3dデータからのものづくり研究会中間報告(サマリ編) シグ … ·...
TRANSCRIPT
3Dデータからのものづくり研究会 中間報告(サマリ編) 2013年10月
シグマクシス パートナー 柴沼俊一 資料4
サマリー1.3Dモノ作りは、技術革新だけではなく、バリューチェーンを対象としたビジネスモデル革新。
2.ビジネスモデル革新の価値源泉は、バリューチェーンの段階ごとに存在。- アイデア創出: アイデアの共創- 販売予約・資金調達: クラウドファンディング- 設計・試作: データと形・形状によるコミュニケーション- 量産: カスタマイズド・マニュファクチャリング
3.4つの価値源泉が影響する度合は、意匠品、機能品、匠の品で異なる。- 意匠品: 4つの価値源泉全部が影響- 機能品: 設計・試作及び量産段階では金型と3Dプリンターを併用。併用度合は金型での
暗黙知を形式知化するスピードと3Dプリンター・材料の進化スピードで変化- 匠の品: 影響なし
4.日本は、機能品を中心に、誰かの指示で製造するのではなく、製造を指示する世界の開発センターになっていく。世界の開発センターになるシナリオは3つ。- 新たな3Dものづくり技術・材料の開発- 金型/加工と3Dものづくりのコラボレーション促進- バリューチェーンのオープン化と再編集によるビジネスモデル構築
5.人材育成・知的財産・場/ネットワークの課題は早期解決により、先行者利得を獲得すべき。- 人材育成: 若い頃から3Dものづくりに接する機会を作る など- 知的財産: 3D化・オープン化によって発生する課題の解決 など- 場・ネットワーク: 世界他地域に負けない環境作り など
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 2
3Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
アプローチ
1. “メイカーズムーブメント”とは何か?今何が起こっているか?
2. 本ムーブメントにより、社会・産業構造はどのように変わるのか?
3. 日本国として、産業競争力を復活させるために、何をすべきか?
過去の構造変化のアナロジー(インターネット革命)
現在出現しているサービス・プレイヤーの把握
“メイカーズムーブメント”とは何か?今何が起こっているか?
4Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
クラウドファンディング
ネットを活用した販売・マーケティング
安価な3Dプリンタ登場3Dプリンタの性能向上
3Dものづくり(デザイン・製造)ツール群の発達
デザイン~販売まで含めたバリューチェーン全体の進化
3Dモノ作りは、技術革新だけではなく、バリューチェーンを対象としたビジネスモデル革新
• より異形状な部品の設計が可能
• より小額の投資で、3Dモデルデータ印刷が可能
• 完全カスタマイズ製品の開発(3Dスキャナ+3Dプリンタ)
• 資金力・チャネルがなくても、デザイン力があれば、メーカーになれる
何が新しいのか?(検討論点)
3Dプリンター
・・
・・
3Dスキャナ
3DCAD
CAE
CNC
加工機
エレクトロニクス
・・
クラウドソーシング
バリューチェーン全体の進化
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 5
(カスタマイズド・マニュファクチャリング)
• 個別ニーズに合わせて、製品を製造
これまで これから
自ら発案
潜在顧客へのインタビュー資金保有者
設計図
金型
他者と共創
顕在顧客への予約販売
3Dプリンター
(金型併用)
3D CAD
(アイデアの共創)
• デザインをオンラインでコミュニティで共有し、仲間の協力で進化
(データとモノ/形によるコミュニケーション)
• 3D CAD・プリンターを用いて、安価かつ迅速にモノを試作・テスト
アイデア創出
資金調達市場調査
設計
試作・テスト
小ロット生産
(クラウドファンディング)
• 購買客への予約販売で、確実な市場調査と資金調達の実現
価値の源泉
ものづくりのスピード化・個別化、販売確率の向上、資金調達の容易化によって、ものづくりのビジネスモデルが変化している
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 6
先端プレーヤー
小ロット生産を支えるプレーヤーと自社利用プレーヤーが出現
Kick starter Quirky
✔
✔
✔
Ford
プラットフォーム提供 自社利用
✔ ✔
Widex
✔
アイデア創出
資金調達市場調査
設計
試作・テスト
小ロット生産
他者と共創
顕在顧客への予約販売
3Dプリンター
(金型併用)
3D CAD ✔ ✔
✔
R&D効率改善個別モノ作り設計~量産支援アイデア~資金調達
✔
