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官民間のリスク分担

2018年7月26日

政策研究事業本部官民協働室

平成30年度官民連携事業の推進のための地方ブロックプラットフォーム PPP/PFI研修

大規模講演用目次ページ

1 Mitsubishi UFJ Research and Consulting

目次

１．ＰＰＰ/ＰＦＩ分野における『リスク』とは

２．リスク分担の考え方

３．適切なリスク分担の検討

４．ＰＦＩ事業における主なリスクと分担方法の具体例

５．リスク分担を記述する

６．より良い官民連携事業とするために

大規模講演用章区切り


１．ＰＰＰ/ＰＦＩ分野における『リスク』とは

大規模講演用本文ページ


１-１．「リスク」とは

様々なシーンで使われる「リスク」という言葉

ｒｉｓｋ

○ The possibility of something bad happening at some time in the future（将来悪いことが起こる可能性）

○ A situation that could be dangerous or have a bad result（危険な状態になる、又は悪い結果が起こる可能性のある状況）

（出典：Oxford Advanced Learner’s Dictionary）

リスク

○危険。「投資には－を伴う」 ▽risk

（出典：岩波国語辞典）



１-２．ＰＰＰ/ＰＦＩ分野における「リスク」

不確実性のある事由によって、損失が発生する「可能性」

（一リスクの分担等の基本的留意点）

１協定等の締結の時点では、選定事業の事業期間中に発生する可能性のある事故、需要の変動、天災、物価の上昇等の経済状況の変化等一切の事由を正確には予測し得ず、これらの事由が顕在化した場合、事業に要する支出または事業から得られる収入が影響を受けることがある。選定事業の実施に当たり、協定等の締結の時点ではその影響を正確には想定できないこのような不確実性のある事由によって、損失が発生する可能性をリスクという。

（出典：内閣府「ＰＦＩ事業におけるリスク分担等に関するガイドライン」）



１-３．「リスク」を分担するとは

リスクが顕在化した場合の追加的支出の分担を含む措置を規定すること



２選定事業の適正かつ確実な実施を確保するうえで、リスクが顕在化した場合、当初想定していた支出以外の追加的な支出が現実に必要となると見込まれることがある。このため、公共施設等の管理者等と選定事業者は、協定等において、リスクが顕在化した場合の追加的支出の分担を含む措置について、できる限りあいまいさを避け、具体的かつ明確に規定することに留意する必要がある。



２．リスク分担の考え方



２-１．リスク分担における基本的考え方

リスクを管理（コントロール）できる者が当該リスクを分担する



選定事業のリスク分担については、想定されるリスクをできる限り明確化した上で、「リスクを最もよく管理することができる者が当該リスクを分担する」との考え方に基づいて協定等で取り決めることに留意する必要がある。




「リスクを管理（コントロール）できる者」、「当該リスクを分担する者」



公共施設等の管理者等と選定事業者のいずれが、

(ｲ) リスクの顕在化をより小さな費用で防ぎ得る対応能力

(ﾛ) リスクが顕在化するおそれが高い場合に追加的支出を極力小さくし得る対応能力

を有しているかを検討し、かつリスクが顕在化する場合のその責めに帰すべき事由の有無に応じて、リスクを分担する者を検討する。




リスクの分担方法：基本的な４つのパターン

公共施設等の管理者等あるいは選定事業者のうち

① いずれかが全てを負担

② 双方が一定の分担割合で負担（段階的に分担割合を変えることあり )

③ 一定額まで一方が負担⇒ 一定額を超えた場合①又は②の方法で分担

④ 一定額まで双方が一定の分担割合で負担⇒ 一定額を超えた場合①の方法で分担

（内閣府「ＰＦＩ事業におけるリスク分担等に関するガイドライン」に基づき作成）

① ② ③ ④



２-２．ＰＰＰ／ＰＦＩにおけるリスク分担の留意点

ＰＦＩ事業の特徴：４つの視点

長期契約／民間資金の活用／性能発注／包括発注

（目的）

第一条この法律は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促進を図るための措置を講ずること等により、効率的かつ効果的に社会資本を整備するとともに、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保し、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

