co2 ch4 n2o co n2o...よるch4、n2o、co の排出、農地への転換に伴うn2o...

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ⅩⅢ.カナダの森林吸収量の算定・報告の情報について I.条約の下での森林吸収量の算定・報告の情報 1 基本事項 ○ カナダのLULUCF分野のGHG排出/吸収量は、CO2 のほか、山火事及び火入れに よる CH4N2OCO の排出、農地への転換に伴う N2O の排出などが含まれており、 2008 年は、差し引き 13 メガトン吸収が排出を上回った(table 7-1 参照)。この数値がカナダの 全GHG収支(734 メガトン)に加えられるとGHG排出が2%減少する。この分野では、 毎年大きく収支が変動する部門があるため、総計でも大きな変動を示している。特に森林 分野の影響が一番大きく、19年間のうち10年は収支がマイナス(吸収)で、残る年は プラス(排出)であり、近年はプラスの年が増えている。排出は山火事によるものが大き い。 ○ LULUCF分野での推計の改善の努力は継続して進められ、この報告にも反映され ている。LULUCF 分野の MARS (Monitoring, Accounting and Reporting System)(モニ ター集計報告システム)システムにおいて、各方面の科学者や専門家のグループを束ね、 調整、計画を行っている。不確実性の推計等の改善努力がこのシステムの元で継続されて いる。 ○ 今回は LULUCF の推計が気候変動条約と京都議定書の両方のもとで出される最初の 年である。しかし、LULUCF の推計に当たっては同じ定義、手法が使われたので、京都議 ― 252 ―

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Page 1: CO2 CH4 N2O CO N2O...よるCH4、N2O、CO の排出、農地への転換に伴うN2O の排出などが含まれており、2008 年は、差し引き13 メガトン吸収が排出を上回った(table

ⅩⅢ.カナダの森林吸収量の算定・報告の情報について

I.条約の下での森林吸収量の算定・報告の情報

1 基本事項

○ カナダのLULUCF分野のGHG排出/吸収量は、CO2 のほか、山火事及び火入れに

よる CH4、N2O、CO の排出、農地への転換に伴う N2O の排出などが含まれており、2008

年は、差し引き 13 メガトン吸収が排出を上回った(table 7-1 参照)。この数値がカナダの

全GHG収支(734 メガトン)に加えられるとGHG排出が2%減少する。この分野では、

毎年大きく収支が変動する部門があるため、総計でも大きな変動を示している。特に森林

分野の影響が一番大きく、19年間のうち10年は収支がマイナス(吸収)で、残る年は

プラス(排出)であり、近年はプラスの年が増えている。排出は山火事によるものが大き

い。

○ LULUCF分野での推計の改善の努力は継続して進められ、この報告にも反映され

ている。LULUCF 分野の MARS (Monitoring, Accounting and Reporting System)(モニ

ター集計報告システム)システムにおいて、各方面の科学者や専門家のグループを束ね、

調整、計画を行っている。不確実性の推計等の改善努力がこのシステムの元で継続されて

いる。

○ 今回は LULUCF の推計が気候変動条約と京都議定書の両方のもとで出される 初の

年である。しかし、LULUCF の推計に当たっては同じ定義、手法が使われたので、京都議

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定書に関して特に別の章を設けて論じてはいない。

○ 森林には 少面積1ha、 低樹冠被覆率 25%、 低樹高 5m の土地が含まれる。カナ

ダではすべての森林が「管理された森林」に含まれるのではない。GHGインベントリの

ためには「管理された森林」とは、木材及び非木材資源(公園を含む)のために管理され

た森林、または森林火災防止のもとにある森林である。

○ LULUCFの管理された土地の間での 2008年の土地利用の転換は table 7-3の通りであ

る。

○ 特定の土地利用転換、例えば「森林から農用草地への転換」は発生し得ない。なぜな

ら、定義上、自然に森林となるような土地は草地から除外しているからである。ただし、

その逆(草地から森林へ)は起こり得る。もっとも、農用草地の森林への人為的な転換は見ら

れていない。また、管理されていない土地は、一度管理されると、その後管理されなくな

っても「管理された土地」に分類され続ける。公園や、保護された土地は「管理された土

地」に分類される。LULUCF 推計のための報告ゾーン(全国を18ゾーンに分けている)