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 7
会社名ロゴ
Kick starter
設立年 2009年
主な事業 •作りたいモノのアイデアを投稿し、モノ製造に賛同する人々から一定金額を資金調達することを支援するサイトを運営
本拠地 アメリカ、ニューヨーク
業績・その他事業規模関連情報
•創業から4年間で、200万人からの資金提供有り
•300億円がプロジェクトにつぎ込まれ、モノの製造が行われた
ビジネススキーム概要
製品事例
情報元:
先端プレーヤー~Kickstarter
登録したアイデアに対し、販売予約という形で資金調達支援を行う。
Kickstarter
アイデア登録調達希望額設定
一定期間に質問、資金提供
提供金額に応じ、対価が得られる
発明家
資金提供者
調達希望額を超えると資金獲得
商品化
• 27.5万台販売予約、約10億円の調達 (通常は100万円前後)
Pebble watch
• Iphone/androidと連動• メール受信などのアラーム• 加速度センサー付• 防水加工
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 8
•キッチン用品、携帯電話アクセサリー、簡単な電子機器等、幅広い製品を販売
会社名ロゴ
Quirky
設立年 2009年
主な事業 •ソーシャル製品開発支援サービスとマーケットプレイスが一体となったQuirky.comの運営
本拠地 アメリカ、ニューヨーク
業績・その他事業規模関連情報
•2013年現在までに362個のアイディアが製品化された
•43万人規模の発明者コミュニティを保有
•アイディア申請から製品販売開始までの平均リードタイムは120日 (通常は約2年程度)
ビジネススキーム概要
製品事例
USBポート付モニター台 ポータルブルデスクライト
情報元:Quirky.com および http://techonomy.com/よりSX作成
Quirky
製造販売
一般消費者
製品
¥代金
¥報酬*1
アイディア申請
製品化支援
発明家
支援者コミュニティ
製品化支援
¥報酬*1
¥申請料
*1:報酬は製品化した場合のみ支払。Influence(アイデア、品質向上、販売促進)に応じ支払う。
先端プレーヤー~Quirky
ソーシャル製品開発サービスを提供するクラウドソーシングサービサー。自社内に製品設計から量産支援まで可能な人材・設備を抱えている
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 9
先端プレーヤー 自社活用
3Dプリンター等を活用した完全カスタマイズ補聴器
• CAMISHAという3Dスキャナと3Dプリンター等を複合した仕組みにより耳あな型補聴器のシェル(外形部)を設計・製造
• 短期間かつ手戻り少なく、フィット感の高いシェルを製作することが可能
Widex社(デンマーク)
出典:以下のサイトの情報を基にSX作成
企業・団体名 事例の概要 イメージ画像
安価な3Dプリンターを活用した技術者の設計・試作QCDの向上
• 2012年12月、Fordは社内の全てのエンジニアにローエンド3Dプリンターを配布することを決定
• エンジニア一人一人が実物を手に取り検討することによって、設計品質向上・期間短縮を達成することが狙い
Ford社
http://edition.cnn.com/2012/11/09/tech/hearing-aid-widex-3d-printinghttp://gigaom.com/2012/12/21/ford-engineers-have-3d-printers-on-their-desks-when-will-you-get-one/
3Dプリンターを活用して試作プロセスの改善や個別製品製造を実施。
インターネットの進化(これまでの変遷・次世代仮説)
10Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
インターフェース
広帯域化
プラットフォーム化
スマホ
SNS
ウェアラブル
データ解析進化
パーソナル化ネットワーク化
成熟期ステルス化
拡大期
現在
3Dものづくりの進化は、インターネットと同様の進化を遂げるはず。但し、進化スピードは、何が進化ドライバーなのかによって左右される。
安価3Dプリンター
簡易3D CAD、3Dスキャナー
ものづくりプラットフォーム(設計ライブラリー、
デザイン、設計等)
サポートサービス(品質保証、知財管理、人材確保、資金調達)
大衆ユーザーへの浸透(一家に一台)
製造企業での新旧交代
配送ではなく、自宅製造
モノ作りに必要なデータの標準化(設計、解析データ等)
インターネット
3Dものづくり
ムーアの法則
現在
何がドライバーなのか? スキャナー、CAD、プリンター、材料など?
