pathogenesis of fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25...

10
1 2012/6/25 1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。 最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。

Upload: others

Post on 03-Feb-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

1

2012/6/25

1

2012/6/25

線維筋痛症の発症機序。

最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。

Page 2: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

2

2012/6/25

2

2012/6/25

正常な痛みの抑制経路は、末梢の痛覚受容器である侵害受容器の活性化を発端とし

ます。

有痛刺激は痛みのインパルスを生じさせ、脊髄後角に伝達します。

末梢神経の末端にあるシナプスでは、カルシウムイオン(Ca2+)チャネルから流入した

Ca2+により神経が興奮し、痛みの神経伝達物質であるグルタミン酸およびサブスタンスPを放出させます。

これらの神経伝達物質は痛みの上行路(脊髄視床路)を活性化し、脳にシグナルを伝達

します。これらのシグナルが脳に到達すると、痛みが知覚されます。

痛みは、脊髄後角に下行性に伸びる疼痛抑制ニューロンによる調節を受けます。

脊髄後角では、疼痛抑制ニューロンは脊髄から脳への疼痛伝達に影響を及ぼします。

Page 3: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

3

2012/6/25

科学的エビデンスから、線維筋痛症は中枢性感作により生じることが示されています。

中枢性感作では、中枢神経系が刺激に対して感作を受け、痛覚感受性が亢進します。

その結果、 疼痛反応が増強し、痛覚過敏やアロディニアが生じます。

対照群では強度の高い刺激で生じる痛みと同等の痛みが、線維筋痛症患者では強度の

低い刺激で生じることが、fMRIデータにより示されています。

中枢性感作では、中枢神経系における機能的変化が脊髄ニューロンの過興奮を起こし、

その結果、痛みの神経伝達物質であるグルタミン酸およびサブスタンスP濃度が上昇する

ことが示唆されています。

Page 4: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

4

2012/6/252012/6/25

中枢性感作が異常な痛みのシグナル伝達を起こします。線維筋痛症における疼痛反応は遷延化し、通常、鈍く拡散した痛みを起こします。また、過敏を示す部位の拡大もしばしばみられます。抑制シグナルが抑え込まれることで脳および脊髄後角が過剰に興奮し、異常な疼痛処理が起きます。これが中枢性感作と言われるものです。

Page 5: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

5

2012/6/25

線維筋痛症では、疼痛反応の増幅がみられます。

正常な疼痛反応では、刺激の強度が増すにしたがって痛みの強度も高くなります。

しかし、線維筋痛症患者では中枢性感作によって疼痛反応が増幅するため、強度の低い

刺激でも反応が亢進します。

線維筋痛症患者において、強度の低い刺激で強い痛みを感じる症状には、有痛刺激に対して

反応が増幅する痛覚過敏と、正常な刺激が痛みを起こすアロディニアがあります。

Page 6: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

6

2012/6/25

線維筋痛症患者では健康対照群に比べて疼痛処理が増強していることは、エビデンスからも明らかになっています。

fMRIを用いて脳の活性化を測定する試験で、線維筋痛症群と健康対照群を対象に、刺激の強さと自覚される痛みの強さが検討されました。図は、刺激の強さと痛みの強さの関係を示しています。健康対照群に比べて線維筋痛症群では、強度の低い圧刺激(2.4 kg/cm2)によってはるかに強度の高い痛みが生じ、健康対照群で同様の疼痛反応を引き出すには、はるかに強度の高い圧刺激が必要でした。

Page 7: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

7

2012/6/25

また脳のfMRI図は、健康対照群に比べて線維筋痛症群では、脳内における痛みの処理部位の一部がはるかに低い強度の刺激で活性化したことを示しています。また、線維筋痛症群において有意に活性化した部位(fMRI画像で赤で示した部分)と、健康対照群において有意に活性化した部位(青の部分)がみられます。

Page 8: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

8

2012/6/25

線維筋痛症患者の脳脊髄液中では、痛みの神経伝達物質であるサブスタンスPの濃度が

上昇しています。

線維筋痛症群および健康成人群から腰椎穿刺により脳脊髄液サンプルを採取した3つの

試験で、ラジオイムノアッセイにより脳脊髄液におけるサブスタンスPの濃度が測定されま

した。

3試験すべてにおいて、健康成人群の正常なサブスタンスP濃度に対して、線維筋痛症群

では有意な上昇が認められました。

Page 9: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

9

2012/6/25

線維筋痛症患者の脳脊髄液中では、痛みの神経伝達物質であるグルタミン酸濃度が

上昇しています。

脳脊髄液中のグルタミン酸濃度は、対照群に比べて線維筋痛症群で上昇しています。

サーチエリらは、線維筋痛症患者20例と、診断目的で腰椎穿刺を受け、年齢を一致

させた対照群20例における脳脊髄液中のグルタミン酸濃度を測定しました。

脳脊髄液中のグルタミン酸濃度は、対照群に比べて線維筋痛症群で統計学的に

有意に高い結果(p<0.003)が示されました。

Page 10: Pathogenesis of Fibromyalgia.ppt [互換モード]...1 2012/6/25 線維筋痛症の発症機序。最初に、ヒトの神経系における正常な痛みのプロセスについて見てみましょう。2

10

2012/6/25

では、線維筋痛症の病態生理について、簡単にまとめてみましょう。

中枢性感作は、線維筋痛症の病態生理に関する有力な説の1つです。

fMRIデータでは、線維筋痛症は疼痛反応が増幅する障害であることを裏付けています。

健康対照群において強度の高い刺激で活性化された部位は、線維筋痛症患者では強度

の低い刺激で活性化されました。

線維筋痛症患者の脳脊髄液中では痛みの神経伝達物質濃度の上昇がみられます。

複数の研究において、グルタミン酸およびサブスタンスP濃度の上昇が報告されているの

です。

これらの濃度上昇が線維筋痛症患者における痛みの増強に関与していることが示唆され

ています。