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マクロ経済学 中央大学経済学部 村上弘毅 1 / 44

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Page 1: 中央大学経済学部 村上弘毅c-faculty.chuo-u.ac.jp/~hmura/macroeconomics.pdfマクロ経済学の成立 マクロ経済学は,諸国が世界恐慌に苦しむ1930年代に,その

マクロ経済学

中央大学経済学部村上弘毅

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マクロ経済学の成立

 マクロ経済学は,諸国が世界恐慌に苦しむ 1930年代に,その基礎が形成された学問であって,以下に掲げる文献が,その形成に寄与した。

1 Kalecki, Michal, “A Macrodynamic Theory of BusinessCycles,” Econometrica, Vol. 3 No. 3 (1935), pp. 327-334.

2 Keynes, John Maynard, The General Theory of Employment,Interest and Money, London, Macmillan (1936).(『雇用,利子及び貨幣の一般理論』。以下,『一般理論』という。)

 これらの文献で確立されたマクロ経済学に関する重要な理論は,「有効需要の原理」である。 この原理は,一国全体の産出及び所得並びに雇用及び失業の水準が,生産能力ではなく,購買力に基づく有効需要によって定まることをいうものである。

 以下においては,『一般理論』及びその出版後に発展された経済理論に基づいて,マクロ経済学を考察する。

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IS-LM分析 (1)

 『一般理論』によって提起されたマクロ経済学の理論は,理解し難いものであって,この理解を容易にするために,IS-LM分析が,以下の文献によって提案された。

1 Reddaway, W. Brian, “The General Theory of Employment,Interest and Money,” Economic Record, Vol. 12 No. 1-2(Jun., 1936), pp. 28-36.

2 Harrod, Roy F., “Mr. Keynes and the Traditional Theory,”Econometrica, Vol. 5 No. 1 (Jan., 1937), pp. 74-86.

3 Meade, James E., “A Simplified Model of Mr. Keynes’System,” Review of Economic Studies, Vol. 4 No. 2 (Feb.,1937), pp. 98-107.

4 Hicks, John R. “Mr. Keynes and the ‘Classics:’ A SuggestedInterpretation,” Econometrica, Vol. 5 No. 2 (Apr., 1937), pp.147-159.

5 Lange, Oskar, “The Rate of Interest and the OptimumPropensity to Consume,” Economica, Vol. 5 No. 17 (Feb.,1938), pp. 12-32.

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IS-LM分析 (2)

  IS-LM分析は,以下の文献によってさらに発展させられた。1 Samuelson, Paul A., “The Stability of Equilibrium:

Comparative Statics and Dynamics,” Econometrica, Vol. 9No. 2 (1941), pp. 97-120.

2 Timlin, Mabel F., Keynesian Economics, Toronto, Universityof Toronto Press (1942).

3 Modigliani, Franco, “Liquidity Preference and the Theory ofInterest and Money,” Econometrica, Vol. 12 No. 1 (1944),pp. 45-88.

4 Klein, Laurence R., The Keynesian Revolution, New York,Macmillan (1947).

5 Hansen, Alvin H., Monetary Theory and Fiscal Policy, NewYork, McGraw-Hill (1949).

6 Patinkin, Don, Money, Interest and Prices: An Integration ofMonetary and Value Theory, New York, Harper and Row(1956).

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IS-LM分析 (3)

 Modigliani (1944)に基づいて,資本の変動しない短期における静学理論として,以下に掲げる IS-LM体系を考察する。

M

P= L(r ,Y ) (1)

I = I (r ,Y ) (2)

S = S(r ,Y ) (3)

S = I (4)

Y = F (N) (5)

W

P= F ′(N) (6)

 この体系において,古典派経済学を解釈するためには,次式を要する。

N = NS(WP

)(7)

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IS-LM分析 (4)

