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P43「BCM を⽤いた船体流場の⼤規模 CFD 解析能に関する研究委員会」報告書 Final Report of “Research Committee on the performance evaluation of large scale CFD for the flow around a ship by use of Building Cube Method” 平成28年3⽉

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P43「BCM を⽤いた船体流場の⼤規模 CFD 解析能に関する研究委員会」報告書

Final Report of “Research Committee on the performance evaluation of large

scale CFD for the flow around a ship by use of Building Cube Method”

平成28年3⽉

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目次 ⽬次 .......................................................................................................................................... 1 委員リスト ............................................................................................................................... 2 1. はじめに ........................................................................................................................... 3

1.1. 本研究委員会設⽴の背景と⽬的 ............................................................................... 3 1.2. 本研究委員会の活動概要 .......................................................................................... 4 1.3. 本報告書の概要 ......................................................................................................... 4

2. CFD 解析技術に関わる⽂献・情報調査 .......................................................................... 5 2.1. 計算機と CFD 解析技術の発展 ................................................................................. 5

2.1.1. 計算機性能の発展と展望 ................................................................................... 5 2.1.2. CFD 解析技術の発展と課題[2] ......................................................................... 6

2.2. 船体流場の⼤規模 CFD 解析事例 ............................................................................. 7 2.3. 直交格⼦法と Building Cube Method[11] ................................................................ 7

2.3.1. BCM に関連する各種研究動向 ......................................................................... 9 3. BCM を⽤いた船体流場解析能の検証 ........................................................................... 11

3.1. 検証対象 .................................................................................................................. 11 3.1.1. 対象船型........................................................................................................... 11

3.2. 解析⼿法 .................................................................................................................. 12 3.2.1. 流体ソルバ OpenFOAM ................................................................................. 12 3.2.2. BCM 格⼦⽣成 ................................................................................................. 12

3.3. 船体流場における単相流問題の解析能の検証 ....................................................... 15 3.3.1. 解析条件........................................................................................................... 15 3.3.2. 解析格⼦........................................................................................................... 16 3.3.3. 解析結果と考察 ................................................................................................ 18

3.4. 船体流場における混相流問題への適⽤検討 ........................................................... 26 3.4.1. 解析条件........................................................................................................... 26 3.4.2. 解析格⼦........................................................................................................... 27 3.4.3. 解析結果と格⼦系に関する検討 ...................................................................... 28

4. まとめ ............................................................................................................................. 32 5. 引⽤⽂献 ......................................................................................................................... 33 謝辞 ........................................................................................................................................ 37

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委員リスト

⽒名 所属機関・部署

委員⻑ ⼟井康明 広島⼤学・⼯学研究院

陸⽥秀実 広島⼤学・⼯学研究院

中島卓司 広島⼤学・⼯学研究院

⽇野孝則 横浜国⽴⼤学・理⼯学部

村上恭⼆ 住友重機械マリンエンジニアリング(株)

平⽥信⾏ (独)海上技術安全研究所・流体性能評価系 CFD 研究グループ

増⽥聖始 ジャパンマリンユナイテッド(株)・技術研究所

勝井⾠博 神⼾⼤学・海事科学研究科

⻄垣亮 三菱重⼯業(株)・⻑崎研究所

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1. はじめに

1.1. 本研究委員会設⽴の背景と⽬的

本研究委員会設⽴時の⽬的と⽬標ならびにその位置づけについて以下に述べる。

目的と到達目標 本研究委員会では、⼤規模計算機と直交格⼦法 CFD を⽤いた船舶推進性能予測の可能性

について検討する。具体的には、直交格⼦法を⽤いた⼤規模 CFD における摩擦抵抗、形状抵抗の予測精度と計算規模との関係を調査し、同⼿法の推進性能予測に対する将来的な適⽤可能性について検討した。また、計算規模と予測精度の関係性に加え、将来の計算機資源における実⾏効率、解析データの作成と結果のデータ処理における⼯数などの観点からも議論し、次世代ないしは次々世代におけるマリン CFD の在り⽅について検討する。

研究の特色、独創的な点及び意義 本研究では、近年航空分野を中⼼に注⽬が集まっている直交格⼦法に基づく BCM

(Building Cube Method)を⽤いた⼤規模 CFD 解析を船体流れに適⽤し、将来における実⽤可能性を検討する点に特⾊がある。BCM 法をはじめとする直交格⼦法 CFD はデータならびに演算の構造の単純さから今後期待される計算の超⼤規模化に適した⼿法と考えられており、格⼦⽣成過程の⼈的⼯数の少なさなどの特徴も含めて、近い将来の計算機における実⽤ CFD のための⼿法として期待されている。その⼀⽅で、解析格⼦形状の制約から、船舶のような流線形物体における表⾯摩擦や形状抵抗の予測においては、同⼿法は極めて⾼い空間解像度、すなわち⾮常に⼤規模な計算が要求されるものと考えられ、この点における特性を調査することで、将来のマリン CFD における同⼿法の実⽤可能性を明らかにする。

国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ 近年の計算機能⼒の向上は、船舶性能予測における CFD の精度向上や詳細現象把握による有⽤性を⼀層⾼めるものとして期待されている。その⼀⽅で、複雑化した計算機機構と⼤規模化したデータの効率的な取り扱いは、今後⼀層重要性を増すと考えられる。国内では、最近、スーパーコンピュータ「京」を⽤いた超⼤規模解析により、すべての主要乱流スケールを解像した模型船の CFD 解析が実現され、船舶推進性能予測における超⼤規模 CFD の有効性が⽰された。海外でも、⼤規模計算により実現される複雑な問題の⾼精度な CFD 解析の重要性は認識されており、船舶 CFD 技術の開発においても、次世代計算機の特性を踏まえた⼤規模計算能⼒が重要課題として挙げられているのが現状である。このような背景から、本研究では、今後の⼤規模 CFD における実⽤⼿法として期待される直交格⼦法に注⽬し、次世代のマリン CFD の在り⽅の⼀つとして同⼿法の実⽤可能性を検討する。

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1.2. 本研究委員会の活動概要

本研究委員会の活動の概要を以下に述べる。 活動1年⽬の平成26年度には、委員会を 3 回開催した。まず,BCM 法を⽤いた関連研

究の成果報告論⽂を調査するとともに,BCM を⽤いた⼤規模計算の先⾏研究活動を調査した。そして,理化学研究所からは講師を招き,京コンピュータを⽤いた⾃動⾞分野への応⽤例を調査した。また,東北⼤学を中⼼とした研究グループが主催する関連研究会に委員派遣し,航空分野等への応⽤例を調査した。

活動2年⽬の平成27年度には、⾮構造格⼦有限体積法ベースのオープンソースCFDツール上で階層型直交格⼦(BCM)を構築するための設定ファイル⽣成プログラムを製作し、同CFDツール上でBCM格⼦を⽤いた流体解析を実施した。BCM格⼦を⽤いてベンチマーク船型(JBC 船型)を対象とした船体周り流れのCFD解析を実施し、レイノルズ平均型乱流モデルを⽤いた単相流れ解析において、空間解像度や格⼦規模と解析精度との関係を調査した。また、空間平均型乱流モデルの使⽤を想定し、その際に必要とされる船体境界層を充分解像可能な解析格⼦の規模について推算を⾏った。また、BCM格⼦を⽤いた混相流れ解析を試⾏し、その課題について検討した。

1.3. 本報告書の概要

本報告書では,以上の活動により得られた成果について以下の順に報告する. 第 1 章(本章)では,本研究委員会の設⽴背景と⽬的,活動の概要について述べた. 第 2 章では,⼤規模 CFD 解析に関連する技術的背景と動向について,⼤型計算機技術と

CFD 解析技術を概観し,BCM に関する先⾏研究活動に関する調査の結果を報告する. 第 3 章では,オープンソースCFDツールを⽤いて実施した BCM 格⼦による船体流場

解析の内容について紹介し,その結果と考察について報告する. 第 4 章では,研究委員会における活動の成果をまとめる. 第5章では,研究調査により収集した⽂献をはじめ,本報告書において引⽤した⽂献を取

りまとめて⽰している.