は、これはカナダの陸地エコゾーン(Marshall and Shut 1999)と基本的に一致している

○ LULUCF の推計に使われるそれぞれの土地カテゴリーには違いがあり、地理的フレー

ムワークで不一致が存在するので、活動データと推計が地理的に不一致となる危険性が伴

う。

○ 各推計システムはそれぞれ違う分析ユニットをもっている。「管理された森林」の場合

の分析ユニットは、州、準州の森林調査の管理ユニットと同じであり、全国に 542 ある。

農地の場合、全国土壌データベースがあり、土壌型のほか、土壌炭素の含有量などの情報

が記述されている。これらの土壌に関する情報は、土壌景観(Soil Landscape)を形成し、

土壌景観は地理的に集まってSLC(Soil Landscapes of Canada)ポリゴン(=分析ユニッ

ト)となる。このポリゴンは 1~1000 千 ha 台の大きさで、百万分の一の地図で表記される。

SLC はまた、カナダの生態学的フレームワークの基礎ユニットにもなっている。

森林から他の土地利用への転換の推計のための分析ユニットは、予想される森林減少割合

とその性質、行政界をベースに開発された。森林の転換をモニターするために使われるサ

ンプル方式では、分析ユニットが1)森林変換のパターンとできるだけ一致し、2)十分

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なサンプルの大きさがとれるだけの大きさがあること、が求められる。LULUCF では18

の報告ゾーンがあるが、これはエコゾーンと一致している。この算出方法、データの詳細

は McGovern(2008)に詳しい。

森林面積の変化は後述のように、1975 年、1990 年、2000 年のランドサット情報を使い、

州により、サンプリングの密度は違うが、サンプル方式で把握しており、このランドサッ

トデータを使う年以外の年は、内挿、外挿で推定している。

データの情報源

(管理された森林について)

必要な情報は州、準州が森林インベントリデータなどの詳しい情報を提供している。また、

New Brunswick, Manitoba, Saskatchewan, Alberta, Yukon, Northwest Territories につ

いては、国家森林インベントリの森林データが使われている。Prince Edward Island,

Quebec, British Columbia など7州では、高解像度のインベントリデータが提供されてい

る。各州、準州からのインベントリをどう編纂するかについて、いくつかの論文が出され

ている。また、調査年が違うインベントリの 1990 年への調整が行われた。

森林を木材、非木材のために管理活動をしているか、攪乱に対する防止のレベルにより、

管理された森林と、非管理の森林に分けている。

実際の区分の作業は、森林経営ユニット、木材供給地域、ツリーファームライセンス、産

業用木材生産地、私有林、その他木材、非木材のために管理されている森林など多くの境

界を組み合わせ、森林インベントリデータと重ね合わせており、具体的な手順は Stinson et

al. (2006b)を参照されたい。また、管理された森林と非管理森林の位置は、図 A3-7 が示し

ている。

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森林管理活動は国家林業データベースに記載されている。追加的情報は、州、準州政府か

ら得られる。過去の山火事の記録は Canadian Large Fire Database による。1990~2003

年の追加的情報は各州、準州から、2004~2008 年は Canadian Wildland Fire Information

System’s National Burn Area Composite (NBAC)による。NBAC は低中解像度のリモー

トセンシングデータと火事地図化データで、カナダで収集可能なデータに基づきすべての

山火事をカバーしている。中解像度のデータが得られる場所では、それを用いて資源管理

機関のデータは二次的に使用している。また、低解像度のデータは、他のデータがえられ

ないところでのみ使用されている。

虫害は航空写真でモニターされている。この中から、影響のない区域を除き、影響のある

面積を推定し、虫の種類により、枯死または木の成長への影響で、影響の強度を3~4段

階に分けている。

(森林の他の用途との転換の把握)