 但し,記号の意味は,以下のように与えられる。1 Y  実質総所得(実質国内総生産)。2 r  (名目)利子率。3 I  実質投資又は投資関数。4 S  実質貯蓄又は貯蓄関数。5 L 流動性選好(実質貨幣需要)関数。6 M  名目貨幣供給。7 N  総雇用。8 F  (短期)生産関数。9 P  価格水準。10 W  名目(貨幣)賃金。11 NS  労働供給関数。 さきに掲げた IS-LM体系においては,名目貨幣供給M は,外生変数である。 この体系において,内生変数は,Y , r , I , S , N, P 及びW の7つであって,方程式は,(1)から (6)までの 6つである。これがため,内生変数のうちの 1つは,これを解くことができない。

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ケインズ経済学と古典派経済学

 Modigliani (1944)は,さきに掲げた IS-LM体系において,完全雇用を前提とする「古典派経済学(Classical Economics)」又はそれを前提としない「ケインズ経済学(Keynesian Economics)」を,各々以下の場合として解釈した。

1 ケインズ経済学名目賃金W が外生的に与えられ硬直的である場合。この場合には,雇用 N 又は総所得 Y は,体系によって定まる内生変数となって,各々完全雇用水準又はそれに対応する水準であるとは限らない。

2 古典派経済学労働供給関数 (7)によって,雇用 N が完全雇用水準で与えられる場合。この場合には,総所得 Y は,生産関数 (5)によって,完全雇用に対応する水準となる。

 生産関数 F が,考察の対象とする雇用Nの範囲において,線形に近いとき,古典派経済学の第 1公準 (6)は,名目賃金W が硬直的であれば,価格水準 P も殆ど硬直的であることを示唆する。 ケインズ経済学は,Modigliani (1944)以後,賃金又は価格が硬直的である場合の経済学としてみなされるようになった。 7 / 44

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r

r *

YO Y *

LMIS

図: IS-LM分析

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ケインズ経済学の理論体系

 名目賃金W が外生的に与えられるとき,総生産 Y,利子率 r,雇用N 及び価格水準 P は,IS-LM体系によって内生的に決定される。

 貨幣市場の均衡条件式 (1)は,与えられた総生産 Y 及び価格水準 P 並びに外生的に与えられた貨幣供給M に応じて,利子率 rを定めるものであって,流動性選好理論を表現するものである。 財市場の均衡条件式 (4)は,与えられた利子率 r に応じて総生産 Y を定めるものであって,有効需要の原理を表現するものである。又,この際定められる総生産 Y は,完全雇用に対応する水準であるとは限らない。 生産関数(雇用関数)(5)は,貨幣市場及び財市場の均衡によって定められた総生産 Y に応じて雇用 N を定めるものである。又,この際定められる雇用 N は,完全雇用水準であるとは限らない。 ケインズ経済学において,古典派経済学の第 1公準 (6)は,貨幣市場及び財市場の均衡によって定められた総生産 Y 及び利子率r 並びに外生的に与えられた名目賃金W に応じて,価格水準 Pを定めるものであって,労働需要関数を表現するものではない。 9 / 44

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古典派経済学の理論体系

 労働供給関数 (7)は,IS-LM体系とともに,総生産 Y,利子率r,雇用 N,価格水準 P 及び名目賃金W を内生的に決定する。

 労働需要関数 (6)及び労働供給関数 (7)は,労働市場を均衡させる実質賃金W /P を定めるとともに,この水準に対応する雇用NF(完全雇用)を与える。 生産関数 (5)は,労働市場を均衡させる雇用 NF に応じて,総生産 Y を完全雇用に対応する水準 YF に定める。 財市場の均衡条件式 (4)は,完全雇用に対応する総生産 YF に応じて,利子率 r を定めるものであって,貸付資金理論を表現するものである。 貨幣市場の均衡条件式 (1)は,完全雇用に対応する総生産 YF

及び財市場の均衡によって定められた利子率 r 並びに外生的に与えられた貨幣供給M に応じて,価格水準 P を定めるものであって,貨幣数量説を表現するものである。

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フィリップス曲線

 ケインズ経済学は,現に生ずる不完全雇用又は不完全稼働を説明することができるが,さきの解釈によれば,賃金又は価格が変動する場合を処理することができない。 以下に掲げる文献は,失業率と名目賃金又は価格水準の変化率の間に存在する負の相関関係を確立することによって,かかる理論的瑕疵を除去することに寄与した。

1 Phillips, Alban William, “The Relation betweenUnemployment and the Rate of Change of Money Wage Ratesin the United Kingdom, 1861-1957,” Economica, Vol. 25 No.100 (1958), pp. 283-299.

