インドシナ南北コリドー形成のための調査 · 2007. 9. 26. ·...

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日本自転車振興会補助事業 平成 16 年度連携促進型地域振興技術協力支援調査事業 インドシナ南北コリドー形成のための調査 調査報告書 2004 2 社団法人 海外コンサルティング企業協会 株式会社 パシフィックコンサルタンツインターナショナル

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日本自転車振興会補助事業

平成 16年度連携促進型地域振興技術協力支援調査事業

インドシナ南北コリドー形成のための調査

調査報告書

2004年 2 月

社団法人 海外コンサルティング企業協会

株式会社 パシフィックコンサルタンツインターナショナル

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

i

要 旨

【背景】

インドシナ地域の重要性

インドシナ地域は急成長中の地域であり、中国に次ぐアジア地域の市場としてまた生産の場として、日本を始

め諸外国の注目を集めている。今後のインドシナ地域の均衡ある発展は、日本だけでなく世界経済にとって

も望ましいことであり、積極的な支援を行っていくべきである。

経済格差の解消

現在のインドシナ地域内には、経済成長を達成し、地域の牽引役としての地位を固めつつあるタイがある一

方、ラオス・カンボジアは未だに最貧国から脱却できておらず、域内の格差は依然として大きい。さらに、ラオ

ス・カンボジア国内においても都市部と農村部とでの経済格差は大きく、国内の不安定要因となっている。こう

いった国内・域内の経済格差の解消は、地域の安定的成長を達成するための重要な課題である。

以上のような背景のもと、ラオス・カンボジアでは、両国の成長を牽引するような拠点都市の強化および拠点

都市間のネットワーク形成による域内格差の是正と、貧困地域の開発による国内格差の改善を、同時に進め

るような方策が求められている。

【インドシナ南北コリドー形成の目的】

本報告書ではラオス・カンボジアを貫く南北コリドーを提案する。具 体的には、カンボジア側のシアヌークビル

港~プノンペンの成長回廊、国境地域、ラオスのパクセ、サバナケットなどの拠点経済を連携するルートにな

る。インドシナ南北コリドー形成の目的は以下の 6 点に集約される。

1. 貧困地帯の貧困削減

南北コリドー上にあるカンボジア北東部、ラオス南部は開発の遅れた地域であり、貧困率も高く、地域経済を

牽引するような核となるような産業も育っていない地域である。これらの地域の貧困削減と地域開発を促進す

るためには、開発ポテンシャルが比較的高いと考えられている農業と観光に重点を置いた産業振興策および

それを支援するインフラ整備、また、制度・仕組みの整備が必要とされている。

インドシナ地域においては、タイのバンコク~東部臨海工業地帯(ESB)、バンコク~アユタヤ~サラブリの工

業集積コリドー等、インフラ整備に誘発される形で、すなわち都市間幹線道路沿いに発生した経済コリドーが

いくつか見受けられる。本調査で提案する南北コリドーは、幹線道路整備がもたらす効果を戦略的に狙い、地

域開発を促進するものである。すなわち、カンボジア東北部およびラオス南部の国境地域とシアヌークビル、

プノンペン、パクセ、サバナケットと結 ぶインフラ整備を整備し、沿線での農業、観光振興を促すと同時に道路

を利用した国際物流の振興を目指す。

2 ラオスにおける物流安全保障

ラオスは内陸国であり、その物資輸送のほとんどをタイに依存している。特に、タイをトランジットする貨物へ

の過度の依存はラオスの物流面での価格交渉力を低下させ、ETO の輸送費用に見られるように高い輸送コ

ストを負担してきた。

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このような 1 国、しかも1つのルートにほとんどのトランジット貨物や石油製品の輸入を依存する状態では、タ

イとの関係悪化などのリスクに対して脆弱である。このような観点から、これまで 10 年以上に亘ってベトナム

のダナン港の一部を租借する交渉を行ってきたものの実質的な進展は見られなかった。

南北コリドーの形成によって、カンボジアルートという新しい物流ルートが成立する。ラオスにとっては、タイル

ートに加えて新しい国際物流ルートを開発することは、競争原理の導入により輸送コストを削減できる機会を

生むと同時に、物流安全保障上のリスク分散につながる。

南北コリドーはラオスとシアヌークビル港(カンボジア)をむすぶ国際物流ルート、ラオスの対外貿易の窓口と

なるばかりでなく、シアヌークビル港の拡張に伴って将来的には一部エリアの租借も視野に入れることができ

る優良な国際物流ルートと位置付けることができる。

3. カンボジア、ラオスのエネルギーの安定確保

現在、ラオス、カンボジアともに石油製品をタイ、ベトナム(経由)から輸入することに依存している。このため、

石油、ガソリンの価格はタイ、ベトナムより高く、また、カンボジアでは電気料金がかなり高く、これが民間投資

の大きな阻害要因となっている。また、有事におけるエネルギー確保の面でもリスクがあると言わざるを得な

い。

南北コリドーの形成によって、シアヌークビル港をゲートウェイとした物流ネットワークはカンボジア国内のみ

ならず、ラオスへとも拡大する。これによりシアヌークビル港の地域における相対的位置付けが向上し、タイ・

ベトナム以外の国からの石油製品をシアヌークビル港から直接輸入できる期待がある。

4. 物流産業の育成

カンボジア、ラオスの物流機会の増加はマーケットの拡大を意味することから、カンボジア、ラオス国内の物

流産業を育成するチャンスを提供することができる。ただし、インドシナの物流は自由化の方向にあるため、こ

れらのビジネスチャンスはタイやベトナムの物流産業にも等しく開かれていくと思われることから、物流産業の

育成にあたっては、業界の近代化などを積極的に進める方策が求められる。

5. コリドー形成による地域経済振興

南北コリドーのインフラの向上により、コリドーを動くヒトとモノが開発のポテンシャルとなって地域に新たなビ

ジネスチャンスが生まれる。広域的な物流活動のほか、観光、地場産業、地域おこしなどのポテンシャルを活

かした地域開発を進める。今回の調査ではこういった観点からインフラ、特に道路整備の提案だけでなく、観

光開発を中心とした沿道の地域振興につながる提案も含まれる。特にラオス南部チャンパサック県を拠点とし

た地域観光開発のポテンシャルは高い。

6. シアヌークビル港の物流量の確保による港湾経営の安定化

シアヌークビル港の港湾貨物は、今後のカンボジアと世界経済の伸びを背景に、将来大きく増加を見込んで

いる。しかしながら、現在整備中のホーチミン~プノンペン間の第 2 インドシナ東西コリドーの完成後は、利便

性が向上するホーチミン港との間で競争が激しくなることが予想される。そのとき、南北コリドーを経由してラ

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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オスをシアヌークビル港の物流マーケットとしておくことは、将来的なシアヌークビル港の安定的な物流量確

保、経営の安定化につながる。

【南北コリドー開発戦略とシナリオ】

南北コリドーの形成により上述の目的を達成するためには、下図にあるように、相互に関係する5つの柱とな

る開発戦略を総合的に実施することが重要である。

「1. インフラ整備」によって物流ルートを確保するともに、ルートを利用する物流産業のビジネスチャンスの拡

大、活動の活性化を支援するための「2. 物流拠点整備」、「3. 物流近代化」をおこない、さらに物流から沿線

住民が利益を得られるような「4. 物流サービス改善」、「5. 観光開発を中心とした地域開発」を総合的に実施

する。

開発の目的 1. 貧困削減 2. ラオスにおける物流安全保障の向上 3. エネルギーの安定確保 4. 物流産業の育成 5. コリドー形成による地域経済振興 6. シアヌークビル港の物流量の確保に よる港湾経営の安定化 観光を中心とした

地域開発

インフラ整備

物流近代化

物流拠点整備

物流サービス改善

出典: 調査団

図 1 開発戦略と事業(インドシナ南北コリドー形成)の目的との関係

南北コリドーの形成は以下のようなシナリオに則って進める。

インドシナ南北コリドーは、物流によるモノと観光によるヒトを流すためのコリドーである。まず、短期的には、

コリドーを構成する道路インフラ整備とラオス、カンボジア国境通過の手続きの簡略化を実施し、南北コリドー

としてネットワークを開通させることが、物流・観光双方での基本となる。

中期的には、物流という視点からは、コリドーを利用した物流ビジネスの活性化を図る。ネットワーク上の物流

拠点(シアヌークビル、プノンペン、パクセ、サバナケット等)において、トラックターミナル・ICDなどの物流施設

を整備する。また、IT 導入などによる効率化をすすめる等物流サービスを改善し、国際物流としての基本的な

要請事項を国際レベルで満足できる環境を整える。長期的には、コリドーのショートカットルート(カンボジア国

道 12 号経由)の整備や、石油など戦略物資の備蓄・輸送をカンボジア、ラオスで共同実施することなども検討

し、物流ビジネスの近代化をすすめる。

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観光という視点からは、南北コリドーのネットワーク開通後に活発化するであろうヒトの流れを呼び込めるよう、

南北コリドー沿いでポテンシャルのあるチャンパサック県(パクセおよび周辺観光地)の観光開発を早期に開

始する。また、チャンパサック県の観光拠点としての開発を基盤とし、周辺県(ラオス:アタプー県、セコン県、

カンボジア:ラタナキリ県)における観光を含めた地域開発も開始する。中期的には、道の駅などの施設を中

心とした草の根の「村おこし」的な活動を実施し、物流、観光、地域おこしが融合した地域の振興を図る。中長

期的には、現時点でアクセスが困難であるものの、高い観光ポテンシャルを持つプレアビヒア寺院の観光開

発も進める。

以上のシナリオを図 2 に示す。

短期 (2005-2010)

中期 (2011-2015)

長期 (2016-2020)

目標 ネットワークの強化と

国境を越えた交易の促進 コリドー沿いの

経済活動の活発化 インドシナ南北コリドーの

経済回廊としての機能強化

インフラ整備 コリドーを形成する

アジアハイウェイ沿いの 道路整備

地方道路整備による ショートカットルートの開発

物流拠点整備 トラックターミナル・ICD の

整備 石油の流通・備蓄基地の

整備 物流サービス 開発

コリドー沿いの道の駅の整備

物流近代化 ラオス・カンボジア国境に

おける通関・入国手続きの簡略化

効率的な輸送のための ITの導入

物流の近代化

観光を中心とした地域開発

主要観光地(チャンパサック)の受け入れキャパシティ整備、農村部における 観光を含めた地域開発

プレアビヒア観光開発

出典: 調査団

図 2 南北コリドー開発シナリオ

【南北コリドー形成のためのプロジェクト】

提案プロジェクトの一覧を以下に記す。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 1 提案プロジェクト一覧 短期 中期 長期

カンボジア側プロジェクト一覧 (2005-2010) (2011-2015) (2016-2020)

インフラ整備プロジェクト 1 国道 61 号線本格改良 ○

2 国道 61 号線トンレサップ架橋整備(新設橋梁) ○

3 国道 73 号線改修 ○ 4 国道 64 号線(コンポントム~プレアビヒア間)改修 ○

5 プノンペン・インダストリアル・リングロード ○

6 旧国道 12 号線(州道 213 号線)改修 ○

7 鉄道南線改修(プノンペン~シアヌークビル) ○

8 シャム湾海底ガスパイプライン建設 ○ ○

9 シアヌークビル~カンポット~タケオ~プノンペン送電線 ○ 物流拠点施設整備プロジェクト

10 シアヌークビル石油備蓄基地 ○

11 シアヌークビルインランドコンテナデポ整備計画 ○ 12 シアヌークビル工業団地 ○

13 プノンペンインランドコンテナデポ整備計画 ○

14 メコン河河川港整備 ○ 15 シアヌークビル発電所 ○

16 プノンペン物流拠点整備プロジェクト ○ ○ ○

物流近代化プロジェクト 17 IC タグ導入調査 ○

18 コンテナ機械 ○

19 過積載(トラックスケール)対策 ○ 20 物流関連人材育成 ○ ○

21 物流業界近代化 ○

物流サービスプロジェクト 22 国道 4 号、7 号線「道の駅」整備 ○ 地域開発プロジェクト

23 ラタナキリ県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業 ○ 24 プレアビヒア観光開発 ○ ○

ラオス側プロジェクト一覧 インフラ整備プロジェクト 1 国道 14 号線改修 ○

2 国道 16 号線橋梁改良 ○

3 国道 18 号線橋梁改良 ○

4 国道 13 号線セドン橋架け替え ○ 物流拠点施設整備プロジェクト

5 パクセ、サバナケットトラックターミナル整備 ○

6 パクセンランドコンテナデポターミナル整備 ○ 物流近代化プロジェクト

7 ラオス、カンボジア国境ポイント(国道13号上)整備およびシングルストップサービス導入

8 ラオス、カンボジア国境ポイント(国道 14号上)整備 ○

9 過積載(トラックスケール)対策 ○ 10 物流関連人材育成 ○ ○

11 物流業界近代化 ○

物流サービスプロジェクト 12 国道 13 号線「道の駅」整備 ○ 地域開発プロジェクト

13 セコン・アタプー県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業 ○

14 チャンパサック県パクセを中心とした観光地における持続的観光振興のための受け入れキャパシティ整備

出典: 調査団

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調査対象地域(カンボジア)

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調査対象地域(ラオス)

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インドシナ南北コリドー形成のための調査 最終報告書 目 次

要旨 1 はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1

1.1 インドシナ地域の経済成長と格差 ........................................................................................1

1.2 インドシナ地域の地域経済協力...........................................................................................2

1.3 インドシナ地域の経済開発課題...........................................................................................4

2 インドシナ物流の現状. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5

2.1 インドシナ地域の輸出入.....................................................................................................5

2.2 インドシナ諸国内の物流量 .................................................................................................8

2.3 インドシナ諸国の物流拠点およびネットワークの概観 .............................................................9

2.4 インドシナの地域経済協力の枠組みの進捗状況 .................................................................16

2.5 インドシナ諸国の物流政策 ...............................................................................................20

2.6 インドシナ地域の IT:現状と期待 .......................................................................................20

3 カンボジア、ラオスの物流の状況 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .23

3.1 カンボジアの物流状況 .....................................................................................................23

3.2 ラオスの物流状況 ...........................................................................................................31

4 インドシナ南北コリドー開発構想 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .35

4.1 インドシナ南北コリドー形成の意義と目的 ...........................................................................35

4.2 ポテンシャルルート..........................................................................................................37

4.3 インドシナ南北コリドーの現状 ...........................................................................................38

4.4 南北コリドー開発戦略とシナリオ ........................................................................................50

4.5 ポテンシャルプロジェクト...................................................................................................56

4.6 わが国の知見・経験の適用 ...............................................................................................60

5 事業実施プログラム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .63

5.1 事業実施スケジュール .....................................................................................................63

5.2 概算事業費 ....................................................................................................................63

5.3 開発資金の考察 ..............................................................................................................65

5.4 実施の体制の考察 ..........................................................................................................65

5.5 今後のアクション .............................................................................................................66

補論 ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発プロジェクトの提案 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . A-1

添付資料 現地調査行程概要. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . B-1

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

1

1 はじめに

1.1 インドシナ地域の経済成長と格差

1.1.1 経済成長

インドシナ諸国1は、これまで東西冷戦の最前線として地域分断の時代を経験してきた。東西冷戦の終結後、

カンボジア、ラオス、ベトナム(CLV )は、政治体制は異なるものの市場経済への移行や民主化を果たし、

1995 年にベトナム、1997 年、ラオス、ミャンマー、1999 年にはカンボジアが ASEAN に加盟し、インドシナは

分断の時代から協調・協力の時代へと移行しつつある。このインドシナ諸国は、メコン河州域を中心とした多

様な環境の中に多様な民族、宗教をもち、グレーター・メコン・サブリージョン(GMS)2全体では約 2.5 億人の

人口を抱える。農業資源、鉱物資源、観光資源など多様な資源を有していながらいまだに利用度が低く、逆

に言えば大いなる成長のポテンシャルがある地域と理解されている。

このインドシナの開発ポテンシャルは徐々に開花しつつあり、1990 年代以降、堅調な経済成長を経験してい

る。先ず、タイ、ベトナムといった新興工業化国が外国直接投資を背景に経済成長を続け、ラオス、カンボジ

アなどもそれに牽引される形で経済成長を続けてきた。1997 年には未曾有のアジア通貨危機を経験したもの

の、外国投資、順調な国内消費を背景に経済再建を果たし、近年の経済成長率は各国とも 5~7%と高い水

準を保っている(表 1.1 参照)。これら4 カ国で 1 億 6 千万の人口を抱え、インドシナ諸国は、蓄積されつつあ

る資本と技術、市場規模などを背景に、中国とともに 21 世紀初頭の世界経済を牽引していく地域として成長

しつつある。

表 1.1 インドシナ諸国の経済指標

Population UrbanPopulation GDP GDP per

Capita GDP Growth

(million in2003) -2002 (million USD

in 2003)(USD/person

in 2003) (2002-2003)

Cambodia 13.8 16.0 4,190.5 303.7 5.1

Laos 5.7 20.0 2,132.3 374.1 5.8

Thailand 64.0 29.0 143,178.9 2,237.2 6.7

Viet Nam 80.9 25.1 39,045.9 482.6 7.3

CLV Total 100.4 61.1 45,368.7 451.9

TOTAL 164.4 90.1 188,547.6 1,146.9

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

1 本報告書ではインドシナ半島に位置する国々(カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、マレーシア)のうち、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナムをインドシナ諸国と仮称した。 2 カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、中国雲南省

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1.1.2 地域格差

インドシナ諸国は今後とも大きな経済成長が見込まれる地域とみなされ、投資、生産、マーケットとしてその安

定的な発展は世界経済の中でますます重要性を増しているが、そのインドシナの安定的成長の阻害要因とし

て近年注目されているのが、一部地域での独立運動(モスリム問題)、領有権問題、軍事政権によるミャンマ

ーの孤立問題などである。それらの根本にある共通の問題は貧困問題を含めたインドシナ地域内の経済的

格差にあると考えられている。

現在、インドシナ諸国は、ほぼ中進国化したタイ、新興工業国としてテイクオフを果たしつつあるベトナム、市

場経済化の波に乗り切れないカンボジア、ラオスと 3 つのグループに分かれていると言ってよい。一人当たり

GDP のレベルでみると、タイはすでに中進国に分類される一方、ベトナムは貧困国、カンボジア、ラオスは、

最貧国に分類され、インドシナ諸国間の経済力格差は大きい。表 1.1 に示すようにインドシナ諸国で最も経

済成長が著しいタイ国と最も成長が遅れているカンボジアの一人当たりGDP は約 7.3 倍もの開きがある。

同時に、これら国々の内部でも都市部と農村部との経済格差が拡大しつつある。表 1.2 によれば、カンボジ

アの都市部の貧困人口の割合は 18.2%に対して農村部では 40.1%と 2 倍以上である。タイにおいては都市

と農村の貧困人口の割合は 3 倍にもなっている。

このような格差と貧困の問題は、タイ国では、周辺国からの不法労働者の流入、それに伴う治安悪化が問題

として認識されている。また、このような経済格差が国際テロリズムの根本原因とも言われており、インドシナ

諸国の全体的な経済的底上げ、貧困対策は自国の安定と成長の条件と考えられるようになってきている。

表 1.2 インドシナ諸国の貧困と格差

貧困人口の割合 -都市部(%)

貧困人口の割合 -農村部(%)

一日あたりの所得が 1US $以下の人口の割合(%)

所得順位上位者 20%と下位者 20%の所得比

カンボジア 18.2 40.1 34.1 4.7 (1999)

ラオス 26.9 41.0 39.0 6.0 (1997)

タイ 4.0 12.6 1.9 8.3 (2000)

ベトナム 6.6 35.6 13.1 5.7 (2002)

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

1.2 インドシナ地域の地域経済協力

このような認識のもと、インドシナでは、域内経済協力の動きが加速している。有効な域内経済協力方策の確

立は ASEAN+3 サミットにおいても重要な議題の一つと認識されており、各国の共通の政治的課題である。

ASEAN における域内経済協力の動きには二つの側面がある。第一の側面は、インドシナ地域の貧困撲滅、

域内経済格差の是正のための市場、ビジネスチャンスを創造しようという側面であり、もう一つの側面は、グ

ローバル経済化の中で生き残るための手段として、欧米日本などの大きな経済圏に対抗できる、あるいは交

渉力のある一体となった自立経済圏の形成を目指すという側面である。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

3

前者の観点からは、インドシナ地域全体をインドシナ各国共通の市場として形成するために、各国がその共

通マーケットに自由にまたは容易くアクセスする手段を確立し、インドシナ地域内の人とモノの移動を自由に

することによって活性化を図るといった方向での議論が始まっている。具体的には、AFTA による ASEAN 域

内の関税の撤廃、道路、河川などの交通インフラの整備、越境時の手続き簡略化(シングルサービス)、自動

車の相互乗り入れなどである。

後者の観点からは自由貿易協定(FTA)の動きが重要である。物理的、制度的な地域的経済統合の流れの

中で ASEAN 諸国では FTA 締結が加速している。特に、中国、タイはこれに積極的で、これから訪れるであろ

うASEAN 内で競争を、さらには域外経済圏との競争に勝ち抜くために自由貿易協定を踏み台に自国産業を

強化し乗り越えようとする動きと理解できる。

これを我が国の立場からみれば、インドシナの地域経済統合は、域内の人々の所得向上に伴うインドシナ市

場の拡大と各国での得意分野を活かした分散ネットワーク型の生産体制の確立といった両面からの 大きなメ

リットが期待できる。同時に、生産と市場の両面で、中国とインドシナという二つの選択肢を手にいれることを

意味し、我が国の外交政策上も有効であろうと考えられる。つまり、我が国がインドシナ諸国の域内経済協力

に貢献することは、わが国産業の市場確保、生産体制の再構築といった側面の利益に加え、インドシナ諸国

の市場確保を目指す中国、韓国などとの外交交渉力を強化するといった側面もあることが指摘できる。

出典: 調査団

図 1.1 インドシナ諸国

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1.3 インドシナ地域の経済開発課題

インドシナ地域全体の共通開発課題として、大きく「域内経済の統合」および「貧困、経済格差の是正」の二つ

を掲げることができる。

域内経済の統合の基本方針は、あらゆるビジネスチャンスへのより公平なアクセスを確立すること、言わばイ

ンドシナ各国にとってインドシナ全体を共通の市場とすることである。この基本方針の実現のためには、先ず、

各国の拠点都市経済の育成およびそれらの都市間のネットワーク強化が必要である。すなわち、インドシナ

のいくつかの拠点都市(たとえば、ラオスのビエンチャン、サバナケット、ルアンプラバン、パクセ、カンボジア

のプノンペン、シェムリアップ、シアヌークビル、バッタンバンなど)の都市インフラを整備し、さらにそれらの都

市間のネットワーク(道路、鉄道、空港、通信、輸送システム)を作り、モノとヒトの動きを活性化を支援するイ

ンフラ整備が重要である。さらに、関税の撤廃、越境手続きの簡略化、自動車の乗入れ自由化、輸送行政の

スタンダード化など制度的な改善がこれを支える。

カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)では人材、組織・制度、財政などすべての面で立ち遅れており、即効性

のある開発シナリオを立てにくい状況にある。よって、これらの国々では、農村開発、貧困対策、初等教育な

どに力を入れ、すなわち、開発のスピードを求めず、安定的で持続的な開発を志向する傾向にある。この方針

は基本的には妥当なものと考えられているものの、タイやベトナムなど比較的先行している地域の中での言

わば「勝ち組」が先行的に優位な地位を確保してしまえば、CLM はタイ、ベトナムが牛耳る市場として固定化

されてしまい、各国の自律的経済、産業の自立の余地を狭めてしまうのではないかといった指摘もある。この

不安を取り除くために、また、安定的なインドシナの経済統合のためには、ある種「傾斜生産」的な方策、すな

わち、カンボジア、ラオスといった比較的遅れている国々に対する重点的な援助が必要と考えられる。

重点的な援助分野としては、エネルギー開発、水資源開発、内陸部への効率的なエネルギー輸送のインフラ

整備などであり、これらを土台に観光開発、新たな産業立地、農業開発を促進すべきである。

地域経済の統合 ネットワーク化 物流の効率化 インフラ整備制度整備

拠点都市整備 都市開発

貧困、経済格差の是正 産業の育成 エネルギー人材育成投資、ビジネス関連制度整備インフラ整備

農村開発 水資源農業開発

社会開発 教育、医療など

出典: 調査団

図 1.2 インドシナ開発の基本的な課題

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

5

2 インドシナ物流の現状

2.1 インドシナ地域の輸出入

2.1.1 貿易量

インドシナ諸国では、タイやベトナムの経済成長に牽引されるかたちで貿易量が急激に増加している(表

2.1)。カンボジアでは生地などの材料を輸入しこれをシャツなどに仕立てて輸出する、いわば労働集約型の

産業が貿易の大半を占めていると推察される。ある意味でタイはカンボジアと同じような経済構造を持ってお

り、多くの機械、部品類を輸入すると同時に、付加価値をつけた製品を輸出している。ラオスでは、第一次産

品や軽工業品(繊維、衣料品 )が輸出の主力になる一方、石油、機械、家電製品、自動車などを輸入し大幅な

輸入超過傾向にある。ベトナムは近年の工業化によって輸出品にバラエティができているものの、石油、機械、

家電製品、自動車などを輸入し、輸入超過に陥っていることに変わりはない(表 2.2)。輸出入の相手国をみ

ると、西欧先進国、日本などが圧倒的に大きな割合を占めているが、カンボジア、ラオスの大口輸入先の中に

タイ、ベトナムが入っているのが注目される(表 2.3)。

表 2.1 インドシナ諸国の輸出入の推移 (単位:million USD)

1990 1995 2000 2003

カンボジア 輸 出 86 854 1,327 1,917

輸 入 164 1,187 1,600 2,469

ラオス 輸 出 79 308 330 366

輸 入 185 589 535 501

タイ 輸 出 589,813 1,406,311 2,773,826 3,333,929

輸 入 844,448 1,763,587 2,494,141 3,138,093

ベトナム 輸 出 2,402 5,449 14,483 20,176

輸 入 2,752 8,155 15,637 25,227

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004 注: FOB 価格表示

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6

表 2.2 インドシナ諸国の輸出入構成(2001)

輸出 輸入

製品名 (%) 製品名 (%)

カンボジア 生地・衣類 パルプ・紙 その他

76.94 13.63 9.43

生地・衣類 鉱産物 機械・家電 化学製品 車両 金属素地 その他

38.79 16.17 8.31 6.10 4.53 4.10

22.00

ラオス 電気 木製品 衣類 農林産品 その他

33.4 31.3 20.3 6.6 8.4

燃料・機械油 消費財 衣類素材 建設・電気機器 その他

42.4 22.8 14.0 4.7

16.1

タイ 機械・家電 プラスチック 生地・衣類 加工食品 動物 車両 鉱産物 その他

37.95 8.12 8.12 7.37 4.28 4.25 3.64

26.27

機械・家電 鉱産物 金属素地 化学製品 車両 その他

39.70 12.59 9.67 8.50 5.73

23.81

ベトナム 原油 生地・衣類 水産物 履き物 コンピュータ製品 その他

21.0 13.3 11.9 10.1 4.0

39.7

機械・機器 生地・衣類 石油製品 スチール・インゴット コンピュータ製品 その他

16.9 12.0 11.7 5.8 4.2

49.4

出典: ESCAP, Trade and Investment Policies for the Development of The Information and Communication Technology Sector of The Greater Mekong Sub-region, 2004

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

7

表 2.3 インドシナ諸国の輸出入相手国 (2003)

輸出 輸入

輸出先国名 (%) 輸入元国名 (%)

カンボジア アメリカ ドイツ イギリス シンガポール ベトナム

59.8 10.4 7.4 3.3 1.5

タイ 香港 シンガポール 中国 ベトナム

27.0 14.7 12.1 11.6 4.8

ラオス タイ ベトナム フランス ドイツ ベルギー

21.4 17.3

8.1 5.7 4.0

タイ 中国 ベトナム シンガポール 日本

59.4 12.8 10.4

2.7 2.0

タイ アメリカ 日本 シンガポール 香港 中国

17.0 14.2 7.3 5.4 7.1

日本 アメリカ 中国 マレーシア シンガポール

24.1 9.5 8.0 6.0 4.3

ベトナム アメリカ 日本 中国 オーストラリア ドイツ

21.6 14.0 6.4 7.5 5.8

中国 韓国 日本 シンガポール タイ

14.1 11.3 10.8 10.7 5.6

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

2.1.2 域内貿易

表 2.4 は 1990 年、2000 年、2003 年の ASEAN 内貿易の割合を示している。1990 年代に比較して、各国の

経済成長とともに近隣国との貿易が増大し、結果として域内貿易の割合は増加している。

表 2.4 インドシナ諸国の ASEAN 内貿易の割合の推移 (%)

1990 2000 2003

カンボジア 39.0 23.3 30.9

ラオス 62.8 64.6 60.8

タイ 10.8 12.9 12.4

ベトナム 4.1 8.1 8.0

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

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8

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

Value of Cross-Border Trade (million Bhat)

Thai-Cambodia 324 2,144 3,112 4,893 5,887 5,739 11,784 9,346 17,127

Thai-Laos 3,639 4,071 4,057 8,519 9,851 10,824 18,479 15,618 41,474

Thai-Myanmar 4,196 4,124 3,192 7,164 5,280 5,459 13,338 7,720 14,874

Thai-Malaysia 38,506 43,892 33,412 67,164 80,890 104,78 178,29 130,94 226,91

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999

出典: ADB GMS Unit

図 2.1 タイを中心にみた周辺国との貿易量の推移

2.2 インドシナ諸国内の物流量

図 2.2はインドシナ諸国内の輸出入金額を示す。タイとベトナムの間の輸出入が最も大きく、タイとカンボジア、

タイとラオス、ベトナムとカンボジアの輸出入が続いている。この図は金額ベースでの輸出入を示しているた

め、実際の国際物流量の相対的なボリュームの関係を示しているとは必ずしも言えないが、タイとベトナムを

中心とするインドシナ諸国の物流パターンが存在することがわかる。なお、ラオスとカンボジアの間には現状

ではほとんど輸出入が記録されていない。これは、ラオスとカンボジアの間に正式な国境ポイントがないこと、

両国とも農業国で工業化が進んでおらず、似たような農業国家であり、貿易品がほとんどないことによるもの

と考えられる。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

9

Thailand

Cambodia

Laos

Vietnam

501.8

94.4

756.5

11.3

87.6

76.6

30.3

135.5

* : Year 1997Unit : million USD (Y2003)Source : Key Indicators 2004, ADB

M inis try of Commerce

333.3

0.04*0.01*

847.8

出典: 図中に記入

図 2.2 インドシナ諸国の輸出入

2.3 インドシナ諸国の物流拠点およびネットワークの概観

インドシナの物流体制について、地域外とのインターフェースを果たす物流拠点、消費地や経済活動の集積、

それらを結ぶリンクとしての交通インフラについて概観する。

2.3.1 国際物流拠点

外国とのインターフェースを果たす物流施設としては、国際空港と国際港湾が主要な役割を果たす。インドシ

ナ諸国には、外国との航路をもつ7つの深水港湾がある。タイのバンコク港(クロントーイ港)、レムチャバン港、

マプタプット港、ソンクラ港、カンボジアのシアヌークビル港、ベトナムのハイフォン港、ダナン港、ホーチミン港

である。インドシナ諸国の対外貿易品のほとんどはこれらの港を通過するといっても過言ではない。

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10

出典: 調査団

図 2.3 インドシナの物流施設構成:概観

一方、インドシナ地域には 10 ヶ所の国際空港がある。タイのドンムアン空港、チェンマイ空港、ウドンタニ空港、

ウボンラチャタニ空港、ハジャイ空港、プーケット空港、カンボジアのプノンペン空港、シェムリアップ空港、ベト

ナムのハノイ空港、ホーチミン空港である。空港貨物の割合は、全体の輸送量の 1%に満たず、航空貨物は

インドシナ地域においては重要な役割を果たすには至っていない。

2.3.2 インドシナ諸国の国境ポイント

インドシナ諸国は陸続きであり、いくつかの国際物流可能な国境ポイントがある。ADB が主導しインドシナ諸

国の通関の簡易化のためのシングルストップ/シングルカスタムのプロジェクトが予定されている地点を表 2.5

に示す。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

11

表 2.5 インドシナ諸国の物流国境ポイント

ADB 合意に盛り込まれた国境ポイント その他の国境ポイント

タイ~ラオス タナレン、チェンコン、サバナケット、チョンメック

カムワン

タイ~カンボジア ポイペト、ハラック ケプチャーン、プラビハン

カンボジア~ラオス ベウンカム

カンボジア~ベトナム モクバイ ハティエン、チャウドック、タンビエン

ラオス~ベトナム ラオバオ、バンネプ ムアンマイ、ムアンホン、バンナマン、ノンヘット

ラオス~中国 ボーテン

出典: 調査団

2.3.3 都市・経済活動の集積

インドシナ諸国は都市のプライマシーが極めて高い地域である。例えば、タイにおいてはバンコクに全人口の

10%、経済活動の約 50%が集中している。このように、非農業経済活動、つまり、工業、サービス業などが、

限られた都市、地域に集中しており、インドシナ物流は、それらの限られた都市、地域間物流が中心となる。

インドシナ物流のパターンに大きな影響を与える都市・経済活動拠点として以下のような都市・地域があげら

れる。

タイ: バンコク、ESB、チェンマイ、ソンクラ/ハジャイ、コーラート、ウボンラチャシマ

カンボジア: プノンペン、シェムリアップ、バッタンバン

ラオス: ビエンチャン、サバナケット、パクセ、ルアンプラバン、ウドンサイ、ルアンナムタ

ベトナム: ハノイ、ダナン、ホーチミン

2.3.4 ネットワーク(主要道路および河川)

インドシナ地域の物流を支える交通運輸ネットワークは、ADB や我が国の二国間援助によって主要幹線が整

備されつつある状況である。インドシナ地域内の主要運輸ネットワークを以下に示す。

アジアハイウェイ

インドシナ地域内では、各国の主要幹線道路について 8 つの路線がアジアハイウェイとして指定されている。

この中で、インドシナの東西方向の幹線になっているのはAH-1 とAH-16、南北方向の幹線になっているのは

AH-1、AH-11 および AH-12 である。このうち AH-1 とAH-16 はそれぞれインドシナ第 2 東西コリドー及びイン

ドシナ東西コリドーとして整備が進められており、また、AH-13 はインドシナ南北コリドーと位置づけられる。

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12

出典: ESCAP, 2004

図 2.4 アジアハイウェイ

インドシナ東西コリドー

アジアハイウェイ AH-16 のうち、ベトナムのダナン~ラオバオ、ラオスのラオバオ国境~サバナケット、タイの

ムクダハン~コンケン~ピサヌローク~メーソット、ミャンマーのメソット国境からモールミャインまでの区間をイ

ンドシナ東西コリドーと位置づけ、整備が進められている。現在、ムクダハン~サバナケット間の第 2 メコン国

際橋の建設が JBIC の資金で進んでいる。タイ・ミャンマー国境からモールミャインまでの道路の修復はタイ政

府の援助で実施される予定であり、これらが完了すればインドシナ東西コリドーのインフラは完成する。

インドシナ第 2 東西コリドー

アジアハイウェイ AH-1 のうち、ベトナムのホーチミン~モクバイ、カンボジアのモクバイ国境~プノンペン~バ

ッタンバン~ポイペト、タイのポイペト国境~ナコンナヨック~アユタヤまでの区間をインドシナ第 2 東西コリド

ーと位置づけ、整備が進められている。現在、カンボジアの第 2 メコン橋のFS が実施されている。

インドシナ南北コリドー

アジアハイウェイAH-13 のうち、タイのチェンライ~チェンコン、ラオスのチェンコン国境~ルアンナムタ~ボー

テン、中国のボーテン国境~クンミンを結ぶ区間をインドシナ南北コリドーと位置づけ、整備が進められている。

現在、ラオス国内の道路補修がADB、タイ政府、中国政府の協調融資によって進められている。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