森林から他の利用への変化の把握方法には3つあり、①リモートセンシング画像のシステ

マチックなまたは代表サンプリング、②記録、③専門家の判断 である。中心となる方法

は、1975, 1990, 2000 年のランドサット画像から森林伐採箇所を地図に落とす方法である。

2つの異なる時点で違いが現れた箇所をチェックし、 初は森林で、その後、森林の被覆

が変わったのか用途が変わったのかを判断する。この判断のために他のリモートセンシン

グデータ(デジタル航空写真、雪のある冬のランドサットデータなど)や副次的データ(道

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路、居住地、鉱山、土砂採取など)を活用し、比較している。

1ha 以上の森林減少箇所はそれ以前の森林タイプと、新しい土地利用の状況が記録される。

森林の他の利用への転換のモニタリングは、管理された森林だけでなくすべての森林を対

象に行っている。これは、その地域での森林の転換の頻度や、転換の原因により、サンプ

ル調査から、完全な地図化までレベルが異なる。たとえば、南ケベックでは、12.3%のサン

プル比率で 10km のグリッド上に 3.5×3.5kmのサンプルセルで調査をしている。調査対

象面積は 326Mha で、うち 16Mha は、1975~1990 年について地図化しており、1990~2000

年について 43Mha は地図化しており、2000 年以降の分は現在取り組み中である。森林の

転換が比較的少ない地域(ケベックの東部市街地など)や、林業地域で人口が少ないとこ

ろでは、代表サンプル方式をとっている。特定の森林伐採がなされている地域、水力発電

の貯水池やアルバータ州のオイルサンドなども別途明確にしている。データが得られる場

合には、林道、高圧線、オイル、ガス施設、貯水池などのデータを活用している。6つの

州で林道のデータを使用している。また、商業用のGISデータベースも利用している。

データがない場合や質が低い場合には、専門家の意見が求められる。統計とリモートセン

シングの数値が大きく違うときには専門家の判断を仰いでいる。

森林転換のデータは 1975,1990,2000 年のリモートセンシングのデータを使っているので、

1975~90 年の間、1990~2000 年の間及び 2000 年以降の各年の森林転換量は次のように計

算している。1970~1983 年は 1975~90 年の割合で、1995~2008 年は 1990~2000 年の割合

で外挿、1983~1995 年は図 A3-10 のように直線でつないで内挿している。

図 A3-11 は各年の森林の他の用途への転換を示している。開発地への転換については、林

道、各種インフラ、鉱山、オイル、ガス施設への転換も含まれていることを留意されたい。

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2 吸収量

○ LULUCF 全体及び森林の排出吸収量は前掲の table 7-1 のとおりである。

○ また、管理された森林の大気との間の炭素の動き(光合成による吸収と分解による排

出)を経年的に示したものが Figure 7-2 である。

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○ さらに、2008 年の森林の炭素プール別排出吸収量は Table A3-33 のとおりである。

2.1 転用のない森林

2.1.1 カテゴリーの説明

○ 森林及び他の樹木のある土地(other wooded lands)はカナダの国土の 402 百万

ha(Mha)を占め、このうち森林は 310Mha で、管理された森林は 229Mha(森林の 74%)で

ある。また、管理された森林の 68%は4つの報告ゾーンに存在する。森林は転用のない森

林(229Mha, 純吸収量 17Mt(2008 年))と他の土地から転用された森林(0.11Mha, 純吸

収量 1.0Mt(2008 年))に分けられる。

○ 地域により大きな排出源となっているところ(Montane CordilleraとPacific Maritime

報告ゾーンの2つ)と吸収源となっているところ(Taiga Plains, Boreal Shield East, 及び

Boreal Cordillera 報告ゾーンの3つ)に分けられる。これは攪乱が多かったゾーンで排出

量が多いが、今後も同じ傾向を示すとは限らない。

2.1.2 方法論

(注:生体バイオマス、枯死木、リター、土壌に分けては記述されていない)