2 Samuelson, Paul A. and Robert M. Solow, “AnalyticalAspects of Anti-Inflation Policy,” American Economic Review,Vol. 50 No. 2 (1960), pp. 177-194.

 これらの文献は,現在「フィリップス曲線」として知られる関係を確立することに貢献した。 フィリップス曲線は,直ちに IS-LM体系に統合され,その結果,ケインズ経済学は,不完全雇用のみでなく価格変動をも説明することができるようになった。 11 / 44

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O

物価変化率

失業率

図: フィリップス曲線

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古典派経済学によるフィリップス曲線の解釈 (1)

  Friedman (1968)は,フィリップス曲線が長期的に成立しないことを論じた。 この論旨を説明するため,企業の労働需要及び労働者の労働供給を考察する。 企業の労働需要 ND は,実質賃金W /P の減少関数であって,次式で与えられる。

ND = ND(WP

)(8)

 労働者の労働供給NS は,名目賃金W 及び彼らの期待する価格水準 Pe に基づく期待実質賃金W /Pe の増加関数であって,次式で与えられる。

NS = NS(WPe

)= NS

(WP

P

Pe

)(9)

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古典派経済学によるフィリップス曲線の解釈 (2)

 財に対する需要が増加した場合を考察する。この場合には,以下に掲げる現象が,短期的に生ずる。

1 価格水準 P は,上昇し,物価上昇率は,上昇すること。2 労働者は,この価格の上昇を認知しないため,彼らの期待する価格水準 Pe は,上昇せず,これがため,価格水準と期待価格水準の比 P/Pe は,上昇すること。

3 労働供給曲線 (9)は,P/Pe の上昇のため,右方向に移動すること。但し,労働需要曲線 (8)は,変化しない。

4 労働市場の均衡における雇用N は,増加し,失業率は,低下すること。

 短期的には,物価上昇率と失業率は,負の相関を有し,フィリップス曲線は,成立する。

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古典派経済学によるフィリップス曲線の解釈 (3)

 長期的には,以下に掲げる現象が,生ずる。1 労働者は,価格の上昇を認知し,期待価格水準 Pe は,価格水準 P と等しくなるまで,上昇すること。

2 価格水準と期待価格水準の比 P/Pe は,低下し,元来の水準になること。

3 労働供給曲線 (9)は,P/Pe の低下のため,左方向に移動し,元来の位置に移動すること。

4 労働市場の均衡における雇用 N は,減少し,元来の水準になって,失業率も,同様となること。

 長期的には,物価上昇率は,上昇しても,失業率は,変化しない。これは,フィリップス曲線が,長期的には成立しないことを意味する。

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NO

W/P

ND NS

N*

(W /P )*

図: 労働市場

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自然失業率仮説 (1)

  Friedman (1968)によれば,フィリップス曲線は,予見されない物価上昇率が,短期的に,労働者の労働供給及び失業率を変化せしめるため,成立する。 彼は,現実の物価上昇率と期待物価上昇率とが等しくなる際の失業率の水準を「自然失業率」と定め,失業率は,長期的にはこの水準に収束すると主張した。この仮説は,これを「自然失業率仮説」という。

 自然失業率仮説に基づけば,フィリップス曲線は,これを次式で与えることができる。

f (u − u∗) = π − πe (10)

但し,記号の意味は,以下のように与えられる。1 u 失業率2 u∗ 自然失業率3 π (現実)物価上昇率4 πe  期待物価上昇率5 f  (短期)フィリップス関数

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自然失業率仮説 (2)

 古典派経済学においては,自然失業率に基づくフィリップス曲線 (10)は,物価上昇率とその期待された値との乖離が,失業率と自然失業率の乖離を生じさせることを示唆するものである。

f (u − u∗) = π − πe (10)

