平成21年度...

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平成21年度 特許出願技術動向調査報告書 リチウムイオン電池 (要約版) <目次> 第1章 リチウムイオン電池の技術の俯瞰...................... 1 第2章 リチウムイオン電池に関する特許出願動向調査.......... 4 第3章 リチウムイオン電池に関する研究開発動向調査..........31 第4章 リチウムイオン電池に関する産業政策動向調査..........36 第5章 リチウムイオン電池の市場動向........................40 第6章 総合分析............................................45 平成22年4月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

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Page 1: 平成21年度 特許出願技術動向調査報告書液を非流動化したリチウムゲルポリマー電解質二次電池が開発されている。ポリエチレンオ キサイド(PEO)やポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物に有機溶媒を加えてゲル化し

平成21年度

特許出願技術動向調査報告書

リチウムイオン電池

(要約版)

<目次>

第1章 リチウムイオン電池の技術の俯瞰...................... 1 第2章 リチウムイオン電池に関する特許出願動向調査.......... 4

第3章 リチウムイオン電池に関する研究開発動向調査..........31

第4章 リチウムイオン電池に関する産業政策動向調査..........36

第5章 リチウムイオン電池の市場動向........................40

第6章 総合分析............................................45

平成22年4月

特 許 庁

問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課 技術動向班

電話:03-3581-1101(内線2155)

Page 2: 平成21年度 特許出願技術動向調査報告書液を非流動化したリチウムゲルポリマー電解質二次電池が開発されている。ポリエチレンオ キサイド(PEO)やポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物に有機溶媒を加えてゲル化し

第1章 リチウムイオン電池の技術の俯瞰

リチウムを用いた電池にはリチウム一次電池とリチウム二次電池がある。本調査は、リチ

ウム二次電池のうち、リチウムイオン電池に関する調査である。 リチウムイオン電池は正極、負極、電解質(電解液)、セパレータ等の主要な電池材料から

構成されており、電池の組立、さらに電池システムの組立によってリチウムイオン電池パッ

ケージが作製される。今回の調査対象範囲は、正極、負極、電解質、セパレータ等の主要な

電池材料及びその製造方法などである。 リチウムイオン電池に関する技術俯瞰図を図 1-1 に示す。

図 1-1 リチウムイオン電池の技術俯瞰図 応用産業

(用途)携帯電子機器

(携帯電話、ノートパソコン他)自動車

(電気自動車・ハイブリッド車)電動工具 電力貯蔵用 産業用他

第1節 リチウムイオン電池の技術の概要

リチウムイオン電池は、基本的には正極、セパレータ、負極の三層から構成され、これら

が電解質に覆われた構造をしている。代表的なリチウムイオン電池では、正極の活物質にリ

チウム金属酸化物、正極の集電体にアルミ箔、負極の活物質に炭素材料、負極の集電体に銅

箔、セパレータにポリオレフィンの微多孔膜、電解質としてカーボネート系の有機溶媒にリ

チウム塩を溶解させたものが使用されている。また、活物質のバインダーとしてポリフッ化

ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などが使用され、導電助剤として

活性炭や黒鉛微粉、炭素繊維等が使用されている。 リチウムイオン電池では電解質として可燃性物質である有機溶媒が用いられるため、電解

7.電池システム組立(モジュール組立、パッケージ組立、安全装置(パッケージ))

6.電池の組立(セル加工組立(ジェリーロールの作製、缶加工、封止等)、エージング、検査等)

1.正極

①正極活物質・層状酸化物・スピネル・リン酸塩(オリビン)・遷移金属酸化物・サルファイド・カルコゲナイト

(セレン,テルル) 他

②正極(正極活物質・前駆体)の製造法

・置換・添加・コーティング・溶液法・共沈法・焼成 他

③正極合剤・バインダー・導電助剤・粘度調整剤 他

④正極活物質、正極の特性

2.負極

①負極活物質・黒鉛(グラファイト)・非晶質炭素・特殊炭素・金属・無機材料(Sn、Si、Ti)・導電性高分子 他

②負極(負極活物質・前駆体)の製造法

・添加・置換・表面処置・コーティング・酸化・熱処理・黒鉛化・焼成・加熱 他

③負極合剤・バインダー・導電助剤・粘度調整剤 他

④負極活物質、負極の特性

4.セパレータ

5.バインダーその他

・材質・構造・製造方法・特性

1.電池特性の改善 (高容量化、急速放電、不可逆容量の低減等)

2. 耐久性の向上 3. 安全性の向上 5. その他の課題

リチウムイオン電池

課題

応用産業(用途)

携帯電子機器(携帯電話、ノートパソコン他)

自動車(電気自動車・ハイブリッド車)

電力貯蔵用電動工具 産業用他

今回の調査対象範囲

3.電解質(電解液)

①電解質(電解液)・有機溶媒(エステル他)・イオン液体(常温溶融塩)・リチウム塩溶質・ポリマー電解質(ゲル系電解質を含む)・無機固体電解質 他

②電解質の製造方法・精製方法・溶質・添加剤(難燃化、その他)

③電解質の特性

④他の電極材料との組合わせ

・電極(正極・負極・両極)・集電体 他

4. 製造技術の改善

7.電池システム組立(モジュール組立、パッケージ組立、安全装置(パッケージ))

6.電池の組立(セル加工組立(ジェリーロールの作製、缶加工、封止等)、エージング、検査等)

1.正極

①正極活物質・層状酸化物・スピネル・リン酸塩(オリビン)・遷移金属酸化物・サルファイド・カルコゲナイト

(セレン,テルル) 他

②正極(正極活物質・前駆体)の製造法

・置換・添加・コーティング・溶液法・共沈法・焼成 他

③正極合剤・バインダー・導電助剤・粘度調整剤 他

④正極活物質、正極の特性

2.負極

①負極活物質・黒鉛(グラファイト)・非晶質炭素・特殊炭素・金属・無機材料(Sn、Si、Ti)・導電性高分子 他

②負極(負極活物質・前駆体)の製造法

・添加・置換・表面処置・コーティング・酸化・熱処理・黒鉛化・焼成・加熱 他

③負極合剤・バインダー・導電助剤・粘度調整剤 他

④負極活物質、負極の特性

4.セパレータ

5.バインダーその他

・材質・構造・製造方法・特性

1.電池特性の改善 (高容量化、急速放電、不可逆容量の低減等)

2. 耐久性の向上 3. 安全性の向上 5. その他の課題

リチウムイオン電池

課題

今回の調査対象範囲

3.電解質(電解液)

①電解質(電解液)・有機溶媒(エステル他)・イオン液体(常温溶融塩)・リチウム塩溶質・ポリマー電解質(ゲル系電解質を含む)・無機固体電解質 他

②電解質の製造方法・精製方法・溶質・添加剤(難燃化、その他)

③電解質の特性

④他の電極材料との組合わせ

・電極(正極・負極・両極)・集電体 他

4. 製造技術の改善

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液を非流動化したリチウムゲルポリマー電解質二次電池が開発されている。ポリエチレンオ

キサイド(PEO)やポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物に有機溶媒を加えてゲル化し

たゲルポリマー電解質を用いる電池のほかに、イオン伝導性をもつポリエーテルなどの真性

ポリマー電解質を使用する電池も開発が進められている。 リチウムイオン電池の主な構成材料に関する技術の概要を以下に述べる。 (1)正極 リチウムイオン電池の正極に使用されている正極活物質は主に遷移金属酸化物のリチウム

塩である。その中でも、組立てた電池の性能とその安定性、組立工程の容易性、信頼性など

から、主な正極活物質としてコバルト酸リチウムが使用されている。 しかし、 近のコバルト金属の価格急騰を受けて、高温時の耐久性と容量不足の面に課題

があったスピネル型のマンガン酸リチウム、及び、コバルト酸リチウムを超える性能を持ち

ながら、不安定な性質と電池の安全性の問題が指摘されてきたニッケル酸リチウムが見直さ

れ、それぞれの課題の解決を目指した開発が進められている。さらに、三元系と呼ばれるNCM(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)やオリビン型リン酸鉄リチウムの研究開発が行われている。 なお、これらの正極活物質に PVDF などのバインダーや、カーボンブラック、黒鉛微粉、

炭素繊維などの導電助剤を N-メチルピロリドン(NMP)などの溶媒中で混練してペースト

を作り、アルミ箔製の集電体に塗工して正極が作製される。 (2)負極 リチウムイオン電池の負極に現在使用されている主な負極活物質は炭素材料である。リチ

ウム電池は、当初、負極活物質にリチウム金属を使用していたが、充放電により発生する金

属のデンドライト(樹枝状結晶)析出によって電池性能が不安定となり、急速に性能が劣化

するという現象を解決することができなかった。この問題を解決するために、負極活物質と

して炭素材料を使用することで、安定性が高く、サイクル寿命が長い電池の開発に成功した。

炭素材料は、炭素原子によるグラフェン面が積層した結晶性の高い黒鉛(グラファイト)系

と、結晶の配向がランダムで規則性を持たないハードカーボン系に大別される。多種類の炭

素材料の開発によって、不可逆容量の減少やサイクル特性の向上など、電池性能が大幅に向

上した。 近、カーボンナノチューブやフラーレン等の新しい炭素材料、及び、スズ化合物

やシリコンと炭素の複合体等の炭素材料以外の新しい負極活物質の開発が進められている。 なお、これらの負極活物質に PVDF、SBR などのバインダーを NMP や水などの溶媒中で

混練してペースト(正極と同様に、カーボンブラックなどの導電助剤が添加されることがあ

る)を作り、銅箔製の集電体に塗工して負極が作製される。 (3)電解質(電解液) リチウムイオン電池に使用されている電解液は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレ

ンカーボネート(EC)などの高誘電率で支持塩(電解質)の溶解能力の高い環状カーボネー

ト、及びエチルメチルカーボネート(EMC)、 ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカ

ーボネート(DEC)などの粘性の低い鎖状カーボネートの混合溶媒に、支持塩として六フッ

化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させている。 リチウムポリマー電解質二次電池は開発当初、ポリエチレンオキサイドなどの完全固体型

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高分子を使用した真性ポリマー電解質二次電池が開発されていた。しかしながら、十分な出

力特性を確保するためには電解質の電気伝導度を向上させることが必要である。そのため、

現在、電解液を含有したゲル状ポリマーを使用したゲルポリマー電解質二次電池の開発が進

められている。 (4)セパレータ セパレータは電池の正極と負極に挟まれる形で構成されており、両極の接触に伴う短絡防

止や電解液を保持してイオン導電性を確保する役割を担っている。リチウムイオン電池のセ

パレータにはフィルム状の微多孔膜が用いられている。セパレータの素材として、ポリエチ

レンやポリプロピレンなどのポリオレフィンが使用され、電池内部に充填する電極材料の量

を増大させるために、徹底した薄膜化が追求されている。また、セパレータは電池内部温度

の上昇に伴ってポリオレフィンが溶融して微細孔を塞ぐ、いわゆる「シャットダウン」機能

を有し、リチウムイオン電池の安全装置の役割も担っている。 第2節 リチウムイオン電池の応用産業の概要

各種携帯機器の小型・軽量化のためには電源である電池のエネルギー密度が高いことが不

可欠である。リチウムイオン電池は作動電圧が平均 3.7V と高く、大容量で、軽量な蓄電池

であり、各種携帯機器の小型・軽量化を可能とした。リチウムイオン電池は携帯電話やノート

パソコンを主な用途として他の二次電池に代替して、急速にそのシェアを伸ばし、市場を毎

年 20%程度拡大してきた。 近、ハイブリッド車や電気自動車等の自動車用蓄電池や、太陽

電池・風力発電などの新エネルギーシステムと組み合わせた電力貯蔵用蓄電池としての新市

場が登場し、今後リチウムイオン電池の市場が大幅に拡大すると予想されている。また、他

の蓄電池のように環境の点で問題のある重金属を使用しておらず、環境に も優しい蓄電池

として市場に受け入れられている。 (1)小型電池(パソコンや携帯電話などの携帯機器用の電池) 1997 年に約 5,000 億円であった二次電池市場は、一時減少したが、その後拡大に転じ、

2008 年には約1兆円に達した。リチウムイオン電池は性能が大幅に改良され、他の小型二次

電池に代替して、携帯電話やノートパソコンをはじめ、デジタルカメラや電動工具などに使

用されるようになり、その市場は急速に拡大してきた。携帯機器に使用される二次電池の中

でリチウムイオン電池が占める割合は 2007 年で 80%を超えている。 (2)大型電池(車載用や携帯機器以外の産業用の電池) 大型のリチウムイオン電池は緊急時電源などの定置型電源用にごく一部実用化されている。

一方、ハイブリッド車や電気自動車などの自動車用リチウムイオン電池は継続して開発が進

められてきた。米国のオバマ大統領による電気自動車及びその関連蓄電池に対する優遇策な

どにより、米国をはじめ、中国、韓国、欧州を含めた国際的な開発競争が一気に加速してお

り、自動車用リチウムイオン電池の性能は、近年急速に向上してきた。また、これらの大型

リチウムイオン電池を電力貯蔵用蓄電池として活用する新エネルギー利用システムの開発が

注目されるようになってきた。

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第2章 リチウムイオン電池に関する特許出願動向調査

第1節 調査方法と対象とした特許

(1)調査方法 リチウムイオン電池に関する特許出願動向について、全体動向調査(特許出願及び登録特

許)、技術区分別動向調査、注目研究開発テーマの動向調査、出願人別動向調査及び注目特許

調査を行った。 1)調査対象とした出願先国 今回調査した特許の出願先国は、日本、米国、欧州、中国及び韓国である。欧州への出願

については、欧州特許庁への出願(EPC出願)だけでなく、EPC加盟国の内で使用したデー

タベース(後述)に収録された出願先国 1 )への出願も対象とした。 2)使用したデータベース 特許検索に使用したデータベースは、日本への出願については PATOLIS(株式会社パト