13

出典: 調査団

図 2.5 インドシナのコリドー開発コンセプト

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表 2.6 インドシナ地域のアジアハイウェイ アジアハイウェイ番号 通過国 各国の道路番号 AH-1 ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー (ベトナム)1A,22

(カンボジア)1,5 (タイ)33,1,32,1,105 (ミャンマー)85

AH-2 タイ (タイ)4,41,4,1,32,1,110 AH-11 カンボジア、ラオス (カンボジア)4,6,7

(ラオス)13 AH-12 タイ、ラオス (タイ)1,2

(ラオス)13 AH-13 タイ、ラオス (タイ)117,11,101,100,1148,1021

(ラオス)1 AH-15 タイ、ラオス、ベトナム (タイ)22

(ラオス)13,8 (ベトナム)8

AH-16 ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー (ベトナム)9 (ラオス)9 (タイ)2042,213,209,12

AH-19 タイ (タイ)314,315,304,226 出典: 調査団

出典: 調査団

図 2.6 インドシナのアジアハイウェイ

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

15

メコン河

インドシナ地域のほぼ中央を流れるように、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムの6 カ国を経

由してメコン河が流れている。言うまでもなくインドシナ半島の開発はメコン河の水系に大きく影響を受けてお

り、モータリゼーション以前の主要交通手段はこの水系を利用した水運であった。特に東西コリドー開発のコ

ンセプトが ADB 等により示されてからは主要な国際機関や二カ国間援助による交通インフラ整備は道路イン

フラに集中しているが、水系を利用した南北輸送のメリットの見直しも行われている。実際、メコン委員会の調

査報告では、現在の条件で、ホーチミン港とメコン水運を利用したシンガポールと香港からプノンペンまでの

物流と、シアヌークビル港+国道を利用した同区間の物流の比較をした結果、前者の方が低コストであるとの

結論を出している。

鉄道

インドシナ地域のタイ、カンボジア、ベトナムでは鉄道が利用可能であるがラオスには整備されていない。しか

し、タイ~カンボジア間ではアランヤプラテート~シソフォン間、カンボジア~ベトナム間ではプノンペン~ホー

チミン間にそれぞれ軌道が整備されていないため、インドシナ地域全体をつなぐネットワークとはなっていない

(なお、タイ~カンボジア間はカンボジア内戦以前には軌道で繋がり、バンコク~プノンペン間の国際列車が

運行されていたがポルポト政権時代に破壊された)。

出典: ESCAP, 2003

図 2.7 トランスアジアレイルウェイ

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現在、ASEAN 諸国ではシンガポール~クンミン鉄道(SKR)を検討しつつあるが、いまだに机上の空論の域

はでていない。一方、SKR 整備に中心的な役割を果たしているマレーシアが、タイのアランヤプラテートとカン

ボジアのシソフォン間約 48Km の軌道の敷設を支援する動きがあり、これが完成すれば、タイとカンボジアが

再び鉄道で結ばれることになる。

2.4 インドシナの地域経済協力の枠組みの進捗状況

2.4.1 経済協力枠組み

(1) Greater Mekong Sub-region(GMS)

GMS は 1992 年 ADB の主導のもと結 成されたメコン河流域 6 カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベ

トナム、中国雲南省)を対象とした総合的な地域協力スキームである。GMS は関係国の話合いで多国間にま

たがるプロジェクト・プログラムを実施していく非公式でフレキシブルな枠組みとして創設された。2001 年 11月

には、第 10 回 GMS 閣僚会議で今後 10 ヵ年戦略が採択され、以下の11 のフラッグシッププログラムが採択

された。

- North-South Economic Corridor

- East-West Economic Corridor

- Southern Economic Corridor

- Telecommunications Backbone and Information and Communications Technology

- Regional Power Interconnection and Trading Arrangements

- Facilitating Cross-Border Trade and Investment

- Enhancing Private Sector Participation and Competitiveness

- Developing Human Resources and Skills Competencies

- Strategic Environmental Framework

- Flood Control and Water Resource Management

- GMS Tourism Development

(2) AFTA (ASEAN Free Trade Agreement)

1992 年の第 4 回 ASEAN 首脳会議において、ASEAN 内の貿易を促進する措置として設立することが合意さ

れた。当初は 2008 年を目処としていたが、その後 ASEAN 先進 6 カ国は 2002 年 1 月、一部の例外品を除

いて原則全ての ASEAN 産品に対する域内関税を 0~5%とした AFTA が実現した。新規加盟のベトナムは

2003 年、ラオス、ミャンマーは2005 年、カンボジアは 2007 年に実施することになっている(図 2.8 参照)。

(3) AIA (ASEAN Investment Agreement)

ASEAN 域内の投資の自由化を促進する枠組みで、内国民待遇を2003 年までに他の加盟国の投資家に適

用したのに続き、2020 年までにすべての国に最恵国待遇を適用することになっている。また、AIA では、すべ

ての産業への投資を2003 年までに他の加盟国の投資家に解放したのに続き、2020 年までにすべての国の

投資家に解放することも合意に至っている。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

17

出典: 調査団

図 2.8 AFTAによる貿易自由化のタイムフレーム

(4) ACEMECS (Ayeyawaddy-Chao Phraya-Mekong Economic Cooperation Strategy)

2003 年 4 月カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイの 4 カ国の首脳がマンダレーに集まり、インドシナの経済格

差の是正に向けた経済協力の実施に合意した。重要施策分野として以下の 6 点を取上げた。

- 4 カ国の経済競争力の強化

- 国境地域での経済成長の実現

- より高い競争力が発揮しうる地域への農業・工業施設の再配置

- 雇用機会の創出

- 所得格差の是正

- 平和と安定および共有資源の持続可能な方法での積極的な活用

これらの重要施策に則り、以下のような具体的なプロジェクトの準備が進められているが、インドシナ南北回

廊を除いて、いまだ実現には至っていない。

- 国境地域での拠点開発(タイ~カンボジア国境地域:コッコン、ポイペト、タイ~ラオス国境地域:サバナケ

ット、タイ~ミャンマー国境地域:メソット)

- インドシナ東西回廊整備のミャンマー区間(メソット~モーラミャイン間)

- インドシナ南北回廊のラオス区間(チェンコン~ルアンナムタ~ボーテン)

(5) CLV Development Triangle (Green Triangle Development)

ラオス南部のアタプ、セコン、カンボジア北東部のラタナキリ、ストゥントレン、モンドルキリ、ベトナム中部のコ

ントゥンをむすぶ三角地帯を3 カ国共同で開発を進めるアイデア。物流の自由化、観光開発、インフラ整備な

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ど多岐の分野を 3 カ国共同で実施するものである。具体的なプロジェクトの提案には至っていないが、2004

年の ASEAN+3 会議のCLV と日本の外相会議において、CLV 三カ国は我が国に対して、本枠組みへの支援

を要請した。

2.4.2 交通・運輸セクターの協力枠組み

(6) GMS Cross Border Agreement on Movement of Goods and Peoples

GMS(タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、中国(雲南省)、ミャンマー)の運輸セクターの統合に向け、1999 年

に基本合意がなされた。”Facilitating Cross-Border Trade and Investment”は GMS の 11 のフラッグシップ

プログラムの内の一つで、以下の10 のキーコンポーネントを持つ。

- Development and maintenance of a cross-border trade and investment information system;

- Development of products and services to support SMEs;

- Trade and customs facilitation, initially focusing on single-stop and single-window inspection and

expanding to modern border management systems;

- Standards framework upgrading;

- Facilitation of cross-border movement of goods and peoples in the GMS

- Development and integration of freight forwarding;

- Industrial development;

- Coordination of policies and regulation on trade-related financial and insurance services;

- Development of market information networks to facilitate trade linkages (including market access

mechanisms, export promotion programs, access to international trading companies);

- Development of e-commerce systems to improve the integration of the trade transaction process

(between sellers, shippers, bankers and purchasers).

この中でインドシナ諸国のモノとヒトの移動を自由化するための合意が、“Facilitation of cross-border

movement of goods and peoples in the GMS”である。この合意を受けて、ADB が主導し、原則と手続き及

び具体的な 20 の付属書、プロトコルが作成された。2004 年 4 月には第 1 ステージとして、トラックの域内自

由走行、ライセンスの相互認証、税関、入国審査といった必要書類の統一化など7 つの付属書と1つのプロト

コルが調印にいたっている。今後は運転手への共通の保険制度、共通ビザの発給、共通輸送料金体系、生

鮮品の輸送など残りすべてのプロトコルについては、2005 年中の調印をめざし、2006年また2007年の完全

実施を目標としている。

(7) Single Stop/Single Window Inspection

ADB が主導する国境通過の利便性向上プロジェクトで、前述の“Facilitation of cross-border movement of

goods and peoples in the GMS”の中の一プロジェクト。国境での通関、入国などの手続きを国境の1 箇所

にまとめ、それをどちらからの政府が代表して実施することによって、国境通過の手間を低減させる制度で、

2005 年中に、トライアルとしてベトナムとラオス国境間で実施することになっている。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

19

(8) 道路輸送に関するタイ、ラオス協定

タイとラオスでは、1999 年 3 月に”Agreement between The Government of The Lao People’s Democratic

Republic and The Kingdom of Thailand on Road Transport”を締結した。また、その合意に基づき補足合意

として 2001 年に“Subsidiary Agreement Specifying Road Transport Agreements”を締結した。まず、1999

年のいわば基本合意では、タイとラオスの国際輸送の活性化を目的として以下の 5 項目について合意した。

- 両国政府が両国間の国際輸送業者を認定することができる

- 不必要な検査、護送の廃止

- 相手国では相手国の法律に従う

- トランジット貨物への便宜と輸送の自由化

- 税金、料金の廃止

さらに、2001 年 8 月の追加合意では、

- タイ、ラオスの国境ポイント(10 箇所)

- 車両検査の相互認証

- 相手国を走行する際に必要な書類

- 物流のための国際ルートの指定

などが合意された。

(9) タイ、ラオス、ベトナム協定

タイ、ラオスおよびベトナムは3 カ国は、1999 年 11 月に”Agreement between and Among the Government

of The Lao People’s Democratic Republic and The Kingdom of Thailand, and the Socialist Republic of

Viet Nam for Facilitation of Cross-Border Transport of Goods and People”を締結した。このいわば基本合

意は、モノとヒトの国境通過をスムースにし、運輸に関する法規制、手続きを簡便にかつ協調したものとし、多

機関の物流の促進を目的として、以下の 7 項目について合意している。

- 国境通過の手続き(ワンストップサービス化)

- ヒトの移動(ビザの発給の保証)

- モノの移動(相手国での現物検査の省略、トランジット貨物の無税化など)

- 車両の入国許可

- 関税(関税の引き下げ)

- インフラ整備の責任

- 組織制度(国家交通ファシリテーション委員会、合同委員会の設置)

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20

2.5 インドシナ諸国の物流政策

タイを除くインドシナ諸国の明確な物流政策については未だ明確な政策が確立されてはいないことが今回調

査で明らかになったが、以下にタイの物流政策について述べる。

タイ国では、近年のエネルギー価格の高騰を踏まえ、エネルギー消費がタイ経済の今後の大きな阻害要因と

なるものと認識し、エネルギー効率の高い技術の採用、インフラストラクチャーの再編、さらにエネルギー効率

の高い経済、産業構造への転換(知的産業へ)が重要な施策と認 識されている。

運輸セクターにおいては、エネルギー効率の向上の観点から、都市部の公共交通の導入と並んで物流効率

の向上が重要である。物流効率の向上は、エネルギー効率の観点に加えて、物流コストの低減によるタイ企

業の国際競争力の向上、タイを中心としたインドシナの物流体系の再構築による新たなビジネスチャンスの

拡大などの観点からも重要と考えられている。2004 年末に閣議で示された物流改善の基本的な方方向性は

以下の 4 点に集約できる。

- 物流関連インフラの整備

- 物流関連法規制の改善

- IT の導入

- 物流関連の人材育成

この 4 つの方針を踏まえ、近々に運輸省交通政策局(Office of Transport and Traffic Policy and Planning)

では、2005 年 1 月より全国物流マスタープラン調査を実施し、物流改善の具体策を検討することとしている。

2.6 インドシナ地域の IT:現状と期待

アジア地域における固定電話、携帯電話、インターネットの各普及率、ホストコンピュータの台数等を表 2.7

に示す。同表は、各国の固定電話と携帯電話の合計普及率の低い順序で並べているが、全体の電話普及率

が低い国は、通信基盤が十分に整備されていないことを示しており、インターネットの普及率も低い状況にあ

る。

本調査の対象国であるカンボジア及びラオスはアジア全 45 カ国のなかでも4,5番目に電話が普及していな

い国であり、100 人当りの普及率は2人程度に留まっている。一方、台湾、香港、シンガポール、日本などの

国々での普及率は 100 人当り100 を超える。カンボジア、ラオスの周辺国であるタイ、ベトナムの普及率はそ

れぞれ 35.9、9.2 であり、インドシナ地域のなかでは圧倒的にタイでの普及率が高いことが分かる。

このように、現状としてのアジア地域は、通信インフラ(ブロードバンドを可能とするような)において世界をリー

ドする日本や台湾などの国や地域が存在する一方、本調査対象国のように電話回線自体が不十分な国も存

在している。また、同一国内においても都市部と地方部では通信インフラの普及に大きな格差があるのが現

状である。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 2.7 アジア地域の電話普及率 ホスト数 パソコン

加入者数 普及率 加入者数 普及率 加入者数 普及率 利用者数 普及状況 台数 推定台数

1000 100人当り 1000 100人当り 1000 100人当り 1000 100人当り 台 1000

Myanmar 1 295 0.61 14 0.03 14 0.64 10 2.07 2 55

Bangladesh 2 682 0.51 1,075 0.81 1,076 1.32 204 15.32 2 450

Nepal 3 328 1.41 22 0.09 23 1.50 60 26.39 1,513 80

Cambodia 4 34 0.25 224 1.66 224 1.91 30 21.76 623 20

Lao PDR 5 62 1.12 55 1.00 56 2.12 15 27.11 165 18

Bhutan 6 20 2.84 - - 3 2.84 10 144.75 1,242 10

Indonesia 14 76,326 3.60 11,700 5.52 11,704 9.12 4,000 191.23 45,660 2,300

Viet Nam 15 5,567 6.85 1,902 2.34 1,909 9.19 1,500 184.62 478 800

Philippines 23 3,339 4.17 14,216 17.77 14,220 21.94 2,000 255.69 30,851 1,700

China 30 214,420 16.69 206,620 16.09 206,637 32.78 59,100 460.09 89,357 25,000

Thailand 31 6,043 9.87 16,117 26.04 16,127 35.91 4,800 775.61 71,995 1,700

Malaysia 33 4,710 19.79 8,500 34.48 8,520 54.27 6,500 2,731.09 74,007 3,000

Korea 40 23,257 48.86 32,342 67.95 32,391 116.81 26,270 5,518.91 694,206 26,458

Japan 41 74,567 58.58 79,083 62.11 79,142 120.69 57,200 4,492.62 7,118,333 48,700

Singapore 42 1,930 46.34 3,295 79.41 3,341 125.75 2,247 5,396.64 197,959 2,100

Hongkong China 44 3,843 56.74 6,298 92.98 6,354 149.72 2,919 4,309.46 387,672 2,600

Taipei 45 13,099 58.33 23,905 106.45 23,964 164.78 8,590 3,825.09 1,712,539 8,887

Asia Region 438,377 12.13 440,260 12.19 440,272 24.32 201,079 557.56 10,803,137 140,392

Source: ITU statistics 2003.4

インターネット

アジア地域

非普及順位

アジア地域

固定電話 携帯電話 固定電話+携帯電話

出典: ITU, ITU statistics, 2003

通信事情の格差は国家間をまたがる物流効率改善あるいは国内物流にとっても大きな障害となる可能性が

あり、重大な関心事項である。国情に応じた多種多様な情報流通を可能とする国内、国際のブロードバンドイ

ンフラ整備と、セキュリティ等の新技術の導入・利用の促進が重要となる。

より具体的には、これらの国々におけるバックボーン・ネットワークやアクセス回線、国際バックボーン等の整

備を国情に応じ計画的に実施していく必要があると考えられる。これは本調査で提案するような道路インフラ、

鉄道インフラ整備と連携して行うことにより効率的に進めることができると考えられる。

基幹系ネットワーク

基幹系はその国の主要な拠点(都市)を接続するインフラを指しており、ブロードバンド化するアクセス回線を

収容するために高速大容量の回線を構築する必要がある。このようなネットワークは現在、各ドナー国により

建設、リハビリが進められている1桁および 2 桁国道を利用したネットワーク構築を図るべきであろうと考えら

れる。

アクセス系

アクセス系とは、基幹網と加入者を結ぶインフラであり、光ファイバー、メタル回線を使った xDSL FWA (Fixed

Wireless Access) によりブロードバンド環境を提供することができる。加入者への引き込みのための設備負

担が大きいいため、利用者を増大するにあたってこの部分が問題となる場合が多い。アクセス系を備えたオ

フィスビル、商業ビル、集合住宅などを都市部に積極的に建設促進することにより普及を図るべきではないか

と考えられる。

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ルーラル開発関連

ルーラル地域においては、収益性がほとんど確保できないために基幹系もアクセス系も整備される可能性が

非常に低い。したがって、これらの地域においてデジタル・デバイドを解消し、ルーラル地域の経済活性化に

資するためにはコストの安い無線技術の活用を含めたアクセス回線の整備、IP ネットワークの構築、郵便局

等の各種公共施設を利用した共同利用型を追及した Multipurpose Community Telecenter (MCL)の設置を

含めたネットワークインフラ整備が重要になる。例えば、「道の駅」を中心としたコミュニティー IP ネットワークの

構築などが考えられる。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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3 カンボジア、ラオスの物流の状況

3.1 カンボジアの物流状況

3.1.1 概観

カンボジア国は、長い内戦によって国内のインフラや生産基盤が荒廃し、多くの人材も失われた。農業をはじ

めとする国内の産業は未だ十分に回復しておらず、カンボジア国内で必要な物資を十分に生産するに至って

いない。このことは輸出入の構造からもみてとれる(表 3.1 および表 3.2 参照)。つまり、現在のカンボジアの

産業と人々の生活は、AFTA メンバー国であるタイ、ベトナム、シンガポールからの物資輸入で成り立っている

と言っても過言ではない。

表 3.1 によると、カンボジアの輸入は、AFTA メンバー国であるタイ、シンガポール、ベトナム、インドネシア、

マレーシアなどからが多く、逆に輸出はアメリカ、ドイツ、イギリスが上位を占めている。アメリカは 2000年から

Garment の割当て(Quota)を実施しているため、その額も年々増加している。2004 年末に割当ての期限が切

れることから、今後、大幅に輸入量が減少することが予想される。今後はタイ、ベトナムは輸出先、輸入元とし

て重要な相手国であることが見てとれる。

表 3.1 カンボジアの過去5年間の輸出入先上位10 ヶ国 (million USD)

Import1999 2000 2001 2002 2003 1999 2000 2001 2002 2003

1 United States 235.8 739.7 832.2 1041.7 1214.3 Thailand 195.2 221.8 503.9 567 756.52 Germany 40.4 66 98.7 159.8 211.3 Hong Kong 185.7 254.3 116.9 372.8 411.23 United Kingdom 53.4 81.6 126.3 122.1 150.3 Singapore 99 106 399.5 387.7 338.24 Japan 9.3 10.7 13.3 68.1 80.1 China 85.9 112.9 86.9 276.8 324.15 Singapore 181.7 18 28 76.8 67.8 Korea 79.9 76.8 49.6 126.8 144.66 France 20.7 27.7 35 39.4 40.5 Vietnam 85.6 91.5 109.5 118.9 135.57 Vietnam 106.8 19.4 24.5 26.6 30.3 Indonesia 50.9 68.4 9.9 75.7 84.58 Netherlands 9.5 20.5 25.7 29.2 25.6 Malaysia 49.9 64.2 19.3 60.4 68.99 China 8.9 23.8 16.7 22.3 23.6 Japan 73.9 58.4 19.7 76.8 67.3

10 Thailand 18.5 22.9 7.6 10.2 11.3 France 41.9 39.3 12.6 63.1 53.6

Exports

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

品目別に見れば、カンボジアは、タイから建設資材、工業製品、石油製品、ベトナムからは石油製品、日常雑

貨、農産物を輸入している。輸入超過は徐々に改善されつつあるが、カンボジアは現在でも大きな輸入超過

国である。また、輸入品の加工を伴わない再輸出が非常に多いのが特徴的であり、近年は輸出全体の約 6

割が再輸出となっている。再輸出先としては河川や陸路でベトナムに輸出されているものが主なものとされて

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いる。第二メコン橋架橋地点のネアックルン付近には水運と陸運の結節点があり、ベトナムを含むメコン流域

との相当量の物流(鉄製品の輸入、米の輸出など)がある。

表 3.2 ベトナムとタイからの輸入品目(2002 年)

Netweight(Tons)

Value(1000USD

)

品目 Netweight(Tons)

Value(1000USD

)1 Mineral fuels, meneral oils

and products318,120 69,351 Salt 889,904 36,057

2 Fertilizer 23,868 2,581 Mineral fuels, meneral oilsand products

245,168 70,426

3 Cereals 21,118 2,989 Sugars and sugar products 132,840 25,8814 Iron and Steel 20,715 4,329 Cereals 47,458 5,0615 Residues and waste from

food industries3,454 1,133 Fertilizer 41,880 4,197

6 Plasitics and articles 1,470 1,185 Iron and Steel 22,871 6,1897 Ceramics products 1,355 166 Ceramics products 18,972 2,5178 Knitted or crocheted fabrics 1,326 4,459 Articles of stone, plaster,

cement16,810 2,092

9 Man-made staple fibers 1,223 3,650 Residues and waste fromfood industries

11,912 777

10 Salt 1,166 14 Preparation of cereals, flour,starch or milk, pastry cook'sproducts

8,554 3,780

CommodityThailandViet Nam

出典: カンボジア商業省の資料より調査団作成

本調査で注目しているラオスとの輸出入は 1995 年から3 年間の統計では年間 6 万~8 万ドル程度と非常に

限定的である。ラオスとの貿易量が少ない原因としては、ラオスもカンボジアも現在は工業製品の生産がほと

んどないこと、石油、鉱物といった天然資源がないこと、さらに、国境へ通じる道路(国道7号線)の未整備、国

境が公式に開かれていないため旅行者のみの通過に限定されていることなどが原因といえる。過去にはカン

ボジア北東部の山岳部にて違法伐採された木材がラオスへ密輸入されていたため国境を閉鎖した経緯があ

り、道路、国境の整備のみならず、国境でのモニタリング強化も必要とされる。

輸入物資は、陸路と海路およびメコン河を経由してカンボジアに入る。現在、タイとカンボジアの陸上輸送の

幹線はアランヤプラテート~ポイペトを通る国道5 号線である。この他スリンとシェムリアップを結ぶ国道68号

線、チャンタブリとパイリン結ぶ国道 57 号線の 3 ルートがあるが、68 号線と57 号線は道路の傷みが激しく、

現在の利用は限定的である。国道 5 号線のタイとの国境であるポイペト付近では、アスファルト、セメント、骨

材などの建設資材を積んだタイナンバーのトラックが多く見られ、国境近くの施設でカンボジアナンバーのトラ

ックに積み替えられシェムリアップ、プノンペン方面へとトラック輸送されている。

一方、ベトナムとの国際物流ルートとしては、プノンペン~ホーチミン間には国道 1 号線(246 km)の他に国道

6/7 号線(355 km)と国道 2 号線(421 km)の3ルートがある。また、カンボジアとベトナム南部は、ホーチミ

ン~プノンペン間のメコン河を利用した河川運輸をはじめとして、パサック川、その他の中小河川を利用した

小規模な水運による貨物輸送も多い。国道 7 号は主に日用雑貨、国道 2 号、バサック川、その周辺の小規模

水運は農産品の輸送を担っている。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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カンボジアとベトナム主要国際物流ルートは、カンボジアの国道 6 号、国道 7 号、タンビエンで国境を通過した

のち、ベトナムの 72 号線を経由してホーチミンにいたるルートである。タンビエンは地域の人々だけが使う国

境であり、ベトナムからトラックで運ばれてきた貨物はすべてここで積み替えられる。なお、公式な国境として

認められているのは国道 1 号線上のバヴェト(ベトナム国境)だけである。

メコン河を利用してプノンペン港へ入る国際貨物は合計で 4 回の検閲を受ける必要がある(ベトナムへ入ると

きのブンタオ港、ベトナムを出るとき、カンボジアへ入るとき、プノンペン港の4回である)。プノンペン港(2,000

~4,000DWT 級の船舶の入港が可能)は石油の陸揚げ港としての役割が大きく、主としてシンガポールから

ベトナムを経由、メコン河を利用して、600~1,000DWT級のタンカーによって輸送されている。一般貨物の取

扱いは二つの港でほぼ同等であるが、主としてプノンペン港が石油、主としてシアヌークビル港がバルクとコ

ンテナを取扱っているという特徴がある。

カンボジアでは、公式に開通している国際国境以外にも周辺国との行き来のできる非公式な越境ポイントが

あり、その量は少ないがそれらを通過する国際物流が存在している。これは統計には表れてこないが、総量

としてはかなりの取引があるものと言われている。こういった国境での物流には基本的には関税はかかって

おらず、場所によっては Unofficial Fee だけで、自由に両国間を往来することが可能である。無関税のガソリ

ンなどは、ベトナムとの小規模な国境からカンボジアに入り、地方やプノンペンで格安で売られているが、一方

で政府の取締まりも厳しくなってきており、摘発される業者が増えている。

概観すると、ベトナムの陸路とシアヌークビル港、プノンペン港を経由して入ってくる物資はひとまずプノンペン

に集まる。一方、タイ経由の物資の一部は、シェムリアップやバッタンバンでの消費に当てられるが、それ以

外はすべてプノンペンに輸送される。カンボジアの物資は、このような一部の例外を除いてほぼ全てがプノン

ペンにひとまず集まる。プノンペンは、カンボジアの首都で人口約 30 万人、カンボジア最大の消費地であり、

ここでほとんどのものが消費され、それ以外の地域にはごく一部が流通しているにすぎない。プノンペンから

地方都市への物資の輸送は、おもに道路輸送(トラック)によっているが、トンレサップ湖およびメコン河の流

域では河川交通による物資の輸送もみられる。

3.1.2 品目別輸出入

(10) エネルギー

カンボジアの石油の需要は概ね年間 80 万トン程度と限られた規模しかない。石油精製施設はなく、カンボジ

アのエネルギーは、タイ、ベトナム、シンガポールなどからの石油製品の輸入に依存している。そのため、石

油価格はタイやベトナムの約 1.5~2 倍と高く、産業育成のネックとなっている。また、これが石油密輸の背景

となっている。今後のカンボジアの成長、すなわち工業化による安価のエネルギー確保は必須の課題であ

る。

近年、タイ・ベトナムからのエネルギー輸入量はともに 2001 年をピークとして減少傾向にあるが(表 3.3)、こ

れはシンガポールやマレーシアからの輸入が増加しているためとみられる。

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表 3.3 タイ・ベトナムからの石油製品の輸入

1998年 1999年 2000年 2001年 2002年

Net Weight (Tons) 179,148 268,753 297,656 274,237 245,168

Value (1000USD) 52,279 77,490 91,899 78,147 70,426

Net Weight (Tons) 321,394 306,086 355,390 369,889 318,120

Value (1000USD) 85,164 74,440 76,740 87,020 69,351

タイ

ベトナム

出典: カンボジア商業省の資料より調査団作成

ガソリン等輸入量

0.5

0.55

0.6

0.65

0.7

0.75

0.8

0.85

0.9

0.95

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001

1000

バレ

ル/日 Gasoline Imports

Kerosene ImportsDistillate ImportsResidual Imports

出典: Energy Information Administration, the U.S., World Energy Database, 2002

図 3.1 ガソリン等製品の輸入量(カンボジア)

なお、石油製品は、すべて船舶によってシアヌークビル港またはメコン河を経由してカンボジアにもたらされる。

シアヌークビル港を経由する石油製品はタイのマプタプット港から運ばれてきたもので、メコン河を経由する石

油製品はベトナムやシンガポール、マレーシアのものである。シンガポール、マレーシアからのものもホーチミ

ン港で小型船舶(600~1000DWTクラス)に積み替えられ、メコン河を利用してカンボジアにもたらされる。

タイからの海上輸送石油はシアヌークビルに、メコン河の石油はプノンペン北(国道 5号線沿い)と南(ネアック

ルン)の石油タンクに保管され、そこから全国のガスステーション(約 360 箇所、うちプノンペンには約 200 箇

所)に運ばれ小売される。

(11) 農産品

カンボジアは農業国であり、国土のほとんどは農村地帯に属する。農村部では自給自足が基本であり、農産

品の流通は少なく、農産品は農村から都市へと流通する。これに加え、タイ、ベトナムから農産品が輸入され

ているが、逆に輸出はほとんどない。ベトナムからの農産品は陸路でホーチミンから輸送されてくるものに加

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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えて、バサック河や周辺の中小河川を利用してベトナム南部から輸送されているが、これは統計に表れてい

ない。タイからは米、野菜、果物などが 5 号線で陸路輸送される。

表 3.4 農産品の輸出入量(Net Weight) (ton)

1998 1999 2000 2001 2002

Import from Vietnam 2,139 7,602 22,020 34,233 21,120

Export to Vietnam 150 0 0 0 2,902

Import from Thailand 17,881 22,179 33,950 37,402 47,463

Export to Thailand 222 0 1,823 0 45

出典: カンボジア商業省の資料より調査団作成

(12) 家電、工業製品

家電、工業製品はほぼベトナムとタイからの輸入に頼っている。2002 年におけるタイから輸入される家電、工

業製品はベトナムからの約 4 倍に達する。タイからの家電、工業製品はタイのラムチャバン港からシアヌーク

ビル港にコンテナ輸送されるものと国道 5 号線で陸路輸送されるものがあるが、その割合は不明である。これ

らの製品の輸入量は年々シェアを伸ばしている。

表 3.5 家電・工業製品のベトナムとタイからの輸入状況

1998 1999 2000 2001 2002

Viet Nam Net weight (Tons) 7,562 21,467 22,204 49,489 55,316

Value (1000 USD) 4,286 7,487 10,694 17,409 24,066

Thailand Net weight (Tons) 99,540 134,678 346,816 170,061 176,006

Value (1000 USD) 120,584 62,570 78,450 83,371 86,571

出典: カンボジア商業省の資料より調査団作成

3.1.3 物流産業

カンボジアの物流産業の特徴として、いわゆる大手企業が少なく、1台のピックアップトラックで営業を行う零

細企業が非常に多く存在していることを指摘できる。これら零細企業は業者登録をしていないため、その数や

実態を把握することは難しいが、カンボジア国内の都市間輸送とベトナム、タイ国境との輸送を中心に営業し

ている。

陸路でのベトナムとの輸出入はBavet (国道1号線) および Samach (国道 72 号線)経由で行われる。トラッ

クの相互乗入れは認められていないため、この2つの国境付近で荷物の積み替えが行われる。2004 年に実

施された調査によれば、Bavet では日平均 6 台、Samach では 25 台のトラック交通量が観測されている。

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Samach からのトラックの約3 割はプノンペンに向かうが 、残りはコンポンチャム県内に着地を持ち、現状での

陸上輸送の範囲は非常に限られたものとなっている。

この2つの国境付近で、ドライバーは事前に連絡を取ってベトナム側の輸送業者と落ち合う、もしくは現地で

直接交渉して荷物の搬送を請け負うという二つのパターンが見られる。つまり後者は、現地でトラックが満載

されるまで待ち続け、満載された時点で目的地に向かうということである。このような営業を行う零細企業がど

のように業者同士の信頼関係を築き上げているかは分からないが、ベトナムに住む親族関係で商売や輸送

を管理している場合もある。タイとの国境(ポイペト)では緩衝地帯に積替え施設はなく、タイナンバーのトラック

がカンボジア国内に入り、国境付近の民間の施設で積替えを行っている。

零細企業だけではなく大手輸送会社も数は少ないが存在する。その1社であるSo Nguon 社はプノンペン、シ

アヌークビルに合わせて約 66,000m2 のコンテナヤードと倉庫を所有、輸送機材として 120 台以上のトラック

(30~40 トンクラス)を保有している。輸送業だけでなく、ドライポートの運営、ホテル経営など多分野でのサー

ビスも提供している。また、カンボジアにはKampuchea Shipping Agency & Brokers(KAMSAB)という国営

輸送会社が存在する。KAMSAB は国営のフォワーダーで、会社としてトラック・コンテナ船などの輸送機材を

保有しておらず、要請に応じて輸送会社をコーディネートするのみである。

カンボジアの物流業者は、一般的に輸送時間よりも輸送コスト(直接費)を重要視する傾向にある。カンボジア

では、目的地までの1トリップで国境、国道など数回にわたって Unofficial Fee(係官に対する心づけのような

もの)を徴収される場合が日常的であり、特に国境でのこの費用は物流業者のルート選定に大きな影響を及

ぼす要因となっている。ベトナム国境 Bavet での費用は高いと評判であり、多くが国道1号線を通らずに

100km も遠回りとなる国道7号線を迂回するルートを選択している。このような制度化されていない費用はカ

ンボジア物流産業の発展を阻害する要因であり、こうした料金徴収に対する透明性の確保が必要となる。

表 3.6 は、現地輸送業者へのヒアリングをもとに作成したカンボジア国内の輸送コスト(料金)である。

表 3.6 カンボジア国内の輸送コスト(2004 年)

Prey Veaeng Sihanoukville Battambang Siem Reap Kracheh Stung Treng

90km (204km) 230km 291km 314km 340km 455km 538km(To Border)

167km(From Border)

Container(2̃2.5m)

$250($2.78/km)

$120($0.52/km)

$230($0.79/km)

$350($1.12/km)

$320($0.94/km)

$625($1.30/km)

$839($1.56/km)

$70($0.42/km)

Container(4m)

$280($3.11/km)

$170($0.74/km)

$300($1.03/km)

$400($1.27/km)

$380($1.12/km)

$750($1.56/km)

$1,006($1.87/km)

$84($0.50/km)

Cement -- $4.20/ton -- -- -- -- -- --

Gasoline -- $5.55/ton $6.50/ton -- -- -- -- --

ShipFood, Cement,Stone, Brick -- -- -- $10̃12.5/ton $2.50/ton

$15̃17.5/ton$10̃12.5/ton -- --

*Dry Season Rainy Season

Pakse(Laos)

Phnom Penh

Train

Truck

Distance from PP

出典: 調査団 注: ストゥントゥレンおよびパクセへの輸送コストは推計値、他はすべて輸送業者へのヒアリングによる。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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3.1.4 港湾取扱い貨物量