（出典：民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律（ＰＦＩ法））




長期契約～中長期的な視点に立った計画策定・事業実施による効率化

○ 長期契約であるほど、契約締結当初からの社会情勢・経済環境の変化等の不確実性が高まるため、将来発生しうる追加的支出の分担方法の整理、備えが重要

【従来型の発注の流れ（例）】

【ＰＦＩ手法による発注の流れ（例）】

募集

選定

業務実施予算化

募集

選定


募集

選定


Ｈ30年度Ｈ31年度Ｈ32年度

募集選定

業務実施

Ｈ30年度Ｈ31年度Ｈ32年度

予算化




民間資金の活用～「民間事業者が資金調達を行う」

○ ＰＦＩ事業においては公共施設等の整備等にあたり、これまで起債等で公共が行っていた資金調達を、民間事業者が代わりに金融機関等から調達して立て替える。

○ 原則としては、資金調達を行う民間事業者が資金調達に関するリスクを負う。

○ ただし、民間事業者が全てを負担をすることが困難とみられる場合は、公共側にリスクの分担を求めることも必要。

施設整備費

y1 y2 y3 y4 y5 y6 y7 y8 y9 y10 y1 y2 y3 y4 y5 y6 y7 y8 y9 y10

【従来の公共の財政支出】【ＰＦＩ手法における公共の財政支出】

管理運営費

分割起債や単費で、公共が資金調達




性能発注～「仕様」ではなく、求める「性能」を規定して発注

○ 性能発注により、その性能を満たすための、民間事業者の創意工夫を誘導

○ 提案どおりに業務を行った結果、性能が要求水準未達であった場合は、事業者側で、求められた性能を満たすよう対応が求められる

【従来型の仕様発注】【ＰＦＩ手法における性能発注】

発注者（公共）

求める「性能」

仕様

受託者（民間）

業務実施

発注者（公共）

求める「性能」

仕様受託者（民間）

業務実施

工法は○○とする材料は○○とする

…

○○を満たすこと。○○の機能があること。

…

事業提案や事業計画の中で民間が具体的な仕様や方法を検討・実施し、性能を達成

発注発注




包括発注～設計・建設・維持管理・運営等の業務の包括化

○ ＰＦＩ事業においては多くの事例で、複数の業務を包括化して発注され、民間事業者は、複数業務にそれぞれ対応できる企業同士でコンソーシアムを組成

○ 事業に係るリスク分析を行い、事業者間の役割分担・リスク分担することが重要

設計企業

建設企業

維持管理企業

【従来型の業務の発注方法】

設計業務

発注者（国・地方公共団体等）

建設業務

維持管理業務

【ＰＦＩ手法における発注方法】

委託料

委託業務

工事代金

工事請負

委託料

委託業務

運営企業

運営業務

委託料

委託業務

設計企業

建設企業

維持管理企業

設計業務

発注者（国・地方公共団体等）

建設業務

維持管理業務

運営企業

運営業務

受託者（民間事業者）＝ＳＰＣ（特別目的会社）

サービス

提供

サービス

対価

一括発注



３．適切なリスク分担の検討



３-１．事業における業務分担の設定

本事業の目的に応じた事業内容・業務分担を設定

○ 当該事業の目的を達成するために実施する事業内容と、そのうち官民のいずれが、どのような業務を担うのか（業務分担）を整理。

○ ここでも「リスク分担における基本的な考え方」と同様に、官民のいずれがどの業務を担うことが適切か検討し設定。



３-２．リスクの洗い出し

事業において想定されるリスクとその原因の把握

○ 事業実施にあたり想定されるリスクを網羅的に把握し、それらのリスクの原因（帰責事由含む）を整理。

○ 当該事業の独特の業務や、特殊な施設、その時々の社会情勢等を踏まえて、固有のリスクを洗い出し。

共通事項建設段階

設計段階

入札説明書等リスク

入札リスク

契約締結リスク

政策転換リスク

住民対応リスク

法令変更リスク

税制度変更リスク