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2. CFD 解析技術に関わる文献・情報調査

2.1. 計算機と CFD 解析技術の発展

2.1.1. 計算機性能の発展と展望

1970 年代以降の計算機関連技術の発展に伴い,計算機の演算性能は現在に⾄るまで⾶躍的かつ持続的な向上を遂げてきた。Top5001[1]によれば、1996 年から 2016 年までの 20 年間で、世界最速の⼤型計算機の演算性能(図 1)は実に 2×105 倍に達しており、これは年平均でおよそ 1.8 倍に相当する驚異的なペースである。

近年では駆動周波数向上に鈍化がみられるものの、中央演算装置(CPU)や同装置内部の演算コアの数を増やし(⼤規模並列化や CPU のメニーコア化)、これらを効率よく並列利⽤することによって総演算性能の向上は未だに持続されている。この傾向は先の Top500 のデータからも明らかであり、例えば 2015 年 11 ⽉時点で世界最速計算機である「天河⼆号」では総コア数が実に 300 万を超えており、⼤規模並列化による演算性能向上の傾向がみられる。また同時点における世界 Top500 の計算機のほぼ半数がソケット当たり 10 コアを超える CPU から構成されており、CPU あたりのコア数の増⼤傾向も⾒ることができる。

図 1 ⼤型計算機の演算性能の発展(http://www.top500.org/statistics/perfdevel/)[1]

1 世界最速級の⼤型計算機の情報を収集し,年 2 回に渡って上位 500 台のランキングや各種性能や構成等についてリストアップする Web サイト

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⼀⽅、このようなデザイントレンドの⼤型計算機においてアプリケーションが⾼い実効効率を達成するためには、より多⾯的なソフトウェア性能が要求される。特に重要となる要求性能として、以下の 2 性能が挙げられる。

1. 極めて⾼い並列効率:⾮常に多数の演算装置を有する計算機を無駄なく利⽤するため、極めて⾼い並列効率が要求される。

2. 低 B/F(Byte/Flop)値:ソケット当たりのコア数増加に伴い、コア当たりに換算した CPU と主記憶の間のデータ転送速度(メモリバンド)は低下する傾向にある。このため、アプリケーション内の 1 回の浮動⼩数点演算(Flop)に対してメモリからのデータロード量(Byte)が少ない、低 B/F(Byte/Flop)特性が望まれる。

CFD ソフトウェアのような物理アプリケーションにおいて上記のソフトウェア性能を達成するには、対象とする物理法則を表現する基礎⽅程式の離散処理において以下の特性を持つことが望ましいと⾔えるであろう。

1. 処理を等配分しやすい。(=⾼い並列効率を実現しやすい。) 2. 離散化された基礎⽅程式中の従属変数が少ない。(=離散式の演算に使⽤する配列が

少なく、演算数に対してメモリからのデータロード量が少ない。)

2.1.2. CFD 解析技術の発展と課題[2]

CFD 解析において空間分割に⽤いられる解析格⼦は,直交格⼦(Cartesian grid),境界適合格⼦(BFC 格⼦:Boundary-fitted grid)および⾮構造格⼦(unstructured grid)に⼤きく分類される[2].これまで,計算機資源の⾼速化と⼤規模化に伴って解析の⾃由度が向上するとともに,BFC 格⼦や⾮構造格⼦が⽤いられるようになったことで,複雑な領域境界形状を対象とする CFD 解析が実現されてきた.さらには,ポリへドラル(任意多⾯体)セル対応の⾮構造格⼦や BFC 格⼦のマルチブロック化や重合格⼦化などの技術により,複雑な形状を有する空間領域やその境界曲⾯をより効率よく,かつ正確に表現するための技術が発展している.

⼀⽅で,今⽇の数値流体解析において対象となる物体形状は⾮常に複雑であり、計算格⼦を作成するための前処理⼯程に要する時間は⻑時間化しており,⻑いものでは数⽇〜数週間におよぶ.このため,今後さらなる解析の⼤規模化が進んだ際には,前処理の時間コストが⼤きな障害となる恐れがある.このため,前処理⼯程の⾼速化という観点から直交格⼦系の解析格⼦を⽤い,複雑な物体形状は Immersed Boundary(IB)法や Cut cell 法によって表現する CFD 解析が再び注⽬されつつある.

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2.2. 船体流場の⼤規模 CFD 解析事例

前節で述べた計算機の演算性能の向上とそれを利⽤した CFD 解析技術の発展により、かつて不可能であった多くの流体現象について数値シミュレーションが可能となってきた。特に⼤規模な計算資源による時空間の⾼解像度化によって、これまで捉えることのできなかった流体現象の⾼精度な再現が、⼯学的・実⽤的な流れにおいても実現されつつある。⼤規模 CFD 解析技術の適⽤先として船体流場もその例外ではなく、国内外の多数の機関において研究が進められている。

国内では,⽂部科学省「HPCI 戦略プログラム 分野4 次世代ものづくり」において京コンピュータを⽤いた超⼤規模な⾮定常 CFD 解析が進められており(加藤[3],Nishikawa et

al.[4]),模型船スケール(船⻑ 5m,曳航速度 1m/s)を対象に 320 億要素を⽤いることで船体表⾯境界層内の主要渦構造を直接再現した Wall-resolved な LES(Large Eddy Simulation)が世界で初めて実現された[3].これにより,曳航⽔槽試験と極めて⾼い精度で⼀致する CFD 解析が実証され,曳航⽔槽試験の完全な代替となる数値⽔槽の実現可能性が⽰されている.

国外においても,船舶海洋分野への⼤規模 CFD 技術の適⽤は進められており,例えば,単純形状(2 次元的楔形)による造波,砕波および⾶沫に関する 10 億格⼦規模の解析[5]や,砕波現象の解明を対象とした 120 億格⼦による解析[6]などが報告されている.また,カットセル格⼦と VOF 法を⽤いた気液混相流れソルバ[7]では,アプリケーション性能のベンチマークにおいて千数百億格⼦規模までのスケーラビリティ(Weak scaling においてScaling coefficient: 0.87)が⽰されている.このような船舶海洋分野における⼤規模 CFD 関連の取り組みをまとめた記事としては,Stern et al.による Review article の 1 節(Ref.[8]の第 5 節)などが挙げられる.また,最新の船舶海洋 CFD 技術に関しては,ITTC におけるSpecialist Committee の報告書[9], [10]中の事例報告も参照されたい.

2.3. 直交格⼦法と Building Cube Method[11]

2.1.2 項でも述べたように,前処理⼯程の⾼速化の観点から直交格⼦を⽤いた解析⼿法が再注⽬されている.さらに,2.1.1 項で述べた今後の⼤規模計算機上で実⾏されるアプリケーションに望ましい特性という観点でも,格⼦形状に関する従属変数(データ配列)が無い直交格⼦法は適した⼿法と⾔える.

⼀⽅で,均⼀な空間解像度を与える直交格⼦法では,局所的に⾼い空間解像度が要求される⼀般的な外部流れ問題において必要以上に多数の格⼦が必要になる2ため,局所⾼解像度化技術が必要となる.このため,基準となる直交格⼦を部分的に⼋分⽊分割し,それを繰り 2 領域内で要求される最も⾼い空間解像度を領域全体に適⽤することになるため.

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返して階層的に空間細分化する⼿法がしばしば⽤いられる.なかでも,2.1.1 項で述べたもう⼀つの要件である⾼い並列効率特性を満⾜しうる⼿法として,Building Cube Method (BCM)[11]が提案されている.なお,以降は同⼿法を BCM と表記する.

Nakahashi and Kim[11]により提案された BCM では,空間を離散化する際の最⼩単位である Cell(いわゆる解析格⼦や有限要素,有限体積)に加えて,Cell の集合として Cube という概念が⽤いられる.まず,解析領域を空間分割する上では Cube によって領域を分割し,このとき物体近傍に向かって Cube を細分化することで局所の空間解像度を向上させる.Nakahashi and Kim[11]は2次元問題において四分⽊分割による細分化を⽤いており,これは3次元問題に拡張すると⼋分⽊分割となる.次に Cube による空間分割の後,その内部に含まれる Cell の数と構造が同⼀となるように各 Cube を Cell 分割する.これにより各 Cube内の流体解析に要する演算コストは均⼀化され3,Cube 単位で演算負荷を分散させることによって負荷バランスの取れた並列化が可能となる[12].また,このような⼿法で⽣成される物体周りの解析格⼦は図 2 のようになる.

