企業も支援しています。支援先から

「NPWにより大きな成果が出ました」と聞いたり

すると、「現場改善支援の効果が実感できて嬉しい」

(NPW改善コンサルティング室 尾崎課長)そんな

効果も感じていると言います。

行政と大手企業の連携による中小企業の支援事例

第2章 経営改善支援事例

栃木県庁と日産リーフ

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74 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

現場改善までの流れ 在庫が多い、活動の成果が出ない、対策の繰り返

しが続く、ノウハウは個人にしかない、計画通り進

まない、人財が不足している等、こんな悩みを抱え

る中小企業を改善する本事業のベースとなるのは、

日産生産方式「NPW(Nissan Production Way)」

です。日産生産方式は、日産自動車のクルマづくり

のノウハウを凝縮したもので、「限りないお客さまへ

の同期」、つまり、お客さまの要望に最大限に応える

努力をすることから始まります。

 お客さまに限りなく同期をしていくと、作業効率

の低さや品質の不安定さなどの課題に直面します。

それらの課題を改善の好機ととらえ、絶え間なく改

善し続けることで「限りない課題の顕在化と改革」

を実現し、このことが収益力、競争力の向上へとつ

ながっていくのです。

 「企業によって改善テーマは異なりますが、まずは

工程の流れと工程毎の作業の実力値を把握するとこ

ろから始めます。データで証明することでムダが見

えてくるのです」(NPW改善コンサルティング室

尾崎課長)5S、稼働率向上、在庫削減、生産シス

テム構築といったモノづくりの革新へとつながるア

プローチは、現状把握の基礎から始まります。(図1)

現場改善指導会風景

■図1 主な活動テーマと革新への道筋

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第2章 経営改善支援事例/栃木県と日産自動車株式会社 ◆ 75

活動の成果 本事業により平成21年から計13社が指導を受け、

高い成果を上げています。

● 主な成果

● 企業の変革

成功の秘訣~経営者の意識・推進体制・人財育成~

 企業が変革し成長するには、「まずは、社長が本気

で変わる気持ちがあること。次に、改善していくた

めの社長直轄の推進体制を作ること。そして、我々

の手を離れても自力でPDCAサイクルを回し、改

善を推進できるリーダーが育つこと」(NPW改善コ

ンサルティング室 尾崎課長)と、3つのポイントを

あげています。

 トップが変わる意識があるからこそ従業員も変わ

り、目指す姿に向けて全員一丸となって取り組んで

いける。そして、常にお客様に同期して、「限りない

課題の顕在化と改革」を続けられるリーダー的な人

財が育つことで、絶えず進化するモノづくりが実現

できるのだそうです。

● 企業が変革し成長するポイント

環境改善~経営改善が環境改善へとつながる~

 「普段のコンサルティング業務の中では、大手企業

からは省エネをテーマとした支援要請もあります。

一方、中小企業からは、最初から省エネをして欲し

いという要請はありません。経営改善や現場改善と

いった要請で支援に入りますが、生産性の向上、品

質の改善、稼働率の向上などの改善を行っていく上

で、結果的に省エネ・省資源といった環境の改善へ

とつながっていきます。省エネや省資源は、中小企

業においては経営という大きな括りの中の一つの要

素ですので、環境改善は経営改善と一緒に図ってい

けるものです」(NPW改善コンサルティング室 尾

崎課長)といった認識を語ってくれました。

生産性 20~50%向上

段取時間 50~70%低減

在庫日数 50%低減

工程不良率 50%低減

損益分岐点売上高 30%低減

現場の変革よどみなくモノが流れ、正常・異常が見えるようになった。

意識の変革めざす姿を明確にしてチャレンジし、問題意識をもって行動するようになった。

人財の育成改善の考え方、手法を習得して自ら改善できるようになった。組織の推進リーダーが育成できた。

社長が本気で変わる気持ちがあること

改善していくための社長直轄の推進体制を作ること

自力でPDCAサイクルを回し、改善を推進できるリーダーが育つこと

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76 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