許認可取得リスク

債務不履行リスク

物価変動リスク

設計変更リスク

測量・調査リスク

建設着工遅延リスク

改修費増大リスク

工事遅延リスク

工事監理リスク

性能リスク

情報流出リスク

施設瑕疵リスク

施設・設備劣化リスク

維持管理コストリスク

性能リスク

事故リスク

技術革新リスク

施設退去・移管手続きに係るリスク

事業期間終了時の性能確保リスク

（福岡市「福岡市美術館リニューアル事業」実施方針別表リスク分担表（案）に基づき作成）

第三者賠償リスク

不可抗力リスク

金利リスク

第三者賠償リスク

資金調達リスク

管理運営段階

展示品管理リスク

所蔵品管理リスク

施設利用者変動リスク

利用者対応リスク



３-３．官民におけるリスク分担の仮説設定

発注者目線による仮説設定

○ 想定されるリスクに対し、その原因に応じて公共施設等の管理者等（発注者）と民間事業者との分担を検討。

○ 多くの事項において、先行事例における考え方を参考とすることができるが、当該事業の独特の業務や、特殊な施設、その時々の社会情勢等に応じて、適宜、リスク分担を検討することが必要。



３-４．民間事業者等への確認

仮説の検証～民間事業者への意向確認～

○ 発注者目線で設定したリスク分担の考え方について、事業を担う民間事業者から見たリスク負担の可否や、課題認識について把握。

○ 民間事業者へのヒアリングや、官民対話等の方法により把握。

構想・計画策定事業手法検討事業化準備（事業者選定）

施策・事業の方向性や、具体的な事業イメージについてのアイデア・意見募集

事業手法や事業スキームについての意見

事業に対する興味・関心

等

事業条件、事業スキーム、想定されるリスク分担等に対する意見、要望

事業ｽｹｼﾞｭｰﾙの妥当性

各事業方式の場合の参画意向や、担える役割

事業条件等に対する要望

等

実施方針の内容（参加資格、募集方法、事業条件、リスク分担等）に対する意見・確認

要求水準書（案）に対する意見・確認

提案内容として想定していることに関する質問・確認

等

民間に求める意見

目的

施策、構想・計画策定にあたっての事業内容等のアイデア・意見募集

事業への参画意向把握と事業内容、事業手法・方式、事業条件等への意見聴取

事業への参画検討状況把握と事業条件、事業内容等への理解・認識の共有

各段階における公共からの民間へのサウンディング調査等



３-５．リスクの評価（定量化）

リスクの定量化の考え方

リスクが顕在化した際に必要となる追加的支出

（影響度）

リスクが顕在化する確率

（発生頻度・発生確率）×

リスクの影響を軽減／除去する費用

リスクが顕在化する確率を低下させる費用

○ 事業全体として影響度（支出・費用）を低減／除去できるリスク分担が最も合理的。

○ 費用・確率を的確に見極められる者がリスクを負担することも、合理化につながる。



４．ＰＦＩ事業における主なリスクと分担方法の具体例



４-１．ＰＦＩ事業における主なリスク

○ リスクは事業ごとに異なるものであり、個々の事業に即してその内容を評価し検討すべきことが基本となることに留意。

○ 同種・類似事業の先行事例等におけるリスク分担を参考とし、適宜取捨選択又は別途追加して、個別事例に基づいて検討することが必要。



４-２．主なリスクの具体的な分担方法

物価変動リスク

○ 設計・建設・維持管理・運営等の費用の物価水準が変動し、民間事業者の収支に影響を与えるリスク

■ リスク分担の考え方

■具体的なリスク分担方法

○ 各費用の物価水準が提案段階から乖離した場合、民間事業者の収支に影響を与える可能性があり、物価が変動した場合のサービス対価への反映方法等の仕組みを導入する。

設計・建設費に係るサービス対価への

反映方法

PPP/PFI事業の場合、提案時には設計図書は未作成であり、数量等の確定が困難。提案時からの物価変動分について、特定の物価指標を用いて、当該変動分をサービス対価に反映することが一般的。