先に述べたように、本件で考察の対象としている南北コリドーの物流はまだ顕在化していないが、カンボジア

を経由したラオスへの石油製品輸送、カンボジア北部地域の開発振興のために、これまで重点が置かれてい

た東西コリドーに加えて南北のコリドー開発が重要であると考えている。以下、南北コリドーのゲートウェイは

プノンペン港およびシアヌークビル港であることから、これら2つの港湾の港湾取扱いの現況を記す。

(1) プノンペン港の取扱い貨物量

プノンペン港はプノンペン市中心部、トンレサップ河に建設された河川港である。ここはトンレサップ河および

バサック河が交わる河川交通の要衝であり、したがってプノンペン市がこの地に形成されたものである。プノ

ンペン港から河川沿いにベトナム国境までは約 110km、ベトナムを経由して外洋にいたるまでは約 330km の

距離がある。

過去 10 年間の港湾統計を見るとプノンペン港の取扱い貨物量は年毎の変動が激しく、トレンドを見出すこと

は困難であるが、石油製品の輸入だけは概ね40 万トン/年で推移している。

コンテナ化は世界の船舶貨物輸送の流れであるが、プノンペンでは 2002 年より Sovereign Base Logistics

Holdings Co., Ltd.によりホーチミン港との定期コンテナ輸送サービスが行われている。ホーチミン港はこの地

域のハブ港の役割を果たしており、ここを経由して東アジア諸国、中国、香港、上海、台湾との交易がなされ

ている。

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表 3.7 プノンペン港の取扱い貨物量予測

Description Unit 2003 2004 2005 2006 2007 2008

Quantity of goods and petroleum

614,500 645,500 674,500 696,500 717,500 740,500

a. Quantity of goods 253,500 277,500 303,500 318,500 334,500 352,500

- Imported goods 163,500 179,000 196,000 205,000 215,000 227,000 I

- Exported goods

ton

78,500 86,000 94,000 98,500 103,000 108,000

- Local goods 11,500 12,500 13,500 15,000 16,500 17,500

b. Quantity of Oil 361,000 368,000 371,000 378,000 383,000 388,000

Quantity of loading goods

258,000 283,000 308,500 324,500 341,000 359,000

II - Direct delivery ton 167,500 184,000 201,000 211,000 221,500 233,000

- Passing warehouse & compound

90,500 99,000 107,500 113,500 119,500 126,000

III Mobile loading ton 76,000 84,000 92,000 96,000 100,500 105,500

Quantity of total ships 1,160 1,210 1,247 1,297 1,341 1,385

1. Foreign ship and ferry

270 280 287 300 306 315

2. Cambodia ship and ferry 45 50 55 62 65 70

3. Local boat 285 310 330 350 380 400

IV

4. Petroleum ship and ferry

unit

560 570 575 585 590 600

出典: プノンペン港湾公社の資料より調査団作成

主要品目別・国別(出発地)コンテナ貨物量をみると、海外からのカンボジア向けのコンテナ貨物の約半分は

香港との交易に利用され、品目別にはタイルおよびテキスタイルが全体の 8 割程度を占める。一方、主要品

目別・国別(目的地)では中国が主要な輸出先であり全体の4割程度を占め、これにベトナムが続くかたちと

なっている。

プノンペン港湾公社(Phnom Penh Port Authority)による5 カ年計画に示された将来見通しによれば、どの品

目においても非常に穏やかな成長を見込んでいる。このシナリオには南北コリドーを経由したラオスの需要増、

あるいはカンボジア北部地域の開発といった戦略的な考えは含まれていない。なお、プノンペン港湾公社にお

いても、一般的に貨物のコンテナ化対応が重要と認識されているが、現状では1時間あたり8個程度のコンテ

ナしか取扱うことができず、また後背地も限られていることから、将来的になんらかの対策が必要と考えられ

る。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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(2) シアヌークビル港の取扱い貨物量

シアヌークビル港はカンボジアで唯一外洋に接する国際港湾であり、カンボジアの国際物流ゲートウェイであ

る。シアヌークビル港はわが国の資金援助により逐次改善されつつあり、将来のコンテナ輸送に見合う施設

整備がなされつつある。

現在のシアヌークビル港での主要取扱い品目は衣料関係製品であり、最恵国待遇の恩恵を受け主に欧米向

けに輸出されている。図 3.2 はシアヌークビル港での取扱い貨物量の推移を示す。コンテナ貨物の緩やかで

はあるが継続的な増加傾向がみてとれる。

Year 1998 1999 2000 2001 2002 2003

出典: シアヌークビル港湾公社の資料より調査団作成

図 3.2 シアヌークビル港取扱い貨物量の推移

上記のようにまだコンテナ貨物の取扱量は限られたものであるが、将来的にコンテナ化は重要であり、そのた

めに国道 4 号線の拡幅、4 号線沿いの産業開発、維持管理が不十分でほとんど使われなくなっている鉄道の

リハビリが重要であると考えられている。

3.2 ラオスの物流状況

3.2.1 概観

ラオスはカンボジア同様農業国であり第 2 次産業はほとんどなく、多くの物資を輸入に頼っている。表 3.8 に

よると輸入は、タイからが最も多く、それに続いてベトナム、中国が多い。さらに輸出においてもタイ、ベトナム

が多く、それに続いてオーストラリア、フランス、イギリス、中国が多い。

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表 3.8 ラオスの過去4年間の輸出入先上位10 ヶ国 (million USD)

Import1999/2000 2000/2001 2001/2002 2002/2003 1999/2000 2000/2001 2001/2002 2002/2003

1 Thailand 163 146.7 171.2 161.5 Viet Nam 23.9 33.8 24.5 3272 Australia 0.1 0.1 - 40.9 China 18.7 35.5 34.2 89.53 France 9 22 22.3 30 Japan 0.1 0.4 1.1 10.84 Viet Nam 23.3 19.5 27 21.2 France - 0.8 2 9.15 United Kingdom 5.4 9.8 10.8 16.8 Korea - 1.9 2.4 6.16 China 7.1 13.8 15.4 10.9 United Kingdom - 0.2 0.2 5.87 Belgium 2.7 5.1 2.1 8.4 Germany 0.6 0.1 - 4.88 Italy 9.4 14.5 15.6 7 Switzerland - 0.2 - 3.89 Poland 0.1 0.4 1.1 4.1 Thailand 91.5 82.3 102.5 1.9

10 Japan 2.4 3.4 0.9 3.9 Austria - - - 1.8

Exports

出典: Lao Trade Promotion Center, The General of Trade Information, 2004

ラオスは、自動車、石油製品、医薬品、鉄などほとんどすべての工業製品を輸入しているが(表 3.9 参照)、

主にタイから建設資材、工業製品、石油製品、ベトナムからは石油製品、日常雑貨を輸入している。その一方

で、輸出品は、コーヒー、木材、電力などしかなく、全体でみれば現在でも大きな輸入超過となっている。ただ

し、タイとの輸出入では大幅な輸出超過になっているが、これは統計に電力輸出が入っているためである。

表 3.9 主な輸出入品(2002 年) 輸 入 輸 出 品目 Million USD 品目 Million USD 1 Sedan Car 73.1 Coffee 19.3 2 Fuel 69.8 Electric Power 15.6 3 Iron 57.0 Lumber 11.5 4 Trucks 18.0 Timber 8.5 5 Medicine 15.2 Plywood 5.6 出典: National Statistical Center, Lao PDR, Basic Statistics of Lao PDR, 2003

ラオスは内陸国であり対外貿易をおこなう国際港湾をもたないために、このような物資の輸送にあたりラオス

は大きなハンディキャップを負っている。輸出入にかかる物流のほとんどは道路輸送に頼らざるを得なく、中

国との輸出入のごく一部がメコン河を利用するのみである。

輸出入のほとんどは周囲のタイ、ベトナム、中国を相手とするものであるが、それ以外のヨーロッパなどとの

貿易は、タイのラムチャバン港、バンコク港(クロントーイ港)を経由して行われている。これらの物資はラムチ

ャバン港、バンコク港で荷揚げされたのち、トランジット貨物として保税され、ラオスのターナレーンでラオスに

入る。ターナレーンはタイのノンカイと結ぶフェリーの発着場である。

物資輸送が多い国境ポイントは、ターナレーンのほか、タイのウボンラチャタニと結ぶチャンパサック県のバン

タオソンメット、ベトナムとの国境のラオバオ、中国との国境のボーテンボーハンの 5 ヶ所である。その他、メコ

ン河沿いのチェンセン、サバナケット、タケク、ボーケオ、ベトナム国境のシェンクワン、サムナーなどを経由す

る物流ルートもある。これらのルートを利用して輸送された物資は、ルアンプラバン、タケック、サバナケット、

パクセなどに集積する。

このようにいくつかの都市に異なるルートで物流が分散するのは、ラオスが南北に細長い国であること、また、

カンボジアにおけるプノンペンとは異なりビエンチャンの都市経済は全国の物流を支配するほど大きくないか

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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らと考えられる。このように現時点でのラオスの物流は分散型の構造となっていると言うことができるが、トラ

ンジット貨物、石油製品などビエンチャンに集積したのち全国に流通するものの割合は高い。

パクセ、サバナケットはラオスのインドシナ戦略上重要な都市である。サバナケットはインドシナ第一東西回廊

の拠点都市として成長が期待されており、パクセはラオス南部の中心都市となっている。先にも述べたように

これらの都市は首都ビエンチャンから遠く、首都圏から比較的独立した物流圏、物流網を形成している。ラオ

ス中部のサバナケットの物資の大半は対岸のムクダハンを経由してタイ国から入ってきていたが、近年国道

13 号線(東西回廊)の整備に伴い、ベトナムからの物流も増加している。南部の中心であるパ クセではタイの

ウボンラチャタニ経由でタイからの物資が輸送されてくるものが多い。両都市ともに石油、物資の倉庫を持ち、

都市とその周辺が地域の物流拠点となっている。ラオス北部のルアンプラバン、ウドンサイ、ルアンナムター

はタイ北部と中国の中間に位置し、タイと中国からの物流の中継地域となっている。

3.2.2 品目別

(1) エネルギー

ラオスはエネルギー源である石油製品を 100%輸入に頼っている。石油精製施設はなく、タイ、ベトナムから

の石油製品の輸入に依存している。そのため、石油価格がタイやベトナムの約 1.5~2 倍と高く、産業育成の

ネックとなっている。タイからの石油輸入は、ターナレーン、バンタオソンメット、サバナケット、タケック、ボーケ

オ(メコン河をはさんでタイのチェンライ県チェンセンの対岸)で行われ、それぞれに石油貯蔵施設があり、そこ

から全国に石油が流通している。一方、ベトナムからの石油輸入は、シェンクワン、サムナー、ラオバオを経

由し、それらの地点に石油貯蔵施設がある。現在、南部でベトナムと結ぶ国道 18 号線のアタプ県にあらたな

石油貯蔵施設を建設する計画が進んでいる。中国雲南省からの石油の輸入はなく、逆にボーテンボーハンに

石油の再輸出のための貯蔵施設を建設する計画もある。

(2) 農産品

ラオスは農業国であり、国土のほとんどは農村地帯に属する。農村部では自給自足が基本であり、農産品の

流通は少ない。ビエンチャンなどの都市部では市場が整備され、農村部からの農産品が流通している。また、

ラオスの都市部にあるインドシナマーケットにはタイ、ベトナム、中国の農産品が輸入され、販売されている。

これらの農産物は、インタビューによると陸路でベトナムから入ったものであるが、量的にはわずかなもので

あると思われる。

(3) 家電、工業製品

タイ、ベトナム及びそれ以外の国からの家電、工業製品は、タイを通過し、トランジット貨物としてラオスに入っ

ている。これらも、石油製品と同様ターナレーンを経由するものが最も多く、ビエンチャンに入った後、全国の

都市部に輸送される。

3.2.3 物流産業

ラオスの物流産業は零細企業が多く、それぞれが施主からアドホックで輸送を請負い、起点から終点まで一

社でサービスをおこなうような前近代的な輸送サービスにとどまっている。これらの零細企業は、一般的に業

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者登録をおこなっておらず、その数や実態を把握することは難しいが、ラオス国内の都市間輸送を中心に営

業している。我が国のような幹線輸送と地域輸送といったシステムはまったく整備されていない。また、ダンピ

ングや片荷輸送が多く、効率的な経営とはなっていない。

タイ、ラオスは 1999 年の 3 カ国協定によってトラック走行が自由化され、タイのトラックが直接ビエンチャンま

で乗り入れできるように、ラオスのトラックもバンコクまで到達できるようになった。また、これまでラオスのトラ

ンジット貨物はタイの公営輸送会社であるETO が独占していたが、2003 年から民間の参入も図られ、タイの

民間トラック企業がトランジット貨物の輸送にあたっているが、ラオスのトラック企業は資格審査を通過できて

いない。ベトナムとの国際輸送は現在もラオバオでの荷物の積み替え作業が必要となる。ドライバーは事前

に連絡を取ってベトナム側の輸送業者と落ち合う、もしくは現地で直接交渉して荷物の搬送を請け負うという

二つのパターンが見られるのはカンボジア~ベトナム国境と同様である。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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4 インドシナ南北コリドー開発構想

4.1 インドシナ南北コリドー形成の目的

「インドシナ南北コリドー形成」の目的は、カンボジアのシアヌークビル港を起点とするカンボジア-ラオス間を

南北に貫く有効な物流手段を形成することによって、プノンペン~シアヌークの成長回廊、ラオスのパクセ、サ

バナケットなどの拠点経済を連携し、その波及効果をインドシナ内陸部まで広げることにある。それに付随し

て、ラオス南部、カンボジア東北部の貧困削減に寄与し、カンボジア、ラオスの物流ビジネスチャンスの多様

化や産業立地の促進を図ることである。具体的には以下の6点に集約できる。

- 貧困地帯の貧困削減

- ラオスにおける物流安全保障の向上(代替物流ルートの確保)

- エネルギーの安定確保

- 物流産業の育成

- コリドー形成による地域経済の振興

- シアヌークビル港の物流量の確保による港湾経営の安定化

貧困地帯の貧困削減

インドシナ地域においては、インフラ整備に誘発される形で、すなわち都市間幹線道路沿いに発生した経済コ

リドーがいくつか見受けられる。例えば、タイのバンコク~東部臨海工業地帯(ESB)、バンコク~アユタヤ~サ

ラブリといった東南アジア最大級の工業集積コリドーであり、また、ラオスのビエンチャン~サバナケットのよう

な幹線道路に対するローカルなサービス産業の小規模な集積程度にとどまるものもある。程度の差はあれ、

幹線道路およびそれからもたらされる効果によって産業集積、ビジネスチャンスのポテンシャルが向上した地

域に発生した経済活動である。

幹線道路の持つこのような産業立地促進効果を活かした地域開発、また、幹線道路そのもののメリットである

都市間交通の高速化、安定化の効果によってインドシナ市場へのアクセシビリティーを向上させるという戦略

的効果を期待し、前述のようなインドシナ東西コリドー、南北コリドー整備が行われつつあり、結果としてインド

シナの主だった地域の中心的都市はネットワーク化されることになる。

さて、今回注目している南北コリドー上にあるカンボジア北東の内陸部、およびラオス最南部は、各国の中で

もさらに開発の遅れた地域であり、貧困率も高く、地域経済を牽引するような核となるような産業も育っていな

い。近年ラオス、カンボジア、ベトナムの三カ国は、これらの地域にベトナム中部の内陸部を加えた地域の貧

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困の削減と地域開発を促進するため、「グリーントライアングル開発」あるいは「CLV 開発トライアングル」

(Green Triangle Development (CLV development triangle))と称される構想を打ち出した。この構想を実現

するには、開発ポテンシャルが比較的高いと考えられている農業と観光に重点を置いた産業振興策およびそ

れを支援するインフラ整備、また、制度・仕組みの整備が必要とされている。本調査で提案しているインドシナ

南北コリドー開発構想とその構成プロジェクトは、この地域開発構想を支援するものである。すなわち、このト

ライアングル地域とシアヌークビル、プノンペン、パクセ、サバナケットと結ぶインフラ整備を整備し、沿線での

農業、観光振興を促すと同時に道路を利用した国際物流の振興を目指すものである。

ラオスにおける物流安全保障

ラオスは内陸国であり、その物資輸送のほとんどをタイに依存している。特に、タイをトランジットする貨物へ

の過度の依存はラオスの物流面での価格交渉力を低下させ、ETO の輸送費用に見られるように高い輸送コ

ストを負担してきた。

このような 1 国、しかも1つのルートにほとんどのトランジット貨物や石油製品の輸入を依存する体質は、安定

的かつ完全な物流が保障されていないことを意味し、ひとたびタイ・ラオス間に何らかの問題が生じれば、ラ

オスの命運をタイに握られていると言うのも言い過ぎとはいえない。ラオスにとって、タイルートとは別に国際

物流ルートの開拓、確保することは国家の安全保障上の重要課題なのである。しかし、このような観点から、

これまで 10 年以上に亘ってベトナムのダナン港の一部を租借する交渉を行ってきたものの実質的な進展は

みられなかった。

ラオスとしてはタイルートに加えて、ベトナム中部ルート、ベトナム南部ルート、中国ルートなど様々な国際物

流ルートの開発が安全保障上のリスク分散に繋がり、かつ輸送コストに競争原理を導入できる機会を生む。

今回提案するインドシナ南北コリドーは、これまでに提案された東西系の陸路とは若干異なる点がある。つま

り、これまでラオスが交渉してきたようなインドシナの中での強国ではなく、ラオスと同様、開発が緒についた

ばかりのカンボジアと、すなわち弱国どうしが協力してつくる輸送ルートであるという点である。南北コリドーは

ラオスとシアヌークビル港(カンボジア)をむすぶ国際物流ルート、ラオスの対外貿易の窓口となるばかりでな

く、シアヌークビル港の拡張に伴って将来的には一部地域の租借も視野に入れることができる優良な国際物

流ルートと位置づけることができる。

カンボジア、ラオスのエネルギーの安定確保

現在、ラオス、カンボジアともに石油製品をタイ、ベトナム(経由)から輸入することに依存している。このため、

石油、ガソリンの価格はタイ、ベトナムより高く、また、カンボジアでは電気料金がかなり高く、これが民間投資

の大きな阻害要因となっている。また、有事におけるエネルギー確保の面でもリスクがある。カンボジア、ラオ

スを貫くインドシナ南北コリドーは、独自の管理可能な国際物流ルートの確保により両国のエネルギーの安定

供給に寄与する。

物流産業の育成

カンボジア、ラオスの物流機会の増加はマーケットの拡大を意味することから、カンボジア、ラオス国内の物

流産業を育成するチャンスを提供することができる。ただし、インドシナの物流は自由化の方向にあるため、こ

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

37

れらのビジネスチャンスはタイやベトナムの物流産業にも等しく開かれていくと思われることから、物流産業の

育成にあたっては、業界の近代化などを積極的に進める方策が求められる。

コリドー形成による地域経済振興

南北コリドーのインフラの向上により、コリドーを動くヒトとモノが開発のポテンシャルとなって地域に新たなビ

ジネスチャンスが生まれる。広域的な物流活動のほか、観光、地場産業、地域おこしなどのポテンシャルを活

かした地域開発を進める。今回の調査ではこういった観点からインフラ、特に道路整備の提案だけでなく、観

光開発を中心とした沿道の地域振興につながる提案も含まれる。具体的には、今後の観光開発ポテンシャル

の大きいラオス南部、カンボジア東北部における観光を中心とした地域開発を提案する。

シアヌークビル港の物流量の確保による港湾経営の安定化

シアヌークビル港の港湾貨物は、今後の世界経済の着実な成長を前提に2010 年にはコンテナ 25 万 TEU、

一般 100 万トンの取扱量を見込んでいる。今後の世界経済の伸び、カンボジアの経済成長、貨物のコンテナ

化を考えれば、将来貨物の見込みは上方に修正されることもありうるが、最大の懸念要因はカンボジアの国

道 1 号線の改修及び第 2 メコン橋建設によってホーチミン~プノンペン間の第 2 インドシナ東西コリドーが完

成し、それによってホーチミン港の利便性が高まることである。カンボジアにとっても、ラオスにとっても国際物

流ルートの多様化は物流コスト低減のための積極的な環境を整備することにつながるが、シアヌークビル港

にとってはサバイバルのための試練となりうる。そのとき、南北コリドーを経由してラオスをシアヌークビル港

の物流マーケットとしておくことは、将来的なシアヌークビル港の安定的な物流量確保、経営の安定化につな

がる。

4.2 ポテンシャルルート

カンボジアのシアヌークビルを起点としてカンボジア、ラオスを南北に結ぶ道路ネットワークは以下のとおりで

ある。現状では、カンボジア国内の国道 7 号線のクラチェ~国境間の路面状況が劣悪で道路輸送には適して

いないが、ネットワークとしてはすでに完成している(図 4.1 黄色で示された部分)。

シアヌークビル~(4 号線)~コンポンスプー~(51 号線)~ウドン~(5号線)~プレックダム~(61 号線)~チ

ェアリ~(6、7 号線)~コンポンチャム~(7 号線)~プラサット~(73 号線)~チュロン~(308 号線)~クラチェ

~(7 号線)~国境~(13 号線)~パクセ~(13 号線)~サバナケット

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38

出典: 調査団

図 4.1 インドシナ南北コリドー提案ルート

シアヌークビルからカンボジア・ラオス国境まで629km、国境からパクセを経由しサバナケットまで427km とな

っている。このルートはアジアハイウェイのAH11 に指定されているルートである。

ただし、長期的には、チュンプレイから国道6号線でコンポントムへ向かい、コンポントムから国道64号線、州

道 213 号線を利用してラオスの国道 14 号線に至る経路もありうる。このルートは距離的には既存のルートよ

り約 100km 距離を短縮できるが、カンボジア国道 64 号線の補修、213 号線とラオスの 14 号線までのミッシ

ングリンクの新設、ラオス14 号線の整備といったインフラ整備が必要である。

4.3 インドシナ南北コリドーの現状

4.3.1 周辺社会経済状況

(1) カンボジア

カンボジア国内では南北コリドーはストゥントレン州、クラチェ州、コンポンチャム州、カンダール州、プノンペン

市、コンポンスプー州、コッコン州、シアヌークビル特別市の6 州 2特別市を通過する。表 4.1 に示すように沿

線人口は約 500 万人となり、カンボジア全人口の約 4 割を占める。シアヌークビルからプノンペンにいたる地

域はわずかながら工場の立地がみられ、「成長回廊」と呼ばれるカンボジアの産業振興を牽引する地域となり

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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うる。プノンペンからコンポンチャムにいたる地域は首都近郊の農作地帯で人口密度が高く、米、ゴムなどの

生産が盛んに行われている。クラチェとストゥントレンが属する東北部は山岳地帯で人口密度が低く、カンボ

ジアの中でもっとも開発の遅れた貧困地域である。

表 4.1 南北コリドー沿線の人口(カンボジア)

人 口 (1998)

世帯数 (1998)

平均世帯人数 面 積 (km2)

人口密度 (person/km2)

1 Krong Preah Sihanouk 155,690 28,015 5.56 868 179.4

2 Kaoh Kong 132,106 24,964 5.29 11,160 11.8

3 Kampong Spueu 598,882 115,728 5.17 7,017 85.3

4 Phnom Penh 999,804 173,678 5.76 357 2,800.6

5 Kandal 1,075,125 206,189 5.21 3,568 301.3

6 Kampong Cham 1,608,914 312,841 5.14 9,799 164.2

7 Kracheh 263,175 49,326 5.34 10,094 26.1

8 Stueng Traeng 81,074 14,323 5.66 11,092 7.3

合 計 4,914,770 925,064 -- 53,955 91.1

出典: National Institute of Statistics, Cambodia, 1998 Population Census of Cambodia, 1998

(2) ラオス

ラオス国内では南北コリドーはチャンパサック県、サラヴァン県、サバナケット県、カムアン県、ボリカンサイ県、

ビエンチャン市の5県 1特別市を通過する。表 4.2に示すように沿線人口は約 260万人となり、ラオス全人口

の約 5 割を占める。この地域はメコン河に面した比較的肥沃な地域で、ラオスの経済活動の大半を担ってい

る。特に、チャンパサックはタイとの貿易、サラヴァンは高原でのコーヒーや野菜の栽培、サバナケットはタイ

側のムクダハンとの国境貿易の中心として経済活動が盛んであり、インドシナ東西コリドーのタイとの結節点

として今後の成長も期待されている。

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表 4.2 南北コリドー沿線の人口(ラオス)

人 口 (千人, 2003)

世帯数 (2003) 平均世帯人数 面 積

(km2) 人口密度

(person/km2)

1 Changpasak 622.4 101,186 6.15 15,415 40.4

2 Saravane 318.1 53,506 5.95 10,691 29.8

3 Savannakhet 833.9 125,955 6.62 21,774 38.3

4 Khammuane 338.2 60,933 5.55 16,315 20.7

5 Borikhamxay 203.1 36,624 5.55 14,863 13.7

6 Vientiane 650.6 114,793 5.67 3,920 166.0

合 計 2,966.3 492,997 6.02 82,978 35.7

出典: National Statistical Center, Lao PDR, Basic Statistics of Lao PDR,1998

4.3.2 インフラ整備状況

(1) 港湾

カンボジアには、外国貿易をあつかう港湾としては、シアヌークビル港とプノンペン港の二港ある。シアヌーク

ビル港はシャム湾を望む深水港湾で、カンボジアの港湾貨物の約 75%を取り扱っている。一方のプノンペン

港はメコン河の河川港で、ホーチミンとの間の河川輸送の港でカンボジアの港湾貨物の約 25%を扱っている

が、シアヌークビル港の貨物量の増加によってその割合は年々低下している。

表 4.3 シアヌークビルとプノンペン港の取扱量 (1000 tons)

1995 1996 1997 1998 1999

Phnom Penh Unloaded 92.7 89.5 62.7 55.1 390.5

Loaded 60.2 40.4 150.1 181.0 13.7

Shihanouk Vill Unloaded 554.3 636.6 652.8 745.5 1,078.0

Loaded 153.4 104.4 141.5 139.4 133.0

出典: National Institute of Statistics, Cambodia, Cambodia Statistical Year Book, 2000

シアヌークビル港

シアヌークビル港はカンボジア唯一の深港湾として国際物流の結節点となっている。現在、JBIC ローンを利

用して港湾施設の拡張整備が進められている。第 1 期としてすでにコンテナバース、ヤードの整備が終了し、

第 2 期の延長、荷役施設などの整備が予定されている。

- バース長:1250m

- コンテナバース 400m、一般バース 350m、500m

- 水深:7.5m(航路部分 9m)

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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- 取扱量:コンテナ 25 万 TEU、一般 100 万トン(2010 年)、(2003 年で 177 万トン、内コンテナは

181000TEU=80 万トン)

現在のところ、シアヌークビル港からの輸入貨物はすべてプノンペンに運ばれ、ほとんどがプノンペンで消費

され、ごく一部がプノンペンから地方に分散する。

出典: 調査団

図 4.2 シアヌークビル港(左:現況、右:2期工事)

プノンペン港

プノンペン市のわきを流れるメコン川にはプノンペン港が整備されている。このプノンペン港は、シアヌークビ

ル港とともに、カンボジアの物流の一大拠点となっている。

- コンテナヤード:A 68m x 36.2m、B 101m x 36m

- ワーフ:長さ300m、幅 20m

- 荷役施設:フレーン17 機、45 トンスタッカー1機、8 トンスタッカー1 機

- 倉庫 10 棟

- 取扱量:コンテナ1.1 万 TEU、一般 3 万トン、石油42 万トン(2003 年)

プノンペン港を利用する物資は、ベトナムホーチミンを経由するトランジット貨物及びベトナムからの輸入品で

ある。石油製品、電化製品、建設資材、一般生活雑貨が多い。

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出典: 調査団

図 4.3 プノンペン港

(2) 道路

南北コリドーを形成する道路インフラの補修はほぼ完了しており、カンボジアの国道7号線、73 号線、308 号

線、61 号線の渡河の補修を残すのみとなっている。今後は、将来の交通量の増加に備え、シアヌークビル~

プノンペンの 3 号線やプノンペンと北部を結ぶ 6 号線の幅員の拡幅が必要となるであろう。一方、ラオス側の

幹線道路の補修は完了している(表 4.4 および図 4.4 参照)。

表 4.4 南北コリドーを形成する道路整備の状況 国 道路 区間 距離 状況

国道 4 号 シアヌークビル~ダムナックアンピル

193.0km

コンクリート舗装片道1 車線、交通量の増加が著しい。

国道 51 号 ダムナックアンピル~ウドン

38.0km 世界銀行による緊急補修が完了したが、本格的な補修が必要。片道1車線。

国道 5 号 ウドン~プレックダム 7.0km トンレサップ河を渡る橋梁の整備が必要。 国道 61 号 プレックダム~タオ

バック 16.1km

世界銀行の援助による緊急補修が完了したが、本格的な補修が必要。片道1車線。

国道 6 号 (含 6A 号)

タオバック~チュンプレイ

29.0km コンクリート舗装片道1 車線。ところどころ補修が必要。また、交通量が増加しており、拡幅の必要性がある。

国道 7 号 チュンプレイ~プラサット

54.3km 近年、道路の傷みが激しくなってきており、補修の必要がある。

国道 73 号 プラサット~チュロン 58.0km

未補修。2001 年政府によって修復されたが、洪水被害を受けたまま。

州道 308号

チュロン~クラチェ 35.0km

未補修。未舗装、路面の凹凸が激しく、雨季の通行は不可能。

カンボジア

国道 7 号 クラチェ~ストゥントレン~国境

198.4km

未補修。中国の援助で改修工事中。

ラオス 国道 13 号 国境~パクセ~サバナケット

427.0km

コンクリート舗装。片道2 車線で補修済み。

出典: 調査団

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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出典: カンボジア公共事業省の GIS データから調査団作成

図 4.4 カンボジア国の道路整備の状況

(3) 鉄道

シアクークビルとプノンペン間には1969年に開通した全長269Km、軌道幅は1000mm の鉄道がある。1970

年以降の国内紛争によって維持管理がほとんど行われていなかったため、軌道の損耗が著しく脱線の危険

性が高くなっている。運行スピードは平均20Km 以下であり、プノンペン~シアヌークビルの走行には 9時間を

要する。

シアヌークビル~プノンペン間の輸送実績は、2002年で約 20 万トンであり、その約87%がセメントと燃料(石

油製品)で占められている。

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出典: 調査団

図 4.5 軌道の状態(北線)

(4) 河川輸送

メコン河の河川輸送は、カンボジア・ラオス国境付近のコーンの滝の上流と下流で分断される。上流では中国、

ミャンマー、タイ、ラオスにいたる国際物流ルートとなっているが、これを利用している貨物はほとんどみられな

い。

一方、メコン河下流では、カンボジア、ベトナム間の国際物流ルートとなっている。このうちホーチミン~プノン

ペン間では、乾季には 3000DTW 、雨季には 4000~5000DTW クラスの船舶が運航でき、年間約 10 万トン

の貨物と約 42 万トンの石油製品を輸送している。多くの貨物は、香港、中国、台湾からのもので、ホーチミン

港で積み替えられ、プノンペンまで輸送される。プノンペン以北では、メコン河の水深が浅くなり(約 4.5m)、

20TEU が運べる程度の小型船舶でコンポンチャムまで貨物を輸送しているが、それより上流では、水深がさ

らに浅くなり、5~8TEU程度のはしけによる貨物輸送がおこなわれている。

(5) 国境ポイント

カンボジアとラオスの国境は、国道 7 号線と 13 号線の結節点である。この越境ポイントはインターナショナル

チェックポイントではなく、ローカルチェックポイントと位置付けられているが、外国人旅行客などの通過は可能

である。カンボジア側の国道7号は通行が困難なほどに崩壊しており、国境~ストゥントレン間はメコン川のボ

ートを利用している。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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4.3.3 観光の状況

(1) 観光資源

以下に、南北コリドー沿いで観光開発のポテンシャルが高い、ラオス南部・カンボジア東北部における主要観

光資源とその配置を示す。UNESCO 世界遺産であるワットプー、東南アジア最大といわれるコーンの滝など

が中心的観光資源となり、その周囲に自然資源や少数民族村落などの観光資源が存在している。

ハノイ

ビエンチャン

バンコク

ヤンゴン

プノンペン

中国

ベトナムミャンマー

カンボジア

タイ

ラオス

タイ湾 南シナ海

アンダマン海

出典: 調査団

図 4.6 観光資源配置図

(2) 観光市場

当該地域の国際観光入れ込み数を表 4.5 にまとめた。ラオス・チャンパサック県全体の入れ込みが近年大き

く伸びていることが分かる。ラオス側に比べるとカンボジア側を訪れる観光客の数は少なく、観光開発は始ま

ったばかりという印象である。2002 年時点でのラタナキリ県の訪問者数が、同県のヤクロム湖の訪問者数よ

りも少ないのは、前者のデータ収集体制が十分に整っていなかったからではないかと考えられる。

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表 4.5 ラオス南部・カンボジア東北部の国際観光客数

国 県(観光地) 2000 2001 2002 2003 2004 ラオス セコン - - 574 2,242 -

アタプー - - 6,841 9,149 -

チャンパサック 34,796 55,142 45,635 65,827 - (ワットプー) 8,632 13,121 17,361 18,881 -

国全体 737,208 673,823 735,662 636,361 -カンボジア ストゥントレン - - 1,278 3,660 9,011

ラタナキリ - - 1,397 3,016 15,085

(ヤクロム湖) 1,226 1,943 2,376 - -

国全体 466,365 604,919 786,524 701,014 1,055,202 出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004 ワットプー併設資料館展示資料 カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005 ヤクロム文化・環境センター展示資料

表 4.6 に 2003 年ラオス・カンボジア両国の自国民の旅行者数を記す。なおラオス側各県の値は推計値であ

る3。国際観光客と同程度もしくはそれ以上の人数の国内観光客市場があることが分かる。

表 4.6 ラオス南部・カンボジア東北部の国内観光客数

国 県(観光地) 2003

ラオス セコン 7,000

アタプー 9,000

チャンパサック 80,000

(ワットプー) 27,315

カンボジア ストゥントレン 3,660

ラタナキリ 5,719

(ヤクロム湖) -出典: 調査団による推計 ワットプー併設資料館展示資料 カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005

ラオス側観光市場

表 4.7 はチャンパサック県の入り口のひとつであるタイ国境(バンタオ)における、国別の入国者数である。県

全体の訪問者数が 65,827 人なので約 6 割の訪問者がタイ国境から入ってきていることになる。ここで見る限

り、タイ人が圧倒的に多くのマーケットを占めており、フランス人・アメリカ人・イギリス人・ドイツ人など欧米人

マーケット、日本人マーケットがそれに次いでいる。カンボジア人も多く通行しているが、その内のどれだけが

旅行者で、どれだけが国境地域の住民であるかはここからは明らかではない。表 4.7 に入っていない残りの

4 割は、ルアンプラバン、フアイサイ、ビエンチャンなどでラオスに入国し陸路・水路で移動してくる旅行者であ

る。

3 推計には以下の式を用いた。 ラオス人観光客数={客室数*平均一部屋あたり宿泊人数*ホテル利用率*365(年間日数)-国際観光客数*国際観光客平均滞在日数}/ラオス人観光客平均滞在日数 ただし、平均一部屋あたり宿泊人数は1.7(人/部屋)を、平均滞在日数は国際観光客についてはチャンパサック:3日、セコン・アタプー:2日、ラオス人観光客についてはいずれも2 日をそれぞれ仮定した。その他の値は統計データを用いた。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 4.7 タイ-ラオス国境(チョンメク-バンタオ)における国籍別入国者数(2003 年)

国籍 人数

タイ 29,217

フランス 2,523 カンボジア 1,570

アメリカ 1,060

日本 1,002 イギリス 976

ドイツ 938

その他 4,249 合計 41,535 出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004

カンボジア側観光市場

現時点でカンボジア東北部を訪れる国際観光客はそれほど多くはない。ラオス南部から国境を越えてくるバッ

クパッカーや、プノンペンから飛行機でやってくる短期滞在者などがおもなパターンで、欧米人マーケットが中

心である。ただ、中には一週間程度の比較的長期滞在をする旅行者もいる、との情報も旅行会社から得られ

た。表 4.5 にあるように、2004 年にはラタナキリへの外国人訪問者数が大きく増加している。

(3) 現状分析

ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発の現状を、観光地ごとの SWOT 分析によって以下のようにまとめ

た。

表 4.8 チャンパサック県パクセおよび周辺観光地(ラオス)の観光開発のSWOT 分析 正 負 現況 強み(strength)

• ラオス第 3 の都市パクセは、地域の観光客の滞在拠点となっている

• 国際空港(パクセ空港)・ラオス国道13 号・タイ国境などによるアクセスが良く、地域の観光ゲートウェイとして機能している

• ワット・プー、コーンの滝群などの観光資源が多くの観光客を集めている

弱み(weakness) • 主要マーケットがタイ人であり、欧米人・日本人

マーケットなどは限定的である

• 主要マーケットであるタイ人の滞在期間が短い

• カンボジア国境での出入国手続きや移動手段(ボート)の手配が個人旅行者にとっては容易ではない

将来 機会(opportunity) • カンボジア国道 7 号・国境施設の整備、到着ビ

ザの発給など国境越えが簡便化される予定である

• タイ・ラオス・カンボジアの3カ国が接する地域であり、道路等のインフラが整備されれば、地域の結節点となりうる

• セピアン国定保護区の希少な動植物は今後の観光資源となりうる

• メコン観光開発プロジェクトによる集落観光開発が実施される

脅威(threat) • 多くの観光客が訪問することによって観光的な

魅力や快適性が損なわれる恐れがある

• 観光資源ともなる川イルカが急速に減少しつつあり、絶滅の危機にある

• 観光資源の保護の経済的な動機付けがないと、資源の破壊が進み、観光的魅力が低下する恐れがある(漁業と川イルカの関係)