今後の展開~現場改善研修の実施/栃木モデルの普及~

 前述のとおり、講師派遣事業は大きな成果を上げ

ていますが、年間3~4社の支援が限度とのことで

した。そこで栃木県では、より多くの企業が成果を

上げられるようにするため、座学、現場演習などを

含む現場改善研修「モノづくり改善道場」に平成24

年度から新たに取り組んでいます。(図2)

この事業には、自動車業界に限らず、農業、医療業

界等から12社が参加をしています。

 栃木県では、「現場改善の取り組みは、中小企業に

とって収益力の向上等の成果につながるという思い

があります。これまでの高い成果を他の企業にも知

っていただき、より多くの企業がこの事業に参加す

ることにより、現場改善活動の裾野を広げ、ひいては、

県内中小企業の収益力や競争力の向上につながるよ

うこの取り組みを推進していきます。今後、栃木県

としても、他の自治体にこの取り組みが普及し、『モ

ノづくり産業』全体が発展していくことを期待して

います」と語っています。

モノづくり改善道場風景

■図2 平成24年度 モノづくり改善道場

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第2章 経営改善支援事例/栃木県と日産自動車株式会社・板橋区 ◆ 77

板橋区板橋区独自の省エネ診断による環境改善と経営改善の両立

 板橋区は、平成5年に全国に先駆けて「『エコポリス板橋』環境都市宣言」を行いました。これは、環境

にやさしい暮らし方や事業活動を進めながら、かけがえのない地球環境を子孫に引き継いでいくために、

人と環境が共生する都市「エコポリス板橋」の実現を目指して宣言したものです。その後、平成10年10月

に「板橋区環境マネジメントシステム」を構築し、平成11年2月に東京都内の自治体ではじめて

ISO14001の認証を取得しました。また、平成23年6月から、中小規模事業所へ省エネコンサルタントを

派遣し、省エネ診断と改善提案、その実施までを総合的にサポートすることで、提案に対する高い実施率

を達成するなど、中小企業への環境経営支援を積極的に行っています。

板橋区の環境経営支援

1)板橋区の  環境マネジメントシステムの取組 地球環境問題を解決するため、これまでの大量生

産・大量消費型の社会システム自体を環境負荷の少

ない社会経済システムに転換する必要があります。

そのためには、あらゆる組織が環境への影響を自覚

し、絶えず自身の行動を管理していくことが不可欠

です。

 そこで板橋区では、コンサルタントに頼らずに、

職員自らがISO14001の規格を用いて、「板橋区境マ

ネジメントシステム」を構築しました。「板橋区環境

マネジメントシステム」は、板橋区独自のものです

ので、環境施策の変化に応じて適宜、柔軟に必要事

項を組み込んで対応しています。

 平成15年には区内の全施設を適用範囲にしたこと

で、全施設で使用されるエネルギーを把握しており、

平成22年から改正された省エネ法、都環境確保条例

の適用にも、無理なく順応できています。

ISO14001取得の意義 これまでは、主に民間企業で取り組まれてきた

ISO14001を自治体が自ら取得することで、環境保

全、環境負荷低減といった効果のほか、自治体組織

や区民等にも良い影響を与えています。

 自治体組織においては、コンサルタントの力を借

りずに、職員自らが国際規格の環境マネジメントシ

ステムを確立してきたことで、職員の運営管理ノウ

ハウ継承、意識の向上と醸成に大きく寄与しました。

意識の向上は、環境保全の取り組みや資源・エネル

ギーの削減において実効性があがります。また、定

期的に外部審査を受けることで、取り組みや改善検

討事項については、客観的な確認がなされ、継続的

に進化させることができます。良い取り組みは、全

庁的に水平展開し、大きな改善へ発展させられます。

 区民等に対しても、行政の率先した取り組みがア

ピールとなり、環境保全対策への協力が得やすくな

ります(例:緑のカーテン、節電意識の向上、ごみ

支援機関による中小企業の省エネ支援事例

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78 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

