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19

第 3章

調査方法

3.1 調査体制

今回の調査では 1998年の調査とは異なり、一般市民に広く参加を呼びかけ人海戦術により短期間で広範囲を調査

するという方法ではなく、前回の調査で各地区の取りまとめを担ってくれた主要メンバーを中心に、調査内容を絞

り、前回 1998年の調査結果の追跡調査を主目的に行った。各地区毎の分担代表者は表 3.1のとおりである。主とし

て 2008年 2月から 5月までの期間に調査を行ったが、2009年及び 2010年にも補助的にデータ収集を行い、今回の

取りまとめにも利用した。また、八王子市の一部の地区では、2007年春に行った調査のデータを利用した。

前回の調査結果をまとめた産卵場毎の調査票と産卵場の分布地図(2.5万分の 1)を各地区ごとに用意し、分担代

表者に配布した。地区ごとに、前回の調査で確認された既知の産卵場の状況を重点的に調査し、産卵状況を報告して

もらった。調査方法は原則として前回の調査時の要領を踏襲したが [49]、今回はより効率よく迅速に情報交換をする

ために、電子媒体を利用した情報収集を試みた。PDFファイルで調査票の原票を作成し、Adobe Readerを用いて必

要事項を調査票に記入してもらい、即座にインターネット経由で送付してもらう事ができるように工夫した。また、

PDFファイルが上手く扱えない人のために、同様の書式を Excelファイルでも用意した。

なお、具体的な調査手順等に関しては、前回 1998年の調査と基本的に同じ手法を用いた。詳細については前回の

調査報告書 [49]の 3.2トウキョウサンショウウオ調査マニュアルの項を参照のこと。

表 3.1:調査分担代表者表。丘陵の位置に関しては図 3.1を参照。(F)は西多摩自然フォーラム。

地域 担当者 地域 担当者

狭山丘陵 古川 嘉勇・原島 真二(F) 秋留台崖線 川上 洋一(F)

加治丘陵 御手洗 望 加住丘陵

草花丘陵  戸吹町 小沢 正夫・山内 陽子

 青梅市 久保田 繁男・佐久間 聡・御手洗 望(F)  川口町 五味 元

 日の出町 川上 洋一(F)  上川町 五味 元

 あきる野市 小澤 祥司(F) 川口丘陵 五味 元

大久野山地 川上 洋一(F)・草野 保 山内 陽子

伊奈丘陵 多摩丘陵 塩谷 暢生・土屋 学

 日の出町 川上 洋一(F)・草野 保 北浅川流域 山内 陽子

 あきる野市 五十嵐 亮太(F)  

五日市周辺 川上 洋一(F)

秋川南岸 川上 洋一(F)・草野 保 データ取りまとめ 草野 保

20 第 3章 調査方法(草野 保・川上洋一)

図 3.1:東京都多摩地区の丘陵の地図。国土地理院基盤地図情報(縮尺レベル 25000)を基に作成した。

3.2 調査表記入項目

3.2.1 調査地・調査者関連

1. 産卵場番号

既存の産卵場にはすべて地区ごとにアルファベット一文字と数字で番号を割り当ててあるので、その番号を記

入する。新規産卵場の場合は、空欄としこちらでまとめて新しい番号を割り振った。

2. 調査地名・行政地区名

市町村は、東村山市・東大和市・武蔵村山市・瑞穂町・青梅市・あきる野市・日の出町・八王子市・日野市・稲

城市・不明から選択。

3. 調査年月日

4. 調査者名・所属団体名

3.2.2 観察データ

1. 確認個体数

卵嚢・幼生・成体♂・成体♀・成体(性別不明)・死体ごとに確認数を記入する。卵嚢は対数ではなく、個数そ

のものを記載する(1対ではなく 2卵嚢)。外来生物による捕食被害も想定されるので、死体についても報告

する。

2. 1998年調査との比較

ほぼ同じ者が担当している場合が多いので、前回との比較を記入してもらう。不明・増加傾向・ほぼ変わらず・

減少傾向・絶滅・新規発見から選択する。

3. 個体数の信頼度

調査の信頼度について、不明・ほぼ把握できた・目安程度・繁殖の有無のみ確認の 4項目の選択肢から選択。

3.3 調査日程 21

4. その他(自由記述)

3.2.3 地形・生息環境

1. 地形

不明・尾根・斜面・谷凹地・平坦地・山際より選択。

2. 地形の向き

北・北西・西等の 8方位から選択。

3. 土地環境

常緑広葉樹林・落葉広葉樹林(管理中)・落葉広葉樹林(放置)・針葉樹林・竹林・林道路傍・水田(耕作中)・

休耕田・水路畦(管理中)・水路畦(放置)・その他の適切な箇所にチェック。複数項目選択可能。その他(自

由記述)。

4. 水環境

不明・水田水路・湿地・渓流沢(流速速い)・渓流沢(流速遅い)・湧水から選択。その他(自由記述)。

5. 止水産卵場のサイズ

不明・1m2以下・1–10m2・10m2以上より選択。

6. 水深(cm)

