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沖縄県の高校生における危険行動 の推移:2002年~2012高倉 実(琉球大学医学部),宮城政也(琉球大学教育学部) 2014/07/13 23回日本健康教育学会(札幌) OR13-2

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沖縄県の高校生における危険行動の推移:2002年~2012年

高倉実(琉球大学医学部),宮城政也(琉球大学教育学部)

2014/07/13第23回日本健康教育学会(札幌)

OR13-2

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M Takakura

背景

人々の健康に短期および長期にわたって影響を及ぼす危険行動の多くが,青少年期に開始されることはよく知られている。

学校教育の観点からみると,青少年の危険行動が学力低下の危険因子になる一方,学力向上は彼らの危険行動にかかわる可能性を弱めるという相互循環的な関連を示すことが指摘されている。

青少年の健康づくりだけでなく,学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資するためにも,危険行動の一次予防に焦点が当てられるべきであり,効果的な予防施策を立案,実施,評価する上で,危険行動の実態や動向を観察することはきわめて重要となる。

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M Takakura

背景

演者らは,沖縄学校保健調査研究 (Okinawa School Health study: OkiSH study) と称して, 2002年,2005年,2oo8年に,沖縄県全域の高校生を対象として,危険行動について包括的な大規模調査を実施してきた。

本報は,沖縄県の高校生の危険行動について,2012年に実施した継続調査の結果を先行調査と比較して,危険行動の経年変化を検討することを目的とした。

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M Takakura

対象と方法 対象集団は,沖縄県全域の全日制県立高校の生徒で,各年度,2学期に

抽出校の各学年1学級に在籍する生徒に無記名質問紙調査を実施した。

2002年度

沖縄県全域から割当抽出された高校25校(普通科高校17校,専門学科高校8校)の生徒2,852名を標本とした。

2005年度

沖縄県全域から割当抽出された高校25校(普通科高校17校,専門学科高校8校)の生徒2,892名を標本とした。

2008年度

沖縄県全域から確率比例抽出により無作為抽出された高校29校(普通科高校19校,専門学科高校10校)の生徒3,248名を標本とした。

2012年度

沖縄県全域から確率比例抽出により無作為抽出された高校30校(普通科高校20校,専門学科高校10校)の生徒3,386名を標本とした。

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M Takakura

危険行動 US CDC Youth Risk Behavior Survey の質問項目を適用

傷害関連行動(交通安全行動含む) 7 項目

喫煙行動 6 項目

アルコール・薬物使用 6 項目

性行動 5 項目

食行動(減量行動含む)6 項目

身体活動 2 項目 (2008年から異なった項目を使用したので分析から除外)

YRBSの分類にしたがい,2カテゴリ化して出現割合を推定

これらの質問項目は日本の高校生について再テスト信頼性が確認されている (Takakura & Miyagi, 2003)

出現割合の経年変化は,ロジステック回帰分析により,学年,学校種,地域の影響を調整した傾向性検定を行い,線形傾向および二次曲線傾向を検討した。

本研究は琉球大学疫究研究倫理審査委員会の承認を得ている。

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M Takakura

分析対象の属性分布

2002 2005 2008 2012

n % n % n % n %

全体 2540 2472 2850 3034

学年 1年生 903 35.5 874 35.4 992 34.8 1064 35.1

2年生 887 35.0 819 33.1 975 34.2 989 32.6

3年生 750 29.5 779 31.5 883 31.0 981 32.3

性別 男子 1219 48.0 1057 42.8 1424 50.0 1437 47.4

女子 1321 52.0 1415 57.2 1426 50.0 1597 52.6

学校種 普通科 1729 68.1 1709 69.1 1896 66.5 2072 68.3

専門学科 811 31.9 763 30.9 954 33.5 962 31.7

地域 郡部 789 31.1 706 28.6 686 24.1 312 10.3

都市部 1751 68.9 1766 71.4 2164 75.9 2722 89.7

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M Takakura

2002年から2012年にかけて変化がみられた危険行動

改善がみられた行動

交通安全行動

暴力(男子)