 他方で,ケインズ経済学においては,このフィリップス曲線は,次式として解釈される。

π = f (u − u∗) + πe (11)

フィリップス曲線 (11)は,(IS-LM体系その他の機構で定まる)失業率と自然失業率の乖離が,期待物価上昇率と相俟って,現実の物価上昇率を与えることを意味する。

 自然失業率仮説は,ケインズ経済学及び古典派経済学の双方に,フィリップス曲線の異なる解釈を与えるものである。

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新しい古典派経済学 (1)

 自然失業率仮説によるフィリップス曲線 (10)は,労働者が,経済体系の構造を学習することによって,現実の物価上昇率を合理的に予見又は期待することができる場合には,失業率が,常に自然失業率に等しいことを結論するものである。 自然失業率仮説の確立以後,マクロ経済学においては,合理的な期待形成が,経済体系に与える効果を分析するようになった。

  Lucas (1972)又は Sargent and Wallas (1975)は,合理的期待仮説に基づいて,従前のケインズ経済学,特に IS-LM分析が充分に考察することのできなかった期待形成がマクロ経済体系に与える効果をも分析することができる理論として,「新しい古典派経済学(New-Classical Economics)」を確立した。但し,これは,従前のケインズ経済学が,期待形成の効果を全く考察することができなかったことを意味するものではない。

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新しい古典派経済学 (2)

 新しい古典派経済学は,すべての経済主体が以下の性質を有することを前提とする。

1 マクロ経済体系に関する完全な知識を有すること。2 前項の知識に基づいて,将来の価格その他の指標を合理的に予見又は期待すること。

3 前々項の知識及び前項の期待に基づいて,自己の目的を達するように合理的に意思決定を行うこと。

 この前提は,新しい古典派経済学における分析が,すべての経済主体に関するミクロ経済学的考察を基礎とすることを示すものである。 又,Lucas (1976)は,政策分析において,経済政策が,現在の経済主体に直接もたらす効果のみでなく,将来の財政その他のマクロ経済体系に与える効果に関する経済主体の期待形成の変化を通じた間接的効果をも,ミクロ経済学的基礎に基づいて考察しなければならないと論じ,さらに,従前のケインズ経済学による政策分析は,この期待形成の変化を通じた間接的効果を無視するものであって,経済予測の上でその効力を有しないと論じた。この主張は,これを「ルーカス批判」という。 20 / 44

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実物的景気循環理論 (1)

  Kydland and Prescott (1982)及び Long and Plosser (1983)は,新しい古典派経済学の前提に基づいて,技術進歩を景気循環の主たる要因とする景気循環及び経済成長の理論を提示した。この理論は,現在「実物的景気循環理論(Real Business Cycle Theory)」として知られるものであって,ルーカス批判に堪えるものである。

 実物的景気循環理論は,以下に掲げる事項を前提とする理論である。

1 いかなる経済主体も,価格支配力を有しないで,現在及び将来のすべての価格及び生産技術の変化を合理的に予見し,これに基づいて,常に合理的に意思決定を行うこと。

2 いかなる市場も,合理的な意思決定によって定まる需要及び供給が一致するように,常に均衡し,いかなる価格も,常に均衡価格であること。

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実物的景気循環理論 (2)

 実物的景気循環理論は,さきの前提に基づくものであるため,以下に掲げる結論を与える。

1 景気循環及び経済成長として表現される経済変動は,主として技術進歩によるものであること。

2 かかる経済変動は,各々の経済主体の合理的な意思決定に基づく市場均衡の結果として生ずるものであって,好況であっても不況であっても,社会的に(パレートの意味で)最適な資源配分をもたらすこと。

 この結論は,景気循環に応じた経済政策が,社会的に最適な資源配分の達成を妨げるために,社会的に望ましいものではないことを示すものである。 この理論によれば,いかなる経済政策も,効率的な市場に対する介入であるため,不況の際の対策のものであっても,これを実施してはならない。

 しかし,実物的景気循環理論を含む新しい古典派経済学による結論は,明らかに,現実を反映するものでないために,多数の批判を受けた。 22 / 44

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新しいケインズ経済学 (1)