出典: 調査団

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表 4.9 セコン県、アタプー県(ラオス)の観光開発の SWOT 分析 正 負 現況 強み(strength)

• 滝、少数民族、ホーチミン・ルート跡、古い仏塔など多様な観光資源を持つ

• 北部ラオスがエコツーリズムで成功しており、「ラオスのエコツーリズム」という名前が国際的に売れている

弱み(weakness) • 観光地としての知名度が低い

• 貧困度が高い

• 道路整備が不十分であり、空港も機能していないためアクセスが悪い

将来 機会(opportunity) • ベトナムに通じるラオス国道18 号が整備されれ

ば、ヒト・モノの動きが加速される

• 保護区・自然公園内の希少な動植物は、適切な管理のもと、将来の観光資源となりうる

脅威(threat) • 観光資源となる自然環境が破壊されつつある

(ドンアンパン国定保護区内の森林伐採)

• 観光資源の保護の経済的な動機付けがないと、自然資源などの破壊が進み、観光的魅力が低下する恐れがある

出典: 調査団

表 4.10 ストゥントレン県、ラタナキリ県(カンボジア)の観光開発のSWOT 分析 正 負 現況 強み(strength)

• 希少動物、プランテーション、滝、少数民族、宝石採掘、古い仏塔など多様な観光資源を持つ

• ヤクロム湖での観光が住民主体で順調に管理運営されている

弱み(weakness) • 観光地としての知名度が低い

• 道路整備が不十分であり、アクセスが悪い

• 貧困度が高い

• 国境での出入国手続きや移動手段(ボート)の手配が個人旅行者にとっては容易ではない

将来 機会(opportunity) • カンボジア国道 7 号・国境施設の整備、到着ビ

ザの発給など国境越えが簡便化される予定である

• ストゥントレン・ラタナキリ空港の改善が計画されており、アクセスが改善される

• 保護区・自然公園内の希少な動植物は適切な管理のもと、将来の観光資源となりうる

• 既存のヤクロム湖観光、文化・環境センターとの連携により、地元住民の観光への理解を促進し、住民主体の観光開発を後押しできる

脅威(threat) • 観光資源となる自然環境が破壊されつつある

(森林伐採、川イルカの減少)

• 観光資源の保護の経済的な動機付けがないと、自然資源などの破壊が進み、観光的魅力が低下する恐れがある

• 現地少数民族住民所有の土地が外部者によって取得されるという問題がおきており、将来において地域の社会問題となりうる

• 現地住民の観光に対する準備が整わないまま外部の観光客が訪れているため、文化的・経済的に負の影響を受ける恐れがある

出典: 調査団

(4) 開発課題

観光地ごとの開発課題は以下のようにまとめられる。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 4.11 観光地ごとの開発課題 場所 開発課題 チャンパサック県パクセおよび周辺観光地(ラオス)

• 観光マーケットの多様化

• タイ人マーケットの滞在時間長期化

• 観光客の受け入れキャパシティの向上

セコン県、アタプー県(ラオス) • 観光地としての知名度の向上

• 貧困問題の解消

• 森林等の自然資源の保全

• 観光資源保護

ストゥントレン県、ラタナキリ県(カンボジア)

• 観光地としての知名度の向上

• 貧困問題の解消

• 森林等の自然資源の保全

• 観光資源保護

• 外部者による土地取得問題

出典: 調査団

4.3.4 インドシナ南北コリドー形成の障害

産業育成と需要の発掘

現状のラオス、カンボジア間の貨物輸送量は、道路の通行が困難なこともありほとんどないのが実情である。

また、ラオス、カンボジア間には正式な国境ポイントが整備されていないことも物流が発生しない原因である。

産業構造からみると、両国ともに農業が中心の国であり、日用雑貨品からエネルギーまでほとんどの品物を

隣国からの輸入に頼らざるを得なく、輸出できる物資がほとんどない。つまり物流としては片荷物になる。

南北コリドー形成は当面はシアヌークビル港の有効活用とラオスへのエネルギー供給ルートとしての役割に

重点をおくが、長期的には輸入代替、あるいは輸出産業の育成、つまり農作物の高付加価値化や工業化を

はかる必要がある。このことによって、物流ビジネスにとっても片荷輸送によるビジネスの非効率性を解消で

きるものとなる。

他ルートとの競合

現在、わが国の援助によりベトナムホーチミンへつながる国道1号線の整備が進められつつある。メコン河の

渡河地点であるネアックルンにおいてもJICA による橋梁建設の FS が実施されているところである。このルー

トは 1970 年代まではいわゆるベトコンの進入ルートであったため、その整備が政治的かつ心理的問題から

遅れていたものであるが、2000 年代に入り一気に整備が促進される見通しである。このルートの先には大深

水港であるホーチミンがありシアヌークビル港の荷役の効率性、コストによっては、ホーチミン港からの貨物が

増加し、シアヌークビル港の顧客を減少させる可能性がある。2つの代替ルートを持つということは安全上、コ

スト上からも重要であるが、南北コリドーを成功裏に形成するにあたっては、この国道1号線との競合を十分

に意識した施策、計画が必要である。観光という視点からは、後述するように地域の観光サーキットを構成す

る南北コリドーの重要性が指摘できる。

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また、インドシナの経済統合が加速する中、タイ、ベトナムともにインドシナ物流ビジネスの活性化を目指して

おり、ラオス、カンボジアへの物資の輸送は、ラムチャバンおよびバンコク港を核とするタイルート、ホーチミン

港、ハノイ港、ダナン港を核とするベトナムルートとの貨物争奪競争がはげしくなるものと予想される。

4.4 南北コリドー開発戦略とシナリオ

4.4.1 開発戦略

インドシナ南北コリドー形成の目的は、前述のように戦略的な物流ルートの形成によるラオスの物流安全保

障の向上、シアヌークビル港の物流量の確保(による港湾経営の安定化)を通して、両国の物流産業を育成

し、あわせて両国の地域経済振興や貧困削減に資することである。そのためには、5つの柱となる戦略「1. イ

ンフラ整備」によって物流ルートを確保するともに、ルートを利用する物流産業のビジネスチャンスの拡大、活

動の活性化を支援するための「2. 物流拠点整備」、「3. 物流近代化」をおこない、さらに物流から沿線住民が

利益を得られるような「4. 物流サービス改善」、「5. 観光開発を中心とした地域開発」を総合的に実施するこ

とが重要である。1.から 4.の戦略は物流ネットワークの確立及び改善としてまとめられる。5.に関しては別途

詳細な内容を4.4.2 に記述する。

5つの重点戦略

- インフラ整備

- 物流拠点整備

- 物流近代化

- 物流サービス改善

- 観光を中心とした地域開発

これらの5つの開発戦略の関係を示したものが図 4.7 である。

開発の目的 1. 貧困削減 2. ラオスにおける物流安全保障の向上 3. エネルギーの安定確保 4. 物流産業の育成 5. コリドー形成による地域経済振興 6. シアヌークビル港の物流量の確保に よる港湾経営の安定化 観光を中心とした

地域開発

インフラ整備

物流近代化

物流拠点整備

物流サービス改善

出典: 調査団

図 4.7 開発戦略と事業(インドシナ南北コリドー形成)の目的との関係

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

51

4.4.2 開発シナリオ

南北コリドーの形成は以下のようなシナリオに則って進める。

インドシナ南北コリドーは、物流によるモノと観光によるヒトを流すためのコリドーである。まず、短期的には、

コリドーを構成する道路インフラ整備とラオス、カンボジア国境通過の手続きの簡略化を実施し、南北コリドー

としてネットワークを開通させることが、物流・観光双方での基本となる。

中期的には、物流という視点からは、コリドーを利用した物流ビジネスの活性化を図る。ネットワーク上の物流

拠点(シアヌークビル、プノンペン、パクセ、サバナケット等)において、トラックターミナル・ICDなどの物流施設

を整備する。また、IT 導入などによる効率化をすすめる等物流サービスを改善し、国際物流としての基本的な

要請事項を国際レベルで満足できる環境を整える。長期的には、コリドーのショートカットルート(カンボジア国

道 12 号経由)の整備や、石油など戦略物資の備蓄・輸送をカンボジア、ラオスで共同実施することなども検討

し、物流ビジネスの近代化をすすめる。

観光という視点からは、南北コリドーのネットワーク開通後に活発化するであろうヒトの流れを呼び込めるよう、

南北コリドー沿いでポテンシャルのあるチャンパサック県(パクセおよび周辺観光地)の観光開発を早期に開

始する。また、チャンパサック県の観光拠点としての開発を基盤とし、周辺県(ラオス:アタプー県、セコン県、

カンボジア:ラタナキリ県)における観光を含めた地域開発も開始する。中期的には、道の駅などの施設を中

心とした草の根の「村おこし」的な活動を実施し、物流、観光、地域おこしが融合した地域の振興を図る。中長

期的には、現時点でアクセスが困難であるものの、高い観光ポテンシャルを持つプレアビヒア寺院の観光開

発も進める。

以上のシナリオを図 4.8 に示す。

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短期 (2005-2010)

中期 (2011-2015)

長期 (2016-2020)

目標 ネットワークの強化と

国境を越えた交易の促進 コリドー沿いの

経済活動の活発化 インドシナ南北コリドーの

経済回廊としての機能強化

インフラ整備 コリドーを形成する

アジアハイウェイ沿いの 道路整備

地方道路整備による ショートカットルートの開発

物流拠点整備 トラックターミナル・ICD の

整備 石油の流通・備蓄基地の

整備 物流サービス 開発

コリドー沿いの道の駅の整備

物流近代化 ラオス・カンボジア国境に

おける通関・入国手続きの簡略化

効率的な輸送のための ITの導入

物流の近代化

観光を中心とした地域開発

主要観光地(チャンパサック)の受け入れキャパシティ整備、農村部における 観光を含めた地域開発

プレアビヒア観光開発

出典: 調査団

図 4.8 南北コリドー開発シナリオ

4.4.3 観光開発戦略

(1) 南北コリドー沿いの観光サーキット開発

南北コリドーはインドシナにおける観光周遊サーキットを考える上でも重要である。出典: 調査団

図 4.9 にタイ・ラオス・カンボジアにおける観光サーキットと南北・東西コリドーの関連を示す。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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出典: 調査団

図 4.9 観光サーキットと南北・東西コリドー

図中にはバンコクをゲートウェイとする二つのサーキットが描かれている。一つが既に確立されている北方サ

ーキットであり、もう一つが南北コリドー沿いに展開する南方サーキットである。現時点での旅行者数は多くは

ないものの、ラオス・カンボジア国境越えの簡便化が様々な面で進められており、将来はこのような旅行者の

動きが活発になると考えられる。南方サーキット形成のためには、このような移動を可能にする道路整備等を

進めると同時に、サーキット上の観光地の魅力を高めていく必要がある。

(2) 開発の方向性

以下に各地における開発の方向性を述べる。

- ラオス南部の主要都市パクセおよびワットプーおよびコーンの滝群といった観光地では、今後パッケージ

ツアー客を中心とした観光客の増加が予想される。そういった一般観光客に対応出来るような地域の観

光拠点として、パクセおよびその近隣観光地は開発していくべきである。

- 一方で、チャンパサック県の近隣のセコン県・アタプー県および国境をはさんでカンボジア側のストゥント

レン県・ラタナキリ県では豊かな自然環境・少数民族文化などを中心に SIT・エコツーリズム開発を進める。

ただし、そこでは観光開発単体のみを考えるのではなく、観光開発を同地域の開発の中に位置付け、総

合的な視点から取り組むべきである。

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- また、ストゥントレン県・ラタナキリ県ではエコツーリズムのみならず、日本人・韓国人等ミドルホールの大

衆的な旅行者をひきつけるような開発も推進する。現状のままでは、カンボジア東北部が南北コリドー沿

いの旅行者の流れをせき止めてしまうことになるからである。ラタナキリ県バンルンには、プノンペンに住

む富裕層が週末に訪れるような小奇麗で隠れ家的なホテルもある。大衆市場に対しては、こういった優

れた宿泊施設はそれ自体が観光的魅力となる。このような魅力は現時点ではラオス側には見られないも

のであり、差別化を図るという意味でも、今後の開発ポテンシャルとして意識する必要がある。

図 4.10 に当該地域で想定される旅行者の流れを示す。

出典: 調査団

図 4.10 ラオス南部・カンボジア東北部地域における旅行者の流れ

(3) 目指すべきマーケット

表 4.12 にラオス・カンボジアの既存観光マーケットと目指すべきマーケット・方向性をまとめる。ラオス南部・カ

ンボジア東北部は新興の観光目的地であるため知名度は高くない。そのため、国内(域内)の既に確立され

ている観光地におけるマーケットを意識する必要がある。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 4.12 ラオス・カンボジアの既存観光マーケットと目指すべきマーケット・方向性 既存マーケット 目指すべきマーケット・方向性

ラオス ルアンナムタ • 欧米人 • 欧米人マーケットの拡大

• 新規マーケットの呼び込み

ルアンプラバン • ヨーロッパ地域(50.7%)

• アジア・太平洋地域(19.5%)

• アメリカ地域(12.3%)

• 既存マーケットの拡大

• 一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

ビエンチャン • アセアン(70.4%(タイ69.4%))

• ヨーロッパ地域(12.9%)

• アメリカ地域(6.6%)

• タイ人マーケットの一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

• その他のマーケットの拡大

パクセ* • アセアン(75.6%(タイ70.3%))

• ヨーロッパ地域(15.9%)

• アメリカ地域(3.3%)

• タイ人マーケットの一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

• 欧米人マーケットの拡大

• 韓国・日本人マーケットの呼び込み

セコン・アタプー • (欧米人バックパッカー、パッケージ旅行者)

• 欧米人マーケットの拡大と定着

カンボジア シェムリアップ** • アジア・太平洋地域(49.0%(日本17.0%、韓国 14.8%、他台湾、中国、オーストラリアなど))

• ヨーロッパ地域(23.2%)

• アメリカ地域(12.7%)

• 既存マーケットの拡大

• 一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

ストゥントレン・ ラタナキリ

• (欧米人バックパッカー、パッケージ旅行者)

• 欧米人マーケットの拡大と定着

• 韓国・日本人マーケットの呼び込み

注: *タイ-ラオス国境(チョンメク=バンタオ)からの入国者数 **シェムリアップ空港直行便での入国者とシェムリアップへの国内旅行者数(シェムリアップ空港以外から入

国)の合計 出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004(既存マーケット), カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005(既存マーケット), 調査団(目指すべきマーケット・方向性)

これら観光マーケットの中で以下の 3 つのグループが重要である。それぞれのグループに対するアピールを

考慮しながら、ラオス南部・カンボジア東北部地域の観光開発を進めていく必要がある。

- 欧米人:ラオス・カンボジアでは広範に渡る存在感

- タイ人:ラオスのビエンチャンやパクセ訪問者の圧倒的多数

- 日本人・韓国人:カンボジアのシェムリアップの主要マーケット

【欧米人】

南ラオスにエコツーリズムサイトを開発することで、北ラオスに魅力を感じる欧米人バックパッカーマーケットに

対して、パクセ(ワットプー、コーンの滝群)および国境越えなどの魅力とセットにしてアピールできる。一方、カ

ンボジアサイドのエコツーリズムはラオスほどの知名度は現在ないが、南ラオスがエコツーリズムのサイトとし

て欧米人マーケットに浸透することでカンボジア側へも呼び込み易くなり、ラオスエコツーリズムの知名度を利

用することができる。また、パクセ周辺の観光地の環境整備は、パッケージ旅行者へのアピールになる。パク

セを訪れる欧米人等のロングホールツーリストには、足を伸ばしてシェムリアップまで行きたいというニーズが

ある。このニーズに対してカンボジア東北部経由の新しいルートを提供することが出来る。

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【タイ人】

現在パクセを訪れるタイ人の多くはワットプー、コーンの滝群などを訪問するのみの短期旅行者であると考え

られる。彼らには対しては、パクセ周辺の観光地における環境を整備することによって、観光体験の質を向上

させ観光的魅力を高めることがアピールになり、滞在時間の延伸・消費の増加などにつながることが期待され

る。

【日本人・韓国人】

シェムリアップを訪れる主要マーケットのひとつである日本人・韓国人旅行者に対しては、これまではシェムリ

アップ単体だった行程に、アンコールワットと同じクメール文明の遺跡であるワットプー、その移動途中にある

コーンの滝群やメコン川イルカの観察などの新しい魅力を追加できる。

4.5 ポテンシャルプロジェクト

インドシナ南北コリドーの開発戦略にのっとり、インドシナ南北コリドー形成に必要な道路プロジェクトおよび関

連するポテンシャルプロジェクトとして以下の38 プロジェクトを提案する。カンボジア 24 件、ラオス 14 件であ

る。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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4.5.1 カンボジア

(1) インフラ整備プロジェクト

プロジェクト名 概要

1. 国道 61 号線本格改良 プレックダム-タオバック間、16.1km、WB の緊急補修済み、本格改良を実施する。

2. 国道 61 号線トンレサップ架橋整備 国道 5 号線または 51 号線経由で7 号線に至る(61号線)ための新設架橋。シアヌークビルから4 号線経由で 7 号線に至るバイパスとなる。

3. 国道 73 号線改修 2001 年に「カ」政府により補修されたが、その後の洪水による損傷が未補修のままであり、本格的な改修が必要である。この道路の東側の 74 号線経由で北部へ向かう7 号線へと連絡するが、73 号線はこのルートのショートカットとなる。

4. 国道 64 号線(コンポントム~プレアビヒア間)改修 観光資源となるプレアビヒアへのアクセス道路整備を行う。

5. プノンペン・インダストリアル・リングロード プノンペン市の都市形成管理(環状道路を洪水から守る堤防としその内側を都市的利用する)、工業立地、バイパス機能をもつ環状道路建設を行う。

6. 旧国道 12 号線(州道 213 号線)改修 コンポントムからラオス国境を結ぶ旧国道 12 号線は国道 7 号線よりシアヌークビルからラオス国境までの距離が短いので将来的に南北コリドーの交通量が増加した際にバイパスとして整備する。

7. 鉄道南線改修(プノンペン~シアヌークビル) 老朽化した軌道のリハビリ

8. シャム湾海底ガスパイプライン建設 シャム湾で発見されたガスの輸送路 150km

9. シアヌークビル~カンポット~タケオ~プノンペン送電線

シアヌークビルで発電した電気をプノンペンまで送電する電力グリッド網の形成。シアヌークビルからカンポットは JBIC ローンの予定。

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(2) 物流拠点整備プロジェクト

プロジェクト名 概要

10. シアヌークビル石油備蓄基地: シャム湾および中東からの石油を備蓄する施設を南北コリドーの南端であるシアヌークに持つ。

11. シアヌークビルインランドコンテナデポ整備計画 シアヌークビル港で取扱うコンテナの保税、検疫施設を含む ICD 建設。

12. シアヌークビル工業団地 シアヌークビル港後背地に立地する中規模工業団地の土地整備およびインフラ整備

13. プノンペンインランドコンテナデポ整備計画 プノンペン港で取扱うコンテナの ICD 整備

14. メコン河河川港整備 プノンペン、コンポンチャム、クラチェ、ストゥントレンの河川港の改善

15. シアヌークビル発電所 シアヌークビルにコンバインサイクル(石炭+ガス)または大規模石油火力発電所を建設するもの。この発電所はプノンペンおよびシアヌークビル工業団地への電力供給源となると同時にタイへ売電する。

16. プノンペン物流拠点整備プロジェクト プノンペン環状道路沿いの大規模内陸物流拠点(トラックターミナル、ICD、工業団地)

(3) 物流近代化プロジェクト

プロジェクト名 概要

17. IC タグ導入プロジェクト: 物流効率化の一環として IC タグの実験的導入を試みるもの。

18. コンテナ化施設整備: コンテナクレーン(20ft, 40ft)の導入

19. 過積載(トラックスケール)対策 道路損傷の原因である過積載トラックを取締まるための施設整備(計量橋)の導入等。

20. 物流人材育成 JICA スキームを利用した人材育成。

21. 物流業界近代化 将来の近代的物流業界育成のための調査。

(4) 物流サービスプロジェクト

プロジェクト名 概 要

22. 国道 4 号線、7 号線「道の駅」整備 地場産業育成、地域振興の拠点(生産者と消費者との接点)を地方自治体主導で整備する。NGO 等との連携(人材派遣)のほか、わが国の無償援助スキームを適用し施設整備支援を行う。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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(5) 地域開発プロジェクト

プロジェクト名 概要

23. ラタナキリ県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

エコツーリズムのポテンシャルを持つ村々を対象に、エコツーリズム振興策を含む農村部でのコミュニティ開発事業を実施する。

24. プレアビヒア観光開発 ダンレク山脈国境線上のプレアビヒア寺遺跡の観光資源としての活用プロジェクト。この遺跡は11 世紀に建てられ、破壊が進んでいるものの、歴史的、芸術的価値が高い。タイ側からの観光客は多いが、カンボジア側からは道路が整備されていないためアクセスが困難である。基本的なアクセス道路整備のほかホテル建設などに対応して下水道整備等、環境保全事業を行う。

4.5.2 ラオス

(1) インフラ整備プロジェクト

プロジェクト名 概要

1. 国道 14 号線改修 パクセから南にカンボジアへ向けてメコン河の西側を下る道路であり、この区間の南側は WB、北側は日本の無償援助が予定されている。カンボジア側では 64号線に至り、メコン西側の南北コリドーの一部となる。

2. 国道 16 号線橋梁改良 コーヒーの産出で名高いボロベン高原西側を迂回しベトナムへ至るルート上の中小規模橋梁改良。

3. 国道 18 号線橋梁改良 パクセから東にベトナムへ至るルート上の中小規模橋梁改良である

4. 国道 13 号線セドン橋架け替え パクセからカンボジアへ至るメコン東側ルート、パクセ市内の橋梁架け替え。

(2) 物流拠点整備プロジェクト

プロジェクト名 概要

5. パクセ、サバナケットトラックターミナル整備 南北コリドー上のパクセ(ラオス南部地域の中心都市)、東西コリドー上のサバナケット(ラオス中部地域の中心都市)におけるトラックターミナル建設

6. パクセインランドコンテナデポターミナル整備 パクセで取扱うコンテナ(ベトナム、タイ、カンボジア)の保税、検疫施設を含む ICD 建設。

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(3) 物流近代化プロジェクト

プロジェクト名 概要

7. ラオス、カンボジア国境ポイント(国道 13 号上)整備およびシングルストップサービス導入

手続き簡素化のためのコンピュータ導入、人材育成、施設整備

8. ラオス、カンボジア国境ポイント(国道 14 号上)整備 手続き簡素化のためのコンピュータ導入、人材育成、施設整備

9. 過積載(トラックスケール)対策 道路損傷の原因である過積載トラックを取締まるための施設整備(計量橋)の導入等。

10. 物流人材育成 JICA スキームを利用した人材育成

11. 物流業界近代化 将来の近代的物流業界育成のための調査

(4) 物流サービスプロジェクト

プロジェクト名 概要

12. 国道 13 号線「道の駅」整備 地場産業育成、地域振興の拠点(生産者と消費者との接点)を地方自治体主導で整備する。NGO 等との連携(人材派遣)のほか、わが国の無償援助スキームを適用し施設整備支援を行う。

(5) 地域開発プロジェクト

プロジェクト名 概 要

13. セコン・アタプー県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

エコツーリズムのポテンシャルを持つ村々を対象に、エコツーリズム振興策を含む農村部でのコミュニティ開発事業を実施する。

14. チャンパサック県パクセを中心とした観光地における持続的観光振興のための受け入れキャパシティ整備

コーンの滝群、4 千の島々、ワットプー遺跡等を持つチャンパサック県は今後の新たな観光拠点としての開発が期待されている。これらの観光地およびパクセ市街地を対象として、増加しつつあるマスツーリズム客を受け入れつつ、観光的魅力を向上させながら(劣化させないように)持続的に観光資源を管理していくことを目指した、受け入れキャパシティの整備を行う。

4.6 わが国の知見・経験の適用

4.6.1 地域開発のノウハウ

戦後高度成長期の工業ベルト地帯の開発から近年の一村一品運動に至るまで、わが国の地域開発は中央

政府、地方自治体、民間、NGO など様々なレベルの組織の連携によってはじめて効果的に実施されてきたと

言える。本件で提案する南北コリドーも大掛かりな電力開発、工業団地整備、物流施設整備から沿道の地場

産業開発まで総合的な成果が期待できる構想であり、わが国がこれまでに行ってきたような各レベルでの縦

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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横な連携が必要とされるであろう。特にわが国では中央政府機関ばかりでなく地方自治体による援助事業へ

の取組みも積極的になってきており「多様化する途上国ニーズ」に対応可能な様々な支援の方法が見えつつ

ある。

今回提案しているようなインフラ整備や大規模工業団地開発は、従来型の援助や FDI など外的資本に多くを

頼らざるを得ない側面が多々あるが、南北コリドーを活用した地域開発は両国国民が自ら努力し発展させて

いくことができるところも多い。南北コリドー上に散在する多様なニーズに対応して我が国に多数存在する活

発な地域活動の様々なノウハウを途上国に活かしていくべきではないかと考えられる。特に南北コリドー上で

は、貧困対策、農村開発といったローカルなコミュニティや地域の開発の重要性が高い。一村一品運動に見

られるわが国の地域開発のノウハウが活かされるものと考えられ、今後研究を進めるべきであると考えられ

る。

4.6.2 物流の効率化

わが国では、特に海運物流の効率化、競争力の強化を目指し、物流連合団体を中心に以下の重点施策に関

し調査・研究が進められている。

1. 輸出入・港湾業務に関する徹底した BPR を実施するとともに、FAL 条約(国際海事機関:International

Maritime Organization による条約:不必要なペーパーワークや形式的な諸手続きを解消し、港湾諸手

続きの簡易化・簡素化を推進することを目的として 1965 年にロンドンで署名され、2003 年末時点で 94

カ国が締結しているもの)を批准すること。

2. 輸出入・港湾諸手続きに関係する諸官庁でデータを共有することについて検討、申請者の入力に対する

負担を最小限にすること。

3. 物流セキュリティの強化については、現行の諸手続との連携を十分に図り、セキュリティ強化と物流効率

化の両立の観点から申請者に過重な負担が生じないようにすること。

4. 申請の電子化に際しては、UN/EDIFACT (国連欧州経済委員会によって開発が進められ、TDI

(UN/ECE 標準)とEDI(米国内標準)を統合して、1989 年に ISO9735 として承認された国際 EDI 標準)、

ebXML (電子商取引の振興のために、UN/CEFACT とOASIS(Organization for the Advancement of

Structured Information Standards)が協同で設立した XML 活用に向けた国際イニシアティブ)、IMO 既

定の標準コード等の国際標準を導入すること。

5. 行政手続きと民間手続きの連携を図ること。

これら5つの重点施策を実現すべく、シングルウィンドウ、IC タグにかかる実証実験が行われており、徐々に

成果もみえているところである。シアヌークビル港がインドシナ地域のハブ港となることはまず考えられないが、

国際的な商習慣、技術に準拠した物流システムを構築することは取扱貨物量を増加させる上でも重要な事柄

であり、わが国が先行して行っている調査・研究をカンボジア、ラオスに限らず発展途上国への技術支援の一

環として適用していくことは可能であると考えられる。

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4.6.3 物流 ISO

物流の品質保証を確保すると同時に適切な売上げ目標を掲げ利益目標を達成するために、わが国では ISO

を導入する物流業者が増加しつつある。また、適切な利益を目指す中で顧客の満足度も向上していくとされ

ている。近年、ISO を取得するための指導等をサービスするコンサルタント業も育ちつつあり、わが国のノウ

ハウを海外で展開する本邦系物流業者さらには発展途上国の中小の物流業者にも伝えることのできる素地

はできつつあるものと考えられる。カンボジア、ラオスのような国では、物理的な条件も含めてすぐに ISO を取

得できるような環境にはないが、その精神に沿った技術指導が考えられてよい。

わが国で物流業者に導入されている効果を簡単にとりまとめれば、ISO9001 では、物流業者の現行業務の

工程見直しに注目し、例えば、片荷輸送、待ち時間、配車手続き、長時間労働による事故等のリスク回避など

点でコストダウンを目指して実施することにより、効果を得られる。さらに長期的に ISO14001 に至れば、コス

トダウンの概念が広がり、当該物流業者だけでなく、荷主、関連会社、地域など包括的な利害関係者を含む

総合的なマネジメントシステムとして活用すれば有効である。物流業者の様々な環境改善だけでなく、荷主と

も一体となった全体的な環境負荷低減策を検討するためのノウハウをわが国の技術援助として提案できるの

ではないかと考える。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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5 事業実施プログラム

5.1 事業実施スケジュール

提案された 38 プロジェクトの実施時期は、短期、中期、長期の開発シナリオに則り、短期実施案件 12 件、中

期実施案件 17 件、長期実施案件 14 件となった(総数が 38 を超えるのは、期をまたがる案件が 4 件あるた

め)。

5.2 概算事業費

インドシナ南北コリドー形成のためのポテンシャルプロジェクトの概算事業費は、表 5.1 に示すように総額で

概ね 1,193億円と推計される。内訳はカンボジア1,023億円、ラオス170 億円である。カンボジアの事業費が

大きいのは、カンボジア国内のインフラ整備、物流拠点整備のプロジェクトに多額の費用がかかるためである。

事業費を分野別にみると、インフラ整備費は 573 億円で最も多く、続いて物流拠点整備が 525 億円となって

いる。期別の事業費をみると、短期の事業費は384 億円、中期は414.5 億円、長期は 394.5億円である。

表 5.1 概略事業費 (全体) (億円) 短 期 中 期 長 期 合 計 インフラ整備 209.0 187.0 177.0 573.0 物流拠点整備 120.0 205.0 200.0 525.0 物流近代化 23.0 9.0 10.0 42.0 物流サービス 6.0 6.0 地域開発 32.0 7.5 7.5 47.0 合計 384.0 414.5 394.5 1,193.0 (カンボジア) 短 期 中 期 長 期 合 計 インフラ整備 153.0 165.0 145.0 463.0 物流拠点整備 120.0 195.0 190.0 505.0 物流近代化 22.0 4.5 4.5 31.0 物流サービス 3.0 3.0 地域開発 6.0 7.5 7.5 21.0 合計 301.0 375.0 347.0 1,023.0 (ラオス) 短 期 中 期 長 期 合 計 インフラ整備 56.0 22.0 32.0 110.0 物流拠点整備 10.0 10.0 20.0 物流近代化 1.0 4.5 5.5 11.0 物流サービス 3.0 3.0 地域開発 26.0 26.0 合計 83.0 39.5 47.5 170.0 出典: 調査団

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64

個別プロジェクトの実施時期及び概算事業費は表 5.2 に示した。なお、概算事業費は、現地事務所を持つわ

が国の建設業者、商社等の内部資料、意見および両国でのコンサルタントの経験をもとに大まかに算出した

ものである。

表 5.2 プロジェクトの概算事業費および実施スケジュール (カンボジア)

短期 中期 長期 事業費

(2005-2010) (2011-2015) (2016-2020)

インフラ整備プロジェクト 1 国道 61 号線本格改良 10億円 ○ 2 国道 61 号線トンレサップ架橋整備(新設橋梁) 80億円 ○ 3 国道 73 号線改修 40億円 ○ 4 国道 64 号線(コンポントム~プレアビヒア間)改修 40億円 ○ 5 プノンペン・インダストリアル・リングロード 60億円 ○ 6 旧国道 12 号線(州道 213 号線)改修 40億円 ○ 7 鉄道南線改修(プノンペン~シアヌークビル) 35億円 ○ 8 シャム湾海底ガスパイプライン建設 150億円 ○ ○ 9 シアヌークビル~カンポット~タケオ~プノンペン送電線 18億円 ○ 物流拠点施設整備プロジェクト 10 シアヌークビル石油備蓄基地 40億円 ○ 11 シアヌークビルインランドコンテナデポ整備計画 10億円 ○ 12 シアヌークビル工業団地 20億円 ○ 13 プノンペンインランドコンテナデポ整備計画 10億円 ○ 14 メコン河河川港整備 45億円 ○ 15 シアヌークビル発電所 30億円 ○ 16 プノンペン物流拠点整備プロジェクト 350億円 ○ ○ ○ 物流近代化プロジェクト 17 IC タグ導入調査 2億円 ○ 18 コンテナ機械 20億円 ○ 19 過積載(トラックスケール)対策 2億円 ○ 20 物流関連人材育成 5億円 ○ ○ 21 物流業界近代化 2億円 ○ 物流サービスプロジェクト 22 国道 4 号、7 号線「道の駅」整備 3億円 ○ 地域開発プロジェクト

23 ラタナキリ県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

6億円 ○

24 プレアビヒア観光開発 15億円 ○ ○

出典: 調査団

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

65

(ラオス) 短期 中期 長期

事業費 (2005 - 2010) (2011 - 2015) (2016 - 2020)

インフラ整備プロジェクト 1 国道 14 号線改修 46億円 ○ 2 国道 16 号線橋梁改良 22億円 ○ 3 国道 18 号線橋梁改良 32億円 ○ 4 国道 13 号線セドン橋架け替え 10億円 ○ 物流拠点施設整備プロジェクト 5 パクセ、サバナケットトラックターミナル整備 10億円 ○ 6 パクセンランドコンテナデポターミナル整備 10億円 ○ 物流近代化プロジェクト

7 ラオス、カンボジア国境ポイント(国道 13 号上)整備およびシングルストップサービス導入

1億円 ○

8 ラオス、カンボジア国境ポイント(国道 14号上)整備 1億円 ○ 9 過積載(トラックスケール)対策 2億円 ○ 10 物流関連人材育成 5億円 ○ ○ 11 物流業界近代化 2億円 ○ 物流サービスプロジェクト 12 国道 13 号線「道の駅」整備 3億円 ○ 地域開発プロジェクト

13 セコン・アタプー県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

6億円 ○

14 チャンパサック県パクセを中心とした観光地における持続的観光振興のための受け入れキャパシティ整備

20億円 ○

出典: 調査団

5.3 開発資金の考察

カンボジア、ラオスとも国家財政は逼迫しており、新たな公共投資をおこなう余裕はいまのところない。したが

って、ここに提案した事業のほとんどは国際機関の援助、二国間援助によって実施されるものと考えられる。

しかしながら、特にこの2国の現時点のカントリーリスクは大きく、我が国の借款は限定的な可能性しかなく、

大型案件は世銀、アジ銀ファイナンスによる可能性のほうが高いと言える。

なお、カンボジアについてはシャム湾に海底油田の存在が確認され、現在、試掘が行われている、その開発

可能性によっては石油基地、ガスパイプライン案件など民間投資がなされる可能性も否定できず、また、石

油・ガスの売買による外貨収入の確実さが増せばカントリーリスクも好転し、借款などの借入れが容易になる

こともありうる。

5.4 実施の体制の考察

インドシナ南北コリドーは、直接的にはカンボジア、ラオスに便益をもたらす開発コンセプトであるが、間接的、

大局的にみれば、インドシナのネットワーク、安全保障の向上、何より物流効率の向上によって、タイやベトナ

ムひいては GMS や我が国へもビジネスチャンスの拡大といった便益をもたらす。したがって、インドシナ南北

コリドーの開発は、ラオス、カンボジアに任せるのではなく、GMS 諸国及び日本、ADB などの国際機関が協

力してきくことが必須である(ちなみに、ラオス、カンボジアはカントリーリスク、ローンのキャパシティの面から

みても南北コリドーの開発を独自に実施する体力がないのも事実である)。インドシナ東西コリドーは ADB が

主導権をもち、我が国との協調によってインフラ整備をおこなって おり、北部の南北コリドー(ラオスの R3 部

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66

分)は、ADB が主導し、タイ、中国との協調によって建設が進んでいる。このような事例をみれば、南北コリド

ーもイニシアティブをもつ機関(たとえば ADB や日本)と周辺国との協調体制をつくることが大切である。

5.5 今後のアクション

まず、南北コリドーの中長期的なコンセプトと協調して実施すべき事項などをハイレベルの会合で共有するこ

とが大切である。それを実現化するためには、先ず JICA の開発調査等のスキームを利用して「インドシナ南

北コリドーマスタープラン」を作成し、それを関係国で共有することが望ましいと考えられる。

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補論

ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発プロジェクトの提案

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補論 ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発プロジェクトの提案