リスの登録商標)、外国への出願については Derwent World Patents Index(WPINDEX(STN)、以下 WPI とする)である。 3)調査対象期間 調査対象とする特許文献は、優先権主張年ベースで 1998 年から 2007 年に出願されたもの

とした。検索された特許出願件数は、日本への出願について 15,197 件、米国、欧州、中国

及び韓国への出願について合計 8,989 件であった。登録特許についても優先権主張年ベース

で 1998 年から 2007 年に出願されたものを調査対象とした。 4)調査対象技術範囲と技術分類 調査対象としたリチウムイオン電池に関する技術の範囲は、正極、負極、電解質及びセパ

レータなどの要素技術、及び、これらを組み合わせた改良技術とした。リチウムイオン電池

の組立、検査、電池システムに関する技術は対象外とした。 検索された特許文献の内容から、要素技術に分類し、それぞれ分析軸を設けて技術分類を

行った。さらに、特許文献に示された用途及び発明が解決すべき課題を分類した。技術分類

に用いた分析軸(上位分類項目のみ抜粋)を表 2-1 に示す。要素技術については、重複して

分類することを認めた。また、複数の課題が示されている場合は、それらを分類した上で、

主となる課題を1項目選定した。

1) 使用したデータベース(WPI)に収録されたEPC加盟国は、オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、

ドイツ、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタ

リア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、スロバキアの

20 カ国である。

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表 2-1 技術分類に用いた分析軸 要素技術 技術区分 用途分類

正極 正極活物質材料 用途 携帯機器用(パソコン、携帯電話等)

正極体の製造方法 自動車用

正極活物質・正極板の特性、正極板の構造 電力貯蔵用

負極 負極活物質材料 電動工具用

負極体の製造方法 産業用(その他車両等)

負極活物質・負極板の特性、負極板の構造

その他

電解質 低分子有機溶媒

イオン液体(常温溶融塩) 技術区分

リチウム塩(支持塩) 課題 電池特性の改善

真性ポリマー電解質 耐久性向上

ゲル電解質 製造技術の改善

無機系固体電解質 安全性の向上

電解質の製造方法

その他の課題

添加剤

電解質の特性

他の電池部材との組み合わせ

セパレータ セパレータ材質

セパレータ構造

セパレータ製造法

セパレータ特性

セパレータその他

5)その他の留意事項 ①出願人国籍別出願動向において、欧州国籍の出願とは、2009 年 7 月 1 日現在のEPC加盟

国である 36 カ国 2 ) の国籍の出願人からの出願とする。 ②特許の出願先国によって、データベースに収録されるまでの時間差があるため、全ての特

許データが収録されている期間が各国で異なっている。このため、特に 2006 年以降は全デ

ータが取得されていない場合があることに留意が必要である。さらに PCT 出願については、

その出願が国内特許へ移行するまでの期間が長く、公表公報発行時期が国内出願の公開(1年 6 ヵ月)より遅くなる。 ③米国特許は、2000 年 11 月 29 日に公開制度が開始されたため、それ以前は、出願された

特許件数として集計できるのは登録された件数に限られることに留意が必要である。 ④登録件数の推移については、特許出願から審査請求までの期間と審査にかかる期間が各国

で異なること、及び日本においては、従来、出願から 7 年間であった審査請求までの期間が

2001 年 10 月以降の出願から 3 年に短縮されており、現在これらが混在して審査されている

ことも念頭において評価する必要がある。

2) EPC加盟国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、

エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、

イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、モナコ、オランダ、

ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、スペイン、

スウェーデン、スイス、マケドニア旧ユーゴスラビア、トルコ、イギリスの 36 カ国である。(2009 年 7 月

1 日現在)。

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(2)調査対象特許件数 検索された特許文献の中から、調査対象外の技術に関する特許文献を除去した後、上記分

析軸を用いて技術分類した。調査対象とした特許の出願先国別の出願件数を表 2-2 に示す。

登録については、調査対象となった特許出願のうち、登録されたものを対象とした。 表 2-2 出願先国別調査対象特許出願件数

出願先国 日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願件数 12,459 4,241 2,688 3,577 3,923 26,888

第2節 全体動向調査

(1)PCT 出願動向 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願は、複数の国への出願を念頭にした重要な特許出

願であると考えられるので、まず、PCT 出願について、出願人国籍別出願件数推移を図 2-1 に示す。出願人の国籍は、この後の集計と同様に、日本、米国、欧州、中国及び韓国(日米

欧中韓と略す。)とその他の国籍に分けて集計した。日本国籍出願人が全体の 52.1%を占め

ている。次いで米国籍が 20.6%、欧州国籍が 12.6%となっている。年次推移では、1998 年

から 2005 年まで増加しており、2005 年に 343 件でピークとなっている。どの年次において

も日本国籍出願人が も多い。同時期の出願件数は 26,888 件であるので、PCT 出願は全体

の 8.8%を占めている。 図 2-1 出願人国籍別 PCT 件数推移及び比率

293309

343

273225

223188181180

151

50

100

150

200

250

300

350

400

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

38件

1.6%

韓国籍

241件

10.2%

その他

71件

3.0%

米国籍

487件

20.6%

欧州国籍

297件

12.6%日本国籍

1,232件

52.1%

合計

2,366 件

(2)日米欧中韓への出願及び登録動向 1)出願人国籍別出願動向 出願人国籍別出願件数推移と比率を図 2-2 に示す。日本国籍出願人が 66.1%と 3 分の 2近くを占めている。次いで韓国籍出願人が 13.8%、米国籍 8.0%となっている。年次推移で

は、合計件数が 1999 年から 2006 年において 2,605 件から 3,025 件の間にあり比較的小幅の

変動である。いずれの年次においても日本国籍出願人が も多い。韓国籍出願人は 1998 年

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から 2003 年にかけて増加し、その後、2004 年には若干減少したものの 2005 年と 2006 年

は 500 件程度で安定している。中国籍出願人は 1998 年から 2007 年にかけて増加している。 図 2-2 出願人国籍別出願件数推移及び比率(日米欧中韓への出願)

中国籍

1,289件

4.8%

韓国籍

3,704件

13.8%

その他

378件

1.4%

米国籍

2,149件

8.0%

欧州国籍

1,587件

5.9%

日本国籍

17,781件

66.1%

合計

26,888 件

1,996

2,712

2,9772,8882,824

2,628

2,8743,025

2,605

2,359

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

2)出願人国籍別登録動向 日米欧中韓で登録された特許の出願人国籍別登録件数推移及び比率を図 2-3 に示す。日本

国籍出願人が出願した特許が も多く 53.9%を占めている。次いで韓国籍出願人の 24.4%、

米国籍出願人の 9.3%となっている。中国籍出願人は、2003 年から 2006 年に出願したもの

の登録件数がやや多くなっている。韓国籍出願人の登録件数比率が相対的に多くなっている

が、これは自国へ出願されたものが早期に特許取得されているためと考えられる。 図 2-3 出願人国籍別登録件数推移及び比率(日米欧中韓での登録)

58

273

385

540

935

1,071

1,1891,2111,2071,126

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

録件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

429件

5.4%

韓国籍

1,948件

24.4%

その他

106件

1.3%

欧州国籍

457件

5.7%米国籍

745件

9.3%

日本国籍

4,310件

53.9%

合計

7,995 件

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

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(3)出願先国別-出願人国籍別出願動向 出願先国(日本、米国、欧州、中国及び韓国)別の出願人国籍別出願件数推移及び比率を

図 2-4~図 2-8 に示す。 日本への出願件数は、1998 年と 1999 年は 1,300 件程度、2000 年と 2001 年には 1,500 件

弱と多くなっており、2002 年から 2005 年は 1,200 件程度で安定している。出願人国籍別で

は、日本国籍が 90.6%と圧倒的に多い。次いで韓国籍出願人が 4.2%となっている。韓国籍

出願人からは毎年数十件の出願があり安定している。 米国への出願件数は、1999 年から 2005 年までは 400 件台で推移しており、大きな変動は

見られない。出願人国籍別では、日本国籍が 52.2%で も多い。次いで米国籍出願人が 22.1%、

韓国籍出願人が 15.4%となっている。 欧州への出願件数は、1999 年に 383 件でピークとなっており、その後 2002 年には 262件まで減少しているが、2002 年から 2005 年には 250 件前後で安定している。出願人国籍別

では、日本国籍出願人は 44.1%で も多く、次いで欧州国籍出願人が 27.7%、米国籍出願人

が 15.8%と続いている。 中国への出願件数は、1998 年の 99 件から 2005 年の 555 件まで一貫して増加している。

出願人国籍別では、日本国籍が 42.1%で も多く、次いで中国籍出願人が 33.5%、韓国籍出

願人が 12.3%となっているが、中国籍出願人は 2002 年に日本国籍に次いで 2 位になって以

降、年々増加しており、2006 年には日本国籍より多くなっている。 韓国への出願件数は、1998 年から 2000 年まで増加し、2001 年には減少したものの、そ

の後 2005 年まで増加して 512 件になっている。出願人国籍別では韓国籍が 47.3%で も多

く、次いで日本国籍が 40.4%となっており、この 2 者で 88%近くを占めている。年次別に

見ても日本国籍と韓国籍がほぼ拮抗して出願している。 図 2-4 出願人国籍別出願件数推移及び比率(日本への出願)

847

1,1391,2261,2251,2111,224

1,4861,469

1,3201,312

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

出願

件数

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

19件

0.2%

韓国籍

524件

4.2% その他

75件

0.6%

米国籍

328件

2.6%

欧州国籍

222件

1.8%

日本国籍

11,291件

90.6%

合計

12,459 件

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

- 8 -

Page 10: 平成21年度 特許出願技術動向調査報告書液を非流動化したリチウムゲルポリマー電解質二次電池が開発されている。ポリエチレンオ キサイド(PEO)やポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物に有機溶媒を加えてゲル化し

図 2-5 出願人国籍別出願件数推移及び比率(米国への出願)

317

365

443445462445

475499

408382

100

200

300

400

500

600

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

出願

件数

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

38件

0.9%

韓国籍

652件

15.4%

その他

137件

3.2%

米国籍

937件

22.1%

欧州国籍

262件

6.2%

日本国籍

2,215件

52.2%

合計

4,241 件

図 2-6 出願人国籍別出願件数推移及び比率(欧州への出願)

78

199

241262256262

292

377383

338

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

出願

件数

中国籍

15件

0.6%

韓国籍

232件

8.6%

その他

87件

3.2%

米国籍

424件

15.8%

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

日本

1,

国籍

186件

44.1%欧

744件

州国籍

27.7%

合計

2,688 件

- 9 -

中国籍

200件

5%

韓国籍

439件

12.3%

その他

46件

1.3%

米国

2

6.欧州国籍

172件

4.8%

1,

33.籍

14件

0%

日本

1,50

42.

国籍

6件

1%

合計

3,577 件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

図 2-7 出願人国籍別出願件数推移及び比率(中国への出願)

445

526555

494

445

322

268

248

175

99

100

200

300

400

500

600

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

出願

件数

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

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図 2-8 出願人国籍別出願件数推移及び比率(韓国への出願)

中国籍

17件

0.4%

韓国籍

1,85

47

7件

.3%

その他

33件

0.8%

欧州国籍

187件

4.8%

米国籍

246件

6.3%

日本

1,

40.

国籍

583件

4%

合計

件3,923

309

483512

462450

375

353

432

319

228

100

200

300

400

500

600

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

出願

件数

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

(4)全体動向のまとめ 1)出願件数と出願人人数の関係の推移 日本国籍出願人と中国籍出願人の、出願件数と出願人人数の推移を、図 2-9 に示す。日本

国籍出願人が出願件数と出願人人数ともに大きな変化が見られないのに対して、中国籍出願

人が 1998 年から 2007 年まで、出願件数、出願人人数が年々増加傾向であり、中国では新規

参入が増加している可能性を示している。 図 2-9 出願人国籍別出願件数-出願人人数推移(日米欧中韓への出願)

日本国籍

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

0 50 100 150 200 250

出願人人数

中国籍

0

50

100

150

200

250

300

350

0 20 40 60 80 100 120 140

出願人人数

出願件数

2004

20072006

2005

2003

2002

20012000

1999

1998

2000

2004

2007

1998

20011999

2006

2002

2005

2003

出願件数

- 10 -

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2)出願先国別出願人国籍別出願件数収支 日本、米国、欧州、中国及び韓国への出願における、出願先国別の出願人国籍別出願件数

収支を図 2-10 に示す。日本国籍出願人から米欧中韓への出願件数は、いずれも米欧中韓国

籍出願人から日本への出願件数より多くなっている。日欧中韓国籍出願人は、自国以外では

いずれも米国への出願件数が も多い。各国とも米国市場に注目していると考えられる。米

国籍出願人は、自国以外では欧州への出願が も多い。中国籍出願人は比較的外国への出願

が少なく、日米欧韓への出願件数はいずれも、日米欧韓国籍出願人から中国への出願件数よ

り少ない。韓国籍出願人の米欧中への出願件数はいずれも、米欧中国籍出願人から韓国への

出願件数より多い。 図 2-10 出願先国別出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願)

その他137件3.2%韓国籍

652件15.4%

中国籍38件0.9%

欧州国籍262件6.2%

米国籍937件22.1%

日本国籍2,215件52.2%

その他87件3.2%

韓国籍232件8.6%中国籍

15件0.6%

欧州国籍744件27.7%

米国籍424件15.8%

日本国籍1,186件44.1%

その他46件1.3%

韓国籍439件12.3%

中国籍1,200件33.5%

欧州国籍172件4.8%

米国籍214件6.0%

日本国籍1,506件42.1%

その他33件0.8%

韓国籍1,857件47.3%

中国籍17件0.4% 欧州国籍

187件4.8%

米国籍246件6.3%

日本国籍1,583件40.4%

その他75件0.6%

韓国籍524件4.2%

中国籍19件0.2%

日本国籍11,291件

90.6%

欧州国籍222件1.8%

米国籍328件2.6%

日本への出願12,459件

中国への出願3,577件

欧州への出願2,688件

韓国への出願3,923件

米国への出願4,241件

262件

1,186件

2,215件

328件

222件

1,583件

424件

15件

232件

187件

1,506件214件

38件

652件

439件

172件 246件

19件 524件

17件

- 11 -

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3)出願先国別-出願人国籍別出願件数比率の推移 出願年(優先権主張年)を、前期(1998 年~2001 年)と中期(2002 年~2004 年)と後