図 2 BCM 法における物体周りの解析格⼦概念図(2次元・4分⽊分割)

以上のことから,直交格⼦系 CFD 解析⼿法の中でも BCM は今後の⼤規模計算機におけ

る技術トレンドと CFD 解析における技術課題に対して有利な特徴を有していると期待される.このため,本研究では次世代⼤規模流体解析技術として BCM に注⽬することとし,その研究動向について調査した.

3 実際には,物体表⾯境界の処理や近傍 Cube との解像度の差異により⽣じる補間の有無などから,不均⼀が⽣じうる.

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2.3.1. BCM に関連する各種研究動向

BCM に関連する研究動向について,⽂献調査に基づき以下にまとめる. BCM による CFD 解析に関する研究活動は,2009〜2013 年度に実施された科学研究費助

成事業(基盤研究(S)「ペタフロップス級計算機に向けた次世代 CFD の研究開発」)を中⼼に,多岐にわたって実施されている.

BCM による CFD 解析の提案・紹介 BCM による CFD 解析⼿法の提案,紹介については,⽂献[13], [14]などにまとめられ

ている.また,BCM における空間細分化⽅法の改良検討例[12]なども報告されている.

BCM における物体境界の取り扱いの精度向上 直交格⼦系 CFD 解析では,BFC 格⼦や⾮構造格⼦のように物体表⾯に解析格⼦を沿わ

せることができないため,物体境界の取り扱いが⾮常に重要な要素となり,膨⼤な数の関連研究がなされている.物体境界の取り扱いに関する研究報告のうち BCM と併⽤した報告事例としては,メッシュレス法とのハイブリッド解法 [15], [16], [17], [18]や埋め込み境界法(IB 法)[19]に関する報告などがある.また同研究分野では,IB 法における壁⾯モデルの取り扱いについて近年活発な研究(例えば[20], [21]など)が⾏われており,物体境界の取り扱いの⾼精度化に伴って今後滑らかな物体周り流れの⼀層の解析精度向上が期待される.

各種アプリケーションへの BCM 適用事例 BCM を⽤いた各種アプリケーションへの適⽤事例も多数報告されている. まず,格⼦⽣成に要する前処理時間の⾶躍的な短縮は BCM の特徴である.従来⼿法で

は,設計段階で製作される CAD データから⽔密な形状データを加⼯し,物体表⾯を表す解析格⼦を⽣成する作業が⽣じるため,エンジンルームや床下部品を含む⾃動⾞のような⾮常に複雑な形状を対象とした CFD 解析の前処理⼯程では数週間程度の時間を要してきた.しかし,Onishi et al.[22]は埋め込み境界法の処理を改良した BCM ソルバを開発し,わずか数時間で乗⽤⾞の無加⼯の CAD データから CFD 解析可能な 190 億セルの格⼦データ⽣成を実現して,⾞両空⼒解析を実施している.

このような前処理を簡便にし得る BCM の特性から,航空機のランディングギア周りの流れ解析[23]やフォーミュラカー周りの流れ解析[24]など,複雑形状への適⽤事例が報告されている.

また,直交格⼦系には解析精度における利点もあり,それに関連して航空機後流に形成される翼端渦や排気ジェットの発達についての BCM ソルバの適⽤事例[25]が報告されている.同報告では,航空機表⾯の境界層流れを含む問題については⾮構造格⼦ソルバで解

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析するとともに後流を BCM ソルバにより解析しており,最⼤ 5,000 万点規模の BCM が後流の現象を精度よく解像するのに有効であったことが報告されている.

単純な流れ問題以外への適⽤事例も複数あり,熱対流問題への適⽤とその精度検証[26],2 次元移動円柱周りの超⾳速流れとその⼲渉問題への適⽤[27]や,翼のフラッタ問題に関する流体構造連成解析[28], [29]など,現象⾯で複雑な問題への適⽤事例も報告されている.また,BCM の適⽤は NS ⽅程式を解く CFD ソルバに限らず,線形 Euler ⽅程式を⽤いた⾳響ソルバの開発[28]や同ソルバを⽤いた騒⾳伝播解析[31]に関する報告もなされている.BCM は等間隔直交格⼦を基盤とするため基礎⽅程式の実装が⽐較的容易であり,特殊な物理現象に特化したソルバの開発にも有利であると考えられる.

BCM ソルバの並列化・高速化技術 BCM ソルバを最新の計算機アーキテクチャ上で実⾏する場合の演算性能と⾼速化に関しても複数の検討がなされている.例えば,代表的なベクトルならびにスカラプロセッサを対象に、⾮圧縮性 BCM ソルバの圧⼒⽅程式の⾏列解法として⽤いられる SOR 法の実装とその性能について検討[33]がなされている.また,GPU プラットフォームにおける⾮圧縮性 BCM ソルバの並列実⾏性能とその⾼速化についても検討[34]されている.さらには,⾮圧縮性 BCM ソルバによる利⽤を前提とした専⽤計算機の性能も検討[35]されている.

BCM に関する解析データ圧縮技術 次世代の⼤規模計算機を⽤いた超⼤規模解析を想定すると,解析に伴う⼊出⼒データの

データサイズも⾮常に⼤きなものとなる.このため,データ圧縮技術による解析データサイズの低減は重要な課題の⼀つである.BCM の特徴的なデータ構造を利⽤したデータ圧縮技術に関する研究[36], [37], [38]が⾏われている.

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3. BCM を用いた船体流場解析能の検証 本章では,Cube 単位のセルの副集合を有する階層型直交格⼦系を⽤いて船体流場の CFD解析を⾏い,BCM 格⼦系を⽤いた際の船体流場解析能に関する検証について報告する.

なお本研究では,流体ソルバとして BCM 専⽤の CFD コードではなく,⾮構造格⼦有限体積法を⽤いたオープンソース CFD ツール OpenFOAM を⽤いた.このため,解析速度に関する評価は困難である⼀⽅,境界隣接セルの形状を任意の多⾯体とすることで BCM 格⼦系を⽤いた解析における物体境界の取扱いの⾼精度化の効果について検討を加えた.

3.1. 検証対象

検証対象として,2015 年に実施された船体流場の CFD 解析ワークショップ “Tokyo 2015 A Workshop on CFD in Ship Hydrodynamics”[39] においてベンチマーク課題とされたJapan Bulk Carrier[40]を⽤い,BCM 格⼦系による船体流場解析を⾏った.以下に,対象船型ならびに流場条件について述べる.

3.1.1. 対象船型

本研究の対象船型には図の CFD ベンチマークを⾏うために設計されたケープサイズのバルクキャリア型船型 Japan Bulk Carrier (以降,JBC とする)[40]を⽤いた.船体の概観を図 3 に⽰す.同船体には,付加物として省エネ構造で設計された船尾ダクト機構が装備されており,船体,ダクト,舵は海洋技術安全研究所(NMRI)と横浜国⽴⼤学,⽇本造船技術センター(SRC)の共同で設計された.船尾ダクトを含む船尾周囲形状を図 4 に⽰す.

本船型については,ベンチマーク解析結果の検証のための⽔槽および⾵洞試験が実施されており,その計測データはワークショップの Web サイトにおいて公開されている.⽔槽試験は海洋技術安全研究所および⼤阪⼤学,⾵洞試験は Technical University of Hamburg ‒ Harburg(TUHH)により実施された.

図 3 対称船型(Japan Bulk Carrier)[40]

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図 4 対称船型船尾形状(Japan Bulk Carrier; 左図:ダクト無し,右図:ダクト付き)

3.2. 解析⼿法

本節では,検証解析に⽤いた数値解析⼿法について述べる.

3.2.1. 流体ソルバ OpenFOAM

先述の通り,本研究では流体ソルバとして BCM 専⽤の CFD コードではなく,⾮構造格⼦有限体積法を⽤いたオープンソース CFD ツール OpenFOAM の ver. 2.3.1 を⽤いた.

検証解析では,⽔⾯を⽔平な鏡像⾯で近似した単相流れ解析ならびに気液 2 相の流れを考慮した混相流れ解析の 2 種類の解析を実施した.単相流れ解析には SIMPLE 法ベースの定常単相流ソルバである simpleFoam を,混相流れ解析には,局所時間刻み法により収束性を向上させた VOF 法ベースの定常混相流ソルバである LTSInterFoam を,それぞれ⽤いた.いずれの解析でも乱流モデルには Reynolds 平均型の k-ω SST モデルを⽤いた.なお,解析は九州⼤学情報基盤研究開発センター研究⽤計算機システムの⾼性能演算サーバシステム(FUJITSU PRIMERGY CX400)を利⽤して実⾏した.