 「新しいケインズ経済学(New-Keynesian Economics)」は,新しい古典派経済学に対する批判に応じて,従前のケインズ経済学を改良する目的で確立されたマクロ経済学理論であって,以下に掲げる特徴を有するものである。

1 従前のケインズ経済学とは異なり,経済主体に対するミクロ経済学的考察を基礎とするものであること。

2 新しい古典派経済学とは異なり,経済政策がその効力を有することを認めるものであること。

 新しいケインズ経済学は,これらの特徴のために,ルーカス批判に堪え,従前のケインズ経済学の結論の一部を導くことができる。

 この理論に対する初期の貢献は,殆ど静学的分析に関するものであって,これは,以下に掲げる文献に多く掲載されている。

1 Mankiw, N. Gregory and David Romer, New KeynesianEconomics, Cambridge MA, MIT Press (1991).

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新しいケインズ経済学 (2)

 新しいケインズ経済学は,Modigliani (1944)の結論に基づいて,従前のケインズ経済学を価格が伸縮的でない場合の理論であるとみなし,Mankiw and Romer (1991)を含むこの理論に関する多数の文献は,経済主体の合理的意思決定の結果として,価格が伸縮的でなくなるように,企業が「独占的競争」の状態にあると仮定して理論を設計した。 新しいケインズ経済学は,静学的分析に関しては,ルーカス批判に堪えるようにミクロ経済学的基礎を有し,且つ不完全雇用その他従前のケインズ経済学が対象とした現象を説明することができるようになった。

 新しいケインズ経済学は,この静学的分析を動学的分析にも発展させることを目的として,新たな理論体系を検討するようになった。

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動学的確率的一般均衡理論 (1)

 「動学的確率的一般均衡理論(Dynamic Stochastic GeneralEquilibrium Theory)」は,新しいケインズ経済学が動学的分析を行うために,ミクロ経済学的基礎を有する実物的景気循環理論の体系に基づいて,設計された理論体系である。

 動学的確率的一般均衡理論は,価格が,需給の乖離に応じて,伸縮的には変化せず,市場が,常には均衡しないことを,経済主体による動学的に最適な意思決定の帰結として導き,もって従前のケインズ経済学の IS-LM体系及びフィリップス曲線にミクロ経済学的基礎を与えるものである。 価格が伸縮的でないことを表現するため,この理論は,企業が,独占的競争の状態にあって,価格支配力を有するが,毎期価格変更をすることができるとは限らないと仮定する。この仮定は,Calvo (1983)に基づく。

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動学的確率的一般均衡理論 (2)

 動学的確率的一般均衡理論は,実物的景気循環理論の体系において,完全競争の仮定を独占的競争の仮定に置換し,又,価格が伸縮的であることを妨げる制度的仮定を導入することによって,動学的観点から,ミクロ経済学的基礎の下に,従前のケインズ経済学の理論体系を再現することを目的とするものである。

 しかし,Blanchard (2009)が論じたように,動学的確率的一般均衡理論は,労働者の労働の限界不効用と実質賃金が等しいことをいう古典派経済学の第 2公準を前提とするため,失業の存在を認めない。これがため,この理論は,有効需要の原理に基づいて非自発的失業を分析の対象とする従前のケインズ経済学と矛盾するものである。 新しいケインズ経済学は,動学的分析に関しては,失業の存在を認めない動学的確率的一般均衡理論に基づくものであるため,理論的瑕疵を帯び,又,これをケインズ的であるとみなすことはできない。 

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動学的確率的一般均衡理論における失業 (1)

 動学的確率的一般均衡理論は,Gertler et al. (2008),Blanchardand Galı (2010)その他の近年の文献によって改善され,失業の存在を説明することができるようになった。この新たな動学的確率的一般均衡理論は,以下に掲げる事項を仮定して,失業の存在を説明する。