期(2005 年~2007 年)に分け、それぞれの期間の出願先国別-出願人国籍別出願件数比率

を図 2-11 に示す。 日本への出願では、3 つの期間とも日本国籍が 90%前後を占めており、変動は少ない。米

国への出願では、日本国籍は 50%強で、若干増加傾向にあるが韓国籍が伸びている。一方、

米国籍(自国への出願)の比率は減少傾向である。欧州への出願では、韓国籍は前期が 3.6%、

中期が 10.5%、後期が 19.3%と大きく増加している。中国への出願では、日本国籍は前期が

51.0%、中期が 47.3%、後期が 33.2%と減少している。一方、中国籍(自国への出願)は前

期が 12.4%、中期が 26.5%、後期が 50.3%と大きく増加している。韓国への出願では、韓

国籍(自国への出願)は前期が 43.0%、中期が 43.3%、後期が 55.8%と増加している。 図 2-11 出願先国別-出願人国籍別出願件数比率の推移 a) 日本への出願 b) 米国への出願

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1998-2001年 2002-2004年 2005-2007年

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他

51.1% 51.6% 54.8%

11.3%16.6% 20.3%

27.0%20.1% 16.7%

出願人国籍

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1998-2001年 2002-2004年 2005-2007年

出願年(優先権主張年)

比率

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他

91.0% 88.7% 92.1%

出願人国籍

c) 欧州への出願 d) 中国への出願

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1998-2001年 2002-2004年 2005-2007年

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他

14.4% 13.7% 10.0%

12.4%

26.5%

50.3%

51.0% 47.3%

33.2%

出願人国籍

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1998-2001年 2002-2004年 2005-2007年

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他

3.6%10.5%

19.3%

17.3%

14.7% 13.3%

25.9%

32.7%24.9%

49.9%38.1% 37.8%

出願人国籍

e) 韓国への出願

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1998-2001年 2002-2004年 2005-2007年

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他

43.0% 43.3%

55.8%

39.0%45.7%

36.5%

出願人国籍

- 12 -

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4)出願先国別出願人属性別出願件数比率(自国への出願) 出願先国ごとに自国への出願について、出願人属性(企業・大学・研究機関・個人・共同出

願)別出願件数比率を図 2-12 に示す。日本国籍出願人の日本への出願では、企業からの出

願が 89.8%で も多い。共同出願の 918 件についても、883 件は企業が含まれている。大学

と研究機関の合計は 1.7%である。米国籍出願人の米国への出願では、企業からの出願が

78.3%、大学と研究機関の合計は 14.7%である。中国籍出願人の中国への出願では、企業か

らの出願は 47.8%と半数以下であり、大学と研究機関の合計は 45.3%である。中国籍出願人

の中の大学と研究機関からの出願比率が多いことが特徴的である。 図 2-12 出願先国別自国への出願の出願人属性別出願件数比率 a) 日本への出願 b) 米国への出願 c) 欧州への出願 共願

44件

4.7%

個人21件

2.2%

研究機関

47件

5.0%

大学91件

9.7%企業

734件

78.3%

合計937件

共願53件

7.1%

個人20件

2.7%研究機関

92件

12.4%

大学20件

2.7%

企業559件

75.1%

合計744件

共願918件

8.1%

個人42件

0.4%

研究機関

120件

1.1%

大学67件

0.6%

企業10,144

89.8%

合計11,291件

d) 中国への出願 e) 韓国への出願

共願5件

0.4%

個人77件

6.4%研究機関

151件

12.6%

大学393件

32.8%

企業574件

47.8%

合計1,200件

共願

122件

6.6%

個人

26件

1.4%

研究

機関

201件

10.8%

大学

54件

2.9%

企業

1,454件

78.3%

合計

1,857件

- 13 -

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5)三極コア出願調査動向 出願人が重要な技術と判断した発明は、自国だけでなく外国へも出願して権利化を試みる

ことがある。重要な発明の出願動向の一つの指標として、本報告書においては、日本と米国

と欧州(三極)のいずれにも出願された発明を「三極コア出願」と定義し、出願件数全体に

対する三極コア出願件数の比率や年次推移などを調査した。 三極コア出願の調査対象件数を、表 2-3 に示す。なお、三極コア出願でない出願を含む全

体の出願件数についてもファミリー単位で集計し、出願人国籍別に三極コア出願比率を算出

した。三極コア出願件数は、日本国籍出願人が 790 件で も多いが、全体の出願件数も多い

ため、三極コア出願比率は 7.1%と、米国籍出願人の 31.3%や欧州国籍出願人の 40.4%と比

較して低くなっている。 表 2-3 三極コア出願動向調査の対象とした出願件数と三極コア出願比率(1998 年~2007 年)

出願人国籍 三極コア

出願件数

全体の

出願件数

三極コア出願

の比率

日本 790 11,063 7.1%

米国 225 718 31.3%

欧州 174 431 40.4%

中国 7 1,202 0.6%

韓国 147 1,821 8.1%

その他 38 148 25.7%

合計 1,381 15,383 9.0%

(特許出願のファミリー単位で集計)

三極コア出願件数の年次推移と国籍別比率を図 2-13 に示す。三極コア出願件数は、日本

国籍が 57.2%で も多く、次いで米国籍 16.3%、欧州国籍 12.6%となっている。年次推移

では、日本国籍出願人は 2000 年に 148 件でピークとなっておりその後は概ね減少傾向であ

る。米国籍と欧州国籍出願人は、1998 年から 2004 年まで 21 件から 33 件の間で推移してお

り、三極コア出願件数の変動が比較的少ない。 三極コア出願比率の年次推移を図 2-14 に示す。米国籍と欧州国籍出願人は 1998 年から

2005 年においておおむね 30%から 50%の間で推移しているが、日本国籍出願人は 1998 年

から 2004 年において 10%前後で推移している。 米国籍と欧州国籍出願人は、出願件数全体は少ないものの、高い比率で三極に出願されて

いる。一方、日本国籍の出願人は、出願件数は多いものの、三極で出願されている比率は米

国籍、欧州国籍の出願人と比べて少ない。

- 14 -

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図 2-13 出願人国籍別三極コア出願件数推移及び比率

中国籍7件

0.5%

韓国籍

147件

10.6%

その他38件

2.8%

米国籍

225件

16.3%

欧州国籍

174件

12.6% 日本国籍

790件

57.2%

合計

1,381 件

104

148

110

81

47

2930

1

14

82

77

98

2633

2633 28

22

26

24

13

2221 24 21 23

23

2120

40

60

80

100

120

140

160

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

三極コア出願件数

日本国籍 米国籍 欧州国籍

(特許出願のファミリー単位で集計)

図 2-14 日本、米国及び欧州の出願人国籍別三極コア出願比率の年次推移

2%

35%

44%

32%

28%

54%

43%

54%

41%

47%

12%

6%

11%

3%4%

8%8%7%9%9%8%

2%

41%

40%

45%

34%

47%

41%45%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

三極コア出願比率

日本国籍 米国籍 欧州国籍

(特許出願のファミリー単位で集計) 注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

- 15 -

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第3節 技術区分別動向調査

(1)技術区分別-出願人国籍別出願件数 日米欧中韓への出願における出願人国籍別の、技術区分の大分野別(セパレータは中分類)

及び用途別出願件数を図 2-15 に示す。日本国籍出願人の件数が多い。正極、負極、リチウ

ム塩(支持塩)などの技術区分において、出願傾向に特に国籍別の特徴は見られない。 図 2-15 技術区分別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願)

その他の課題276

206 174 100 68 22

製造技術の改善 1,890250 437 310 280 117

安全性の向上 2,280292 154 98

57623

220330耐久性向上

5,886

4471,335

73

電池特性の改善 7,449 954

492

561 1,445143

その他 55577 25 5 25

産業用(その他車両等)198 6 13 18

37517248電動工具用

8251120972電力貯蔵用

51176 44198132

3,290自動車用

561,131

842873269,461

携帯機器用(パソコン、

携帯電話等)

1468

112セパレータその他

セパレータ特性 1,689161 174 22 188 13

セパレータ製造法 1,059133 118 29 154 5

セパレータ構造 1,731205 201 42 250 12

セパレータ材質 1,801213 228 57 265 17

他の電池部材との

組み合わせ758

49 31 27 126 10

電解質の特性618

51 35 13 88

添加剤 2,272251 163 62

74522

電解質の製造方法 775118 185 64 166 23

無機系固体電解質239 25 22 18 16

ゲル電解質 1142104 170 72 335 47

真性ポリマー電解質 707119 135 21 139 11

リチウム塩(支持塩) 2,629274 325 75

60153

イオン液体493 35 56 7 30 13

低分子有機溶媒 3,073349 245 92

84934

負極活物質・負極板の

特性・構造4,457

359 155 90712

57

負極体の製造方法 3,977324 241 232

73969

負極活物質材料 5,933621 358 299

1,01776

正極活物質・正極板の

特性・構造3,942

336 174 176515

68

正極体の製造方法 4,035410 389

533 780154

正極活物質材料 5,929 809 478 608 1,022170

その他欧州国籍 韓国籍米国籍 中国籍日本国籍

技術区分

レー

用途

課題

1 1

1

1

出願人国籍

- 16 -

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(2)技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数推移(日米欧中韓への出願) 日米欧中韓への出願における課題別の出願人国籍別出願件数推移を図 2-16 に示す。電池

特性の改善に関する出願は、2000 年から 2005 年において 1,200 件前後で推移しており、安

定している。耐久性向上は、2000 年に 1,094 件でピークとなり、その後 2001 年と 2002 年

は 700 件台に減少したが、2003 年から 2005 年は 900 件前後で推移している。製造技術の改

善は、2001 年だけが 429 件と多くなっているが、その他の年次においては 300 件強で推移

している。安全性の向上は、2002 年の 333 件から 2005 年の 445 件まで増加している。 図 2-16 技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) a) 電池特性の改善

839

1,1761,194

1,081

1,1721,1491,2011,231

1,039

962

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

561件

5.1%

韓国籍

1,445件

13.1%

その他

143件

1.3%

米国籍

954件

8.6%

欧州国籍

492件

4.5%

日本国籍

7,449件

67.4%

合計

11,044 件 b) 耐久性向上

567

853876

928

923

737793

1,094

858

662

200

400

600

800

1,000

1,200

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

220件

2.7%

韓国籍

1,335件

16.1%

その他

73件

0.9%

米国籍

447件

5.4%

欧州国籍

330件

4.0%日本国籍

5,886件

71.0%

合計

8,291 件

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

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c) 製造技術の改善

248

315

445

411

344333

383

292322330

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

98件

2.9%

韓国籍

576件

16.8%

その他

23件

0.7%

米国籍

292件

8.5%

欧州国籍

54件

4.5%

1 日本国籍

2,280件

66.6%

合計

3,423 件

303

324331319

301309

429

319327

322

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

願件

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

310件

9.4%

韓国籍

280件

8.5%

その他

117件

3.6%

米国籍

250件

7.6%

437件

13.3%

欧州国

日本国籍

1,890件

57.6% 合計

3,284 件 d) 安全性の向上

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

- 18 -

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(3)技術区分(解決手段)別-出願人国籍別出願件数推移及び比率 日米欧中韓への出願における解決手段別-出願人国籍別出願件数推移を図 2-17 に示す。

正極に関する出願は、2000 年に 1,490 件でピークとなっている。その他の年次においても大

きな増減はなく、1,100 件から 1,350 件の間で推移している。2003 年以降、中国籍出願人か

らの出願件数が増えている。負極に関する出願は、1998 年から 2002 年は 1,000 件前後で推

移しており、2003 年から 2005 年には 1,200 件強となっている。2003 年以降、中国籍と韓

国籍出願人からの出願件数が増えている。電解質に関する出願は、1998 年から 2001 年まで

増加し、2001 年に 1,115 件でピークとなっている。その後、2002 年から 2005 年には 900件前後で推移している。セパレータに関する出願は、2001 年に若干減少したものの、2005年まで増加傾向で、2005 年に 403 件でピークとなっている。2002 年に欧州国籍が、2005年には韓国籍がやや多くなっている。 図 2-17 技術区分(解決手段)別-出願人国籍別出願件数推移及び比率(日米欧中韓への出願) a) 正極

- 19 -

中国籍

774件

6.3%

韓国籍

1,463件

12.0%

その他

236件

1.9%

米国籍

1,038件

8.5%

欧州国籍

642件

5.3%

日本国籍

8,040件

65.9%

合計

12,193 件

937

1,2021,241

1,340

1,2441,152

1,328

1,490

1,1571,102

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

件数

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

b) 負極

中国籍

388件

3.6%

韓国籍

1,416件

13.1%

その他

122件

1.1%

米国籍

805件

7.4%

欧州国籍

488件

4.5% 日本国籍

7,627件

70.3%

合計

10,846 件

886

1,1721,2321,2471,215

9721,082

1,122

985933

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

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c) 電解質

524

788

948

882872889

1,1151,100

975

877

200

400

600

800

1,000

1,200

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

250件

2.8%

韓国籍

1,353件

15.1%

その他

102件

1.1%

米国籍

625件

7.0%

欧州国籍 699件

7.8% 日本国籍

5,941件

66.2%

合計

8,970 件 d) セパレータ

226

372

403385

349340

285301291

249

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

中国籍

79件

2.5%

韓国籍

362件

11.3%

その他

18件

0.6%

米国籍

253件

7.9%

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

欧 州国籍

284件

8.9% 日本国籍

2,205件

68.9% 合計

3,201 件

- 20 -

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

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第4節 注目研究開発テーマ別特許出願動向調査

リチウムイオン電池の出願件数が多い用途は、携帯機器と自動車であるが、それぞれの用

途では開発の方向に特徴があると考えられる。そこで、それぞれの用途について出願件数が

多い課題に注目し、注目研究開発テーマを 2 テーマ選定して出願動向を調査した 3 )。 (1)携帯機器用途 携帯機器用途は、現在 も多くリチウムイオン電池を使用している分野であり、特許出願