3.2.2. BCM 格⼦⽣成

BCM における格⼦トポロジーの規約を満⾜する格⼦データを作成のため,BCM 専⽤の格⼦⽣成ソフトウェアと OpenFOAM 付属の格⼦⽣成ツールを併せて使⽤した.前者を⽤いて局所細分化情報(すなわち,Cube の配置とサイズに関する情報)を⽣成した後,その情報を⼊⼒として後者により OpenFOAM ⽤の解析格⼦データを⽣成した.

3.2.2.1. 「BCM 格⼦⽣成ツール」 解析領域内における Cube の配置と各 Cube の⼨法,すなわち局所細分化情報を⽣成するため,⾦沢⼯業⼤学・佐々⽊研究室より提供いただいたソフトウェア「BCM 格⼦⽣成ツール」を使⽤して BCM 格⼦データを⽣成した.

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同ソフトウェアでは,物体表⾯形状を表すポリゴンデータ(stl 形式)を⼊⼒し,解析領域サイズと Cube の局所細分化階層数,Cube 内 Cell 数を⼊⼒するのみで,解析格⼦データを(半)⾃動⽣成することができる.その処理過程は,おおよそ以下の3⼯程である.

1. 形状データ⼊⼒と格⼦⽣成パラメータ設定 2. Cube 情報⽣成,各 Cube の物体内・外・表⾯の判定とその情報の付加 3. Cell 情報⽣成,各 Cell の物体内・外・表⾯の判定とその情報の付加

このように,同ソフトウェアは BCM 解析のための Cube および Cell 情報を⽣成して出⼒するものである.ただし,本研究では「BCM 格⼦⽣成ツール」により⽣成された Cube情報のみを使⽤することとし,その情報を局所細分化情報に変換して後述の OpenFOAM 付属ツール(snappyHexMesh)へと⼊⼒した.このため,実際に解析に使⽤した格⼦データ⾃体は OpenFOAM 付属ツールを⽤いて⽣成していることを付記しておく.

格子生成速度の検証 参考として,上述の BCM 格⼦⽣成ツールを使⽤して船尾ダクト付きの単相流解析⽤格⼦の⽣成を試⾏し,BCM の特徴の⼀つである前処理⼯程の所⽤時間について検証した.

その結果,デスクトップ PC 上で 3 億セル規模の解析格⼦をわずか 1.5 分程度の時間で,船体表⾯および内外情報を伴った格⼦データが⽣成された(ファイル⼊出⼒の時間等は除く).格⼦⽣成に⽤いたデータとコンピュータの詳細を表 1 にまとめて⽰す.

表 1 BCM 格⼦⽣成速度の検証環境と条件 ⼊⼒形状データ

形状 船尾ダクト付き Japan Bulk Carrier 船型 データ形式 STL 形式(Binary)

ポリゴン数(データ容量) 2,848,552 (135MB)

⽣成された解析格⼦ 総 Cube 数 285,326

総格⼦数 340,141,824

使⽤ PC 諸元 CPU(コア数・動作クロック) Intel® core i7™ 960 (4 コア・3.2GHz)

メモリ容量(規格) 12.0GB (PC3-8500 DDR3 SDRAM) OS Windows 7 professional 64bit

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3.2.2.2. ⾮構造格⼦⽣成ツール snappyHexMesh OpenFOAM 付属の⾮構造格⼦⽣成ツール snappyHexMesh は,ベースとなる直交格⼦を階層的に細分化し,物体近傍では物体形状に応じて多⾯体セルを⽤いる⾮構造格⼦⾃動⽣成ツールであり,以下の 3 ⼯程により解析格⼦が⽣成される[41].

1. 格⼦の細密化と物体内格⼦の削除(castellate) (ア) 物体からの距離や直接座標指定された空間などに基づいて空間解像度が設定さ

れ、基準格⼦に対して⼋分⽊分割を繰り返して空間解像度を向上させる。 (イ) 物体内部に位置する格⼦を削除する。

2. 物体形状に合わせた物体近傍格⼦の変形(Snap) 3. 物体近傍への層状格⼦の挿⼊(addLayer)

本研究では前項で述べた BCM 格⼦⽣成ツールを⽤いて格⼦情報を⽣成し,その Cube に関する情報を空間解像度指定情報という形で snappyHexMesh へ⼊⼒して,OpenFOAM ⽤の解析格⼦データを⽣成した.具体的には,各 Cube が占める空間をそれぞれ箱型の空間領域(geometry の box)として定義し,その Cube の階層4を対応する箱型空間領域内の局所細分化 level(refinementRegions パラメータ)に設定して,上記1.の格⼦細密化を⾏った.このとき,BCM 格⼦⽣成ツールの出⼒に含まれる Cube 情報から snappyHexMesh の⼊⼒パラメータ(snappyHexMeshDict における geometry, refinementRegions の設定)の記述へと⾃動変換するプログラムを作成し,これを利⽤して⼊⼒データを⽣成した.

ところで,直交格⼦系の CFD 解析⼿法における物体境界の表現⽅法には,もっとも単純な各直交格⼦を流体と物体のいずれかとして階段形状近似により物体形状を表す Binary Voxel 法から,物体表⾯を多⾓形パッチで表現する Polygon-cut 法や物体表⾯に制御点を配置する Immersed Boundary 法まで様々なレベルの物体形状再現法が存在する[42].その物体表現精度も解に⼤きく影響すると考えられるため,本研究では以下の 2 種の解析格⼦をその取扱いの両極限と仮定して両者を⽤いた解析を実施した.

1. 最も単純な物体形状表現⽅法として,Binary Voxel 法に相当する物体形状を階段近似した解析格⼦(以降,Binary Voxel 格⼦と称する)

2. 形状再現性の⾼い物体形状表現⽅法として,物体表⾯を多⾓形,物体隣接格⼦を多⾯体セルとする Cut-cell 法に相当する解析格⼦(以降,Cut Cell 格⼦と称する)

これらの格⼦は,それぞれ snappyHexMesh における格⼦⽣成⼯程を部分的に実⾏することで⽣成した.Binary Voxel 格⼦については先に述べた⼯程1のみを,Cut-cell 格⼦については同じく⼯程1および2のみを実⾏することで作成し,それらを⽤いた解析を実施した. 4 ここでは,基準となる Cube に対して何度⼋分⽊分割された Cube であるかを表す.例えば,基準サイズの Cube から2度⼋分⽊分割されて1辺が 1/22=1/4 倍となった Cubeを,階層2の Cube と表現する.

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3.3. 船体流場における単相流問題の解析能の検証

本節では,船体が姿勢拘束された曳航状態にあり,⽔⾯を造波の無い鏡像⾯と仮定した単相流解析について述べる.ここでは喫⽔以下の⽔中領域を対象とした単相流れ解析を BCM 格⼦系を⽤いて⾏い,同格⼦系による船体流れの CFD 解析について検証した.

3.3.1. 解析条件

解析対象領域は図 5 に⽰す矩形領域とし,⽔⾯に相当する鉛直上側境界が船体喫⽔位置となるように船体形状を配置した.このとき,船体姿勢は簡単のため Trim,Sinkage ともに 0 の状態で拘束されているものと仮定した.なお,対象船の⼨法は垂線間⻑ LPP=7.0m の模型スケールである.曳航速度は 1.179m/s とし,図中に⽮印で⽰したように曳航速度に相当する⼀様流を x 軸負⽅向に与えた.このとき,Froude 数 Fn は 0.142,レイノルズ数 RnW

は 7.46×106 である.各従属変数について初期条件ならびに流⼊出断⾯と船体表⾯での境界条件を表 2 にまとめて⽰す.なお,表中では省略した解析領域側⾯(y 軸±⽅向端⾯)と解析領域底⾯(z 軸−⽅向端⾯)については,対称(鏡像)境界条件を適⽤している.

