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2013/5/24 1 宇宙惑星探査の新展開 可視光赤外線宇宙大学院 理学院 宇宙理学専攻 惑星宇宙グループ 渡辺 誠 講義の内容 可視光と赤外線による地上観測 可視光と赤外線での天体観測 地上観測における地球大気の影響 宇宙からの観測との比較 宇宙からの観測との比較 望遠鏡と観測装置 望遠鏡とその先端技術 撮像装置と分光装置 補償光学 補償光学のしくみと性能 補償光学を使った観測例 可視光と赤外線による地上観測 光と電磁波 短い 波長 長い 高い 振動数(周波数) 低い 高い エネルギー 低い ガンマ線 X線 赤外線 電波 (サブミリ波 ・ミリ波・ センチ波) 電波 可視光 天文分野では、約0.4 1μmを可視光、 1300μm程度までを赤外線と呼ぶ 可視光と赤外線による天文観測 可視光 主に太陽のような恒星や、その集団である銀河を 観測できる 赤外線 星形成領域のような温度の低い天体や、宇宙空 間の塵(固体微粒子)に隠れて可視光では見えな い天体を観測できる 可視光+赤外線 ソンブレロ銀河 ソンブレロ銀河 可視光 赤外線

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  • 2013/5/24

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    宇宙惑星探査の新展開

    「可視光と赤外線で探る宇宙」可視光と赤外線で探る宇宙」

    大学院 理学院 宇宙理学専攻

    惑星宇宙グループ 渡辺 誠

    講義の内容

    可視光と赤外線による地上観測

    可視光と赤外線での天体観測

    地上観測における地球大気の影響

    宇宙からの観測との比較宇宙からの観測との比較

    望遠鏡と観測装置

    望遠鏡とその先端技術

    撮像装置と分光装置

    補償光学

    補償光学のしくみと性能

    補償光学を使った観測例

    可視光と赤外線による地上観測

    光と電磁波

    短い ← 波長 → 長い高い ← 振動数(周波数) → 低い高い ← エネルギー → 低い

    ガンマ線 X線紫外線

    赤外線

    電波(サブミリ波

    ・ミリ波・センチ波)

    電波

    可視光

    天文分野では、約0.4 ~1μmを可視光、 1~300μm程度までを赤外線と呼ぶ

    可視光と赤外線による天文観測

    可視光

    主に太陽のような恒星や、その集団である銀河を観測できる

    赤外線赤外線

    星形成領域のような温度の低い天体や、宇宙空間の塵(固体微粒子)に隠れて可視光では見えない天体を観測できる

    可視光+赤外線 ソンブレロ銀河ソンブレロ銀河

    可視光 赤外線

  • 2013/5/24

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    地上観測における地球大気の影響

    大気減光 気体分子による散乱・吸収 大気中の液体や固体微粒子による散乱・吸収

    夜空の明るさ 夜空の明るさ 大気の発光,熱輻射 月や地上の人工光の散乱

    シーイング 大気乱流(大気ゆらぎ)による星像の乱れ

    大気分散 空気の屈折率の波長ごとの違いによる色ずれ

    地球大気の透過窓

    の対

    数)

    低い ← エネルギー → 高い

    強度が1/2に減衰する高度

    地表には,可視光と電波及び赤外線の一部しか届かない長い ← 波長 → 短い

    気圧

    (1気

    圧と

    の比

    高度

    (km

    可視・赤外での大気の窓

    透過

    率(%

    標高4200m標高0m

    ←赤外では透過窓(バンド)ごとに名前が付けられている

    波長 (μm)

    成分

    ごと

    の透

    過率

    (%

    散乱

    標高0m

    H2O

    CO

    2O

    3

    可視光での減光気体分子やエアロゾルによる散乱

    赤外線での減光水蒸気や二酸化炭素などの気体分子による吸収

    夜空の背景光

    地上観測の場合で問題となる成分OH: OH夜光GBT: 地上望遠鏡の熱輻射(~273K)AE: 地球大気の熱輻射 (~273K)さらに地上の人工光の散乱光月明かりの散乱光