件数でも全体の 3 分の 2 以上を占めている。携帯機器用途が示されている特許出願で、 も

多い課題は電池特性の改善であり、中でも高容量化が も多い。そこで、「携帯機器用途にお

ける高容量化技術」を注目研究開発テーマとした。 携帯機器用途における高容量化技術に関する、日米欧中韓への出願における出願人国籍別

出願件数推移と比率を図 2-18 に示す。日米欧中韓への出願件数全体の推移(図 2-2 )では、

1998 年から 2000 年まで増加し 2000 年にピークとなっているが、携帯機器用途における高

容量化技術に関する出願は、1999 年から 2003 年にかけて増加しており、出願件数がピーク

となる時期が異なっている。 図 2-18 携帯機器用途における高容量化技術の出願人国籍別出願件数推移(日米欧中韓への出

願)

304

426

501482

524

497

457

393

347

380

100

200

300

400

500

600

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

21件

0.5%

韓国籍

348件

8.1% その他

21件

0.5%

米国籍

124件

2.9%

欧州国籍

42件

1.0%

日本国籍

3,755件

87.1%

合計

4,311 件

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

3) 前節では 1 件の特許出願に対して主たる課題を 1 項目選択して集計したが、この節に限り、複数の課題

が示されている場合は全てを集計した。なお、想定される用途を記載していない出願も多数あることに注

意が必要である。

- 21 -

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(2)自動車用途 近年、地球温暖化防止対策のため、ハイブリッド車あるいは電気自動車等の普及拡大を図

る動きが活発化しており、自動車用途のリチウムイオン電池に関する出願が増加している。

ここでは注目を集めている課題として、「自動車用途における安全性向上技術」を注目研究開

発テーマとした。 自動車用途における安全性の向上技術の、日米欧中韓への出願における出願人国籍別出願

件数推移と比率を図 2-19 に示す。自動車用途における安全性の向上技術は、2003 年から

2004 年にかけて大きく増加している。 図 2-19 自動車用途における安全性の向上技術の出願人国籍別出願件数推移(日米欧中韓への

出願)

76

122

144

175

89

6750

89

61

72

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

出願年(優先権主張年)

願件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張

1998-2007年

出願人国籍

中国籍

5件

0.5%

韓国籍

93件

9.8%

その他

7件

0.7%

米国籍

94件

9.9%

欧州国籍

19件

2.0%

日本国籍

727件

76.9%

合計

945 件

注:2006 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国 移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

- 22 -

Page 24: 平成21年度 特許出願技術動向調査報告書液を非流動化したリチウムゲルポリマー電解質二次電池が開発されている。ポリエチレンオ キサイド(PEO)やポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物に有機溶媒を加えてゲル化し

第5節 出願人別動向調査

(1)出願人別出願件数上位ランキング(日米欧中韓への出願) 出願人別の出願件数ランキングを、表 2-4 に示す。パナソニックが 1 位、ソニーが 2 位、

韓国の三星 SDI が 3 位となっている。7 位に韓国の LG 化学が入っている。この韓国の 2 社

の他は、16 位まで日本国籍出願人となっている。 表 2-4 全体の出願人別出願件数上位ランキング(日米欧中韓への出願)

順位 出願人名称 出願件数

1 パナソニック 2,291

2 ソニー 2,096

3 三星 SDI(韓国) 1,949

4 三洋電機 1,628

5 三菱化学 849

6 GS ユアサ コーポレーション 826

7 LG 化学(韓国) 811

8 東芝 533

9 日立マクセル 531

10 日本電気 336

11 宇部興産 335

12 トヨタ自動車 330

13 日産自動車 324

14 日東電工 255

15 新神戸電機 237

16 TDK 232

17 スリー エム(米国) 230

18 豊田中央研究所 224

19 ビー ワイ ディー(中国) 219

20 日立製作所 206

21 メルクパテント(ドイツ) 198

22 グレイトバッチ(米国) 193

23 三井金属鉱業 191

24 AGCセイミケミカル 185

25 バレンス テクノロジー(米国) 180

26 ブリヂストン 178

27 産業技術総合研究所 169

28 日本ゼオン 158

29 デンソー 156

30 三井化学 153

(2)出願先国別出願人別出願件数上位ランキング 出願先国別の出願人別出願件数ランキングを、表 2-5 に示す。全体として、日本国籍と韓

国籍の出願人が多い。米国と欧州と中国への出願では、それぞれ自国内の出願人 2~3 社が

上位 10 位内に入っている。

- 23 -

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表 2-5 出願先国別-出願人別出願件数上位ランキング 日本への出願 米国への出願 欧州への出願 中国への出願 韓国への出願 順

位 出願人名称 件

位出願人名称

位出願人名称

位出願人名称

位 出願人名称

1 パナソニック 1,144 1 三星 SDI(韓国) 415 1 パナソニック 176 1 パナソニック 295 1 三星 SDI(韓国) 815

2 ソニー 1,129 2 パナソニック 375 2 ソニー 145 2 三星 SDI(韓国) 274 2 LG 化学(韓国) 375

3 三洋電機 880 3 ソニー 328 3 LG 化学(韓国) 107 3 ソニー 249 3 パナソニック 301

4 GS ユアサコー

ポレーション 692 4

三洋電機 312 4

三星 SDI(韓国)91 4

三洋電機 178 4

ソニー 245

5 三菱化学

616 5LG 化学(韓国)

120 5メルクパテント

(ドイツ) 78 5

ビー ワイ ディ

ー(中国) 177 5

三洋電機 189

6 日立マクセル

421 6東芝

92 6三洋電機

69 6LG 化学(韓国)

116 6 韓国科学技術

研究院(韓国) 101

7

三星 SDI(韓国)

354 7

グレイトバッチ

(米国) 77 7

コミッサリア タ

レネルジー アト

ミーク(フランス)

63 7

深せん市比克

電池(中国) 77 7

チェイル インダ

ストリー(韓国) 85

8 東芝

309 8バレンス テクノ

ロジー(米国) 76 8

グレイトバッチ

(米国) 59 8

三菱化学 57 8

東芝 54

9 トヨタ自動車

235 9三菱化学

73 9スリー エム(米

国) 55 8

復旦大学(中

国) 57 9

三菱化学 52

10 日産自動車

218 10スリー エム(米

国) 60 10

三菱化学 51 10

東芝 55 10

韓国電気研究

所(韓国) 44

10 宇部興産 44

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第6節 注目特許

(1)注目特許の選定方法 本調査では、以下の基準を設けて選ばれた特許を注目特許(技術的または社会的に注目度

の高い基本特許、重要特許等)として調査した。 ① 参考文献等によりその技術について 初に出願されたと考えられる特許 文献などを参照して選定したその技術について 初に出願されたと考えられる特許で、リ

チウムイオン電池 6 件、正極 6 件、負極 9 件、電解質 7 件、セパレータ 2 件の合計 30 件(重

複を除くと 26 件)を選んだ。図 2-20 の技術変遷図では (点線枠)で示

している。 ② 特許審査に当たり審査官に引用された回数が 9 回以上(2009 年 9 月 10 日現在)の日本

特許 28 件あり、図 2-20 の技術変遷図では (実線枠)で示し、被引用回数を

併記している。 ③ 外国への出願について、今回調査対象となった特許のうち、米国、欧州、PCT 出願にお

ける審査時に、審査官に引用された回数が 10 回以上(2009 年 10 月 16 日現在)の特許。そ

の特許にファミリー特許がある場合は、そのファミリーの中で も被引用回数が多い特許の

特許番号を示している。 13 件あり、図 2-20 の技術変遷図では (破線枠)で示し、被引用回数を

併記した。 ④ 侵害等に関する訴訟関連特許 6 件あり、図 2-20 の技術変遷図では (1 点鎖線枠)で示す。 ⑤ 公表されたライセンス情報の関連特許 3 件あり、図 2-20 の技術変遷図では (網掛けあり)で示す。 ②と③は調査対象期間である優先権主張年 1998年から 2007年の特許から選定したが、①、

④、⑤は 1998 年以前の特許を含む。④と⑤は、知的財産裁判例 4 )、パテントサロンのパテ

ントニュースデータベース 5 )、日経テレコン 21 6 ) で 2009 年 10 月 15 日に検索した。知的財

産裁判例と日経テレコン 21 は、検索対象期間を 1998 年 1 月 1 日から 2009 年 9 月 30 日と

した。なお、①から⑤の特許件数には、重複がある。 (2)技術変遷図 選定した注目特許による技術変遷図を図 2-20 に示す。

4)裁判所トップページ>裁判例情報>知的財産裁判例

(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id=first&hanreiSrchKbn=07) (2009 年 10 月 15 日) 5) パテントサロンHOME>データベース>パテントニュースデータベース

(http://www.cytechsystem.com/patentsalon/news_db_20080104/navi.cgi?) (2009 年 10 月 15 日) 6) http://t21.nikkei.co.jp/ g3/CMN0F11.do (2009 年 10 月 15 日)

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図 2-20 (a) リチウムイオン電池の注目特許による技術変遷図 1960~1979年 1980~1989年 1990~1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年

リチウムイオン (1979) 

     電池

(1981)

       (1985)

         (1986)

              (1988)

              (1988)

(1991)

(1991)

2003年 2009年2004年 2005年 2006年 2008年2007年

特許1633812 英国原子力公社LixCoyO2又はLixNiyO2/電解質/Liで表される電池

特許1769661 三洋電機黒鉛層間化合物を負極活物質とするリチウム二次電池

特許2668678 旭化成工業LiCoO2及び・又はLiNiO2正極/カーボン負極の非水系二次電池

特許1989293 旭化成工業層状構造の複合酸化物正極/炭素負極の非水系二次電池

特許2621294 ソニー粒状コークスを負極活物質とする二次電池(最初の大量生産Liイオン電池関連)

特許2645609 ベル コミュニケーションズ リサーチLiMn2O4正極/炭素負極の非水系二次電池

特許4127892 日立マクセル 9回粒径等を規定した球状・楕円状LixNiyCo1-yO2正極と鱗片状炭素質負極のLiイオン電池

特許2701347 ソニー正・負極活物質層の膜厚等を規定した渦巻型非水二次電池

US5686138(特許3229635他6件) 三洋電機正負極・電解液等を規定したリチウム二次電池

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図 2-20 (b) リチウムイオン電池の注目特許による技術変遷図 1960~1979年 1980~1989年 1990~1997年

正 極   (1973)      

(酸化物系)

(1979) 

(1994)

(1982)

2004年1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年

(オリビン構造系) (1995)

(1996)

(硫化物系)

2008年 2009年2005年 2006年 2007年

特許1633812 英国原子力公社層状構造のLixCoyO2・LixNiyO2を正極活物質とする非水系二次電池

特許1216832 エクソンLi挿入化合物(TiS2)を正極活物質とする非水系二次電池

特許3524762 三洋電機 9回粒度を規定したLiaCobM(Y等)cNi1-b-cO2複合酸化物でサイクル特性が良い正極活物質

特開2001-48547 日揮化学 9回高温サイクル特性等に優れるスピネル型Li-Mn複合酸化物

特許3484003 日本電信電話LiFePO4で表され、オリビン構造であるLi含有鉄複酸化物を主体とする正極活物質

特表2000-509193,特開2007-214147他2件(US5910382,6514640他1件) テキサス大学オリビン構造の化合物(LiFePO4等)を含む二次電池用正極材料

特表2005-514304 マサチューセッツ工科大学急速充放電可能な伝導性オリビンを正極活物質とする電極

特許3088716 同和鉱業 9回安全性が改良されたLiNiO2系正極活物質

特許2137789 サウス アフリカン インベンシヨンズスピネル構造の化合物(LiMn2O4等)を正極活物質

特許3627516 宇部興産 9回アルカリ土類・S含有量が0.1%以下のLi-Ni・Li-Co・スピネル型Li-Mn複合酸化物を正極活物質

特許3024636 日本電気 12回 Li-Mn複合酸化物とLi-Ni複合酸化物を含む正極で高温サイクル寿命等を改善

US6677082 Univ of Chicago 13回放電状態でxLiMO2・(1-x)Li2M'O3(M=e.g.,Mn,Ni)であるLi金属酸化物正極

US6964828,US7078128(特表2004-528691,Ni,Co,Mnを含むLi遷移金属酸化物Li[M(1-x)Mn

特開2009-187959) 3M

x]O2を正極材料

US6200704 Polyplus Battery 12回硫黄含有活物質(S,硫化物)とそれより高い放電速度をもつ活物質からなる正極

US6168887 Chemetals Technology 16回層状ブロンズ構造のLi-Mn酸化物を電極に使用

特許3550783 東ソーLi含有3元系遷移金属酸化物(LixMnyCozNi1-(y+z)O2)を正極に使用

特許4235702 日本化学工業 10回硫酸根を含むLi-Co,Ni複合酸化物でサイクル寿命の優れた正極活物質

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図 2-20 (c) リチウムイオン電池の注目特許による技術変遷図

1960~1979年 1980~1989年 1990~1997年

負 極   (炭素系 (1981)

(1982)

       (1985)

              (1988)

(1990)

(1990)

(炭素系-被覆・多層)

(金属系)    (1975)      

1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005

(無機系)

電 極(両極)

