(mronj) *骨吸収抑制剤とは?...企画 : 制作・放送 : bsn新潟放送 後援 :...

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企画 : 制作・放送 : BSN新潟放送 後援 : 新潟県教育委員会 ・ 新潟市教育委員会 第6回3月26日(日) 薬剤関連顎骨壊死 お口の関係 口腔の特徴 歯茎は薄い ポジションペーパーより 近年の高齢化に伴い、骨粗鬆症患者数が増えてきています。その骨粗鬆症の治療として、ビスフォ スフォネートという種類のお薬が大変有効であり、常用薬として選択されることが多くなっています。 一方、「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw 以下 BRONJ)」と呼ばれる、ビスフォスフォネート特有の副作用が報告されるようになりました。歴史的に BRONJは2003年に初めて報告された、比較的新しい疾患ですが、新しいが故に、治療法が確立され ていないため、予防することが非常に大切になります。 また、ビスフォスフォネートの他に、主にがん治療に使用される分子標的薬というお薬でも同様の顎 骨壊死が生じることが報告されており、BRONJを含み、「薬剤関連顎骨壊死(Medication-related osteonecrosis of the Jaws 以下MRONJ)」と称されるようになりました。 以上のことから、骨粗鬆症、がん治療を円滑に行う上で、MRONJの対策は必須といえます。 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)とは? 骨吸収抑制剤 の投与歴がある 顎骨への放射線照射歴がない 8週間以上の顎骨の露出がある 診断基準 写真)上顎骨における顎骨の露出 露出骨 顎骨の組織や細胞が部分的に死滅し、骨が「腐っ た」状態になることです。更に腐った骨が歯茎から露 出してしまうと、口の中に生息する細菌(虫歯菌、歯槽 膿漏菌など)が露出骨表面に感染してしまい、痛み、 腫れ、排膿(化膿して膿が出ること)を生じてしまいます。 特に、抗がん剤で治療を受けている場合、免疫力が 低下している場合があり、感染が、がん治療の大きな 妨げになることも考えられます。 *骨吸収抑制剤とは? ①骨粗鬆症用製剤 薬剤名:ビスフォスフォネート(経口薬) 分子標的薬(皮下注射) ②悪性腫瘍用製剤 薬剤名:ビスフォスフォネート(注射薬) 分子標的薬(注射薬) ※注射薬の方が経口薬に比べて発症率が 高いといわれています。 その治療法は? 予防することが最も重要です。 軽症の場合、うがい薬や化膿止めの投 与で治療しますが、重症例の場合、顎骨 を部分的に切除(削り込む)するような大 きな手術が必要になります。 しかし、治療を行っても、完治しない、あ るいは再発、増悪してしまう場合もありま す。 このことから、治療法が確立されていな いことが現状です。 すなわち、MRONJにならないように、 黒川 亮 新潟大学医歯学総合病院(歯科) 医療連携口腔管理チーム 顎顔面外科 医師キャリアセンター 特任助教

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Page 1: (MRONJ) *骨吸収抑制剤とは?...企画 : 制作・放送 : BSN新潟放送 後援 : 新潟県教育委員会 ・ 新潟市教育委員会 第6回3月26日(日) 薬剤関連顎骨壊死

企画 : 制作・放送 : BSN新潟放送

後援 : 新潟県教育委員会 ・ 新潟市教育委員会

第6回3月26日(日) 薬剤関連顎骨壊死

と お口の関係

口腔の特徴

歯茎は薄い

ポジションペーパーより

近年の高齢化に伴い、骨粗鬆症患者数が増えてきています。その骨粗鬆症の治療として、ビスフォスフォネートという種類のお薬が大変有効であり、常用薬として選択されることが多くなっています。 一方、「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw 以下BRONJ)」と呼ばれる、ビスフォスフォネート特有の副作用が報告されるようになりました。歴史的にBRONJは2003年に初めて報告された、比較的新しい疾患ですが、新しいが故に、治療法が確立されていないため、予防することが非常に大切になります。 また、ビスフォスフォネートの他に、主にがん治療に使用される分子標的薬というお薬でも同様の顎骨壊死が生じることが報告されており、BRONJを含み、「薬剤関連顎骨壊死(Medication-related osteonecrosis of the Jaws 以下MRONJ)」と称されるようになりました。 以上のことから、骨粗鬆症、がん治療を円滑に行う上で、MRONJの対策は必須といえます。

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)とは?