管理運営費に係るサービス対価への

反映方法

物価変動分について、特定の物価指標を用いて当該変動分をサービス対価全体に反映させる方法、特定の物価指標の変動を特定のサービス対価に反映させる方法等がある。




需要変動リスク

○ 少子化・高齢化、人口減少、他施設との競合等により施設利用者数が変動し、民間事業者の収入に影響を与えるリスク



○ 運営を行う民間事業者が需要変動リスクを負担する一方、運営上の裁量も持つことで、運営における民間事業者のノウハウ発揮を期待する。

一定基準未達の場合の収入補填

民間事業者の収入が、一定水準に達しない場合は公共が補填することにより、民間事業者の収入変動は一定範囲に限定される。

収入に連動した費用負担

民間事業者が公共に支払う費用を民間事業者の収入に連動（変動）させる。これにより民間事業者の収支変動リスクは軽減される。

公共帰責や不可抗力発生時等の官民

間での協議

公共の帰責や不可抗力が発生した場合に、官民間で民間事業者の損失補填方法を協議する。これにより民間事業者の収入減少リスクは軽減される。




法令変更リスク

○ 事業に直接関係する法令度等の変更、新たな規制立法の成立等により法令に適合した業務を実施するために追加費用等が発生するリスク



○ 事業に直接関係する法令の変更に基づく増加費用は公共の負担とし、広く民間企業一般に影響を及ぼすような法令変更に基づくものについては、選定事業者の負担とする考え方がある。

公共による費用負担

事業契約締結後の法令変更に伴い、要求水準書及び事業計画どおりに事業遂行することが困難となった場合、民間事業者から公共に通知し、要求水準、事業計画の変更、追加費用負担について協議を行い、事業に直接関係する法令の変更に基づく増加費用については公共が負担する。




金利変動リスク

○ 金利水準の変動に伴い民間事業者の借入金に係る支払金利が変動し、民間事業者の収支に影響を与えるリスク



○ 公共側が民間事業者に施設整備費を割賦で支払う場合、その割賦金利は、「基準金利（公共が指定する金利）＋スプレッド（民間事業者が提案する金利）」で構成される。

○ 事業期間が長期にわたる場合、基準金利が変動する可能性がある。金利変動リスクについては、施設引渡前は公共側の負担、施設引渡後は民間事業者の負担とする例が多い。

施設引渡前のリスクを公共負担に限定

基準金利の確定時期を、施設引渡時（民間事業者による長期借入金調達時）とする。これにより、民間事業者の金利変動リスクは、施設引渡し（長期借入金調達）以降に限定される。

施設引渡後のリスクを民間事業者に限定

施設引渡後の基準金利は見直しを行わず、施設引渡し（長期借入金調達）以降の金利変動リスクは民間事業者の負担とする。




測量・調査リスク

○ 民間事業者が実施した測量、調査の結果、対象用地や対象施設等に当初想定されなかった重大な欠陥が発見された場合に必要となる追加的費用が発生するリスク



○ 測量、調査の結果、又は工事施工中に、対象用地や対象施設等に当初想定できなかった重大な欠陥があることが判明し、提案内容に見直しが必要となる場合、当該見直しに起因する追加費用は公共が負担することが一般的。

○ ただし、事業者が合理的に要求される努力を尽くしても、当該欠陥の発見時期以前に、発見することが不可能又は著しく困難であったと認められる場合には、官民間で十分な協議を行ったうえで、事業者に発生した合理的な追加費用分を公共が負担。

公共によるリスクの負担

民間事業者が実施した測量、調査の結果、対象用地や対象施設等に提案書類提出時には想定出来なかった重大な欠陥があることが判明し、これにより事業計画に見直しが必要となる場合、当該見直しに起因する合理的な追加費用は、公共が負担する。




不可抗力リスク

○ 官民いずれの責にも帰すことができず、また計画段階において想定し得ない不可抗力による施設の損害によるリスク



○ 不可抗力リスクの一部を民間事業者の負担として、民間事業者に被害拡大を抑制したり、早期復旧に向けて努力するインセンティブを付与し、不可抗力による損害や費用の増加を抑制することが一般的。

保険付保による対応

火災保険、地震保険の他、その他の不可抗力に係る保険付保によるリスク軽減が考えられる。

主に公共によるリスクの負担

不可抗力による費用の追加が生じた場合に、サービス対価の100分の1以内の費用を民間事業者が負担し、それを超える額を公共が負担する、いわゆる「100分の1ルール」を採用することが一般的。