1 企業には,卸売業者及び小売業者の 2つの種類が存在すること。

2 卸売業者は,雇用した労働力を用いて中間財を生産し,これを小売業者に販売すること。但し,卸売業者は,自ら生産した財に対する価格支配力を有しない。

3 小売業者は,卸売業者から購入した中間財に価格を設定し,これを最終財として消費者に販売すること。但し,小売業者は,労働力を用いない。

4 労働者及び卸売業者は,交渉によって賃金を設定すること。但し,これを論ずる際に,ナッシュ交渉理論を用いる。

5 雇用は,卸売業者及び労働者による合理的な意思決定の結果定まる労働需要及び労働供給に基づいて定められること。但し,これを論ずる際に,サーチ理論を用いる。 27 / 44

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動学的確率的一般均衡理論における失業 (2)

 従前の動学的確率的一般均衡理論は,企業が,独占的競争の下で,財の価格を設定することができるが,賃金を設定することができないと仮定するため,賃金を定めるために,労働市場の均衡及び古典経済学の第 2公準(労働者の労働の限界不効用と実質賃金が等しいこと)を前提としなければならなかった。

 他方で,新たな動学的確率的一般均衡理論は,企業を,価格を設定する小売業者と賃金を設定する卸売業者(及び労働者)に分けるために,古典派経済学の第 2公準を前提とすることを要しない。又,この理論は,サーチ理論及びナッシュ交渉理論を用いて,雇用又は失業及び賃金の決定を合理的に説明することができる。

 この新たな動学的確率的一般均衡理論は,現在,マクロ経済学における分析の基礎として,広く承認されているものである。

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新たな動学的確率的一般均衡理論の理論的瑕疵

 新たな動学的確率的一般均衡理論は,失業を説明することができるにもかかわらず,以下に掲げる瑕疵を帯びる。

1 小売業者が労働者を用いないで販売を行うという仮定は,小売業を含む第 3次産業が労働集約的産業である事実に反すること。

2 この理論で説明される失業は,労働者と卸売企業の労働条件の不一致による摩擦的失業によるものであって,有効需要の不足による非自発的失業ではないこと。

 新たな動学的確率的一般均衡理論は,現実的ではない仮定に基づいて失業を説明し,又,この理論で説明される失業は,景気循環の諸局面において変化し,特に不況において増加する非自発的失業ではない。

 そもそもマクロ経済学は,世界恐慌の際に生じた大規模な非自発的失業その他の惨禍が再び起きることのないようにすることを目的として確立された学問であって,新たな動学的確率的一般均衡理論に代表される現代的マクロ経済学は,非自発的失業の存在を認めないために,かかる目的を絶対に達成することができない。29 / 44

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数量調整と価格調整 (1)

 Modigliani (1944)は,価格が伸縮的であるかないかによって,ケインズ経済学と古典派経済学を区別したが,価格が硬直的であることは,ケインズ経済学の成立の十分条件であっても必要条件ではない。 ケインズ経済学は,有効需要の原理に基づく経済学であって,この原理は,財市場の需給の乖離が,迅速な価格の調整ではなく迅速な供給の数量の調整によって,解消されることを論ずるものとして,これを解釈することができる。ケインズ経済学は,数量調整が迅速に行われるのであれば,価格が伸縮的であっても,成立するものである。

 ケインズ経済学と古典派経済学の最も重要な差異は,需給調整の際において,数量調整を仮定するか価格調整を仮定するかによるものであって,合理的期待を仮定するかしないかによるものではない。

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数量調整と価格調整 (2)

 数量調整及び価格調整の見地からケインズ経済学を解釈した文献として,以下に掲げる文献が,存在する。

1 Clower, Robert, “The Keynesian Counterrevolution: ATheoretical Appraisal,” in Hahn, Frank H. and Frank P.R.Brechling, Eds., The Theory of Interest Rates, London,Macmillan (1965), pp. 103-125.

2 Leijonhufvud, Axel, On Keynesian Economics and theEconomics of Keynes: A Study in Monetary Theory, Oxford,Oxford University Press (1968).

3 Tobin, James, “Keynesian Models of Recession andDepression,” American Economic Review, Vol. 65 No. 2(1975), pp. 195-202.

4 Tobin, James, “Price Flexibility and Output Stability: An OldKeynesian View,” Journal of Economic Perspectives, Vol. 7No. 1 (1993), pp. 45-65.