2008年 2009年年 2006年 2007年

特許1769661 三洋電機黒鉛層間化合物を負極活物質とするリチウム二次電池

US4423125 Bell Telephone Lab.黒鉛層間化合物を負極活物質とする米国出願

特許1989293 旭化成工業比表面積等を規定した炭素質材料を負極活物質

特許2621294 ソニー粒状コークスを負極活物質とする二次電池

特許2884746 松下電器産業黒鉛化メソカーボンマイクロビーズを負極活物質

特許2943287 ブリヂストン黒鉛化メソカーボンマイクロビーズを負極活物質

特許1333666 エクソンLi-Al合金を負極活物質とする非水系二次電池

特許3534391 三菱化学 16回結晶構造等を規定した高容量・急速充放電可能な炭素材料

特許3106129 三井鉱山 11回黒鉛粒子を結晶性炭素層で被覆し電解液の分解を防止

特許3718072 関西熱化学 12回塗布性の良好な鱗片状天然黒鉛粒子

特許3913438 三洋電機 12回炭素層に微結晶・非晶質Si薄膜を積層させ活物質の剥離を防止

特開2000-215887 三井鉱山 14回金属・半金属粒子核を炭素被覆し負極の粉化等を防止

特許3941235 宇部興産 9回金属ケイ化物から金属を除去したSiを負極材料とし高容量化

特許4085473 宇部興産 9回Si/Si合金/ケイ化物負極で最大充電範囲を規定し高容量化

特許4266509 三星エスディアイ 9回表面に炭素気相成長繊維・炭素ナノチューブが生長した結晶質・非晶質炭素を含む高率特性等の良い負極活物質

特許4041047 東芝微粒化チタン酸リチウムを負極活物質とする大電流非水二次電池

US6465132 Agere Systems Guardian 52回小径のナノワイアを含む電極を有するリチウム二次電池

US6221531 Univ. of Chicago 16回スピネル構造のLi[Ti1.67Li0.33-yMy]O4を用いた負極

特許4207958 ソニー合金負極(SnCo/炭素合金)からなる負極材料

US6911280 PolyPlus Battery 12回炭酸塩の保護層を表面に有するLi合金負極

US6599662 MIT 11回金属酸化物のマトリックス中に合金が混合された複合材料負極

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図 2-20 (d) リチウムイオン電池の注目特許による技術変遷図 1960~1979年 1980~1989年 1990~1997年

電解質 (有機溶媒)               (1988)

                (1989)

(添加剤)

          (1995)

(イオン液体)           (1995)

(リチウム塩)

1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年

(ポリマー・ゲル電解質) (1978) 

    (1993)

(無機系固体電解質) (1980) 

2007年 2008年 2009年

US5552238, 5589291 US Air Forceイオン液体(イミダゾリウム系)を用いた二次電池

特許2853096 ベル コミュニケーションズ リサーチフッ化ビニリデン共重合体と溶液からなるゲルポリマー電解質

特許1713989 日立製作所Li2O・SiO2・P2O5系酸化物を無機固体電解質とするリチウム二次電池

特許3341524 宇部興産芳香族カーボネート添加による安定SEI形成

特許1934522 アンバール高分子固体電解質(ポリエチレンオキシド)を用いた二次電池

特許3774315 東芝 14回常温溶融塩電解質を用いた熱安定・長寿命な二次電池

特許4296620 ソニー 12回ビフェニル系化合物添加による過充電防止

特許3675690 メルク パテント 12回有機アルカリ金属塩添加による過充電防止

特開2001-220393 メルク パテント 12回スピロホウ酸塩を用いた導電性の改良

特許3722685 セントラル硝子 12回イオン性金属錯体構造の新規な電解質

特許3823683 宇部興産 11回カーボネート系にビニレンカーボネート・スルトン等を添加しサイクル特性等を改良

US6455200 Illinois Inst. of Tech.ホスファゼン添加による難燃性付与

特開2001-23684 松下電器産業,三菱化学 11回環状カルボン酸エステルに不飽和結合をもつ環状炭酸エステルを添加し低温特性改良

特開2001-155769 メルク パテント 10回簡単に製造できる錯塩(Li[BF3・N(SO2CF3)2等)の電解質塩

特開平11-307121 三菱化学 10回常温溶融塩にLi塩と環状有機化合物を配合した難燃性等に優れる電解液

特許4051953 三菱化学 11回炭素被覆黒鉛負極とビニレンカーボネート等添加電解液を使用し電解液の分解を抑制

特開2001-338684 ソニー 9回ビニレンカーボネート等を含むサイクル特性の良好な非水電解質

US6020087 Valence Technology 20回Li14Zn(GeO4)4等のフィラーを含むポリマー電解質

US6326104 Electrochemical Systems 11回ピラゾリウムカチオンとLi塩を含む電解質で高容量化

US5028500, 5069683 Moli Energyプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート混合溶媒の使用

特許2646657 ソニー電解液量を調整しガス発生に対応した空隙を設けた非水二次電池

特開2000-188128 三菱化学 9回有機ハロゲン化物を含む非水溶媒で低温特性等を改良

US6617078 Delphi Technologies 12回塩素化ポリマーブレンドを正・負極、セパレータ/ポリマー電解質に用いたLiイオン電池

US6096453 Adven Polymers 15回ポリマー電解質とそれとネットワークを形成する有機共役化合物を有するポリマー電極からなる蓄電デバイス

US6395043 Timer Technologies 11回電解質とモノマーをインラインプレスで印刷・硬化しポリマー化する印刷法による電池

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1960~1979年 1980~1989年 1990~1997年

(1966)

セパレータ

      (1985)

注目特許の選定基準   (括弧内の件数は重複あり)

参考文献等によりその技術について最初に出願されたと考えられる特許(点線枠)  (30件)

特許審査に当たり審査官に引用された回数が9回以上の日本特許(実線枠)  (28件)

(侵害)訴訟関連特許(一点鎖線枠)  (6件)

公表されたライセンス情報の関連特許(網掛けあり)  (3件)

米国、欧州、PCT出願における審査時に、審査官に引用された回数が10回以上(2009年10月16日現在)の特許。その特許にファミリー特許がある場合は、そのファミリーの中で最も被引用回数が多い特許の特許番号を示している。(破線枠) (13件)

1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2009年2005年 2006年 2007年 2008年

US6148503 Imra America 14回電極表面に前駆体溶液の薄膜を印刷し硬化させる多孔質セパレータの製法

特許3920510 東芝 12回正・負極とセパレータの一体化による高温貯蔵時の外装材膨れ防止

特許2108985,特許2714605ほか3件 ダブリュー・アール・グレイスほか特定温度において寸法を保ちつつ無孔に変形する電池セパレータ

図 2-20 (e) リチウムイオン電池の注目特許による技術変遷図

US3558764 Celaneseポリオレフィン製微多孔膜の製造方法

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第3章 リチウムイオン電池に関する研究開発動向調査

第1節 調査方法と対象とした論文

リチウムイオン電池に関する論文発表動向から見た研究開発動向について、論文データベ

ース(JSTPlus)を用いて検索し調査した。対象とした論文の範囲は、1998 年~2008 年に

発行された論文誌に掲載されたものとした。 検索された論文(原著論文、抄録有)は 14,982 件であった。これらの日本語訳した抄録

をもとに特許出願動向調査と同様の分析軸で分類した結果、リチウムイオン電池の構造や組

立に関する論文や、燃料電池に関する論文などの調査対象外の論文が含まれており、解析対

象とする論文は 11,334 件であった。これらを論文誌の発行年別、要素技術別、研究機関国籍

別及び研究機関別で集計した。 また、発表動向を国際的に比較するため、リチウムイオン電池に関する論文を掲載した論

文誌の中から、国際的な主要論文誌と認められるものを委員会で選定した。国際的な主要論

文誌として選定した 46 誌を表 3-1 に示す。国際的な主要論文誌は、主として英文の論文誌

であるが、リチウムイオン電池に関する技術は日本が先行しているとの判断から、日本語の

論文誌も選定した。国際的な主要論文誌 46 誌に掲載された論文は 8,082 件で、全体の 71.3%を占めている。 表 3-1 国際的な主要論文誌に選定した論文誌

番号 論文誌名 番号 論文誌名

1 Journal of Power Sources 24 ITE Letters on Batteries, New Technologies & Medicine

2 Journal of the Electrochemical Society 25 Journal of Materials Science

3 Electrochimica Acta 26 Proceedings. IEEE Ultrasonics Symposium

4 Solid State Ionics 27 Chemistry Letters

5 Electrochemical & Solid State Letters 28 Synthetic Metals

6 Electrochemistry Communications 29 Journal of Physical Chemistry : C

7 Chemistry of Materials 30 Molecular Crystals and Liquid Crystals

8 電気化学および工業物理化学(英文) 31 AD Report

9 Journal of Solid State Electrochemistry 32 Materials Research Bulletin

10 Journal of Physical Chemistry : B 33 Japanese Journal of Applied Physics. part 1

11 Journal of Materials Chemistry 34 Key Engineering Materials

12 Journal of Electroanalytical Chemistry 35 Materials Science & Engineering B

13 電気化学および工業物理化学(日本語) 36 Journal of Applied Physics

14 Journal of Alloys and Compounds 37 Materials for Lithium−Ion Batteries

15 Journal of Applied Electrochemistry 38 Journal of Applied Polymer Science

16 Materials Chemistry and Physics 39 Journal of the American Chemical Society

17 Applied Physics Letters 40 Journal of Physics and Chemistry of Solids

18 Materials Letters 41 Angewandte Chemie International Edition in English

19 電池討論会講演要旨集 42 Physical Review B: Condensed Matter and Materials Physics

20 Carbon 43 日本セラミックス協会学術論文誌

21 Advanced Materials (DEERFIELD, FLA.) 44 Nature Materials

22 Journal of Solid State Chemistry 45 Nature (London)

23 Lithium Battery 46 Science

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第2節 全体動向調査

国際的な主要論文誌に限定した場合の、リチウムイオン電池に関する論文の研究者所属機

関国籍別の発表件数推移と国籍別比率を図 3-1 に示す。発表件数は、1998 年の 409 件から、

2007 年の 1,020 件へと約 2.5 倍に増加している。1998 年から 2008 年に発行された論文件

数比率は、日本国籍が 21.7%で も多く、次いで欧州国籍が 19.3%、米国籍の 17.9%とな

っている。しかし、2006 年以降では中国籍が も多くなっている。日米欧中韓以外の国籍で

は、台湾、カナダ、オーストラリア及びインドから多くの論文が発表されている。 図 3-1 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移と国籍別比率(国際的な主要論文誌)

885

1,020918939

631

816

672687610

495409

200

400

600

800

1,000

1,200

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

発表年

表件

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

発行年

1998-2008

研究者所属機関国籍

米国籍

1,449件

17.9%

日本国籍

1,755件

21.7%

その他

1,238件

15.3%

韓国籍

892件

11.0%

中国籍

1,185件

14.7%

欧州国籍

1,563件

19.3%

合計

8,082 件

論文発表件数(国際的な主要論文誌)と特許出願件数年次推移を同じ軸で比較して図 3-2 に示す。件数としては特許出願の方が数倍多く、論文発表件数と特許出願件数には、特に関

連性は見られていない。 図 3-2 論文発表件数(国際的な主要論文誌)と特許出願件数の比較

3,025

2,628

2,977

2,712

1,996

2,824 2,888

2,605

2,359

2,874

885

1,020918

495610 687 672

409

816631

939

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

論文発行年/特許出願年(優先権主張年)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

特許出願件数 論文発表件数

注:特許件数について、2006 年以降は全データを反映していない 可能性がある。また、2008 年についてはデータを取得していない。

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論文(国際的な主要論文誌)の研究者所属機関の国籍と、特許出願人の国籍の比率を比較

して図 3-3 に示す。日本国籍は特許では 66.1%を占めるのに対し、論文では 21.7%に留ま

っている。一方欧州国籍は、特許では 5.9%であるのに対して、論文では 19.3%になってい

る。同様に中国籍は、特許では 4.8%であるのに対して、論文では 14.7%に増えている。日

本国籍は論文発表件数の約 10 倍の特許出願があるのに対して、欧州国籍の特許出願件数と

論文発表件数はほぼ同数である。 図 3-3 論文の研究者所属機関国籍別件数比率と特許出願人国籍別出願件数比率の比較 a) 論文の研究者所属機関国籍別件数比率 b) 特許出願人の国籍別件数比率

(国際的な主要論文誌) (日米欧中韓への出願)

中国籍

1,289件

4.8%

韓国籍

3,704件

13.8%

その他

378件

1.4%

米国籍

2,149件

8.0%

欧州国籍

1,587件

5.9%

日本国籍

17,781件

66.1%

合計

26,888 件

米国籍

1,449件

17.9%

日本国籍

1,755件

21.7%

その他

1,238件

15.3%

韓国籍

892件

11.0%

中国籍

1,185件

14.7%

欧州国籍

1,563件

19.3%

合計

8,082 件

第3節 技術区分別動向調査

リチウムイオン電池に関する論文を技術分類し、要素技術別発表動向を調査した。リチウ

ムイオン電池の要素技術別論文発表件数の推移と比率を図 3-4 に示す。正極に関する論文が

5,880 件(47.1%)で も多く半数近くを占めている。次いで負極が 3,598 件(28.8%)、電

解質 2,909 件(23.3%)と続いている。正極と負極と電解質は、1998 年から 2005 年までは

類似した増減傾向を示しているが、2007 年には、正極と負極に関する論文が増加したのに対

して電解質に関する論文は減少している。 図 3-4 リチウムイオン電池の要素技術別論文発表件数推移と比率(全論文誌)

630

728

645635

480473502

588

475

386

338

410451

381421

255268302

410

270

207223 256275

320372

272230276

348

238

153169

615109145814985

100

200

300

400

500

600

700

800

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

発行年

発表件数

正極 負極 電解質 セパレータ

セパレータ103件0.8%電解質

2,909件23.3%

負極3,598件28.8%

正極5,880件47.1%

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研究者所属機関の国籍別に、リチウムイオン電池の要素技術別論文発表件数を図 3-5 に示