3.3 調査日程

データに反映した地点のみの参加者を示す。

2007年

4月 4日八王子市川口町  1名

4月 6日八王子市川口町  1名

4月 8日八王子市川口町~上川町  1名

4月 14日八王子市川口町  1名

4月 15日八王子市川口町  1名

4月 17日八王子市川口町  1名

4月 19日八王子市川口町  1名

4月 29日八王子市川口町  2名

のべ 9名

2008年

3月 8日青梅市友田町  1名

3月 18日日の出町大久野  1名

3月 23日日の出町大久野・東大和市蔵敷  2名

3月 25日稲城市矢野口  1名

3月 27日日野市高幡~南平  1名

3月 28日八王子市高月・日の出町羽生~大久野  2名

3月 29日青梅市大荷田・あきる野市横沢入・日の出町平井  41名

3月 30日武蔵村山市横田~東村山市廻田・埼玉県入間市宮寺  2名

3月 31日日野市程久保  3名

のべ 54名

4月 1日あきる野市入野~日の出町大久野・八王子市堀之内・同市戸吹  3名

4月 2日あきる野市瀬戸岡  2名

4月 3日八王子市堀之内  1名

22 第 3章 調査方法(草野 保・川上洋一)

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フォームを印刷電子メールで送信

B-* ***** 日の出町*** 2008/04/16

草野 保 首都大・理工 八王子市南大沢1-1、首都大・理工・動物生態、E-mail:[email protected]

210増加傾向 ほぼ把握できた

3月31日には卵のう160個。

山際 北

湧水止水(10㎡以下) 15

図 3.2:今回のトウキョウサンショウウオ調査の際使用した調査表の一例 (PDFファイル)。

4月 4日あきる野市入野~日の出町羽生・八王子市東中野  2名

4月 5日青梅市大荷田・あきる野市菅生・八王子市川口・同市堀之内  6名

4月 6日青梅市小曽木・あきる野市草花・瑞穂町金堀沢~埼玉県入間市・八王子市美山・同市川口  8名

4月 11日日の出町羽生~大久野  1名

3.3 調査日程 23

4月 12日青梅市駒木野・同市成木~黒沢・武蔵村山市岸~東大和市奈良橋  6名

4月 13日青梅市小曽木・瑞穂町大沢~埼玉県所沢市・武蔵村山市三ツ木・八王子市西寺方~美山  9名

4月 14日八王子市南大沢  1名

4月 15日青梅市大荷田・日の出町平井・八王子市堀の内  3名

4月 16日日の出町平井~羽生・八王子市堀の内  2名

4月 17日八王子市川口  1名

4月 19日青梅市成木~富岡・八王子市戸吹~上川  5名

4月 20日あきる野市高尾~日の出町平井・あきる野市菅生・瑞穂町高根  3名

4月 23日あきる野市入野~伊奈  1名

4月 26日八王子市川口  1名

4月 27日あきる野市高尾・八王子市弐分方~戸吹  2名

4月 29日日の出町大久野  1名

のべ 58人

5月 1日あきる野市雨間・八王子市美山~上川  2名

5月 2日八王子市川口  1名

5月 4日八王子市戸吹  1名

5月 5日青梅市今井~小曽木  3名

5月 8日青梅市小曽木  2名

5月 9日八王子市堀之内  3名

5月 10日青梅市小曽木・八王子市戸吹  2名

5月 11日八王子市戸吹~宮下  1名

5月 16日青梅市小曽木  2名

5月 18日青梅市今井~小曽木・同市黒沢~富岡  3名

5月 23日八王子市戸吹~宮下  2名

5月 29日青梅市友田  3名 

のべ 25名

2009年

3月 18日あきる野市雨間~三内  1名

3月 20日青梅市小曽木  1名

3月 23日あきる野市網代~日の出町羽生  1名

3月 25日あきる野市瀬戸岡  1名

3月 28日青梅市大荷田・あきる野市横沢入・日の出町平井  27名

3月 29日日の出町平井・同町新井~岩井・同町羽生~あきる野市伊奈 6名

3月 31日日の出町大久野  2名

のべ 39名

4月 1日日の出町大久野・八王子市堀之内  3名

4月 2日日の出町萱窪~北原・同町大久野  3名

4月 3日日の出町岩井~新井・あきる野市網代~八王子市谷野  2名

4月 4日日の出町平井・同町萱窪・同町幸神~坂本・日野市高幡~南平  6名

4月 5日日の出町落合・同町羽生  3名

4月 7日日の出町羽生・日野市程久保・埼玉県入間市  5名

4月 8日あきる野市切欠・日の出町羽生  3名

4月 9日日の出町北原・八王子市堀之内  2名

4月 10日あきる野市雨間~網代  1名

4月 14日日の出町萱窪  1名

4月 25日八王子市堀之内  3名

24 第 3章 調査方法(草野 保・川上洋一)