の分別収集等)。さらに、区が自ら認証取得を得てい

るので、区内の事業者等に環境マネジメントシステ

ムに関する具体的なアドバイスが行えるようになる

ほか、そのノウハウを活かした区独自の板橋版環境

マネジメントシステム「板橋エコアクション」を構

築できたことにも価値があります。

板橋エコアクション 「板橋エコアクション」構築の目的は、区民(事業

者)一人ひとりの環境負荷低減活動から区内事業者

等を含めた区内全域の面の活動につなげて、温室効

果ガスの削減を図り「環境と共生する都市『エコポ

リス板橋』」を実現しようとするものです。「板橋エ

コアクション」は、環境マネジメントシステムの手

法を取り入れたPDCAサイクルを構築し、継続的

に環境改善を目指すシステムです。

 今後、企業も環境経営に重点を移した事業運営に

移行していくことが求められていますが、環境経営

の取り組みが信頼を得るには、第三者機関からの評

価を受けることが重要となります。一般的に

ISO14001などの評価を受けるには、経済的・人的

負担が大きく、対応が困難な中小事業所もあります。

そこで、「板橋エコアクション」の導入は、積極的に

環境経営に取り組む中小事業所を支援する認証制度

として有効なシステムとなります。

 また、「板橋エコアクション」に取り組むことで、

①経済的メリット:エネルギー使用量等の把握によ

り、実態にあった省エネルギー化、及び経営の効率

化が図れる ②社内意識の向上:「板橋エコアクショ

ン」の活動項目を目的に応じて組み合わせ、社内が

一体となって実施できる、という効果も得られます。

2)区オリジナルの省エネ診断 板橋区が提供する事業者向け環境施策には、経営

に環境の視点を取り入れることにより、①環境を優

しく、安心・安全で品質の良いサービスや製品を提

供する ②節電・省エネ化により削減された経費を

自社の技術やノウハウの研鑽、お客様の求めるサー

ビスや製品へ反映など、区内の事業者が環境価値を

付加することで他の事業者との差別化を図り、地球

環境の保全のみならず、経営力の向上も実現しても

らいたい、という熱い思いが込められています。

 先に紹介した「板橋エコアクション」に加え、こ

れから紹介する「省エネ診断」からもその熱意がう

かがえます。

省エネ診断の特徴 板橋区の省エネ診断は、省エネだけではなく、あ

らゆる環境の側面から、いろいろな相談(工程・品質・

経営等)に可能な限り対応する、総合的な省エネル

ギーコンサルティングとなっています。主な特徴と

しては、以下の3つがあげられます。

区の鳥ハクセキレイの「ハクちゃん」

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第2章 経営改善支援事例/板橋区 ◆ 79

①プロセスの改善

 特徴の1つ目として、省エネ診断の内容に、通常

は経営改善として取り上げられるプロセス改善を取

り入れていることがあげられます。一般的な運用改

善や設備投資の省エネのほかに、工程の短縮・連続

化などプロセス本体の大幅変更、新技術の導入によ

る生産性向上などは、経営改善が図られますが、そ

れに付随して、エネルギー消費量を低減させ、固定

費の大幅な圧縮といった改善が期待できます。

②優先順位の提示

 板橋区内の中小規模事業者は、9人以下の事業所

が80%を占め、そのうち4人以下の事業所は62%

を占めるなど、対応できる人員が少なく、資金量も

決して潤沢な事業者ばかりではありません。

 そのため、提示する改善提案には実施に向けた優

先順位をつけることとしています。事業者が運用改

善や設備投資を検討する際には、事業所の人員や財

務状況に応じ、各事業者のペースで順を追って対応

できるような工夫がなされています。

③毎月のフォローアップ

 改善提案の実効性を高めるために、必要に応じて

訪問等による運用改善や設備投資の助言等の支援を

毎月行っています。事業所によっては、8回のフォ

ローアップを行った先もあります。31件の省エネ診

断の実施先に対し、20件が何らかの改善提案を実施

するなど、具体的な成果が如実に数値として表れて

います。

支援機関(板橋区)の役割 本事業は、板橋区が日本技術士会とタイアップし

て行っています。板橋区では、事業者の現場の実情

に応じた改善提案を目指しました。そのため、専門

家に完全に任せるのではなく、改善の提案に関して、

事業者にとって本当に必要な採算性の取れた省エネ

の改善提案となっているか、省エネの本質に迫った

踏み込んだ提案となっているか、事業者の求めに応

じて経営の相談などにものっているか、といった本

事業の重要なポイントについてのマネジメントを随

時行っています。

 受診した事業者から「導入推奨機器に関する情報

提供量も豊富で、情報の内容も的確なため、省エネ

に関するワンストップサービスと言っても過言では

ない位でした」といった感謝の声が出るのも、板橋

区が支援機関としてトータルプロデュースの役割を

果たしたからだと考えられます。

診断風景

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80 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