○ 植物は大気から大量のCO2を吸収し、その一部は生体バイオマス、枯死有機物、土

壌に貯蔵され、一部は呼吸や腐朽により排出される。1 年間で、大気のCO2の7分の1が

植物との間を循環しているが、それよりずっと少ない量が光合成により炭素として固定さ

れる。土地に関連した人の活動はこの炭素の動きに短期的にも長期的にも大きな影響を与

える。また、人為的影響と自然による影響を区分するにはさらなる研究が必要である。

○ カナダは「管理された森林」のGHG排出吸収の推定には、Tier3 を適用している。カ

ナダの森林炭素モニタリングシステム(Canada’s National Forest Carbon Monitoring,

Accounting and Reporting System (NFCMARS))はモデルをベースとした手法(Carbon

Budget Model of the Canadian Forest Sector (CBM-CFS3))である。このモデルは森林イ

ンベントリデータや森林の収穫曲線を地理的な活動データや自然の攪乱と結び付けるもの

である。このモデルでは地域の生態学的及び気候的パラメータを炭素の貯蔵プールから林

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産物や大気への移動のシミュレートに使うものである。概念的には、木の成長による炭素

の吸収から、伐採や自然の攪乱による炭素の排出を差し引くものである。

○ 管理された森林の炭素貯蔵量の変化は報告ゾーンごとにCRF表5Aに紹介されている。

この炭素の交換は大気との交換のみならず、生バイオマスから枯死した有機物への移動な

ど炭素プールの間での交換も含まれる。枯死した有機物の分解が増加傾向にあるが、これ

は過去の攪乱の影響を示している。過去3年間に、虫害の影響は19Mha の管理した森林

に及んでいる。

(山火事の影響について)

○ 年によるGHG収支の変動の多くは山火事の回数と強度の影響を大きく受けている。

1990 年から 2008 年の間の排出は 11~291Mt と大きく変化している。火事で多くのバイオ

マスは死ぬが、それは、すぐには燃えたり分解されずに多くは枯死した有機物のプールに

入る。その結果、大量のバイオマスが林床上の枯死有機物やリターの形で存在する。

○ 二重計上を防ぐため、CRF表5Aの炭素貯蔵量の変化の推定に当たっては、バイオ

マスの燃焼によるCO2,CH4,COを除くことにした。

○ IPCCの基準方法に従って、収穫された丸太と残材に含まれる炭素をすべて含める

こととしている。管理された森林から移動した木材製品はすぐに炭素を排出したとみなし

ている。この方式では、森林から木材製品に移った炭素は 128Mt である。これは 1990 年

の数値から 13%減少している。現在、収穫された木材から排出される炭素を考慮した3つ

の代案(atmospheric flow, production 及び stock change)が予備的に評価されている。こ

れらの方法のほうがより実態にあっていると考えられる。

○ 炭素貯蔵量の変化、管理された森林からの排出と吸収、森林から他の用途への転換、

他の用途から森林への転換の推計は「炭素収支モデル ver3 」(CBM-CFS3)を使用してい

る。

○ このモデルは、森林インベントリデータ(林齢、面積、樹種構成等)、販売可能材積と

林齢の関係、総バイオマス量への転換式、自然及び人的攪乱のデータ、エコシステムや他

の事項に伴う炭素プールと大気との炭素移動シミュレーションを統合するものである。○

このモデルでのエコシステム(毎年のプロセス)とは、成長量、リターの落下、自然の枯

死、腐朽である。また、他の事項とは、管理活動、森林の他の用途との間での転換、自然

の攪乱である。管理活動とは、利用間伐、皆伐、部分伐、除伐、火入れ地拵えを含む。森

林の転換にともなう活動にはコントロールされた火入れなどの各種活動のシミュレーショ

ンを含む。

○ CBM-CFS3 の炭素プールはIPCCの方式とマッチするようにしており、その比較は

Table A3-31 のとおりである。なお、この表では分けていないが、生体バイオマスのプール

はさらに針葉樹と広葉樹に分けている。

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○ 毎年のエコシステムプロセスでは、炭素がカーボンプールに入り、また一部はDOM