1 地域の定義 ... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . A-1

2 地域の概況 ... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . A-2

2.1 社会経済 ........................................................................................................................................................... A-2

2.2 自然環境 ........................................................................................................................................................... A-3

3 観光の概況 ... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . A-5

3.1 インドシナ地域およびラオス・カンボジアでの位置付け......................................................................... A-5

3.2 観光資源 .........................................................................................................................................................A-15

3.3 観光市場 .........................................................................................................................................................A-19

3.4 観光施設(宿泊施設およびレストラン).....................................................................................................A-21

3.5 インフラ整備状況...........................................................................................................................................A-22

4 現状分析と開発課題... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .A-24

4.1 現状分析 .........................................................................................................................................................A-24

4.2 開発課題 .........................................................................................................................................................A-25

5 観光開発戦略... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .A-26

5.1 南北コリドー沿いの観光サーキット開発..................................................................................................A-26

5.2 開発の方向性 ................................................................................................................................................A-27

5.3 目指すべきマーケット...................................................................................................................................A-28

6 提案プロジェクト... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .A-31

6.1 ラオス南部チャンパサック県パクセを中心とした観光地における持続的観光振興のための受け入

れキャパシティ整備.......................................................................................................................................A-31

6.2 ラオス南部(セコン・アタプー県)でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業 .........................A-32

6.3 カンボジア東北部(ラタナキリ県)でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業 .......................A-34

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-1

補論 ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発プロジェクトの提案

1 地域の定義

ラオス・カンボジア両国間に存在する唯一の国境通過点は、ラオスの首都ビエンチャンから南東方向に約

500km、またカンボジアの首都プノンペンから北東方向に約 300km、という国の中心部から離れた位置にあ

る。ラオス南部・カンボジア東北部として本報告書で扱う地域は、この国境通過点周辺地域である。本報告書

における定義として基本的には、ラオス南部はチャンパサック県、セコン県、アタプー県を、カンボジア東北部

はストゥントレン県、ラタナキリ県をそれぞれ考えている。図 A1.1 は当該地域の概略図である。

ハノイ

ビエンチャン

バンコク

ヤンゴン

プノンペン

中国

ベトナムミャンマー

カンボジア

タイ

ラオス

タイ湾 南シナ海

アンダマン海

←サバナケット、ビエ

ンチャン

←ウボンラチャタニ

パクセ

チャンパサック アタプー

セコン

ストゥントレン

バンルン

ルンパット

セコン県

アタプー県チャンパサック県

ラタナキリ県

ストゥントレン県

タイ

ベトナム

ラオス

カンボジア

出典: 調査団

図 A1.1 ラオス南部・カンボジア東北部地域概略図

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A-2

2 地域の概況

2.1 社会経済

2.1.1 人口

表 A1.1 に各県および国全体の面積、人口、人 口密度、都市人口および都市人口比率が示されている。県の

人口密度はチャンパサックを除いてほぼ同程度である。都市人口の比率を見ると、カンボジアのストゥントレン

県・ラタナキリ県では都市に人口が集中しており、ラオス側、特にセコン県・アタプー県では人口が広く薄く分

布していることが分かる。

表 A1.1 ラオス南部・カンボジア東北部各県および国全体の人口に関する指標(2005 年現在推計値)

国 県 面積 (km2) 人口

人口密度 (人/km2) 都市人口 都市名

都市人口 の割合

ラオス セコン 7,665 80,848 11 4,462 セコン 6%

アタプー 10,320 102,959 10 4,296 アタプー 4%

チャンパサック 15,415 584,234 38 101,457 パクセ

チャンパサック 17%

国全体 236,800 5,612,274 24 587,604 - 10%カンボジア ストゥントレン 11,092 111,988 10 27,671 ストゥントレン 25%

ラタナキリ 10,782 130,527 12 26,666 バンルン

ルンパット 20%

国全体 181,035 14,560,030 80 2,579,994 - 18%出典: World Gazetteer, ウェブサイト, 2005

2.1.2 産業

ラオス南部およびカンボジア東北部での主要産業は、ともに農業・林業である。メコン川に近いチャンパサック

県(ラオス)、ストゥントレン県(カンボジア)においては漁業も重要である。以下はラオス側の 2 県における

GDP 構成である。

表 A1.2 セコン県・アタプー県(ラオス)におけるGDP 構成

国 県 農業・林業 手工芸産業 サービス業

ラオス セコン 77.1% 4.66% 18.24%

アタプー 63.3% 26.62% 9.33%出典: Socio-economic development master plan for Cambodia – Laos – Vietnam development triangle, 2004

2.1.3 主要農産物

ラオスのアタプー県では米を多く生産しており、カンボジア東北部への輸出にも回 されている。ラオス側の灌

漑施設は十分とはいえないまでもしっかり機能しているが、カンボジア側では灌漑施設は破壊されたまま、修

復されていない。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-3

2.1.4 開発の指標

ラオス南部各県の貧困率を表 A1.3 に示す。県ごとの貧困率を低い順番に並べた県順位では、チャンパサッ

ク県が上位に来ており、ラオスの中でも開発が比較的進んでいる県であることがわかる。一方、セコン県・アタ

プー県はチャンパサック県と比べて開発が遅れている。

表 A1.3 ラオス南部各県および国全体の貧困率と県順位(1997/1998 年)

国 県 貧困率 県順位

ラオス チャンパサック 35.6% 6/18

アタプー 45.3% 11/18

セコン 45.7% 12/18

国全体 38.6% -出典: ADB, Participatory poverty Assessment: Lao People’s Democratic Republic, 2001

カンボジア東北部各県の人間開発指数を表 A1.4 に示す。県ごとの人間開発指数を高い順番に並べた県順

位では、ストゥントレン県・ラタナキリ県はともに低位に留まっており、カンボジアの中では開発が遅れている地

域であることが分かる。

表 A1.4 カンボジア東北部各県および国全体の人間開発指数と県順位(1997 年)

国 県 人間開発指数 県順位

カンボジア ストゥントレン 0.371 18/21

ラタナキリ 0.375 15/21

国全体 0.427 -出典: UNDP, Cambodia Human Development Report 1997, 1997

2.2 自然環境

当該地域では、メコン川周辺のチャンパサック県(ラオス)、ストゥントレン県(カンボジア)には平らな低地が広が

る一方、東部に位置するセコン県(ラオス)、アタプー県(ラオス)、ラタナキリ県(カンボジア)には標高千メートル

を越える高地や山岳地帯も存在している。

当該地域には以下のように多くの保護区・自然公園があり、自然環境豊かな地域であるといえる。図 A1.2 に

これらの保護区・自然公園の具体的な位置を記す。

- セピアン国定保護区(NBCA: National Biodiversity Conservation Area)(チャンパサック県、カンボジア国

境)

- ドンフアサオ国定保護区(チャンパサック県)

- プーシァントン国定保護区(チャンパサック県 )

- ドンアンパン国定保護区(アタプー県、ベトナム国境)

- ヴィラチャイ国定公園(National Park)(ストゥントレン県・ラタナキリ県 )

- ルンパット野生生物保護区(Wildlife Sanctuaries)(ラタナキリ県・モンドルキリ県 )

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A-4

セコン県

アタプー県

チャンパサック県

ラタナキリ県

ストゥントレン県

ラオス

カンボジア

セピアン国定保護区

ドンフアサオ国定保護区

プーシァントン国定保護区

ドンアンパン国定保護区

ヴィラチャイ国定公園

ルンパット野生生物保護区

出典: 調査団

図 A1.2 保護区および自然公園の位置

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-5

3 観光の概況

3.1 インドシナ地域およびラオス・カンボジアでの位置付け

3.1.1 インドシナ観光の現状

(1) インドシナ地域への国際観光客数

近年の全世界中での国際観光客の合計数は基本的に増加傾向にある。2001 年にはアメリカニューヨークで

同時多発テロが起こり、その影響で国際観光客数は減少となったが、それを除けば増加傾向が続いている

(表 A1. 5)。

この間、インドシナ地域を訪れる国際観光客数は世界全体のペースを上回るスピードで増加している。これは

同地域が現在大きく成長しつつある観光目的地であることを示している。

表 A1.5 インドシナ地域および全世界の訪問者数と前年比変化率(1994~2001) 単位:千人

1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 タイ - - 7,190 7,220 7,760 8,580 9,510 10,060 - - - 0% 7% 11% 11% 6% ベトナム 1,018 1,351 1,607 1,715 1,520 1,781 2,140 2,330

52% 33% 19% 7% -11% 17% 20% 9% 雲南省 - - - 800 760 1,040 1,006 1,100

- - - - -5% 37% -3% 9% ラオス 146 346 403 463 500 614 737 674 42% 137% 16% 15% 8% 23% 20% -9% カンボジア 177 220 260 219 287 368 466 605

- 24% 19% -16% 31% 28% 27% 30% ミャンマー - - - 110 159 199 208 220

- - - - 45% 25% 5% 6% GMS (合計) - - - 10,528 10,986 12,583 14,068 14,989 - - - - 4% 15% 12% 7% 全世界 535,800 550,400 580,200 601,500 621,400 643,300 687,300 684,100

4.0% 2.7% 5.4% 3.7% 3.3% 3.5% 6.8% -0.5% 出典: WTO, ウェブサイト, 2005 TAT, ウェブサイト, 2005 ADB, Mekong River Tourism Infrastructure Development Project RETA 5893, 2002 LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004 カンボジア観光省, ウェブサイト, 2005

インドシナ地域における観光客の入れ込み数は、1997 年から2001 年までの間、平均で年率 9.1%の増加を

続けており、各国の観光客数増加率も軒並み高い値を示している。そのためインドシナ地域内での各国の相

対的なシェアに大きな変化は見られない。

ここで特徴的なのは、インドシナ地域の7割前後のシェアを維持しているタイの存在感である。同国はインドシ

ナ地域のゲートウェイとして多くの観光客を受け入れ、地域の観光を常に先導してきた経緯がある。ベトナム

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A-6

は 90 年代前半に急速な成長を経験しており、その後も確実な成長を続けている。ラオス・カンボジアはシェア

の上ではまだまだ小さいものの、ラオスは 90 年代前半に、カンボジアは 90 年代後半以降に急激な成長を経

験してきた。現在両国は、観光的魅力の多様化を目指す段階に入ってきたと考えられる。

インドシナ地域における観光の特徴の一つは、容易に陸路で国を渡れることにある。前述のように、タイが地

域のゲートウェイとして先導的立場を維持してきた背景の一つとして、自国の観光資源のみならず、隣国とセ

ットにしてタイを売り込んできたということが挙げられる。

(2) 観光資源

インドシナ地域は特有の仏教遺跡や美しいビーチや山々など、自然から歴史(遺跡)・文化まで多様な観光資

源を有する地域である。表 A1.6 にインドシナ地域の各国のユネスコ世界遺産への登録数を示す。これらの世

界遺産は、インドシナ地域の膨大な観光資源の一部に過ぎないが、カンボジアのアンコールワットやラオスの

ルアンプラバンで顕著に見られるように、各国の観光開発において重要な役割を果たしてきている。

表 A1.6 インドシナ地域国別世界遺産数

文化遺産 自然遺産 合計

タイ 3 1 4

ベトナム 3 2 5

雲南省 1 1 2ラオス 2 0 2

カンボジア 1 0 1

ミャンマー 0 0 0

合計 10 4 14出典: UNESCO, ウェブサイト, 2005

(3) インドシナにおける協力枠組み

インドシナ地域では様々な経済開発のための協力枠組みが存在している。観光開発についても地域内の協

力によって進められる様々なプロジェクト、調査、構想などが存在している。図 A1.3 には特定地域を対象とし

た協力枠組みを図示している。以下では代表的な取組みを紹介する。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-7

PHNOM PE NH

BANGKOK

V IE NTIANE

HANOI

LAO PDR

THAILAND

VIET NAM

CAMBODIA

MYANMAR

CHINA

HAI PHONGHon gai (Cai Lan)

Hoa B inh

Ha G ia ng

L aoCai

LangSon

V inh

Ha Tin h

Dong Hoi

Q uang Tri

Hue

Qua ng Ngai

Qui Nhon

Nha T ra ngCam Ranh

Da Lat

V ung T auRacha Gi a

KompongCham

S iem Reap

Pakse

K hon K ean

Nape

S amneua

PhongSaly

P aksane

Mea sai

UdonTh ani

Chumphon

S uratTh ani

Phitsanu lok

P egu

Namt u

Mengzi

NANNING

DA NANG

HO CHI M INH

CHIA NGM AI

NakhonRatchas ima

My Tho

Can Tho

Can Mau

K am pong Seom

Ph oula o

Muang K ha m

Pak Mong

Houesai

Nateul

Lu angPraban g

T ha khek

S avannakh et

UbonRatchathani

Xi en g Khouang

J inghong

Chiang Ra i

Hawng luk

Nong K ha i

NakhonP hanom

Mukdahan

B ien Hoa

Nakhon Si Tham mara t

T ho mb uri

NakhonSa wan

Mo ulm ei n

St ung Treng

M e Thout

Ba ttamb ang

a. GMS観光開発

b. エメラルドトライアングル

c. CLV三角開発地帯

d. ゴールデントライアングル

出典: 調査団

図 A1.3 インドシナ地域における観光開発協力枠組み

a. GMS 観光開発

ADB が主導的に支援する GMS(Greater Mekong Sub-region:拡大メコン域)戦略は、タイ、ベトナム、ラオス、

カンボジア、ミャンマー、中国(雲南省)のメコン川流域6カ国を対象とした総合的な地域協力の枠組みである。

関係国間の協力を積極的に推し進め、多国間にまたがるプロジェクト・プログラムを実施していく点が特徴で

ある。GMS 戦略の中にある11 の最重要プログラムのひとつには観光開発が含まれている。

現在実施中の GMS メコン観光開発プロジェクトは、インドシナ地域のなかでもラオス・カンボジア・ベトナムの

3カ国を対象として、以下の 3 つのパートから構成されている。

- Part A: 観光関連インフラ改善:国境付近の観光資源へのアクセスインフラ(道路)や、観光地へのゲート

ウェイインフラ(空港)を改善する。これによって、国境を挟んだ両国のつながりを強化することおよび、重

要観光地へのアクセスを改善することを目的とする。

- Part B: 貧困削減に寄与する集落観光1開発:貧困層が観光開発によって裨益するようなメカニズムを持

った、集落観光開発を行う。

- Part C: 地域内協力の促進:

① 複数国が関係する観光開発プロジェクトの計画・実施→域内観光の促進

② 出入国管理のための国境設備整備→観光客の国境を越えた動きの促進

1 Pro-poor community-based tourism の訳語として用いている。

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A-8

③ 観光マーケティング&プロモーション委員会の設置→国レベルのマーケティング&プロモーション活

動への民間セクター巻き込み

④ 域内共通のホテル評価システムの導入→域内観光客の利便性向上

⑤ 観光統計の改善と域内他国観光統計との調和→域内観光の基盤整備

⑥ 観光人材育成→域内観光の基盤整備

以上の要素を各国がそれぞれ平行して実施していく。その過程では、ワークショップ等で各国がお互いの情

報を交換し合い、フィードバックしながら進めていく。

また、GMS 観光セクター戦略調査も2005 年 1 月現在進行中である。これは、インドシナ地域6カ国(5カ国+

雲南省)の今後 10 年の観光開発戦略と今後 5 年のアクションプランを作成するというものである。

b. エメラルドトライアングル構想

タイが主導的に進めている、タイ・ラオス・カンボジアにまたがる地域の観光開発構想である。基本的にはカン

ボジアのオッダーミンチェイ県、プレアビヒア県、ストゥントレン県、ラオスのチャンパサック県、サラワン県、タイ

のウボンラチャタニ県、シーサーケット県からなる地域をエメラルドトライアングルとして定義している。構想の

構成要素として、観光開発計画の策定、マーケティング戦略とアクションプランの策定、人材育成とキャパシテ

ィビルディング、の 3つを取り挙げている。フィージビリティスタディが終了し、現在はプロジェクト実 施のための

ファンドを待っている段階にある。

主要観光資源としては、以下のようなものが挙げられている。

- 伝統的な生活様式を守っている様々な民族の生きた文化

- プレアビヒア寺院遺跡(プレアビヒア県(カンボジア))やワットプー寺院遺跡(チャンパサック県(ラオス))

などのクメール遺跡

- ビラチャイ国定公園(ストゥントレン県・ラタナキリ県(カンボジア))・コーンパペンの滝と4千の島々 (チャン

パサック県(ラオス))・ボロバン高原(チャンパサック県(ラオス))・メコン川イルカ(チャンパサック県(ラオ

ス)・ストゥントレン県(カンボジア))などの自然観光資源

- ウボンラチャタニ(タイ)、シーサーケット(タイ)、ストゥントレン(カンボジア)、パクセ(ラオス)などの観光拠

点地

c. CLV 開発三角地帯

カンボジア・ラオス・ベトナムというインドシナ地域の中でも開発後発国間での開発構想で、ベトナムが主導的

に進めている。具体的には、ベトナムのコントゥム県、ギアライ県、ダクラク県、ラオスのアタプー県、セコン県、

カンボジアのストゥントレン県、ラタナキリ県、の3カ国9県を対象としている。上述の地域の開発を総合的に取

り扱う構想で、観光開発も含まれている。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-9

d. ゴールデントライアングル

ゴールデントライアングルという言葉は一般的にはタイ・ミャンマー・ラオスの三カ国が互いに国境を接する広

い地域を漠然と指すが、時には三カ国の国境が交わる地点を指すこともある。現在この地域を対象とした観

光のための開発プロジェクトなどは行われていない。しかし、この地域は、中国雲南省から南下し国境越えを

楽しむ旅行者が、ラオスまたはミャンマー経由でタイへと通り抜ける地域であり、これら観光客を対象とした観

光ポテンシャルを持つ地域である。タイ・ミャンマー国境部分ではタイ人観光客らが訪れるカジノ・マーケットが

栄えている。

3.1.2 ラオスの観光の現状

(1) ラオスへの国際観光客数

ラオスの観光入れ込み数は 90 年代前半に急速な成長を遂げ、その後も順調に増加を続けてきた。2000 年

代に入ってからはアメリカ同時多発テロ(2001)や SARS(2003)の影響もあり若干停滞気味の傾向が見られた

が、2004 年の入れ込み数は再び大幅な増加傾向を示し、80 万人に達する見通しである(図 A1.4)。

観光から得られる収入も入れ込み数と同様の傾向で変化してきた。この間観光客一人当たり消費額が増加し

てきたため、全体の観光による収入は入れ込み数の増加分以上になっている。

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

訪問

者数

0

20

40

60

80

100

120

観光

収入

(百

万 U

S$)

アフリカ、中東地域アメリカ地域

ヨーロッパ地域

アジア太平洋地域

観光収入

アジア 経済危機

到着査証発給開始

ビジット・ ラオ・イヤー

アメリカ 同時多発テロ

SARS

出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004

図 A1.4 ラオスを訪れる国際観光客数と観光からの収入の変化

ラオスの観光市場の特徴はアジア地域、特に隣国タイからの観光客が多いことにある。ただし、長期的に見る

とアジア地域のシェアは減少傾向にあり、北部のルアンプラバンやルアンナムタを訪れるヨーロッパ・アメリカ

からのロングホールの観光客のシェアが徐々に増えつつある(図 A1.5)。

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A-10

2004 年 12 月からASEAN 加盟国籍を持つ者は ASEAN 内での移動に際して査証(ビザ)が不要となった。

これにより、今後タイ、マレーシア、シンガポール等からの域内観光客が増加することが予想される。

70.4%

66.3%

90.2%

90.8%

13.8%

12.0%

5.9%

6.0%

10.4%

14.8%

2.2%

3.2%

5.1%

6.2%

1.7%

0.1%

0.3%

0.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1991

1995

1999

2003

アジア近隣国アジア太平洋地域ヨーロッパ地域アメリカ地域アフリカ、中東地域

出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004 注: ここではアジア近隣国とはタイ、ベトナム、カンボジアを指す(1999, 2003 年)が、1991, 1995 年のデータでは

これらの国はアジア太平洋地域に含まれている

図 A1.5 ラオスを訪れる国際観光客のシェアの変化

(2) 主要観光地

ラオスの主要観光地は、タイ国境を挟んでノンカイの向かい側に位置する首都ビエンチャンと、ビエンチャン

の北約 230km にある世界遺産認定の古都ルアンプラバンである。近年、ルアンプラバ ンから北西方向約

150km に位置する、ルアンナムタ県でのエコツーリズムが注目を集めており、欧米人バックパッカーを中心と

した旅行者が訪れている。ビエンチャンを訪れる観光客はタイ人マーケットが中心、ルアンプラバンを訪れる

観光客は欧米人マーケットが中心である。

多くの観光客がこれらの観光地に集中する中、今後の新しい観光資源として、ビエンチャンの南東方向約

480km にある都市パクセを中心としたラオス南部や、ビエンチャンの北約 170km のジャー平原などに、開発

への期待が高まっている。

これら観光地の位置は図 A1. 6 に示す通りである。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-11

出典: 調査団

図 A1.6 ラオス主要観光地の位置

(3) 観光開発計画におけるラオス南部の位置付け

上述のように、既存の少数の観光地への依存から脱却し、観光的魅力の多様化を目指すべき段階に入って

いる。そのような視点から、ラオス南部は現在注目されつつある地域のひとつである。チャンパサック県は、現

在実施中の GMS メコン観光開発プロジェクトの「貧困削減に寄与する集落観光開発」の実施箇所のひとつで

もある。

99年に UNDP、WTO の支援で作成されたラオス観光マーケティング計画においては、複数の観光サーキット

の開発の必要性が論じられている。南部ラオスは、全北部県を含む地域、ビエンチャンを含む中部地域に続く

3 つ目のサーキット地域として挙げられている。そして、これら3つのサーキットが効果的に発展するためには、

個別サーキットの開発のみならず、より広い視点に立ったサーキット間での連携が必要であることが強調され

ている。

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A-12

3.1.3 カンボジアの観光の現状

(1) カンボジアへの国際観光客数

カンボジアの観光入れ込み数は内戦終了後の 90 年代後半に急激に増加した(図 A1.7)。2003 年には SARS

の影響でいったん減少を見せるが 2004 年には急激に回復し、100 万人を超える訪問者を受け入れ、再び大

幅な増加となった。

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

訪問

者数

0

100

200

300

400

500

600

700

800

観光

収入

(百

万U

S$)

国際訪問者数観光収入

アジア 経済危機

アメリカ 同時多発テロ SARS,

タイ企業等への暴動

出典: カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005

図 A1.7 カンボジア国際観光客数

カンボジアを訪れる国際観光客の主要マーケットはアジア地域、次にヨーロッパ、アメリカとなっているが、近

年はアメリカからの観光客の増加とそれに伴ったアジア地域の相対的シェアの減少が見られる(図 A1.8;プノ

ンペン国際空港から入国の観光客のみのデータである。カンボジアへの旅行者の入国経路はプノンペン国際

空港へのフライト、シェムリアップ国際空港へのフライト、隣国との国際国境から陸路・水路、という3つのパタ

ーンが主であり、それぞれの入国者数はほぼ同数である(2004 年現在))

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-13

68.5%

68.6%

49.8%

52.4% 23.1%

9.6%

6.2%

23.5%

19.8%

24.1%

17.5%

16.0%

11.2%

7.7%

0.4%

0.3%

0.6%

0.8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1993

1997

2001

2004

アジア近隣国アジア太平洋地域ヨーロッパ地域アメリカ地域アフリカ、中東地域

出典: ASEAN-Japan Centre, ASEAN Tourism Missions: Promoting ASEAN Tourism, 2003 (1993, 1997 のデー

タ), カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005 (2001, 2004 のデータ) 注: ここではアジア近隣国とはタイ、ベトナム、ラオスを指す(2001, 2004 年)が、1993, 1997 年のデータではこれ

らの国はアジア太平洋地域に含まれている

図 A1.8 カンボジア国際観光客数のシェアの変化

アジア地域からの旅行者が最大のマーケットである点はラオスと同様であるが、ヨーロッパ・アメリカからの旅

行者の全体に占める割合はカンボジアの場合の方がかなり大きい。おそらくはアンコールワットによるもので

あろう、多くの国でのカンボジアの知名度の高さが伺える。

国別マーケットシェアの上位5カ国は以下のようになっている(表 A1.7)。日本、韓国を始め、タイ、中国などの

近隣アジア諸国およびアメリカ、イギリス、フランスといった欧米諸国などが上位を占めている。

表 A1.7 カンボジア国際観光客国別シェア上位5 カ国

2004 2003 2002 韓国 128,423日本 88,401日本 105,545日本 118,157アメリカ 66,123アメリカ 88,396アメリカ 94,951韓国 62,271フランス 62,817イギリス 64,129イギリス 50,266タイ 59,575フランス 58,076フランス 45,396中国 54,045出典: カンボジア観光省, ウェブサイト, 2005

カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005

(2) 主要観光地

カンボジアの主要観光地は、国の中央やや北西に位置するシェムリアップ(アンコールワット)であり、次いでシ

ェムリアップから南東に 240km にある、メコン川沿いの首都プノンペンとなっている。近 年、プノンペンの南西

約 180km にあるシアヌークビル付近の南部海岸地帯が新たな観光地として注目されつつある。

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A-14

出典: 調査団

図 A1.9 カンボジア主要観光地図

(3) 観光開発計画におけるカンボジア東北部の位置付け

カンボジアではアンコールワットのあるシェムリアップへの観光客の一極集中が起こっている。カンボジア観光

省でのヒアリングから、今後の観光開発候補地域として、シェムリアップ、プノンペン、南部海岸地域、東北部

の 4 箇所が優先的に考えられていることが分かった。

また、2001-2005 の観光開発計画においては観光資源を現時点での発展度合に応じて、以下(表 A1.8)のよ

うに分類している。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-15

表 A1.8 観光資源分類

観光資源の発展度合 観光資源の分類

確立済み 文化遺産

確立済みもしくは開発途中 祝祭他行事

手工芸品

新興中 村落観光

潜在的(未開発) エコツーリズム・自然観光

沿岸地区観光

冒険的観光 出典: カンボジア観光省, Cambodian National Tourism Development Plan, 2001

この分類の中では、東北部における観光ポテンシャルは村落観光(village tourism)、エコツーリズム・自然観

光(nature-based tourism)、冒険的観光(adventure tourism)などである。前述の観光開発計画における自

然観光についての記述では、東北部における自然観光の戦略作りを観光省・環境省が協力の下進めるべき

との優先アクションが示されている。

3.2 観光資源

3.2.1 ラオス側観光資源

(1) ワットプー

ワットプーはパクセから国道 13 号線沿いに南に約 30km、メコン河を挟んで西側に位置している。現存する構

造物は、古くは6~8世紀のチェンラ王朝の、新しいものは9~13世紀のアンコール時代のものとされる。もと

もとはヒンズー教寺院として建設されたが、現在は地元住民の仏教信仰の地となっている。2001 年には世界

遺産に認定されている。

これまで UNESCO、フランス、イタリア、日本などの支援を受け様々な調査が行われてきている。1998 年に

は「チャンパサック文化遺産サイト修復・運営管理計画」(Champasak Heritage Management Plan)が、ラオ

ス政府の正式な国家計画として承認され、遺跡修復に向けた方向が明示され た。2001 年には JICA によるワ

ットプー遺跡保存環境整備計画基本設計調査が実施され、遺跡地への雨水流入を防ぐための排水路の建設、

遺物の展示施設および保管庫の建設、修復や測量のための機材供与が行われた。しかしながら、観光地と

いう視点からは依然として開発が十分に進んでいない。遺跡の説明などの情報が不十分なため、観光客の

滞在時間は短いままで、地元住民への便益も限定的である。

図 A1.10 はワットプーの訪問者数を表している。国際観光客のみならず、多くのラオス人が訪問していること

が分かる。

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A-16

14,253

27,315

11,098

16,009

8,632

13,121

17,36118,881

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2000 2001 2002 2003

LaoForeigner

出典: ワットプー併設資料館展示資料

図 A1.10 ワットプー訪問者数

(2) コーンの滝群(コーンパペンの滝)

コーンの滝群はパクセの南約 130km に位置している。ここでは、メコン川上に多くの中洲や岩があり、いくつ

もの滝を形成している。最も有名な滝は、東南アジア最大とい われるコーンパペンの滝で、国道 13 号線から

容易にアクセスが可能である。コーンパペンの滝周辺には滝を眺めるためのデッキが設置され、地元住民に

よるレストラン・お土産物屋などが店を構えている。サイト管理のコンセッションをシンガポールの会社が手に

入れたとの情報もあったが、そのコンセッションは解消されたようである。

(3) 4千の島々

チャンパサック県南部のカンボジア国境近くではメコン川上に多くの島々が点在することからこの名前がつい

た。最も大きな島は東西 9km の幅・南北 11km の長さのコーン(Khong)島である。比較的規模の大きなゲスト

ハウスが何軒かあり、4 千の島々やコーンの滝群を訪れる観光客の拠点となる場所である。

コーン(Khon)島・デット(Det)島にはフランス植民地時代に建設された蒸気機関車や線路の跡、両島にかかる

橋などがある。また、メコン河イルカの観察のためのボートもコーン(Khon)島から出ている。コーン(Khon)島

に入る際にはエコツーリズムサイトの入場料として幾らかの現金を観光客から徴収される。

コーン(Khon)島の周辺の島々の川沿いには、低予算のバックパッカーを狙った比較的新しいゲストハウス(一

泊$1程 度)が数多くある。

(4) セピアン(Xe Pian)国定保護区

チャンパサック県カンボジア国境沿いに広がる国定保護区で、ラオスにおける生物多様性の保全の観点から、

最も重要であるとみなされている地域のひとつである。保護区内にある村が、現在観光客向けに体験象乗り

を運営しており、年間数百人の個人旅行者とパッケージ旅行者が参加している。保護区内のそれ以外の場所

では観光開発は特に進んでいない。また、保護区内にはワニの保護活動が行われている地域がある。このよ

うな動植物の保護と観光を結びつけて進めていく可能性も示唆される。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-17

(5) ボロベン高原(コーヒープランテーション)

チャンパサック県北東部に位置するボロベン高原では、20 世紀初頭のフランス植民地時代には、コーヒー、

バナナ、ゴム等のプランテーションが行われていた。その後、独立・アメリカによる爆撃などの歴史の中、プラ

ンテーションは放置されてきたが、今日ではコーヒー豆作りが復活しており、多くの村でコーヒーが栽培されて

いる。なお、生産量の 90%はフランス・ベトナムなどへと輸出されている。

(6) メコン川イルカ

ラオス・カンボジア国境付近(およびカンボジア国内クラチエ付近)では、メコン河に生息する川イルカ

(Irrawaddy dolphin)を観察することが出来る。かつてはカンボジアのトンレサップ湖周辺やラオス内のメコン

河支流やベトナム側などで幅広く観察されていたが、現在ではラオス・カンボジア国境-クラチエ(カンボジア)

間の約 180km のごく限られた地域に 80~100 頭程度が生息するのみと言われている。その数は近年急激に

減少していると見られており、国境付近では 2000 年には 29 頭いたものが 2004 年現在 9 頭まで減少したと

の報告もある。減少の原因として、地元住民が漁・生簀等で使うネットに引っかかってしまうこと、ダイナマイト

漁、餌となる小魚の減少、ボートのノイズ、ボートのスクリューに巻き込まれてしまうこと、などがある。

イルカ保護に関する活動はラオス・カンボジア両国で数年間に渡って続けられてきている。しかし、活動資金

が恒常的に不足していること、またそのために生態に関する調査が未だ不十分であること、ラオス・カンボジ

ア地方政府、自然保護系 NGO(IUCN、WWF、WCS)、大学研究者などが活動に関わってきたものの全ての

活動を統括し外部に対して窓口となるような機関・組織が存在していないこと、などの問題がある。

イルカ保護のためには、ネットやボートの使用等の面で、現地住民の漁業活動がある程度制限されることが

必要だと考えられている。こういった制限により地元住民の漁業収入の減少が予想されるが、それを代替・補

填できる可能性として注目されているのが観光からの収入である。イルカ保護活動の進展によりイルカが増

加しそれによって観光セクターを通じて地元住民へと利益が還元される、という仕組みの確立が現在求めら

れている。

3.2.2 カンボジア側観光資源

(1) ビラチャイ自然公園

カンボジア側ラオス国境付近には、ストゥントレン県・ラタナキリ県にまたがって、同国最大の保護区であるビ

ラチャイ自然公園がある。ビラチャイ自然公園では、現在のところ観光に関連した活動はそれほど活発ではな

いようであるが、ADB のコンサルタントが関わる同公園でのエコツーリズムが始まったとの情報もある。同自

然公園はアクセスの困難さはあるものの、希少な動植物が生息するといわれており、また落差 100m に達す

る大きな滝があるなど、今後の潜在的観光資源として注目されている。

(2) ヤクロム湖周辺観光地

ヤクロム湖はカンボジア東北部ラタナキリ県の県都バンルンの郊外にある。直径 800m、周囲 2500m 程度の

円形で透明度の高い湖で、約 4000 年前に火山噴火によってできたと言われている。湖には文化・環境センタ

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A-18

ーが併設されており、現地の少数民族の道具・楽器などの展示があり、少数民族文化や周囲の自然環境が

紹介されている。また、ヤクロム湖周辺では現地人ガイドによるトレッキングツアーも行われている。

湖およびその周辺施設・トレッキングツアーの管理運営は、地元住民の代表組織であるヤクロム湖管理およ

びレクリエーション委員会(Yeak Loam Lake Conservation and Recreation Committee: YLCDC)によって行

われている。YLCDC はラタナキリ県農村開発委員会(Ratanakiri Provincial Rural Development

Committee: PRDC)と1998 年に業務委託契約を結んでおり、以下の業務を行うことになっている。

- 住民主導によるヤクロム保護区中心部(core zone)の天然資源の管理・保全

- ヤクロム文化環境センターで行われる、環境・観光・文化に関する意識向上教育プログラムの開発

- 文化・環境センターやトイレなど関連インフラの維持管理

- 収入の確保と支出管理

当業務委託に関しては、PRDC、県政府文化・観光・環境局、国際機関/NGO、地域住民および外部独立評

価者の代表から構成される合同評価委員会が、毎年 YLCDC の管理運営能力を評価する。そこで十分な評

価が下されれば契約は更新され、現在の契約上は最長 25 年まで継続されることになっている。

図 A1.11 は YLCDC の収支状況を表している。業務委託を受けてから3 年目には黒字を生み出すことに成功

している。

3,3833,586

2,955

610

2,276

2,6952,700

1,249

891683

-679-639

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

1999(6月-12月)

2000 2001 2002(1月-10月)

US

$

収入支出差引残高

出典: ヤクロム文化・環境センター展示資料

図 A1.11 YLCDC 収支状況

図 A1.12 はヤクロム湖の訪問者数を示している。ヤクロム湖は地元住民にとっても親しみあるレクリエーショ

ンの場であり、外国人観光客を大きく上回る人数が毎年来訪していることが分かる。(以下の Web サイトにヤ

クロム湖の情報がある。http://www.geocities.com/yeak_laom/)

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-19

12,200

9,003

12,913

7,285

7641,226

2,3761,943

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1999(6月-12月)