す。いずれの国籍も正極に関する論文が も多く、米国籍以外は電解質に関する論文より負

極に関する論文が多い。セパレータに関する論文はいずれの国籍でも極めて少ない。 図 3-5 リチウムイオン電池の要素技術別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(全論文誌)

米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他

7146192136セパレータ

3922502594745041,030電解質

4753085546075011,153負極

8246689421,707正極 975 764

日本国籍研究者

所属機関国籍

解決手段 論文(全論文誌)の解決手段別発表件数と、特許出願人の解決手段別出願件数比率を比較

して図 3-6 に示す。正極に関する特許出願件数は全体の 34.6%であるのに対し、論文発表

件数は 47.1%と比率が大きくなっている。一方、セパレータに関する特許出願件数は全体の

9.1%であるのに対して、論文発表件数は 0.8%と比率が小さくなっている。 図 3-6 論文の解決手段別発表件数比率と特許の解決手段別出願件数比率の比較 a) 論文発表の比率(全論文誌) b) 特許出願の比率(日米欧中韓への出願)

セパレータ103件0.8%電解質

2,909件23.3%

負極3,598件28.8%

正極5,880件47.1%

正極12,193件

34.6%

負極10,846件

30.8%

電解質8,970件25.5%

セパレータ3,201件

9.1%

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第4節 研究者所属機関別動向調査

リチウムイオン電池に関する研究者所属機関別の論文発表件数上位ランキングを、表 3-2 に示す。全論文誌で も多く論文を発表しているのは、産業技術総合研究所である。次いで

京都大学が 2 位、中国科学院(中国)が 3 位となっている。上位 10 機関は、日本の研究機

関が 5 機関、中国と韓国が 2 機関ずつ、米国が 1 機関となっており、上位に日中韓が多い。

11 位から 20 位では、欧州の研究機関が 4 機関、日本と米国が 2 機関ずつ、韓国とカナダが

1 機関ずつとなっている。上位は大学と大学以外の研究機関で占められているが、企業では、

17 位の GS ユアサコーポレーションが も多い。 なお、複数の研究機関の共同研究の場合は、それぞれカウントしている。

表 3-2 研究者所属機関別発表件数上位ランキング(全論文誌)

順位 研究者所属機関名(国籍) 発表件数

1 産業技術総合研究所 368

2 京都大学 280

3 中国科学院(中国) 267

4 東京工業大学 255

5 アルゴンヌ国立研究所(米国) 241

6 ハンヤン(韓陽)大学(韓国) 210

7 九州大学 169

8 佐賀大学 168

9 復旦大学(中国) 158

10 ソウル大学(韓国) 157

11 ダルハウジー大学(カナダ) 152

12 CNRS(フランス) 148

13 ピカルディー・ジュール・ベルヌ大学(フランス) 142

13 韓国科学技術院(韓国) 142

15 コルドバ大学(スペイン) 141

16 カリフォルニア大学(米国) 139

17 GS ユアサコーポレーション 134

17 ローレンスバークレイ研究所(米国) 134

19 ローマ大学(イタリア) 133

19 東京理科大学 133

21 シンガポール国立大学(シンガポール) 131

21 清華大学(中国) 131

23 岩手大学 130

24 ウーロンゴン大学(オーストラリア) 121

24 マサチューセッツ工科大学(米国) 121

26 武漢大学(中国) 119

26 韓国科学技術研究院(韓国) 119

28 バール・イラン大学(イスラエル) 118

29 ピエール&マリー・キュリー大学(フランス) 117

30 東北大学 113

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第4章 リチウムイオン電池に関する産業政策動向調査

第1節 日本の産業政策

・「燃料電池自動車等用リチウム電池」及び「系統連系円滑化蓄電システム」の技術開発 1992 年に開始された、大容量かつ小型で経済性のある電池による電力貯蔵技術を開発する

「分散型電池電力貯蔵技術開発プロジェクト」が 2001 年に終了した後、2002 年からは自動

車用途について、「燃料電池自動車等用リチウム電池技術開発プロジェクト」が実施された。

燃料電池自動車は、加速・高負荷時に放電して出力をサポートし、減速時にはエネルギー回

収、充電することにより、エネルギーの高効率利用を補助する高性能二次電池を必須として

いることから、入出力密度の向上や長寿命化を実現し、さらに軽量、コンパクトで低コスト

な車載用リチウム二次電池の開発が目標とされた。 一方、定置型電池の後継プロジェクトとしては、「系統連系円滑化蓄電システム技術開発プ

ロジェクト」が 2006 年に開始された。このプロジェクトは、太陽光発電や風力発電などの

新エネルギー(再生可能エネルギー)システムにおける出力変動抑制のために、高性能、低

コスト、長寿命な蓄電システムの開発を目指すものである。 ・「次世代自動車用電池の将来に向けた提言」に対応した次世代自動車用電池の開発 「次世代自動車用電池の将来に向けた提言」(2006 年 8 月 経済産業省)に基づき、脱石

油を志向する次世代自動車技術に不可欠な次世代自動車用電池の開発に向けて、産官学の新

たな連携体制とアクションプランが提案された。 蓄電池の開発のための研究開発戦略では、2030 年頃までの 20 数年間を、(1)2010 年を

目途として用途限定コミューター用電気自動車及び高性能ハイブリッド車の量産化を目指す

改良型電池の開発フェーズ、(2)2015 年を目途としてコミューター型電気自動車やプラグ

インハイブリッド車の量産化を目指す先進型電池の開発フェーズ、(3)2030 年以降を目途

として本格的な電気自動車を量産化することを目指す革新的電池の開発フェーズの 3 つのフ

ェーズに分け、「改良」、「先進」、「革新」の 3 フェーズにおける電気自動車用電池の開発目

標を明確にした。 ・「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発」及び「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」 2007 年及び 2009 年に 2 つの新たな国家プロジェクトが開始された。 まず、「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発」(Li-EAD)が 2007 年から 2011 年

までの予定で開始された。このプロジェクトは(1)2015 年での目標性能達成を目指す要素

技術開発、(2)2030 年以降を念頭に革新的な二次電池を開発する次世代技術開発、(3)電

池性能評価や寿命診断、反応メカニズムの解析手法などの開発を行う基盤技術開発の 3 つの

研究開発項目からなる。 次に、「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」が 2009 年から 2015 年までの予定で開始さ

れた。この事業は、電池の基礎的な反応メカニズムを解明することによって、(1)既存の蓄

電池のさらなる安全性などの信頼性向上、(2)ガソリン車並みの走行性能を有する本格的電

気自動車用の蓄電池(革新型蓄電池)の実現に向けた基礎技術を確立することを目的として

いる。

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第2節 外国の産業政策

(1)米国 ・グリーンニューディール政策以前の自動車関連電池への取り組みと開発プログラム 米国では、1991 年に USABC(United States Advanced Battery Consortium:米国先進

バッテリー協会)が設立され、連邦政府と米国自動車会社大手(ビッグスリー)が電池会社

や研究開発団体に開発資金を提供する枠組みがスタートした。 1993 年に、米国内の自動車産業の国際競争力向上を目指して、2004 年までに燃費性能が

80 マイル/ガロン(33km/l)の先進的な中型ファミリーカーの量産車を開発する「PNGV(Partnership for a New Generation Vehicles)計画」が実施された。商務省主導のもとに、

エネルギー省を初めとする連邦政府関係省庁、自動車ビッグスリー、自動車部品会社、大学、

国立研究所などが参加して開発が行われた結果、1999 年にフォード社が高い燃費性能(60マイル/ガロン)、排気ガス低減、優れた航続距離(420 マイル)を備えたモデル P2000LSRを開発した。しかし、その後目標の燃費性能に到達しないまま、PNGV は終了予定の 2004年以前の 2002 年に終了し、新たに水素燃料電池自動車関連の技術開発に重点を置いた「プ

ログラム Freedom CAR 9 」が 2002 年から 2010 年までの予定で開始された。このプログラ

ムの中で電気自動車やプラグインハイブリッド車用の要素技術の開発が行われている。 その後、2008 年 10 月に、エネルギー省(DOE)はプラグインハイブリッド車用のリチウ

ムイオン電池を研究開発する新しいプログラムである「応用電池研究プログラム(ABR: Applied Battery Research)」を開始した。このプログラムの主な課題は、電池セルの材料開

発、電池寿命の研究、及び、電池の安全性についての 3 つである。 ・「グリーンニューディール政策」における次世代自動車システムの開発 オバマ大統領が、当選直後の 2008 年 11 月に、環境への大規模な投資を実施して新たな雇

用を生み出すための「グリーンニューディール政策」を発表した。この中心となるのは、(1)

スマートグリッドなどのエネルギー利用効率の向上や、太陽電池、風力発電などの再生可能

エネルギーの開発を目的とした政策、(2)ハイブリッド車や電気自動車に代表される脱石

油・省エネルギーの次世代自動車システムの開発の2つである。後者に関しては、2015 年ま

でにプラグインハイブリッド車を 100 万台にするなどの具体的な目標が打ち出された。 2009 年 1 月には、リチウムイオン電池の開発に関連した新しい積極的な施策がオバマ新

政権から打ち出され、DOE が、リチウムイオン電池材料の開発や製造のために 3 件のコス

ト共有プロジェクトを開始した(政府負担は 3 年間で 935 万ドル)。6 月にはフォード社、

米国日産社、テスラ社の各社の先端技術自動車製造に対して総計 80 億ドルの資金供与する

プログラムを発表した。このうち 16 億ドルが日産の電気自動車及び自動車用リチウムイオ

ン電池の製造に関するものである。 同年 8 月には DOE から、総額 7,870 億ドルの米国再生・再投資法案(ARRA: American Recovery and Reinvestment Act)の一環として、車載用二次電池の生産等を行う、自動車、

自動車部品、二次電池、電池材料の各メーカーや、電池リサイクル会社、大学、電気自動車

の試験導入団体などへ合計 24 億ドルの資金供与が発表された。これによると、資金供与を

受けるプロジェクトは 48 件で、先進的な蓄電池技術では、かつて世界で例のない規模の資

金支援である。これらのプロジェクトに基づき、米国の電池産業及び自動車産業に数万人の

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雇用が創出されると期待されている。24 億ドルのうち、15 億ドルは二次電池や電池材料を

生産するために米国内に工場を建設する企業や電池のリサイクル能力を拡大する企業への資

金供与である(表 4-1)。残りの 9 億ドルについては、5 億ドルが電気自動車用のモーターや

制御装置、部品を生産するメーカーへの資金供与であり、4 億ドルが電気自動車の性能・充

電評価や教育トレーニング用に導入する団体への資金供与である。 表 4-1 電気自動車用電池及び部品製造メーカーへの DOE 資金供与 [セル、電池、材料関連] メーカー 百万ドル 内容 Johnson Controls, Inc. 299.2 Ni-Co バッテリーセル、セパレータ製造 A123 Systems, Inc. 249.1 リン酸鉄正極、セル、モジュール製造 KD ABG MI, LLC 161 リチウムイオン電池製造(マンガン/グラファイト) Compact Power, Inc.(LG) 151.4 リチウムポリマー電解質二次電池製造(GM へ供給) EnerDel,Inc. 118.5 リチウムイオン電池製造

General Motors Corporation 105.9 LG のセルでプラグインハイブリッド車へ搭載する電

池パックの製造 Saft America, Inc. 95.5 産業・農業・国防用途のリチウムイオンセル製造 Exide Technologies 34.3 先進的鉛蓄電池製造 East Penn Manufacturing Co. 32.5 先進的鉛蓄電池製造

[先進電池関連] メーカー 百万ドル 内容 Celgard, LLC. 49.2 リチウムイオン電池用セパレータ製造 Toda America,Inc. 35 Ni-Co 正極製造 Chemetall Foote Corp. 28.4 炭酸リチウムと水酸化リチウム製造 Honeywell International 27.3 電解質(LiPF6)製造 BASF Catalysts, LLC. 24.6 Ni-Co 正極製造 EnerG2,Inc. 21 高エネルギー密度ナノカーボン製造 Novolyte Technologies,Inc. 20.6 リチウムイオン電池用電解質製造 Future Fuel Chemical 12.6 リチウムイオン電池用負極製造 Pyrotek, Inc. 11.3 リチウムイオン電池用炭素負極製造 H&T Waterbury DBA Bouffard Metal Goods 5 シリンダーセル用圧延アルミ製造

出典:DOE 資料(http://www.evpowersystems.com/Blog/9%2008%2005%20Awards%20List.pdf)に基づき、MCTR 作成 *2009 年 8 月時点の DOE 資料による。

(2)欧州 欧州の研究開発政策は、欧州連合(European Union : EU)の科学技術研究開発への財政

的支援制度である研究開発枠組計画(Framework Program : FP)が中心であり、現在は 2006年から 2012 年までの 7 年間で行われている第 7 次枠組計画(FP7、予算約 505 億ユーロ)

が進行中である。 リチウムイオン電池に関する欧州連合の研究開発プロジェクトとしては、2004 年から

2008 年に実施された「ナノ粉末とナノ複合電極及び電解質をベースにした先進的なリチウム

電池エネルギー貯蔵システム(Advanced lithium energy storage systems : ALISTORE)」

がある。このプロジェクトには 5 年間で 587 万ユーロが投じられ、欧州の 16 の研究機関か

ら約 50 名が参加して、ナノケミストリーを活用した先進的材料開発が行われた。 欧州連合のほかに、ドイツ等では、自動車用リチウムイオン電池に関する独自の産業政策

が行われている。 (3)中国 中国におけるリチウムイオン電池の研究開発プロジェクトは、1986 年に始まった「国家ハ

イテク研究発展計画(863 計画)」の中で実施されてきた。863 計画は、21 世紀初頭までの

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15 年間をかけて、バイオ、宇宙、IT、レーザ、自動化、エネルギー、材料の 7 つの先端分野