図 5 解析領域模式図

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表 2 単相流解析(simpleFoam)における初期条件と境界条件

従属変数 初期条件

InternalField

流⼊境界条件

inlet

流出境界条件

outlet

船体境界条件

ship

P (=p/) [m2/s2]

⼀様:P=0 勾配なし 固定値:

P=0 ⼀様 勾配なし

U [m/s]

⼀様:

U = (-1.179,0,0)

固定値:

U = (-1.179,0,0)

⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値):

U = (-1.179,0,0) ⼀様

固定値

U=(0,0,0)⼀様

k [m2/s2]

⼀様:

k = 4.698×10-8

固定値:

k = 4.698×10-8

⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値):

k = 0 ⼀様

壁関数

k = 4.698×10-8

⼀様

[1/s]

⼀様:

= 4.698

固定値:

= 4.698

⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値):

= 0 ⼀様

壁関数 = 4.698

⼀様

3.3.2. 解析格⼦

BCM 格⼦系における格⼦数(演算コスト)と空間解像度,さらにはそれらと解精度との関係を明らかにするために,細分化の階層数や Cube 内セルを変化させて計 5 ケースの格⼦モデルを作成した.このとき,物体境界形状を等間隔直交セルの形状により階段近似した格⼦と,BCM における物体境界の取り扱いにおける⾼精度⼿法を模擬するものとして,”Snap”機能を⽤いて物体表⾯セルをカットセルとした格⼦の 2 パターンを⽤意し,5ケース×2パターンの 10 種の格⼦を⽤いた解析を⾏った.

表 3 に各ケースにおける Cube および Cell 分割に関する情報をまとめて⽰す.なお,セル数に関しては船尾ダクト付きの解析格⼦におけるセル数を⽰している.これ以降は物体形状を階段近似した格⼦を表中の Model 名にて表記し,カットセルを⽤いた格⼦については表中の Model 名の末尾に”C”を追記した名称で表記することとする.

model 1〜3 は Cube 内の Cell 数を 8×8×8 = 512 セルで⼀定とし,Cube の局所細分化における最⼤階層を 4,6,8 と変化させたシリーズである.また,model 3〜model 5 は Cubeの最⼤階層数を 8 に固定し,同⼀の Cube 配置の下で Cube 内 Cell 分割数を 23,33 倍に変化させたシリーズである.

図 6 に Model 1~3 の Cube 配置を⽰す.局所細分化の階層数を増やすことにより,船体近傍における空間解像度が⾼くなる様⼦(=Cube が⼩さくなる)を伺うことができる.

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表 3 検証解析に⽤いた BCM 格⼦のパラメータ Maximum

refine level Number of

cubes Number of cells

in each cube Total number of

cells Minimum cell

size [mm]

Model 1 4 340 512

(8 × 8 × 8) 0.169 M

78.1 (1.12×10-2 LPP)

Model 2 6 2,896 512

(8 × 8 × 8) 1.31 M

19.5 (2.79×10-3 LPP)

Model 3 8 29,232 512

(8 × 8 × 8) 12.2 M

4.88 (6.97×10-4 LPP)

Model 4 8 29,232 4,096

(16 × 16 × 16) 96.6 M

2.44 (3.49×10-4 LPP)

Model 5 8 29,232 13,824

(24 × 24 × 24) 0.326 B

1.63 (1.74×10-4 LPP)

(a) model 1 (細分化階層 4; 総 Cube 数 340)

(b) model 1; 船体近傍拡⼤図 (細分化階層 4; 総 Cube 数 340)

(c) model 2; 船体近傍拡⼤図 (細分化階層 6; 総 Cube 数 2,896)

(d) model 3; 船体近傍拡⼤図 (細分化階層 8; 総 Cube 数 29,232)

図 6 各解析格⼦における Cube 配置 (左から順に,⽔平断⾯(⽚舷のみ),船⻑⽅向鉛直断⾯,船幅⽅向鉛直断⾯上の分布;

図中の⻘線は Cube の outline を⽰す)

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また,BCM における格⼦数と空間解像度の関係の視覚的な検討結果として,図 7 に船尾ダクト近傍の船体表⾯格⼦の可視化画像を⽰す.図より,3 億セル規模の model 5 では,充分船尾ダクトの形状も把握できる程度の解像度となっていることが分かる.さらに model 5C では,カットセルによって表⾯形状が滑らかに表現されている様⼦が確認できる.

(a) model 1

(Dx = 1.12×10-2 LPP; Total: 0.169M cells)

(b) model 2 (Dx = 2.79×10-3 LPP; Total: 1.31M cells)

(c) model 3 (Dx = 6.97×10-4 LPP; Total: 12.2M cells)

(d) model 4 (Dx = 3.49×10-4 LPP; Total: 96.6M cells)

(e) model 5 (Dx = 1.74×10-4 LPP; Total: 0.326B cells)

(f) model 5C (Cut-cell; Dx = 1.74×10-4 LPP;

Total: 0.326B cells)

図 7 各解析格⼦(空間解像度)における船尾ダクト形状の再現性⽐較 (Binary voxel 格⼦)

3.3.3. 解析結果と考察

本項では,前項で述べた各解析格⼦による解析結果を⽰し,それらに基づく考察を述べる.

3.3.3.1. 抵抗係数予測 船尾ダクト付きの船体を対象に,空間解像度の異なる 5 つの解析格⼦(model 1-5)によ

る解析を⾏って得られた摩擦抵抗係数 CF および圧⼒(形状)抵抗係数 CP を図 8 に⽰す.グラフの横軸は,船体表⾯境界における格⼦解像度(解析セルの⼀辺の⻑さx)を対数⽬盛で⽰した.

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(a) 摩擦抵抗係数 CF (b) 摩擦抵抗係数 CF(model 3-5 拡⼤)

(c) 圧⼒抵抗係数 CP (d) 圧⼒抵抗係数 CP(model 3-5 拡⼤)

図 8 抵抗係数の空間解像度依存性

なお,図中に⿊破線で⽰した摩擦抵抗係数 CF の参照値は,ITTC-57 による模型船相関式

210 2log

075.0

M

FMRn

C (1)

より算出した値である.このとき,模型船の Reynolds 数 RnM は

M

MMM

LVRn

(2)

である.

ま た , 圧 ⼒抵 抗 係 数 CP に つ い て は , ”Tokyo 2015: A Workshop on CFD in Ship Hydrodynamics”[39]において提供された同⼀ Fn 数条件の平⽔中曳航試験(Case 1.2)の結果における全抵抗係数から式(1)の摩擦抵抗係数を減じた値を参照値として⽰した.

図より,格⼦解像度の向上に伴って圧⼒抵抗係数と摩擦抵抗係数は,ともに⼀定値へと漸近する傾向を⽰している.また,両者の間では摩擦抵抗係数がより早く⼀定値へと漸近して

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

1 10 100

Fri

ctio

n dr

ag c

oeff

icie

nt

CF×

103

Min cell size x [mm]

Binary Voxel

Cut Cell

Model (ITTC-57)

1.9

2.1

2.3

2.5

2.7

2.9

3.1

3.3

1 10

Fri

ctio

n dr

ag c

oeff

icie

nt

CF×

103

Min cell size x [mm]

Binary Voxel

Cut Cell

Model (ITTC-57)

0

3

6

9

12

15

18

1 10 100

Pre

ssur

e dr

ag c

oeff

icie

nt

CP×

103

Min cell size x [mm]

Binary Voxel

Cut Cell

Exp. (CT-CF)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1 10

Pre

ssur

e dr

ag c

oeff

icie

nt

CP×

103

Min cell size x [mm]

Binary Voxel

Cut Cell

Exp. (CT-CF)

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おり,これは船体表⾯の境界条件として壁モデルを適⽤しているためと推測される.このため,壁⾯第 1 セルのセル中⼼が対数層内に⼊る解像度に達した時点で,摩擦⼒の評価値はほぼ収束すると考えられる.また,参照値に対して過⼩評価となっている原因としても,壁モデルを含めた検討が必要と⾔えよう.⼀⽅,圧⼒抵抗については model 5, 5C に⾄っても,完全にある値に収束しているとは⾔い難く,特に形状を階段近似した Binary Voxel 格⼦による解析結果では,参照値に対して 200%近い過⼤評価となっている.ただし,Cut Cell格⼦による解析では約 20%の過⼤評価であり,船体表⾯境界の形状再現性向上に相当する境界の取り扱いの⾼精度化によって予測精度の向上が充分期待できることを⽰している.