2000 2001 2002(1月-10月)

カンボジア人外国人

出典: ヤクロム文化・環境センター展示資料

図 A1.12 ヤクロム湖来訪者数

(3) 先住民(indigenous people)文化

カンボジアは多数派であるクメール民族と、その他複数の先住民族から成る多民族国家である。カンボジア

東北部は比較的高地が多いこともあり、トンプン(Tampuon)、ジャライ(Jarai)、クルン(Kreung)、プノン

(Phnong)等、多くの先住民が居住している。各県の人口に占める先住民の割合は、ストゥントレン県では

7%、ラタナキリ県では 66%となっており、ラタナキリ県や南に隣接するモンドルキリ県(71%)ではクメール民

族が少数派となっている(ADB, Indigenous peoples/ ethnic minorities and poverty reduction, 2002)。

クメール民族と異なる風習・言語等を持つ先住民文化は、外部からの観光客が彼らの村を訪れ、未知の文化

に対する理解を深めるといった形で、観光資源となりうる。現時点でも、先住民村落を外部観光客が訪れると

いう形態の観光は行われているものの、観光客との積極的な交流はあまりない。これは、このような観光がま

だ始まったばかりであるために、観光客がなぜ来るのか、それによってどのような便益がもたらされうるのか、

等の観光全般に対する意識・理解が、先住民側でまだ進んでいないからであると考えられる。

このような状態では、先住民側で外部からの訪問者に対し準備が出来ていない状況での観光となってしまい、

観光のもたらす文化的・経済的インパクトが大きな負の影響をもたらすおそれがある。

3.3 観光市場

当該地域の国際観光入れ込み数を表 A1.9 にまとめた。ラオス・チャンパサック県全体の入れ込みが近年大

きく伸びていることが分かる。ラオス側に比べるとカンボジア側を訪れる観光客の数は少なく、観光開発は始

まったばかりという印象である。2002 年時点でのラタナキリ県の訪問者数が、ヤクロム湖の訪問者数よりも少

ないのは、前者のデータ収集体制が十分に整っていなかったからではないかと考えられる。

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A-20

表 A1.9 ラオス南部・カンボジア東北部の国際観光客数

国 県(観光地) 2000 2001 2002 2003 2004 ラオス セコン - - 574 2,242 -

アタプー - - 6,841 9,149 -

チャンパサック 34,796 55,142 45,635 65,827 - (ワットプー) 8,632 13,121 17,361 18,881 -カンボジア ストゥントレン - - 1,278 3,660 9,011

ラタナキリ - - 1,397 3,016 15,085

(ヤクロム湖) 1,226 1,943 2,376 - -出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004 ワットプー併設資料館展示資料 カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005 ヤクロム文化・環境センター展示資料

表 A1.10 に 2003 年ラオス・カンボジア両国の自国民の旅行者数を記す。なおラオス側各県の値は推計値で

ある2。国際観光客と同 程度もしくはそれ以上の人数の国内観光客市場があることが分かる。

表 A1.10 ラオス南部・カンボジア東北部の国内観光客数

国 県(観光地) 2003

ラオス セコン 7,000

アタプー 9,000

チャンパサック 80,000

(ワットプー) 27,315

カンボジア ストゥントレン 3,660

ラタナキリ 5,719

(ヤクロム湖) -出典: 調査団による推計 ワットプー併設資料館展示資料 カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005

3.3.1 ラオス側観光市場

表 A1.11 はチャンパサック県の入り口のひとつであるタイ国境(バンタオ)における、国別の入国者数である。

県全体の訪問者数が 65,827 人なので約 6 割の訪問者がタイ国境から入ってきていることになる。ここで見る

限り、タイ人が圧倒的に多くのマーケットを占めており、フランス人・アメリカ人・イギリス人・ドイツ人など欧米

人マーケット、日本人マーケットがそれに次いでいる。カンボジア人も多く通行しているが、その内のどれだけ

が旅行者で、どれだけが国境地域の住民であるかはここからは明らかではない。表 A1.11 に入っていない残

りの 4 割は、ルアンプラバン、フアイサイ、ビエンチャンなどでラオスに入国し陸路・水路で移動してくる旅行者

である。

2 推計には以下の式を用いた。 ラオス人観光客数={客室数*平均一部屋あたり宿泊人数*ホテル利用率*365(年間日数)-国際観光客数*国際観光客平均滞在日数}/ラオス人観光客平均滞在日数 ただし、平均一部屋あたり宿泊人数は1.7(人/部屋)を、平均滞在日数は国際観光客についてはチャンパサック:3日、セコン・アタプー:2日、ラオス人観光客についてはいずれも2 日をそれぞれ仮定した。その他の値は統計データを用いた。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-21

表 A1.11 タイ-ラオス国境(チョンメク-バンタオ)における国籍別入国者数(2003 年)

国籍 人数

タイ 29,217

フランス 2,523 カンボジア 1,570

アメリカ 1,060

日本 1,002 イギリス 976

ドイツ 938

その他 4,249 合計 41,535 出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004

3.3.2 カンボジア側観光市場

現時点でカンボジア東北部を訪れる国際観光客はそれほど多くはない。ラオス南部から国境を越えてくるバッ

クパッカーや、プノンペンから飛行機でやってくる短期滞在者などがおもなパターンで、欧米人マーケットが中

心である。ただ、中には一週間程度の比較的長期滞在をする旅行者もいる、との情報も旅行会社から得られ

た。表 A1. 9 にあるように、2004 年にはラタナキリへの外国人訪問者数が大きく増加している。

3.4 観光施設(宿泊施設およびレストラン)

3.4.1 ラオス側観光施設状況

表 A1.12はラオス南部各県の宿泊施設の部屋数およびレストラン件数の一覧である。宿泊施設とは登録され

ているゲストハウス(部屋数 14 以下)とホテル(部屋数 15 以上)を合わせたものである。チャンパサック県の

宿泊キャパシティがこれら3県の中では絶対数・成長率ともに抜きん出ており、同県が地域の中心的観光地と

して急成長していることが分かる。

表 A1.12 ラオス側宿泊施設部屋数およびレストラン件数

宿泊施設部屋数 レストラン件数

年 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2001 2002 2003 セコン 15 15 15 16 15 69 6 6 6

アタプー 37 41 94 74 74 107 7 7 15 チャンパサック 306 374 759 889 925 1,298 9 9 12 出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004

3.4.2 カンボジア側観光施設状況

表 A1.13 はカンボジア東北部各県の宿泊施設の部屋数およびレストラン件数の一覧である。ラオス側と比べ、

観光施設数はまだ少なく、観光開発の度合も低いことがここからも伺える。

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表 A1.13 カンボジア側宿泊施設部屋数およびレストラン件数

宿泊施設部屋数 レストラン件数

年 1998 …… 2003 2004 1998 …… 2003 2004 ストゥントレン - - 91 91 - - 7 8

ラタナキリ 87 - - 104 2 - - 10 出典: カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005

UNDP, Sustainable Tourism and Capacity Development in the Emerald Triangle Region TAT, Action Plan for Triangle Tourism Development in Thailand, Lao PDR and Cambodia, 1999

3.5 インフラ整備状況

3.5.1 ラオス側インフラ整備状況

(1) パクセ空港

パクセ空港は国際空港であるものの、2005年 1月現在国際線はラオス航空がシェムリアップ間を週 3 便飛ん

でいるのみであり、それ以外に外国からの直接乗り入れは行われていない。国内線はビエンチャン間で週 5

便のフライトがある。

(2) 国道13号

ラオス南部においては、国道 13 号はメコン河の東側をパクセからカンボジア国境まで南北に貫いている。国

道 13 号を使って、パクセからワットプー対岸のバンムアンやコーンの滝群へアクセスすることができる。道路

の路面状況は良好で時速100km 以上での走行も可能である。現地踏査では、パクセからワットプーまでの移

動は 1時間 40分程度(国道 13号の移動+後述のフェリーの時間)、ワットプーからコーンパペンの滝までは2

時間 15 分程度の時間を要した。

(3) メコン河フェリー(ワットプー、4千の島々へのアクセス)

ラオス国内パクセ以南では、メコン河を横断する橋はかかっていない。ワットプーや 4 千の島々へアクセスす

るには国道 13 号でそれぞれの場所の対岸まで移動し、そこから地元住民によって運営されているフェリーに

乗る必要がある。これらのフェリーは定時運行はされておらず、利用の際は乗客が十分に集まるまで待たなく

てはならない。これらフェリーが旅行業者のパッケージツアーに移動手段として組み込まれるためには、定時

運行の確保が望ましく、そのための工夫が今後必要になると思われる。

3.5.2 カンボジア側インフラ整備状況

(1) ストゥントレン・ラタナキリ空港

これまで、プレジデントエアライン、ロイヤルプノンペンエアウェイズなどの航空会社がラタナキリ-プノンペン、

ラタナキリ-ストゥントレン-プノンペンといった路線の定期便を飛ばして来ている。しかしながら、これらの便

はある程度の期間にわたって運行休止となることがしばしばあり、安定した需要の確保が時として難しいとい

うことの表れであると考えられる。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-23

(2) 国道7号

カンボジアの国道 7 号線はラオス国境から南下し、クラチエ、コンポンチャムを経てプノンペンへと至る道であ

る。しかし、ラオス国境~クラチエ間での路面の状況は悪く、この区間での移動は、もっぱら平行するメコン河

上のスピードボートに頼っている。国道 7 号線は中国政府支援による改修が予定されている。今後は路面状

況が改善され、陸路によるラオスとの国境越えが可能になることが期待される。

(3) 国道78号

ストゥントレンの町からラタナキリ県バンルンまでのアクセス道路が国道 78 号線である。路面状況は悪く、特

に雨季には車両での走行がより困難になる。現地踏査(季節は乾季)においては、ストゥントレン-バンルン間

約 165km の移動に 5 時間程度を要した。雨季には、路面の状況が悪化し、同じ道を進むのに 5~10 時間か

かるとの情報もある。

(4) ボート

ラオス・カンボジアの国境地域において、水上ボートはメコン河を利用した移動手段として非常に重要なもの

である。国境-ストゥントレン-クラチエ間の長距離の移動から、ラオス側のコーンの滝群、4 千の島々、メコ

ン川イルカの観察などのための短距離の移動まで、ボートを使った移動はこの地域の観光と密接に関わって

いる。観光客にとっては乗り物での移動自体も観光的魅力の一つになるため、安全性・快適性を確保しつつ

上手く観光に組み込んでいくことが望ましい。

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4 現状分析と開発課題

4.1 現状分析

ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発の現状を、観光地ごとの SWOT 分析によって以下のようにまとめ

た。

表 A1.14 チャンパサック県パクセおよび周辺観光地(ラオス)の観光開発のSWOT 分析 正 負 現況 強み(strength)

• ラオス第 3 の都市パクセは、地域の観光客の滞在拠点となっている

• 国際空港(パクセ空港)・ラオス国道13 号・タイ国境などによるアクセスが良く、地域の観光ゲートウェイとして機能している

• ワット・プー、コーンの滝群などの観光資源が多くの観光客を集めている

弱み(weakness) • 主要マーケットがタイ人であり、欧米人・日本人

マーケットなどは限定的である

• 主要マーケットであるタイ人の滞在期間が短い

• カンボジア国境での出入国手続きや移動手段(ボート)の手配が個人旅行者にとっては容易ではない

将来 機会(opportunity) • カンボジア国道 7 号・国境施設の整備、到着ビ

ザの発給など国境越えが簡便化される予定である

• タイ・ラオス・カンボジアの3カ国が接する地域であり、道路等のインフラが整備されれば、地域の結節点となりうる

• セピアン国定保護区の希少な動植物は今後の観光資源となりうる

• メコン観光開発プロジェクトによる集落観光開発が実施される

脅威(threat) • 多くの観光客が訪問することによって観光的な

魅力や快適性が損なわれる恐れがある

• 観光資源ともなる川イルカが急速に減少しつつあり、絶滅の危機にある

• 観光資源の保護の経済的な動機付けがないと、資源の破壊が進み、観光的魅力が低下する恐れがある(漁業と川イルカの関係)

出典: 調査団

表 A1.15 セコン県、アタプー県(ラオス)の観光開発の SWOT 分析 正 負 現況 強み(strength)

• 滝、少数民族、ホーチーミン・ルート跡、古い仏塔など多様な観光資源を持つ

• 北部ラオスがエコツーリズムで成功しており、「ラオスのエコツーリズム」という名前が国際的に売れている

弱み(weakness) • 観光地としての知名度が低い

• 貧困度が高い

• 道路整備が不十分であり、空港も機能していないためアクセスが悪い

将来 機会(opportunity) • ベトナムに通じるラオス国道18 号が整備されれ

ば、ヒト・モノの動きが加速される

• 保護区・自然公園内の希少な動植物は、適切な管理のもと、将来の観光資源となりうる

脅威(threat) • 観光資源となる自然環境が破壊されつつある

(ドンアンパン国定保護区内の森林伐採)

• 観光資源の保護の経済的な動機付けがないと、自然資源などの破壊が進み、観光的魅力が低下する恐れがある

出典: 調査団

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 A1.16 ストゥントレン県、ラタナキリ県(カンボジア)の観光開発のSWOT 分析 正 負 現況 強み(strength)

• 希少動物、プランテーション、滝、少数民族、宝石採掘、古い仏塔など多様な観光資源を持つ

• ヤクロム湖での観光が住民主体で順調に管理運営されている

弱み(weakness) • 観光地としての知名度が低い

• 道路整備が不十分であり、アクセスが悪い

• 貧困度が高い

• 国境での出入国手続きや移動手段(ボート)の手配が個人旅行者にとっては容易ではない

将来 機会(opportunity) • カンボジア国道 7 号・国境施設の整備、到着ビ

ザの発給など国境越えが簡便化される予定である

• ストゥントレン・ラタナキリ空港の改善が計画されており、アクセスが改善される

• 保護区・自然公園内の希少な動植物は適切な管理のもと、将来の観光資源となりうる

• 既存のヤクロム湖観光、文化・環境センターとの連携により、地元住民の観光への理解を促進し、住民主体の観光開発を後押しできる

脅威(threat) • 観光資源となる自然環境が破壊されつつある

(森林伐採、川イルカの減少)

• 観光資源の保護の経済的な動機付けがないと、自然資源などの破壊が進み、観光的魅力が低下する恐れがある

• 現地少数民族住民所有の土地が外部者によって取得されるという問題がおきており、将来において地域の社会問題となりうる

• 現地住民の観光に対する準備が整わないまま外部の観光客が訪れているため、文化的・経済的に負の影響を受ける恐れがある

出典: 調査団

4.2 開発課題

観光地ごとの開発課題は以下のようにまとめられる。

表 A1.17 観光地ごとの開発課題 場所 開発課題 チャンパサック県パクセおよび周辺観光地(ラオス)

• 観光マーケットの多様化

• タイ人マーケットの滞在時間長期化

• 観光客の受け入れキャパシティの向上

セコン県、アタプー県(ラオス) • 観光地としての知名度の向上

• 貧困問題の解消

• 森林等の自然資源の保全

• 観光資源保護

ストゥントレン県、ラタナキリ県(カンボジア)

• 観光地としての知名度の向上

• 貧困問題の解消

• 森林等の自然資源の保全

• 観光資源保護

• 外部者による土地取得問題

出典: 調査団

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5 観光開発戦略

5.1 南北コリドー沿いの観光サーキット開発

本調査で提案しているインドシナ南北コリドーはインドシナにおける観光周遊サーキットを考える上でも重要で

ある。図 A1.13 にタイ・ラオス・カンボジアにおける観光サーキットと南北・東西コリドーの関連を示す。

出典: 調査団

図 A1.13 観光サーキットと南北・東西コリドー

図中にはバンコクをゲートウェイとする二つのサーキットが描かれている。バンコク~チェンマイ~タイ・ラオス

国境越え~ルアンプラバン~ビエンチャンというのが北方サーキットであり、既に確立されたルートである。も

う一つのサーキットが南北コリドー沿いに展開する南方サーキットである。現時点での旅行者数は多くはない

ものの、アライバルビザの発給や国境越えの道路整備など、ラオス・カンボジア国境越えの簡便化が様々な

面で進められており、将来はこのような旅行者の動きが活発になると考えられる。

具体的な経路としては、ウボンラチャタニもしくはサバナケット~パクセ~ラオス・カンボジア国境地域~プノン

ペン~シアヌークビルまたはシェムリアップ、といったものが想定される。南方サーキットは東西コリドーとも接

続する。これにより、現況ではあまり見られない、東西方向の旅行者の動きが増えることが期待される。

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南方サーキット形成のためには、このような移動を可能にする道路整備等を進めると同時に、サーキット上の

観光地の魅力を高めていく必要がある。

5.2 開発の方向性

これまで記してきた通り、ラオス・カンボジアは観光的魅力の多様化を目指す段階に入っている。ラオス南部

とカンボジア東北部を新しい観光地として開発してゆくことは、両国の観光開発の方針からも重要である。上

述の国境越えの簡便化は、これら二つの地域の連携を促進し、新しい魅力の創出に繋がることが期待される。

図 A1.14 に当該地域で想定される旅行者の流れを示す。

出典: 調査団

図 A1.14 ラオス南部・カンボジア東北部地域における旅行者の流れ

以下に各地における開発の方向性を述べる。

- ラオス南部の主要都市パクセおよびワットプーおよびコーンの滝群といった観光地では、今後パッケージ

ツアー客を中心とした観光客の増加が予想される。そういった一般観光客に対応出来るような地域の観

光拠点として、パクセおよびその近隣観光地は開発していくべきである。

- 一方で、チャンパサック県の近隣のセコン県・アタプー県および国境をはさんでカンボジア側のストゥント

レン県・ラタナキリ県では豊かな自然環境・少数民族文化などを中心に SIT・エコツーリズム開発を進める。

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ただし、そこでは観光開発単体のみを考えるのではなく、観光開発を同地域の開発の中に位置付け、総

合的な視点から取り組むべきである。

- また、ストゥントレン県・ラタナキリ県ではエコツーリズムのみならず、日本人・韓国人等ミドルホールの大

衆的な旅行者をひきつけるような開発も推進する。現状のままでは、カンボジア東北部が南北コリドー沿

いの旅行者の流れをせき止めてしまうことになるからである。ラタナキリ県バンルンには、プノンペンに住

む富裕層が週末に訪れるような小奇麗で隠れ家的なホテルもある。大衆市場に対しては、こういった優

れた宿泊施設はそれ自体が観光的魅力となる。このような魅力は現時点ではラオス側には見られないも

のであり、差別化を図るという意味でも、今後の開発ポテンシャルとして意識する必要がある。

以上のような方向性を踏まえた上で、マスマーケットを受け入れるパクセおよびその近隣の観光地と、ニッチ

マーケットを狙った周辺遠隔地のエコツーリズムサイトが連携しながら、開発を進めていくことが重要である。

5.3 目指すべきマーケット

表 A1.18 にラオス・カンボジアの既存観光マーケットと目指すべきマーケット・方向性をまとめる。ラオス南部・

カンボジア東北部は新興の観光目的地であるため知名度は高くない。そのため、国内(域内)の既に確立され

ている観光地におけるマーケットを意識する必要がある。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

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表 A1.18 ラオス・カンボジアの既存観光マーケットと目指すべきマーケット・方向性 既存マーケット 目指すべきマーケット・方向性

ラオス ルアンナムタ • 欧米人 • 欧米人マーケットの拡大

• 新規マーケットの呼び込み

ルアンプラバン • ヨーロッパ地域(50.7%)

• アジア・太平洋地域(19.5%)

• アメリカ地域(12.3%)

• 既存マーケットの拡大

• 一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

ビエンチャン • アセアン(70.4%(タイ69.4%))

• ヨーロッパ地域(12.9%)

• アメリカ地域(6.6%)

• タイ人マーケットの一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

• その他のマーケットの拡大

パクセ* • アセアン(75.6%(タイ70.3%))

• ヨーロッパ地域(15.9%)

• アメリカ地域(3.3%)

• タイ人マーケットの一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

• 欧米人マーケットの拡大

• 韓国・日本人マーケットの呼び込み

セコン・アタプー • (欧米人バックパッカー、パッケージ旅行者)

• 欧米人マーケットの拡大と定着

カンボジア シェムリアップ** • アジア・太平洋地域(49.0%(日本17.0%、韓国 14.8%、他台湾、中国、オーストラリアなど))

• ヨーロッパ地域(23.2%)

• アメリカ地域(12.7%)

• 既存マーケットの拡大

• 一人当たり消費額(滞在日数および一日あたり消費)の増加

ストゥントレン・ ラタナキリ

• (欧米人バックパッカー、パッケージ旅行者)

• 欧米人マーケットの拡大と定着

• 韓国・日本人マーケットの呼び込み

出典: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004(既存マーケット), カンボジア観光省, Annual Report of Tourism Statistics, 2005(既存マーケット), 調査団(目指すべきマーケット・方向性) 注: *タイ-ラオス国境(チョンメク=バンタオ)からの入国者数

**シェムリアップ空港直行便での入国者とシェムリアップへの国内旅行者数(シェムリアップ空港以外から入国)の合計

これら観光マーケットの中で以下の 3 つのグループが重要である。それぞれのグループに対するアピールを

考慮しながら、ラオス南部・カンボジア東北部地域の観光開発を進めていく必要がある。

- 欧米人:ラオス・カンボジアでは広範に渡る存在感

- タイ人:ラオスのビエンチャンやパクセ訪問者の圧倒的多数

- 日本人・韓国人:カンボジアのシェムリアップの主要マーケット

【欧米人】

南ラオスにエコツーリズムサイトを開発することで、北ラオスに魅力を感じる欧米人バックパッカーマーケットに

対して、パクセ(ワットプー、コーンの滝群)および国境越えなどの魅力とセットにしてアピールできる。一方、カ

ンボジアサイドのエコツーリズムはラオスほどの知名度は現在ないが、南ラオスがエコツーリズムのサイトとし

て欧米人マーケットに浸透することでカンボジア側へも呼び込み易くなり、ラオスエコツーリズムの知名度を利

用することができる。また、パクセ周辺の観光地の環境整備は、パッケージ旅行者へのアピールになる。パク

セを訪れる欧米人等のロングホールツーリストには、足を伸ばしてシェムリアップまで行きたいというニーズが

ある。このニーズに対してカンボジア東北部経由の新しいルートを提供することが出来る。

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【タイ人】

現在パクセを訪れるタイ人の多くはワットプー、コーンの滝群などを訪問するのみの短期旅行者であると考え

られる。彼らには対しては、パクセ周辺の観光地における環境を整備することによって、観光体験の質を向上

させ観光的魅力を高めることがアピールになり、滞在時間の延伸・消費の増加などにつながることが期待され

る。

今後カンボジア側での物流環境が改善し多くの物品が流れるようになれば、ラオス・カンボジア国境において

も、タイ・ラオス国境(チョンメク=バンタオ)と同様の市場(いちば)が形成されうる。このような国境市場はロー

カルな観光客へのアピールになる。

【日本人・韓国人】

シェムリアップを訪れる主要マーケットのひとつである日本人・韓国人旅行者に対しては、これまではシェムリ

アップ単体だった行程に新しい魅力を追加できる。アンコールワットと同じクメール文明の遺跡であるワットプ

ー、その移動途中にあるコーンの滝群やメコン川イルカの観察などである。具体的な周遊コースの例で言え

ば、

- バンコク~シェムリアップ~バンコク

という既存のコースに対する新しいオプションとして、

- バンコク~[パクセ~ワットプー~コーンの滝群~ストゥントレン]~シェムリアップ~バンコク

といったコースも提供できるようになる。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-31

6 提案プロジェクト

以上のような当該地域において今後目指すべき観光開発の方向性を鑑みて、ここでは3つの観光開発のた

めのプロジェクトを提案する。

6.1 ラオス南部チャンパサック県パクセを中心とした観光地における持続的観光振興の

ための受け入れキャパシティ整備

プロジェクト期間: 4 年間(2006~2009)

実施機関:チャンパサック県政府観光局

背景:

近年、ラオス南部チャンパサック県では、コーンの滝群、四千の島々及びワットプー遺跡等観光地への観光

客数が急激に増加している。ラオス国において、ラオス南部は、ルアンプラバン、ルアンナムタに次ぐ新たな

観光拠点としての開発が期待されている。また、近年、メコン地域では、国を超えた観光開発のための地域協

力が活発に議論され、ADB 主導の GMS 観光開発戦略や、タイ主導のエメラルドトライアングル観光開発構

想が進められているが、チャンパサック県は、これらの構想の重要観光地域として位置づけられている。

コーンの滝及び4 千の島々はチャンパサック県の観光の目玉である。既に、タイ人及び欧米人等の観光客が

急増しており、ラオス・カンボジア国境の公式オープン及びアライバルビザ発給が予定されていることから、ラ

オス南部の持続的な開発のための観光拠点整備の緊急性が認識されている。

チャンパサック県パクセを中心とした観光拠点を整備することにより、周辺のアタプー県及びセコン県へも観

光客は行きやすくなることから、コミュニティベースのエコツーリズム等による観光振興が可能となる。また、コ

ーンの滝・四千の島々は、カンボジア国境付近に位置していることから、同様に、開発が遅れるカンボジア東

北部で期待されるエコツーリズム振興にも貢献する。このような観点から、ラオス南部の観光拠点整備は重

要である。

しかしながら、コーンの滝・4 千の島々等を含む観光施設は、国際レベルからは程遠く、今後、増加する観光

客を受け入れる基盤が整備されていない。ワットプーにおいては 2001 年に JICA による文化無償事業が実施

されたものの、観光の視点からの整備は十分に行われなかった。これらの観光地はこのまま放置しておくと、

観光・自然資源の劣化や、観光地としての質の低下が予想される。従って、増加しつつあるマスツーリズム客

を受け入れつつも、Tourist Amenity を向上させながら(劣化させないように)持続的に観光資源を管理していく

こと目指した、受け入れキャパシティの整備が求められる。

プロジェクトの目的:

1. ラオス南部の観光拠点としての受け入れキャパシティ強化のための観光基盤インフラ・観光関連

施設を整備する。

2. 人材育成等、ソフト面での観光拠点形成支援を行う。

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A-32

プロジェクトの内容

(1) コーンの滝観光施設整備

① コーンの滝展望施設整備

② コーンの滝周辺歩道整備

③ 地場産品及び工芸品土産物売り場整備

④ 駐車場、休憩施設、トイレ等の施設整備

(2) 4 千の島々

① 通信インフラ整備

② フェリー乗り場整備

③ 土地利用ゾーニング

④ 廃棄物管理

(3) ワットプー遺跡公園整備

① 案内情報版整備

② 博物館展示方法改善

③ 観光客回遊経路の策定、歩道の建設

④ 休憩施設の建設

⑤ 地元住民の商売スペース確保

⑥ 遺跡周辺地土地利用ゾーニング

⑦ 駐車場整備

⑧ 廃棄物管理

⑨ チャンパサックの町の魅力増進

(3)パクセ市街地

パクセ市街地の魅力増進

(4)観光拠点形成支援

① 観光宣伝(パンフレット・ウェブサイトの作成、旅行業界・マスコミを対象とした招待旅行の実施)

② 観光関連人材トレーニング

6.2 ラオス南部(セコン・アタプー県)でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

プロジェクト期間: 5 年間(2006~2010)

実施機関: セコン県政府観光局、アタプー県政府観光局

関連機関: 県政府及び対象郡政府

背景:

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-33

チャンパサック県パクセの周辺県(セコン県、アタプー県)は、遠隔地であり、貧困度の高い地域である。滝や

川などの自然資源、遺跡、少数民族の文化、ハンディクラフト等の観光資源があり、現在は、観光地として開

発されていないが、エコツーリズム開発のポテンシャルがある。少数ではあるが、アタプー県を専門とする観

光業者も出現してきている。ラオス南部の観光地としての注目が高まりつつあり、チャンパサック県への観光

客が増えてきていることから、今後、更に、当地域でのコミュニティ開発や貧困削減に貢献できるような観光開

発への期待が高まることが予想される。

しかしながら、これ らのエコツーリズムポテンシャルを持つ農村コミュニティでは観光に対する期待が高いもの

の、世界的なビジネスの一つである国際観光分野では、村落コミュニティがエコツーリズムを始めるには支援

が必要である。

そういったエコツーリズムのポテンシャルを持つ村々を対象に、エコツーリズム振興策を含む農村部でのコミ

ュニティ開発事業を実施する。これらの村々では焼畑農業が生業である。これらの生業に加え、地域住民の

貧困削減や生活改善のため、エコツーリズム振興を含むコミュニティ開発を実施する。

このようなコミュニティベースの観光開発においては、マーケティングやプロモーションなど商業的な面から失

敗につながり易いことが分かっている。そのため、コミュニティ自らWeb サイトで情報を発信する、地域の観光

拠点であるパクセおよびその近隣地のプロモーションに上手く組み込んでもらい共同プロモーションを行う、旅

行会社との関係を積極的に築いていく、などの工夫も同時に進めていく必要がある。

具体的なプロジェクト候補地としては、セコンの町とアタプーの町の間に位置する、ノンロイ(Ban Nong Loi)

やケムカム(Ban Kheumkham)(ボラベン高原からの滝にアクセス可能)や、パアム(Pa-am)やサンサイ

(Sansai)(ドンアンパン国定保護区にアクセス可能)などが挙げられる。

プロジェクトの目的:

1. 貧困対策、生活改善を図るため、エコツーリズムを中心としたコミュニティ開発を実施する。

2. エコツーリズムを中心としたコミュニティ開発の関係者ネットワークを構築する。

3. 対象地域のエコツーリズムのプロモーションを行う。

プロジェクトの内容

(1)事前調査

① 現況調査

② 観光資源調査

③ 市場調査

(2)コミュニティベースのパイロットプロジェクトの実施

① 対象コミュニティの選定

② ベースライン調査・ニーズ調査

③ コミュニティ開発計画およびエコツーリズム開発計画の策定

④ コミュニティベースのプロジェクトの実施

• 小規模施設整備

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A-34

• 住民意識向上プログラム

• エコツーリズム商品の開発

• 人材育成トレーニング

⑤ モニタリング及び評価

(3)コミュニティ開発・エコツーリズム開発に関わる関係者(ステークホルダー)のネットワークづくり

(4)パイロットプロジェクトの評価及び開発戦略(マスタープラン)の策定

(5)コミュニティ開発プロジェクトの実施

(6)観光プロモーション(パンフレット・ウェブサイトの作成)

6.3 カンボジア東北部(ラタナキリ県)でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

プロジェクト期間: 5 年間(2006~2010)

実施機関: ラタナキリ県政府観光局

関連機関: ラタナキリ県政府及び対象郡政府

背景:

カンボジア東北部ラタナキリ県は、既に、カンボジアの観光地としての知名度が高まりつつある一方、外部か

らの投資によるゴムプランテーション、森林伐採等が拡大しており、外部からの人口流入が顕著である。

地元住民は、従来の焼畑農業、宝石掘、プランテーション等での労働によって生活しているが、開発の波に伴

い、アクセスのよい土地を売却したり、従来利用していた森林が利用できなくなる等の問題が起きており、地

元住民への便益が確保されない状況となっている。ラタナキリ県で始まりつつある観光においても、少数民族

コミュニティの参加による観光開発の例は少なく、観光による便益を受けていない。

このような背景の下、観光カンボジア東北部の村落部でエコツーリズムのポテンシャルを持つ村々を対象に、

エコツーリズム振興策を含む農村部でのコミュニティ開発事業を実施する。これにより、地元住民の貧困削減、

生活改善を図ると共に、土地権利の確保や自然資源の保全を狙う。

上述のように、ラタナキリ県では、様々な開発の動きや人口流入があることから、コミュニティレベルの開発だ

けでなく、コミュニティ開発の動きが支援されるような郡・県レベル政府等関係者の協力が必要となる。よって、

関係者とのネットワークづくりや調整、更には、郡・県レベルへの政策・計画への提言やしくみづくりも目指して

いく必要がある。

また、ラタナキリ県バンルンにはコミュニティ主導の観光開発の事例として、ヤクロム湖とその周辺観光地が

ある。ヤクロム湖観光のステークホルダーとの協力体制の確立、文化・環境センターの教育プログラムの活

用などの可能性を探る。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

A-35

具体的なプロジェクト候補地としては、ラタナキリ県都バンルンの北に位置するヴェンサイ(Voen Sai)やタヴ

ェン(Ta Veng)(ヴィラチャイ国定公園や少数民族村落へアクセス可能)、以前は県都であったルンパット周辺

の村落(ルンパット野生生物保護区や少数民族村落へアクセス可能)などが挙げられる。

プロジェクトの目的:

1. 貧困対策、生活改善を図るため、エコツーリズムを中心としたコミュニティ開発を実施する。

2. エコツーリズムを中心としたコミュニティ開発の関係者ネットワークを構築する。

3. 対象地域のエコツーリズムのプロモーションを行う。

プロジェクトの内容

(1)事前調査

① 現況調査

② 観光資源調査

③ 市場調査

(2)コミュニティベースのパイロットプロジェクトの実施

① 対象コミュニティの選定

② ベースライン調査・ニーズ調査

③ コミュニティ開発計画およびエコツーリズム開発計画の策定

④ コミュニティベースのプロジェクトの実施

• 小規模施設整備

• 住民意識向上プログラム

• エコツーリズム商品の開発

• 人材育成トレーニング

⑤ モニタリング及び評価

(3)コミュニティ開発・エコツーリズム開発に関わる関係者(ステークホルダー)のネットワークづくり

(4)パイロットプロジェクトの評価及び開発戦略(マスタープラン)の策定

(5)コミュニティ開発プロジェクトの実施

(6)観光プロモーション(パンフレット・ウェブサイトの作成)

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添付資料

現地調査工程概要

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添付資料 現地調査行程概要

1 物流担当グループの現地調査概要... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . B-1

1.1 現地調査の目的 ...............................................................................................................................................B-1

1.2 調査行程 ............................................................................................................................................................B-1

1.3 調査参加者........................................................................................................................................................B-2

2 観光・地域開発担当グループの現地調査概要... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . B-2

2.1 現地調査の目的 ...............................................................................................................................................B-2

2.2 調査行程 ............................................................................................................................................................B-2

2.3 調査参加者........................................................................................................................................................B-3

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

B-1

添付資料 現地調査行程概要

本調査では必要に応じて、物流と観光・地域開発とをそれぞれ主に調査する二つのグループに分かれて現地

調査を実施した。以下はその概要である。

1 物流担当グループの現地調査概要

1.1 現地調査の目的

インドシナ南北コリドーの形成に向け、カンボジア及びラオスの交通運輸インフラ及び物流の現状を概略把握

するとともに、南北コリドー形成のポテンシャル及び阻害要因を明らかにすることを目的として調査を実施した。

調査は 2回に分け、第 1回目調査では、ラオスおよびカンボジアの運輸、物流関係者へのインタビュー調査を

中心にファクトファインディングを目的とし、第 2 回目は分析結果をもとに意見交換を目的とした調査を実施し

た。

1.2 調査行程

調査は 2 回に亘って実施した。第 1 回現地調査は 2004 年 10 月 21 日から26 日、第 2 回現地調査は 2004

年 12 月 6 日から12 月 11 日まで、それぞれ 6 日間実施した。

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B-2

行程 第 1 回現地調査

10 月 21 日(木) カンボジア 移動(バンコク~プノンペン)、石油公団、プノンペン港湾局にてインタビュー調査

10 月 22 日(金) カンボジア 運輸省運輸局、商務省、CAMSAB にてインタビュー調査、移動(プノンペン~バンコク)

10 月 23 日(土) タイ 収集した情報の整理、分析 10 月 24 日(日) タイ 収集した情報の整理、分析 10 月 25 日(月) ラオス 移動(バンコク~ビエンチャン)、商務省対外貿易局、国家運輸委員会、