省エネ診断の結果 対象業種別の省エネ診断は、製造業(金属・機械・

設備)11件、製造業(食料品・石油製品)3件、製

造業(紙・印刷関連)4件、建設業(設備)2件、

医療3件、教育・福祉2件、サービス・その他6件の

合計31件で、そのうち15件は設備投資による改善

にまでつながりました。

 改善提案件数は、照明機器46件、空調機器23件

をはじめ、129件におよびました。提案を実施した

29件の合計で、CO2削減量は88.3t/年、電気料等

の光熱水費削減額は4,743千円/年強でした。投資資

金の回収年数は、平均で5.2年です。

省エネの具体的な実施例①太陽光発電 

●約5kW の太陽光発電システムを設置しました。

  太陽光パネルの設置角度は、東京地区では30度が

推奨されています。しかし、風圧によって太陽光

パネルやその基礎が破損しないよう事業所側の判

断で約11度としたため、発電効率と風圧による影

響の比較を行いました。その結果、発電効率は5

%減でしたが風圧は40%減となり、かなりの補強

と同じ効果があがりました。

項   目 提案 実施

太陽光発電システム 5件 1件

空調機器 23件 8件

照明機器 46件 10件

プロセス改善 12件 2件

その他 43件 8件

合   計 129 29

平成24年3月末時点

省エネ診断を実施した事業所数 31件

提案(29件)を実施した事業所数 20件

設備投資(工事含む)した事業所数 15件

■改善提案内容と実施の内訳

太陽光パネル

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第2章 経営改善支援事例/板橋区 ◆ 81

②空調機器

● 店舗型事業所の室外機1台と室内機5台(2フロア)

を高効率機器に更新しました。従前の機器は約20

年前に設置されており、更新によって電力削減量

が約24%、年間消費電力は約3,600(kWh/ 年)

減が見込まれます。

● 空調機器の待機電力を遮断するため、室内機のコ

ンセントを抜くだけでなく、特に長期間使用しな

い場合はブレーカを切る等の対策を行いました。

● 温度設定は、温湿度分布の調査を行い、扇風機や

サーキュレータの併用や空気の流れを改善するこ

とも実施しました。

● 温湿度分布の調査結果に基づいて、機器や保管棚

等のレイアウト変更を行いました。

③照明機器

● 蛍光灯のLED化をはじめ、Hfインバータ安定器化

(銅鉄型安定器を電子安定器に更新)なども行われ、

効果的に消費電力を概ね半減させることができま

した。

● 運用面・経済面などの問題から、規模が大きい事

業所は工場や事務所の一部のみを施工(主にフロ

ア毎など)し、年次計画を立て順次更新していく

事業所が多くありました。

● 既存の照明機器の配置と、フロアの機器配置に不

整合が生じていたものを、実情に応じたレイアウ

トに変更しました。

④プロセスの改善

● 3.7kWの冷却用水の循環ポンプが、周波数固定で

運用されていたため、インバータ制御方式とする

ことにより実情に応じた回転数の調節が可能とな

り、年間消費電力の70%を削減することができま

した。

● 洗浄機とその他の油圧機器に冷却チラーを使用し

ていた事業所の必要温度等を精査したところ、洗

浄機以外の機器は既設クーリングタワーの活用が

可能でした。そこで、洗浄機には専用のチラーユ

ニットを設け、洗浄機以外の機器は冷却チラーを

停止して既設クーリングタワーを活用することに

より、冷却チラーとポンプ停止に伴う電力を削減

することができました。

⑤その他の改善

● 従前の使用者の電力契約の低圧電力(17kW)と

2つの従量電灯の契約(50Aと8kVA)計3系統

分を、現在の実情に応じて見直し、低圧電力を

10kWに変更し、従量電灯は60Aに一本化するこ

とで、基本料金を削減しました。

室外機

室内機

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82 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