3.3.3.2. 船尾流場予測 次に,船尾流場の再現性における格⼦依存性の検証として,複数の鉛直断⾯で流速分布を

可視化し,模型船の PIV 計測結果との⽐較から考察を加える.可視化断⾯は,図 9 に⽰すx/LPP = 0.9625(SS 3/8),x/LPP = 0.9843(ダクト-プロペラ間位置),x/LPP = 1.000(AP)の 3断⾯である.

図 9 船尾流速分布の可視化断⾯位置

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図 10,図 11 にそれぞれ船尾ダクト無し,有りの2条件による解析で得られた SS 3/8 断⾯における船⻑⽅向速度分布を⽰す.速度は曳航速度で無次元化してあり,(1-w)に相当する空間解像度の向上に伴って,ビルジ渦に相当する船⻑⽅向速度の低下領域が縮⼩し,検証対象となる⽔槽試験結果に近づく傾向にある.また,船体形状を階段近似した Binary Voxel法による model 3~5 では,全体的に渦構造の⼤きさが過⼤評価され,船幅⽅向に広がった分布が⽣じている.⼀⽅,Cut Cell 法による解析では同じ空間解像度の Binary Voxel 法に対して低速領域の広がりが⼩さく,より⽔槽試験結果に近い傾向の結果が得られている.

船尾ダクトの有無による船⻑⽅向速度分布の定性的な変化は⾒られない.船尾ダクトを付加した解析では,ビルジ渦中⼼の流速低下領域で船⻑⽅向流速がより低下する傾向にあるが,⽔槽試験結果ではそれほどの差異が⽣じておらず,船尾ダクトによる流場への影響が過⼤に評価されているものと考えられる.

(a) model 3 (b) model 4 (c) model 5

(d) model 3C (e) model 4C (f) model 5C (g) measurement [39]

図 10 船尾鉛直断⾯(SS 3/8)における船⻑⽅向速度分布(船尾ダクト無し)

(a) model 3 (b) model 4 (c) model 5

(d) model 3C (e) model 4C (f) model 5C (g) measurement [39]

図 11 船尾鉛直断⾯(SS 3/8)における船⻑⽅向速度分布(船尾ダクト有り)

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図 12,図 13 には,それぞれ船尾ダクト無し,有りの2条件による解析で得られた, AP

前⽅ 110mm(=1.43LPP×10-2;ダクト-プロペラ間位置に相当)の断⾯における船⻑⽅向速度(1-w)分布を⽰す.

本断⾯でも,空間解像度の向上および Cut Cell 格⼦の使⽤に伴って低速領域が縮⼩し,⽔槽試験結果に近づく傾向が⾒られた.また,本断⾯はダクト近傍であることからその有無による流場への影響が⼤きい.その変化の傾向(ダクト付加に伴い,流速低下領域が広がる⼀⽅,プロペラボス近傍では加速)はいずれの model にも表れているが,特に model 4C, 5C では,両条件での流速分布を定性的に良く捉えられている.また,Binary Voxel 格⼦ではボス近傍のダクト通過流の流速を過⼤に予測する傾向があり,そのような点でも物体表⾯境界の取り扱い精度を向上する必要性が⽰唆されている.

(a) model 3 (b) model 4 (c) model 5

(d) model 3C (e) model 4C (f) model 5C (g) measurement [39]

図 12 船尾鉛直断⾯(AP 前⽅ 110mm)における船⻑⽅向速度分布(船尾ダクト無し)

(a) model 3 (b) model 4 (c) model 5

(d) model 3C (e) model 4C (f) model 5C (g) measurement [39]

図 13 船尾鉛直断⾯(AP 前⽅ 110mm)における船⻑⽅向速度分布(船尾ダクト有り)

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図 14,図 15 には,それぞれ船尾ダクト無し,有りの 2 条件による解析で得られた AP位置の断⾯における船⻑⽅向速度(1-w)分布を⽰す.

本断⾯でも,これまでの 2 段⾯同様な傾向として,空間解像度の向上と Cut Cell 格⼦の使⽤による解精度の向上が確認できる.ただし,ダクト付きの解析に関しては model 5C でも船⻑⽅向流速が低い領域が鉛直上側にずれており,ビルジ渦とダクトの⼲渉によって形成される後流構造については,定性的にも全体の再現には⾄っていないと考えられる.

(a) model 3 (b) model 4 (c) model 5

(d) model 3C (e) model 4C (f) model 5C (g) measurement [39]

図 14 船尾鉛直断⾯(SS 3/8)における船⻑⽅向速度分布(船尾ダクト無し)

(a) model 3 (b) model 4 (c) model 5

(d) model 3C (e) model 4C (f) model 5C (g) measurement [39]

図 15 船尾鉛直断⾯(SS 3/8)における船⻑⽅向速度分布(船尾ダクト有り)

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3.3.3.3. 船体表⾯圧⼒分布の⽐較 圧⼒(形状)抵抗の値に直接関係する解析結果として,船体表⾯の圧⼒分布を⽐較した. 図 16,図 17 に model 3~5 および model 3C~5C の各解析格⼦による解析で得られた船体表⾯圧⼒係数分布を⽰す. これらの可視化から,Cut Cell 格⼦の利⽤によって船⾸側船側部における圧⼒低下がより強く起こり,空間解像度が向上するに伴って船尾側の圧⼒が増⼤する,という格⼦依存性が⽰されている.前者は境界形状の取扱いの⾼精度化による船⾸側曲⾯の圧⼒分布予測精度の改善,後者は船尾にかけての船体曲⾯形状による圧⼒回復量予測の改善に寄与するものと考えられ,これらによって抗⼒予測精度の改善が期待できることが⽰唆されている.

(a) model 3 (b) model 3C

(c) model 4 (d) model 4C

(e) model 5 (f) model 5C

図 16 船体側⾯および底⾯の表⾯圧⼒分布 (各 model で上図が船底側,下図が船側側投影⾯)

(a) model 3 (b) model 3C

(c) model 4 (d) model 4C

(e) model 5 (f) model 5C

図 17 船体前後⾯の表⾯圧⼒分布(各 model で左図が船⾸側,右図が船尾側投影⾯)

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3.3.3.4. 超⼤規模解析の必要解析規模と実現可能性の検討 最後に,これまでに⽰した解析結果を基に今後の⼤規模 CFD 解析の規模を考察した. 本解析では,乱流モデルとして Reynolds 平均型の k- SST モデルを⽤いており,前々項

でも述べた通り,船体境界は発達した平板境界層を仮定した壁モデルを⽤いて摩擦応⼒を近似的に表現している.⼀⽅で,乱流境界層の摩擦評価における乱流モデルの影響を排除し,境界層内の乱流渦スケールを充分解像可能な空間解像度をもって直接的に摩擦評価を⾏うには,粘性底層内に少なくとも数個の解析格⼦を配置する必要がある.そこで,壁距離

yu

y , (3)

に対して,同様に換算した格⼦幅x+が 1 以下となる空間解像度を必要解像度の⽬安とし,本解析結果から求めた壁距離を⽤いて同解像度を達成するために必要な格⼦数との関係を評価した.なおここで,uは壁⾯における剪断速度であり

wally

uu

(4)

で定義される.なお,壁⾯第 1 セルが対数層にある場合に壁モデルの下では,次の評価式を⽤いて評価される.

yCy

25.0

. (5)

ここで係数 Cは 0.09,はカルマン定数,y は壁⾯から壁⾯第 1 セルのセル中⼼までの距離である.

ところで,Cube 階層数を 1 段階上げる,もしくは Cube 内の Cell 分割数を 2 倍にすると格⼦幅は 2 分の 1 となる.このため本研究では,本節で実施した解析結果からy+の値を参照し,そこから上記の⽬安の空間解像度を達成するために必要な細分化回数を試算することとした.