(その後海洋技術、農業技術などが加えられ現在 10 分野になっている)において、世界レ

ベルに追いつき追い越すことを目指し、先進的研究を国家プロジェクトとして推進するため

に始まったものである。現在、この計画は中国政府における五カ年計画の中の科学技術主体

計画の中に組み込まれており、2006 年に第 11 次五カ年計画(2006~2010 年)が開始され

た。 電池開発では、1998 年にリチウムイオン電池の自動車用への展開が決定され、2001~2005年の第 10 次五カ年計画でリチウムイオン電池の研究開発が強化された。小型・民生用で先

行しているコバルト系よりも、コストや安全性などの面で優れるマンガン系の正極材料を重

点的に検討し、2004 年に中国初のハイブリッド車用電池としてハイパワーリチウムイオン電

池が開発された。 電気自動車の製造では、2006 年に天津清源電動車両公司が、天津に中国 大の電気自動車

の製造開発センターを設立した。研究開発においても、2009 年 8 月に中国科学院の電気自

動車研究開発センターが上海に設立され、リン酸鉄系正極材料のリチウムイオン電池の研究

をはじめとした、先進的電気自動車用の要素技術を開発していく体制がとられている。 (4)韓国 韓国のリチウムイオン電池産業は、LG 化学が 1993 年に開発を開始し、1999 年に韓国初

のリチウムイオン電池の大量生産体制を構築した。次いで、三星 SDI が 2000 年に生産を開

始した。後発の SKC は、リチウムポリマー電解質二次電池に特化して、2002 年から本格的

に事業をスタートしている。 リチウムイオン電池産業で先行している日本に早急に追いつくため、韓国では電池メーカ

ーが技術開発を強化するとともに、韓国政府は 2004 年から「次世代技術開発戦略プログラ

ム」を開始し、その中にリチウムイオン電池の開発プログラムを組み込んだ。このプログラ

ムは、政府の産業資源部により次世代成長分野として、次世代電池のほかに、ディスプレイ、

知能型ロボット、未来型自動車、次世代半導体、デジタルテレビ放送/次世代移動、通信、

知能型ホームネットワーク/デジタルコンテンツ/ソフトウェア、バイオ新薬/臓器の各分

野が選択されている。次世代電池分野において、(1)超大容量リチウム二次電池技術の開発

を三星 SDI など 17 機関で、(2)ハイブリッド電気自動車用高出力リチウム二次電池の開発

を LG 化学など 16 機関で実施している。 2008 年に、現代自動車と三星 SDI(BOSCH との合弁の SB リモーティブ)、LG 化学、

SKC のバッテリーメーカー3 社に政府の知識経済部、自動車部品研究院が加わり、2013 年

までに政府支援のもとでプラグインハイブリッド車用のバッテリーを共同で開発する覚書が

交わされ、自動車用リチウムイオン電池に関する本格的な国家プロジェクトが開始された。 また、同じく 2008 年には、李明博新政権が環境保護と経済成長を両立させる「低炭素・

緑色成長」という新ビジョンを打ち出し、これに伴って今後の研究開発に関しても「先進一

流国家に向けた李明博政権の科学技術基本計画(2008~2010 年)」(通称 577 イニシアチブ)

が策定された。この計画の中で、特に重点的に緑色成長を実現するために 27 の重点的育成

技術が選ばれているが、電力効率性の向上という分類に高効率二次電池技術が組み入れられ

ている。

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第5章 リチウムイオン電池の市場動向

第1節 リチウムイオン電池の市場規模

リチウムイオン電池の世界市場推移(セル数量ベース)を図 5-1 に示す。リチウムイオン

電池の世界市場は、2008 年には約 29 億個であった。2009 年は不景気の影響もあり、若干

減少傾向にあるが、2010 年には市場は回復し、2012 年には約 37 億個に拡大すると予測さ

れている。 リチウムイオン電池の金額ベースの世界市場は、2008 年には約 8,700 億円であった。2009年には約 8,200 億円と減少するが、その後市場は回復して、2012 年には約 9,700 億円に拡大

すると予測されている。

図 5-1 リチウムイオン電池の世界市場推移(セル数量:億個)

20.35

25.03

31.54

34.53

37.33

28.73 28.00

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

(年)

(億個 )

出典:「2009 リチウムイオン電池メーカー動向と市場」(プレスジャーナル社)

リチウムイオン電池のセル数量ベースの国内市場は、2008 年には約 12 億個である。2009年は若干減少するが、2010 年には回復して、2012 年には約 15 億個に拡大すると予測され

ている。 リチウムイオン電池の金額ベースの国内市場は、2008 年には約 3,500 億円である。2009年は大きく減少するが、その後回復して、2012 年には約 3,600 億円に拡大すると予測されて

いる。 第2節 リチウムイオン電池の用途別市場動向

リチウムイオン電池の用途別世界市場(セル数量ベース)を図 5-2 に示す。リチウムイオ

ン電池の主な用途は、携帯電話、ノートパソコンをはじめ、電動工具、デジタルカメラ、携

帯ゲーム機、ポータブルオーディオプレイヤー、ビデオカメラなどである。リチウムイオン

電池は、上記のほかに、コードレス電話、電動自転車、電動バイク、電動車いす、フォーク

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リフト、腕時計、電動歯ブラシなど広範囲にわたり、使用されている。

図 5-2 リチウムイオン電池の用途別世界市場 (2008 年、セル数量ベース)

ノートPC31.0%

携帯電話45.1%

携帯ゲーム機3.7%

ポータブルオーディオ3.4%

ビデオ1.1%

その他7.9%

電動工具4.0%

デジタルカメラ3.8%

08年28.7億個

出典:「2009 リチウムイオン電池メーカー動向と市場」(プレスジャーナル社)

2008 年の数量ベースの世界市場は約 29 億個である。このうち、携帯電話向けが約 13 億

個で、次いでノートパソコン向けが約 9 億個で、この 2 つの用途で需要の約 3/4 を占める。 近、注目されているハイブリッド車、電気自動車などの自動車用リチウムイオン電池に

ついては、2009 年に一部で少量の量産がスタートしたが、本格的には 2012 年以降に立ち上

がると予測されている。 第3節 応用産業の動向

リチウムイオン電池の主な用途である携帯電話の世界販売台数は、2008 年に約 12 億個で

あったが、2009 年は若干減少し、2010 年から回復し、2012 年には 13 億個以上に拡大する

と予測されている。 ノートパソコンは小型・軽量のネットブックの普及とともに、市場を拡大しており、2008年の世界出荷量は約 1.4 億台である。2009 年も伸び率は下がるものの、出荷台数は減少する

ことなく順調に拡大を続け、2012 年には約 2.2 億台に達すると予測されている。なお、ノー

トパソコンの場合、1 台あたりのリチウムイオン搭載個数はおよそ 3~8 個といわれている。 電動工具の世界販売台数は、2008 年には約 19 百万台で、その後も安定した拡大を続け、

2012 年に約 23 百万台に達すると予測されている。 デジタルカメラの世界出荷台数は、2008 年には約 137 百万台に増加したが、2009 年は減

少し、その後ゆるやかに回復して、2012 年に約 140 百万台に達すると予測されている。 デジタルビデオ、携帯ゲーム機、ポータブルオーディオなどの出荷台数は、いずれも 2009年に若干の減少に転じた後、横ばい、または、ゆるやかに回復すると予測される。 近い将来に大きな市場を形成することが期待されている自動車用については、図 5-3 に示

すように、2010 年に立ち上がり、その後急速に増加して 2013 年には 1,000 万個超に達する

と予測されている。なお、この数量は自動車用電池パックの数量でカウントしている。平均

的な自動車用電池パック(20kWh)は、18650 型リチウムイオン電池 1,800~2,000 個に相

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当するので、18650 型1個の数量でカウントした場合では、市場規模(個数)が大きく異な

ることになる(プレスジャーナル社による)。 図 5-3 自動車用リチウムイオン電池の世界市場推移(パック数量:万個)

9.5

320

677

7

1,170

150

31

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(年)

(万個 )

出典:「2009 リチウムイオン電池メーカー動向と市場」(プレスジャーナル社)

第4節 リチウムイオン電池のメーカーシェア

2008 年の世界市場におけるリチウムイオン電池メーカーの市場シェアを図 5-4 に示す。

図 5-4 リチウムイオン電池メーカーの世界市場シェア(2008 年、セル数量ベース)

ソニー20.3%

三洋電機27.5%

BYD10.5%

パナソニックE10.3%

その他4.9%

三星SDI15.7%

LG化学10.8%

2008年28.7億個

出典:「2009 リチウムイオン電池メーカー動向と市場」(プレスジャーナル社)

2008 年におけるリチウムイオン電池市場は携帯電話やノートパソコンのような携帯機器

用を主体にしている。そして、この市場において、日本の三洋電機がトップメーカーで 27.5%のシェアを持つ。次いで、2 位にソニーが、その後に 3 位の三星 SDI、4 位の LG 化学と韓

国勢が続き、5 位に中国の BYD が続いている。パナソニック(旧松下電池工業)は日本勢と

しては 3 位、世界全体では 6 位である。

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次に、2008 年の世界での国別市場シェアを図 5-5 に示す。国別市場シェアは、図 5-4 にお

けるリチウムイオン電池メーカーの市場シェアをもとに作成した。なお、各国の電池メーカ

ーの数量には、海外生産分を含む。 図 5-5 リチウムイオン電池の世界での国別市場シェア(2008 年、セル数量ベース)

日本

58%

韓国

27%

中国

11%

その他

4%

図 5-4 のデータを参考にして MCTR で作成

リチウムイオン電池は日本のソニーにより世界で 初に実用化されたこともあり、1991年に電池を発売以来、日本勢が長年市場を占有してきたが、2000 年代に入り、韓国、中国勢

が電池の生産に注力してきたため、日本勢の市場シェアは減少傾向にある。 2008 年の世界での国別市場シェアは、日本勢が 58%を占有しており、現状ではまだ優位

な状況にある。しかし、技術開発で先行していた日本勢を韓国勢(27%)や中国勢(11%)

が追い上げており、近年、激しい国際競争が展開されている。特に、三星 SDI や LG 化学な

どの韓国勢は迅速、かつ強力なビジネス展開を行っており、近い将来大きなシェア変動が起

こることも予想される。 第5節 リチウムイオン電池の主要材料の市場動向

正極材料は、これまでコバルト系が主に使用されてきたが、コバルトの高騰などが懸念さ

れるようになり、ニッケル系やマンガン系、コバルト・ニッケル・マンガン 3 元系などが開

発されている。さらに、リン酸鉄系が開発されるなどさまざまな正極材料が検討されるよう

になってきた。2008 年の正極材料市場は、対前年比で 14%の伸びで約 2.7 万トンである。

2009 年は世界的な不況の影響もあり、若干落ち込むが、2010 年以降回復して年率 10%前後

で拡大し、2012 年には 3.6 万トンに達すると予測されている。正極材料の主なメーカーは、

国内では、日亜化学、AGC セイミケミカル、戸田工業等、海外では、ユミコア(ベルギー)、

LG 化学グループ等である。 負極材料の動向として、正極材料と同様にコスト削減のため従来の人造黒鉛から天然黒鉛

へシフトする傾向が見られる。2008 年の負極材料市場は、対前年比で 14%の伸びで約 8,900トンである。2009 年は世界的な不況で若干減少するが、2010 年から回復し、2012 年には

12,000 トンに達すると予測されている。負極材料のメーカーは、日立化成が 大手で、世界

の約 45%のシェアを確保しており、同社は 2010 年から自動車用途にも進出する。三菱化学

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は高容量炭素材料の生産能力を 2009 年に 3,000 トンから 5,000 トンに増設した。昭和電工

は電気自動車向けの負極材料として高性能黒鉛(SCMGR)を開発しており、2012 年に 3,000トンの生産を目指している。また、従来のカーボン系負極材料に比較してエネルギー密度を

高めることができるといわれている新規なシリコン系負極材料が開発されている(三井金属

鉱業など)。 リチウムイオン電池の電解質は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート

(PC)の環状カーボネート、及び、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖

状カーボネートの有機溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)や四フッ化ホウ酸リチウ

ム(LiBF4)などの支持塩を溶解して使用されることが も一般的である。2008 年の電解質

材料市場は、対前年比で約 15%の伸びで約 1.3 万トンである。2009 年は若干減少するが、

2010 年から再び拡大し、2012 年には約 1.7 万トンに達すると予測されている。電解質メー

カーは、1996 年に市場参入した宇部興産が機能性電解液でトップシェアを維持している。次

いで、同じく化学系企業である三菱化学が続いている。そのほかに、関東電化やステラケミ

ファのようなフッ素化学に強い会社がLiPF6を生産している。 近、注目されている自動車

用リチウムイオン電池は安全性が重要な要素であるので、難燃性溶媒であるイオン液体の開

発や、ポリマー系や無機系の固体電解質の開発が進められている。 セパレータは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主体に構成されて

いる。2008 年のセパレータ市場は 2.2 億m2の市場規模であり、2009 年は世界的な不況の影

響で若干減少するが、2010 年から再び拡大して、2012 年には約 3 億m2に達すると予測され

ている。セパレータの 大手メーカーは旭化成ケミカルズで、世界の約 5 割のシェアを占め

ている。次いで東燃化学、Celgard(米国)が続いている。なお、自動車用リチウムイオン

電池の安全性の確保に向けて、耐熱性のセパレータの開発が進められている。

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第6章 総合分析

第1節 特許出願動向調査の総括

リチウムイオン電池について特許出願動向を調査した結果、以下のような特徴が見られた。 ・日米欧中韓への出願件数は、2000 年以降、3,000 件弱と横ばいで推移している。調査期間