⑥資金面での支援

 事業者の設備投資への意欲を高めるため、平成23

年度から中小事業所向けに、省エネ診断で提案の設

備機器を更新するための助成制度を創設しました。

また、区産業振興部署の協力を得て、同補助金を利

用した事業所には、優遇金利を3割増しで対応し、

資金面での支援を強化しています。

事業者からの声 エネルギー種別によっては前年度より2~3割使

用量が削減できた例もあり、省エネ診断を受けた事

業者からは、感謝の声が寄せられています。

3)今後の展開

省エネ・節電の継続的支援 環境経営の必要性や取り組みを広げるために、経

済産業省関東経済産業局、クール・ネット東京や区

内の板橋産業連合会(板橋環境管理研究会)、板橋法

人会などの産業関連団体と協力して、節電や省エネ

ルギー技術セミナー、いたばし産業見本市では個別

相談会などを開催し、節電・省エネの知識や具体的

な対応策について広く提供しています。また、「板橋

エコアクション」に取り組むことで、経営コストの

削減や社内意識の向上につながることも合わせて伝

えていきます。

環境視点による経営改善の導入 今回、環境視点による経営改善支援に触れ、環境

対策を講じることが、経営面においても有効である

ことの認識を深めました。今後は、セミナー開催や

実務レベルでの展開を図っていきます。その一例と

して、板橋区内の産業活性化を目的に設立した板橋

区立企業活性化センターが、同支援を導入する方針

です。

 同センター(センター長中嶋修)では、これまで

区内150社の経営改善支援の実績(24年11月時点)

がありますが、相談企業の財務調査で製造原価への

踏み込みが十分とは言えませんでした。

 環境経営には、コストダウン、生産性の向上はも

とより、組織としての力強さの復活、環境視点によ

る新事業展開など、新たな可能性を感じています。

この支援方策を活かして、区内事業者の経営の質の

改善へつなげたいと考えています。

● 取引先へのアピールができた。今まで業者まかせだった社内の設備管理に関与できるようになった。

● 疑問に懇切丁寧に対応していただいた。来社中だけでなく、前後のメールや電話できめ細かいフォローをしてくださいました。

● 自分たちが気が付かないことを指摘してくださったのと、現状打破を可能にしていただけるアドバイスをたくさんくださったこと。そして何より親身になって考えてくださったことです。

● 画一的ではなく、当方の実情に見合うコメントを通年でいただけたこと。

● 導入推奨機器に関する情報提供量も豊富、情報の内容も的確で、省エネに関するワンストップサービスと言っても過言ではないくらいでした。

● 意識改革ができ、個人経営が会社らしくなった。  LED照明の単価相場を教えてもらい、工事価格が適正であることを確認できた。エアコンなど、助成対象以外の機器でも効果のあるものを教えてもらった。次年度以降でも着手していく優先順位がつけられ、楽に計画をまとめられた。

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第2章 経営改善支援事例/板橋区・株式会社シルベニア ◆ 83

株式会社シルベニア省エネ偏重ではなく経営視点での改善

 企業は、省エネの専門家がいろいろな提案をしたくなる工程や工場設備を持っています。しかし、そう

した一般的な省エネ対策は、取捨選択をしないと経営(企業利益)視点から見て必ずしもプラスになると

は限らない場合が多々あります。株式会社シルベニアの場合、板橋区がコーディネイト役として入り、省

エネ専門家に対して、省エネ偏重ではなく経営視点で支援するよう適切なサポートを行っています。その

結果、経営視点から見て十分効果が期待できない対策の実施は少なくなっています。こうしたサポートは、

板橋区の中小企業省エネ支援事業に共通して言えることです。また、専門家による中小企業支援という取

り組みの特徴から、企業側も省エネに関して自ら考え調べる時間があるため、専門家に対して逆提案も行

いながら、経営面でも効果が期待できる省エネ対策を優先的に実施しています。

板橋区の環境経営支援事例

支援機関による中小企業の省エネ支援事例

❶ 企業プロフィール ● 環境関連の取組概要1)照明のLED化(第三工場・工作室)