大手製造業
11Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
日本が目指すべき“3Dものづくりの世界”
競合プレーヤー、日本のものづくりの強みを鑑み、機能品での世界の開発センターを目指していくべき
アイデア
設計
試作テスト/マーケ
小ロット生産
資金調達
大量生産
複雑度・要求品質低 高
意匠品 機能品
EMSローコストプレーヤー
クラウドファンディング(例 Kickstarter)
メーカーズプラットフォーム(例 Quirky)
匠の品
変化ない世界
クリエイター
世界の開発センター
世界の開発センターになるオプション
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 12
アイデア
設計
試作テスト/マーケ
小ロット生産
資金調達
複雑度・要求品質低 高
オープン化アイデアの共創
クラウドファンディング
データとモノ/形によるコミュニケーション
カスタマイズドマニュファクチャリング
価値の源泉
製品の特性に応じ、世界の開発センター像は異なる。オプションの選択が必要。
伝統工芸品F1部品
ロケット部品オーダーメイド車・バイク部品
コネクタスマホ・車部品
オーダーメイド゙時計医療人体模型
趣味・アクセサリーキッチン用品
航空機燃料噴射装置
ローエンド意匠品
ハイエンドカスタム意匠品
ミドルエンド機能品
ハイエンド機能品
匠の製品
3Dプリンター
(低性能)
3D プリンター
(高性能)
+3D金型/3D切削
金型/加工
3D CAD/3Dスキャナ 2D図面
加工
オプション1
オプション2
オプション3
新たな3Dものづくり技術・材料の開発
金型/加工と3Dものづくりのコラボレーション促進
バリューチェーンのオープン化と再編集によるビジネスモデル開発
大量生産
オプション実現に向けた取組みポイント
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 13
オプション1
新たな3Dものづくり技術・材料の開発
オプション3
バリューチェーンのオープン化と再編集によるビジネスモデル開発
オプション2
金型/加工と3Dものづくりの
コラボレーション促進
シナリオ実現に向けた取組ポイント
• 開発すべき注力技術分野の特定(例 金属造形)
• ゴール、ロードマップ、体制作り(例 主要プレーヤー巻込み)
• (企業側として)ビジネスモデル、知財戦略などの策定・実行
• 3Dプリンターと金型製作・切削加工の併用効果の最大化
- 実力のあるプレーヤーを巻込み・共同開発
- 後継者問題で失われる暗黙知の形式知化(3Dデータ化)
・ 技術・ノウハウを持つ中小企業に、シナリオ3のオープンサービス活用を支援
• アイデア創出、設計、試作・マーケティング、量産の一連の流れをコーディネートするプレーヤーが、生態系を構築することが必要。
• 生態系では、参加者メンバーがWin-win関係を築けるように、収益配分、知財保護、品質保証の仕組みが必要。
• 大企業などが生態系を活用する場合には、知財、製品化プロセスなどで、他社と連携するオープンモデルにシフトする必要あり。
オプション毎に取組みポイントが異なるため、適切な推進体制を作ることが大事。
+
+
14Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved.
オバマ政権における取組み施策
製造イノベーション政策
• 基礎研究が商用化に繋がらない「技術のデスバレー」を克服するために、産官学の連携を強化- R&Dと製造プロセスの近接による
双方向コミュニケーションがイノベーションには必要
-国内製造プロセス維持が必要
• 米国製造業再生計画(2012年7月)で先端技術を開発・運営するNPO機関を各地に設置- 製造イノベーション機関(IMI*1)- 全国ネットワーク構想(NNMI*2)
(上記以外に、学校に3Dプリンターの配布などを実施)
*1:Institute for Manufacturing Innovation*2:National Network of Manufacturing Innovation
「技術のデスバレー」の解決に産官学連携が必要。
資料) Blueprint for Action: Workshop on the Design of the National Network for Manufacturing Innovation
先端分野を中心に、国が技術のデスバレーを乗り越えていく支援策を採用。
世界の開発センターに向けたシナリオ横断課題
Copyright 2013 SIGMAXYZ Inc. all rights reserved. 15
人材育成
知的財産
場ネットワーク
• 10代から3Dものづくりに親しむ教育環境を整備。(例 ものづくりを体験する課外カリキュラム 等)
• 3Dものづくりの中小企業への浸透促進。(例 事業者認定制度、融資格付け基準への取り込み 等)
• 3Dものづくり人材のスキル基準設定。
• 取引者間での取り決めで知的財産問題は解消することが前提。
• 3Dものづくりの論点は、以下の2つ。①3D固有データの取り扱い②公知前出願とオープンイノベーションのトレードオフ
• 世界の開発センターの戦いは、世界地域との3Dものづくり環境の競争。
• 競争のポイントは、以下の3つ。①どれだけグローバルのリーダー人材・企業と繋がっているか②最も3Dものづくりに適した環境として進化し続けられるか③実際に力のある人材・企業がクラスター化しているか
考え方、検討課題例
上記の検討に加え、外部環境整備として、企業経営が自前主義から脱却し、他社と連携する意識と能力を高めることが大事。また、個人についても、企業組織に属するのではなく、創意工夫にチャレンジする自立人財に成長することが大事。
いずれの課題も世界の他地域よりも早く動くことで、先行者利得を確保すべき。