喫煙行動

飲酒行動

シンナー吸引(男子),違法薬物提供

性行動

体重認知

危険なダイエット行動(女子)

野菜摂取

コンドーム使用(改善後,悪化)

果物摂取(男子)(改善後,悪化)

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沖縄県高校生の交通安全行動の出現割合

13.212.3

8.8 7.7

21.8

11.99.4

6.4

45.6

35.626.7

26.9

42.332.0

23.1 23.8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

♂ ♀ ♂ ♀

(%)

ヘルメット非着用(年) シートベルト非着用8

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M Takakura

沖縄県高校生の傷害関連行動の出現割合

11.29.7

4.2 2.9

14.910.8

4.8 2.6 3.7 6.3 6.3 4.3 5.6 7.7 6.1

4.70

10

20

30

40

50

60

70

80

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

(%)

飲酒運転同乗(月) 武器携帯(月)

♂ ♀ ♂ ♂

けんか(年)

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M Takakura

沖縄県高校生の喫煙行動の出現割合

52.9

41.035.0

25.732.9

23.621.6

12.214.1

12.68.97.2 8.8 7.1 4.42.4

0

10

20

30

40

50

60

70

80

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

♂ ♀ ♂ ♀

(%)

生涯喫煙 早期喫煙(13歳前)10

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沖縄県高校生の喫煙行動の出現割合

18.6

12.18.4 5.2 5.6 2.9

3.3 1.55.6 5.1 3.7

2.0 2.0 0.6 0.90.30

10

20

30

40

50

60

70

80

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

♂ ♀ ♂ ♀

(%)

常習喫煙(≧20日/月) 大量喫煙(≧10本/日)11

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沖縄県高校生の喫煙割合(月喫煙者)の推移

24.9

17.4

11.5

7.3 10.5

5.46.1 2.7

30.7 29.9

15.9

9.7

12.6 13.1

8.2

4.5

0

10

20

30

40

50

1996 2000 2002 2004 2005 2008 2012

喫煙割合(%

沖縄男子

沖縄女子

全国男子

全国女子

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M Takakura

沖縄県高校生の飲酒割合(月飲酒者)の推移

39.7 33.8

20.6

13.8

41.8

32.3

20.5

12.6

49.7 48.7

36.2

22.5

40.8 42.1

34.1

20.5

0

10

20

30

40

50

1996 2000 2002 2004 2005 2008 2012

飲酒割合(%

沖縄男子

沖縄女子

全国男子

全国女子

13

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M Takakura

沖縄県高校生の飲酒行動の出現割合

71.6

59.5

40.9

29.0

70.8

60.6

43.0

25.417.2 18.4

12.28.2

14.015.8

10.86.70

10

20

30

40

50

60

70

80

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

♂ ♀

♂ ♀

(%)

生涯飲酒 早期飲酒(13歳前)14

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M Takakura

沖縄県高校生の大量飲酒の出現割合

19.7

14.8

10.2

6.1

16.4

11

6.7

3.5

0

5

10

15

20

25

30

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

大量飲酒(2-3時間5杯/月)

♂ ♀

(%)

15

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M Takakura

沖縄県高校生のシンナー使用・違法薬物提供の出現割合

0.8

2.4

1.2 0.7 0.50.3 0.6 0.3

1.3

3.02.8

2.21.9

2.03.3

1.0

0

2

4

6

8

10

12

14

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

薬物提供(年)シンナー吸引(生涯)

♂ ♀ ♂ ♀

(%)

n.s.

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M Takakura

沖縄県高校生の性行動の出現割合

18.917.0

15.512.7

27.824.021.2

14.4

63.0

82.575.4 75.8

58.4

73.5

75.2

63.3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

♂ ♀ ♂ ♀

性交経験(生涯) 最近の性交時のコンドーム使用

(%)

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M Takakura

沖縄県高校生の性行動の出現割合

0.3 1.2

0.5 1.1 0.4

1.1 0.6 0.3

15.2 14.8 14.7

7.5

19.0

13.1 14.5

11.5

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

(%)

早期性交経験(13歳前) 最近の性交時の飲酒・薬物使用

n.s.