 板橋区の省エネ診断を受けて上記の実施改善を行

い、改善前に比べて消費電力の削減量は7,224Wと

なりました。工場稼働を1 日8 時間、年間250日、

平均電力単価を18 円とすると、年間260,064円の

削減金額となります。投資回収は、約6年です。

  器具照明代:1,904,700円

  板橋区補助金:380,000円

改善前

照明 消費電力 数量 小計

蛍光灯 100W 38 3,800W

蛍光灯 40W 34 1,360W

水銀灯 500W 12 6,000W

改善後

照明 消費電力 数量 小計

LED 61W 48 2,928W

LED 29W 28 812W

LED 98W 2 196W

代表取締役 永安 裕之 

創 業 昭和21年2月  

住 所 東京都板橋区成増2-31-5

電 話 番 号 03-3939-1261

事 業 概 要

表面処理業 独自の圧延技術、高度な金・銀・ニッケルめっき技術により、各種スイッチ、コネクター等、電子部品の電機接触部品の表面処理を行っています。製品としては、車、移動体、AV、パソコンなど、さまざまな分野の電気製品に使用されています。

強 み 圧延業とめっき業の両方の設備を保有

資 本 金 2,400万円

売 上 高 約20億円

従 業 員 数 37名

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84 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

2)コンプレッサー吐出圧低減による省エネ

 工場では、乾燥工程及びめっきライン駆動用ロー

ラー制御のため、コンプレッサーを2台活用してい

ます。これらコンプレッサーの吐出圧設定が過剰で

あったため、圧力を0.75MPaから0.5MPaに低減し

ました。動力比―吐出圧曲線により、動力削減率は

およそ20%と想定されます。コンプレッサーの年間

消費電力は75MWhと推定されるため、年間電力削

減量は15MWh、平均電力単価を18円とすると

15MWh×18=270,000円/年の削減額となります。

3)金属端材の分別回収・有価物として処分

 面取り改善などによる処理回数の削減、端材の削

減・減量化を行うとともに、端材を分別収集し有価

物として処分し、コストダウンを実現しています。

リサイクルと経済効果の両立を実現した取り組みと

なっています。

4)めっき液、薬剤などの汲み出し削減

 めっき層など各処理層から次の工程に移る際に水

切りを行い、めっき液や各種副資材の余分な汲み出

しを防止しています。その結果、省資源、材料コス

トの削減、環境負荷低減に役立っています。

5)リサイクルPPテープの採用

 従来使用していた「鉄製バンド」をリサイクルPP

テープに変更しました。

リサイクルPP テープ

■リサイクルPP テープのメリット●購入費用が安い

●軽量で作業しやすい

●荷崩れしにくい

●分別により リサイクルが可能

LED 照明機器の導入

リサイクルPP テープの使用例

貴金属回収装置

22kW コンプレッサー

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第2章 経営改善支援事例/株式会社シルベニア・株式会社シントク ◆ 85