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数量調整と価格調整 (3)

 ケインズ経済学は,有効需要の原理の下に,財市場及び労働市場における需給調整の際に,数量調整が迅速に実施され,価格調整がフィリップス曲線を通じて実施されることを仮定するものであって,古典派経済学とは異なる。 これがため,ケインズ経済学は,価格が伸縮的であることの効果について,古典派経済学とは,異なる結論を与えることがある。

 ケインズ経済学における価格が伸縮的であることの効果に関する理論的分析は,Tobin (1975, 1993), Chiarella and Flaschel(2000), Flaschel and Franke (2000), Chiarella et al. (2003), Asadaet al. (2006), Palley (2008), Murakami (2014)及びMurakami andAsada (2018)が,これを行った。 これらの分析の結果は,いずれも,数量調整が支配するケインズ経済学の理論体系においては,価格が伸縮的であることが,経済体系が安定的であることに寄与しないというものである。これは,古典派経済学の結論の対極をなすものである。

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合理的期待仮説に対する批判

 新しい古典派経済学で用いられる合理的期待仮説は,経済主体が経済構造に関する完全な知識を有することを前提とするものであるが,経済構造が線形的に表現されない場合には,経済主体は,一般に,かかる前提の下でも,経済構造を支配する動学方程式体系を正確に解くことができず,将来の価格その他の指標を合理的に予見することができないため,合理的期待を形成することができない。これは,Kelsey (1988), Medio (1992), Lorenz (1993)及び Gandolfo (2009)の結論に基づく。 又,経済構造が線形的に表現されない場合には,経済主体が合理的期待を形成することができても,その合理的期待に基づく均衡は,安定的でなく,将来全く実現しないことがある。これは,Evans and Honkapohja (2001)によって提唱された合理的期待仮説に対する「学習理論(Learning)」に基づくMurakami (2018)の結論による。

 これらの結論は,経済構造が線形的に表現されない場合には,適応的期待仮説その他の厳密な意味で合理的でない期待に関する仮説を採用しなければならないことを示すものである。 33 / 44

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現代的マクロ経済学

 現在のマクロ経済学分析の基礎は,新しいケインズ派 IS-LM体系及びこれに基づく新しいケインズ派フィリップス曲線によって与えられる。これらは,動学的確率的一般均衡理論に則って,従前のケインズ経済学の理論体系を再現し,以てこれをルーカス批判に堪えさせようとする努力の成果である。

 しかし,新しいケインズ経済学は,少なくとも動学的分析においては,古典派経済学の第 2公準に基づくものであって,ケインズ経済学の根幹たる有効需要の原理を全く無視するものである。これは,明白な理論的瑕疵であって,この瑕疵は,経済学者の不断の努力によって,除去されなければならない。

 経済学者は,マクロ経済学を含む経済学が,国民の生活に資するものでなければならないことを深く自覚し,経済学の理論的及び実用的水準の向上に全力をあげて努めなければならない。

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参考文献

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参考文献 (1)

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参考文献 (2)

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Chiarella, Carl, Peter Flaschel, Gang Gong and Willi Semmler,“Nonlinear Phillips Curves, Complex Dynamics and MonetaryPolicy in a Keynesian Macro Model,” Chaos, Solitons andFractals, Vol. 18 No. 3 (2003), pp. 613-634.

Clower, Robert, “The Keynesian Counterrevolution: ATheoretical Appraisal,” in Hahn, Frank H. and Frank P.R.Brechling, Eds., The Theory of Interest Rates, London,Macmillan (1965), pp. 103-125.

Evans, George W. and Seppo Honkapohja, Learning andExpectations in Macroeconomics, Princeton, PrincetonUniversity Press (2001).

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参考文献 (3)

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Harrod, Roy F., “Mr. Keynes and the Traditional Theory,”Econometrica, Vol. 5 No. 1 (1937), pp. 74-86.

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Modigliani, Franco, “Liquidity Preference and the Theory ofInterest and Money,” Econometrica, Vol. 12 No. 1 (1944), pp.45-88.

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