関税局にてインタビュー調査 10 月 26 日(火) ラオス 運輸協会、石油公団、商務省、国家運輸委員会にてインタビュー及びデ

ータ収集、移動(ビエンチャン~バンコク) 第 2 回現地調査

12 月 6 日(月) カンボジア 移動(バンコク~プノンペン)、プノンペン市、石油公団にてインタビュー調査

12 月 7 日(火) カンボジア 運輸省次官補インタビュー調査、運輸省建設局長表敬訪問、JICA 表敬 12 月 8 日(水) カンボジア 大使館表敬、移動(プノンペン~バンコク) 12 月 9 日(木) ラオス 移動(バンコク~ビエンチャン)、大使館表敬 12 月 10 日(金) ラオス JICA 表敬、対外経済協力局インタビュー調査 12 月 11 日(土) ラオス ソマート運輸副大臣と面談、移動(ビエンチャン~バンコク)

1.3 調査参加者

斉藤 淳 調査団員

柴田純治 調査団員

西田のり子 調査補助

2 観光・地域開発担当グループの現地調査概要

2.1 現地調査の目的

インドシナ南北コリドー沿いに位置するラオス南部・カンボジア東北部地域における(1)観光開発の現状の把

握と(2)今後の展開の検討及び(3)そのための資料・情報収集を目的として2回の現地調査を実施した。第一

回の調査では当該地域の現地踏査とカンボジアサイドの情報収集を、第二回の調査ではラオスサイドの情報

収集および第一回のフィードバックを踏まえた意見交換を、それぞれ主に行った。

2.2 調査行程

第 1 回現地調査は 2004 年 10 月 12 日から25 日まで 14 日間、第 2 回現地調査は 2004 年 12 月 2 日から

12 月 21 日まで 20 日間、それぞれ実施した。

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インドシナ南北コリドー形成調査 最終報告書

B-3

行程 第 1 回 現地調査 10 月 12 日(木)

タイ 移動(東京~バンコク)

10 月 13 日(金) ラオス 移動(バンコク~ウボンラチャタニ~パクセ)、プレアビヒア寺院視察 10 月 14 日(土) ラオス 移動(パクセ~国境地域)、ワットプー、コーンパペンの滝視察

10 月 15 日(日) ラオス 4 千の島々、コーン島(Khon)エコツーリズムサイト、メコン川イルカ観察

地視察 10 月 16 日(月) カンボジア 移動(国境越え~ストゥントレン~ラタナキリ県バンルン) 10 月 17 日(火) カンボジア ヤックロム湖観光サイト、少数民族村落、バンルン近隣観光地視察 10 月 18 日(水) カンボジア 移動(バンルン~ストゥントレン)、タラボラヴィット地区視察

10 月 19 日(木) カンボジア 移動(ストゥントレン~クラチエ)、プノンソンバク、メコン川イルカ観察地視

10 月 20 日(金) カンボジア 移動(クラチエ~コンポンチャム~プノンペン)、ワットノコール(コンポンチ

ャム)視察 10 月 21 日(土) カンボジア 民間旅行業者、観光省、インタビュー調査 10 月 22 日(日) カンボジア JICA、観光省、インタビュー調査、移動(プノンペン~シェムリアップ) 10 月 23 日(月) タイ アンコールワット、トンレサップ湖視察、移動(シェムリアップ~バンコク) 10 月 24 日(火) 機中泊 収集した資料・情報の整理、移動(バンコク~東京) 10 月 25 日(水) 東京 移動(~東京) 第 2 回 現地調査 12 月 2 日(木)

タイ 移動(東京~バンコク~ウドンタニ)

12 月 3 日(金) ラオス 移動(ウドンタニ~ビエンチャン)、LNTA ヒアリング 12 月 4 日(土) ラオス 資料整理 12 月 5 日(日) ラオス 資料整理 12 月 6 日(月) ラオス LNTA およびコンサルタントヒアリング(ワットプー、コーンの滝等)

12 月 7 日(火) ラオス LNTA およびコンサルタントヒアリング(南部ラオスでのエコツーリズム

等) 12 月 8 日(水) ラオス ホテル・レストラン協会ヒアリング 12 月 9 日(木) ラオス JICA ヒアリング 12 月 10 日(金) ラオス 航空局ヒアリング 12 月 11 日(土) ラオス 資料整理 12 月 12 日(日) ラオス 資料整理 12 月 13 日(月) ラオス 旅行業者協会、WCS ヒアリング 12 月 14 日(火) ラオス GMS 観光戦略調査コンサルタントヒアリング 12 月 15 日(水) ラオス WWF、手工芸協会ヒアリング 12 月 16 日(木) ラオス IUCN ヒアリング 12 月 17 日(金) タイ/ラオス スポーツ観光省(タイ)ヒアリング/LNTA ヒアリング 12 月 18 日(土) ラオス 資料整理 12 月 19 日(日) ラオス 資料整理 12 月 20 日(月) ラオス 移動(ビエンチャン~ウドンタニ~バンコク~東京) 12 月 21 日(火) 日本 移動(~東京)

2.3 調査参加者

藤平卓英 調査団員

川端航 調査団員

佐々木英之 調査補助

岡本純子 調査補助

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この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

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Study on

Indochina North-South Corridor Development

Study Report (Summary)

February 2005

Engineering and Consulting Firms Association, Japan

Pacific Consultants International

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This report is an abstract of the Japanese version report, " Indochina Nanboku Korido Keisei no tame no Chosa". Full contents of this report can be found in the Japanese edition

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Study on Indochina North-South Corridor Development Study report (Summary)

i

Executive Summary

【Background to the Project】

Since 1990’s, most of the countries in the Indochina region have been growing rapidly. Now people have recognized that the area is becoming a large potential market following the China market and a comparatively advantageous place for production by employing cheaper labor in the region. However, there are two major problems that may have negative impacts to the region’s future development. One is economic disparity between the countries in the region. Thailand and Viet Nam have developed faster than other countries (namely Cambodia and Lao PDR) in these decades, which might lead to an unstable situation of the region. The other problem is the economic disparity between urban and rural areas in the two countries, which might lead to political difficulties of each country in the course of future development. In this context, strategic project formulation is desirable in order to stimulate economic activities in the two countries: namely, development of the effective transportation network linking major cities in the two countries and associated development to contribute to the poverty reduction.

【Objectives】

The North-South Corridor development is a strategic corridor development project with physical segment starting from the Sihanoukville, passing through Phnom Penh in Cambodia and Pakse in Lao PDR, and finally reaching Svannakhet in Lao PDR. At present, less significant traffic is observed along this corridor partly due to its poor infrastructure. Provision of the effective transportation infrastructure and associated facilities has some strategic objectives as follows:

1. Poverty reduction

Poverty is a serious problem in the northeastern area of Cambodia and the southern area of Lao PDR which form part of the North-South Corridor. In order to alleviate this condition, it is necessary to apply a strategic industrial development policy focusing on agriculture and tourism sectors and to provide the necessary infrastructure. Moreover, it seems that a “road-infrastructure-led development” approach would be an effective one based on some good development examples observed along the existing major arterial roads in Indochina.

2. Security improvement in freight transportation for Lao PDR

All freight transportation especially goods importation in Lao PDR has to pass through Thailand. This dependence on Thailand reduces the bargaining power of Lao PDR in negotiating the transportation costs. Because of this and other dangerous risks to Lao PDR, it is imperative to develop alternative routes in Cambodia and Lao PDR. Furthermore, having alternative routes in Cambodia and Lao PDR – countries that are both economically and technologically challenged – would foster mutual and equal cooperation or partnership between them. For example, Lao PDR could have an exclusive oil refinery facility in the Sihanoukville area.

3. Security improvement of energy import

Lao PDR and Cambodia obviously require sustainable supply of energy if they are to develop. And sustainable supply covers the aspects of stable and reasonable energy prices and stable energy imports from the countries other than Thailand and Viet Nam. Lao PDR and Cambodia have high energy expenses due to the high transportation costs compared with other countries in Indochina such as Thailand. This is one of the reasons why these two countries have often been bypassed by private

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ii

investors from other countries in the past. It is also suggested that in case of a national emergency, it is too dangerous to depend on the only one route to import energy. By developing an alternative energy transportation route in the two countries, such situation should be improved.

4. Transport industry development

The transportation sector will find potential businesses and markets with the development of the North-South corridor. However, since the markets in Indochina will soon open to other countries in accordance with FTA , businesses in Lao PDR and Cambodia will be faced with severe competition from those in other countries. Before this happens, a strategic policy should be applied to enable businesses in the two countries to develop, grow and prosper.

5. Economic development of the corridor

The development of infrastructure along the North-South corridor will also give rise to associated business opportunities such as tourism and new local products. Accordingly, revitalization of the villages is expected. In this context, the study proposes some strategic regional development projects focused on tourism along the corridor.

6. Effective use of Sihanoukville Port

It is expected that, with further economic growth of Cambodia and other countries, Sihanoukville port will see a large increase of cargo handling volume. At the same time, it is predicted that its competition with the Ho Chi Minh port will become greater right after completion of the second east-west corridor. As one of the major hinterlands to the Sihanoukville port, the North South corridor will generate demand for the port, and accordingly, will be helpful for stable management of the port.

【Development Strategy and Scenario】

In order to achieve the objectives, five development strategies were prepared as follows:

1) Infrastructure development;

2) Commodity transport hub / center development;

3) Modernization of transport business;

4) Improvement of level of services in physical distribution; and

5) Regional development focusing on the tourism development.

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Study on Indochina North-South Corridor Development Study report (Summary)

iii

Development objectives 1. Poverty alleviation 2. Security improvement of transport in Laos 3. Securing energy 4. Encouragement of transport industry 5. Contribution to regional development 6. Improvement of financial status of Sihanoukville port through expanding market

Tourism and regional development

Infrastructure development

Modernization of transport industry

Transport hub / center development

Transport service development

Source: Study Team

Figure 1 Linkage between development strategies and development objectives

North-South Corridor should be developed according to the scenario below.

Infrastructure development / entry institutional improvement

Infrastructure development / improvement along the North-South corridor should come first, and it should be followed by institutional improvement such as simplification of the entry/exit procedure at the border points. This is the beginning point of the development scenario of the North-South corridor development.

Encourage associated transport businesses

Next, it is important to encourage associated transport businesses by taking advantage of the North-South corridor. One of the major projects that stimulates business is construction of a physical distribution center: (namely, inland container depot (ICD)) and truck terminal at major cities such as Sihanoukville, Phnom Penh, Pakse and Savannakhet. In addition to such physical development, information and communication technology (IT) should be properly introduced in order to achieve an international level. In the long-term perspective, some large-scale projects will be necessary such as construction of shortcut route through National Highway No.12 and collaborative development of oil refinery facility and transportation systems by the two countries.

Tourism industry development

Together with the infrastructure development in the earlier stages, it is very important to develop the tourism industry, at potential areas first, along the corridor at the same time. Such potential areas include Pakse and Ratanakiri. Japan’s experiences in such rural development will be helpful such as construction of “Michi-no-eki” and “One village one product” in a medium-term perspective. The synthesized or collaborative development should be achieved of three business elements: namely, transport business, tourism, and local business. In the long-term, development of Preah Vihear Temple is necessary because this is very attractive for visitors to the area.

Figure 2 shows the development scenario of the North-South corridor.

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iv

Short term

(2005-2010) Mid term

(2011-2015) Long term

(2016-2020)

Targets

Strengthening of network and facilitation of cross border trade

Encouragement of economic activities based on the corridor

Enhancement of Indochina North-South Corridor as an economic corridor

Infrastructure development

Development of Corridor along Asia Highway

Development of short-cut route with local road improvements

Transport facilities development

Development of Track terminal and inland container deports

Development of fuel distribution and reserve base

Transport services development

Development of road station (Michi-no-Eki) along the corridor

Modernization of transport industry

Single window and single custom services at Lao/Cambodia border

Introduction of IT for efficient transportation

Modernization of transport industries

Tourism and regional

development

Tourism capacity development of tourism sites in Champasak, and Integrated rural development incorporating ecotourism in the provinces

Tourism development of Preah Vihear

Source: Study Team

Figure 2 North-South Corridor development scenario

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Study on Indochina North-South Corridor Development Study report (Summary)

v

【Proposed Projects for North-South Corridor Development】

Proposed projects for North-South Corridor Development and the timeframes are shown in Tables 1 and 2.

Table 1 List of proposed projects for North-South Corridor Development (Cambodia) Short-Term Mid-Term Long-Term

Project (2005-2010) (2011-2015) (2016-2020)

Infrastructure Development Projects 1 Full-Scale Improvement of NR61 X 2 Construction of New Tonle Sap Bridge on NR61 X 3 Improvement of NR73 X 4 Improvement of NR64 (Konpong Thom-Preah Vihear) X 5 Construction of Phnom Penh Industrial Ring Road X 6 Improvement of former NR12 (Provincial Road 213) X

7 Improvement of Southern Railway Line (Phnom Penh- Sihanoukville)

X

8 Construction of Submarine Gas Pipeline in the Gulf of Siam X X

9 Construction of Transmission Line (Sihanoukville-Kampot-Takeo-Phnom Penh)

X

Transport Facility Development Projects 10 Construction of Sihanoukville Oil Stockpiling Base X 11 Construction of Sihanoukville Inland Container Depot X 12 Development of Sihanoukville Industrial Zone X 13 Construction of Phnom Penh Inland Container Depot X 14 Improvement of River Ports along Mekong River X 15 Construction of Sihanoukville Power Station X 16 Development of Phnom Penh Transport Center X X X Projects for Modernization of Transport Industry 17 Pilot Project for Introducing IC Tag X 18 Introduction of Container Equipment X

19 Introduction of Control Measures against Overloaded Trucks (Truck Scale)

X

20 Human Resource Development in Transport Industry X X 21 Modernization of Transport Industry X Transport Service Development Projects 22 Development of “Michi no Eki” along National Road 4 and 7 X Regional Development Projects

23 Integrated Rural Development Incorporating Eco-Tourism in Ratanakiri Province X

24 Preah Vihear Tourism Development X X Source: Study Team Note: NR (National Road)

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vi

Table 2 List of proposed projects for North-South Corridor Development (Lao PDR) Short-Term Mid-Term Long-Term

Project (2005-2010) (2011-2015) (2016-2020)

Infrastructure Development Projects 1 Improvement of NR14 X 2 Improvement of Bridges on NR16 X 3 Improvement of Bridges on NR18 X 4 Reconstruction of Sedon Bridge on NR13 X Transport Facility Development Projects 5 Construction of Pakse and Savanakhet Truck Terminals X 6 Construction of Pakse Inland Container Depot Terminal X Projects for Modernization of Transport Industry

7 Improvement of Border Post on NR13 with Cambodia and Introduction of One Stop Service X

8 Improvement of Border Post on NR14 with Cambodia X

9 Introduction of Control Measures against Overloaded Trucks (Truck Scale) X

10 Human Resource Development in Transport Industry X X 11 Modernization of Transport Industry X Transport Service Development Projects 12 Development of “Michi-no-Eki” along NR13 X Regional Development Projects

13 Integrated Rural Development Incorporating Eco-Tourism in Sekong and Attapu

X

14 Tourism Capacity Expansion of Champasak Province as Lao Southern Tourism Center for Sustainable Tourism Promotion

X

Source: Study Team Note: NR (National Road)

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Study area (Cambodia)

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Study area (Lao PDR)

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Study on Indochina North-South Corridor Development

Final Report Summary

Table of Contents

Executive Summary

1. Introduction ........................................................................................................................ 1

1.1 Economic Growth of the Indochina Region and Economic Disparity ....................................1

1.2 Regional Economic Cooperation in the Indochina Region ...................................................1

1.3 Economic Development Issues in the Indochina Region .....................................................1

2. Transport in Indochina....................................................................................................... 2

2.1 Imports and Exports in the Indochina Region .....................................................................2

2.2 Amount of Freights Transport in Indochina Countries ..........................................................2

2.3 Transport Bases in Indochina Countries and Overview of Their Networks ............................2

2.4 Frameworks of Regional Economic Cooperation in Indochina .............................................3

2.5 Transport Policies of Indochina Countries ..........................................................................3

2.6 IT in the Indochina Region: Present and Future Perspective ...............................................3

3. Transport in Cambodia and Lao PDR................................................................................ 4

3.1 Transport in Cambodia .....................................................................................................4

3.2 Transport in Lao PDR.......................................................................................................5

4. Indochina North-South Corridor Development Plan......................................................... 7

4.1 Meaning and Objectives of Forming Indochina North-South Corridor...................................7

4.2 Potential Route of North-South Corridor ............................................................................7

4.3 Present Conditions of Indochina North-South Corridor........................................................9

4.4 North-South Corridor Development Strategy and Scenario................................................16

4.5 Potential Projects...........................................................................................................22

4.6 Applicable Know-How and Experience of Japan...............................................................24

5. Projects for Indochina North-South Corridor Development........................................... 27

5.1 Outlines of Proposed Projects.........................................................................................27

5.2 Consideration of Fund for Indochina North-South Corridor Development ...........................28

5.3 Consideration of Implementation Mechanism ...................................................................28

5.4 Necessary Action toward Indochina North-South Corridor Development ............................28

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

1

1. Introduction

1.1 Economic Growth of the Indochina Region and Economic Disparity

The economy of Indochina countries 1 has been steadily growing since 1990. The recent economic growth rate of the countries ranged from 5% to 7% annually, which is considered significantly high. Some people even consider that the Indochina countries are growing to be the leading region for the world economy in the early 21st century.

However, the economic disparity among the Indochina countries is considerably large, and simultaneously, the gap between urban and rural areas in each country has been expanding. These kinds of economic disparities are likely to interfere with the stable economic development of the Indochina region.

1.2 Regional Economic Cooperation in the Indochina Region

This above-mentioned views about the Indochina region have been activating regional economic cooperation among the Indochina countries. Concrete examples of the economic cooperation among the Indochina countries are the abolition of tariffs by AFTA, development of transportation infrastructure and simplification of cross-border procedure. In addition, the ASEAN countries seek to conclude FTA in order to formulate the integrated self-supporting economy region.

The contribution of Japan to regional economic cooperation of the Indochina countries brings some advantages such as the acquisition of industrial market and restructuring of production system of Japan. In addition to these advantages, Japan can enhance diplomatic negotiations with the countries including China and Korea which try to participate in the market of the Indochina countries.

1.3 Economic Development Issues in the Indochina Region

The main common targets of the whole Indochina region are int ra-regional economic integration, and reduction of poverty and economic disparity.

The basic policy of intraregional economic integration is to establish equal business opportunities among the Indochina countries. For this purpose, it is essential to develop a nodal urban economy, to establish inter-city networks (roads, railways, airports, communication infrastructures and transportation systems), and to develop infrastructures that can activate the flow of goods and people. In addition, the establishment of equal business opportunities can be promoted by institutional improvements such as the abolition of tariffs, simplification of cross-border procedures, liberalization to allow vehicles to cross borders, and standardization of transportation administration among the Indochina countries.

Cambodia, Lao PDR and Myanmar (CLM) currently tackle rural development, poverty reduction and primary education, etc., and seek stable and sustainable development. In order to steadily promote the economic integration of the Indochina countries, it is necessary to focus assistance on the comparatively lagging countries such as Cambodia and Lao PDR.

1 In this study, Cambodia, Lao PDR, Thailand and Vietnam are considered as Indochina countries.

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2

2. Transport in Indochina

2.1 Imports and Exports in the Indochina Region

The trade volume of four Indochina countries, namely Thailand, Viet Nam, Cambodia and Lao PDR, has been rapidly increasing driven by the economic growth of Thailand and Viet Nam. Three countries excluding Thailand (namely Viet Nam, Cambodia and Lao PDR) have currently encountered an excess of imports. As for partner countries of these three countries, European developed countries and Japan share an overwhelmingly large proportion of their trade. However, partner countries of Cambodia and Lao PDR for imports include Thailand and Viet Nam. In accordance with the economic growth of each country in the Indochina region, the inter-regional trade volume among adjacent countries has been increasing.

2.2 Amount of Freight Transport in Indochina Countries

In Indochina countries, the transport pattern is that Thailand and Viet Nam take the leading part. Imports and exports between Lao PDR and Cambodia are in the extremely limited. This is because of the current conditions of both Lao PDR and Cambodia as follows: little production of manufactured goods, no high value natural resources endowment such as petroleum and minerals, poor condition of national road No.7 connecting their international border, and restriction of passage to tourists because the border is not officially open as an international border.

2.3 Transport Bases in Indochina Countries and Overview of Their Networks

International Transport Bases

In the Indochina region, international ports play a significant role as transport hubs with foreign countries. There are eight deepwater ports with international sea lanes as follows: Bangkok Port (Klong Toei Port), Laem Chabang Port, Map Ta Phut Port and Song Khla Port in Thailand, Sihanoukville Port in Cambodia, Haiphong Port, Danang Port and Ho Chi Minh Port in Viet Nam.

Border Points in Indochina Countries

In Indochina countries, there are several border points available for cross-border transport. ADB plans the implementation of the single-stop/ single-customs project for simplifying customs procedure among Indochina countries.

Accumulation of Urban and Economic Activities

In the region of the Indochina countries, non-agricultural economic activities, namely industrial and service activities, etc., are concentrated in specific cities and regions. Therefore, the transport among those specific cities and regions are dominant in the transport of the Indochina countries.

Transport Network (Major Roads and Rivers)

Major transport networks are the following:

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

3

Asian Highways: 8 arterial highways in the Indochina countries are designated as Asian highways.

Indochina East-West Corridor: the Asian Highway AH-16 and the following sections : Danang ~ Lao Bao in Viet Nam, Lao Bao Border ~Savannaket in Lao PDR, Mukdahan ~ Khonkaen ~ Phitsanulok ~ Mae Sot in Thailand, and Mae Sot Border ~Mawlamyaing in Myanmar

Second Indochina East-West Corridor: the Asian Highway AH-1and the following sections : Ho Chi Minh ~ Moc Bai in Viet Nam, Moc Bai Border ~ Phnom Penh ~ Batdambang ~ Poipet in Cambodia and Poipet Border ~ Nakhon Nayok ~ Ayutthaya in Thailand

Indochina North-South Corridor: the Asian Highway AH-13 and the following sections: Chiang Rai ~ Chiang Khong in Thailand, Chiang Khong Border ~ Luang Namtha ~ Ban Boten in Lao PDR, and Ban Boten Border ~ Kunming in China.

The Mekong River: Recent review on south-north transportation with consideration of water system

Railway: Although railway system is established in Thailand, Cambodia and Viet Nam, it is not established in Lao PDR.

2.4 Frameworks of Regional Economic Cooperation in Indochina

The frameworks of economic cooperation and transport sector cooperation in the Indochina Region are summarized in Table 2.1.

Table 2.1 Economic cooperation and transport sector cooperation in the Indochina region

Framework of economic cooperation Framework of traffic and transportation sector cooperation

• Greater Mekong Sub-region(GMS)

• AFTA (ASEAN Free Trade Agreement) • AIA (ASEAN Investment Agreement) • ACEMECS (Ayeyawaddy-Chao Phraya-Mekong

Economic Cooperation Strategy) • CLV Development Triangle (Green Triangle

Development)

• GMS Cross Border Agreement on Movement of Goods and Peoples

• Single Stop/Single Window Inspection • Agreement between Thailand and Lao PDR about

Road Transportation • Agreement among Thailand, Lao PDR, and Viet Nam

2.5 Transport Policies of Indochina Countries

Transport policies of the Indochina countries except for Thailand are not yet fully established. In Thailand, in consideration of the recent steep rise of energy price, high energy-efficient economy and industrial conversion (to intellectual industry) are considered as important policies. In transportation sector, improvement of transport efficiency, as well as introduction of public transportation into urban areas, is considered essential from a viewpoint of energy efficiency.

2.6 Telecommunications in the Indochina Region: Present and Future Perspective

Cambodia and Lao PDR are ranked the fourth and fifth lowest in prevalence rate of telephone diffusion among 45 Asian countries. In the Indochina region, Thailand has by far the highest prevalence rate of telephone diffusion. The gap in the communication development among the Indochina countries is likely to be an obstacle to improving efficiency of international transport and internal transport. Telecommunication infrastructure is to be effectively developed in association with development of road and railway infrastructures proposed in this study.

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3. Transport in Cambodia and Lao PDR

3.1 Transport in Cambodia

3.1.1 Overview

Commodities transported by land through Viet Nam and those via Sihanoukville Port or Phnom Penh Port are firstly transported to Phnom Penh. Also, commodities transported via Thailand, which are to be consumed in Siem Reap and Battambang, are transported to Phnom Penh. In addition, most of the commodities in Cambodia are transported to Phnom Penh and consumed there. However, lTransport to other regions apart from Phnom Penh is limited.

3.1.2 Imports and exports by goods

Energy

With regard to oil products, Cambodia depends on imports from Thailand, Viet Nam, Singapore, etc. Since the price of oil is approximately 1.5 ~ 2 times higher than in Thailand and Viet Nam and this interferes with their economic growth. Thus the volume of imports via Thailand and Viet Nam now has a downward trend with its peak in 2001. This tendency is considered to be caused by increase in the volume of imports via Singapore and Malaysia.

All oil products are transported by ship to Cambodia via Sihanoukville Port or via Phnom Penh Port on the Mekong River. Oil products from Sihanoukville port are conveyed from Map Ta Phut Port in Thailand. Those from Phnom Penh Port are transported from Ho Chi Minh Port (including transshipped ones from Singapore and Malaysia.)

Agricultural products

Cambodia is an agricultural country and rural regions are basically self-sufficient in agricultural products. Therefore, transport amount of agricultural products is small.

Household electrical goods and industrial goods

With regard to household electrical goods and industrial goods, Cambodia relies on imports from Viet Nam and Thailand for the most part.

3.1.3 Transport industry

In Cambodia, there are numerous small businesses in the transport industry. There are also some major transportation companies such as So Nguopn. In addition, there is Kampuchea Shipping Agency & Brokers(KAMSAB), the national transportation company.

Unofficial fees (like tips to officers in charge) at international borders and national roads have a great influence on the route selection of transport businesses and serve as interference in the development of the transport industry of Cambodia.

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5

3.1.4 Cargo handling volume at ports

Cargo handling volume at the Phnom Penh Port

Phnom Penh Port Authority estimates that cargo handing volume of all goods will have very gentle growth. This scenario does not take account of strategic views on demand increase in Lao PDR by the North-South Corridor and development in the northern region of Cambodia. In the present condition, handling capacity of containers is limited and some future measures for its improvement are essential.

Cargo handling volume at the Sihanoukville Port

The Sihanoukville Port is the only international port adjacent to the outer sea for Cambodia. The Sihanoukville Port has been under phased development by Japan’s financial assistance and necessary facilities for the future cargo volume are currently being developed.

The cargo handling volume at the Sihanoukville Port has continuously been on the gentle increase. It is considered that the expansion of national road No.4, industry development alongside the road, and rehabilitation of the railway are indispensable for future containerization.

3.2 Transport in Lao PDR

3.2.1 Overview

There are 4 border locations in Lao PDR which handle large amounts of commodities as follows: Thanalaen connected to Nongkhai in Thailand, Van Tao-Songmek connected to Ubon Ratchathani, Lao Bao at the international border to Viet Nam and Boten-Bohan at the international border to China. With regard to transit cargoes and oil products, a high proportion of those are collected in Vientiane and then distributed all over the country.

3.2.2 Imports and exports by goods

Energy

Regarding oil products, Lao PDR completely depends on imports from Thailand and Viet Nam. Hence, the price of oil is approximately 1.5 ~ 2 times higher than in Thailand and Viet Nam and this interferes with economic growth. Oil products from Thailand are transported into Lao PDR by way of Thanalaen, Van Tao-Songmek, Savanakhet, Takhek and Bokeo. Those from Viet Nam are transported by way of Xieng Khuang, Sam Nah and Lao Bao.

Agricultural products

Lao PDR is an agricultural country and rural regions are basically only self-sufficient in agricultural products. Therefore, transport amount of agricultural products is small.

Household electrical goods and industrial goods

With regard to household electrical goods and industrial goods, the goods from Thailand, Viet Nam and other countries are transported through Thailand by way of Thanalaen-Vientiane and conveyed to major cities in the country as transit cargoes.

3.2.3 Transport industry

There are numerous small businesses in the transport industry of Lao PDR. Systems such as trunk transportation and regional transportation, which are already applied in Japan, are not established at all. In addition, damping and empty cargo transport is frequently conducted. Therefore, there is a lack of effective management in the transport industry of Lao PDR.

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The 1999 agreement among three countries (including Thailand and Lao PDR) liberalizes mutual entry of trucks, and trucks of both countries are allowed to directly drive into Vientiane or Bangkok. The handling of transit cargoes carried into Lao PDR via Thailand was monopolized by ETO, the Thailand public transportation company. However, from 2003 on, private companies plan to enter into its market. At present, Thailand private companies deal with the transportation of transit cargoes and there is no truck company in Lao PDR that has already passed the qualification examination.

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4. Indochina North-South Corridor Development Plan

4.1 Objectives of Forming Indochina North-South Corridor

Objectives of forming Indochina North-South Corridor is to connect regional economic centers such as Sihanoukville - Phnom Penh (Development Corridor), Pakse, and Savannakhet, and to stimulate the economy of inland areas. The detailed idea is explained in the following six points.

1. Poverty reduction

The northeastern area of Cambodia and southern area of Lao PDR, that are part of the North-South Corridor, have been the poorest areas in the region. There have been no significant industries developed; however, the area has a great development potential in the agriculture and tourism sectors. Application of a strategic industrial development policy focusing of the two sectors together with provision of necessary infrastructure is needed to reduce the poverty of the areas.

Since some good development examples have been observed along the existing major arterial roads in Indochina, it suggests that an approach, probably called “road-infrastructure-lead development ” will be effective.

2. Security improvement in freight transportation for Lao PDR

Lao PDR is at present heavily depending upon Thailand in freight transportation, especially in importing goods. Actually there has been no effective alternative routes for Lao PDR other than the routes from Thailand; this reduces the bargaining power of Lao PDR in negotiating the transportation costs. In the last ten years, Lao PDR has been making efforts to develop another route from Viet Nam through Dana, but no significant progress has yet been made. The current situation, namely heavy dependence on only one route in Thailand, is dangerous for Lao PDR. Development of alternative routes in Cambodia and Lao PDR is expected to reduce such risk.

There is another advantage in having such alternative route in Cambodia and Lao PDR. Because the route is developed in the two less advanced countries, it is expected that mutual and equal cooperation or partnership will be developed. For example, Lao PDR could have an exclusive oil refinery facility in the Sihanoukville area.

3. Security improvement of energy import

It is quite obvious that sustainable energy provision is one of the key factors for the development of the two countries. The sustainability of energy can be discussed from the two aspects: namely, stable and reasonable energy prices and stable energy imports from the countries other than Thailand and Viet Nam. The current energy prices in Cambodia and Lao PDR are expensive due to the high transportation costs in comparison with other countries in Indochina such as Thailand. This is one of the reasons to explain why these two countries have not been attractive for private investors from other countries in the past. It is also suggested that in case of a national emergency, it is too dangerous to depend on the only one route to import energy. By developing an alternative energy transportation route in the two countries, such situation should be improved.

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4. Transport industry development

The development of the North-South corridor will provide many business opportunities for people in Cambodia and Lao PDR. Especially in the transportation sector, it is very much expected that people will find potential businesses and markets. However, since the markets in Indochina will soon open to other countries in accordance with FTA, the people in the two countries will face with severe competition with such business people. Prior to facing such a situation, a strategic policy should be applied to incubate logistic business in the two countries.

5. Economic development of the corridor

Associated business opportunities are expected to emerge, stimulated by the development of infrastructure along the North-South corridor. Such businesses include tourism and new local products; accordingly, revitalization of villages is expected. In this context, the study proposes some strategic regional development projects focusing on tourism along the corridor.

6. Effective use of Sihanoukville Port

A significant increase of cargo handling volume at the Sihanoukville port is expected in accordance with further economic growth of Cambodia as well as other countries. At the same time it is predicted that competition with the Ho Chi Minh port will become greater right after completion of the second east-west corridor. It is safe to say that the North-South corridor is one of the major hinterlands to the Sihanoukville port, which means that the corridor will generate demand for the port, and accordingly, will be helpful for stable management of the port.

4.2 Potential Route of North-South Corridor

The road network originating in Sihanoukville in Cambodia connecting Cambodia and Lao PDR is described below. In the current situation, although the road surface of Cambodian Route 7 between Kratie and the border with Lao PDR is extremely poor and it makes road transport of freight impossible, the network itself is completed already (shown by yellow color in Figure 4.1).

Sihanoukville – (Route 4) – Kompong Speu – (Route 51) – Udong – (Route 5) – Prek Kdam – (Route61) – Cheali – (Route 6, 7) – Kompong Cham – (Route 7) – Prasat – (Route 73) – Chhlong – (Route 308) – Kratie – (Route 7) – border – (Route 13) – Pakse – (Route 13) – Savannakhet

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9

Sihanoukville

Phnom Penh Kompong Cham

Kratie

Pakse

Savannakhet

Lao PDR

Cambodia

Source: Study Team

Figure 4.1 Proposed route of Indochina North-South Corridor

4.3 Present Conditions of the Indochina North-South Corridor

4.3.1 Socio-economic conditions

(1) Cambodia

The North-South Corridor passes six provinces and two cities in Cambodia: namely, Stung Treng Province, Kratie Province, Kompong Cham Province, Kandal Province, Phnom Penh City, Kompong Speu Province, Koh Kong Province and Sihanoukville City. Population along the corridor is approximately 5 million which is about 40% of the population of Cambodia.

Some factories are located in the area between Sihanoukville and Phnom Penh. This area is called the “Growth Corridor” and is expected to lead the industrial development of Cambodia.

The area between Phnom Penh and Kompong Cham is agricultural land where rice and rubber are mainly produced. This area is in the suburbs of the capital of Cambodia and the population density is high.

The area between Kratie and Stung Treng is the mountainous northeastern part of Cambodia. Population density is low and the region is the one of the least-developed and poorest regions in Cambodia.

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(2) Lao PDR

North-South Corridor passes five provinces and one city in Lao PDR: namely, Chapasak Provnce, Saravan Province, Savanakhet Province, Kammouane Province, Bolikhamxay Province and Vientiane City.

Population along the corridor is approximately 2.6 million which is about 50% of the population of Lao PDR. This area is comparatively fertile and a main part of economic activities of Lao PDR are carried in this region. These include trade with Thailand at Champasak, plateau agriculture producing coffee and vegetables at Savanakhet, and border trade at Savanakhet facing Mukdahan of Thailand. This area is also expected to become a node with Thailand along Indochina East-West Corridor.

4.3.2 Present conditions of infrastructure development

(1) Ports

There are two ports dealing with foreign trade in Cambodia: namely, Sihanoukville Port and Phnom Penh Port. Sihanoukville Port is a seaport in the Gulf of Siam dealing with around 75% of the port cargo volume of Cambodia. Phnom Penh Port is a river port connected with Ho Chi Minh City by the Mekong River. Phnom Penh Port deals with 25% of the port cargo volume of Cambodia; however, the rate has been decreasing every year since the amount of cargoes dealt at Sihanoukville Port is increasing.

Sihanoukville Port

Sihanoukville Port is a node of international transport as the only international seaport in Cambodia. Expansion of port facilities is being implemented with JBIC loan. The first phase has been completed and container berths and yards were constructed. At present, it is planned to extend the second phase and to construct transport facilities. Export cargo is transported to Phnom Penh and consumed there, although a small part of the cargo is transported to other areas in the country.

Phnom Penh Port

Phnom Penh Port is located on the Mekong River beside Phnom Penh City. Phnom Penh Port is the largest base of transport in addition to Sihanoukville Port. Commodities at the Phnom Penh Port are transit freight via Ho Chi Minh City and imports from Viet Nam.

(2) Roads

Improvement of the roads which form the North-South Corridor have mostly been completed, except the bridges on NR7, NR73, Provincial Road 308 and NR61 in Cambodia. In order to prepare for the future growth of traffic volume, widening will be needed of NR3 between Sihanoukville and Phnom Penh, and of NR6 between Phnom Penh and northern Cambodia. Road improvement in Lao PDR along the corridor has been completed. (See Table 4.1.)