５．リスク分担を記述する



５-１．ＰＦＩ事業の実施にあたって公表される資料一式

実施方針等の公表

実施方針

【主な内容】

・事業概要・募集・選定に関する事項（入札参加要件）・民間事業者の責任の明確化・リスク分担表（案）等

入札公告（公募書類公表）

特定事業の選定

特定事業の選定

入札説明書

要求水準書

基本協定書（案）

落札者決定基準

要求水準書（案）

【主な内容】

・設計・建設業務に関する要件・維持管理業務に関する要件・運営業務に関する要件等

【主な内容】

・特定事業選定の考え方・定性的効果・定量的効果（財政負担見込額の算定）

⇒いわゆるVFM評価・総合評価等

【主な内容】

・事業者選定スケジュール・提案審査及び審査委員会の概要・提案書類等の提出方法・入札参加要件・契約の概要等

【主な内容】

・設計・建設業務に関する要件・維持管理業務に関する要件・運営業務に関する要件等

【主な内容】

・発注者・受注者の権利・義務・施設の完成、引渡し・各種リスク分担・サービス対価の支払方法・ﾓﾆﾀﾘﾝｸﾞ、業務不履行時における対応等

【主な内容】

・落札者決定までの流れ（審査の流れ）・落札者の決定方法・審査内容、評価項目・配点・評価方法等

様式集

【主な内容】

・応募手続きに係る様式・入札・価格提案に係る様式・事業提案書に係る様式

事業契約書（案）



５-２．リスク分担に係る記載内容

実施方針・リスク分担表（案）

○ 実施方針を公表する段階において、想定される主なリスクに係る官民の分担を示しておくことは、民間事業者にとって事業条件の理解を深めることにつながる。

○ リスク分担表はあくまで（案）として示される。

（福岡市「福岡市美術館リニューアル事業」実施方針別表リスク分担表（案）より抜粋）




要求水準書

○ 民間事業者が担う業務内容や、求められる要求水準を記載するもので、リスク分担と整合した業務分担とする必要がある。

○ 民間事業者は参画にあたり、担う業務に対してリスクの想定を行うことが望ましい。

【学校空調PFI事業の業務内容】

設計・施工業務

○空調設備の新設

○既存空調設備の更新

所有権移転業務

維持管理業務

○新設空調設備の維持管理

○既存空調設備の維持管理

所有権移転後の移設等業務

※ 空調設備の運転に係るエネルギー費用は、公共が負担

【リスクの想定】

⇒ 既存空調設備の配管等、一部再利用した場合のリスク分担は？

⇒ 既存空調設備が性能劣化した場合のリスク分担は？




事業契約書（案）

○ 実施方針のリスク分担表（案）に整理したリスク分担の詳細を規定し、入札説明書等と同時に公表する。

【事業契約書（案）における記載例】

（設計の変更）

第13条市は、必要があると認める場合、工期の変更を伴わず、かつ、事業者の提案を逸脱しない範囲で、書面により、本件施設の設計変更（設計条件にかかる変更を含む。本条において、以下同じ。）を事業者に対して求めることができる。この場合、事業者は、当該変更の当否を検討し、市に対してその結果を速やかに通知しなければならない。

２前項に従い、市の請求により事業者が設計変更を行う場合、かかる請求が、事業者側の事由に起因し、当該変更により事業者に追加的な費用が発生したときは、事業者が当該費用を負担するものとし、それ以外の場合には、当該変更により事業者に生じた追加的費用は、市の負担とする。