のべ 32名

2010年

3月 13日八王子市東中野  1名

3月 19日八王子市  1名

3月 20日あきる野市草花  1名

3月 26日日野市南平~高幡  1名

3月 30日八王子市広町  1名

4月 3日青梅市大荷田・あきる野市横沢入・日の出町平井  25名

4月 6日武蔵村山市岸・八王子市堀之内  2名

4月 7日あきる野市切欠~八王子市谷野  1名

4月 26日日野市南平  1名

5月 9日八王子市堀之内  3名

のべ 37名

総計のべ 124日、254名

3.4 長期モニタリング

都内のトウキョウサンショウウオの生息状況や長期にわたっての産卵数・生息環境などの変化を把握するには、

1998年度のような調査を毎年行なうのが理想的だが、現実には調査員の負担が大き過ぎるなど、多くの困難が予想さ

れる。そこで、こうしたスタイルの調査は 10年に一回程度とし、その間の経年変化は各地域に数カ所の観察定点を

設定して、今後 10年程度にわたる繁殖個体数データの集積を計画した。

3.4.1 調査方法

1998年度調査と同様、卵嚢・成体等のカウントと周囲の環境を記録する。調査時期は、産卵のほぼ終わった 4月上

旬・中旬以降が望ましい。次の項目についても調査する。

1. メスの産卵数(卵数と相関するメスの体長の変化追跡)。

2個対になった卵嚢の中の卵の数を、左右別々にカウントする。定点に産卵された全ての卵嚢についてカウン

トすることが望ましいが、数が多い場合は、最低 10対程度を新旧とりまぜランダムに選んで行なう。

2. 卵の死亡率と未受精率。

産卵数の調査の際に卵嚢ごとの死卵の数を記録する。死卵の中で、丸いまま分割が起こらずに死んでいる未受

精卵は可能であれば別に記録しておく。卵の死亡率は産卵時期により変化するので、新旧の卵嚢をランダムに

調査する。

3.4.2 調査体制

調査定点を設定した個人またはグループは、10年程度の継続調査を行なう。調査定点の位置、調査の結果等は随時

事務局に報告する。何かの都合により調査ができなくなることが無いように、複数の調査員をおくなどバックアップ

体制をとっておく。調査地点は各地域に出来れば 1ないし数ヵ所設定する。狭山丘陵・加治丘陵・草花丘陵(青梅市・

あきる野市・日の出町)・秋留台地崖線・伊奈丘陵(日の出町・あきる野市)・大久野山地・加住丘陵(あきる野市・

ハ王子市谷地川流域・同市川口川流域)・恩方丘陵・多摩丘陵など全 15–30箇所。

3.4.3 調査定点の選定

以下の条件を参考に適地を選定した。

3.5 調査方法補足 25

1. あまり小さな産卵場は避ける。カウント数の変動が大きく誤差が大きくなる可能性が高いため。卵嚢が最低で

も 30個程度の産卵が確認されている場所が望ましい。

2. 立ち入りに障害が無い(地主の理解など)。

3. 近い将来開発などの影響を受けるリスクが少ない。

4. 人為による撹乱のリスク(採集・セリ採り・耕作など)が少ない。

5. カウントがやりやすく、正確な数が把握できる、あまり広くない産卵地。

6. 広い谷戸などで、多人数でないと正確な調査ができないような場所は好ましくない。

3.5 調査方法補足

今回の調査では、1998年の調査で確認した産卵場の大部分を現状確認することが出来た(詳細は第 4.2節、28ペー

ジ参照)。確認できなかった 11ヶ所については、以下のような理由があげられる。

1. 前回調査の際に産卵場が地図上の間違った場所に記入されていた。写真などが残されていたので、今回の調査

で正しい位置に修正することが出来た例もあったが、全く不明な場所も数ヶ所あった。

2. 前回調査での地名の記入が不十分だった。とくに地元の年配者だけが使用していたような通称は、すでに伝承

が途絶えている場合もあった。

3. 聞き込み情報の場合では、すでに情報提供者を追跡することが出来なくなっている例もあった。

これらは調査能力にばらつきのある一般市民が参加しての調査では、生じやすい問題といえるだろう。また、調査

頻度が 10年に一度程度になってしまう場合は、調査員の世代交代も考えられ、誰でも追認が出来るようなデータを

伝えていくことが求められる。今回の調査でも一部の地域で行なわれたように、一般的に普及するようになった GPS

を積極的に利用していくことなどがますます必要になる。「○○さんしか知らない調査地点」といった情報の個人所

有は、すでに時代錯誤に過ぎない。