プールに移動する。このプールの構造や腐朽割合などの詳しい情報は Kurz et al.(2009)に

ある。各カーボンプールの炭素移動速度はプール特有の回転率や腐朽率による。回転率は

広葉樹の葉では高く(95%)、木の幹では低い(1%より低い)。

○ 成長量は毎年のプロセスとしてシミュレートされている。542 の分析ユニットごとに森

林インベントリの記録があり、収穫予想表は各州ごとに違う分類指標のセット(州、エコ

ロジカル階層、主要樹種、地位クラス等)にもとづく。各州のこの予想表の信頼性はサン

プルプロットや森林インベントリ情報による。地上バイオマスのバイオマス係数は、カナ

ダ国家森林インベントリのために開発された。地下のバイオマスプールの推計は回帰方程

式(equation)による。

○ 攪乱による炭素の移動はエコシステムやエコ区域、攪乱のタイプや強度による。攪乱

の影響は攪乱のマトリックスにおいて、攪乱のタイプにより炭素がどう移動するかを明ら

かにしている。Figure A3-5 はこの例で、Montane Cordillera で、伐採し、残材を焼いた

例である。

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○ 2010 年の報告書では、山火事と昆虫の影響は、それぞれ1ないし15の攪乱タイプに

区分、また、管理活動は15の攪乱タイプに分けられた。また、土地利用転換は 29 のタイ

プに、これとエコゾーンに応じた指標を加え、294 の攪乱マトリックスで攪乱のシミュレー

ションを行っている。

○ 炭素の排出は各プール独自のもので、すべての火事に適用されるCO2排出因子はな

い。一方、火災のとき出る炭素を含むガスの割合は、ほぼ一定している(CO2 90%, CO 9%,

CH4 1%).

○ CBM-CFS3 のモデルを作るにあたっては、国内の多様な多くのデータを使用して、加

工している。

2.1.3 不確実性と時系列の一貫性

○ 複雑な CBM-CFS3 のモデルの不確実性を検証するのに、炭素ダイナミックスのシミュ

レーションが必要であり、モンテカルロ方式(Monte-Carlo approach)が採用された。2009

年報告の全カナダを対象とするデータを用いてモンテカルロ実行を100回行い、デスク

トップのコンピュータを10台使い、1か月かかった。

○ 2007 年までは一貫した手法で推定されている。また、2008 年には改善が行われたが、

その方式は 2007 年までには適用されていないままになっている。

○ 山火事については、2004~2008 年は Canadian Wildland Information System による

リアルタイムのリモートセンシングの画像によっている。また、1990~2003 年は各地方か

らのデータの積み上げであるカナダ森林局の大規模山火事データベースによっている。

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○ 分析の元となっている森林インベントリのデータは地域によって違う年次に調査され