全体を通じると、日本国籍の出願件数が全体の 3 分の 2 近くを占めているものの、この間、

韓国籍の出願が増加しており、2004 年頃からは、中国籍の出願も増加し始めている。 ・中国国内への出願は大学、研究機関からの出願件数比率が他国に比べて多いことが特徴的

である。さらに、中国国内への出願は、出願件数、出願人の人数ともに増加しており、中国

国内においてリチウムイオン電池事業への新規参入が増加していることが示唆される。 ・日米欧の出願を比較すると、米国、欧州の出願人は出願件数は少ないものの高い比率で、

日米欧三極に出願している。一方、日本の出願人は出願件数は多いものの、三極に出願する

比率は少ない。中韓も自国への出願は多いものの、外国への出願比率はまだ高くない。 ・日米欧では、依然として日本の出願人が も多く出願をしているが、韓国ではほぼ日韓の

出願件数が拮抗しており、中国では中国籍の出願人に追い抜かれた可能性がある。 第2節 研究開発動向調査の総括

リチウムイオン電池に関する論文発表動向からみた研究開発動向を調査した結果、以下の

ような特徴が見られた。 ・1998 年から 2008 年までの論文発表件数が も多かったのは、日本国籍であり、21.7%で

あった。 ・2004 年以降は、中国からの論文発表件数が急激に増加しており、2006 年から 2008 年に

かけては、中国からの発表件数が国籍別で も多い。 ・研究機関別では、日本の産業技術総合研究所が 368 件で 1 位、京都大学が 280 件で 2 位、

中国科学院(中国)が 280 件で 3 位となっている。論文は、大学及び研究機関からの発表が

多い。 第3節 政策動向調査の総括

リチウムイオン電池に関する日本、米国、欧州、中国及び韓国の政策動向を調査した。各

国とも以下のように、リチウムイオン電池の技術開発を支援する政策を行っているが、特に

近年注目されるのは、米国における「グリーンニューディール政策」である。 ・日本 2007 年から 2011 年までの予定で「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発」

(Li-EAD)、並びに、2009 年から 2015 年の予定で「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」

の 2 つのプロジェクトが開始された。

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・米国 「グリーンニューディール政策」の発表後、2009 年 8 月に DOE から、米国再生・再投資

法案(ARRA)の一環として、車載二次電池等を生産する、自動車、自動車部品、二次電池、

電池材料などの各メーカー、電池リサイクル会社、大学などへ合計 24 億ドルの資金供与が

発表された。 ・欧州 欧州連合の科学技術政策である第 6 次枠組計画(FP6)の中で、リチウムイオン電池に関

する研究開発が 2004 年に開始され、「ナノ粉末とナノ複合電極及び電解質をベースにした先

進的なリチウム電池エネルギー貯蔵システム(ALISTORE)」の研究開発が 2008 年まで実施

された。 ・中国 1998 年以来、コバルト系よりもコスト、安全性などで優れているマンガン系正極材料を用

いた自動車用リチウムイオン電池の開発を重点的に推進し、2004 年には中国初のハイブリッ

ド車用リチウムイオン電池が開発された。2009 年から、中国科学院の電気自動車研究開発セ

ンターがリン酸鉄系正極材料を用いた先進的電気自動車用リチウムイオン電池の開発を開始

した。 ・韓国 2004 年から開始した「次世代技術開発戦略プログラム」の中で、(1)超大容量リチウム

二次電池技術の開発、(2)ハイブリッド電気自動車用高出力リチウム二次電池の開発が実施

されている。また、2008 年 8 月に、現代自動車と韓国のリチウムイオン電池メーカー3 社が

政府及び国関連研究機関と共同で、2013 年を目標にプラグインハイブリッド車用蓄電池を開

発するための本格的な国家プロジェクトを開始した。 第4節 市場動向調査の総括

リチウムイオン電池市場動向は以下の通りである。 ・リチウムイオン電池の世界市場は、2009 年は減少するが、その後回復して、市場が拡大す

ると考えられる。 ・リチウムイオン電池の用途は、携帯電話、ノートパソコンが主であり、この 2 つの用途で

約 3/4 を占めている。 ・今後、自動車用のリチウムイオン電池が大きな市場を形成することが期待されている。 ・日本企業は、従来はリチウムイオン電池市場で大きなシェアを占めていたが、近年中国及

び韓国が急速にシェアを伸ばしている。 ・しかし、現在のリチウムイオン電池の電池材料市場では、正極材料、負極材料、電解質及

びセパレータは、いずれも日本の企業が世界シェアの多くの部分を占めている。

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第5節 リチウムイオン電池に関する提言

リチウムイオン電池は作動電圧が高く、大容量で、軽量な二次電池である。1991 年にソニ

ーが世界で初めて発売して以来、携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器を主な用途とし

て、ニッケル水素電池などの他の二次電池に代替して、市場を拡大してきた。 一方、地球温暖化問題は世界的に 21 世紀の大きな課題となっている。二酸化炭素ガスの

排出量削減に向け、今後、急速にエンジン自動車からハイブリッド車や電気自動車へ転換さ

れていくと予想されている。そして、ハイブリッド車や電気自動車への移行において、リチ

ウムイオン電池がキーデバイスになると予想されており、リチウムイオン電池は今後も、優

れた二次電池として進展していくことが予想されている。 我が国はリチウムイオン電池の技術開発で先行し、発売以来、市場をほぼ占有してきたが、

近年、中国や韓国に激しく追い上げられている。我が国はリチウムイオン電池分野において、

今後も優位性を維持・拡大するためには、戦略的に技術開発することが必要であると考えら

れる。 今回、リチウムイオン電池に関する特許出願動向等を中心に、特許出願については出願年

(優先権主張のあるものは優先日)が 1998 年から 2007 年、論文については発行年が 1998年から 2008 年のものを対象として調査し、また、政策や市場については、2009 年前半まで

の状況を調査した。これらの調査結果に基づき、我が国におけるリチウムイオン電池の特許

出願に関する課題とその対応について、提言1で市場シェアアップに結びつく戦略的特許出

願の実施、提言2で海外への積極的な特許出願の実施、提言3で大学・研究機関における特

許出願の重視について、以下の提言を行う。 提言1 市場シェアアップに結びつく戦略的特許出願の実施

我が国のリチウムイオン電池メーカーは、市場シェアの面で中国、韓国に追い上げられて

いる。一方、特許出願件数において、これまで多くの国で我が国が優位であったが、近年、

例えば、中国への出願においては中国からの出願件数と日本からの出願件数の逆転が予想さ

れる。電池メーカー及び電池関連メーカーは、今後、技術開発力をより一層強化するととも

に、市場のシェアアップに結びつけることができるように戦略的に特許出願することが望ま

れる。

・リチウムイオン電池市場は現在、携帯電話やノートパソコン等の携帯機器用の小型電池市

場を主体として、厳しいビジネス競争が行われている(図 5-2 を参照)。 ・小型電池市場において、1991 年の発売以来、日本勢が市場をほぼ占有してきたが、近年、

韓国、中国勢に追い上げられて市場シェアを落としている。現状では、欧米勢のシェアは大

きくない(図 5-5 を参照)。 ・この間の特許出願状況や、論文発表件数について見てみると、韓国、中国勢、特に、中国

勢はこの数年間事業化を念頭においたリチウムイオン電池の技術開発を強化しており、特許

出願件数及び論文発表件数が急増している(図 2-7、図 2-8、図 2-9、図 3-1 を参照)。 ・一方、リチウムイオン電池の正極、負極、電解質、セパレータ等に関して、日米欧中韓へ

の出願を合わせると、日本勢は海外勢に比べて特許出願件数においては優位性を維持してい

る(図 2-17 を参照)。

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・リチウムイオン電池は今後、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に本格的に採用

されることで、市場が急激に拡大すると予想されており、市場参入を目指すメーカーが急増

し、国際競争がより一層激化することが予想される。 ・したがって、我が国の電池メーカー及び電池関連メーカーは、小型電池市場での経験を活

かして、今後の厳しい国際競争に打ち勝つために、技術開発力をより一層強化することが必

要である。 ・また、特許出願においても、電極活物質など物質に関する特許出願を重視するとともに、

製法特許についても戦略的に出願するなど、現時点での特許面での優位性を維持しつつ、今

後市場のシェアアップに結びつけることができるような特許を戦略的に出願することが期待

される。 提言2 海外への積極的な特許出願の実施

今後、成長が期待されている自動車用リチウムイオン電池は海外勢(米欧中韓)との激し

い国際競争が予想される。リチウムイオン電池産業は自動車産業と同様にグローバル化が求

められる産業である。我が国の電池メーカー及び自動車メーカーは今後、従来以上に積極的

に海外へ特許出願することが望まれる。 ・調査時点における特許出願状況から推察される事実は以下のとおりである。 ・出願人国籍別三極コア出願件数を日米欧で比較すると、日本国籍出願人は 790 件、米国籍

は 225 件、欧州国籍は 174 件と日本国籍が圧倒的に多い。しかし、出願年推移を見ると、日

本国籍出願人の三極コア出願件数は 2000 年をピークに減少傾向にある。また、三極コア出

願件数比率でも、日本国籍出願人は約 7%、米国籍は約 31%、欧州国籍は約 40%と米欧国

籍出願人に比べて比率が低い。(表 2-3、図 2-14 を参照) ・中国への出願では、過去を含めると日本国籍出願人による出願件数は 42%と も多い。し

かし、中国勢が着実に出願件数を増やしている。中国への出願において、前期(1998~2001年)、中期(2002~2004 年)、後期(2005~2007 年)に分けて出願比率を比較すると、日本

国籍出願人の出願件数比率は、51%、47%、33%と減少傾向を示している(図 2-7、図 2-11-d)を参照)。 ・一方、米国への出願では、日本国籍出願人の出願件数比率は横ばいであるが、韓国勢は着

実に出願件数比率を高めており、米国を意識した特許出願を行っていると推察される(図 2-5、図 2-11-b)。 ・今後、自動車用途をはじめ、電力貯蔵用途などがリチウムイオン電池市場を牽引して、市

場が大幅に拡大することが期待される(図 5-3 を参照)。 ・例えば、米国では、現在、オバマ政権がグリーンニューディール政策を強力に推進してお

り、その一環として、米国内で自動車用リチウムイオン電池を生産する企業に対し、自動車

用リチウムイオン電池の設備投資に対する資金支援プログラムを展開している(表 4-1 を参

照)。 ・上記のようにリチウムイオン電池産業が将来有望であると予想される結果、多数のメーカ

ーが自動車用リチウムイオン電池へ参入し、我が国の電池メーカーや自動車メーカーはリチ

ウムイオン電池市場において、今後海外勢(米欧中韓)との厳しい国際競争に巻き込まれる

ことが予想される。

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・自動車産業はグローバル産業であるため、自動車用リチウムイオン電池は、今後海外での

生産及び販売がより一層加速することが予想される。我が国の電池メーカー及び自動車メー

カーは、今後の厳しい国際競争に打ち勝つために、グローバルな視野を持って、自動車用リ

チウムイオン電池の事業戦略を展開することが重要である。 ・知的財産面での対応策として、海外への特許出願をより一層積極的に行うことが望まれる。 また、製造方法などの特許出願は、ノウハウの流出を招くとの意見もあるが、技術流出は避

けられないとの指摘もあり、製造方法であっても、ノウハウとして保護するものと特許出願

するものとを、より戦略的に区別して管理すべきである。 提言3 大学・研究機関における特許出願の重視 リチウムイオン電池の基礎研究において、我が国は欧米に対して優位にあるとは言えず、

近年においては中国、韓国にも追い上げられている。我が国の大学・研究機関は今後リチウ

ムイオン電池を中心に、ポストリチウムイオン電池を視野に入れた蓄電池の基礎研究をより

強化するとともに、新規活物質材料や電池構造など基礎研究の成果が基本的特許の出願に結

びつくように努めることが望まれる。 ・特許出願件数と論文発表件数を日米欧中韓で比較すると、特許出願では日本国籍出願人が

米国籍、欧州国籍、中国籍、韓国籍の各出願人に対して出願件数の面で優位にある(図 3-3を参照)。 ・一方、調査時点の論文発表件数では日本勢は海外勢(米欧中韓)に対してほぼ拮抗してい

る。 しかし、中国の研究者による 近の論文発表件数の伸びを見ると、日本勢はすでに中国

勢に追い抜かれているのではないかと推察される(図 3-1 を参照)。 ・さらに、日米欧中韓の各国への特許出願件数に占める大学・研究機関の特許出願件数の比

率を比較すると、日本は約 2%で、米国(約 15%)、欧州(約 15%)、中国(約 45%)、韓国

(約 14%)に比べて大幅に少ない。 また、中国勢(544 件)、韓国勢(255 件)と比較して、

日本の大学・研究機関(187 件)は特許出願件数でも劣勢にある(図 2-12 を参照)。 ・上記のように、リチウムイオン電池の基礎研究において、我が国が海外勢に比べて相対的

に優位にあるとは言えない。 ・今後、中国の大学・研究機関での基礎研究が、電池メーカーの技術に結びつくことで、中

国からの特許出願が増加することも予測される。 ・また、米国では、大学・研究機関が開発した基礎研究の開発成果をベンチャー企業等が実

用化することが多いといわれている。 ・我が国の大学・研究機関は、次世代リチウムイオン電池の開発等、リチウムイオン電池を

中心に、ポストリチウムイオン電池も視野に入れた蓄電池の基礎研究を強化することが望ま

れる。 ・リチウムイオン電池は関連する電池材料が多様であり、今後も基礎研究に基づいた基本的

な特許が出願される余地が多く残されており、基本的な特許の出願に努めることが望まれる。 ・また、例えば、リチウムイオン電池の性能評価手段、実験環境の整備などにおいて、より

一層の産学官連携を行うことや、新規電極活物質や電池構造など基礎研究の成果が実用化に

活かされるように、研究成果を論文発表するとともに、基本的な特許を出願することが期待

される。

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