骨吸収抑制剤*の投与歴がある 顎骨への放射線照射歴がない 8週間以上の顎骨の露出がある

診断基準

写真)上顎骨における顎骨の露出

露出骨

顎骨の組織や細胞が部分的に死滅し、骨が「腐った」状態になることです。更に腐った骨が歯茎から露出してしまうと、口の中に生息する細菌(虫歯菌、歯槽膿漏菌など)が露出骨表面に感染してしまい、痛み、腫れ、排膿(化膿して膿が出ること)を生じてしまいます。 特に、抗がん剤で治療を受けている場合、免疫力が低下している場合があり、感染が、がん治療の大きな妨げになることも考えられます。

*骨吸収抑制剤とは? ①骨粗鬆症用製剤 薬剤名:ビスフォスフォネート(経口薬) 分子標的薬(皮下注射)

②悪性腫瘍用製剤 薬剤名:ビスフォスフォネート(注射薬) 分子標的薬(注射薬)

※注射薬の方が経口薬に比べて発症率が 高いといわれています。

その治療法は?

予防することが最も重要です。

軽症の場合、うがい薬や化膿止めの投与で治療しますが、重症例の場合、顎骨を部分的に切除(削り込む)するような大きな手術が必要になります。 しかし、治療を行っても、完治しない、あるいは再発、増悪してしまう場合もあります。 このことから、治療法が確立されていないことが現状です。 すなわち、MRONJにならないように、

黒川 亮 新潟大学医歯学総合病院(歯科) 医療連携口腔管理チーム 顎顔面外科 医師キャリアセンター 特任助教

Page 2: (MRONJ) *骨吸収抑制剤とは?...企画 : 制作・放送 : BSN新潟放送 後援 : 新潟県教育委員会 ・ 新潟市教育委員会 第6回3月26日(日) 薬剤関連顎骨壊死

企画 : 制作・放送 : BSN新潟放送

後援 : 新潟県教育委員会 ・ 新潟市教育委員会

口腔の特徴

歯茎は薄い

ポジションペーパーより

口腔内細菌数

MRONJは下図のような段階を踏んで、発症するのではないか?と考えられています。

骨吸収抑制剤 の投与

顎骨の新陳代謝が遅れる (破骨細胞の抑制)

傷の治りが遅れる

骨が硬くなる

血管の新陳代謝が遅れる (血管新生抑制作用)

抜歯等による 顎骨への 強いダメージ

口腔内細菌の顎骨へ感染しやすくなる

高齢者への抗がん療法

抜歯後の治りが悪い

口腔粘膜の新陳代謝が遅れる (口腔粘膜上皮増殖 の抑制)

免疫力 の低下

赤枠内に注目!

MRONJは、下記の患者さんに発症されやすいとされています。更に予防が重要です。

【がんの種類】 乳がん、前立腺がん、肺がん、腎がん、大腸がん、多発性骨髄腫、等

【持病】 糖尿病、関節リウマチ、高カルシウム血症、副甲状腺機能低下症、骨軟化症、ビタミンD欠乏症 腎透析、貧血、骨パジェット病

【生活習慣】 喫煙、飲酒、肥満

【併用薬】 副腎皮質ステロイド、エリスロポエチン、血管新生阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤

口腔ケアや歯科治療を通じて、良好な口腔衛生環境を作り出すことが、発症を予防することにつながります。ビスフォスフォネートや分子標的薬は体のために非常に大切な治療薬です。 がん治療をスムーズに進めるためにも、口腔内環境を改善することをお勧めします。

骨吸収抑制剤単独でMRONJ発症 するわけではありません。 お口の衛生環境が影響する要素も 非常に強いのです。 MRONJの発症

口腔内細菌 の増殖

第6回3月26日(日) 薬剤関連顎骨壊死

と お口の関係