ているので、1990 年の森林データと一貫性をもたせるように調整している。

○ 不確実性の2つの大きな要因は、①森林インベントリデータ、②主なモデルのパラメ

ータである。元のデータの定義や質は様々であり、また不確実性についての数量的把握は

従来ほとんど行われていなかった。本作業においては、バイオマスの増大についての不確

実性は 50%と想定する等の想定をおこなっている。

2.1.4 QA/QC

Tier 2 の QC チェックが特に林地に焦点をあてて、カナダ森林局により行われている。こ

れは4つの分野で行われている(仕事の流れのチェック、モデルのチェック、評価基準に

よるチェック、外部によるレビュー)。また、カナダ環境局は、LULUCF に関する外部デ

ータやすべての推計や活動データに関し Tier2のチェックを実施している。

2.1.5 再計算

○ 「転用のない森林」について 2007 年までの推計には再計算は行われていない。

○ 2008 年の提出については、森林管理活動のモデルの変化により、大幅な再計算が行わ

れた。それ以前に提出した報告では、収穫面積をモデルに入力してきたが、収穫量とうま

く合わなかった。そこで、収穫量を直接入力する方式に切り替えた。

○ この方式では、不確実性は増すが、森林管理の炭素への影響について、より一貫した

結果が出せる。収穫に伴う炭素排出は上方修正され、1990 年代は 43%も増加した。収穫面

積も 1990 年代は下方修正され、1999 年以降は上方修正された。この結果、森林分野から

林産物への炭素移動はかなり増大した。

○ 1998~2007 年の10年間について、収穫活動は年平均 184Mt の炭素排出となっている

が、これは 1990 年のレベルから 21%の上昇である。これに比べ、2008 年提出の報告では

54%の上昇となっている。収穫方法の違いによる再計算は2009年の報告に反映されており、

このため 2010 年の報告では影響されていない。

2.2 他の土地利用から転用された森林

2.2.1 カテゴリーの説明

人の活動により森林に変わったところを指し、農地が放棄され自然に植生が入り込んだも

のはここに入らない。このカテゴリーに入る面積は減少傾向にある。この背景として、カ

ナダ東部で木の植栽が減っていること、20年以上前に植えた箇所はこのカテゴリーから

「転用のない森林」に分類されるので、それにしたがって「転用のない森林」に移行した

ものが毎年でてきていることによる。農地から森林への転用は、カナダではほとんど東カ

ナダで生じている。新規の植栽と森林の減少を差し引いた森林減少のペースは落ちてきて

いる(1990 年 1.2Mt から 2008 年 1.0Mt へ)。この分野での炭素の増加は、主に生体バイ

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オマスによるものである。対象となる森林が林齢20年以下なので、土壌への炭素の蓄積

は少なく、これらのトータルとしての温暖化ガスのバランスへの影響はわずかである。

2.2.2 方法論

(注:生体バイオマス、枯死木、リター、土壌に分けては記述されていない)

数年前まで全国をカバーした新規植林の統計はなかった。1990~2002 年の新規植林のデー

タは、「炭素吸収のための新規植林可能性評価」(Feasibility Assessment of Afforestation

for Carbon Sequestration=FAASC)において初めてまとめられた。これによると、針葉樹、

特にスプルースの造林地が造林地の90%を占めていた。1970~1989 及び 2003~2008 年の

データは上記 FAASC の結果をもとに推計された。他の土地利用から森林に転換された土地

のGHGの吸収量は、CBM-CFS3 のモデルにより推計された。この分野ででは土壌の炭素

の変化は不確実性が大きいとみられているが、全体への影響はわずかである。

FAACS データのほか、2004~2005 年のデータとして「森林 2020 造林地デモンストレーシ

ョン評価」(Forest 2020 Plantation Demonstration Assessment)のデータも利用されて

おり、このほか追加データを加えるべく努力が行われている。1990~2008 年の造林地の面

積はエコゾーン、州、樹種による層化、州ごとの植栽された樹種の比率と各州のエコゾー

ンの植栽面積により、樹種ごとの植栽面積を計算し、樹種ごとの森林への転換面積を求め

ている。この方式の改善は 2008 年の分について行われ、今後それ以前の時系列にも適用す

る予定である。成長曲線は樹種によっては得られないものもあるので、その場合は似た樹

種で代用している。土壌中の炭素の変化量は不確実性が大きいとしているが、これは植栽

以前の炭素のデータが得にくく、また炭素の増加のスピードは大変緩慢だからである。

2.2.3 不確実性と時系列の一貫性

このカテゴリーに入るものは、予算不足から不確実性の検証は行っていない。時系列の一

貫性は、前述したとおり、2007 年までは一貫した方法をとってきたが、2008 年分から改善

を図ったので、今後 2007 年以前のデータを修正することになる。

2.2.4 QA/QC

森林に関する QC チェックは Tier 2 を適用している。

2.2.5 再計算

2007 年以前のデータについて、前述のように再計算が行われる予定。また、2002 年以前の

データの誤りの修正や、2002 年以降で FAACS がサポートしていないデータの除去、木材

会社や州からの追加データなどによる修正が行われる予定。

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3 排出カテゴリーの情報

(3.1施肥に伴う N2O 排出(5I)3.2 土壌排出に伴う N2O 排出(5II)→森林分野に記

述なし。)