参照した model 4C による解析結果では,船体表⾯の y+の平均値が 28 であった.これに対して格⼦幅5 x+を 1 以下とするためには,1/2×1/32 = (1/2)6 の格⼦幅が必要となる.その達成のために Cube 階層数を最⼤4段階上げ,Cube 内セル数を(23)2 倍した最⼤ 12 階層・Cube 内(64)3 セルの解析格⼦を想定し,Cube 数が 28 倍6,Cube 内セル数が 26 倍の解

5 ここでは簡単のため,壁⾯から第 1 セル中⼼までの距離y の 2 倍と概算した. 6 Cube の階層数を増やした際の Cube 数の増加量については,全 Cube 数に対して船体表⾯近傍の Cube 数が⽀配的であり,それらが船体表⾯近傍で 2 次元的に細分化されるものと⾒⽴てておおよそ 22 倍になると⾒積もった.これは,本解析で⽣成した model 1~3 では,2 階層増えることで Cube 数が約 10 倍となっていることから凡そ妥当な近似であろう.

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析格⼦を考えると,総セル数は 214 倍(〜104 倍)まで増加すると推定される.基準とした解析格⼦ model 4C の総セル数は 1 億弱(108 オーダ)であるので,必要推定セル数は数兆(1012 オーダ)の超⼤規模格⼦となるが,既に数百億セルの計算[3], [22]が実施され,数千億セルの計算の実現可能性[7]も⽰されている現状から考えれば,充分に実現可能な格⼦規模だと考えられる.

3.4. 船体流場における混相流問題への適⽤検討

本節では,船体姿勢を拘束した曳航状態で,造波影響を考慮する船体周囲流れ場の混相流解析について述べる.ここでは,船体周囲の⽔中および⼤気中の両領域を対象とした VOF法による気液混相流れ解析を BCM 格⼦系を⽤いて⾏い,同格⼦系による船体流れの CFD解析に関する検討を⾏った.

3.4.1. 解析条件

解析対象領域は図 18 に⽰す矩形領域とし,⽔⾯位置が鉛直上側境界近くとなるように船体形状を配置した(詳細は次項にて後述).前節に⽰した単相流れ解析と同様,船体姿勢は Trim,Sinkage ともに 0 の状態で拘束されているものと仮定した.対象船型は単相流れ解析と同じ JBC 船型の船尾ダクト無しの船体のみを対象とし,⼨法も単相流れ解析と同様 LPP=7.0m の模型スケールとした.曳航速度は 1.179m/s とし,気相,液相ともに,曳航速度に相当する⼀様流を x 軸負⽅向に与えた.Froude 数 Fn は 0.142,レイノルズ数は液相で RnW=7.46×106,気相では Rna=5.65×105 である.混相流解析に適⽤した初期条件と境界条件を表 4 にまとめて⽰す.なお,表中では省略した解析領域側⾯(y 軸±⽅向端⾯)と解析領域底⾯(z 軸−⽅向端⾯)については,対称(鏡像)境界条件を適⽤している.

(a) 正⾯図 (b) 側⾯図

図 18 混相流れ解析の解析領域概略図

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表 4 混相流解析(LTSInterFoam)における初期条件と境界条件

従属変数 初期条件 流⼊境界条件 inlet 流出境界条件 outlet

VOF 関数 water [ - ]

喫⽔ z0 に対して, z>z0 でwater =0 z≦z0 でwater =1

固定値:⾮⼀様 ・喫⽔ z0 に対し z>z0 でwater =0 z≦z0 でwater =1

可変⽔位条件 (流速に応じた ⽔位変化考慮)

prgh [Pa] (=p-gz)

固定値:prgh = 0 圧⼒勾配 0

(境界流束考慮: fixedFluxPressure)

勾配なし

U [m/s]

固定値: U = (-1.179,0,0) ⼀様

固定値: U = (-1.179,0,0) ⼀様

固定値:U = (-1.179,0,0) 質量流束補正

(outletPhaseMeanVelocity)

k [m2/s2]

固定値: k = 4.698×10-8 ⼀様

固定値: k = 4.698×10-8 ⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値:

k = 4.698×10-8 ⼀様)

[1/s]

固定値: = 4.698 ⼀様

固定値: = 4.698 ⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値: = 4.698 ⼀様)

従属変数 船体境界条件 ship 上⾯境界条件 atmosphere

VOF 関数 water [ - ]

勾配なし 流⼊出条件: 流⼊時固定値

water = 0(気相)

prgh [Pa] (=p-gz)

圧⼒勾配 0(境界流束考慮: fixedFluxPressure)

圧⼒勾配 0 (境界流束考慮: fixedFluxPressure)

U [m/s]

移動壁条件:U=(0,0,0) ⼀様 (movingWallVelocity)

流出時勾配 0,流⼊時内部流束外挿 (pressureInletOutletVelocity)

k [m2/s2]

壁関数: k = 4.698×10-8 ⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値:k = 4.698×10-8 ⼀様)

[1/s]

壁関数: = 4.698 ⼀様

流⼊出条件 (流⼊時固定値: = 4.698 ⼀様)

3.4.2. 解析格⼦

基準格⼦として,図 19 に⽰す Cube 数 104,688,Cube 内のセル分割数 23 (= 8 Cells/Cube)の解析格⼦を作成した.この時,図からも明らかなように⽔⾯近傍で⽐較的⾼い解像度を保てるよう,当該領域における Cube の階層に制約を加えている.また,VOF 関数の初期条件として⽔⾯位置を正確に与えられるよう,解析格⼦のセル界⾯が解析条件として設定した⽔⾯位置と⼀致するように留意して,解析領域と Cube 配置を設定した.

船体近傍の空間解像度(最⼩格⼦幅)は 25mm (3.57LPP×10-3)であり,⽔⾯近傍の空間解像度は 25~800mm(再遠⽅で船体近傍の 25 倍),解析領域全体での最低空間解像度(最⼤格⼦幅)は 3,200mm である.

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(a) 船⻑⽅向断⾯ (b) 船⻑⽅向断⾯(船体周囲拡⼤図)

(c) 船幅⽅向断⾯ (d) 船幅⽅向断⾯(船体周囲拡⼤図)

図 19 混相流れ解析⽤基準格⼦における Cube 配置 (⻘線は Cube の outline を⽰す;⾚破線は⽔⾯位置を⽰す)

3.4.3. 解析結果と格⼦系に関する検討

3.4.3.1. 基準格⼦による解析結果 図 19 に⽰した Cube 配置のもと,Cube 内 Cell 分割を 23 とした基準格⼦を⽤いて解析を

実施したところ,異階層の Cube 界⾯に相当する箇所から⾮物理的な波が発⽣し,平均的な⽔⾯⾼さが初期の基準⽔位から⼤きく変化して,妥当な解が得られなかった.

このことから,階層型直交格⼦において VOF 関数のような⾃由表⾯を追跡表現するための関数を取扱う際,格⼦解像度が 1:2 で変化する異階層の Cube 界⾯に相当する解析格⼦間では,補間による⾃由表⾯位置の連続性や質量保存性の誤差が解に⼤きく影響を与えるものと推測された.また,本研究では⾮構造格⼦有限体積法ベースの解析コードを使⽤しているため,セル中⼼間の距離ベクトルとセル界⾯法線ベクトルとの⾮直交性が⾼いことから当該の異階層セル間で特に誤差を⽣じやすいことも原因の⼀つとして考えられた.

3.4.3.2. 格⼦系に関する検討 上述のような課題への対応として,本質的には異階層 Cube 界⾯でも精度を維持できる離散⼿法の開発が重要である.しかしその⼀⽅で,格⼦側の規約に変更を加えることにより,解析精度を⼤きく低下させる格⼦トポロジーの問題を解消出来るのであれば,実⽤的には充分有効である.そこで,⽔⾯鉛直⽅向に空間解像度が⼀定となるような格⼦系を BCM 格⼦系の拡張として定義することを検討した.この時,BCM における利点である以下の 2 点について,可能な限りその特性を維持するような⽅法を検討した.

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1. 等間隔直交格⼦であることから離散式が単純で関連する従属変数も少ない.これにより,セル当たりの演算量が少なく,かつ低 B/F 特性のプロセッサを使⽤しても⽐較的⾼い実効効率が望める.

2. 各 Cube 内に含まれる Cell 数が同数で構造的な並びも同様であるため,各 Cube における演算量が同⼀であり,Cube 単位で処理を分配することで⾼い並列効率が望める.

検討の結果,異⽅性のある Cube および Cell を条件付きで許容するような,以下のような規約の拡張を提案した.