株式会社シントク経営面での効果を伴った省エネ対策

 株式会社シントクの特徴は、一般的な照明等における省エネの取り組みに加え、製造過程を見直し、省

資源、経営力向上と合わせた総合的な経営改善につながる省エネ対策を行っていることです。通常の製造

業における省エネ対策は、専門家に指摘されたことだけを実施することで終わるケースが多いところ、自

社の工程をよく研究し、経営面と省エネが両立できる方法を模索しながら対応を進めています。「熱処理業

は、照明や空調の省エネよりも熱(炉)にかかる電力使用が突出する」という特徴をよく捉え、熱処理工

程と省エネの関連性をよく研究・実験しつつ、省エネを進めているところが優れています。現状の結果に

もその努力が良く表れていますが、それ以上に、今後、中長期的な省エネ対策のブラッシュアップと成果

に大いに期待が持てる企業です。

板橋区の環境経営支援事例

支援機関による中小企業の省エネ支援事例

❶ 企業プロフィール ● 環境関連の取組概要1)事務所照明をLEDタイプに転換

 事務所稼働時間を1日8.5時間、年間260日、照明

点灯率0.7として計算すると、消費電力削減量は年間

で1,211kWhとなります。

2)工場水銀灯をエコタイプに転換

 工場を24時間、年300日稼働として計算すると、

消費電力削減量は年間で36.36MWhの削減、約67

%の省エネとなります。

 改善前  7.5kW×300×24=54MWh

 改善後 2.45kW×300×24=17.64MWh

代表取締役 田中 晃三

創 業 昭和39年4月

住 所 東京都板橋区成増3-49-5

電 話 番 号 03-3930-4160

事 業 概 要冷間圧延用ロール/成型部品/熱処理委託加工 製造・販売

輸 出 先インド、韓国、ヨーロッパ、アメリカ、メキシコ、台湾、中国

資 本 金 1,500万円

売 上 高 約9億円

従 業 員 数 25名

強み 多段式圧延ロール専業メーカーとして、世界で最も安く最も高品質なロールをユーザーに提供してきました。現在は高級工具鋼を用い、日本国内及び海外を含め10万本以上の実績を有しています。さらにお客様のご要望にお答えすべく、日々技術力の向上、高い信頼性を維持するための研究を重ねています。 田中社長

改善前

照明 消費電力 数量 小計

事務棟 蛍光灯 45W 24 1,080W

休憩室 蛍光灯 45W 5 225W

改善後

照明 消費電力 数量 小計

事務棟 LED 18W 24 432W

休憩室 LED 18W 5 90W

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86 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

3)熱処理における省資源化

 熱処理に、窒素ガスの導入工程があります。当社

製品の特徴である硬度を高めるためには、窒素の活

用が必要です。それまでは、液体窒素を購入し利用

していましたが、大気を取り込み大気中の窒素を抽

出する手法(窒素ガス発生装置)に転換しました。

以前は、液体窒素購入費が負担になっていましたが、

材料費のコストダウンと省資源が両立できました。

4)断熱塗料による省エネ

 炉からの放熱は、省エネの重要な課題です。現在、

サーモグラフィーなどを用いて現状の調査と分析を

行い、炉蓋内部の断熱構造改善をはじめとした放熱

対策を検討しています。改善前の5月の測定では70

℃前後であった扉上面の表面温度が、改善後の8月

の測定では50℃台まで低下しており、断熱効果が向

上しています。

5)金属炉の新設による省エネ

 前掲の窒素ガス活用方法について、改善を行いま

した。現在のセラミックヒーター炉は、週末の非稼

働時にPSA、コンプレッサー、クーリングタワーの

電源を切ることが諸条件により不可能です。そこで、

老朽化した金属ヒーター炉を新しくすることによっ

て、セラミックヒーター炉の稼働率を下げ、PSA、

コンプレッサー、クーリングタワー等周辺設備の電

源オフを可能にしました。

6)その他の省エネ対策

 外部環境変化にリアルタイムに対応し、時期に応

じて勤務体制の変更(部署ごとに勤務時間をずらし

てピークをカット)や工場・事務所の休日をずらす

ことによる節電を行っています。さらに、老朽化し

た変圧器の更新、配線設計改善など、コストパフォ

ーマンスを考慮しながら、順次対策を検討中。これ

ら老朽化設備の改修は、平成24年度、25年度の2カ

年計画で完了の予定です。

区の補助金を活用して更新した新たな変圧器

改善対象となった炉

断熱塗料塗布前

断熱塗料塗布後

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第2章 経営改善支援事例/株式会社シントク・愛和保育園 ◆ 87