3.1 農地への転用に伴う N2O 排出(5III)

カナダでは、森林から農地への転換は、減りつつあるが主要な土地利用の変換であり、2

008年の森林からの他の土地利用への変換の54%を占めている。1971~1990 年に累計

の農地への土地転換は 1310kha で、1989 年から 2008 年では 574kha であった。森林から

他の用途への変換の把握方法は p192 7.8「森林の変換」に詳しい。今年の転換によるすぐ

のGHGの排出は 4.4Mt で、全排出の 61%である。このうち 95%は生バイオマス及び枯れ

木からで、5%が土壌からで、残った有機物からの腐朽による排出は数十年続くと考えら

れる。この推計は、「転用のない森林」での推計と同じ方法が使われている。土壌中からの

排出は、土壌中の炭素貯蔵量の変化(あまり大きくない)に加え、土壌有機物の分解に伴

う N2O の排出がある。土壌中の炭素の排出は、もともと草地だった西カナダと、もともと

森林だった東カナダでは値が大きく異なっている。

表 7-11 林地から農地への転換に伴う CO2 以外のガスの排出(2007)

3.2 バイオマスの燃焼(5V)

前掲の(山火事の影響)参照。

― 264 ―

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Ⅱ.京都議定書第 3 条 3 項及び第 3 条 4 項に関する情報

1 京都議定書3条3及び4の下での排出・吸収の推計の概要

3 条 3 項および 4 項の活動の報告情報

吸収源活動

カーボンプール GHG発生源

地上

バイ

オマ

地下

バイ

オマ

バイオマス燃焼

N2

N2

N2

CO

CO

CH

N2O

3

3

新規植林・再

植林 R R R R R IE NO R R R

森林減

少 R R R R R R IE R R R

3

4

森林経

営 NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA

農地管

理 R R R R R R R NE NE NE

放牧地

管理 NA NA NA NA NA NA NA NA NA

植生回

復 NA NA NA NA NA NA NA NA NA

引用:KP-LULUCF Table NR1

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3 条 3 項および 4 項の活動による排出・吸収量

GREENHOUSE

GAS SOURCE

AND SINK

ACTIVITIES

BY(5) Net

emissions/removals(1) Accounting

Parameters

Accounting

Quantity 2008 Total

(Gg CO2 equivalent)