    ント

    レー

    ト)

    宇宙からの観測の場合で問題となる成分ZSL: 黄道光ZE: 黄道のダストの熱輻射 (275K)GBE: 銀河面付近のダストの

    熱輻射(17K)CST: 冷却宇宙望遠鏡の熱輻射(10K)CBR: 宇宙背景放射(2.7K)

    背景

    光の

    明る

    さ(光

    子数

    カウ

    波長(μm)

    夜空の背景光スペクトル(可視)

    (等

    級)

    さらに、市街光(水銀灯、ナトリウム灯など)や月明かりの散乱光が加わる

    波長 (nm)

    背景

    光の

    明る

    夜空の背景光スペクトル(赤外)

    1 - 1.54μm 1.49-1.79μm

    背景

    光の

    明る

    背景

    光の

    明る

    1.94-2.4μm近赤外では

    OH夜光(= OHラジカルによる輝線放射)が支配的

    時間変動も大きい(5-15分間で数10%変化)

    背背

    景光

    の明

    るさ

    波長(μm)

    波長(μm)

    波長(μm)

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    シーイング

    シーイング(=大気ゆらぎによる星像の乱れ)

    大気ゆらぎ(屈折率分布の非一様性)の原因高層大気での気流の乱れ

    地表近くでの気流の乱れ

    ドーム内外での空気・物体の温度差による対流

    鏡と周囲の空気との温度差による対流

    典型的なシーイング世界的に良いサイトで~0.5秒角日本では良いサイトでも~1秒程度

    世界の主な天文観測サイト

    良いサイトの条件・高い晴天率・暗い夜空・良いシーイング低い水蒸気量

    ラパルマ マウナケア セロパラナル

    ・低い水蒸気量

    地上観測と宇宙からの観測

    地上観測 宇宙からの観測

    地球大気の影響 あり なし

    望遠鏡の冷却(熱輻射の影響)

    困難(大)

    容易(小)(熱輻射の影響) (大) (小)

    コスト 小さい 膨大

    重量・サイズ制限 小さい 大きい

    修理・改良 容易 困難

    利用可能技術 最先端 旧来

    地上観測と宇宙からの観測は相補的

    望遠鏡と観測装置

    天体望遠鏡

    天体からの光を集めて像を結ばせる装置

    屈折望遠鏡• 色収差が問題• 内部に泡や傷のない大きなレンズの製作が困難

    (口径1mのヤーキス望遠鏡が世界最大)反射望遠鏡

    ヤーキス望遠鏡

    反射望遠鏡•原理的に色収差がない•現在の主流(8から10mクラスの望遠鏡が10台以上運用中)

    2.4m ハッブル宇宙望遠鏡岡山天体物理観測所1.88m

    5m ヘール望遠鏡

    8.2mすばる望遠鏡

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    北海道大学1.6m ピリカ望遠鏡

    視野径3分角Image Rotator

    < 900kg2m x 2m

    ナスミス焦点B

    視野径10分角Inst. Rotator

    < 500kg2m x 2m

    ナスミス焦点A

    視野径20分角Inst. Rotator

    < 500kg

    カセグレン焦点

    眼視

    合成F比: 12.0焦点距離: 19.2m高度5度まで指向可能

    大口径望遠鏡における先端技術

    鏡が大きくなると自重による変形が避けられない↓

    鏡を薄くし曲げやすくして、力センサーとアクチュエータを用いて、能動的に鏡形状を保持

    8.2mすばる望遠鏡の例 →(261本のアクチュエータで支持、鏡の厚みは20cm)

    能動光学

    大口径望遠鏡における先端技術

    単一鏡で10mを超える直径のものを製作するのは非常に困難↓

    複数の鏡を並べて大きな鏡を構成(分割鏡)