1. Cube および Cell のアスペクト⽐を 2n とすることを許容する. 2. 近接する Cube 間では,いずれの⽅向の解像度の変化についても 2 倍(1/2 倍)も

しくは同⼀で無ければならない. この拡張規約に基づく⾮等⽅細分化の概念図を図 20 に⽰す.

このような規約の拡張により,ソルバは各軸⽅向の解像度を記憶し,その変数を⽤いてCube 内の Cell に関する演算を⾏う必要が⽣じる7.⼀⽅で,Cube 内の演算量⼀定という特性は,ほぼ同様に保たれる.また,規約の 2.から近接 Cube 間の境界情報交換における各軸⽅向の補間操作は従来の BCM における異階層 Cube 間の処理と同様に⾏えるため,ソルバの拡張は限定的になるものと期待できる.

BCM の規約に基づく 通常の Cube 配置

⾚線によって⽔⾯近傍 Cubeを鉛直⽅向に⾮等⽅細分化.(隣接 Cube に対して 隣接⽅向の Cube 幅⽐は,

1:1 または 1:2 に制限.)

図 20 拡張した規約に基づく鉛直⽅向のみの⾮等⽅細分化イメージ図

7 増加する変数の個数は Cube あたり 1 変数が 3 変数に増えるのみであるが.

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3.4.3.3. 提案格⼦系による解析結果 本節で提案した BCM 格⼦の拡張規約に基づき,⽔⾯近傍の格⼦の鉛直⽅向解像度を向上させた⾮等⽅細分化格⼦(model A)と,さらに同格⼦から Cube 内 Cell 分割数を 23 倍して領域全体についても⾼解像度化した格⼦(model B)を作成した.基準格⼦と model A, Bの各格⼦のパラメータを表 5 にまとめて⽰す.

両格⼦を⽤いて,基準格⼦と同様の⼿法で船体周りの混相流れ解析を実施したところ,おおよそ収束した解が得られた.図 21 に両格⼦を⽤いた解析で得られた船体周囲の鉛直⽅向⽔⾯変位(波形)の分布を⽰す.図より,船体の進⾏に伴って⽣じる船体周りの圧⼒分布による⽔⾯変位については,おおむねその特徴が再現できていることが分かる.⼀⽅,曳波の細かな波紋については,同様な波⻑の⽔⾯変位が⾒られるものの充分な再現には⾄っていない.全体的に空間解像度を⾼めた model B では,船⾸近傍の⽔⾯変位についてはより⽔槽試験結果に近い分布が得られている.ただし,同解析結果では船尾近くの船体側⽅において,格⼦解像度程度の⾮物理的な短波⻑の⽔⾯変位が⽣じており,部分的には低空間解像度の model A に⽐べて解が悪化している箇所も⾒られる.これは⽔平⽅向空間解像度が変化する Cube 界⾯における数値誤差の影響と考えられ,⽔平⽅向の空間解像度変化についてもそれに伴う擬似的な波の反射や造波などを抑制する離散スキームの検討の必要性が伺える.

表 5 気液混相流れ解析⽤解析格⼦パラメータ Maximum

refine level Number of

cubes Number of cells

in each cube Total number

of cells Minimum cell

size [mm]

基準格子 6 104,688 8

(2 × 2 × 2) 0.814 M

25.0 (3.57LPP×10-3)

Model A 6 139,128 8

(2 × 2 × 2) 1.09 M

25.0 (3.57LPP×10-3)

Model B 6 139,128 64

(4 × 4 × 4) 8.79M

12.5 (1.79LPP×10-3)

(a) model A (b) model B

図 21 船体周りの⽔⾯変位(波⾼)分布 (図上側:⽔槽試験,図下側:本解析)

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最後に,より定量的な⽐較として図 22 および図 23 に船体側⾯上および船体側⽅の船⻑⽅向2直線上における⽔⾯変位のプロファイルをそれぞれ⽰す.先の図 21 に対する考察と同様,船体周囲圧⼒分布に伴う⼤域的な⽔⾯変位は定量的にも良く再現されている.また,model A よりも model B において船⾸近傍のピーク値の再現性が⾼く,空間解像度の向上の効果が確認できる.しかし⼀⽅で,x/LPP = 0.3~0.7 に⾒られるような船体側⽅に⽣ずる曳波に相当する変動波⻑の短いプロファイルについては,むしろ model A のみで確認されており,model B では⽔⾯変動が⼩さくほとんど再現されていない事が分かる.

図 22 波⾼プロファイル(船体側⾯上および船体中⼼線上)

(a) y/LPP = 0.1043 (b) y/LPP = 0.1900

図 23 波⾼プロファイル(船体側⽅の船⻑⽅向直線上)

-0.012

-0.008

-0.004

0.000

0.004

0.008

0.012

-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

z/L

PP

x/LPP

model A

model B

Exp.

model A model B Exp. model A model B Exp.

-0.004

-0.002

0.000

0.002

-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

z/L

PP

x/LPP

-0.002

-0.001

0.000

0.001

0.002

-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

z/L

PP

x/LPP

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4. まとめ 本報告書では,⽇本船舶海洋⼯学会 P43 プロジェクト研究委員会「BCM を⽤いた船体流場の⼤規模 CFD 解析能に関する研究委員会」の活動成果について報告した.本書で報告した当プロジェクト研究委員会の成果について,以下にまとめる.

まず,BCM を⽤いた関連研究の成果報告論⽂を調査し,これをとりまとめた.BCM に関連する研究成果報告事例として,各種アプリケーションにおける⼤規模計算事例を中⼼に,物体境界における⾼精度化⼿法,ソルバの並列化・⾼速化技術,解析データ圧縮技術などの取り組みを整理し,本報告書の第 2 章においてその概要をまとめた.

次に,BCM の船体流場への適⽤に関する⼀検討として,⾮構造格⼦有限体積法ベースのオープンソースCFDツールを使⽤した BCM 格⼦系による船体流場の解析を実施し,その可能性について考察した.その成果は本報告書の第 3 章においてまとめた.具体的な解析課題として,ベンチマーク模型船型を対象にレイノルズ平均型乱流モデルによる船体周り単相流れ解析を実施し,空間解像度や格⼦規模と解析精度との関係を調査した.その結果,空間解像度の向上と物体境界表現の⾼精度化により,充分な解の改善が期待できることを確認した.さらに,空間平均型乱流モデルの使⽤を想定し,その際に必要とされる船体境界層を充分解像可能な解析格⼦の規模について推算した.その結果,そのような解析に必要とされる解析規模が将来的に実現可能性のあるものであることを⽰した.また,船体周りの気液混相流れ場の解析を試⾏し,BCM 格⼦系を⽤いた混相流れ解析の課題について検討した.その中で,⽔⾯近傍の急激な空間解像度変化を抑制するための格⼦規約の拡張について提案した.

以上の活動により,BCM による CFD 解析の現状と,同⼿法による船体流場解析の可能性ならびに課題を明らかにし,次世代のマリン CFD に適⽤可能な解析技術として同⼿法に関する知⾒を得ることができた.

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[41] OpenCFD Ltd., “OpenFOAM User Guide: 5.4 Mesh generation with snappyHexMesh,” http://www.openfoam.com/documentation/user-guide/, [アクセス⽇:1 Feb. 2016].

[42] ⼩野謙⼆, “ボクセルベース流体解析システムの進展,” 理研シンポジウム 2008 VCADシステム研究(第 3 回)平成 20 年 11 ⽉, 資料(18), 2008.

[43] 上浦鉄平, “肥型船船⾸まわりの渦流れに伴う現象の CFD シミュレーション,” 横浜国⽴⼤学博⼠論⽂, 2014.

Page 38: P43最終報告書 ver11 提出版 · 2018-04-28 · また、計算規模と予測精度の関係性に加え、将来の計算機資源 における実⾏効率、解析データの作成と結果のデータ処理における⼯数などの観点からも

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謝辞 ⾦沢⼯業⼤学⼯学部航空システム⼯学科の佐々⽊⼤輔准教授には,ソフトウェア「BCM格⼦⽣成ツール」をご提供いただくとともに,Building-Cube Method に関する研究活動の情報や関連研究会のご紹介を頂きました.ここに記して,深く感謝の意を表します.

また,本委員会活動で実施した検証解析では,九州⼤学情報基盤研究開発センター研究⽤計算機システムの⾼性能演算サーバシステム(FUJITSU PRIMERGY CX400)を利⽤しました.