A. Article 3.3

activities A.1. Afforestation

and Reforestation -737.97

A.1.1. Units of land not

harvested since the

beginning of the

commitment period -737.97 -737.97 -737.97

A.1.2. Units of land

harvested since the

beginning of the

commitment period NA

Canada NA NA NA

A.2. Deforestation 14,643.73 14,643.73 14,643.73

B. Article 3.4

activities B.1. Forest

Management (if

elected) NA NA NA

3.3 offset 13,905.77 NA

FM cap 220,000.00 NA

B.2. Cropland

Management (if

elected) 4,271.40 -11,503.33 -11,503.33 4,271.40 -15,774.73

B.3. Grazing Land

Management (if

elected) NA NA NA NA NA

B.4. Revegetation

(if elected) NA NA NA NA NA

引用:KP-LULUCF Table Accounting

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2 一般的情報

2.1 森林の定義

低樹冠被覆率25%、 少面積 1.0ha、 低樹高 5m、 低林帯幅 20m 等

2.2 選択した3条4の活動

第1約束期間において、「農地管理」を選択する。

3 土地に関する情報

カナダの LULUCF システムは、一貫した空間的照合ができるようにすることにより、森林、

農地、湿地の違ったモデルの枠組みの間で一つのカテゴリーから他のカテゴリーへ変換さ

れた土地に関する情報を交換することができるように、構築されている。この方法によっ

て、土地ないしこれに伴うGHGの推定値がダブルカウントにならないことが確保されて

いる。

下に示す土地転用マトリックスは第7章のLULUCFのマトリックスとは大きく違っている。

気候変動条約では国の領土は 6 つのカテゴリーに分けられているが、議定書では 4 つの議

定書カテゴリーに分けられている。これらは、新規植林/再植林、森林減少、農地管理、及

びその他である。カナダは森林経営を選択していないので、2008 年に行われた森林減少の

活動はすべて「その他から森林減少への変換」により捕捉される。2008 年に行われたすべ

ての新規植林活動は「農地管理からの変換」として代替される。

2008 年に草地(気候変動条約における)から転用された農地管理 0.21kha の土地は議定書

のマトリックスではその他から転換された土地と報告されている。

気候変動条約と議定書の LULUCF の土地推定値に関する 2008 年の不整合は、互いに類似

する条約における「森林からの転用」と議定書における「森林減少」という、それぞれの

枠組みの違いによるものである。

たとえば、2008 調査年の「森林からの転用」は 1989 年 1 月 1 日から 2008 年 12 月 31 日

までに森林から他の土地へ転用された面積の総計に一致する(1,054kha)。一方、下表の

「森林減少」の面積(986.16kha)は 1990 年 1 月 1 日から 2008 年 12 月 31 日までに変換

された土地の総計である。この違いは 1989 年に森林が転換された 68kha の分である。こ

れらの、条約及び議定書の推定値は調査年 2010 年に収束し、その後増加傾向で乖離するで

あろう。

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3.1 土地転用マトリックス

3.1.1 京都議定書対象活動に着目した土地転用マトリクス

3 条 3 項の活動 3 条 4 項の活動

その他

今年度の

始まりに

おける面

積合計

新規植

林およ

び再植

森林減

森林経営

(選択し

ている場

合)

農地管理

(選択し

ている場

合)

放牧

地管

理(選

択し

てい

る場

合)

植生

回復

(選

択し

てい

る場

合)

(kha)

3

3

新規植林お

よび再植林 96.65 NO 96.65

森林減少

940.58 940.58

3

4

森林経営(選

択している

場合) NA NA NA

農地管理(選

択している

場合) 1.38 NO 47,101.00 NA NA 47,102.38

放牧地管理

(選択して

いる場合) NA NA NA NA NA NA

植生回復(選

択している

場合) NA NA NA NA NA

その他 NO 45.58 NA 0.21 NA NA 948,171.66 948,217.45

今年度の終わ

りにおける面

積合計 98.02 986.16 NA 47,101.22 NA NA 948,171.66 996,357.06

引用:KP-LULUCF Table NR2

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Page 18: CO2 CH4 N2O CO N2O...よるCH4、N2O、CO の排出、農地への転換に伴うN2O の排出などが含まれており、2008 年は、差し引き13 メガトン吸収が排出を上回った(table

4 活動別の情報

新規植林・再植林による吸収・排出量算定結果総括表

2008

Gg-CO2 Gg-C

AR -737.97 201.26

地上バイオマス -537.22 146.51

地下バイオマス -125.17 34.14

枯死木 -65.54 17.88

リター -83.61 22.80

土壌 73.57 -20.06

その他のガス

CO2 +:排出、-:吸収

C +:吸収、-:排出

KP-LULUCF Table 5(KP-1)A.1.1.より作表

森林減少による吸収・排出量算定結果総括表

2008

Gg-CO2 Gg-C

D 11,471.61 -3,128.62

地上バイオマス 7,796.57 -2,126.34

地下バイオマス 1,796.82 -490.04

枯死木 527.72 -143.92

リター -457.83 124.86

土壌 1,808.33 -493.18

その他のガス

CO2 +:排出、-:吸収

C +:吸収、-:排出

KP-LULUCF Table 5(KP-1)A.2.より作表

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