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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Table 4.1 Conditions of Roads forming the North-South Corridor

Country Road Section Length Condition NR4 Sihanoukville-

Damnak Ampil 193.0km - Concrete pavement with two lanes (one lane for

one side). - Traffic volume has been increasing remarkably.

NR 51 Damnak Ampil- Udong 38.0km

- Emergency rehabilitation has been done by World Bank.

- Full-scale improvement is needed. - Two lanes (one lane for one side)

NR 5 Udong- Prek Dam 7.0km - Bridge construction to cross the Tonle Sap River is necessary.

NR 61 Prek Dam - Tao Baek 16.1km

- Emergency rehabilitation has been done by World Bank.

- Complete improvement is needed. - Two lanes (one lane for one side)

NR 6 (incl. 6A)

Tao Baek -Cheung Prey

29.0km

- Concrete pavement with two lanes (one lane for one side).

- Improvement is needed for some sections. - Widening of road is necessary as traffic volume

is increasing. NR 7 Cheung Prey -

Prasat 54.3km - In recent years, damage is getting severe.

Improvement is needed. NR 73 Prasat -Chhlong

58.0km - Improvement has not been done. - The government has Improved the road in

2001, however it was damaged by floods. Provincial Road 308

Chhlong-Kratie 35.0km

- Improvem ent has not been done. - The surface of a road is unpaved and bumpy.

Impassable in rainy season.

Cambodia

NR Kratie-Stung Treng- Border

198.4km - Improvement has not been done, but it is now in progress by China’s assistance.

Lao PDR NR 13 Border-Pakse- Savanakhet 427.0km

- Concrete pavement with four lanes (two lanes for one side).

- Improvement have been done. Source: Study Team Note: NR (National Road)

(3) Railway

The railway between Sihanoukville and Phnom Penh was inaugurated in 1969. However because of inappropriate maintenance during the war since 1970, the railway is severely worn out and the possibility of derailing is high. Speed of trains is less than 20 km/hour on average; therefore, transport between Sihanoukville and Phnom Penh takes 9 hours.

(4) River transport

River transport along the Mekong River is classified as upstream and downstream. Although upstream of Mekong River is an international transport route crossing China, Myanmar, Thailand and Lao PDR, it is not much used for freight transport. On the other hand, downstream is an international transport route between Cambodia and Viet Nam. In the section between Ho Chi Minh and Phnom Penh, annually 100,000 tons of freight and 420,000 tons of oil products are transported. Most of the freight comes from Hong Kong, China and Taiwan, is transshipped at Ho Chi Minh Port and transported to Phnom Penh.

(5) Border point

The border point of Cambodia and Lao PDR is a node of NR7 and NR13. This border is not designated as an international checkpoint, only a local checkpoint, although international tourists could cross the

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point. NR7 on the Cambodia side has collapsed and is almost impassible for transport; therefore, river boats are used between the border and Stung Treng.

4.3.3 Tourism

(1) Tourism resources

High potential tourism resources in southern Laos and northeastern Cambodia that have tourism development are shown in Figure 4.2. Vat Phou, UNESCO World Heritage Site, and Khon Phapheng Waterfall know as the biggest waterfall in Southeast Asia, etc. are the major tourism resources in the area. There are some other tourism resources in surrounding area, such as eco-tourism resources and minority ethnic villages.

Hanoi

Vientiane

Bangkok

Yangon

Phnom Penh

PR China

VietnamMyanmar

Cambodia

Thailand

Lao PDR

Gulf ofThailand

South ChinaSea

AndamanSea

Source: Study Team

Figure 4.2 Location of tourism resources

(2) Tourism market

The number of international visitors to this area is summarized in Table 4.2. It shows that visitors to Champasak Province, Lao PDR is greatly increasing in recent years. Compared with the Lao side, the number of visitors to Cambodian side is relatively small, which seems to indicate that tourism development has just started. The reason why visitors to Ratanakiri Province are smaller than that to Yeak Lom Lake is likely due to lack of appropriate system for data collection at provincial level.

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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Table 4.2 Number of international visitors to southern Laos and northeastern Cambodia

Country Province

(tourism site) 2000 2001 2002 2003 2004

Lao PDR Sekong - - 574 2,242 - Attapeu - - 6,841 9,149 - Champasak 34,796 55,142 45,635 65,827 - (Vat Phou) 8,632 13,121 17,361 18,881 - Total in country 737,208 673,823 735,662 636,361 - Cambodia Stung Treng - - 1,278 3,660 9,011

Ratanakiri - - 1,397 3,016 15,085 (Yeak Lom Lake) 1,226 1,943 2,376 - -

Total in country 466,365 604,919 786,524 701,014 1,055,202 Source: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Lao PDR, 2004 Displayed material in the annex museum to Vat Phou Ministry of Tourism, Cambodia, Annual Report of Tourism Statistics, 2005 Displayed material in Cultural and Environmental Centre, Yeak Lom Lake

Tourism market in Lao side

Visitors to Champasak Province, which has major tourism sites in Lao side is dominated by Thai tourists and followed by Western tourists, such as French, American, English, and Germany, and Japanese. Visitors to adjacent Sekong Province and Attapeu Province are mostly backpackers.

Tourism market in Cambodian side

Not so many international tourists visit northeastern Cambodia. Major market is Western tourists, which are mostly backpackers coming from Lao PDR crossing the border or short-stay visitors coming from Phnom Penh by plane. As shown in Table 4.2, international visitors to Ratanakiri Province greatly increased in 2004.

(3) Analysis of the tourism area

Each tourism area was analyzed by using SWOT analysis as shown below.

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Table 4.3 SWOT analysis of tourism in Pakse and surrounding tourism sites in Champasak Province, Lao PDR

Positive factors Negative factors Present Strength

• Pakse, the third biggest city in Lao PDR, works as tourism hub where many tourists stay.

• Pakse works as a tourist gateway in the region due to easy access by the international airport (Pakse Airport), Route 13., and Thai border.

• Tourism resources, such as Vat Phou and Khon waterfalls attract many tourists

Weakness

• Major market is Thai and Western and Japanese market is limited.

• Thai tourists stay only limited period.

• Immigration procedure and arrangement of transportation for crossing the border is not easy for independent tourists.

Future Opportunity • Crossing border will be easy by developing

Route 7 in Cambodia and border facilities, and issuing visas on arrival.

• This area can be a nodal point of the region if infrastructure, such as roads, is developed since three countries, Thailand, Lao PDR, and Cambodia, have a border each other

• Rare animals and plants in Xe Pian NBCA can be future tourism resource

• Community-based tourism development will be implemented in Mekong Tourism Development Project by ADB

Threat • Tourism amenity might be adversely

affected by receiving too many tourists. • Irrawaddy dolphin which can be tourism

resource are endangered

• Without economic incentive for conserving tourism resource, the resource might be further destroyed and tourism amenity could be degraded. (Relation between fishermen and dolphins)

Source: Study Team

Table 4.4 SWOT analysis of tourism in Sekong Province and Attapeu Province, Lao PDR

Positive factors Negative factors

Present Strength • There are various tourism resources, such

as waterfalls, ethnic minorities, and Ho Chi Minh Trail.

• Due to success of ecotourism in northern Lao PDR, Lao PDR became internationally renowned for ecotourism

Weakness • These provinces are little known as tourism

sites.

• Poverty is serious in these provinces. • Inconvenient access due to lack of road

development and abandoned airport

Future Opportunity

• Movement of people and goods will accelerate if Route 18 to Viet Nam is developed.

• Rare animals and plants in protected area and national park can be future tourism resources if appropriately managed.

Threat • Natural environment, which can be tourism

resource is being destructed. (Logging in Dong Amphan NBCA)

• Without economic incentive for conserving tourism resource, the resource might be further destroyed and tourism amenity could be degraded.

Source: Study Team

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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Table 4.5 SWOT analysis of tourism in Stung Treng Province and Ratanakiri Province, Cambodia

Positive factors Negative factors Present Strength

• There are various tourism resources, such as rare animals, plantation, waterfalls, ethnic minorities, gem mining, and old pagodas

• Community-based tourism in Yeak Lom Lake is well operated

Weakness • These provinces are little known as tourism

sites. • Poverty is serious in these provinces.

• Inconvenient access due to lack of road development

• Immigration procedure and arrangement of transportation for crossing the border is not easy for independent tourists.

Future Opportunity • Crossing border will be easy by developing

Route 7 in Cambodia and border facilities, and issuing visas on arrival.

• Accessibility will be improved after implementing upgrade of Stung Treng and Ratanakiri Airport

• Rare animals and plants in protected area and national park can be future tourism resources if appropriately managed.

• By cooperating with Yeak Lom Lake tourism and Cultural and Environmental Centre, local people can understand tourism more and community-based tourism will be promoted.

Threat • Natural environment, which can be tourism

resource is being destructed. (Logging and endangered dolphins)

• Without economic incentive for conserving tourism resource, the resource might be further destroyed and tourism amenity could be degraded.

• Local people’s land are acquired by outsiders, which can be big problem in the future.

• Local people might be adversely affected by tourism since they are not well prepared for tourism

Source: Study Team

(4) Development challenges

Development challenges of each tourism site are summarized as follows:

Table 4.6 Development challenges of each tourism site

Tourism site Development challenges Pakse and surrounding tourism sites in Champasak Province, Lao PDR

• Diversifying tourism market

• Extending stay period of Thai tourists • Improving carrying capacity

Sekong Province and Attapeu Province, Lao PDR

• Making the provinces more famous as tourism sites • Reducing poverty • Conserving natural resources, such as forest

• Conserving tourism resources

Stung Treng Province and Ratanakiri Province, Cambodia

• Making the provinces more famous as tourism sites

• Reducing poverty • Conserving natural resources, such as forest • Conserving tourism resources

• Addressing the issue of land acquisition by outsiders Source: Study Team

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4.3.4 Issues on Indochina North-South Corridor Development

Development of industry and demand findings

The amount of freight transport between Lao PDR and Cambodia is very little. One reason is that the road condition is poor. Another reason is that the border point of Lao PDR and Cambodia is not designated as an official border point.

From the view point of industrial structure, agriculture is the main industry of both countries so that daily necessities and energy is depending on imports from neighboring countries, while export products are few. This industrial structure causes empty cargo transport.

Development of the North-South Corridor focuses on effective use of Sihanoukville Port and energy supply to Lao PDR through the corridor in the short term. In the long term, development of import substitution industry and/or export industry should be targeted. In another words, creation of high value of agricultural products and industrialization should be promoted in the region through the development of the North-South Corridor. By achieving this, inefficiency of transport business caused by empty cargo transport will be reduced.

Competition with other routes

Development of NR1 linking to Ho Chi Minh in Viet Nam is in progress by Japan’s assistance. Ho Chi Minh Port is located at the end of this route. Depending on cost and efficiency of freight handlings at Sihanoukville Port, it could be happened that freight amount from Ho Chi Minh Port would increase and customers of the Sihanoukville Port would decrease. From the perspectives of security and cost, it is important for Cambodia to have alternative routes; however, policies and plans should be carefully prepared considering the competitive condition with NR 1, in order to develop North-South Corridor successfully. From the view point of tourism development, the North-South Corridor tourism circuit is important.

Under the situation of accelerated economic integration in Indochina, both Thailand and Viet Nam are targeting activation of Indochina transport business. Regarding freight transport to Cambodia and Lao PDR, Thai route with the bases of Laem Chabang Port and Bangkok Port, and Viet Nam route with the bases of Ho Chi Minh Port, Hanoi Port and Danan Port are competing. The scramble for freight will be heated among these countries.

4.4 North-South Corridor Development Strategy and Scenario

4.4.1 Development strategy

The objectives of forming Indochina North-South Corridor are to contribute to (1) regional development, (2) poverty reduction, and (3) transport industry development in both countries through (4) improving Lao PDR’s logistic security by (5) forming strategic transport route and (6) securing transport volume at Sihanoukville Port (and stabilization of port management).

In order to achieve these objectives, it is necessary to implement the following five strategies in an integrated manner:

1) Infrastructure development;

2) Transport hub / center development;

3) Modernization of transport business;

4) Improvement of level of services in physical distribution; and

5) Regional development focusing on the tourism development.

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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Figure 4.3 shows linkages among the five development strategies. Regarding strategy (5), detailed information is provided in section 4.4.3.

Development objectives 1. Poverty alleviation 2. Security improvement of transport in Laos 3. Securing energy 4. Encouragement of transport industry 5. Contribution to regional development 6. Improvement of financial status of Sihanoukville port through expanding market

Tourism and regional development

Infrastructure development

Modernization of transport industry

Transport hub / center development

Transport service development

Source: Study Team

Figure 4.3 Linkage between development strategies and development objectives

4.4.2 Development scenario

North-South Corridor should be developed according to the scenario below.

Infrastructure development / entry institutional improvement

Infrastructure development / improvement along the North-South corridor should come first, and it should be followed by entry institutional improvement such as simplification of the entry/exit procedures at the border points. This is the beginning point of the development scenario of the North-South corridor development.

Encourage associated transport businesses

Next, it is important to encourage associated transport businesses by taking advantage of the North-South corridor. One of the major projects that stimulates business is construction of a physical distribution center: (namely, inland container depot (ICD)) and truck terminal at major cities such as Sihanoukville, Phnom Penh, Pakse and Savannakhet. In addition to such physical development, telecommunication technology should be properly introduced in order to achieve an international level. In the long-term perspective, some large-scale projects will be necessary such as construction of shortcut route through National Highway No.12 and collaborative development of oil refinery facility and transportation systems by the two countries.

Tourism industry development

Together with the infrastructure development in the earlier stages, it is very important to develop the tourism industry, at potential areas first, along the corridor at the same time. Such potential areas include Pakse and Ratanakiri. Japan’s experiences in such rural development will be helpful such as construction of “Michi-no-eki” and “One village one product” in a medium-term perspective. The

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synthesized or collaborative development should be achieved of three business elements: namely, transport business, tourism, and local business. In the long-term, development of Preah Vihear Temple is necessary because this is very attractive for visitors to the area.

Figure 4.4 shows the development scenario of the North-South corridor.

Short term

(2005-2010) Mid term

(2011-2015) Long term

(2016-2020)

Targets

Strengthening of network and facilitation of cross border trade

Encouragement of economic activities based on the corridor

Enhancement of Indochina North-South Corridor as an economic corridor

Infrastructure development

Development of Corridor along Asia Highway

Development of short-cut route with local road improvements

Transport facilities development

Development of Track terminal and inland container deports

Development of fuel distribution and reserve base

Transport services development

Development of road station (Michi-no-Eki) along the corridor

Modernization of transport industry

Single window and single custom services at Lao/Cambodia border

Introduction of IT for efficient transportation

Modernization of transport industries

Tourism and regional

development

Tourism capacity development of tourism sites in Champasak, and Integrated rural development incorporating ecotourism in the provinces

Tourism development of Preah Vihear

Source: Study Team

Figure 4.4 North-South Corridor development scenario

4.4.3 Tourism development strategy

(1) Tourism circuit development along the North-South Corridor

The North-South Corridor is important in terms of the tourism circuit in Indochina. The linkage between tourism circuit in Thailand, Lao PDR, and Cambodia and North-South Corridor is shown in Figure 4.5.

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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Source: Study Team

Figure 4.5 Tourism circuit and the North-South Corridor and the East -West Economic Corridor

Two tourism circuits are shown in Figure 4.5, which originate in Bangkok, a regional gateway. One is the northern circuit which is an established one; the other is the potential southern circuit which can be materialized along the North-South Corridor. In order to form the potential southern circuit, it is necessary to enhance the attractiveness of tourism sites along the circuit as well as to develop road infrastructure.

(2) Tourism development directions

Tourism development directions for each tourism area are described below.

- In the major tourism sites (such as Pakse, a central city of southern Laos, Vat Phou, and Khon Waterfalls), visitors mainly composed of package tourists are expected to increase in the future. Pakse and surrounding tourism sites should develop as a tourism hub of the region which can accommodate a greater number of tourists.

- In adjacent provinces to Champasak (such as Sekong Province and Attapeu Province and Stung Treng Province and Ratanakiri Province in Cambodian side), SIT or eco-tourism should be developed dealing with the abundant natural environment, ethnic minority culture, and so on.

- In Stung Treng Province and Ratanakiri Province, tourism attraction for middle-haul general interest tourists, such as Japanese or Korean market, should be developed as well as eco-tourism. Some hotels in Ban Lung, Ratanakiri, are neat and hideaways and are visited on weekend by wealthy people living in Phnom Penh. Such excellent accommodations themselves can be tourism attraction for general interest tourists. This kind of attractiveness, which is not seen in the Lao side, should be focused on for differentiation with the Lao side.

Figure 4.6 shows potential tourist flow in this area.

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Source: Study Team

Figure 4.6 Tourist flow in Southern Laos and Northeastern Cambodia

(3) Target market

Current and target tourism market and marketing directions are summarized in Table 4.7 for tourism sites in Lao PDR and Cambodia. Since southern Laos and northeastern Cambodia are new and not well-known tourism destinations, it is necessary to focus on the tourist markets of other established tourism sites in the country or the region.

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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Table 4.7 Current and target tourist market and marketing directions of Lao PDR and Cambodia

Tourism site Current market Target market and marketing directions

Lao PDR Luang Nam Tha • Western • Expanding Western market • Finding new market

Luang Prabang • Europe (50.7%)

• Asia and Pacific (19.5%)

• Americas (12.3%)

• Expanding current market • Increasing expenditure per day per

person

Vientiane • ASEAN (70.4% (Thailand 69.4%)) • Europe (12.9%) • Americas (6.6%)

• Increasing expenditure per day per person in Thai market

• Expanding other market

Pakse* • ASEAN (75.6% (Thailand 70.3%))

• Europe (15.9%) • Americas (3.3%)

• Increasing expenditure per day per person in Thai market

• Expanding Western market • Finding Korean and Japanese market

Sekong and Attapeu

• (Western backpackers and package tourists)

• Fixing and expanding Western market

Cambodia Siem Reap** • Asia and Pacific (49.0% (Japan 17.0%, South Korea 14.8%, Taiwan, China, Australia, etc))

• Europe (23.2%)

• Americas (12.7%)

• Expanding current market • Increasing expenditure per day per

person

Stung Treng and Ratanakiri

• (Western backpackers and package tourists)

• Fixing and expanding Western market • Finding Korean and Japanese market

Source: LNTA, 2003 Statistical Report on Tourism in Laos, 2004 (current market), Ministry of Tourism, Cambodia, Annual Report of Tourism Statistics, 2005 (current market), Study Team (target market and marketing direction) Note: *Tourists entering from Thailand – Laos border (Chong Mek = Vang Tao)

**Sum of tourists coming by direct flight to Siem Reap and domestic tourists to Siem Reap (entering from other points than Siem Reap Airport)

Among these tourist markets, the following three markets are important. For tourism development in southern Laos and northeastern Cambodia, it is necessary to consider how to attract tourists from these three markets.

- Western market: extensive presence in Laos and Cambodia - Thai market: Main market of Vientiane and Pakse in Laos - Japanese and Korean market: Main market of Siem Reap in Cambodia

Western market

Eco-tourism development in southern Laos combined with other attractions, such as Pakse, Vat Phou, Khon Waterfalls, border crossing, etc, will attract Western backpackers who are interested in northern Laos. Although eco-tourism in Cambodia is not so famous as Laos, it can utilize the name value of “Lao eco-tourism”. Development of tourism sites near Pakse will appeal to package tourists. Western long-haul tourists who visit to Pakse, often want to go a little further to Siem Reap, and so a new approach passing through northeastern Cambodia can be proposed.

Thai market

Most tourists who come to Pakse are short trippers visiting only some spots, such as Vat Phou and Khon Waterfalls. Development of the environment of the tourism sites around Pakse appealing to such Thai tourists will lead to extension of their length of stay and increase of their expenditure.

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Japanese and Korean market

Japan and Korea are the major markets of Siem Reap, Cambodia. Alternative itinerary for visiting Siem Reap can be proposed including additional attractions, such as Vat Phou, Khon Waterfalls, and watching Irrawaddy dolphins.

4.5 Potential Projects

Based on the development strategies, 38 projects to develop Indochina North-South Corridor are proposed. Of them, 24 projects are in Cambodia and 14 projects are in Lao PDR.

Table 4.8 Proposed Projects (Cambodia)

Project Outline

Infrastructure Development Projects

1. Full-Scale Improvement of NR61 With regard to the 16.1km -long section between Prek Dam and Tao Baek of NR61, emergency repair was completed by WB and full-scale improvement is implemented.

2. Construction of New Tonle Sap Bridge on NR61

The new Tonle Sap bridge on the route to NR7 (NR61) via NR5 or NR51 is constructed. This route serves as a bypass from Sihanoukville to NR7 via NR4.

3. Improvement of NR73 The Government of Cambodia repaired NR73 in 2001. Afterwards, it was damaged by a flood and full-scale improvement is necessary for its repair. NR74 in the east side of this road is connected to NR7 running northward. However, this NR73 serves as a shortcut.

4. Improvement of NR64 (Konpong Thom-Preah Vihear)

NR64 is improved to access to Konpong Thom -Preah Vihear that can be a tourism attraction.

5. Construction of Phnom Penh Industrial Ring Road

Management of urban formation in Phnom Penh (development of the ring road serving as a floodwall and urban utilization of the inside land of the ring road), industrial induction, and development of a ring road functioning as a bypass are dealt with.

6. Improvement of former NR12 (Provincial Road 213)

The old NR12 between Kampong Thom and the Laos border is shorter than NR7 because of non-development of the section between the Sihanoukville and the Laos border. When traffic volume on the north-south corridor will increase in the future, this section will be developed for making the old NR12 function as a bypass.

7. Improvement of Southern Railway Line (Phnom Penh- Sihanoukville)

Rehabilitation of the degraded southern railway line

8. Construction of Submarine Gas Pipeline in the Gulf of Siam

The 150km -long submarine gas pipeline that was discovered in the Gulf of Siam

9. Construction of Transmission Line (Sihanoukville-Kampot-Takeo-Phnom Penh)

Construction of electricity transmission lines from Sihanoukville to Phnom Penh. The line between Sihanoukville and Kampot is planned to be developed by JBIC loan.

Transport Facility Development Projects

10. Construction of Sihanoukville Oil Stockpiling Base

An stockpiling facility for oil from the Gulf of Siam and the Middle East is constructed in the Sihanoukville located at the south end of the north-south corridor

11. Construction of Sihanoukville Inland Container Depot

Construction of an inland container depot which contains bonding and quarantine facilities at the Sihanoukville port

12. Development of Sihanoukville Industrial Zone

Development of a middle-size industrial complex and necessary infrastructures in the hinterland of the Sihanoukville port

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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13. Construction of Phnom Penh Inland Container Depot

Development of an inland container depot dealing with containers at the Phnom Penh port

14. Improvement of River Ports along Mekong River

Improvement pf the river ports in Phnom Penh, Kampong Cham , Kracheh, and Stung Treng along the Mekong river.

15. Construction of Sihanoukville Power Station

Construction of a combined cycle power station or large-scale petrothermal one in Sihanoukville. The power station serves for supplying electricity to the Phnom Penh and Sihanoukville industrial complexes and selling it to Thailand.

16. Development of Phnom Penh Transport Center

Development of large-scale inland transport centres along the Phnom Penh ring road (a truck terminal, an inland container depot and an industrial complex)

Projects for Modernization of Transport Industry

17. Pilot Project for Introducing IT Tag Experimental introduction of IT tag as a pilot project for transport efficiency

18. Introduction of Container Equipment Introduction of container cranes(20ft, 40ft)

19. Introduction of Control Measures against Overloaded Trucks (Truck Scale)

Introduction of control measures against overloaded trucks causing damage to roads (truck scale)

20. Human Resource Development in Transport Industry

Human resource development based on the JICA scheme

21. Modernization of Transport Industry Study for future modernization of transport industry

Transport Service Development Projects

22. Development of “Michi-no-Eki” along NR4 and NR7

Local industry and regional development bases (interface between producers and consumers) are developed at the initiative of local authorities. In addition to association with NGO, etc.(including manpower dispatching), necessary facilities are developed by Japanese grant aid.

Regional Development Projects

23. Integrated Rural Development Incorporating Eco-Tourism in Ratanakiri Province

Implementation of community development projects including eco-tourism development in the rural area incorporating eco-tourism

24. Preah Vihear Tourism Development The tourism development project with use of the relic of the Preah Vihear temple located at the border in the Dangrek mountains. This relic was constructed in the eleventh century and its historical and aesthetic value is high regardless of its destructed parts. Although a large number of tourists from Thailand visit, tourists from Cambodia have difficulty to visit because roads are not yet developed. Therefore, in addition to development of the roads, environmental preservation projects including sewage system development are implemented in parallel to the construction of hotels.

Source: Study Team

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Table 4.9 Proposed Projects (Lao PDR)

Infrastructure Development Projects 1. Improvement of NR14 NR14 runs southward from Pakse to Cambodia in the west side of

the Mekong river. The south side of the section is planned to be improved by WB grant aid, and the north side by Japanese grant aid. This road is connected to NR64 and is a part of the north-south corridor in the west side of the Mekong river

2. Improvement of Bridges on NR16 Improvement of medium and small bridges located on the route to Viet Nam bypassing the west side of the Bolaven Plateau famous for coffee production

3. Improvement of Bridges on NR18 Improvement of medium and small bridges located on the route between Pakse and Viet Nam

4. Reconstruction of Sedon Bridge on NR13

Reconstruction of the Sedon bridge in the inside Pakse located on the east-side route of the Mekong river between Pakse and Cambodia

Transport Facility Development Projects

5. Construction of Pakse and Savanakhet Truck Terminals

Construction of truck terminals in Pakse (a central city in the south part of Laos) on the north-south corridor and Savanakhet (a central city in the middle part of Laos) on the east-west corridor

6. Construction of Pakse Inland Container Depot Terminal

Construction of an inland container depot which contains bonding and quarantine facilities in order to deal with containers in Pakse (from Viet Nam, Thailand and Cambodia)

Projects for Modernization of Transport Industry

7. Improvement of Border Post on NR13 with Cambodia and Introduction of Single Stop Service

Introduction of computers for procedure simplification, human resource development and facilities development

8. Improvement of Border Post on NR14 with Cambodia

Introduction of computers for procedure simplification, human resource development and facilities development

9. Introduction of Control Measures agains t Overloaded Trucks (Truck Scale)

Introduction of control measures against overloaded trucks causing damage to roads (truck scale)

10. Human Resource Development in Transport Industry

Human resource development based on the JICA scheme

11. Modernization of Transport Industry Study for future modernization of transport industry

Transport Service Development Projects

12. Development of “Michi-no-eki” along NR13

Local industry and regional development bases (interface between producers and consumers) are developed at the initiative of local authorities. In addition to association with NGO, etc.(including manpower dispatching), necessary facilities are developed by Japanese grant aid.

Regional Development Projects

13. Integrated Rural Development Incorporating Eco-Tourism in Sekong and Attapu

Implementation of community development projects including eco-tourism development in the rural area incorporating eco-tourism

14. Tourism Capacity Expansion of Champasak Province as Lao Southern Tourism Center for Sustainable Tourism Promotion

There are the Khon Phapheng waterfalls, Si Phan Don , and Wat Pho relic, etc. in the Champasak province. It is planned to be developed for a new tourism base. Targeting these tourism sites and the Pakse urban area, tourism capacity e xpansion of Champasak Province is dealt with in order to receive tourists increasing by mass tourism based on sustainable tourism promotion.

Source: Study Team

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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4.6 Applicable Know-How and Experience of Japan

4.6.1 Know-how in regional development

Regional development in Japan, from the development of industrial belt during high economic growth after the war to the movement of ”one village one product”, are being progressed by collaboration of various organizations including central and local government, private sector and NGOs.

The concept of the North-South Corridor proposed in the study includes various aspects such as development of large-scale electric power, industrial zone and transport facilities as well as local industry development along the corridor. Comprehensive outputs from the corridor development are expected through vertical and horizontal collaboration among various actors, as Japan has experienced.

In Japan, not only central government, but also local government is actively participating in international assistance program in recent years. These diversified international assistances will meet with various needs of developing countries.

In order to develop infrastructure and large-scale industrial zones proposed in this study, support by external resources such as conventional assistance and FDI are needed. However, Cambodia and Lao PDR also could make great contribution to regional development by their own efforts, utilizing the North-South Corridor. Experience and know-how in various areas in Japan should be utilized in such developing countries.

Especially in the region around the North-South Corridor, community development focusing on poverty reduction and rural development, and regional development is important. Japan’s know-how such as “one village one product” could apply in such region.

4.6.2 Experience on improvement of transport efficiency

In Japan, various associations and institutes related to transport are conducting studies and researches in order to improve efficiency of shipping transport and to enhance competitiveness. The studies/researches are emphasizing the following policies.

1. To implement BPR drastically in import and export business, and port business, as well as to ratify the Convention on Facilitation for International Maritime Traffic2.

2. To minimize the burden of procedures of applicants inputs by sharing data/information among government agencies related to import and export, and ports.

3. To coordinate with present procedures for enhancing transport security and to avoid excessive burden to applicants from the view points of security and efficiency.

4. When digitalizing applications, to introduce international standard such as UN/EDIFACT3 , ebXML4, standard cords of IMO.

5. To coordinate procedures of government and private sector

2 Convention established by International Maritime Organization in 1965 at London, which aimed to standardize and simplify the procedure at ports. 94 countries has already ratifies by 2003. 3 International EDI standard developed by UNECE (United Nations Economic Commission for Europe) and approved as ISO9735 by integrating TDI (UN/ECE Standard) and EDI (USA Standard) 4 International initiative to utilize XML which UN/CEFACT and OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards) collaboratively established to promote electronic commerce

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Aiming at materializing those five policies, pilot projects to examine single window and IC tag have been carried out and the positive results have gradually been seen. Although Sihanoukville Port will not be considered to becoming a hub port for the Indochina Region, it is important to establish transport system based on international business practices and techniques to increase freight volume dealing at the port. Advanced studies and researches of Japan are applicable to developing countries including Cambodia and Lao PDR as a part of Japanese technical assistance to the countries.

4.6.3 ISO in transport

In recent years in Japan, the number of transport service providers applying ISO in transport has been increasing. The extent of customer satisfaction is growing while the providers get adequate profit. Furthermore, consults providing services of guiding ISO acquisition is growing. It is said that Japan has been getting know-how which could be transfered to Japanese service providers running their business in overseas countries as well as small and medium-sized service providers of developing countries.

In such countries as Cambodia and Lao PDR, technical knowledge of basic principles and attitude of ISO should be transferred, although it is too early to have conditions to apply ISO at present in those countries.

To give an overview of the effect of introducing ISO in Japan, ISO 9001 focuses on improvement of transport process including empty cargo transport, waiting time, procedure of vehicle allocation, risk of accidents caused by long-time works, etc. By improving the transport process by ISO 9001, cost reduction is achieved.

Furthermore, from long term view, applying ISO 14001 is effective. Along with the concept of cost reduction, comprehensive management system involving shippers, related companies, region and other various stakeholders will be achieved.

Japanese know-how not only to improve the environment of transport industry but also to take overall measures to mitigate environment load by cooperating shippers and other stakeholders is applicable for technical assistance of Japan.

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Study on Indochina North-South Corridor Development Final Report

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5. Projects for Indochina North-South Corridor Development

5.1 Outlines of Proposed Projects

Timeframes and estimated costs of proposed projects are shown in Tables 5.1 and 5.2.

Table 5.1 Estimated cost and implementation schedule of proposed projects (Cambodia) Short-Term Mid-Term Long-Term

Project Estimated

Cost (million yen) (2005-2010) (2011-2015) (2016-2020)

Infrastructure Development Projects 1 Full-Scale Improvement of NR61 1,000 X 2 Construction of New Tonle Sap Bridge on NR61 8,000 X 3 Improvement of NR73 4,000 X 4 Improvement of NR64 (Konpong Thom -Preah Vihear) 4,000 X 5 Construction of Phnom Penh Industrial Ring Road 6,000 X 6 Improvement of former NR12 (Provincial Road 213) 4,000 X

7 Improvement of Southern Railway Line (Phnom Penh- Sihanoukville)

3,500 X

8 Construction of Submarine Gas Pipeline in the Gulf of Siam

15,000 X X

9 Construction of Transmission Line (Sihanoukville-Kampot-Takeo-Phnom Penh)

1,800 X

Transport Facility Development Projects 10 Construction of Sihanoukville Oil Stockpiling Base 4,000 X 11 Construction of Sihanoukville Inland Container Depot 1,000 X 12 Development of Sihanoukville Industrial Zone 2,000 X 13 Construction of Phnom Penh Inland Container Depot 1,000 X 14 Improvement of River Ports along Mekong River 4,500 X 15 Construction of Sihanoukville Power Station 3,000 X 16 Development of Phnom Penh Transport Center 35,000 X X X Projects for Modernization of Transport Industry 17 Pilot Project for Introducing IC Tag 200 X 18 Introduction of Container Equipment 2,000 X

19 Introduction of Control Measures against Overloaded Trucks (Truck Scale)

200 X

20 Human Resource Development in Transport Industry 500 X X 21 Modernization of Transport Industry 200 X Transport Service Development Projects

22 Development of “Michi no Eki” along National Road 4 and 7

300 X

Regional Development Projects

23 Integrated Rural Development Incorporating Eco-Tourism in Ratanakiri Province

600 X

24 Preah Vihear Tourism Development 1,500 X X Source: Study Team Note: NR (National Road)

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Table 5.2 Estimated cost and implementation schedule of proposed projects (Lao PDR) Short-Term Mid-Term Long-Term

Project Estimated

Cost (million yen) (2005-2010) (2011-2015) (2016-2020)

Infrastructure Development Projects 1 Improvement of NR14 4,600 X 2 Improvement of Bridges on NR16 2,200 X 3 Improvement of Bridges on NR18 3,200 X 4 Reconstruction of Sedon Bridge on NR13 1,000 X Transport Facility Development Projects

5 Construction of Pakse and Savanakhet Truck Terminals

1,000 X

6 Construction of Pakse Inland Container Depot Terminal

1,000 X

Projects for Modernization of Transport Industry

7 Improvement of Border Post on NR13 with Cambodia and Introduction of One Stop Service

100 X

8 Improvement of Border Post on NR14 with Cambodia 100 X

9 Introduction of Control Measures against Overloaded Trucks (Truck Scale)

200 X

10 Human Resource Development in Transport Industry 500 X X 11 Modernization of Transport Industry 200 X Transport Service Development Projects 12 Development of “Michi-no-Eki” along NR13 300 X Regional Development Projects

13 Integrated Rural Development Incorporating Eco-Tourism in Sekong and Attapu 600 X

14 Tourism Capacity Expansion of Champasak Province as Lao Southern Tourism Center for Sustainable Tourism Promotion

2,000 X

Source: Study Team Note: NR (National Road)

5.2 Consideration of Funding for Indochina North-South Corridor Development

Because of weak national financial conditions, Cambodia and Lao PDR cannot afford to make new public investment for the Indochina North-South Corridor development at present. In order to implement proposed projects to develop the corridor, multilateral and/or bilateral assistance is needed.

As county risk of Cambodia and Lao PDR is high, it is difficult to depend on funding from Japan’s ODA loan. Especially for large-scale projects, ADB or World Bank finance are highly expected.

5.3 Consideration of Implementation Mechanism

While Cambodia and Lao PDR will directly receive benefit of Indochina North-South Corridor development, other GMS countries including Thailand and Viet Nam, and Japan will also get benefit and expand business opportunities. Therefore, not only Cambodia and Lao PDR themselves, but also the GMS countries, Japan and other International donor agencies should cooperate in developing Indochina North-South Corridor.

5.4 Necessary Action toward Indochina North-South Corridor Development

High level coordination meetings should be held to share the mid to long-term concept of Indochina North-South Corridor and to coordinate among stakeholders toward taking necessary actions. The first step would be the preparation of a master plan through such schemes as JICA’s Development Study and then related countries share the plan as a common base for realizing the corridor development.

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This work was subsidized by the Japan Keirin Association through its

Promotion funds from KEIRIN RACE.