♂ ♀ ♂ ♀

18

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M Takakura

沖縄県高校生の食行動の出現割合

32.5 29.0 30.3

26.3

69.9 67.0 62.2 61.0 62.0 60.2 61.1

65.9 64.1 61.6 64.4 69.7

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

(%)

自分を太っていると思う 毎日野菜を食べる

♂ ♀ ♂ ♀

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M Takakura

沖縄県高校生の食行動の出現割合

11.3

15.5

12.1 10.5

5.1

1.9 3.1

1.9

5.9

2.4

3.9 3.4

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

'02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12 '02 '05 '08 '12

(%)

ダイエット薬品使用(月) 吐く・下剤使用(月)

♂ ♀ ♀

毎日果物を食べる

20

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M Takakura

いくつかの行動に経年変化がみられた背景①

交通安全行動 道路交通法改正に伴う啓発, 取締の直接的・間接的効果

2002年悪質・危険な運転に対する罰則引き上げ

2004年暴走族対策の強化, 携帯電話等の使用に関する罰則見直

2007年飲酒運転の罰則強化, 同乗罪,それ以前からの飲酒運転防止に関する社会状況や社会規範の変化

2008年後部座席シートベルトの着用義務化

喫煙行動 健康日本21, 健康おきなわ21の策定・推進

2003年健康増進法施行(受動喫煙防止規定)

2008年成人識別ICカード方式自動販売機(taspo)稼働

2003年, 2006年, 2010年たばこ小売価格値上げ

父親と兄の喫煙割合の減少や友達がいない者の増加といった周囲の環境が寄与している可能性も指摘されている(Osaki et al., 2008)。

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いくつかの行動に経年変化がみられた背景②

飲酒行動 未成年者飲酒禁止法の改正

2000年酒類の提供・販売禁止違反についての罰則強化

2001年年齢の確認義務

酒税法改正 2000年未成年者飲酒禁止法に違反した酒類販売業者の酒類販売業免許の取

り消し。

酒類業組合法の表示基準の一部改正 2003年酒類の陳列場所の見やすい箇所に「酒類の売り場である」「酒類の陳列

場所である」「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示することとされた。

2007年の飲酒運転に関する罰則強化,それに関わる社会規範の変化

喫煙行動と同様に,父親と兄の飲酒割合の減少や友達がいない者の増加など,周囲の環境が影響していることも指摘されている(Osaki et al., 2009) 。

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いくつかの行動に経年変化がみられた背景③

性交経験,性交時の飲酒薬物使用

学校における性教育や地方自治体によるHIV/AIDSに関する予防・啓発活動などの取り組みの効果

最近の性交時のコンドーム使用

2002年に中学校学習指導要領保健体育(保健分野)の内容に,AIDS/STDについて取り扱い,その予防にコンドームが有効であること

が追加され,その学習効果が定着したと思われる。しかし,現在,悪化に転じてことから,今後の動向を注視する必要がある。

食行動

体重認知については,高校生の肥満傾向については大きな変動はみられないので,実際に高校生の体重が減少したというよりも,やせ願望を持つ者の割合が減少したものと考えられる。

野菜摂取をはじめとする食行動の改善は,2005年食育基本法施行以降の食育の成果があらわれたものと考えられる。

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おわりに

本研究でみられた危険行動の経年変化には,政策上あるいは社会環境上の変化が影響していると考えられる。最近のレビューでもこれを支持する論調が多くみられる。

(Park et al. J Adolesc Health 2014; Viner at al. Lancet 2012)

一方,学校における健康教育の効果も十分に寄与していることも考えられる。例えば,学校における喫煙防止教育の積み重ねが,昨今のたばこ関連施策の実施やそれらに対する国民の受け入れに繋がったと考えるからである (高橋.日健教誌 2013)。

しかし,本研究はこれらの要因の影響を直接測定しているわけではないので,いずれも推測としかなり得ないことが大きな限界となる。

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