    10m ケック望遠鏡 30m TMT (Thirty Meter Telescope)1 44m x 492枚1.8m x 36枚 1.44m x 492枚

    集光力鏡の面積(口径の2乗)に比例

    口径が大きいほど、より暗い(遠い)天体が観測可能

    望遠鏡の集光力と角度分解能

    角度分解能(解像度)口径に比例、波長に反比例

    波長が短くて口径が大きいほど、より小さな(遠い)天体の構造を空間分解可能

    ただし、地上ではシーイングで制限される。例えば、8m望遠鏡の理論角分解能は波長 0.55μmで0.017秒角、2.2μmで0.069秒角だが,シーイングは0.5-数秒角。

    天体観測装置

    主に撮像装置と分光装置の2種類

    撮像装置天体の形状や明るさを調べるために天体のイメージを撮る

    分光装置天体の温度や組成を調べるために天体からの光を波長ごとに細かく分けて測定する(光のスペクトルを取得する)

    科学的な目的に応じて様々なものを使い分ける

    北大1.6m望遠鏡の主な観測装置

    可視マルチスペクトル撮像装置MSI近赤外エシェル分光装置NICE

    可視撮像分光装置NaCS

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    撮像装置の例

    すばる望遠鏡可視光広視野主焦点カメラSuprime-Cam

    カメラ全体

    2048x4096ピクセルCCDを10枚配列 主焦点用補正レンズ

    分光装置の例1:多天体分光器

    アングロ・オーストラリア天文台可視光ファイバー多天体分光器 2dF

    焦点面に400本の光ファイバーを自由に配置できる

    分光器自由に配置できる

    フィールドプレート

    分光装置の例1:多天体分光器

    横方向の1本1本がそれぞれ個別の天体のスペクトル像

    分光装置の例2:面分光器

    IFU (Image Slicer)ヨーロッパ南天天文台3次元赤外分光器SINFONI

    視野を光学的に複数の視野を光学的に複数の短冊状領域にスライスして、1列に並び変えてから、分光する

    視野のどの点に対しても分光スペクトルが得られる

    分光装置の例2:面分光器

    SINFONIのイメージスライサー

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    補償光学

    補償光学(AO)とは

    大気ゆらぎにより乱れた光波面をリアルタイムで

    シーイング(FWHM 0.45秒角)

    AO補正後(FWHM 0.06秒角)

    リアルタイムで補正する技術

    望遠鏡本来の角度

    分解能を実現する

    すばる望遠鏡188素子補償光学装置AO188によるT Tauの画像

    大気ゆらぎの影響 大口径になるほど大きい

    33

    40倍10倍

    望遠鏡の口径

    補償光学系による性能改善34

    ハッブル宇宙望遠鏡

    0.7µm-5µmでハッブル宇宙望遠鏡に勝る解像度

    すばる望遠鏡補償光学系の例

    すばる理論分解能

    補正素子数が多いほど補正性能が高い

    補償光学系による補正像の鳥瞰図

    AO on

    空間分解能が上がるだけでなく、感度も向上する

    24 May 2013 35

    AO off

    補償光学系の基本構成参照光源 = ガイド星

    波面測定(WFS)↓

    波面計算(RTC)↓

    波面補正( )

    DM

    WFS

    RTC

    波面補正(DM)

    毎秒1000回以上ループ

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    7

    可変形鏡37

    バイモルフ型

    すばる望遠鏡188素子AOの可変形鏡

    電極パターン

    波面センサー38

    望遠鏡からの光

    すばる188素子AO曲率波面センサー

    24 May 201338

    APD光計数検出器

    (1kHz)

    32 mm

    補償光学の補正には明るいガイド星が必要観測したい方向に明るい星がある確率は高くない(~1%)=>レーザーで人工のガイド星を作る

    観測可能天域が大幅に増加

    レーザーガイド星

    レーザーガイド星レ ザ ガイド星(90 km ナトリウム層, 589nmで共鳴)レイリー散乱光

    40

    補償光学を用いた観測例1

    系外惑星候補天体の直接撮像

    太陽型星を周回する太陽型星を周回する木星質量の約10倍の惑星候補天体を発見

    補償光学を用いた観測例2

    重力レンズ銀河の検出

    二重クエ サ の二重クエーサーの光に隠されていた

    重力レンズ銀河を検出↓

    重力レンズモデルに制限を与えることができる