愛和保育園教育効果を意識して地域の省エネに貢献

 愛和保育園の省エネ活動には、省エネ対策を自園だけで展開するのではなく、教育効果を考慮して地域

の省エネ・節電に貢献するという意識があります。東日本大震災の現場を見て、省エネの取り組みの必要

性を実感し、園での省エネを開始。省エネ・節電の取り組みについて、保護者に公開し呼びかけるなど、

関係者を巻き込んで、その影響を園内から園外にまで広げています。保育園によるこうした取り組みは、

特に社会的影響が大きいといえます。園長は、「私たちは200の家庭の子供たちを預かっている。1つの家

庭で1Wの省エネ・節電を行えば、全家庭で200Wの省エネになる」と述べています。企業でこのような

取り組みを行うところはありますが、その効果は企業以上ともいえる保育園の取り組みはユニークであり、

今後の全国的な省エネ時代に先駆けたモデルといえます。

板橋区の環境経営支援事例

支援機関による中小企業の省エネ支援事例

❶ 企業プロフィール 経営者の想い

 経営者でもある園長は、人を大切にする視点と優

れた現場感覚、そして「これが必要だ」と感じたら

一気に行動する判断力・決断力・行動力を持ったリ

ーダーです。2011 年の東日本大震災発生時には、

すぐに「何かしたい」「何ができるか」と感じ、保育

園の主要スタッフを連れて現場に入り、視察・支援

活動を行いました。省エネ・節電も、現場で感じた

ことや経験からその必要性を強く感じ、一気に対策

を行いました。

 リーダーとスタッフの関係がとても良いのが、こ

の保育園の特徴でもあります。リーダーは、新しい

ことを行う時には、自分の考えは持ちつつも必ず周

囲の意見・要望を聞き、企画をブラッシュアップし

ていく暗黙の仕組みを持っています。これは、環境

マネジメントシステムの視点でも評価できます。関

連施設の園長や同園のスタッフが当園長の足りない

ところを補完し、全体として行動力・バランスのと

れた活動を展開する組織力を持っています。

代 表 者 本橋 和男 

創 業 昭和37年

住 所 東京都板橋区赤塚2-14-10

電 話 番 号 03-3977-1148

事 業 概 要 保育事業及び、学童保育所運営

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88 ◆ 中小企業向け経営改善事例集

● 環境関連の取組概要 保育園としては珍しく、環境・経営視点による改

善を積極的に行っています。特徴は、経営者の改善

にかかるスピードが極めて速いことです。省エネに

関しても、経営者として「良い」と思われる対策に

ついては即実行しています。環境対応力が極めて高

く、その源泉は経営者のマインドにあります。

1)照明による省エネ

 事務所稼働時間を1日10.5時間、年間260日、照

明点灯率0.7として計算すると、消費電力削減量は年

間で3,690kWhとなります。

2)空調の省エネ

 定格電力3kW、COP2.9の業務用空調機器4台を

COP4の高効率空調に転換しました。空調機器の年

間電力消費量を電力記録と校正設備から算出し、転

換した空調機器の年間消費電力量から、年間消費電

力削減量は2.83MWhとなりました。

3)ガーデンシャワー

 夏季は、ガーデンシャワーで園庭に涼しさを演出

しています。ミスト状になったシャワーが園庭全体

を巻くようにして広がり、炎天下でもシャワーの周

辺は涼しいそうです。また、そのミストの一部が、

風によって園の1階の一部に流れ込みます。当初は

庭の温度を下げるのが目的でしたが、屋内の温度を

大きく下げる効果もありました。実際の効果はもち

ろん、ガーデンシャワーによる冷涼感演出は想像以

上の効果をもたらします。こうした対策が、空調用

電力使用量の削減に役立っています。

4)今後の取り組み

 園外での省エネ・節電を呼びかけ、200近い家庭

での省エネ・節電を意識的に推奨しています。これは、

園として社会に意識を向けた省エネ戦術といえます。

現在は、保育園入口に3つの照明(LED電球、ホワ

イトボ-ル、白熱球電灯)を設置し、各電球の電気

使用量と電気料金を保護者に見えるようにする計画

を立てています。

 また、数年後に園の拡大を行う予定ですが、新施

設は、全館LED、高効率空調はもちろん、太陽光パ

ネルの設置など、先進的なエコ建築・施工ノウハウ

を導入して設計することも決定しています。卓越し

た行動力、決断力を持って、新たなエコ事業展開を

予定しています。

改善前

照明 消費電力 数量 小計

蛍光灯 44W 55 2,420W

蛍光灯 22W 3 66W

スポットライト 60W 3 180W

スポットライト 40W 23 920W

改善後

照明 消費電力 数量 小計

蛍光灯 27W 55 1,485W

蛍光灯 10W 3 30W

スポットライト 7.7W 3 23W

スポットライト 5.1W 23 117W ガーデンシャワー

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