（福岡市「福岡市美術館リニューアル事業」事業契約書（案）より抜粋）



先行事例にみるリスク分担～学校空調整備ＰＦＩ事業～



学校空調整備ＰＦＩ事業の主な先行事例

実施主体事業対象対象規模事業者選定年度

京都市（京都府）小学校（普通教室）への一斉設置・維持管理 156校・2,500室 H17

川崎市（神奈川県）小学校（普通教室）・聾学校への一斉設置・維持管理 90校・1,930室 H20

西宮市（兵庫県）中学校への一斉設置（施工は2箇年）・維持管理 17校・510室 H24

神戸市（兵庫県）小学校への一斉設置・維持管理 71校・1,480室 H26

福岡市（福岡県）小学校への一斉設置・維持管理 73校・1,580室 H26

中学校への一斉設置・維持管理 50校・930室 H27

松戸市（千葉県）小・中学校（普通教室）への一斉設置・維持管理 64校・1,430室 H27

松山市（愛媛県）小・中学校への一斉設置・維持管理 78校・2000室 H29

川西市（兵庫県）幼・小・中学校への一斉設置・維持管理 28校・970室 H29

大分市（大分県）中学校への一斉設置・維持管理 26校・510室 H30

木津川市（京都府）幼・小・中学校への一斉設置・維持管理 21校・460室 H30・31他



学校空調整備ＰＦＩ事業の概要

○サービス購入型のみ事業方式

事業分類

事業期間（運営期間）

事業内容

○ＰＦＩ‐ＢＴＯ方式のみ

○13年間（設計・施工期間：7箇月、維持管理期間：12年5箇月）

○設計

○施工

○工事監理

○維持管理

○移設等

利用料などの収入は得られないため、発注者からのサービス対価のみが支払われる

補助金の交付を受けるため、地方公共団体が空調設備の所有権を保有

空調設備の法定耐用年数に基づき、機器の更新が必要ない期間を設定

移設等業務とは、事業期間中の利用教室の変更や増設、学校の統廃合等に伴い、空調設備の移設が必要な場合に、別途費用を支払って行う業務。

エネルギー費用の負担は、地方公共団体が行う



学校空調整備ＰＦＩ事業の主な特徴

○事業初年度の夏休み明けまでに対象校への一斉導入が可能

○「性能発注」による最適な機器の導入、統一されたレベルの維持管理サービス提供

○空調の性能モニタリングによる質の高い空調環境の提供

維持管理期間をとおした性能発揮を求めることが可能

モニタリングデータを活かした各学校現場への省エネ運用の指導など、多面的な工夫を期待

従来の方法では、整備期間が複数年度に渡ってしまい、学校間の不公平が発生

ＰＦＩ事業者が設計・施工を一括して担い、短期間での設置を実現

民間事業者の提案により、最適な機器導入、最適な維持管理の提供が可能

同一機器の導入・性能水準の統一化により、運用・維持管理面でのサービス水準の統一化



学校空調整備ＰＦＩ事業におけるリスク分担の特徴

① 事業期間を通した空調設備の事業者による性能保証

② 機器の不具合等による過大なエネルギー費用の事業者負担

○１つの事業者が設計・施工・維持管理を行うため、事業期間中におこる不具合等への対応は、全て事業者のリスクとして整理

○事業者は提案時に、事業期間中の不具合の発生確率などを踏まえて、機器の選定、金額等を検討する必要あり

○エネルギー費用は、基本的には公共が負担

○ただし、機器の不具合や、メンテナンス不良による性能劣化に伴う「過大なエネルギー費用」が発生した場合、事業者が負担



学校空調整備ＰＦＩ事業におけるリスク分担の特徴

③ 更新の場合、冷媒管等の再使用の事業者による判断

④ 対象校・対象教室の応募者による現地確認

○更新を行う場合、冷媒管などは再使用できる可能性あり

○事業期間中の性能を保証することを前提に、更新・再使用の判断を事業者に委ねる。

⇒ 再使用による不具合発生の場合は、事業者負担

○多数の学校施設の現況を示した資料を用意することは多くの場合困難

○公共は、資料はあくまで「参考」として提示し、現地見学の機会を設けて、事業者は現地を「正」として提案・金額を検討

⇒ 参考資料と現地との差により費用負担が発生した場合、事業者負担



６．より良い官民連携事業とするために



より良い官民連携事業とするために

○基本的な考え方に則った、合理的なリスク分担の設定

○長期の事業継続性を確保するための事業全体としてのリスク管理

○先行事例にとらわれすぎず、事業内容・社会情勢等に応じた検討

○業務「分担」・リスク「分担」…目指すはより良い『官民連携』

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